説明

半導体チップ用受動層、半導体装置

【課題】チップ一体型パッケージ、半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体基板12上に積層した絶縁層14と、前記絶縁層14に横倒しに埋め
込んだ態様で形成され、前記半導体基板12に形成された回路または外部回路と電気的に
接続するソレノイド型のインダクタ28と、前記絶縁層14において前記インダクタ28
の両端の開口部28aを塞ぐ位置に埋め込んだ態様で形成した一対の金属部材(金属膜3
4、金属板35)と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ一体型パッケージ、及びこれが積層された半導体装置において、イン
ダクタからの磁束の漏れを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウエハレベルチップサイズパッケージ(WCSP)と呼ばれる半導体チップの能
動面上に樹脂層を形成し、その上に配線を形成し、配線上に外部端子を形成したパッケー
ジが開発されている。
【0003】
図5に従来技術に係るWCSP構造100を製造するための基本工程について示す。W
CSP構造100を製造するための基本工程は、まず(1)Si等の半導体基板102上
にSiOやSiN等で保護膜104(パッシベーション膜)を積層し、(2)保護膜1
04の上にポリイミド等の絶縁樹脂層106をパターニングし、(3)絶縁樹脂層106
上にTiW等を材料としたスパッタリングによりシード層108を積層し、(4)シード
層108上にCu等を材料としたスパッタリングにより配線の基層110を積層し、(5
)配線114の配置に対応した位置において配線114を形成するためのメッキレジスト
112をパターニングし、(6)Cu等を材料として配線の基層110上に電界メッキに
より配線114を積層し、(7)メッキレジスト112を剥離して配線の基層110の露
出した部分をエッチングにより除去し、(8)シード層108の露出した部分をエッチン
グにより除去し、(9)ポリイミド樹脂等を用いた絶縁樹脂層116(ソルダーレジスト
層)を積層する。なお1層目の上に2層目を積層する場合は、(9)のソルダーレジスト
層上において(3)から(9)までの工程を繰り返せばよい。
【0004】
図6に従来技術に係るWCSP構造100を示す。WCSP構造100は半導体チップ
118の能動面120上に積層され、能動面120上の電極122を再配置して半導体チ
ップ118を実装する実装基板(不図示)上の電極(不図示)との電気的接続を行うもの
である。WCSP構造100は半導体チップ118の能動面120において、SiO
SiN等で形成され電極122を露出するようにパターニングされたパッシベーション層
124、ポリイミド等で形成され電極122を露出するようにパターニングされた1層目
の絶縁層126、Cu等の材料を用いてスパッタリング等により形成し能動面120上の
電極122と接続する1層目の配線128、ポリイミド等で形成され1層目の配線の一部
を露出するようにパターニングされた2層目の絶縁層130、1層目の配線128と電気
的に接続し能動面120上の電極122の再配置を行う2層目の配線132、の順に積層
される。またフェースダウンボンディングを行う場合は、2層目の配線132上の適当な
位置に半田ボール134を接続し、また必要に応じて2層目の配線132を樹脂封止する
ためのソルダーレジスト層138を積層している。
【0005】
ここで、2層目の絶縁層130を形成する場合は、1層目の配線128の一部を露出さ
せるようにパターニングし、2層目の絶縁層130に凹部130aを形成する。そして2
層目の配線132を形成すると同時に、凹部130aの内壁に形成され第1層の配線12
8及び第2層の配線132に接続する貫通配線136を形成している。
【0006】
このような構成を有することにより、能動面120上の電極122は、1層目の配線1
28、貫通配線136、2層目の配線132(半田ボール134)を介して、実装基板上
の電極(不図示)の配置に対応した再配置を行いつつ実装基板上の電極(不図示)と電気
