半導体ポリマーブラシを組み込んだ有機電子素子
少なくとも2つの電極と半導体層を含み、その半導体層は少なくとも一の正孔輸送半導体材料と少なくとも一の電子輸送半導体材料の混合物を含むものであって、少なくとも一の前記半導体材料が、少なくとも一の前記電極表面に付着していて且つ少なくとも一の前記の他の半導体性材料と接触している、半導体ポリマーブラシの形状を有する有機電子素子。また、少なくとも2つの電極と半導体層を含み、その半導体層は少なくとも一の正孔輸送半導体材料または少なくとも一の電子輸送半導体材料を含むものであって、前記少なくとも一の半導体材料が、少なくとも一の前記電極表面に付着している、半導体ポリマーブラシの形状を有する有機電子素子。前記素子の製造方法も提供されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子または有機エレクトロルミネッセンス素子等の有機電子素子に関するものであり、前記素子は電極と半導体層から構成され、半導体層は少なくとも一の正孔輸送半導体材料と少なくとも一の電子輸送半導体材料の混合物であり、それら半導体材料のうち少なくとも一方は半導体性のポリマーブラシの形状を有し、少なくとも一方の電極表面に付着しており、また少なくとも一の前記の他半導体性材料と接触している。本発明は、電界効果型トランジスタのような有機電子素子にも関るものであり、該素子は電極と半導体の層から構成され、半導体の層は少なくとも一の正孔輸送半導体材料または少なくとも一の電子輸送半導体材料からなり、少なくとも一の半導体材料はポリマーブラシの形状を有し、少なくともひとつの電極表面に付着している。本発明は上記のような素子の製造方法にも関わるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリマー半導体や低分子系有機半導体を含む有機半導体材料が、エレクトロルミネッセンス素子、光電変換素子、電界効果型トランジスタ、または液晶素子等の様々な電子素子の作製に使われてきた。これらの材料を使うことにより素子の製造が簡単にかつ低コストとなり、また使いやすく、高性能であるという特徴を有しており、それが重要な強みとなっている。新規材料、加工方法または素子の幾何学的配置の研究によって、それらの素子の安定性、寿命や性能が大幅に改善されている。
【0003】
アノードとカソードの間に正孔および電子輸送性の有機および非有機材料からなる二相系ブレンドを挟み込んで構成される光電変換素子が、そのような素子の一例である。これらは高い外部量子効率(素子上に入射する光子に対するカソードで集められる電子数)を示してきた。半導体材料ブレンド中の電荷の光生成は材料のヘテロ接合における励起子解離、すなわちブレンドの一方の成分への電子による電荷移動またはもう一方の成分への正孔による電荷移動によって生じる。理想的には、光起電力素子は入射光の量が最大となるように、電荷の光生成が内部で起こる光吸収材料に妥当な厚みを持つべきである。高い外部量子効率を達成するため、活性材料(アクティブマテリアル)層は、電荷分離を促進するようにヘテロ接合が膜に広く分布し、また、電荷抽出を最大にするようにブレンドを構成する各成分中における各電極への直接的な輸送経路を有する、少なくとも2種の成分から構成されるべきである。
【0004】
2種の半導体ポリマーの混合物で形成される光電変換素子の性能は、ブレンドのモルフォロジーを制御することによって大きく向上することができる[Snaith et al., Nano Letters 2002,2(12),1353−1357; Halls et al, Advanced Materials 2000,12(7),498−502; および Arias et al,Macromolecules2001,34,6005−6013 を参照されたい]。これは素子の調整パラメータ(溶液や基板の温度、スピン速度、溶媒飽和雰囲気、または他の溶媒を使うことによって)によって達成される。しかし、これら素子中で起こる重大な損失のメカニズムはブレンドの各成分中における各電極への直接的な輸送経路がないために起こる電荷のトラッピングによるものである。有機光電変換素子に新しい構造設計が必要なことは明らかであり、それは電荷分離を促進するようにポリマーブレンド中に分布するヘテロ接合を最大にし、また電荷抽出を最大にするようにブレンドの各成分中の各電極への直接的な輸送経路を有するような構造である。
【0005】
最近では、共役ポリマーのような有機発光材料に非常に興味が持たれている。発光ポリマーは主鎖に沿って非局在化したπ電子系を有している。非局在化したπ電子系によりポリマーは半導体としての性質を持ち、ポリマー鎖に沿って高い移動度を持つ正または負の電荷キャリアを維持することができる。これら共役ポリマーの薄膜は、発光素子等の光学素子の作製に用いることができる。これらの素子は、通常の半導体材料を用いて作られた素子と比較して、大画面ディスプレイへの可能性や直流使用電圧が低いこと、また製造が簡易であることなど、非常に多くの利点を持っている。このタイプの素子に関しては、例えば、国際公開第90/13148号パンフレット、米国特許第5,512654号明細書や国際公開第95/06400号パンフレットに記載されている。
【0006】
効率がよく安定性に優れ、エネルギー消費が低いエレクトロルミネッセンス素子で商業上の要求を満たすレベルのものが、多くの企業や研究グループによって作られている(例えば、R.H.Friend et al.,Nature 1999,397,12 を参照されたい)。
【0007】
もっとも基本的には、有機エレクトロルミネッセンス素子は一般的に、正孔を注入する電極と電子を注入する電極との間に有機発光材料を配置して構成される。正孔注入電極(アノード)として典型的なのは、透明なインジウムスズ酸化物(ITO)をガラス基板にコーティングしたものである。電子注入電極(カソード)として一般的に使われる材料は、カルシウムやアルミニウムのような低仕事関数の金属である。
【0008】
有機発光層として一般的に使用される材料としては、ポリフェニレンビニレン(PPV)やその誘導体(例えば国際公開第90/13148号パンフレット参照)、ポリフルオレン誘導体(例えば、A.W.Grice et al,Appl.Phys.Lett.1998,73,629,国際公開第00/55927号パンフレット、および、Bernius et al.,Adv.Materials 2000,12(23),1737 を参照されたい)、ポリナフチレン誘導体やポリフェナントレン誘導体;アルミニウムキノリノール錯体(Alq3錯体:例えば、米国特許第4,539,507号明細書を参照されたい)や、キナクリドン、ルブレン、スチリル色素(例えば、特開昭63−264692号公報を参照されたい)のような有機低分子がある。有機発光層は2またはそれ以上の異なる発光性の有機材料の混合物であってもよいし、積層であってもよい。
【0009】
典型的な素子の構成は、国際公開第90/13148号パンフレット;米国特許第5,512,654号明細書; 国際公開第95/06400号パンフレット;R.F.Service, Science 1998,279, 1135;Wudl et al.,Appl.Phys.Lett. 1998,73,2561;J.Bharathan,Y.Yang,Appl.Phys.Lett. 1998,72,2660;T.R.Hebner et al,Appl.Phys.Lett.1998,72,519);国際公開第99/48160号パンフレット、に開示されている。この内容は、参考としてここに組み込まれている。
【0010】
正孔または電子輸送性の有機または非有機半導体材料からなる二相系ブレンドで構成されるエレクトロルミネッセンス素子は、高い外部量子効率を示してきた(入射されたフォトンの数に対する注入された電子数)。半導体材料からのフォトルミネッセンスは励起子の放射崩壊によって起こる。励起子は正孔と電子が材料内で再結合する際に形成される。電荷の再結合は正孔輸送半導体材料と電子輸送性半導体材料間との間のヘテロ接合部で効率よく起こることが示されている。理想的には、エレクトロルミネッセンス素子は、フォトルミネッセンスを起こすフォトルミネッセント材料が適当な厚みを持ち、使用される注入電荷の割合が最大化されるべきである。高い外部量子効率を達成するために、活性材料層は、電荷の再結合を促進するため膜全体に分布したヘテロ接合を有する少なくとも2種の成分からなることが望ましい。活性材料層は、再結合領域へ電荷が到達する割合を最大にするために、各電極から再結合領域に至る短く直接的な輸送経路を持つことが望ましい。漏れ電流を最小にするために、アノードは正孔輸送層によって、またカソードは電子輸送層によって覆われていることが望ましい。さらに、ブレンドの場合、活性層の中央にある再結合領域を各電極から離して、各電極近傍での励起子失活を減少させ、また、より高い駆動電圧を必要とする層構造中では空間電荷の発生を減少させるために、電極から再結合領域への正孔輸送と電子輸送のバランスがとれていることが望ましい。
【0011】
2種のポリマーの混合物により形成されたエレクトロルミネッセンス素子の性能は、ブレンドのモルフォロジーを制御することによって大幅に向上することがこれまで示されてきた(Berggren et al, Nature 1994,372,444 を参照されたい)。これらは素子の調整パラメータを変更することによって達成された(溶液や基板の温度、スピン速度、溶媒飽和雰囲気、または異なる溶媒を使用すること)。しかし、これらの素子中で起こる重大な損失メカニズムは漏れ電流によるものであり、これはブレンドの各成分中のカソードからアノードへのパーコレーション経路や、再結合サイトへの正孔の電荷輸送と電子の電荷輸送とのアンバランスや、ブレンド中に各電極から再結合領域へ至る短く直接的な経路がないことにより起こる。そのため、正孔または電子輸送の有機または無機の半導体材料からなるブレンド系を含む新規エレクトロルミネッセンス素子であって、その半導体材料間に大きな界面領域があることにより広い再結合領域を有するとともに、各電極から再結合領域へと至る短く直接的な輸送経路を有するものを作り出すことが望まれている。
【0012】
ポリマーブラシは高分子物理や化学の分野で、ポリマーの物理的性質を理解するために広く使われてきた。例えば、接着、摩擦、腐食抵抗やぬれ等の、表面の性質を制御するために使われてきた(例えば、K.R.Shull,J.Chem.Phys.1991,94(8),5723−5738 を参照されたい)。しかし、前記ポリマーブラシはこれまで光電変換素子やエレクトロルミネッセンス素子のような有機電子素子には使われてこなかった上に、当業者がこの目的でポリマーブラシが使用できると思い至るに足るような示唆もなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、少なくとも2種の半導体材料のブレンドであり、少なくともその一方が有機半導体材料であり、前記半導体材料間に大きな界面領域があり、各電極から前記界面に至る直接的な輸送経路を有する、新規の有機、または無機有機ハイブリッドの電子素子を提供することである。
【0014】
さらに、これらの新規有機電子素子の製造方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このように、本発明の第一の態様では、少なくとも2つの電極と、少なくともひとつの正孔輸送半導体材料と少なくともひとつの電子輸送半導体材料との混合物を含む半導体層とを含む有機電子素子であって、少なくともひとつの前記半導体材料が、少なくともひとつの前記電極表面に付着し且つ少なくともひとつの他の半導体材料と接触している、半導体ポリマーブラシの形状を有している有機電子素子を提供する。
【0016】
本発明の素子に用いられている半導体ポリマーブラシは、前記ポリマーブラシと、それと接触している他の半導体材料(または複数の半導体材料)との間に広い界面を有し、またポリマーブラシが付着している電極へ、または電極からの、電子または正孔の直接的な輸送経路を与えるので、優れた素子としての特性を有する。ポリマーブラシ膜を垂直方向に通る電流密度は、同じポリマーの通常のスピンコートによるアモルファス膜を通す場合と比較して30倍に達することがわかってきた。電極に付着している半導体ポリマーブラシと他の半導体材料との間の接触は、例えば、前記の第二の半導体材料を前記ポリマーブラシとインターカレーションすることによるもの、前記の第二の半導体材料を前記第一の半導体ポリマーブラシ間の隙間に半導体ポリマーブラシとして成長させ相互浸透した混合ポリマーネットワークを作ることによるもの、または前記第一のポリマーブラシの末端から第二の異なるモノマーを重合して、2つの半導体成分の間の直接の共有結合による2層構造を持ったブロック共重合ブラシによるものであってよい。
【0017】
本発明の有機電子素子は、少なくとも2つの電極と電荷(電子または正孔)を前記電極へまたは前記電極から移動する能力を有する半導体層を含むものであり、前記半導体層は少なくともひとつの正孔輸送半導体材料と少なくともひとつの電子輸送半導体材料の混合物で、そのうち少なくともひとつは有機半導体材料であるものを含む半導体材料である素子である。前記素子の適切な例には、エレクトロルミネッセンス素子、光電変換素子、電界効果型トランジスタ、液晶素子が含まれる。これらの中で、光電変換素子、エレクトロルミネッセンス素子は特に好ましい。
【0018】
電荷移動性をよくして、且つ他の半導体成分との間に広い界面を有するようにするため、本発明の素子の電極表面に付着したポリマーブラシはできるだけ長いことが望ましい。ポリマーブラシの平均長さは、1nmから1μmが好ましく、ポリマーブラシの平均長さが少なくとも40nmあるともっとも好ましい。
【0019】
本発明の素子の半導体ポリマーブラシは、電極材料の表面からブラシとして成長可能なまたは電極材料表面につなげることが可能な、どのような半導体ポリマーも含むものである。電極表面から半導体ポリマーブラシとして成長可能な、適当な半導体材料の例には以下が含まれる:ポリフェニレンビニレン(PPV)とその誘導体(例えば、国際公開第90/13148号パンフレットを参照)、ポリフルオレン誘導体(例えば、A.W.Grice,D.D.C.Bradley,M.T.Bernius,M.Inbasekaran,W.W.Wu,およびE.P.Woo,Appl.Phys.Lett.1998,73,629,国際公開第00/55927号パンフレットおよびBernius et al.,Adv.Materials,2000,12,No.23,1737、を参照されたい)、ポリナフチレン誘導体、ポリインデノフルオレン誘導体、ポリフェナントレニル誘導体、活性を有するペンダント型側鎖を有するポリアクリレート誘導体(例えば、M.Stolka,D.M.Pai,D.S.Renfer,およびJ.F.Yanus,Journal of Polymer Science Part A−Polymer Chemistry,1983,21,969;およびM.Tamada,H.Koshikawa,F.Hosi,T.Suwa,H.Usui,A.Kosaka,H.Sato,Polymer.1999,40(11),3061−3067)
【0020】
電極材料の表面から半導体ポリマーブラシとして成長可能なまたは電極材料につなげることが可能な、半導体ポリマー材料の詳細な例としては、化学式(I)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、または(XV)に示す以下の共役ユニットを含むポリマーを含む。これらのポリマーはホモポリマーであってもよいし、2つのまたはそれ以上の共役ユニットを含んでも良い、例えば交互ABコポリマーおよびターポリマー、ランダムコポリマーおよびランダムターポリマーであってもよい。
【0021】
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
ここで、
R1は化学式−(CH2)m−X−Yの基であって、
mは0または1から6の整数、
Xは上記で定義した化学式(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、または(XV)または、以下に定義した化学式(II)または(III)の基であって
【0022】
【化10】
【化11】
ここで、nは0、1または2、
pとqは同じかまたは異なり、各々が0または1から3の整数であって、
R34、R35、R36は各々同じかまたは異なっており、また、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、および、化学式−COR16(R16が、ヒドロキシ基、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基でそのアルキル部が以下に定義されるもの、ジアルキルアミノ基で各アルキル部が同じかまたは異なっているもので以下に定義されるもの、アラルキロキシ基でアラルキル部が以下に定義されるもの、ハロアルコキシ基で以下に定義されるアルコキシ基を含むものであって少なくともひとつのハロゲン原子で置換されているもの、からなるグループから選択されるもの)からなるグループから選択されるものであって、
【0023】
または、n、pまたはqは整数2であり、2つの基R34、R35またはR36が各々自らが結合している環内の炭素原子とともに、以下に定義するアリール基、または5から7個の環原子を有し、ひとつもしくはそれ以上の前記環原子が窒素、酸素、硫黄原子からなるグループから選択されたヘテロ原子であるヘテロ環基であり、また、
Yは水素原子、R37、NHR38およびNR38R39からなるグループから選択されるものであって、
R37は、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、および化学式−COR16で表される基であってR16は上記で定義したもの、からなるグループから選択され、
また、
R38とR39は各々同じかまたは異なっており、以下に定義するアリール基および以下に定義するアラルキル基からなるグループから選択され;
R2は水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基からなる基からなるグループから選択される;
R8からR15、R17からR33は各々同じかまたは異なり、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、および、化学式−COR16の基でR16は上記で定義したもの、
または、rまたはsは整数の2で、2つの基R32またはR33が各々自らが結合している環内の炭素原子とともに、5から7個の環原子を有し、ひとつもしくはそれ以上の前記環原子が窒素、酸素、硫黄原子からなるグループから選択されたヘテロ原子であるヘテロ環基を形成してもよく;
【0024】
各Z1、Z2およびZ3は同じか異なっており、O、S、SO、SO2、NR3、N+(R3’)(R3’’)、C(R4)(R5)、Si(R4’)(R5’)およびP(O)(OR6)からなるグループから選択され、R3、R3’およびR3’’は同じか異なっており、水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、および以下に定義するアルキル基であって少なくともひとつの化学式−N+(R7)3で示される基で置換されたものであって、各R7は同じか異なっており、水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するアリール基、からなるグループから選択され、R4、R5、R4’、R5’は同じか異なっており、水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、からなるグループから選択され、またはR4、R5はそれ自身が結合している炭素原子とともにカルボニル基となり、R6は水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、からなるグループから選択される;
【0025】
各X1、X2、X3およびX4は同じか異なっており、以下から選択される:
アリーレン基で1個または複数の環に6から14の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であり、環はニトロ基、シアノ基、アミノ基、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアルコキシ基からなるグループから選択された、少なくともひとつの置換基で任意に置換されていてもよく;
直鎖または分岐鎖のアルキレン基で1から6個の炭素原子を有するもの;
直鎖または分岐鎖のアルケニレン基で2から6個の炭素原子を有するもの;
および、
直鎖または分岐鎖のアルキニレン基で1から6個の炭素原子を有するもの;または、X1とX2がともに、および/またはX3およびX4はともに以下の化学式(V)の連結基を表すことができるものであって:
【0026】
X5はアリーレン基で1個または複数の環に6から14の炭素原子を有する芳香族炭化水素であり、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアルコキシ基からなるグループから選択された、少なくともひとつの置換基で任意に置換されていてもよく;
各e1、e2、f1、f2は同じか異なっており、0または整数の1から3であり;
各g、q1、q2、q3、q4は同じか異なっており、0、1または2であり、;
各h1、h2、j1、j2、j3、l1、l2、l3、l4、rおよびsは同じか異なっており、0または整数の1から4であり;
各i、k1、k2、o1、およびo2は同じか異なっており、0または整数の1から5であり;
また、
各p1、p2、p3およびp4は0または1であり;
上記アルキル基は直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、1から20個の炭素原子を有し、
上記ハロアルキル基は、上記で定義したアルキル基が、少なくともひとつのハロゲン原子で置換されたものであり;
上記アルコキシ基は直鎖または分岐鎖のアルコキシ基であり、1から20個の炭素原子を有し、
上記アルコキシアルキル基は、上記で定義したアルキル基が、少なくともひとつの上記で定義されたアルコキシ基で置換されたものであり;また、
上記アリール基とアラルキル基(アルキル部に1から20個の炭素原子を有する)のアリール部および上記アリロキシ基は芳香族炭化水素基で1個または複数の環に6から14の炭素原子を有しており、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、上記に定義するアルキル基、上記に定義するハロアルキル基、上記に定義するアルコキシアルキル基、上記に定義するアルコキシ基からなるグループから選択された、少なくともひとつの置換基で任意に置換されていてもよい。
【0027】
本発明の光電変換素子または有機エレクトロルミネッセンス素子に用いるのに特に好ましい半導体ポリマーブラシは、ホモポリマーブラシであって、化学式(I)、(VIII)、(IX)、(X)、(XIV)または(XV)の基を含むものであり、例としては、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)、PPV、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチル)ヘキシロキシーフェニレンービニレン)(“MEH−PPV”)、PPV誘導体で例えばジアルコキシおよびジアルキル誘導体等、ポリフルオレン誘導体、関連する共重合体;また、最も好ましいものとしては、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)、PPV、MEH−PPV、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−ヘキシルフルオレン))、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−((4−sec−ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン)(“TFB”)、およびポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−3,6−ベンゾチアジアゾール)(“F8BT”)が含まれる。
【0028】
本発明の素子のポリマーブラシと接触する他の一の(または複数の)半導体材料は、有機または無機の半導体材料であってよい。有機半導体材料は、半導体ポリマー材料、または半導体有機低分子材料であり、好ましくは半導体ポリマー材料である。無機半導体材料は、半導体ナノ粒子であってよく、特に、セレン化カドミウム、セレン化銅、セレン化亜鉛、硫化カドミウム、または硫化亜鉛の半導体ナノ結晶材料などである[例えば、Peng,Z.A.;Peng,X.G.J.Am.Chem.Soc.124,3343(2002);Murray,C.B. et al,J.Am.Chem.Soc.115,8706(1993);またはKatari,J.E.B.etal,J.Phys.Chem.98,4109(1994)を参照されたい]。セレン化カドミウムナノ結晶は、良好な電子受容体であり電子移動度が高いため、特に好ましい。
【0029】
半導体材料の選択は、有機電子素子の性質や、電極表面に付着した半導体ポリマーブラシの個性や性質等の要因によって変わる。このように、例えば、半導体ポリマーブラシが光電変換素子のアノードに付着している正孔輸送ポリマーブラシであるとしたら、前記ポリマーブラシと接触している他の一の(または複数の)半導体材料はカソードに至る電子の経路を与えるために電子輸送性でなくてはならない。
【0030】
半導体ポリマーブラシに接触する他の半導体材料として好ましいものの例としては、以下が含まれる:ポリフェニレンビニレン(PPV)とその誘導体[例えば、国際公開第90/13148号パンフレット]、ポリフルオレン誘導体[例えば、A.W.Grice,D.D.C.Bradley,M.T.Bemius,M.Inbasekaran,W.W.Wu、またはE.P.Woo,Appl.Phys.Lett.1998,73,629,国際公開第00/55927号パンフレット、Bemius et al.,Adv.Materials,2000,12,No.23,1737]、ポリナフチレン誘導体、ポリインデノフルオレン誘導体およびポリフェナントレニル誘導体等の共役ポリマー;アルミニウムキノリノール錯体(Alq3錯体、例えばUS−A−4,539,507を参照)、ペリレンとその誘導体、遷移金属錯体、TMHDやキナクリドン等の有機配位子を有するランタノイドおよびアクチノイド(国際公開第00/26323号パンフレット参照)または、ルブレン、スチリル色素(例えば、特開昭63−264692参照)等の有機低分子;この内容は、参考としてここに組み込まれている;および半導体セレン化カドミウムナノ結晶(例えば、Peng,Z.A.;Peng,X.G.J.Am.Chem.Soc.2002,124,3343−を参照されたい。この内容は、参考としてここに組み込まれている。)
【0031】
半導体ポリマーブラシに接触する半導体ポリマー材料として好ましいものの詳細な例としては、化学式(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)または上記で定義した(XV)で表される共役ユニットを含むポリマーが含まれる。これらのポリマーは、ホモポリマーであってもよいし、または2種またはそれ以上の異なる共役ユニットを含んでいてもよい、たとえば交互ABコポリマーやターポリマー、ランダムコポリマーやランダムターポリマーである。
【0032】
本発明の光電変換素子やエレクトロルミネッセンス素子に用いるのに特に好ましい半導体ポリマーとしては、化学式(VIII)、(IX)、(X)、(XIV)または(XV)の基を含むホモポリマー、コポリマー、ターポリマーが含まれ、例としてはポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)、PPV、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチル)ヘキシロキシーフェニレンービニレン)(“MEH−PPV”)、PPV誘導体で例えばジアルコキシおよびジアルキル誘導体等、ポリフルオレン誘導体および関連する共重合体;また、最も好ましいものとしては、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)、PPV、MEH−PPV、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−ヘキシルフルオレン))、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−((4−sec−ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン)(“TFB”)、およびポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−3,6−ベンゾチアジアゾール)(“F8BT”)が含まれる。最も好ましい半導体有機低分子には、Alq3錯体、ペリレンとその誘導体が含まれる。特に好ましい半導体無機材料は、半導体セレン化カドミウムナノ結晶である。
【0033】
最も基本的なところで、有機光電変換素子や有機エレクトロルミネッセンス素子のような有機電子素子は、一般的に、前記素子のひとつの電極に付着した、少なくとももうひとつの半導体材料に接触する半導体ポリマーブラシを含み、一方の材料は正孔輸送性であり、もう一方の材料が電子輸送性であるものを含む。本発明の有機光電変換素子や有機エレクトロルミネッセンス素子においては、アノードは一般的に透明なインジウムスズ酸化物(ITO)コートガラス基板である。ジルコニウムをドープしたインジウム酸化物(Applied Physics Letters,78(8)1050(2001),Kim,H et al)や、アルミニウムをドープした亜鉛酸化物(Applied Physics Letters,76(3)259(2000),Kim H et al)の膜もアノードとして使われてきた。アノード材料の他の選択肢として試されてきたものとしては、窒化チタン[Advanced Materials,11(9)727(1999),Adamovich V, et al.];Ga−In−Sn−OとZn−In−Sn−Oを含む、高い仕事関数を有する透明な伝導性の酸化物[Advanced Materials,13(19)1476(2001),Cui,J., et al]; ポリスチレンスルホン酸をドープしたポリアニリン等のポリマー材料[Applied Physics Letters,70(16)2067(1997),Carter S. A et al,およびApplied Physics Letters,64(10)1245(1994)Yang Y et al.].
【0034】
カソードは、有機エレクトロルミネッセンス素子や光電変換素子に一般的にカソードとして使用される材料であれば、どれからでも形成できる可能性がある。適当な材料の例としては、カリウム、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、ランタン、セリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、銀、インジウム、スズ、亜鉛、ジルコニウム、またそれらの金属を含む二元、三元合金が含まれる。これらの中では、アルミニウムおよびカルシウムの連続層、およびアルミニウム−カルシウム合金で1から20重量%のカルシウムを含むものが好ましい。
【0035】
エレクトロルミネッセンス素子の一般的な素子構造は、例えば国際公開第90/13148号パンフレット;米国特許第5,512,654号明細書;国際公開第95/06400号パンフレット;R.F.Service,Science 1998,279,1135;Wudl et al.,Appl.Phys.Lett.1998,73,2561;J.Bharathan,Y.Yang,Appl.Phys.Lett.1998,72,2660;T.R.Hebner et al,Appl.Phys.Lett.1998,72,519;および、国際公開第99/48160号パンフレット;に開示されており、この内容は、参考としてここに組み込まれている。光電変換素子の一般的な素子構造は、例えば、R.H.Friend atal., Nature,1998,395,257;C.J.Brabec et al.,App.Phys.Lett.2000,78,841,A.C.Arias et al.,Macromolecules,2001,34,6005;H.J.Snaith et al.,Nano.Lett.2002,2,1353;A.C.Arias et al.,Appl.Phys.Lett.,2002,80,1695;および、J.R.Heflin et al.,Appl.Phys.Lett.,2002,4607に開示されており、この内容は、参考としてここに組み込まれている。
【0036】
本発明の素子のアノード上に、ポリ(スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)、N,N’−ジフェニル−N,N’−(2−ナフチル)−(1,1’−フェニル)−4,4’−ジアミン(NBP)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)等の高い仕事関数を有する有機材料を析出させることは、または本発明の素子のアノード上に、酸化アルミニウム等の高い仕事関数を有する無機材料を析出させることで、正孔輸送層が提供され、それは例えば本発明のエレクトロルミネッセンス素子の発光層への正孔の注入を促進する。これらの層は、エレクトロルミネッセンス素子の発光層に注入される正孔の数を増やすことにおいて、および本発明の光電変換素子のアノードで集められる正孔の数を増やすことにおいて、および/または本発明の光電変換素子のアノードで集められる電子の数を減らすことにおいて効果的である。
【0037】
素子によっては、カソードと半導体層との間にさらに電子輸送層が与えられてもよい(たとえば、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属または欧州特許出願公開第1009045号明細書に開示されたように、ランタノイド元素で4eVまでの仕事関数を有するもの、を含む適当な化合物)。これらは、例えば、本発明のエレクトロルミネッセンス素子の発光層への電子の注入を促進するので、電子注入層から安定的に電子を輸送し、また正孔を遮断する。特に好ましいのは、酸化ストロンチウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化リチウム、酸化ルビジウム、酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化セシウムである。
【0038】
本発明の素子で、半導体ポリマーブラシは前記素子の電極の少なくとも一方に付着している。このことによって、我々は、半導体ポリマーブラシに以下のどれかのような意味をもたせる:
(i)前記電極表面の原子に直接結合している;
(ii)前記電極にコーティングされた正孔輸送層表面または電子輸送層内の原子に直接結合している;または、
(ii)自己組織化単分子膜(SAM)内の分子末端に結合している、例えば前記電極または前記正孔輸送材料または電子輸送材料の表面に吸着または結合しているチオールまたはシロキサン分子(例えば、Jones et al,Langmuir 2002, 18,1265−1269を参照)
【0039】
本発明の光電変換素子およびエレクトロルミネッセンス素子は一般的に、基板(例えば、ガラス)、アノード、前記アノード表面に付着した半導体ポリマーブラシ、さらに前記ポリマーブラシにインターカレートされた一の(または複数の)半導体材料、さらにその半導体材料の最上部にカソード、を積層した構成を有していてもよい。他の方法として、素子は反対方向に積層した構造として、基板、カソード、前記カソード表面に付着した半導体ポリマーブラシ、さらに前記ポリマーブラシにインターカレートされた一の(または複数の)半導体材料、さらに半導体材料の最上部にアノードを積層した構造もとりうる。
【0040】
本発明の別の局面としては、少なくとも2つの電極と、少なくとも一の正孔輸送性半導体材料と少なくとも一の電子輸送性半導体材料の混合物を含む半導体層を含む有機電子素子の製造方法を提供している、
前記製造方法は以下を含む:
(a)一方の電極を形成するための材料で基板をコーティング;
(b)他に選択可能な方法としては、このように形成された電極を、開始剤基で末端キャッピングされた自己組織化単分子膜、またはフリーラジカルを発生することができる自己組織化単分子膜でコーティング;
(c)ステップ(b)で作製された自己組織化単分子膜で任意にコートされた電極をモノマーの溶液に接触させるが、これは前記モノマー単位を含むポリマーブラシを前記電極表面から成長させるのに適当な条件下で行う;
(d)ステップ(c)の生成物を、ポリマーブラシが少なくとも一のさらなる半導体材料と接触している生成物を作るような方法で処理する;
(e)ステップ(d)の生成物表面の最上層にさらなる電極を形成させるために材料をコーティング。
【0041】
本発明の有機光電変換素子および有機エレクトロルミネッセンス素子は、一般的には最初にアノード材料を基板(例えば、ガラス)に、通常はスパッタリングや蒸着によりコーティングすることによって製造される。素子は、半透明アノード、例えばインジウムスズ酸化物で製作されてもよい。他の方法としては、例えばチオールやシロキサン分子といった自己組織化単分子膜(SAM)を前記アノード上に析出させる。SAM分子はSAM上部表面に存在する開始剤基(例えば、臭素原子)で末端キャッピングされ(図1参照)、半導体ポリマーブラシの成長の起点となるモノマーユニットと反応することが可能である。他に選択可能な方法としては、SAMの分子は開始剤基で末端キャッピングされていない形態であってもよく、代わりに他の処理によってフリーラジカルを発生して半導体ポリマーブラシの成長の起点となるモノマーユニットと反応することが可能である。そのようなSAMの例としては、2−2’−アゾ−ビス−イソブチリルニトリル(AIBN)があり、さらなる処理の例としては加熱がある。偏光解析法で測定されたそのSAMの一般的な厚さは1から10nmである。
【0042】
モノマー溶液をアノード上(SAMでコートされている場合もある)に沈殿させ、結果としてアノード自身の表面に存在する原子との反応による開始、SAM末端にある開始剤基との反応による開始、またはSAM末端におけるフリーラジカルとの反応による開始の後に、アノード表面に付着した半導体ポリマーブラシを与えるようなモノマーの重合が起こる。これらのブラシは長さにして1nmから1ミクロンを超える(図2参照)。ポリマーブラシはモノマーの表面からの重合開始によって生成される。表面からポリマーブラシを成長させるための“リビング”重合技術として適当な例としては、カチオン重合(Jordan et al,J.Am.Chem.Soc.1998,120,243)、アニオン重合(Jordan et al,J.Am.Chem.Soc.1999,121,1016)、開環重合(Weck et al,J.Am.Chem.Soc.1999,121,4088)、窒素酸化物を用いた重合(Husemann et al,Macromolecules 1999,32,1424)、原子移動ラジカル重合(ATRP)(HuangおよびWirth, Macromolecules 1999,32,1694)が含まれる。
【0043】
ポリマーブラシが付着する基板は、上部にコートされた少なくともひとつの他の半導体成分を有する。コーティング法は、そのようなコーティング方法として適当なものであれば何でもよく、一般的な例としては、スピンコーティング、ブレードコーティング、ドロップキャスティング、またはインクジェット印刷が挙げられる。結果として得られる構造は、上部にコーティングされたさらなる半導体材料(または複数の半導体材料)によってインターカレートされた半導体ポリマーブラシを有するものである。
【0044】
その後、カルシウム、アルミニウム、またはマグネシウム等のカソード材料が活性層の上部にコートされる。一般的には、蒸着プロセスまたはスパッタリングプロセスのどちらも用いられる。
【0045】
結果として得られる活性半導体層の構造は、ひとつの材料(ポリマーブラシ)が主にアノードと接触するものである。この材料は、少なくともひとつの異なる活性半導体成分(または複数の成分)であって主にカソードに接触している材料と、相互に浸透しあう。
【0046】
本発明の光電変換素子において、この構造は電荷分離を促進するための分布したヘテロ接合と、電荷の抽出を最大限にするための活性層の各成分内部に双方の電極へ至る直接的な輸送経路とを与える。本発明のエレクトロルミネッセンス素子においては、この構造は2つの成分間に電荷の再結合を促進する広い界面領域と、活性層の各成分内部に再結合領域への短くて直接的な輸送経路とを与える。また、正孔輸送材料でアノードをキャッピングする方法、および電子輸送材料でカソードをキャッピングして漏れ電流を最小にする方法も、提供する。
【0047】
選択可能な他の方法としては、ポリ(スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)、N,N’−ジフェニル−N,N’−(2−ナフチル)−(1,1’−フェニル)−4,4’−ジアミン(NBP)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)等の高い仕事関数を有する有機材料を本発明の素子のアノード上に析出させる、または“正孔輸送”層を与える酸化アルミニウム等の、高い仕事関数を有する無機材料を本発明の素子のアノードに析出させてもよい。その後、半導体ポリマーブラシを前記正孔輸送層表面から成長させる。正孔輸送層表面は、前記表面上にポリマーブラシを形成するモノマーユニットと反応させることができるような反応性基を生成するため、またはその上にSAMを形成するよう処理ができるような反応性基を生成するため、最初に処理しておく必要があるかもしれない。PEDOT/PSSの場合、例えば、その後末端キャッピングされた開始剤基を有するシロキサン分子と反応できるようにするため、ダングリング水酸基を与えるよう酸素プラズマで処理してもよい。
【0048】
他の選択肢である、反対に積層された構成においては、基板がまずカソード材料でコートされ、半導体ポリマーブラシが、アノードにポリマーブラシを付着させる上記方法と同様に、前記カソード表面に付着され、さらなる一の半導体材料(または複数の半導体材料)が前記ポリマーブラシにインターカレートされ、その半導体材料の最上部にアノードを析出させる。
【0049】
他の方法として、活性層は複数のポリマーブラシを含むものでもよい。ポリマーブラシの混合物は電極表面から成長させるか、または、まずあるモノマーを重合してその後第二のモノマーを重合させることによる自己組織化単分子膜であってもよい。これにより、分子レベルで混合したブラシが得られる。もし、双方のブラシが異なる官能基を有するとき、例えばポリアクリレートの主鎖にトリアリールアミンのペンダント側鎖を有する場合やポリアクリレートの主鎖にペリレンのペンダント側鎖を有する場合では密に接触した相互浸透ネットワークが得られるであろうし、これはブラシの第一層を通じてパーコレートする第二層を不要とする(図4参照)。
【0050】
もうひとつの方法としては、電極表面または自己組織化単分子膜からあるモノマーを重合させ、次に最初のポリマーブラシの末端から第二のモノマーを重合させることによって、ブロック共重合体ブラシを調製後の基板から成長させてもよい。もしも下層のブロックが正孔伝導性で上部のブロックが電子伝導性ならば、結果的に2種の成分の間で分子が接触している二層構造となる(図5参照)。エレクトロルミネッセンス素子では、正孔と電子が各ブロック共重合体のヘテロ接合部で同時に出会うように、ポリマー分子鎖内の移動度に関して各ブロックの長さを調整してもよい。
【0051】
共重合は、異なるポリマーからなる長いポリマーブラシを成長させるのに用いてもよい。半導体材料層は、一方の電荷種を伝導する共重合ポリマーブラシを有することとは別に、図3に示されるものと同様の構造を得るためブラシ層を通じて浸透されてもよい。光電変換素子において、もしブラシ内部の種々のポリマーが太陽のスペクトルに関してある範囲の吸収スペクトルを有していたならば、最終的な素子は太陽のスペクトルの範囲にわたってフォトンを電荷に変換するということにおいて、より効率のよいものでありうる。エレクトロルミネッセンス素子においては、発光色は、スペクトルの異なる部分で発光する各ブロックに種々の長さを与えることにより調整可能である。もしも移動度の電場依存性が電子輸送成分と正孔輸送成分との間で大きく異なるならば、再結合領域は、動作電圧の変化に応じて素子内で移動する可能性がある。このことは、発光色が動作電圧の変化に応じて変化する結果を生じる。
【0052】
本発明の他の側面としては、少なくとも2つの電極と、少なくともひとつの正孔輸送半導体材料または少なくともひとつの電子輸送性材料を含む半導体層を含む有機電子素子であって、少なくともひとつの前記半導体材料が、少なくともひとつの前記電極の表面に付着した半導体ポリマーブラシを形成しているものを提供していることである。この観点に従うと、その素子は望ましくは電界効果型トランジスタである。
【0053】
更に別の観点においては、少なくとも2つの電極と少なくとも一の正孔輸送性半導体材料または少なくとも一の電子輸送性半導体材料を含む半導体層を含む有機電子素子の製造方法を提供している。前記製造方法は以下を含む:
(a)一方の電極を形成するための材料で基板をコーティング;
(b)任意に選択可能な方法で、しかし好ましいものは、このように形成された電極を、電子絶縁材料でコーティング;
(c)他に選択可能な方法としては、ステップ(a)で形成された、またはそれに続く任意のステップ(b)で形成された電極を、開始剤基で末端キャッピングされた自己組織化単分子膜で、またはフリーラジカルを発生することができる自己組織化単分子膜でコーティング;
(d)ステップ(c)で作製された、自己組織化単分子膜で任意にコートされた電極をモノマーの溶液に接触させ、これは前記モノマーユニットを含むポリマーブラシを前記電極表面から成長させるのに適当な条件下で行い;
(e)ステップ(d)の生成物表面の最上部にさらなる電極が形成するように材料をコーティング。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
実施例1
モノマー調整:4−ジフェニルアミノベンジルアクリレートモノマーの合成
4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド(25g、92mmol)の無水THF(100mL)溶液を、無水THF(80ml)にLiAlH4(5g、132mmol)を加えたモル過剰溶液に、室温、窒素雰囲気下で滴下して加えた。室温、窒素雰囲気下で3時間攪拌後、反応混合物に脱イオン水を加えて急冷した。反応混合物をろ過し、ロータリーエバポレーターを用いてTHF層を留去した。水中の固形物をDCMに溶解し、有機層を回収した。水層はDCMで抽出し、有機層を回収し合わせて塩水で洗浄した。有機層を回収して、無水MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を留去して固形の生成物である、4−ジフェニルアミノベンジルアルコール(24.5g、89mmol、収量97%)を得た。
【0055】
塩化アクリロイル(7.2ml、89mmol)の蒸留DCM(20ml)溶液を、前記4−ジフェニルアミノベンジルアルコール(24g、87mmol)とトリエチルアミン(使用前にKOH上で蒸留した)(13ml、93mmol)の混合物を蒸留DCM(200ml)に加えたものに、室温、窒素雰囲気下で滴下した。18時間攪拌した後、室温、窒素雰囲気下で反応混合物を0.01MHCl(水溶液)を加えて急冷した。有機層を回収し水層をDCMで抽出した。有機層を回収し、合わせて、飽和NaHCO3溶液(水溶液)で、さらに続けて、水、塩水で洗浄した。有機層を回収し、無水MgSO4上で乾燥し、ろ過した。溶液を濃縮するため溶媒をある程度留去し、シリカプラグ中を通した。溶媒を完全に留去して黄色い固体の生成物、4−ジフェニルアミノベンジルアクリレートモノマー(27.5g、84mmol、収量96%)を得た。