的に接続することができる。
【0007】
このようなWCSP構造のもと、特許文献1においては樹脂層の配線と干渉しない位置
にスパイラル状の配線からなるスパイラルインダクタを有する構造が開示されている。し
かしこの構造の場合、スパイラルインダクタによって発生する磁束は半導体チップの法線
方向となるため、半導体チップにおいて渦電流損が発生することになる。よってこれを回
避するため特許文献2に示されるような樹脂層に対して横倒しに埋め込まれた態様のソレ
ノイド型のインダクタを用いることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−105462号公報
【特許文献2】特開2009−27005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、このようなソレノイド型のインダクタの場合、半導体チップでの渦電流損は回
避できるが、インダクタが発生する磁束は、半導体チップの端面方向となるため、半導体
装置にこのような半導体チップを実装すると隣の素子に磁束が及んで悪影響を及ぼす虞が
ある。
そこで本発明は、ソレノイド型のインダクタを用いても磁束の漏れを抑制した半導体チ
ップ用受動層、及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
適用例として実現することが可能である。
[適用例1]半導体基板上に積層した絶縁層と、前記絶縁層に横倒しに埋め込んだ態様
で形成され、前記半導体基板に形成された回路または外部回路と電気的に接続するソレノ
イド型のインダクタと、前記絶縁層において前記インダクタの両端の開口部を塞ぐ位置に
埋め込んだ態様で形成した一対の金属部材と、を有することを特徴とするチップ一体型パ
ッケージ。
【0011】
上記構成により、ソレノイド型のインダクタからの磁束は、インダクタの両端の開口部
を結ぶ線の方向、すなわち絶縁層の端面方向に発生する。しかし、両端の開口部を塞ぐ位
置にそれぞれ金属部材を設けたため、インダクタからの磁束と、外部からインダクタに及
ぶ磁束をそれぞれ遮断することができる。よって隣接する他の半導体素子との間で発生す
る悪影響を防止しつつ渦電流損の発生及びQ値の低下等を抑制したチップ一体型パッケー
ジとなる。またインダクタ全体を金属等で覆うとインダクタと金属との容量結合が発生し
、これによりQ値が低下する。よって上記構成のように磁束密度が最も高い位置である開
口部に金属部材を設けることにより、Q値の低下を抑制し、かつ隣接する半導体素子等に
悪影響を与えることを抑制したチップ一体型パッケージとなる。
【0012】
[適用例2]前記絶縁層は、前記半導体基板上に積層した第1絶縁層と、前記第1絶縁
層上に積層した第2絶縁層と、を有し、前記第1絶縁層は、前記第1絶縁層上の平面視し
て前記一対の金属部材に挟まれた範囲で、前記一対の金属部材を結ぶ線の方向に並列に並
べて形成した複数の第1配線を有し、前記第2絶縁層は、前記複数の第1配線のそれぞれ
の始端及び終端に対向する位置に形成し、前記始端及び前記終端にそれぞれ接続した複数
の貫通配線と、前記第2絶縁層上に形成し、一の第1配線の終端に接続する貫通配線と、
前記一の第1配線の次の列の第1配線の始端を接続する貫通配線と、を接続する複数の第
2配線と、を有し、前記インダクタは、最前列の第1配線から最後列の第1配線までを前
記複数の貫通配線及び前記複数の第2配線を介して直列に接続して形成したことを特徴と
する適用例1に記載のチップ一体型パッケージ。
【0013】
上記構成により、絶縁層に横倒しに埋め込まれた態様のソレノイド型のインダクタを積
層構造により形成することができるので、適用例1のチップ一体型パッケージを量産して
コストを抑制することができる。
【0014】
[適用例3]前記第2絶縁層の前記インダクタの両端の開口部を挟む位置に一対の凹部
を形成するとともに、前記一対の金属部材は、前記凹部の内壁に積層した金属膜であるこ
とを特徴とする適用例2に記載のチップ一体型パッケージ。
【0015】
上記構成により、磁束をシールドする金属部材をソレノイド型のインダクタと同じ製造