【0056】
実施例2
シラン開始剤の合成− 2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸 3−トリクロロシラニル−プロピルエステルの合成
アリルアルコール(1.02mL、15mmol)とトリエチルアミン(2.51ml、18mmol)のDCM(10ml)溶液を攪拌しながら、2−ブロモイソブチリルブロミド(1.85ml、15mmol)を、0℃、窒素雰囲気下で滴下した。溶液を0℃で1時間攪拌してから、温度を室温まで上げた後、反応混合物をさらに3時間攪拌し、これらを全て窒素雰囲気下で行った。沈殿物をろ過で除き、有機層を飽和NH4Clで洗浄した後、水で洗浄した。有機層を無水MgSO4で乾燥させた後ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。生成物は、溶離液として9:1 ヘキサン:エチルアセテートを用いてカラムクロマトグラフィー(シリカカラム)で精製した。溶媒を留去して、透明の液体生成物である、プロパ−2−エニル−2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸(prop-2-enyl-2-bromo-2-methyl propionate、1.72g、収量55%)を得た。
【0057】
乾燥した窒素雰囲気下で前記プロパ−2−エニル−2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸(prop-2-enyl-2-bromo-2-methyl propionate、0.97g)とトリクロロシラン(15ml)を乾いたフラスコに移した。ヘキサクロロ白金酸(21mg)のエタノールと1,2−ジメトキシエタン(混合物で3.75ml)の1:1(v/v)混合溶液を反応混合物に滴下した。反応物を、光を遮った環境で、乾燥窒素雰囲気下で18時間攪拌した。無水トルエン(5ml)を加え、減圧下でフリーのトリクロロシランを除去した。無水DCM(20ml)を加え、残りのトリクロロシランを減圧下で除去した。得られた生成物は、クーゲルロール(Kugelrohr)蒸留(200℃、約11mmHg)により蒸留して、透明な液体である表題の生成物2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸 3−トリクロロシラニル−プロピルエステル(0.42g、収量約26%)を得た。
【0058】
実施例3
基板の調整: SAMを有するITOコート基板、およびSAMを有するPEDOT/PSSを持つITOコート基板の調整
(a)ITO
最初に、ITOで前もってコーティングされたガラス(Donnelly,Inc.より購入)をアセトン中で超音波洗浄(10分間)し、その後イソプロパノール中で超音波洗浄(10分間)した。基板は、5:1:1 水:アンモニア:過酸化水素 の混合物で1時間、70℃で処理することにより親水的になった[代わりに、酸素プラズマで処理しても基板を親水性にすることができる(100Wで約30秒)]。最後に、基板を清浄にし、乾燥し、水で洗浄し、窒素ガンで乾燥し100℃のオーブンで2−4時間焼いた。
【0059】
上記親水性ITOコート基板上の、実施例2で調整した開始剤の自己組織化単分子膜(SAM)は、前記開始剤を超臨界CO2内で反応させるか、または前記開始剤のトルエン溶液中での反応か、どちらかによって調製された。
【0060】
(i)
超臨界CO2:上記で調製されたITOスライドを、10mlステンレス鋼高圧容器に入れた。前記実施例2で調製されたシラン開始剤(約2マイクロリットル)を前記容器に入れ、容器をCO2で満たして(1000−3000psi)、必要な温度に加熱した(20−40℃)。反応後、基板は容器をCO2で満たしてすすぎ、シロキサン分子のSAMを有するITOコート基板は使用時までデシケータで保管した。
【0061】
(ii)
開始剤溶液を使用:前記実施例2で調製したシラン開始剤の無水トルエン(15ml)溶液1mMを作り、ミリポアフィルタを通して前記ITOスライドを入れた皿内に入れた。必要に応じて、スライドを完全に覆うためにトルエンを加えた。他に選択可能な方法として、その後トリエチルアミン(25−50マイクロリットル)を皿に加えた。皿に覆いをして1時間から10日の間室温で放置した。その後、スライドを溶液から出し、連続してトルエンで洗浄、トルエン中で超音波洗浄、アセトンで洗浄、エタノールで洗浄し、窒素流れを用いて乾燥した。シロキサン分子のSAMを有するITOコート基板は使用時まで窒素下で保存した。
【0062】
(b)PEDOT/PSSでコートされたITO
最初に、ITOコートガラス基板を清浄にし、上記3(a)のように酸素プラズマ処理した。このようにして得られたITOコート基板を、PEDOT/PSS水溶液を用いて4000rpmで60秒スピンコートした(溶液中のPEDOT:PSSの比は1:16)。このようにして得られたPEDOT/PSS被覆ITOコート基板を、120℃で1時間焼成した。最後に、PEDOT/PSS表面にダングリング水酸基を付与するために、PEDOT/PSS表面を100Wで30秒間酸素プラズマ処理した。
【0063】
ポリジメチルシロキサン(PDMS)スタンプは、上記実施例2で作られた開始剤のヘキサン溶液で濡らした。前記の濡れたPDMSスタンプをPEDOT/PSS表面に大気雰囲気下で1分間そっと押し付けて、PEDOT/PSS表面上のダングリング水酸基とシロキサン開始剤との間に共有結合を生じさせ、目的物を得た。別の手段として、ITOコート基板のところで記述したのと同様に、シラン開始剤の希薄溶液に基板を浸してSAMを析出させることも可能であると考えられる。
【0064】
(c)二酸化ケイ素でコートされたシリコン基板
最初に、シリコン基板を清浄にし、上記3(a)のように酸素プラズマ処理してシリコン基板の最上に二酸化ケイ素の薄膜を付与した。
【0065】
ポリジメチルシロキサン(PDMS)スタンプを上記実施例2で作成した開始剤のヘキサン溶液に浸した。濡れたPDMSスタンプを二酸化ケイ素表面に大気雰囲気下で1分間そっと押し付けて、二酸化ケイ素表面とシロキサン開始剤との間に共有結合を生じさせ、目的物を得た。別の手段として、ITOコート基板のところで記述したのと同様に、シラン開始剤の希薄溶液に基板を浸してSAMを析出させることも可能であると考えられる。
【0066】
実施例4
ポリマーブラシの成長:前処理された基板上におけるポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシの成長
上記実施例1で合成した4−ジフェニルアミノベンジルアクリレートモノマーを室温で(一般的にはモノマーを完全に溶解させるには、すなわち90℃に加熱する必要はあるが)溶媒に溶かし(通常はDMF)、濃度が約1g/mlの溶液を得た。配位子(通常N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(N,N,N',N',N"-pentamethyldiethylenetriamine、PMDTA))を加え、次に阻害剤(通常銅(II)ブロミド)を加えた。次に、溶液に窒素をバブリングして、溶液中の空気を窒素に置換した。その後触媒(通常銅(I)ブロミドを使用する)を、上記のようにして得た溶液に加えた。
【0067】
別途、上記実施例3で調製したSAMを有する基板のひとつをシュレンク・チューブ中に配置して、チューブ中の空気を排気/充填を繰り返すことにより窒素で置き換えた。触媒を添加後出来るだけすぐに、上記で調製された前記重合溶液を、基板を含んだままシュレンク・チューブに移した。このようにして得られた重合反応混合物を、窒素雰囲気下で適当な温度でしばらく反応させる(一般的には90℃で90分)。その後、ジクロロメタンで洗浄しながらチューブから基板を取り出し、溶媒(例えば、ジクロロメタン)で洗浄して、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシでコートされた目的の基板を得た。
【0068】
実施例5
ブラシを第二の成分でコーティング:実施例4で調整した基板をペリレンまたはセレン化カドミウムのナノ結晶でコーティング
(a)第一の手法:ペリレンによるドロップキャスティング法
ペリレンをパラキシレン(ペリレンには貧溶媒であるが、ブラシには良溶媒)に溶解させて、溶液が過飽和状態であり全てのペリレンが溶解していない状態にした。その後溶液を70℃で1時間、全てのペリレンが溶解するまで加熱した。上記実施例4で調製した基板表面上のブラシが熱溶液にコートされると、ブラシは膨潤した(溶媒の蒸発速度を遅くするため飽和雰囲気下で行ってもよい)。溶液の温度が下がり、時間がたつと(例えば30分)、ペリレンは溶液から降下し始めてブラシに凝集し、統合されたネットワークを形成して、ペリレン成分が生成物のポリマーブラシにインターカレートされた目的物が生成した。このドロップキャスト法に用いられた溶液の体積は、目的とする膜厚によって異なる。一般的な膜厚である200nmは、濃度6g/リットルのパラキシレン溶液の場合、前記溶液0.15mlを12mm×12mmの正方形の基板上に沈積させることによって達成された。代わりに、目的とする厚さの膜を形成するのに必要な量より多くの溶液や、より高濃度の溶液を使用することも有利な手段となりうる。後者の場合、余剰の溶媒を除くために指定された時間(一般的には、およそ10分程度)が経過した後、基板をスピニングしてもよい。
【0069】
(b)第二の方法:ペリレンによるスピンコーティング法
これはペリレンとブラシの双方に共通した溶媒からのスピンコーティングを含むものである。最初に、ペリレンをクロロホルム、パラキシレンまたはトルエン等の適当な溶媒に溶解させた。実施例4で調製した基板のブラシをこのように得られた溶液でコートし、目的の厚さの膜を得るために、基板を前もって決められた速度でスピンさせた。例えば、濃度25gペリレン/リットルのペリレンのクロロホルム溶液は、約100nmの膜厚を得るために1500rpmで1秒間スピンした。ペリレンをブラシに浸透させるために、スピニング前に、溶液をある程度の時間ブラシ上に置いておいてもよい。もしペリレンがブラシより溶媒と親和性が高ければ、最上のペリレン層の下にブラシが折りたたまれた二層を形成すると思われる(これは利点を有しない)。しかし、もしペリレンとブラシとの親和性が高ければ、ペリレンがブラシに凝集した統合されたネットワークを形成すると考えられる。これを実施するために、例えばメタノールを1%含むクロロホルムのような混合溶媒を使うのも良い方法であると思われる。
【0070】
(c)第三の方法:ペリレンを用いた他のスピンコーティング法
実施例4で調製された基板のブラシはペリレンのクロロホルムまたはパラキシレン溶液でコートした。すぐに短時間、一般的には1秒間、スピンした。これで、十分均一なフィルムが作成可能である。しかし、全ての溶媒が蒸発してはいない。基板は、クロロホルムまたはパラキシレンの飽和雰囲気下で、ペリレンとブラシが統合されたネットワークを形成する時間があるようにゆっくりと乾燥させた。
【0071】
(d)第四の方法:セレン化カドミウムナノ結晶を用いたスピンコーティング法
セレン化カドミウム結晶は、Peng, Z. A.; Peng, X. G. J. Am. Chem. Soc. 124,3343− (2002)に記載の手順に従って調整された。結晶は直径2.6nmであることが、吸収スペクトルから見積もられた。実施例4で調製された基板のブラシは、これらナノ結晶の溶液(25g/l 1:10 ピリジン:クロロホルム)にクロロホルム溶媒飽和雰囲気下で30分間浸した。浸漬後、基板を注意深くスピンコーターに配置し、余剰な溶媒をスピンで除去した。結果として得られた処理後の基板を、ピリジンを完全に除去するために150℃で30分間アニールした。
【0072】
(e)第五の方法:セレン化カドミウムのドロップキャスティング法
実施例4で調製された基板のブラシを、上記実施例5(d)(25g/l 1:10 ピリジン:クロロホルム)に記載したように調製したセレン化カドミウム結晶の溶液に、クロロホルム溶媒飽和雰囲気下で30分間浸した。浸漬後、溶媒を蒸発させると、ブラシ基板上にセレン化カドミウム結晶の厚い被覆が残った。調整された基板は、その後ピリジンを完全に除去するために150℃で30分間アニールした。第四の方法と比較して第五の方法の利点は、ブラシ内により厚いナノ結晶層を得ることが可能なことである。
【0073】
(f)第六の方法:セレン化カドミウムを用いた電気メッキ
実施例4で調製された基板のブラシを、上記実施例5(d)(25g/l 1:10 ピリジン:クロロホルム)に記載ように調製したセレン化カドミウム結晶の溶液に浸した。さらなる電極(カソード)をアノード上の溶液に接触するよう配置した。ブラシコートされた基板に垂直方向に溶液を通じて電場を誘起するため、カソードに電圧を与えた。電場の関数を2倍で、電場により実施例4で調製された基板のブラシは、アノード表面から垂直方向に引き伸ばされ、さらに電場によってセレン化カドミウム結晶がアノード方向に移動し、ポリマーブラシ間の空間に充填される。指定の時間後、すなわち5分間、電場を切り、カソードを除き、余剰の溶媒はスピンコーティングによってブラシの最上部から除いた。
【0074】
実施例6:カソードの析出:実施例5で生成された第二成分層のカソード材料によるコーティング
カソードは、実施例5の生成物上に、高い真空度である10−6ミリバールの条件下で熱的蒸発法により蒸着した。カソードに使われた材料は、アルミニウム、マグネシウム、またはカルシウムのどれかであった。
【0075】
上記実施例3(b)に従って作られたPEDOT/PSSで覆われたITOコートガラス基板上に上記実施例2で作った開始剤のSAMと、実施例4に従って前記SAM開始剤から成長させたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシを有し、上記実施例5(b)に従ってペリレンでコートされその後上記実施例6に従ってアルミニウムでコートされたものを有する、実施例6に従って作製された光起電性素子を、素子の特性を調べるためにテストした。ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)とペリレンの吸収スペクトルを図6に示し、本発明のブラシ素子と、これに相当する、既存技術による素子でポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)とペリレン(H.J.Snaith et al.,Nano.Lett.,2002,2,12,に記載された手順に従って作製された、ただし前記参考文献におけるパラキシレンの代わりに、溶媒としてクロロホルムが使用されていることを除く)のブレンドを含む半導体層を有する素子の外部量子効率(EQEスペクトル)を図7に、また、シリコン基板から成長したブラシの完全被覆、ITO基板上に成長したブラシ、ITO基板のAFM像を図8に示した。
【0076】
EQEスペクトルからわかるように、本発明の素子はピーク波長における効率が2%であった。ブラシ膜のAFM像から、ブラシによる被覆はそれほど厚くなく、第二成分の適用を最適化するためにさらなる検討が必要である。しかし、これらの結果から、半導体ポリマーブラシを有する本発明の素子は、ブレンド素子の性質を最大にするという意味で半導体ポリマーブラシの使用を大変有望なものとするような、大変興味深い性能特性を示すことが明らかである。
【0077】
上記実施例3に従って作製したITOコートガラス基板上に上記実施例2で作製した開始剤のSAM、実施例4に従って前記SAM開始剤から成長させたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ、スピンコート(4000rpm)されたPEDOT:PSSカソード(厚さ約40nm)と接触面として蒸着された金フィルム(厚さ約100nm)を有するダイオードを作製し、素子としての性質をテストした。さらに、ITOコートガラス基板上にスピンコートされたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)膜、スピンコートされた(4000rpm)PEDOT:PSSカソード(厚さ約40nm)と接触面として蒸着された金フィルム(厚さ約100nm)もまた、素子としての性質をテストした。電流電圧特性を図9に示した;ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシダイオードは、スピンコートされたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)膜を含むダイオードと比較して、より高い電流密度を維持する。これらの結果から、ポリマーブラシは、ダイオードの外部へ(光起電性素子の場合)または内部へ(エレクトロルミネッセンス装置の場合)電荷を移動するのに適しているであろうことが明らかである。
【0078】
実施例4に従って作製されたポリマーブラシ膜[ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)膜]、ITO基板にスピンコートされたセレン化カドミウムナノ結晶の膜、実施例5(d)に従って作製されたセレン化カドミウムナノ結晶膜でコーティングされたポリマーブラシ膜[ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ]のAFM像を図12に示した。セレン化カドミウムナノ結晶でコートされたポリマーブラシ膜の像は、ITO基板にスピンコートされたセレン化カドミウムナノ結晶の膜と比較するとポリマーブラシ膜の像に近く、このことはセレン化カドミウムナノ結晶はポリマーブラシに引き付けられ、ポリマーブラシはたとえ膜表面ではなくとも、近傍に存在することを示唆している。
【0079】
実施例4に従って作製されたポリマーブラシ膜[ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ]、ITO基板にスピンコートされたセレン化カドミウムナノ結晶の膜、実施例5bに従って作製されたセレン化カドミウムナノ結晶膜でコートされたポリマーブラシ膜[ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ]の紫外-可視吸収スペクトルを図13に示した。ITO基板上にスピンコートされたセレン化カドミウムナノ結晶の膜とセレン化カドミウムナノ結晶膜でコートされたポリマーブラシ膜の、530nmの吸収ピークは同じであることに注目すべきであり、このことはポリマーブラシ膜がセレン化カドミウムナノ結晶の約25nmを取り込むことを暗に示している。
【0080】
前記実施例3(a)で作製されたITOコートガラス基板上に実施例2で作製された開始剤のSAMと、実施例4に従って前記SAM開始剤から成長させたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシを有し、スピンコーティングによりPEDOT:PSSアノードで被覆し、前記実施例6に従って金でコートし、実施例6の手順に従って作製されたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシダイオードの素子の特性をテストした。前記実施例3(a)で作製されたITOコートガラス基板上に実施例2で作製された開始剤のSAMを有し、実施例4に従って前記SAM開始剤から成長させたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシを、上記実施例5(d)に従ってセレン化カドミウムナノ結晶膜でコートし、前記実施例6に従ってアルミニウムでコートした、実施例6に従って作製された光起電性素子も、素子特性をテストした。図13に示した電流電圧特性から、上記のように作製された光起電性素子が、上記のように作製されたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシダイオードと比較して電流密度が高いことが示された。セレン化カドミウムナノ結晶は、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシと比較して電荷移動度がより高い。このことは、セレン化カドミウムナノ結晶内部にアノードからカソードへと膜を横断する経路があること、すなわちセレン化カドミウムナノ結晶が完全にブラシ間にインターカレートしていることを示唆している。図14のEQEおよびIQEスペクトルからわかるように、ブラシ素子は、実施例6に従って作製された、ITOコートガラス基板上の重量において1:8 ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート):セレン化カドミウムであり且つ上記実施例6に従ってアルミニウムでコートされた、厚さ100nmのスピンコートされた膜を有する、最適化されたブレンド素子と比較して高い特性を示す。ブラシ素子は、集められた電子に対する吸収されたフォトン数に関する変換効率がほぼ単一に近い。このことは光電子素子に使われるポリマーブラシが、将来の世代の電子機器と競合しうるものとなると信じる重要な根拠である。
【0081】
実施例7
浸透されたポリマーブラシ膜の特性
浸透の特性を調べるために、ローダミン色素でコートしたポリマーブラシ膜を作製した。膜は、前記実施例3(a)に従って作製されたITOコートガラス基板上に前記実施例2で作製された開始剤のSAMと、実施例4に従って前記SAM開始剤から成長させたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシを有し、実施例5(b)に従ってローダミン色素でコートして、実施例5に従って作製された。浸透の度合いを調べるため、酸素プラズマバレルエッチング装置を、膜内部の構造を調べるため紫外-可視スペクトルと組み合わせて利用した。酸素プラズマで有機膜表面を一定速度(ポリマーと色素両方に関して〜5nm/分)で切除して、各処理後紫外−可視スペクトルで膜の吸収スペクトルを測定した。残った材料の組成は、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)とローダミン色素の吸収ピークの強さを比較することによって決定した。ローダミン色素は580nmに吸収ピークを持ち、その領域ではブラシによる吸収は無視しうるので、この成分の相対的な厚さを直接計算することができる。ブラシの吸収ピークは305nmであり、ここは色素にも若干吸収があるが、寄与分を引くことによって説明される。図10に示す吸収スペクトルから、5分間エッチングした後305nmの吸収は色素コーティング前のもとのブラシ膜と同等のものであることがわかった。しかし、まだ色素の大きな吸収(厚さ46nmのもとの色素の膜で580nmに〜0.24の吸収)があり、これはポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜に色素が深く浸透していることを示唆している。各成分の相当厚さは、吸収スペクトルから膜厚の関数として見積もることが可能である。図11の上の図から、ブラシは長さにして100nmまで引き伸ばされており、全フィルム厚さが15nm以下になっても色素が存在することが明らかである。厚み分布は膜成分に関して残りのフィルム厚さを足し合わせたものと等価である。この分布の微分は基板に対する位置の関数で表した膜の組成を与え、このことは図11の第二図に示されている。このことは、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシが第二成分にコートされているときに、ポリマーと色素は垂直方向に2つの反対の傾向を有する濃度勾配をもちながら組織化されており、相互に浸透するネットワークを作り上げていることを示す強い根拠を与える。
【0082】
実施例8
電界効果型トランジスタの作製:二酸化ケイ素コートシリコン基板から成長させたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシを組み込んだ電界効果型トランジスタの作製
前記実施例3(b)に従って(実施例3(b)で使われたPEDOT:PSSで被覆されたITOコートガラス基板の代わりに清浄な二酸化ケイ素コートシリコン基板を使用しているということを除いて)作製された二酸化ケイ素コートシリコン基板上に実施例2で作製された開始剤のSAMと、実施例4に従って前記SAM開始剤から成長させたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシを有し、上記実施例6に従ってソース電極やドレイン電極として金を蒸着した、電界効果型トランジスタを作製した。素子構造の概略図を図15に示す。
【図面の簡単な説明】
【0083】
本発明は、以下の図を参照し、それに続く例示を考慮することによって、さらに理解されると思われる。
【図1】図1は、アノードでコートされ、表面に自己組織化膜が吸着または結合したガラス基板の概略図であり、薄い灰色の長円はSAMのチオールまたはシロキサン分子を表しており、黒丸は開始剤の末端基を表している。
【図2】図2は、図1に示した、前もって調製された基板から成長したポリマーブラシの概略図を示している。
【図3】図3は、本発明の光電変換素子またはエレクトロルミネッセンス素子の構造の概略図であり、ドットで示した領域は半導体ポリマーブラシにインターカレートされた第二の半導体材料を表している。
【図4】図4は、前もって調製された基板に付着した混合されたブラシ層を有する光電変換素子またはエレクトロルミネッセンス素子の構造の概略図であり、黒色のブラシはひとつのアクティブな半導体成分を、また灰色のブラシは、少なくともひとつの他のアクティブな半導体成分を表している。
【図5】図5は、前もって調製された基板に付着したブロック共重合体ブラシ層を有する光電変換素子またはエレクトロルミネッセンス素子の構造の概略図であり、黒色のブラシはひとつのアクティブな半導体成分を、また灰色のブラシは、第一の成分の末端から成長した少なくともひとつの他のアクティブな半導体成分を表している。
【図6】図6は、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)(実線)とペリレン(点線)の波長に対する吸収係数のプロットである。
【図7】図7は、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)とペリレンを含む半導体層を有するポリマーブレンド光電変換素子(点線)と、本発明のポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ポリマーブラシがペリレンでインターカレートされたポリマーブラシ光電変換素子(実線)の外部量子効率スペクトルを示している。
【図8】図8は、ITO基板から成長したポリマーブラシ膜(後に本発明のポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ポリマーブラシがペリレンでインターカレートされたポリマーブラシ光電変換素子に用いられる)とシリコン基板と清浄なITO基板から成長したブラシの完全な被膜のAFMスペクトル像を示している。
【図9】図9は、素子構造の中における本発明のポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜、SAM修飾ITO基板/ポリマーブラシ膜/PEDOT:PSSをスピンコートしたカソード/金の接点、の電流電圧特性を示している。
【図10】図10は、修飾されたITOから成長したポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜およびローダミン色素でコートされた修飾ITOから成長したポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜の、酸素プラズマによる表面切除前後の紫外−可視(UV−vis)吸収スペクトルを示している。凡例の数字は、分あたりの切除回数に対応する;一分間は、約5nmの膜の切除に対応する。
【図11】図11はITO基板からの位置の関数で示した膜組成を示している。また、図11は各材料(ポリマーブラシとローダミン)の相対的な量を、図10から計算されるように、膜厚の関数で示している。
【図12】図12は、SAM修飾ITO基板から成長したポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜、ITO基板上にスピンコートされたセレン化カドミウムナノ結晶膜、セレン化カドミウムナノ結晶でコートされた(修飾ITO基板から成長させた)ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜のAFM像を示している。
【図13】図13は、SAM修飾ITO基板から成長させた厚さ45nmのポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜、ITO基板上にスピンコートされた厚さ25nmのセレン化カドミウムナノ結晶膜、セレン化カドミウムナノ結晶でコートされた(修飾ITO基板から成長させた)厚さ45nmのポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜、のUV−vis吸収スペクトルを示している。さらに、図13はブラシダイオード(SAM修飾ITOアノード/(SAM修飾ITOアノードから成長した)厚さ45nmのポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜/PEDOT:PSS/金、を含む)および光電変換素子(SAM修飾ITOアノード/セレン化カドミウムナノ結晶でコートされた(SAM修飾ITOアノードから成長した)厚さ45nmのポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜/アルミニウムカソード)の電流電圧特性を示している。
【図14】図14は、SAM修飾ITOアノード/セレン化カドミウムナノ結晶でコートされた(SAM修飾ITOアノードから成長した)厚さ45nmのポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜/アルミニウムカソード、の構成を含む光電変換素子(上の曲線)と、ITOアノード/厚さ100nmのポリマーとナノ結晶のブレンドであってポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)とセレン化カドミウムナノ結晶が1:8の重量比のもの/アルミニウムカソード、の構成を含む光電変換素子(下の曲線)の外部量子効率(点線)と内部量子効率(実線)を示している。
【図15】図15は、本発明の電界効果型トランジスタ素子の構造の概略図を示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子または有機エレクトロルミネッセンス素子等の有機電子素子に関するものであり、前記素子は電極と半導体層から構成され、半導体層は少なくとも一の正孔輸送半導体材料と少なくとも一の電子輸送半導体材料の混合物であり、それら半導体材料のうち少なくとも一方は半導体性のポリマーブラシの形状を有し、少なくとも一方の電極表面に付着しており、また少なくとも一の前記の他半導体性材料と接触している。本発明は、電界効果型トランジスタのような有機電子素子にも関るものであり、該素子は電極と半導体の層から構成され、半導体の層は少なくとも一の正孔輸送半導体材料または少なくとも一の電子輸送半導体材料からなり、少なくとも一の半導体材料はポリマーブラシの形状を有し、少なくともひとつの電極表面に付着している。本発明は上記のような素子の製造方法にも関わるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリマー半導体や低分子系有機半導体を含む有機半導体材料が、エレクトロルミネッセンス素子、光電変換素子、電界効果型トランジスタ、または液晶素子等の様々な電子素子の作製に使われてきた。これらの材料を使うことにより素子の製造が簡単にかつ低コストとなり、また使いやすく、高性能であるという特徴を有しており、それが重要な強みとなっている。新規材料、加工方法または素子の幾何学的配置の研究によって、それらの素子の安定性、寿命や性能が大幅に改善されている。
【0003】
アノードとカソードの間に正孔および電子輸送性の有機および非有機材料からなる二相系ブレンドを挟み込んで構成される光電変換素子が、そのような素子の一例である。これらは高い外部量子効率(素子上に入射する光子に対するカソードで集められる電子数)を示してきた。半導体材料ブレンド中の電荷の光生成は材料のヘテロ接合における励起子解離、すなわちブレンドの一方の成分への電子による電荷移動またはもう一方の成分への正孔による電荷移動によって生じる。理想的には、光起電力素子は入射光の量が最大となるように、電荷の光生成が内部で起こる光吸収材料に妥当な厚みを持つべきである。高い外部量子効率を達成するため、活性材料(アクティブマテリアル)層は、電荷分離を促進するようにヘテロ接合が膜に広く分布し、また、電荷抽出を最大にするようにブレンドを構成する各成分中における各電極への直接的な輸送経路を有する、少なくとも2種の成分から構成されるべきである。
【0004】
2種の半導体ポリマーの混合物で形成される光電変換素子の性能は、ブレンドのモルフォロジーを制御することによって大きく向上することができる[Snaith et al., Nano Letters 2002,2(12),1353−1357; Halls et al, Advanced Materials 2000,12(7),498−502; および Arias et al,Macromolecules2001,34,6005−6013 を参照されたい]。これは素子の調整パラメータ(溶液や基板の温度、スピン速度、溶媒飽和雰囲気、または他の溶媒を使うことによって)によって達成される。しかし、これら素子中で起こる重大な損失のメカニズムはブレンドの各成分中における各電極への直接的な輸送経路がないために起こる電荷のトラッピングによるものである。有機光電変換素子に新しい構造設計が必要なことは明らかであり、それは電荷分離を促進するようにポリマーブレンド中に分布するヘテロ接合を最大にし、また電荷抽出を最大にするようにブレンドの各成分中の各電極への直接的な輸送経路を有するような構造である。
【0005】
最近では、共役ポリマーのような有機発光材料に非常に興味が持たれている。発光ポリマーは主鎖に沿って非局在化したπ電子系を有している。非局在化したπ電子系によりポリマーは半導体としての性質を持ち、ポリマー鎖に沿って高い移動度を持つ正または負の電荷キャリアを維持することができる。これら共役ポリマーの薄膜は、発光素子等の光学素子の作製に用いることができる。これらの素子は、通常の半導体材料を用いて作られた素子と比較して、大画面ディスプレイへの可能性や直流使用電圧が低いこと、また製造が簡易であることなど、非常に多くの利点を持っている。このタイプの素子に関しては、例えば、国際公開第90/13148号パンフレット、米国特許第5,512654号明細書や国際公開第95/06400号パンフレットに記載されている。
【0006】
効率がよく安定性に優れ、エネルギー消費が低いエレクトロルミネッセンス素子で商業上の要求を満たすレベルのものが、多くの企業や研究グループによって作られている(例えば、R.H.Friend et al.,Nature 1999,397,12 を参照されたい)。
【0007】
もっとも基本的には、有機エレクトロルミネッセンス素子は一般的に、正孔を注入する電極と電子を注入する電極との間に有機発光材料を配置して構成される。正孔注入電極(アノード)として典型的なのは、透明なインジウムスズ酸化物(ITO)をガラス基板にコーティングしたものである。電子注入電極(カソード)として一般的に使われる材料は、カルシウムやアルミニウムのような低仕事関数の金属である。
【0008】
有機発光層として一般的に使用される材料としては、ポリフェニレンビニレン(PPV)やその誘導体(例えば国際公開第90/13148号パンフレット参照)、ポリフルオレン誘導体(例えば、A.W.Grice et al,Appl.Phys.Lett.1998,73,629,国際公開第00/55927号パンフレット、および、Bernius et al.,Adv.Materials 2000,12(23),1737 を参照されたい)、ポリナフチレン誘導体やポリフェナントレン誘導体;アルミニウムキノリノール錯体(Alq3錯体:例えば、米国特許第4,539,507号明細書を参照されたい)や、キナクリドン、ルブレン、スチリル色素(例えば、特開昭63−264692号公報を参照されたい)のような有機低分子がある。有機発光層は2またはそれ以上の異なる発光性の有機材料の混合物であってもよいし、積層であってもよい。
【0009】
典型的な素子の構成は、国際公開第90/13148号パンフレット;米国特許第5,512,654号明細書; 国際公開第95/06400号パンフレット;R.F.Service, Science 1998,279, 1135;Wudl et al.,Appl.Phys.Lett. 1998,73,2561;J.Bharathan,Y.Yang,Appl.Phys.Lett. 1998,72,2660;T.R.Hebner et al,Appl.Phys.Lett.1998,72,519);国際公開第99/48160号パンフレット、に開示されている。この内容は、参考としてここに組み込まれている。
【0010】
正孔または電子輸送性の有機または非有機半導体材料からなる二相系ブレンドで構成されるエレクトロルミネッセンス素子は、高い外部量子効率を示してきた(入射されたフォトンの数に対する注入された電子数)。半導体材料からのフォトルミネッセンスは励起子の放射崩壊によって起こる。励起子は正孔と電子が材料内で再結合する際に形成される。電荷の再結合は正孔輸送半導体材料と電子輸送性半導体材料間との間のヘテロ接合部で効率よく起こることが示されている。理想的には、エレクトロルミネッセンス素子は、フォトルミネッセンスを起こすフォトルミネッセント材料が適当な厚みを持ち、使用される注入電荷の割合が最大化されるべきである。高い外部量子効率を達成するために、活性材料層は、電荷の再結合を促進するため膜全体に分布したヘテロ接合を有する少なくとも2種の成分からなることが望ましい。活性材料層は、再結合領域へ電荷が到達する割合を最大にするために、各電極から再結合領域に至る短く直接的な輸送経路を持つことが望ましい。漏れ電流を最小にするために、アノードは正孔輸送層によって、またカソードは電子輸送層によって覆われていることが望ましい。さらに、ブレンドの場合、活性層の中央にある再結合領域を各電極から離して、各電極近傍での励起子失活を減少させ、また、より高い駆動電圧を必要とする層構造中では空間電荷の発生を減少させるために、電極から再結合領域への正孔輸送と電子輸送のバランスがとれていることが望ましい。
【0011】
2種のポリマーの混合物により形成されたエレクトロルミネッセンス素子の性能は、ブレンドのモルフォロジーを制御することによって大幅に向上することがこれまで示されてきた(Berggren et al, Nature 1994,372,444 を参照されたい)。これらは素子の調整パラメータを変更することによって達成された(溶液や基板の温度、スピン速度、溶媒飽和雰囲気、または異なる溶媒を使用すること)。しかし、これらの素子中で起こる重大な損失メカニズムは漏れ電流によるものであり、これはブレンドの各成分中のカソードからアノードへのパーコレーション経路や、再結合サイトへの正孔の電荷輸送と電子の電荷輸送とのアンバランスや、ブレンド中に各電極から再結合領域へ至る短く直接的な経路がないことにより起こる。そのため、正孔または電子輸送の有機または無機の半導体材料からなるブレンド系を含む新規エレクトロルミネッセンス素子であって、その半導体材料間に大きな界面領域があることにより広い再結合領域を有するとともに、各電極から再結合領域へと至る短く直接的な輸送経路を有するものを作り出すことが望まれている。
【0012】
ポリマーブラシは高分子物理や化学の分野で、ポリマーの物理的性質を理解するために広く使われてきた。例えば、接着、摩擦、腐食抵抗やぬれ等の、表面の性質を制御するために使われてきた(例えば、K.R.Shull,J.Chem.Phys.1991,94(8),5723−5738 を参照されたい)。しかし、前記ポリマーブラシはこれまで光電変換素子やエレクトロルミネッセンス素子のような有機電子素子には使われてこなかった上に、当業者がこの目的でポリマーブラシが使用できると思い至るに足るような示唆もなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、少なくとも2種の半導体材料のブレンドであり、少なくともその一方が有機半導体材料であり、前記半導体材料間に大きな界面領域があり、各電極から前記界面に至る直接的な輸送経路を有する、新規の有機、または無機有機ハイブリッドの電子素子を提供することである。
【0014】
さらに、これらの新規有機電子素子の製造方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このように、本発明の第一の態様では、少なくとも2つの電極と、少なくともひとつの正孔輸送半導体材料と少なくともひとつの電子輸送半導体材料との混合物を含む半導体層とを含む有機電子素子であって、少なくともひとつの前記半導体材料が、少なくともひとつの前記電極表面に付着し且つ少なくともひとつの他の半導体材料と接触している、半導体ポリマーブラシの形状を有している有機電子素子を提供する。
【0016】
本発明の素子に用いられている半導体ポリマーブラシは、前記ポリマーブラシと、それと接触している他の半導体材料(または複数の半導体材料)との間に広い界面を有し、またポリマーブラシが付着している電極へ、または電極からの、電子または正孔の直接的な輸送経路を与えるので、優れた素子としての特性を有する。ポリマーブラシ膜を垂直方向に通る電流密度は、同じポリマーの通常のスピンコートによるアモルファス膜を通す場合と比較して30倍に達することがわかってきた。電極に付着している半導体ポリマーブラシと他の半導体材料との間の接触は、例えば、前記の第二の半導体材料を前記ポリマーブラシとインターカレーションすることによるもの、前記の第二の半導体材料を前記第一の半導体ポリマーブラシ間の隙間に半導体ポリマーブラシとして成長させ相互浸透した混合ポリマーネットワークを作ることによるもの、または前記第一のポリマーブラシの末端から第二の異なるモノマーを重合して、2つの半導体成分の間の直接の共有結合による2層構造を持ったブロック共重合ブラシによるものであってよい。
【0017】
本発明の有機電子素子は、少なくとも2つの電極と電荷(電子または正孔)を前記電極へまたは前記電極から移動する能力を有する半導体層を含むものであり、前記半導体層は少なくともひとつの正孔輸送半導体材料と少なくともひとつの電子輸送半導体材料の混合物で、そのうち少なくともひとつは有機半導体材料であるものを含む半導体材料である素子である。前記素子の適切な例には、エレクトロルミネッセンス素子、光電変換素子、電界効果型トランジスタ、液晶素子が含まれる。これらの中で、光電変換素子、エレクトロルミネッセンス素子は特に好ましい。
【0018】
電荷移動性をよくして、且つ他の半導体成分との間に広い界面を有するようにするため、本発明の素子の電極表面に付着したポリマーブラシはできるだけ長いことが望ましい。ポリマーブラシの平均長さは、1nmから1μmが好ましく、ポリマーブラシの平均長さが少なくとも40nmあるともっとも好ましい。
【0019】
本発明の素子の半導体ポリマーブラシは、電極材料の表面からブラシとして成長可能なまたは電極材料表面につなげることが可能な、どのような半導体ポリマーも含むものである。電極表面から半導体ポリマーブラシとして成長可能な、適当な半導体材料の例には以下が含まれる:ポリフェニレンビニレン(PPV)とその誘導体(例えば、国際公開第90/13148号パンフレットを参照)、ポリフルオレン誘導体(例えば、A.W.Grice,D.D.C.Bradley,M.T.Bernius,M.Inbasekaran,W.W.Wu,およびE.P.Woo,Appl.Phys.Lett.1998,73,629,国際公開第00/55927号パンフレットおよびBernius et al.,Adv.Materials,2000,12,No.23,1737、を参照されたい)、ポリナフチレン誘導体、ポリインデノフルオレン誘導体、ポリフェナントレニル誘導体、活性を有するペンダント型側鎖を有するポリアクリレート誘導体(例えば、M.Stolka,D.M.Pai,D.S.Renfer,およびJ.F.Yanus,Journal of Polymer Science Part A−Polymer Chemistry,1983,21,969;およびM.Tamada,H.Koshikawa,F.Hosi,T.Suwa,H.Usui,A.Kosaka,H.Sato,Polymer.1999,40(11),3061−3067)
【0020】
電極材料の表面から半導体ポリマーブラシとして成長可能なまたは電極材料につなげることが可能な、半導体ポリマー材料の詳細な例としては、化学式(I)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、または(XV)に示す以下の共役ユニットを含むポリマーを含む。これらのポリマーはホモポリマーであってもよいし、2つのまたはそれ以上の共役ユニットを含んでも良い、例えば交互ABコポリマーおよびターポリマー、ランダムコポリマーおよびランダムターポリマーであってもよい。
【0021】
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
ここで、
R1は化学式−(CH2)m−X−Yの基であって、
mは0または1から6の整数、
Xは上記で定義した化学式(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、または(XV)または、以下に定義した化学式(II)または(III)の基であって
【0022】
【化10】
【化11】
ここで、nは0、1または2、
pとqは同じかまたは異なり、各々が0または1から3の整数であって、
R34、R35、R36は各々同じかまたは異なっており、また、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、および、化学式−COR16(R16が、ヒドロキシ基、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基でそのアルキル部が以下に定義されるもの、ジアルキルアミノ基で各アルキル部が同じかまたは異なっているもので以下に定義されるもの、アラルキロキシ基でアラルキル部が以下に定義されるもの、ハロアルコキシ基で以下に定義されるアルコキシ基を含むものであって少なくともひとつのハロゲン原子で置換されているもの、からなるグループから選択されるもの)からなるグループから選択されるものであって、
【0023】
または、n、pまたはqは整数2であり、2つの基R34、R35またはR36が各々自らが結合している環内の炭素原子とともに、以下に定義するアリール基、または5から7個の環原子を有し、ひとつもしくはそれ以上の前記環原子が窒素、酸素、硫黄原子からなるグループから選択されたヘテロ原子であるヘテロ環基であり、また、
Yは水素原子、R37、NHR38およびNR38R39からなるグループから選択されるものであって、
R37は、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、および化学式−COR16で表される基であってR16は上記で定義したもの、からなるグループから選択され、
また、
R38とR39は各々同じかまたは異なっており、以下に定義するアリール基および以下に定義するアラルキル基からなるグループから選択され;