プロセスで形成することができるので、製造が容易となり、製造コストをより効果的に抑
制することができる。
【0016】
[適用例4]前記一対の金属部材は、前記絶縁層の主面から露出して形成されたことを
特徴とする適用例1または2に記載のチップ一体型パッケージ。
上記構成により、インダクタから発生する磁束をより効果的に遮蔽することができる。
【0017】
[適用例5]適用例1乃至4のいずれか1例に記載のチップ一体型パッケージを半導体
基板に形成し、前記チップ一体型パッケージを介して実装基板上に実装して形成したこと
を特徴とする半導体装置。
【0018】
ソレノイド型のインダクタからの磁束は、インダクタの両端の開口部を結ぶ線の方向、
すなわち絶縁層の端面方向に発生する。しかし、両端の開口部を塞ぐ位置にそれぞれ金属
部材を設けたためインダクタからの磁束と、外部からインダクタに及ぶ磁束をそれぞれ遮
断することができる。よって隣接する他の半導体素子への悪影響を防止しつつ渦電流損の
発生を抑制した半導体装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係るチップ一体型パッケージの模式図である。
【図2】本実施形態に係るチップ一体型パッケージの製造工程を示す模式図である。
【図3】本実施形態に係るチップ一体型パッケージの製造工程を示す模式図である。
【図4】本実施形態のチップ一体型パッケージを積層した半導体基板を実装基板に実装した場合の模式図である。
【図5】従来技術に係るWCSP構造を製造するための基本工程を示す模式図である。
【図6】従来技術に係るWCSP構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記
載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限
り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0021】
本実施形態に係るチップ一体型パッケージを図1に示す。図1(a)は平面図、図1(
b)は図1(a)のA’−A線断面図、図1(c)は図1(a)のB’−B線断面図、図
1(d)は図1(a)のC’−C線断面図である。
【0022】
本実施形態に係るチップ一体型パッケージ10は、半導体基板12上に積層した絶縁層
14と、前記絶縁層14に横倒しに埋め込んだ態様で形成され、前記半導体基板12に形
成された回路または外部回路と電気的に接続するソレノイド型のインダクタ28と、前記
絶縁層14において前記インダクタ28の両端の開口部28aを塞ぐ位置に埋め込んだ態
様で形成した一対の金属部材(金属膜34、金属板35)と、を有するものである。
【0023】
より詳細には、前記絶縁層14は、前記半導体基板12上に積層した第1絶縁層16と
、前記第1絶縁層16上に積層した第2絶縁層20と、を有し、前記第1絶縁層16は、
前記第1絶縁層16上の平面視して前記一対の金属部材(金属膜34、金属板35)に挟
まれた範囲で、前記一対の金属部材を結ぶ線の方向に並列に並べて形成した複数の第1配
線18を有し、前記第2絶縁層20は、前記複数の第1配線18のそれぞれの始端18a
及び終端18bに対向する位置に形成し、前記始端18a及び前記終端18bにそれぞれ
接続した複数の貫通配線22、24と、前記第2絶縁層20上に形成し、一の第1配線1
8の終端18bに接続する貫通配線24と、前記一の第1配線18の次の列の第1配線1
8の始端18aを接続する貫通配線22と、を接続する複数の第2配線26と、を有し、
前記インダクタ28は、最前列の第1配線18から最後列の第1配線18までを前記複数
の貫通配線22、24及び前記複数の第2配線26を介して直列に接続して形成したもの
である。
【0024】
ここで前記一対の金属部材を構成する金属膜34は、前記第2絶縁層20の前記インダ
クタ28の両端の開口部28aを挟む位置に形成された一対の凹部32の内壁に積層され
たものである。
【0025】
半導体基板12は、Si等で形成されたベアな板材、または集積回路(不図示)がパタ
ーニングされたものが用いられる。集積回路(不図示)を有する半導体基板においては、