R2は水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基からなる基からなるグループから選択される;
R8からR15、R17からR33は各々同じかまたは異なり、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、および、化学式−COR16の基でR16は上記で定義したもの、
または、rまたはsは整数の2で、2つの基R32またはR33が各々自らが結合している環内の炭素原子とともに、5から7個の環原子を有し、ひとつもしくはそれ以上の前記環原子が窒素、酸素、硫黄原子からなるグループから選択されたヘテロ原子であるヘテロ環基を形成してもよく;
【0024】
各Z1、Z2およびZ3は同じか異なっており、O、S、SO、SO2、NR3、N+(R3’)(R3’’)、C(R4)(R5)、Si(R4’)(R5’)およびP(O)(OR6)からなるグループから選択され、R3、R3’およびR3’’は同じか異なっており、水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、および以下に定義するアルキル基であって少なくともひとつの化学式−N+(R7)3で示される基で置換されたものであって、各R7は同じか異なっており、水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するアリール基、からなるグループから選択され、R4、R5、R4’、R5’は同じか異なっており、水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、からなるグループから選択され、またはR4、R5はそれ自身が結合している炭素原子とともにカルボニル基となり、R6は水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、からなるグループから選択される;
【0025】
各X1、X2、X3およびX4は同じか異なっており、以下から選択される:
アリーレン基で1個または複数の環に6から14の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であり、環はニトロ基、シアノ基、アミノ基、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアルコキシ基からなるグループから選択された、少なくともひとつの置換基で任意に置換されていてもよく;
直鎖または分岐鎖のアルキレン基で1から6個の炭素原子を有するもの;
直鎖または分岐鎖のアルケニレン基で2から6個の炭素原子を有するもの;
および、
直鎖または分岐鎖のアルキニレン基で1から6個の炭素原子を有するもの;または、X1とX2がともに、および/またはX3およびX4はともに以下の化学式(V)の連結基を表すことができるものであって:
【0026】
X5はアリーレン基で1個または複数の環に6から14の炭素原子を有する芳香族炭化水素であり、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアルコキシ基からなるグループから選択された、少なくともひとつの置換基で任意に置換されていてもよく;
各e1、e2、f1、f2は同じか異なっており、0または整数の1から3であり;
各g、q1、q2、q3、q4は同じか異なっており、0、1または2であり、;
各h1、h2、j1、j2、j3、l1、l2、l3、l4、rおよびsは同じか異なっており、0または整数の1から4であり;
各i、k1、k2、o1、およびo2は同じか異なっており、0または整数の1から5であり;
また、
各p1、p2、p3およびp4は0または1であり;
上記アルキル基は直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、1から20個の炭素原子を有し、
上記ハロアルキル基は、上記で定義したアルキル基が、少なくともひとつのハロゲン原子で置換されたものであり;
上記アルコキシ基は直鎖または分岐鎖のアルコキシ基であり、1から20個の炭素原子を有し、
上記アルコキシアルキル基は、上記で定義したアルキル基が、少なくともひとつの上記で定義されたアルコキシ基で置換されたものであり;また、
上記アリール基とアラルキル基(アルキル部に1から20個の炭素原子を有する)のアリール部および上記アリロキシ基は芳香族炭化水素基で1個または複数の環に6から14の炭素原子を有しており、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、上記に定義するアルキル基、上記に定義するハロアルキル基、上記に定義するアルコキシアルキル基、上記に定義するアルコキシ基からなるグループから選択された、少なくともひとつの置換基で任意に置換されていてもよい。
【0027】
本発明の光電変換素子または有機エレクトロルミネッセンス素子に用いるのに特に好ましい半導体ポリマーブラシは、ホモポリマーブラシであって、化学式(I)、(VIII)、(IX)、(X)、(XIV)または(XV)の基を含むものであり、例としては、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)、PPV、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチル)ヘキシロキシーフェニレンービニレン)(“MEH−PPV”)、PPV誘導体で例えばジアルコキシおよびジアルキル誘導体等、ポリフルオレン誘導体、関連する共重合体;また、最も好ましいものとしては、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)、PPV、MEH−PPV、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−ヘキシルフルオレン))、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−((4−sec−ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン)(“TFB”)、およびポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−3,6−ベンゾチアジアゾール)(“F8BT”)が含まれる。
【0028】
本発明の素子のポリマーブラシと接触する他の一の(または複数の)半導体材料は、有機または無機の半導体材料であってよい。有機半導体材料は、半導体ポリマー材料、または半導体有機低分子材料であり、好ましくは半導体ポリマー材料である。無機半導体材料は、半導体ナノ粒子であってよく、特に、セレン化カドミウム、セレン化銅、セレン化亜鉛、硫化カドミウム、または硫化亜鉛の半導体ナノ結晶材料などである[例えば、Peng,Z.A.;Peng,X.G.J.Am.Chem.Soc.124,3343(2002);Murray,C.B. et al,J.Am.Chem.Soc.115,8706(1993);またはKatari,J.E.B.etal,J.Phys.Chem.98,4109(1994)を参照されたい]。セレン化カドミウムナノ結晶は、良好な電子受容体であり電子移動度が高いため、特に好ましい。
【0029】
半導体材料の選択は、有機電子素子の性質や、電極表面に付着した半導体ポリマーブラシの個性や性質等の要因によって変わる。このように、例えば、半導体ポリマーブラシが光電変換素子のアノードに付着している正孔輸送ポリマーブラシであるとしたら、前記ポリマーブラシと接触している他の一の(または複数の)半導体材料はカソードに至る電子の経路を与えるために電子輸送性でなくてはならない。
【0030】
半導体ポリマーブラシに接触する他の半導体材料として好ましいものの例としては、以下が含まれる:ポリフェニレンビニレン(PPV)とその誘導体[例えば、国際公開第90/13148号パンフレット]、ポリフルオレン誘導体[例えば、A.W.Grice,D.D.C.Bradley,M.T.Bemius,M.Inbasekaran,W.W.Wu、またはE.P.Woo,Appl.Phys.Lett.1998,73,629,国際公開第00/55927号パンフレット、Bemius et al.,Adv.Materials,2000,12,No.23,1737]、ポリナフチレン誘導体、ポリインデノフルオレン誘導体およびポリフェナントレニル誘導体等の共役ポリマー;アルミニウムキノリノール錯体(Alq3錯体、例えばUS−A−4,539,507を参照)、ペリレンとその誘導体、遷移金属錯体、TMHDやキナクリドン等の有機配位子を有するランタノイドおよびアクチノイド(国際公開第00/26323号パンフレット参照)または、ルブレン、スチリル色素(例えば、特開昭63−264692参照)等の有機低分子;この内容は、参考としてここに組み込まれている;および半導体セレン化カドミウムナノ結晶(例えば、Peng,Z.A.;Peng,X.G.J.Am.Chem.Soc.2002,124,3343−を参照されたい。この内容は、参考としてここに組み込まれている。)
【0031】
半導体ポリマーブラシに接触する半導体ポリマー材料として好ましいものの詳細な例としては、化学式(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)または上記で定義した(XV)で表される共役ユニットを含むポリマーが含まれる。これらのポリマーは、ホモポリマーであってもよいし、または2種またはそれ以上の異なる共役ユニットを含んでいてもよい、たとえば交互ABコポリマーやターポリマー、ランダムコポリマーやランダムターポリマーである。
【0032】
本発明の光電変換素子やエレクトロルミネッセンス素子に用いるのに特に好ましい半導体ポリマーとしては、化学式(VIII)、(IX)、(X)、(XIV)または(XV)の基を含むホモポリマー、コポリマー、ターポリマーが含まれ、例としてはポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)、PPV、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチル)ヘキシロキシーフェニレンービニレン)(“MEH−PPV”)、PPV誘導体で例えばジアルコキシおよびジアルキル誘導体等、ポリフルオレン誘導体および関連する共重合体;また、最も好ましいものとしては、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)、PPV、MEH−PPV、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−ヘキシルフルオレン))、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−((4−sec−ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン)(“TFB”)、およびポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−3,6−ベンゾチアジアゾール)(“F8BT”)が含まれる。最も好ましい半導体有機低分子には、Alq3錯体、ペリレンとその誘導体が含まれる。特に好ましい半導体無機材料は、半導体セレン化カドミウムナノ結晶である。
【0033】
最も基本的なところで、有機光電変換素子や有機エレクトロルミネッセンス素子のような有機電子素子は、一般的に、前記素子のひとつの電極に付着した、少なくとももうひとつの半導体材料に接触する半導体ポリマーブラシを含み、一方の材料は正孔輸送性であり、もう一方の材料が電子輸送性であるものを含む。本発明の有機光電変換素子や有機エレクトロルミネッセンス素子においては、アノードは一般的に透明なインジウムスズ酸化物(ITO)コートガラス基板である。ジルコニウムをドープしたインジウム酸化物(Applied Physics Letters,78(8)1050(2001),Kim,H et al)や、アルミニウムをドープした亜鉛酸化物(Applied Physics Letters,76(3)259(2000),Kim H et al)の膜もアノードとして使われてきた。アノード材料の他の選択肢として試されてきたものとしては、窒化チタン[Advanced Materials,11(9)727(1999),Adamovich V, et al.];Ga−In−Sn−OとZn−In−Sn−Oを含む、高い仕事関数を有する透明な伝導性の酸化物[Advanced Materials,13(19)1476(2001),Cui,J., et al]; ポリスチレンスルホン酸をドープしたポリアニリン等のポリマー材料[Applied Physics Letters,70(16)2067(1997),Carter S. A et al,およびApplied Physics Letters,64(10)1245(1994)Yang Y et al.].
【0034】
カソードは、有機エレクトロルミネッセンス素子や光電変換素子に一般的にカソードとして使用される材料であれば、どれからでも形成できる可能性がある。適当な材料の例としては、カリウム、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、ランタン、セリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、銀、インジウム、スズ、亜鉛、ジルコニウム、またそれらの金属を含む二元、三元合金が含まれる。これらの中では、アルミニウムおよびカルシウムの連続層、およびアルミニウム−カルシウム合金で1から20重量%のカルシウムを含むものが好ましい。
【0035】
エレクトロルミネッセンス素子の一般的な素子構造は、例えば国際公開第90/13148号パンフレット;米国特許第5,512,654号明細書;国際公開第95/06400号パンフレット;R.F.Service,Science 1998,279,1135;Wudl et al.,Appl.Phys.Lett.1998,73,2561;J.Bharathan,Y.Yang,Appl.Phys.Lett.1998,72,2660;T.R.Hebner et al,Appl.Phys.Lett.1998,72,519;および、国際公開第99/48160号パンフレット;に開示されており、この内容は、参考としてここに組み込まれている。光電変換素子の一般的な素子構造は、例えば、R.H.Friend atal., Nature,1998,395,257;C.J.Brabec et al.,App.Phys.Lett.2000,78,841,A.C.Arias et al.,Macromolecules,2001,34,6005;H.J.Snaith et al.,Nano.Lett.2002,2,1353;A.C.Arias et al.,Appl.Phys.Lett.,2002,80,1695;および、J.R.Heflin et al.,Appl.Phys.Lett.,2002,4607に開示されており、この内容は、参考としてここに組み込まれている。
【0036】
本発明の素子のアノード上に、ポリ(スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)、N,N’−ジフェニル−N,N’−(2−ナフチル)−(1,1’−フェニル)−4,4’−ジアミン(NBP)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)等の高い仕事関数を有する有機材料を析出させることは、または本発明の素子のアノード上に、酸化アルミニウム等の高い仕事関数を有する無機材料を析出させることで、正孔輸送層が提供され、それは例えば本発明のエレクトロルミネッセンス素子の発光層への正孔の注入を促進する。これらの層は、エレクトロルミネッセンス素子の発光層に注入される正孔の数を増やすことにおいて、および本発明の光電変換素子のアノードで集められる正孔の数を増やすことにおいて、および/または本発明の光電変換素子のアノードで集められる電子の数を減らすことにおいて効果的である。
【0037】
素子によっては、カソードと半導体層との間にさらに電子輸送層が与えられてもよい(たとえば、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属または欧州特許出願公開第1009045号明細書に開示されたように、ランタノイド元素で4eVまでの仕事関数を有するもの、を含む適当な化合物)。これらは、例えば、本発明のエレクトロルミネッセンス素子の発光層への電子の注入を促進するので、電子注入層から安定的に電子を輸送し、また正孔を遮断する。特に好ましいのは、酸化ストロンチウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化リチウム、酸化ルビジウム、酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化セシウムである。
【0038】
本発明の素子で、半導体ポリマーブラシは前記素子の電極の少なくとも一方に付着している。このことによって、我々は、半導体ポリマーブラシに以下のどれかのような意味をもたせる:
(i)前記電極表面の原子に直接結合している;
(ii)前記電極にコーティングされた正孔輸送層表面または電子輸送層内の原子に直接結合している;または、
(ii)自己組織化単分子膜(SAM)内の分子末端に結合している、例えば前記電極または前記正孔輸送材料または電子輸送材料の表面に吸着または結合しているチオールまたはシロキサン分子(例えば、Jones et al,Langmuir 2002, 18,1265−1269を参照)
【0039】
本発明の光電変換素子およびエレクトロルミネッセンス素子は一般的に、基板(例えば、ガラス)、アノード、前記アノード表面に付着した半導体ポリマーブラシ、さらに前記ポリマーブラシにインターカレートされた一の(または複数の)半導体材料、さらにその半導体材料の最上部にカソード、を積層した構成を有していてもよい。他の方法として、素子は反対方向に積層した構造として、基板、カソード、前記カソード表面に付着した半導体ポリマーブラシ、さらに前記ポリマーブラシにインターカレートされた一の(または複数の)半導体材料、さらに半導体材料の最上部にアノードを積層した構造もとりうる。
【0040】
本発明の別の局面としては、少なくとも2つの電極と、少なくとも一の正孔輸送性半導体材料と少なくとも一の電子輸送性半導体材料の混合物を含む半導体層を含む有機電子素子の製造方法を提供している、
前記製造方法は以下を含む:
(a)一方の電極を形成するための材料で基板をコーティング;
(b)他に選択可能な方法としては、このように形成された電極を、開始剤基で末端キャッピングされた自己組織化単分子膜、またはフリーラジカルを発生することができる自己組織化単分子膜でコーティング;
(c)ステップ(b)で作製された自己組織化単分子膜で任意にコートされた電極をモノマーの溶液に接触させるが、これは前記モノマー単位を含むポリマーブラシを前記電極表面から成長させるのに適当な条件下で行う;
(d)ステップ(c)の生成物を、ポリマーブラシが少なくとも一のさらなる半導体材料と接触している生成物を作るような方法で処理する;
(e)ステップ(d)の生成物表面の最上層にさらなる電極を形成させるために材料をコーティング。
【0041】
本発明の有機光電変換素子および有機エレクトロルミネッセンス素子は、一般的には最初にアノード材料を基板(例えば、ガラス)に、通常はスパッタリングや蒸着によりコーティングすることによって製造される。素子は、半透明アノード、例えばインジウムスズ酸化物で製作されてもよい。他の方法としては、例えばチオールやシロキサン分子といった自己組織化単分子膜(SAM)を前記アノード上に析出させる。SAM分子はSAM上部表面に存在する開始剤基(例えば、臭素原子)で末端キャッピングされ(図1参照)、半導体ポリマーブラシの成長の起点となるモノマーユニットと反応することが可能である。他に選択可能な方法としては、SAMの分子は開始剤基で末端キャッピングされていない形態であってもよく、代わりに他の処理によってフリーラジカルを発生して半導体ポリマーブラシの成長の起点となるモノマーユニットと反応することが可能である。そのようなSAMの例としては、2−2’−アゾ−ビス−イソブチリルニトリル(AIBN)があり、さらなる処理の例としては加熱がある。偏光解析法で測定されたそのSAMの一般的な厚さは1から10nmである。
【0042】
モノマー溶液をアノード上(SAMでコートされている場合もある)に沈殿させ、結果としてアノード自身の表面に存在する原子との反応による開始、SAM末端にある開始剤基との反応による開始、またはSAM末端におけるフリーラジカルとの反応による開始の後に、アノード表面に付着した半導体ポリマーブラシを与えるようなモノマーの重合が起こる。これらのブラシは長さにして1nmから1ミクロンを超える(図2参照)。ポリマーブラシはモノマーの表面からの重合開始によって生成される。表面からポリマーブラシを成長させるための“リビング”重合技術として適当な例としては、カチオン重合(Jordan et al,J.Am.Chem.Soc.1998,120,243)、アニオン重合(Jordan et al,J.Am.Chem.Soc.1999,121,1016)、開環重合(Weck et al,J.Am.Chem.Soc.1999,121,4088)、窒素酸化物を用いた重合(Husemann et al,Macromolecules 1999,32,1424)、原子移動ラジカル重合(ATRP)(HuangおよびWirth, Macromolecules 1999,32,1694)が含まれる。
【0043】
ポリマーブラシが付着する基板は、上部にコートされた少なくともひとつの他の半導体成分を有する。コーティング法は、そのようなコーティング方法として適当なものであれば何でもよく、一般的な例としては、スピンコーティング、ブレードコーティング、ドロップキャスティング、またはインクジェット印刷が挙げられる。結果として得られる構造は、上部にコーティングされたさらなる半導体材料(または複数の半導体材料)によってインターカレートされた半導体ポリマーブラシを有するものである。
【0044】
その後、カルシウム、アルミニウム、またはマグネシウム等のカソード材料が活性層の上部にコートされる。一般的には、蒸着プロセスまたはスパッタリングプロセスのどちらも用いられる。
【0045】
結果として得られる活性半導体層の構造は、ひとつの材料(ポリマーブラシ)が主にアノードと接触するものである。この材料は、少なくともひとつの異なる活性半導体成分(または複数の成分)であって主にカソードに接触している材料と、相互に浸透しあう。
【0046】
本発明の光電変換素子において、この構造は電荷分離を促進するための分布したヘテロ接合と、電荷の抽出を最大限にするための活性層の各成分内部に双方の電極へ至る直接的な輸送経路とを与える。本発明のエレクトロルミネッセンス素子においては、この構造は2つの成分間に電荷の再結合を促進する広い界面領域と、活性層の各成分内部に再結合領域への短くて直接的な輸送経路とを与える。また、正孔輸送材料でアノードをキャッピングする方法、および電子輸送材料でカソードをキャッピングして漏れ電流を最小にする方法も、提供する。
【0047】
選択可能な他の方法としては、ポリ(スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)、N,N’−ジフェニル−N,N’−(2−ナフチル)−(1,1’−フェニル)−4,4’−ジアミン(NBP)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)等の高い仕事関数を有する有機材料を本発明の素子のアノード上に析出させる、または“正孔輸送”層を与える酸化アルミニウム等の、高い仕事関数を有する無機材料を本発明の素子のアノードに析出させてもよい。その後、半導体ポリマーブラシを前記正孔輸送層表面から成長させる。正孔輸送層表面は、前記表面上にポリマーブラシを形成するモノマーユニットと反応させることができるような反応性基を生成するため、またはその上にSAMを形成するよう処理ができるような反応性基を生成するため、最初に処理しておく必要があるかもしれない。PEDOT/PSSの場合、例えば、その後末端キャッピングされた開始剤基を有するシロキサン分子と反応できるようにするため、ダングリング水酸基を与えるよう酸素プラズマで処理してもよい。
【0048】
他の選択肢である、反対に積層された構成においては、基板がまずカソード材料でコートされ、半導体ポリマーブラシが、アノードにポリマーブラシを付着させる上記方法と同様に、前記カソード表面に付着され、さらなる一の半導体材料(または複数の半導体材料)が前記ポリマーブラシにインターカレートされ、その半導体材料の最上部にアノードを析出させる。
【0049】
他の方法として、活性層は複数のポリマーブラシを含むものでもよい。ポリマーブラシの混合物は電極表面から成長させるか、または、まずあるモノマーを重合してその後第二のモノマーを重合させることによる自己組織化単分子膜であってもよい。これにより、分子レベルで混合したブラシが得られる。もし、双方のブラシが異なる官能基を有するとき、例えばポリアクリレートの主鎖にトリアリールアミンのペンダント側鎖を有する場合やポリアクリレートの主鎖にペリレンのペンダント側鎖を有する場合では密に接触した相互浸透ネットワークが得られるであろうし、これはブラシの第一層を通じてパーコレートする第二層を不要とする(図4参照)。
【0050】
もうひとつの方法としては、電極表面または自己組織化単分子膜からあるモノマーを重合させ、次に最初のポリマーブラシの末端から第二のモノマーを重合させることによって、ブロック共重合体ブラシを調製後の基板から成長させてもよい。もしも下層のブロックが正孔伝導性で上部のブロックが電子伝導性ならば、結果的に2種の成分の間で分子が接触している二層構造となる(図5参照)。エレクトロルミネッセンス素子では、正孔と電子が各ブロック共重合体のヘテロ接合部で同時に出会うように、ポリマー分子鎖内の移動度に関して各ブロックの長さを調整してもよい。
【0051】
共重合は、異なるポリマーからなる長いポリマーブラシを成長させるのに用いてもよい。半導体材料層は、一方の電荷種を伝導する共重合ポリマーブラシを有することとは別に、図3に示されるものと同様の構造を得るためブラシ層を通じて浸透されてもよい。光電変換素子において、もしブラシ内部の種々のポリマーが太陽のスペクトルに関してある範囲の吸収スペクトルを有していたならば、最終的な素子は太陽のスペクトルの範囲にわたってフォトンを電荷に変換するということにおいて、より効率のよいものでありうる。エレクトロルミネッセンス素子においては、発光色は、スペクトルの異なる部分で発光する各ブロックに種々の長さを与えることにより調整可能である。もしも移動度の電場依存性が電子輸送成分と正孔輸送成分との間で大きく異なるならば、再結合領域は、動作電圧の変化に応じて素子内で移動する可能性がある。このことは、発光色が動作電圧の変化に応じて変化する結果を生じる。
【0052】
本発明の他の側面としては、少なくとも2つの電極と、少なくともひとつの正孔輸送半導体材料または少なくともひとつの電子輸送性材料を含む半導体層を含む有機電子素子であって、少なくともひとつの前記半導体材料が、少なくともひとつの前記電極の表面に付着した半導体ポリマーブラシを形成しているものを提供していることである。この観点に従うと、その素子は望ましくは電界効果型トランジスタである。
【0053】
更に別の観点においては、少なくとも2つの電極と少なくとも一の正孔輸送性半導体材料または少なくとも一の電子輸送性半導体材料を含む半導体層を含む有機電子素子の製造方法を提供している。前記製造方法は以下を含む:
(a)一方の電極を形成するための材料で基板をコーティング;
(b)任意に選択可能な方法で、しかし好ましいものは、このように形成された電極を、電子絶縁材料でコーティング;
(c)他に選択可能な方法としては、ステップ(a)で形成された、またはそれに続く任意のステップ(b)で形成された電極を、開始剤基で末端キャッピングされた自己組織化単分子膜で、またはフリーラジカルを発生することができる自己組織化単分子膜でコーティング;
(d)ステップ(c)で作製された、自己組織化単分子膜で任意にコートされた電極をモノマーの溶液に接触させ、これは前記モノマーユニットを含むポリマーブラシを前記電極表面から成長させるのに適当な条件下で行い;
(e)ステップ(d)の生成物表面の最上部にさらなる電極が形成するように材料をコーティング。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
実施例1
モノマー調整:4−ジフェニルアミノベンジルアクリレートモノマーの合成
4−ジフェニルアミノベンズアルデヒド(25g、92mmol)の無水THF(100mL)溶液を、無水THF(80ml)にLiAlH4(5g、132mmol)を加えたモル過剰溶液に、室温、窒素雰囲気下で滴下して加えた。室温、窒素雰囲気下で3時間攪拌後、反応混合物に脱イオン水を加えて急冷した。反応混合物をろ過し、ロータリーエバポレーターを用いてTHF層を留去した。水中の固形物をDCMに溶解し、有機層を回収した。水層はDCMで抽出し、有機層を回収し合わせて塩水で洗浄した。有機層を回収して、無水MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、溶媒を留去して固形の生成物である、4−ジフェニルアミノベンジルアルコール(24.5g、89mmol、収量97%)を得た。
【0055】
塩化アクリロイル(7.2ml、89mmol)の蒸留DCM(20ml)溶液を、前記4−ジフェニルアミノベンジルアルコール(24g、87mmol)とトリエチルアミン(使用前にKOH上で蒸留した)(13ml、93mmol)の混合物を蒸留DCM(200ml)に加えたものに、室温、窒素雰囲気下で滴下した。18時間攪拌した後、室温、窒素雰囲気下で反応混合物を0.01MHCl(水溶液)を加えて急冷した。有機層を回収し水層をDCMで抽出した。有機層を回収し、合わせて、飽和NaHCO3溶液(水溶液)で、さらに続けて、水、塩水で洗浄した。有機層を回収し、無水MgSO4上で乾燥し、ろ過した。溶液を濃縮するため溶媒をある程度留去し、シリカプラグ中を通した。溶媒を完全に留去して黄色い固体の生成物、4−ジフェニルアミノベンジルアクリレートモノマー(27.5g、84mmol、収量96%)を得た。
【0056】
実施例2
シラン開始剤の合成− 2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸 3−トリクロロシラニル−プロピルエステルの合成
アリルアルコール(1.02mL、15mmol)とトリエチルアミン(2.51ml、18mmol)のDCM(10ml)溶液を攪拌しながら、2−ブロモイソブチリルブロミド(1.85ml、15mmol)を、0℃、窒素雰囲気下で滴下した。溶液を0℃で1時間攪拌してから、温度を室温まで上げた後、反応混合物をさらに3時間攪拌し、これらを全て窒素雰囲気下で行った。沈殿物をろ過で除き、有機層を飽和NH4Clで洗浄した後、水で洗浄した。有機層を無水MgSO4で乾燥させた後ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。生成物は、溶離液として9:1 ヘキサン:エチルアセテートを用いてカラムクロマトグラフィー(シリカカラム)で精製した。溶媒を留去して、透明の液体生成物である、プロパ−2−エニル−2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸(prop-2-enyl-2-bromo-2-methyl propionate、1.72g、収量55%)を得た。
【0057】
乾燥した窒素雰囲気下で前記プロパ−2−エニル−2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸(prop-2-enyl-2-bromo-2-methyl propionate、0.97g)とトリクロロシラン(15ml)を乾いたフラスコに移した。ヘキサクロロ白金酸(21mg)のエタノールと1,2−ジメトキシエタン(混合物で3.75ml)の1:1(v/v)混合溶液を反応混合物に滴下した。反応物を、光を遮った環境で、乾燥窒素雰囲気下で18時間攪拌した。無水トルエン(5ml)を加え、減圧下でフリーのトリクロロシランを除去した。無水DCM(20ml)を加え、残りのトリクロロシランを減圧下で除去した。得られた生成物は、クーゲルロール(Kugelrohr)蒸留(200℃、約11mmHg)により蒸留して、透明な液体である表題の生成物2−ブロモ−2−メチル−プロピオン酸 3−トリクロロシラニル−プロピルエステル(0.42g、収量約26%)を得た。
【0058】
実施例3
基板の調整: SAMを有するITOコート基板、およびSAMを有するPEDOT/PSSを持つITOコート基板の調整
(a)ITO
最初に、ITOで前もってコーティングされたガラス(Donnelly,Inc.より購入)をアセトン中で超音波洗浄(10分間)し、その後イソプロパノール中で超音波洗浄(10分間)した。基板は、5:1:1 水:アンモニア:過酸化水素 の混合物で1時間、70℃で処理することにより親水的になった[代わりに、酸素プラズマで処理しても基板を親水性にすることができる(100Wで約30秒)]。最後に、基板を清浄にし、乾燥し、水で洗浄し、窒素ガンで乾燥し100℃のオーブンで2−4時間焼いた。
【0059】
上記親水性ITOコート基板上の、実施例2で調整した開始剤の自己組織化単分子膜(SAM)は、前記開始剤を超臨界CO2内で反応させるか、または前記開始剤のトルエン溶液中での反応か、どちらかによって調製された。
【0060】
(i)
超臨界CO2:上記で調製されたITOスライドを、10mlステンレス鋼高圧容器に入れた。前記実施例2で調製されたシラン開始剤(約2マイクロリットル)を前記容器に入れ、容器をCO2で満たして(1000−3000psi)、必要な温度に加熱した(20−40℃)。反応後、基板は容器をCO2で満たしてすすぎ、シロキサン分子のSAMを有するITOコート基板は使用時までデシケータで保管した。
【0061】
(ii)
開始剤溶液を使用:前記実施例2で調製したシラン開始剤の無水トルエン(15ml)溶液1mMを作り、ミリポアフィルタを通して前記ITOスライドを入れた皿内に入れた。必要に応じて、スライドを完全に覆うためにトルエンを加えた。他に選択可能な方法として、その後トリエチルアミン(25−50マイクロリットル)を皿に加えた。皿に覆いをして1時間から10日の間室温で放置した。その後、スライドを溶液から出し、連続してトルエンで洗浄、トルエン中で超音波洗浄、アセトンで洗浄、エタノールで洗浄し、窒素流れを用いて乾燥した。シロキサン分子のSAMを有するITOコート基板は使用時まで窒素下で保存した。
【0062】
(b)PEDOT/PSSでコートされたITO
最初に、ITOコートガラス基板を清浄にし、上記3(a)のように酸素プラズマ処理した。このようにして得られたITOコート基板を、PEDOT/PSS水溶液を用いて4000rpmで60秒スピンコートした(溶液中のPEDOT:PSSの比は1:16)。このようにして得られたPEDOT/PSS被覆ITOコート基板を、120℃で1時間焼成した。最後に、PEDOT/PSS表面にダングリング水酸基を付与するために、PEDOT/PSS表面を100Wで30秒間酸素プラズマ処理した。
【0063】
ポリジメチルシロキサン(PDMS)スタンプは、上記実施例2で作られた開始剤のヘキサン溶液で濡らした。前記の濡れたPDMSスタンプをPEDOT/PSS表面に大気雰囲気下で1分間そっと押し付けて、PEDOT/PSS表面上のダングリング水酸基とシロキサン開始剤との間に共有結合を生じさせ、目的物を得た。別の手段として、ITOコート基板のところで記述したのと同様に、シラン開始剤の希薄溶液に基板を浸してSAMを析出させることも可能であると考えられる。
【0064】
(c)二酸化ケイ素でコートされたシリコン基板
最初に、シリコン基板を清浄にし、上記3(a)のように酸素プラズマ処理してシリコン基板の最上に二酸化ケイ素の薄膜を付与した。
【0065】
ポリジメチルシロキサン(PDMS)スタンプを上記実施例2で作成した開始剤のヘキサン溶液に浸した。濡れたPDMSスタンプを二酸化ケイ素表面に大気雰囲気下で1分間そっと押し付けて、二酸化ケイ素表面とシロキサン開始剤との間に共有結合を生じさせ、目的物を得た。別の手段として、ITOコート基板のところで記述したのと同様に、シラン開始剤の希薄溶液に基板を浸してSAMを析出させることも可能であると考えられる。
【0066】
実施例4
ポリマーブラシの成長:前処理された基板上におけるポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシの成長
上記実施例1で合成した4−ジフェニルアミノベンジルアクリレートモノマーを室温で(一般的にはモノマーを完全に溶解させるには、すなわち90℃に加熱する必要はあるが)溶媒に溶かし(通常はDMF)、濃度が約1g/mlの溶液を得た。配位子(通常N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(N,N,N',N',N"-pentamethyldiethylenetriamine、PMDTA))を加え、次に阻害剤(通常銅(II)ブロミド)を加えた。次に、溶液に窒素をバブリングして、溶液中の空気を窒素に置換した。その後触媒(通常銅(I)ブロミドを使用する)を、上記のようにして得た溶液に加えた。
【0067】
別途、上記実施例3で調製したSAMを有する基板のひとつをシュレンク・チューブ中に配置して、チューブ中の空気を排気/充填を繰り返すことにより窒素で置き換えた。触媒を添加後出来るだけすぐに、上記で調製された前記重合溶液を、基板を含んだままシュレンク・チューブに移した。このようにして得られた重合反応混合物を、窒素雰囲気下で適当な温度でしばらく反応させる(一般的には90℃で90分)。その後、ジクロロメタンで洗浄しながらチューブから基板を取り出し、溶媒(例えば、ジクロロメタン)で洗浄して、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシでコートされた目的の基板を得た。
【0068】
実施例5
ブラシを第二の成分でコーティング:実施例4で調整した基板をペリレンまたはセレン化カドミウムのナノ結晶でコーティング
(a)第一の手法:ペリレンによるドロップキャスティング法
ペリレンをパラキシレン(ペリレンには貧溶媒であるが、ブラシには良溶媒)に溶解させて、溶液が過飽和状態であり全てのペリレンが溶解していない状態にした。その後溶液を70℃で1時間、全てのペリレンが溶解するまで加熱した。上記実施例4で調製した基板表面上のブラシが熱溶液にコートされると、ブラシは膨潤した(溶媒の蒸発速度を遅くするため飽和雰囲気下で行ってもよい)。溶液の温度が下がり、時間がたつと(例えば30分)、ペリレンは溶液から降下し始めてブラシに凝集し、統合されたネットワークを形成して、ペリレン成分が生成物のポリマーブラシにインターカレートされた目的物が生成した。このドロップキャスト法に用いられた溶液の体積は、目的とする膜厚によって異なる。一般的な膜厚である200nmは、濃度6g/リットルのパラキシレン溶液の場合、前記溶液0.15mlを12mm×12mmの正方形の基板上に沈積させることによって達成された。代わりに、目的とする厚さの膜を形成するのに必要な量より多くの溶液や、より高濃度の溶液を使用することも有利な手段となりうる。後者の場合、余剰の溶媒を除くために指定された時間(一般的には、およそ10分程度)が経過した後、基板をスピニングしてもよい。
【0069】
(b)第二の方法:ペリレンによるスピンコーティング法
これはペリレンとブラシの双方に共通した溶媒からのスピンコーティングを含むものである。最初に、ペリレンをクロロホルム、パラキシレンまたはトルエン等の適当な溶媒に溶解させた。実施例4で調製した基板のブラシをこのように得られた溶液でコートし、目的の厚さの膜を得るために、基板を前もって決められた速度でスピンさせた。例えば、濃度25gペリレン/リットルのペリレンのクロロホルム溶液は、約100nmの膜厚を得るために1500rpmで1秒間スピンした。ペリレンをブラシに浸透させるために、スピニング前に、溶液をある程度の時間ブラシ上に置いておいてもよい。もしペリレンがブラシより溶媒と親和性が高ければ、最上のペリレン層の下にブラシが折りたたまれた二層を形成すると思われる(これは利点を有しない)。しかし、もしペリレンとブラシとの親和性が高ければ、ペリレンがブラシに凝集した統合されたネットワークを形成すると考えられる。これを実施するために、例えばメタノールを1%含むクロロホルムのような混合溶媒を使うのも良い方法であると思われる。
【0070】
(c)第三の方法:ペリレンを用いた他のスピンコーティング法
実施例4で調製された基板のブラシはペリレンのクロロホルムまたはパラキシレン溶液でコートした。すぐに短時間、一般的には1秒間、スピンした。これで、十分均一なフィルムが作成可能である。しかし、全ての溶媒が蒸発してはいない。基板は、クロロホルムまたはパラキシレンの飽和雰囲気下で、ペリレンとブラシが統合されたネットワークを形成する時間があるようにゆっくりと乾燥させた。
【0071】
(d)第四の方法:セレン化カドミウムナノ結晶を用いたスピンコーティング法
セレン化カドミウム結晶は、Peng, Z. A.; Peng, X. G. J. Am. Chem. Soc. 124,3343− (2002)に記載の手順に従って調整された。結晶は直径2.6nmであることが、吸収スペクトルから見積もられた。実施例4で調製された基板のブラシは、これらナノ結晶の溶液(25g/l 1:10 ピリジン:クロロホルム)にクロロホルム溶媒飽和雰囲気下で30分間浸した。浸漬後、基板を注意深くスピンコーターに配置し、余剰な溶媒をスピンで除去した。結果として得られた処理後の基板を、ピリジンを完全に除去するために150℃で30分間アニールした。
【0072】
(e)第五の方法:セレン化カドミウムのドロップキャスティング法
実施例4で調製された基板のブラシを、上記実施例5(d)(25g/l 1:10 ピリジン:クロロホルム)に記載したように調製したセレン化カドミウム結晶の溶液に、クロロホルム溶媒飽和雰囲気下で30分間浸した。浸漬後、溶媒を蒸発させると、ブラシ基板上にセレン化カドミウム結晶の厚い被覆が残った。調整された基板は、その後ピリジンを完全に除去するために150℃で30分間アニールした。第四の方法と比較して第五の方法の利点は、ブラシ内により厚いナノ結晶層を得ることが可能なことである。
【0073】
(f)第六の方法:セレン化カドミウムを用いた電気メッキ
実施例4で調製された基板のブラシを、上記実施例5(d)(25g/l 1:10 ピリジン:クロロホルム)に記載ように調製したセレン化カドミウム結晶の溶液に浸した。さらなる電極(カソード)をアノード上の溶液に接触するよう配置した。ブラシコートされた基板に垂直方向に溶液を通じて電場を誘起するため、カソードに電圧を与えた。電場の関数を2倍で、電場により実施例4で調製された基板のブラシは、アノード表面から垂直方向に引き伸ばされ、さらに電場によってセレン化カドミウム結晶がアノード方向に移動し、ポリマーブラシ間の空間に充填される。指定の時間後、すなわち5分間、電場を切り、カソードを除き、余剰の溶媒はスピンコーティングによってブラシの最上部から除いた。
【0074】
実施例6:カソードの析出:実施例5で生成された第二成分層のカソード材料によるコーティング
カソードは、実施例5の生成物上に、高い真空度である10−6ミリバールの条件下で熱的蒸発法により蒸着した。カソードに使われた材料は、アルミニウム、マグネシウム、またはカルシウムのどれかであった。
【0075】
上記実施例3(b)に従って作られたPEDOT/PSSで覆われたITOコートガラス基板上に上記実施例2で作った開始剤のSAMと、実施例4に従って前記SAM開始剤から成長させたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシを有し、上記実施例5(b)に従ってペリレンでコートされその後上記実施例6に従ってアルミニウムでコートされたものを有する、実施例6に従って作製された光起電性素子を、素子の特性を調べるためにテストした。ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)とペリレンの吸収スペクトルを図6に示し、本発明のブラシ素子と、これに相当する、既存技術による素子でポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)とペリレン(H.J.Snaith et al.,Nano.Lett.,2002,2,12,に記載された手順に従って作製された、ただし前記参考文献におけるパラキシレンの代わりに、溶媒としてクロロホルムが使用されていることを除く)のブレンドを含む半導体層を有する素子の外部量子効率(EQEスペクトル)を図7に、また、シリコン基板から成長したブラシの完全被覆、ITO基板上に成長したブラシ、ITO基板のAFM像を図8に示した。
【0076】
EQEスペクトルからわかるように、本発明の素子はピーク波長における効率が2%であった。ブラシ膜のAFM像から、ブラシによる被覆はそれほど厚くなく、第二成分の適用を最適化するためにさらなる検討が必要である。しかし、これらの結果から、半導体ポリマーブラシを有する本発明の素子は、ブレンド素子の性質を最大にするという意味で半導体ポリマーブラシの使用を大変有望なものとするような、大変興味深い性能特性を示すことが明らかである。
【0077】
上記実施例3に従って作製したITOコートガラス基板上に上記実施例2で作製した開始剤のSAM、実施例4に従って前記SAM開始剤から成長させたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ、スピンコート(4000rpm)されたPEDOT:PSSカソード(厚さ約40nm)と接触面として蒸着された金フィルム(厚さ約100nm)を有するダイオードを作製し、素子としての性質をテストした。さらに、ITOコートガラス基板上にスピンコートされたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)膜、スピンコートされた(4000rpm)PEDOT:PSSカソード(厚さ約40nm)と接触面として蒸着された金フィルム(厚さ約100nm)もまた、素子としての性質をテストした。電流電圧特性を図9に示した;ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシダイオードは、スピンコートされたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)膜を含むダイオードと比較して、より高い電流密度を維持する。これらの結果から、ポリマーブラシは、ダイオードの外部へ(光起電性素子の場合)または内部へ(エレクトロルミネッセンス装置の場合)電荷を移動するのに適しているであろうことが明らかである。
【0078】
実施例4に従って作製されたポリマーブラシ膜[ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)膜]、ITO基板にスピンコートされたセレン化カドミウムナノ結晶の膜、実施例5(d)に従って作製されたセレン化カドミウムナノ結晶膜でコーティングされたポリマーブラシ膜[ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ]のAFM像を図12に示した。セレン化カドミウムナノ結晶でコートされたポリマーブラシ膜の像は、ITO基板にスピンコートされたセレン化カドミウムナノ結晶の膜と比較するとポリマーブラシ膜の像に近く、このことはセレン化カドミウムナノ結晶はポリマーブラシに引き付けられ、ポリマーブラシはたとえ膜表面ではなくとも、近傍に存在することを示唆している。
【0079】