集積回路(不図示)の電極が形成された能動面にSiOやSiN等で形成された第1絶
縁層16である保護膜が積層される。なお本実施形態においては能動面に形成された電極
、実装基板に接続する配線等は従来技術で述べたWCSP構造の場合と同様なので、説明
および図面での記載を省略する。
【0026】
第1配線18は、第1絶縁層16である保護膜上に形成される。第1配線18は横一列
に複数並列に並べた態様で形成されている。各第1配線18の始端18a及び終端18b
は、それぞれ貫通配線22、24との接続を容易にするため第1配線18の中間領域より
も大きめに設計されている。ここで最前列の第1配線18の始端18aと最後列の第1配
線18の終端18bを集積回路(不図示)の電極に接続することにより半導体基板12及
びチップ一体型パッケージ10と一体で半導体デバイスとして利用できる。また半導体基
板12がベアSiである場合は、半導体基板12及びチップ一体型パッケージ10と一体
で受動部品として利用できる。
【0027】
第2絶縁層20はポリイミド等の樹脂で形成され、第1絶縁層16上に積層される。ま
た第2絶縁層20には平面視して各第1配線18の始端18a及び終端18bに重なる位
置に形成され、各始端18a及び各終端18bをそれぞれ露出させる凹部22a、24a
が形成されている。そして各凹部22a、24aの内壁には各第1配線18の始端18a
及び終端18bにそれぞれ接続する貫通配線22、24が積層されている。
【0028】
第2配線26は、第2絶縁層20上に形成され、一の第1配線18の終端18bに接続
する貫通配線24と、一の第1配線18に隣接する次の列の第1配線18の始端18aに
接続する貫通配線22と、を接続するものである。第2配線26と貫通配線22、24は
同一の製造プロセスで積層することができる。
【0029】
このように本実施形態のチップ一体型パッケージ10は、従来技術で述べたWCSP構
造の余った領域を用いて、第1配線18、貫通配線22、第2配線26、貫通配線24、
次の列の第1配線18の順に電気的接続を螺旋状に繰り返し、最前列の第1配線18から
最後列の第1配線18までを貫通配線22、24及び第2配線26を介して直列に接続し
、絶縁層14に横倒しに埋め込まれた態様のソレノイド型のインダクタ28を形成してい
る。
【0030】
ここで、半導体基板12が集積回路等の回路を有する場合は、インダクタ28において
最前列の第1配線18の始端18aと最後列の第1配線の終端18bを前記回路の電極に
接続させることによりチップ一体型パッケージは半導体デバイスとして機能する。また半
導体基板12がベアなSi基板である場合には、インダクタ28は実装先の外部回路(不
図示)に同様に接続することができ、チップ一体型パッケージは受動部品として機能する
ことになる。
【0031】
よって、インダクタ28の両端の開口部28aを結ぶ線の方向(ソレノイド型のインダ
クタ28の軸心の方向)は、第1絶縁層16及び第2絶縁層18の法線に対して垂直な方
向、すなわち絶縁層14の端面方向に向けられ、この方向に磁束が発生する。
【0032】
一方、第2絶縁層20の、平面視してインダクタ28の両端の開口部28aを塞ぐ位置
には金属部材である金属膜34が設けられている。この金属膜34によりインダクタ28
の開口部28aから発生する磁束、及び外部からインダクタ28の開口部28aに及ぶ磁
束をそれぞれ効果的に遮蔽することができる。
【0033】
図2、図3(及び図1)に本実施形態に係るチップ一体型パッケージの製造工程につい
て示す。図2(a)は平面図、図2(b)は図2(a)のA−A線断面図である。図3(
a)は平面図、図3(b)は図3(a)のA−A線断面図である。本実施形態もWCSP
構造であるが、その製造工程の詳細は従来技術で述べたとおりなので、詳細は省略して全
体の形状が理解できる程度に説明する。
【0034】
まず図2に示すように、Si等の半導体基板12上に第1絶縁層16としてSiO
SiN等の材料を用いた保護膜及びポリイミド等で形成した樹脂層を積層し、その上に第
1配線18(始端18a、終端18bを含む)を形成する。次に図3に示すように第2絶