実施例4に従って作製されたポリマーブラシ膜[ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ]、ITO基板にスピンコートされたセレン化カドミウムナノ結晶の膜、実施例5bに従って作製されたセレン化カドミウムナノ結晶膜でコートされたポリマーブラシ膜[ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ]の紫外-可視吸収スペクトルを図13に示した。ITO基板上にスピンコートされたセレン化カドミウムナノ結晶の膜とセレン化カドミウムナノ結晶膜でコートされたポリマーブラシ膜の、530nmの吸収ピークは同じであることに注目すべきであり、このことはポリマーブラシ膜がセレン化カドミウムナノ結晶の約25nmを取り込むことを暗に示している。
【0080】
前記実施例3(a)で作製されたITOコートガラス基板上に実施例2で作製された開始剤のSAMと、実施例4に従って前記SAM開始剤から成長させたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシを有し、スピンコーティングによりPEDOT:PSSアノードで被覆し、前記実施例6に従って金でコートし、実施例6の手順に従って作製されたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシダイオードの素子の特性をテストした。前記実施例3(a)で作製されたITOコートガラス基板上に実施例2で作製された開始剤のSAMを有し、実施例4に従って前記SAM開始剤から成長させたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシを、上記実施例5(d)に従ってセレン化カドミウムナノ結晶膜でコートし、前記実施例6に従ってアルミニウムでコートした、実施例6に従って作製された光起電性素子も、素子特性をテストした。図13に示した電流電圧特性から、上記のように作製された光起電性素子が、上記のように作製されたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシダイオードと比較して電流密度が高いことが示された。セレン化カドミウムナノ結晶は、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシと比較して電荷移動度がより高い。このことは、セレン化カドミウムナノ結晶内部にアノードからカソードへと膜を横断する経路があること、すなわちセレン化カドミウムナノ結晶が完全にブラシ間にインターカレートしていることを示唆している。図14のEQEおよびIQEスペクトルからわかるように、ブラシ素子は、実施例6に従って作製された、ITOコートガラス基板上の重量において1:8 ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート):セレン化カドミウムであり且つ上記実施例6に従ってアルミニウムでコートされた、厚さ100nmのスピンコートされた膜を有する、最適化されたブレンド素子と比較して高い特性を示す。ブラシ素子は、集められた電子に対する吸収されたフォトン数に関する変換効率がほぼ単一に近い。このことは光電子素子に使われるポリマーブラシが、将来の世代の電子機器と競合しうるものとなると信じる重要な根拠である。
【0081】
実施例7
浸透されたポリマーブラシ膜の特性
浸透の特性を調べるために、ローダミン色素でコートしたポリマーブラシ膜を作製した。膜は、前記実施例3(a)に従って作製されたITOコートガラス基板上に前記実施例2で作製された開始剤のSAMと、実施例4に従って前記SAM開始剤から成長させたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシを有し、実施例5(b)に従ってローダミン色素でコートして、実施例5に従って作製された。浸透の度合いを調べるため、酸素プラズマバレルエッチング装置を、膜内部の構造を調べるため紫外-可視スペクトルと組み合わせて利用した。酸素プラズマで有機膜表面を一定速度(ポリマーと色素両方に関して〜5nm/分)で切除して、各処理後紫外−可視スペクトルで膜の吸収スペクトルを測定した。残った材料の組成は、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)とローダミン色素の吸収ピークの強さを比較することによって決定した。ローダミン色素は580nmに吸収ピークを持ち、その領域ではブラシによる吸収は無視しうるので、この成分の相対的な厚さを直接計算することができる。ブラシの吸収ピークは305nmであり、ここは色素にも若干吸収があるが、寄与分を引くことによって説明される。図10に示す吸収スペクトルから、5分間エッチングした後305nmの吸収は色素コーティング前のもとのブラシ膜と同等のものであることがわかった。しかし、まだ色素の大きな吸収(厚さ46nmのもとの色素の膜で580nmに〜0.24の吸収)があり、これはポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜に色素が深く浸透していることを示唆している。各成分の相当厚さは、吸収スペクトルから膜厚の関数として見積もることが可能である。図11の上の図から、ブラシは長さにして100nmまで引き伸ばされており、全フィルム厚さが15nm以下になっても色素が存在することが明らかである。厚み分布は膜成分に関して残りのフィルム厚さを足し合わせたものと等価である。この分布の微分は基板に対する位置の関数で表した膜の組成を与え、このことは図11の第二図に示されている。このことは、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシが第二成分にコートされているときに、ポリマーと色素は垂直方向に2つの反対の傾向を有する濃度勾配をもちながら組織化されており、相互に浸透するネットワークを作り上げていることを示す強い根拠を与える。
【0082】
実施例8
電界効果型トランジスタの作製:二酸化ケイ素コートシリコン基板から成長させたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシを組み込んだ電界効果型トランジスタの作製
前記実施例3(b)に従って(実施例3(b)で使われたPEDOT:PSSで被覆されたITOコートガラス基板の代わりに清浄な二酸化ケイ素コートシリコン基板を使用しているということを除いて)作製された二酸化ケイ素コートシリコン基板上に実施例2で作製された開始剤のSAMと、実施例4に従って前記SAM開始剤から成長させたポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシを有し、上記実施例6に従ってソース電極やドレイン電極として金を蒸着した、電界効果型トランジスタを作製した。素子構造の概略図を図15に示す。
【図面の簡単な説明】
【0083】
本発明は、以下の図を参照し、それに続く例示を考慮することによって、さらに理解されると思われる。
【図1】図1は、アノードでコートされ、表面に自己組織化膜が吸着または結合したガラス基板の概略図であり、薄い灰色の長円はSAMのチオールまたはシロキサン分子を表しており、黒丸は開始剤の末端基を表している。
【図2】図2は、図1に示した、前もって調製された基板から成長したポリマーブラシの概略図を示している。
【図3】図3は、本発明の光電変換素子またはエレクトロルミネッセンス素子の構造の概略図であり、ドットで示した領域は半導体ポリマーブラシにインターカレートされた第二の半導体材料を表している。
【図4】図4は、前もって調製された基板に付着した混合されたブラシ層を有する光電変換素子またはエレクトロルミネッセンス素子の構造の概略図であり、黒色のブラシはひとつのアクティブな半導体成分を、また灰色のブラシは、少なくともひとつの他のアクティブな半導体成分を表している。
【図5】図5は、前もって調製された基板に付着したブロック共重合体ブラシ層を有する光電変換素子またはエレクトロルミネッセンス素子の構造の概略図であり、黒色のブラシはひとつのアクティブな半導体成分を、また灰色のブラシは、第一の成分の末端から成長した少なくともひとつの他のアクティブな半導体成分を表している。
【図6】図6は、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)(実線)とペリレン(点線)の波長に対する吸収係数のプロットである。
【図7】図7は、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)とペリレンを含む半導体層を有するポリマーブレンド光電変換素子(点線)と、本発明のポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ポリマーブラシがペリレンでインターカレートされたポリマーブラシ光電変換素子(実線)の外部量子効率スペクトルを示している。
【図8】図8は、ITO基板から成長したポリマーブラシ膜(後に本発明のポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ポリマーブラシがペリレンでインターカレートされたポリマーブラシ光電変換素子に用いられる)とシリコン基板と清浄なITO基板から成長したブラシの完全な被膜のAFMスペクトル像を示している。
【図9】図9は、素子構造の中における本発明のポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜、SAM修飾ITO基板/ポリマーブラシ膜/PEDOT:PSSをスピンコートしたカソード/金の接点、の電流電圧特性を示している。
【図10】図10は、修飾されたITOから成長したポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜およびローダミン色素でコートされた修飾ITOから成長したポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜の、酸素プラズマによる表面切除前後の紫外−可視(UV−vis)吸収スペクトルを示している。凡例の数字は、分あたりの切除回数に対応する;一分間は、約5nmの膜の切除に対応する。
【図11】図11はITO基板からの位置の関数で示した膜組成を示している。また、図11は各材料(ポリマーブラシとローダミン)の相対的な量を、図10から計算されるように、膜厚の関数で示している。
【図12】図12は、SAM修飾ITO基板から成長したポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜、ITO基板上にスピンコートされたセレン化カドミウムナノ結晶膜、セレン化カドミウムナノ結晶でコートされた(修飾ITO基板から成長させた)ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜のAFM像を示している。
【図13】図13は、SAM修飾ITO基板から成長させた厚さ45nmのポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜、ITO基板上にスピンコートされた厚さ25nmのセレン化カドミウムナノ結晶膜、セレン化カドミウムナノ結晶でコートされた(修飾ITO基板から成長させた)厚さ45nmのポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜、のUV−vis吸収スペクトルを示している。さらに、図13はブラシダイオード(SAM修飾ITOアノード/(SAM修飾ITOアノードから成長した)厚さ45nmのポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜/PEDOT:PSS/金、を含む)および光電変換素子(SAM修飾ITOアノード/セレン化カドミウムナノ結晶でコートされた(SAM修飾ITOアノードから成長した)厚さ45nmのポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜/アルミニウムカソード)の電流電圧特性を示している。
【図14】図14は、SAM修飾ITOアノード/セレン化カドミウムナノ結晶でコートされた(SAM修飾ITOアノードから成長した)厚さ45nmのポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)ブラシ膜/アルミニウムカソード、の構成を含む光電変換素子(上の曲線)と、ITOアノード/厚さ100nmのポリマーとナノ結晶のブレンドであってポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)とセレン化カドミウムナノ結晶が1:8の重量比のもの/アルミニウムカソード、の構成を含む光電変換素子(下の曲線)の外部量子効率(点線)と内部量子効率(実線)を示している。
【図15】図15は、本発明の電界効果型トランジスタ素子の構造の概略図を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの電極と半導体層とを含み、その半導体層は少なくとも一の正孔輸送半導体材料と少なくとも一の電子輸送半導体材料との混合物を含む有機電子素子であって、前記の一方の半導体材料の少なくとも1つが、前記電極表面のうちの少なくとも一方に付着していて且つ少なくとも一の前記の他方の半導体性材料の少なくとも1つと接触している、半導体ポリマーブラシ状である有機電子素子。
【請求項2】
電極に付着した前記半導体ポリマーブラシと、前記の少なくとも一の他の半導体材料との接触が以下のどれかによって達成される、請求項1に記載の有機電子素子:
(a)前記の少なくとも一の他の半導体材料の、前記半導体ポリマーブラシとのインターカレーション
(b)相互に浸透した、混合されたポリマーのネットワークを与えるための、前記第一の半導体ポリマーブラシの隙間における、さらなる半導体ポリマーブラシとしての、前記の少なくとも一の他の半導体材料の成長;または
(c)前記の2つのまたはそれ以上の半導体成分の間に直接的な共有結合がある二相構造を有する、ブロック共重合ブラシを与えるための、前記半導体ポリマーブラシの末端からの第二の異なるモノマーの重合
【請求項3】
前記素子が、エレクトロルミネッセンス素子、光電変換素子、電界効果型トランジスタ、および液晶素子から選択される、請求項1または請求項2に記載の有機電子素子。
【請求項4】
前記素子が光電変換素子である、請求項3に記載の有機電子素子。
【請求項5】
前記素子がエレクトロルミネッセンス素子である、請求項3に記載の有機電子素子。
【請求項6】
ポリマーブラシの平均長が1nmから1μmである、請求項1から5のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項7】
ポリマーブラシの平均長が少なくとも40nmである、請求項1から5のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項8】
前記半導体ポリマーブラシが、ポリフェニレンビニレン(PPV)とその誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリナフチレン誘導体、ポリインデノフルオレン誘導体、ポリフェナントレニル誘導体、ポリアクリレート誘導体からなるグループから選択されるポリマーを含むブラシである、請求項1から7のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項9】
前記半導体ポリマーブラシが、以下の化学式(I)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、または(XV)で表される単位を含むポリマーからなるグループから選択されるポリマーを含むブラシであって、
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
ここで、
R1は化学式−(CH2)m−X−Yの基であって、
mは0または1から6の整数、
Xは上記で定義した化学式(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、または(XV)または、以下に定義した化学式(II)または(III)の基であって
【化10】
【化11】
ここで、nは0、1または2、
pとqは同じかまたは異なり、各々が0または1から3の整数であって、
R34、R35、R36は各々同じかまたは異なっており、また、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、および、化学式−COR16(ここでR16が、ヒドロキシ基、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基でそのアルキル部が以下に定義されるもの、ジアルキルアミノ基で各アルキル部が同じかまたは異なっているもので以下に定義されるもの、アラルキロキシ基でアラルキル部が以下に定義されるもの、少なくともひとつのハロゲン原子で置換されている以下に定義するアルコキシ基を含むハロアルコキシ基、からなるグループから選択されるもの)からなるグループから選択されるものであって、
または、n、pまたはqは整数2であり、2つの基R34、R35またはR36が各々自らが結合している環内の炭素原子とともに、以下に定義するアリール基、または5から7個の環原子を有し、ひとつもしくはそれ以上の前記環原子が窒素、酸素、硫黄原子からなるグループから選択されたヘテロ原子であるヘテロ環基を形成してもよく、また、
Yは水素原子、R37、NHR38およびNR38R39からなるグループから選択されるものであって、
R37は、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、および化学式−COR16で表される基であってR16は上記で定義したもの、からなるグループから選択され、
また、
R38とR39は各々同じかまたは異なっており、以下に定義するアリール基および以下に定義するアラルキル基からなるグループから選択され;
R2は水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基からなる基からなるグループから選択される;
R8からR15、R17からR33は各々同じかまたは異なり、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、および、化学式−COR16の基でR16は上記で定義したもの、
または、rまたはsは整数の2で、2つの基R32またはR33が各々自らが結合している環内の炭素原子とともに、5から7個の環原子を有し、ひとつまたはそれ以上の前記環原子が窒素、酸素、硫黄原子からなるグループから選択されたヘテロ原子であるヘテロ環基を形成してもよく;
各Z1、Z2およびZ3は同じか異なっており、O、S、SO、SO2、NR3、N+(R3’)(R3’’)、C(R4)(R5)、Si(R4’)(R5’)およびP(O)(OR6)からなるグループから選択され、R3、R3’およびR3’’は同じか異なっており、水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、および以下に定義するアルキル基であって少なくともひとつの化学式−N+(R7)3で示される基で置換されたものであって、各R7は同じか異なっており、水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するアリール基、からなるグループから選択され、R4、R5、R4’、R5’は同じか異なっており、水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、からなるグループから選択され、またはR4、R5はそれ自身が結合している炭素原子とともにカルボニル基となり、R6は水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、からなるグループから選択される;
各X1、X2、X3およびX4は同じか異なっており、以下から選択される:
アリーレン基で1個または複数の環に6から14の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であり、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアルコキシ基からなるグループから選択された、少なくともひとつの置換基で任意に置換されていてもよく;
直鎖または分岐鎖のアルキレン基で1から6個の炭素原子を有するもの;
直鎖または分岐鎖のアルケニレン基で2から6個の炭素原子を有するもの;
および、
直鎖または分岐鎖のアルキニレン基で1から6個の炭素原子を有するもの;または、X1とX2がともに、および/またはX3およびX4はともに以下の化学式(V)の連結基を表すことができるものであって:
X5はアリーレン基で1個または複数の環に6から14の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であり、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアルコキシ基からなるグループから選択された、少なくともひとつの置換基で任意に置換されていてもよく;
各e1、e2、f1、f2は同じか異なっており、0または整数の1から3であり;
各g、q1、q2、q3、q4は同じか異なっており、0、1または2であり;
各h1、h2、j1、j2、j3、l1、l2、l3、l4、rおよびsは同じか異なっており、0または整数の1から4であり;
各i、k1、k2、o1、およびo2は同じか異なっており、0または整数の1から5であり;また、
各p1、p2、p3およびp4は0または1であり;
上記アルキル基は直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、1から20個の炭素原子を有し、
上記ハロアルキル基は、上記で定義したアルキル基が、少なくともひとつのハロゲン原子で置換されたものであり;
上記アルコキシ基は直鎖または分岐鎖のアルコキシ基であり、1から20個の炭素原子を有し、
上記アルコキシアルキル基は、上記で定義したアルキル基が、少なくともひとつの上記で定義されたアルコキシ基で置換されたものであり;また、
上記アリール基とアラルキル基(アルキル部に1から20個の炭素原子を有する)のアリール部および上記アリロキシ基は芳香族炭化水素基で1個または複数の環に6から14の炭素原子を有しており、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、上記に定義するアルキル基、上記に定義するハロアルキル基、上記に定義するアルコキシアルキル基、上記に定義するアルコキシ基からなるグループから選択された、少なくともひとつの置換基で任意に置換されていてもよい、請求項1から7のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項10】
前記半導体ブラシが、化学式(I)、(VIII)、(IX)、(X)、(XIV)または(XV)で表される単位を含むホモポリマーブラシである、請求項9に記載の有機電子素子。
【請求項11】
前記半導体ポリマーブラシが、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)、PPV、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチル)ヘキシロキシーフェニレンービニレン)(“MEH−PPV”)、PPVジアルコキシ誘導体、PPVジアルキル誘導体、ポリフルオレン誘導体、からなるグループから選択されるポリマーを含むブラシである、請求項1から7のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項12】