縁層20としてポリイミド等で形成された樹脂層を積層する。このとき第1配線18の始
端18a及び終端18bをそれぞれ露出させる凹部22a、24a、及び金属膜34を積
層する凹部32をパターニングする。そして図1に示すように、貫通配線22、24、第
2配線26、金属膜34をパターニングにより形成する。この状態で貫通配線22、24
、第2配線26、金属膜34は露出したままであるが、これらを保護するため、さらにソ
ルダーレジスト層を積層してもよい。上記構成において金属部材は凹部32に積層された
金属膜34としたが、これに限定されず凹部32の位置に埋め込まれた金属板35でもよ
く、金属板35は第2絶縁層20の主面から露出してもよい(図4参照)。このように露
出させることによりインダクタ28からの磁束をより多く遮蔽することができる。
【0035】
図4に本実施形態のチップ一体型パッケージ10を積層した半導体基板12を実装基板
44に実装した場合の模式図を示す。図4において、半導体基板12の能動面上の電極1
2aは、インダクタ28を構成する第1配線18に配線50を介して接続され、同じくイ
ンダクタ28を構成する第2配線26は、実装基板44上の電極44a、または他の半導
体基板上の第2配線26にワイヤー線46により電気的に接続されている。またインダク
タ28はその開口部28aが金属板35によって挟まれ開口部28aから出力される磁束
は遮蔽され、外部に漏れないようになっている。
【0036】
図4(a)に示すように、ICやその他の素子48が本実施形態に係るインダクタ28
の磁束発生方向にマウントされている場合でも磁束が素子48に及ぼす影響を防ぐことが
できるとともに、逆に他の素子48から漏れるノイズ電磁波がインダクタ28に及ぼす影
響を防ぐこともできる。さらに、図4(b)に示すように、本実施形態に係るインダクタ
28を有する2つの半導体基板12を、各インダクタ28の磁束発生方向が対向するよう
に配置した場合でも、一方のインダクタ28からの磁束が他方のインダクタ28に対して
Q値低下等の悪影響を与えることを抑制することができる。
【0037】
以上述べたように本実施形態に係るチップ一体型パッケージ10によれば、第1には、
ソレノイド型のインダクタ28からの磁束は、インダクタ28の両端の開口部28aを結
ぶ線の方向、すなわち絶縁層14の端面方向に発生する。しかし、両端の開口部28aを
塞ぐ位置にそれぞれ金属部材を設けたため、インダクタ28からの磁束と、外部からイン
ダクタ28に及ぶ磁束をそれぞれ遮断することができる。よって隣接する他の半導体素子
との間で発生する悪影響を防止しつつ渦電流損の発生及びQ値の低下等を抑制したチップ
一体型パッケージ10となる。またインダクタ28全体を金属等で覆うとインダクタと金
属との容量結合が発生し、これによりQ値が低下する。よって上記構成のように磁束密度
が最も高い位置である開口部28aに金属部材を設けることにより、Q値の低下を抑制し
、かつ隣接する半導体素子等に悪影響を与えることを抑制したチップ一体型パッケージ1
0となる。
【0038】
第2には、絶縁層14に横倒しに埋め込まれた態様のソレノイド型のインダクタを積層
構造(第1絶縁層16:第1配線18、第2絶縁層20:貫通配線22、24、第2配線
26)により形成することができるので、チップ一体型パッケージ10を量産してコスト
を抑制することができる。
【0039】
第3には、第2絶縁層20のインダクタ28の両端の開口部28aを挟む位置に一対の
凹部32を形成するとともに、一対の金属部材は、凹部32の内壁に積層した金属膜34
とすることにより、磁束をシールドする金属部材をソレノイド型のインダクタ28と同じ
製造プロセスで形成することができるので、製造が容易となり、製造コストをより効果的
に抑制することができる。
【0040】
第4には、一対の金属部材(金属板35)は、絶縁層14(第2絶縁層20)の主面か
ら露出させることにより、インダクタ28から発生する磁束をより効果的に遮蔽すること
ができる。
【0041】
また、上記チップ一体型パッケージ10を半導体基板12に積層し、半導体基板12を
前記チップ一体型パッケージ10を介して実装基板上に実装した半導体装置とすることに
より、ソレノイド型のインダクタ28からの磁束は、インダクタ28の両端の開口部28
aを結ぶ線の方向、すなわち絶縁層14の端面方向に発生する。しかし、両端の開口部2
8aを塞ぐ位置にそれぞれ金属部材を設けたためインダクタ28からの磁束と、外部から
インダクタ28に及ぶ磁束をそれぞれ遮断することができる。よって隣接する他の半導体
素子への悪影響を防止しつつ渦電流損の発生を抑制した半導体装置となる。
【符号の説明】
【0042】
10………チップ一体型パッケージ、12………半導体基板、14………絶縁層、16…
……第1絶縁層、18………第1配線、20………第2絶縁層、22………貫通配線、2
4………貫通配線、26………第2配線、28………インダクタ、32………凹部、34
………金属膜、35………金属板、44………実装基板、46………ワイヤー線、48…
……素子、50………配線、100………WCSP構造、102………半導体基板、10
4………保護膜、106………絶縁樹脂層、108………シード層、110………配線の
基層、112………メッキレジスト、114………配線、116………絶縁樹脂層、11
8………半導体チップ、120………能動面、122………電極、124………パッシベ
−ション層、126………1層目の絶縁層、128………1層目の配線、130………2
層目の絶縁層、132………2層目の配線、134………半田ボール、136………貫通
配線、138………ソルダーレジスト層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に積層した絶縁層と、
前記絶縁層に横倒しに埋め込んだ態様で形成され、前記半導体基板に形成された回路ま
たは外部回路と電気的に接続するソレノイド型のインダクタと、
前記絶縁層において前記インダクタの両端の開口部を塞ぐ位置に埋め込んだ態様で形成
した一対の金属部材と、を有することを特徴とするチップ一体型パッケージ。
【請求項2】
前記絶縁層は、
前記半導体基板上に積層した第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に積層した第2絶縁層と、を有し、
前記第1絶縁層は、
前記第1絶縁層上の平面視して前記一対の金属部材に挟まれた範囲で、前記一対の金属
部材を結ぶ線の方向に並列に並べて形成した複数の第1配線を有し、
前記第2絶縁層は、
前記複数の第1配線のそれぞれの始端及び終端に対向する位置に形成し、前記始端及び
前記終端にそれぞれ接続した複数の貫通配線と、
前記第2絶縁層上に形成し、一の第1配線の終端に接続する貫通配線と、前記一の第1
配線の次の列の第1配線の始端を接続する貫通配線と、を接続する複数の第2配線と、を
有し、
前記インダクタは、
最前列の第1配線から最後列の第1配線までを前記複数の貫通配線及び前記複数の第2
配線を介して直列に接続して形成したことを特徴とする請求項1に記載のチップ一体型パ
ッケージ。
【請求項3】
前記第2絶縁層の前記インダクタの両端の開口部を挟む位置に一対の凹部を形成すると
ともに、
前記一対の金属部材は、
前記凹部の内壁に積層した金属膜であることを特徴とする請求項2に記載のチップ一体
型パッケージ。
【請求項4】
前記一対の金属部材は、前記絶縁層の主面から露出して形成されたことを特徴とする請
求項1または2に記載のチップ一体型パッケージ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のチップ一体型パッケージを半導体基板に形成し
、前記チップ一体型パッケージを介して実装基板上に実装して形成したことを特徴とする
半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−54599(P2011−54599A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199472(P2009−199472)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】