前記半導体ポリマーブラシが、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)、PPV、MEH−PPV、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−ヘキシルフルオレン))、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−((4−sec−ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン)(TFB)、およびポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−3,6−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)からなるグループから選択されるポリマーを含むブラシである、請求項1から7のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項13】
前記の少なくとも一の他の半導体材料が、半導体ポリマー材料であるか、または半導体有機低分子である、請求項1から12のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項14】
前記の少なくとも一の他の半導体材料が、ポリフェニレンビニレン(PPV)とその誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリナフチレン誘導体、ポリインデノフルオレン誘導体、ポリフェナントレニル誘導体、ポリアクリレート誘導体、からなるグループから選択される半導体ポリマーであるか、または、アルミニウムキノリノール錯体、ペリレンとその誘導体、遷移金属錯体、TMHDやキナクリドン等の有機配位子を有するランタノイドおよびアクチノイド、ルブレン、およびスチリル色素からなるグループから選択される半導体有機低分子である、請求項13に記載の有機電子素子。
【請求項15】
前記半導体ポリマーが、請求項9で定義した化学式(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)(XIV)または(XV)で表される単位を含むポリマーから選択される、請求項14に記載の有機電子素子。
【請求項16】
前記半導体ポリマーが、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)、PPV、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチル)ヘキシロキシーフェニレンービニレン)(MEH−PPV)、PPVジアルコキシ誘導体、PPVジアルキル誘導体、ポリフルオレン誘導体、からなるグループから選択される、請求項14に記載の有機電子素子。
【請求項17】
前記半導体ポリマーが、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)、PPV、MEH−PPV、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−ヘキシルフルオレン))、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−((4−sec−ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン)(TFB)、およびポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−3,6−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)からなるグループから選択される、請求項14に記載の有機電子素子。
【請求項18】
前記半導体有機低分子が、アルミニウムキノリノール錯体、ペリレンとその誘導体からなるグループから選択される、請求項14に記載の有機電子素子。
【請求項19】
前記の少なくとも一の他の半導体材料が半導体ナノ結晶材料である、請求項1から12のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項20】
前記半導体ナノ結晶材料が、セレン化カドミウム、セレン化鉛、セレン化亜鉛、硫化カドミウム、硫化亜鉛の半導体ナノ結晶から選択される、請求項19に記載の有機電子素子。
【請求項21】
前記半導体材料が、セレン化カドミウムナノ結晶である、請求項20に記載の有機電子素子。
【請求項22】
前記電極が、前記ポリマーブラシを付着させるより前に、正孔輸送層、または電子輸送層でコートされた、請求項1から21のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項23】
前記素子がただ一種類のポリマーブラシで作製された、請求項1から22のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか一項に記載の有機電子素子の製造方法であって:
(a)一方の電極を形成するための材料によって基板をコーティングする段階と;
(b)任意で、このように形成された電極を、開始剤基で末端キャッピングされた自己組織化単分子膜によって、またはフリーラジカルを発生することができる自己組織化単分子膜によってコーティングする段階と;
(c)モノマー単位を含むポリマーブラシを前記電極表面から成長させるのに適した条件下で、ステップ(b)で作製された自己組織化単分子膜によって任意にコートされた電極を前記モノマーの溶液に接触させる段階と、;
(d)ステップ(c)の生成物を、ポリマーブラシが少なくとも一のさらなる半導体材料と接触している生成物を作るような方法で処理する段階と;
(e)ステップ(d)の生成物表面の最上層にさらなる電極を形成させるために材料をコーティングする段階と、を備えた方法。
【請求項25】
前記自己組織化単分子膜が、チオール分子、または開始剤基で末端キャップされたシロキサン分子を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
任意のステップ(b)またはステップ(c)の前に、正孔輸送層または電子輸送層を析出させる、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも2つの電極と半導体層を含み、その半導体層は少なくとも一の正孔輸送半導体材料または少なくとも一の電子輸送半導体材料を含むものであって、前記少なくとも一の半導体材料が、少なくとも一の前記電極表面に付着している、半導体ポリマーブラシの形状を有する有機電子素子。
【請求項28】
素子が電界効果型トランジスタである、請求項27に記載の有機電子素子。
【請求項29】
以下を含む方法であって、請求項27または28に記載の有機電子素子の製造方法であって:
(a)一方の電極を形成するための材料によって基板をコーティングする段階と;
(b)任意で、このように形成された電極を、電子絶縁材料層によってコーティングする段階と;
(c)任意で、(a)で形成された電極、またはそれに続く任意のステップ(b)で形成された電極を、開始剤基で末端キャッピングされた自己組織化単分子膜によって、またはフリーラジカルを発生することができる自己組織化単分子膜によってコーティングする段階と;
(d)モノマー単位を含むポリマーブラシを前記電極表面から成長させるのに適した条件下で、ステップ(c)で作製された自己組織化単分子膜で任意にコートされた電極を前記モノマーの溶液に接触させる段階と;
(e)任意で、(d)で形成されたポリマーブラシを、電子絶縁材料層でコーティングする段階と;
(f)ステップ(d)、またはそれに続く任意のステップ(e)の生成物の最上面にさらなる電極を形成するよう材料をコーティングする段階と、を備えた方法。
【請求項30】
(a)で形成された電極が、ステップ(b)に示したように電子絶縁材料の層でコートされた、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
(d)で形成されたポリマーブラシが、ステップ(e)に示したように電子絶縁材料の層でコートされた、請求項29に記載の方法。
【請求項1】
少なくとも2つの電極と半導体層とを含み、その半導体層は少なくとも一の正孔輸送半導体材料と少なくとも一の電子輸送半導体材料との混合物を含む有機電子素子であって、前記の一方の半導体材料の少なくとも1つが、前記電極表面のうちの少なくとも一方に付着していて且つ少なくとも一の前記の他方の半導体性材料の少なくとも1つと接触している、半導体ポリマーブラシ状である有機電子素子。
【請求項2】
電極に付着した前記半導体ポリマーブラシと、前記の少なくとも一の他の半導体材料との接触が以下のどれかによって達成される、請求項1に記載の有機電子素子:
(a)前記の少なくとも一の他の半導体材料の、前記半導体ポリマーブラシとのインターカレーション
(b)相互に浸透した、混合されたポリマーのネットワークを与えるための、前記第一の半導体ポリマーブラシの隙間における、さらなる半導体ポリマーブラシとしての、前記の少なくとも一の他の半導体材料の成長;または
(c)前記の2つのまたはそれ以上の半導体成分の間に直接的な共有結合がある二相構造を有する、ブロック共重合ブラシを与えるための、前記半導体ポリマーブラシの末端からの第二の異なるモノマーの重合
【請求項3】
前記素子が、エレクトロルミネッセンス素子、光電変換素子、電界効果型トランジスタ、および液晶素子から選択される、請求項1または請求項2に記載の有機電子素子。
【請求項4】
前記素子が光電変換素子である、請求項3に記載の有機電子素子。
【請求項5】
前記素子がエレクトロルミネッセンス素子である、請求項3に記載の有機電子素子。
【請求項6】
ポリマーブラシの平均長が1nmから1μmである、請求項1から5のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項7】
ポリマーブラシの平均長が少なくとも40nmである、請求項1から5のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項8】
前記半導体ポリマーブラシが、ポリフェニレンビニレン(PPV)とその誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリナフチレン誘導体、ポリインデノフルオレン誘導体、ポリフェナントレニル誘導体、ポリアクリレート誘導体からなるグループから選択されるポリマーを含むブラシである、請求項1から7のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項9】
前記半導体ポリマーブラシが、以下の化学式(I)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、または(XV)で表される単位を含むポリマーからなるグループから選択されるポリマーを含むブラシであって、
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
ここで、
R1は化学式−(CH2)m−X−Yの基であって、
mは0または1から6の整数、
Xは上記で定義した化学式(X)、(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、または(XV)または、以下に定義した化学式(II)または(III)の基であって
【化10】
【化11】
ここで、nは0、1または2、
pとqは同じかまたは異なり、各々が0または1から3の整数であって、
R34、R35、R36は各々同じかまたは異なっており、また、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、および、化学式−COR16(ここでR16が、ヒドロキシ基、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基でそのアルキル部が以下に定義されるもの、ジアルキルアミノ基で各アルキル部が同じかまたは異なっているもので以下に定義されるもの、アラルキロキシ基でアラルキル部が以下に定義されるもの、少なくともひとつのハロゲン原子で置換されている以下に定義するアルコキシ基を含むハロアルコキシ基、からなるグループから選択されるもの)からなるグループから選択されるものであって、
または、n、pまたはqは整数2であり、2つの基R34、R35またはR36が各々自らが結合している環内の炭素原子とともに、以下に定義するアリール基、または5から7個の環原子を有し、ひとつもしくはそれ以上の前記環原子が窒素、酸素、硫黄原子からなるグループから選択されたヘテロ原子であるヘテロ環基を形成してもよく、また、
Yは水素原子、R37、NHR38およびNR38R39からなるグループから選択されるものであって、
R37は、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、および化学式−COR16で表される基であってR16は上記で定義したもの、からなるグループから選択され、
また、
R38とR39は各々同じかまたは異なっており、以下に定義するアリール基および以下に定義するアラルキル基からなるグループから選択され;
R2は水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基からなる基からなるグループから選択される;
R8からR15、R17からR33は各々同じかまたは異なり、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、および、化学式−COR16の基でR16は上記で定義したもの、
または、rまたはsは整数の2で、2つの基R32またはR33が各々自らが結合している環内の炭素原子とともに、5から7個の環原子を有し、ひとつまたはそれ以上の前記環原子が窒素、酸素、硫黄原子からなるグループから選択されたヘテロ原子であるヘテロ環基を形成してもよく;
各Z1、Z2およびZ3は同じか異なっており、O、S、SO、SO2、NR3、N+(R3’)(R3’’)、C(R4)(R5)、Si(R4’)(R5’)およびP(O)(OR6)からなるグループから選択され、R3、R3’およびR3’’は同じか異なっており、水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、および以下に定義するアルキル基であって少なくともひとつの化学式−N+(R7)3で示される基で置換されたものであって、各R7は同じか異なっており、水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するアリール基、からなるグループから選択され、R4、R5、R4’、R5’は同じか異なっており、水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、からなるグループから選択され、またはR4、R5はそれ自身が結合している炭素原子とともにカルボニル基となり、R6は水素原子、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリール基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアラルキル基、からなるグループから選択される;
各X1、X2、X3およびX4は同じか異なっており、以下から選択される:
アリーレン基で1個または複数の環に6から14の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であり、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアルコキシ基からなるグループから選択された、少なくともひとつの置換基で任意に置換されていてもよく;
直鎖または分岐鎖のアルキレン基で1から6個の炭素原子を有するもの;
直鎖または分岐鎖のアルケニレン基で2から6個の炭素原子を有するもの;
および、
直鎖または分岐鎖のアルキニレン基で1から6個の炭素原子を有するもの;または、X1とX2がともに、および/またはX3およびX4はともに以下の化学式(V)の連結基を表すことができるものであって:
X5はアリーレン基で1個または複数の環に6から14の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であり、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、以下に定義するアルキル基、以下に定義するハロアルキル基、以下に定義するアルコキシアルキル基、以下に定義するアリロキシ基、以下に定義するアルコキシ基からなるグループから選択された、少なくともひとつの置換基で任意に置換されていてもよく;
各e1、e2、f1、f2は同じか異なっており、0または整数の1から3であり;
各g、q1、q2、q3、q4は同じか異なっており、0、1または2であり;
各h1、h2、j1、j2、j3、l1、l2、l3、l4、rおよびsは同じか異なっており、0または整数の1から4であり;
各i、k1、k2、o1、およびo2は同じか異なっており、0または整数の1から5であり;また、
各p1、p2、p3およびp4は0または1であり;
上記アルキル基は直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、1から20個の炭素原子を有し、
上記ハロアルキル基は、上記で定義したアルキル基が、少なくともひとつのハロゲン原子で置換されたものであり;
上記アルコキシ基は直鎖または分岐鎖のアルコキシ基であり、1から20個の炭素原子を有し、
上記アルコキシアルキル基は、上記で定義したアルキル基が、少なくともひとつの上記で定義されたアルコキシ基で置換されたものであり;また、
上記アリール基とアラルキル基(アルキル部に1から20個の炭素原子を有する)のアリール部および上記アリロキシ基は芳香族炭化水素基で1個または複数の環に6から14の炭素原子を有しており、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、上記に定義するアルキル基、上記に定義するハロアルキル基、上記に定義するアルコキシアルキル基、上記に定義するアルコキシ基からなるグループから選択された、少なくともひとつの置換基で任意に置換されていてもよい、請求項1から7のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項10】
前記半導体ブラシが、化学式(I)、(VIII)、(IX)、(X)、(XIV)または(XV)で表される単位を含むホモポリマーブラシである、請求項9に記載の有機電子素子。
【請求項11】
前記半導体ポリマーブラシが、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)、PPV、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチル)ヘキシロキシーフェニレンービニレン)(“MEH−PPV”)、PPVジアルコキシ誘導体、PPVジアルキル誘導体、ポリフルオレン誘導体、からなるグループから選択されるポリマーを含むブラシである、請求項1から7のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項12】
前記半導体ポリマーブラシが、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)、PPV、MEH−PPV、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−ヘキシルフルオレン))、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−((4−sec−ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン)(TFB)、およびポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−3,6−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)からなるグループから選択されるポリマーを含むブラシである、請求項1から7のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項13】
前記の少なくとも一の他の半導体材料が、半導体ポリマー材料であるか、または半導体有機低分子である、請求項1から12のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項14】
前記の少なくとも一の他の半導体材料が、ポリフェニレンビニレン(PPV)とその誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリナフチレン誘導体、ポリインデノフルオレン誘導体、ポリフェナントレニル誘導体、ポリアクリレート誘導体、からなるグループから選択される半導体ポリマーであるか、または、アルミニウムキノリノール錯体、ペリレンとその誘導体、遷移金属錯体、TMHDやキナクリドン等の有機配位子を有するランタノイドおよびアクチノイド、ルブレン、およびスチリル色素からなるグループから選択される半導体有機低分子である、請求項13に記載の有機電子素子。
【請求項15】
前記半導体ポリマーが、請求項9で定義した化学式(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XIII)(XIV)または(XV)で表される単位を含むポリマーから選択される、請求項14に記載の有機電子素子。
【請求項16】
前記半導体ポリマーが、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)、PPV、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチル)ヘキシロキシーフェニレンービニレン)(MEH−PPV)、PPVジアルコキシ誘導体、PPVジアルキル誘導体、ポリフルオレン誘導体、からなるグループから選択される、請求項14に記載の有機電子素子。
【請求項17】
前記半導体ポリマーが、ポリ(4−ジフェニルアミノベンジルアクリレート)、PPV、MEH−PPV、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−ヘキシルフルオレン))、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−((4−sec−ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン)(TFB)、およびポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−3,6−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)からなるグループから選択される、請求項14に記載の有機電子素子。
【請求項18】
前記半導体有機低分子が、アルミニウムキノリノール錯体、ペリレンとその誘導体からなるグループから選択される、請求項14に記載の有機電子素子。
【請求項19】
前記の少なくとも一の他の半導体材料が半導体ナノ結晶材料である、請求項1から12のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項20】
前記半導体ナノ結晶材料が、セレン化カドミウム、セレン化鉛、セレン化亜鉛、硫化カドミウム、硫化亜鉛の半導体ナノ結晶から選択される、請求項19に記載の有機電子素子。
【請求項21】
前記半導体材料が、セレン化カドミウムナノ結晶である、請求項20に記載の有機電子素子。
【請求項22】
前記電極が、前記ポリマーブラシを付着させるより前に、正孔輸送層、または電子輸送層でコートされた、請求項1から21のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項23】
前記素子がただ一種類のポリマーブラシで作製された、請求項1から22のいずれか一項に記載の有機電子素子。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか一項に記載の有機電子素子の製造方法であって:
(a)一方の電極を形成するための材料によって基板をコーティングする段階と;
(b)任意で、このように形成された電極を、開始剤基で末端キャッピングされた自己組織化単分子膜によって、またはフリーラジカルを発生することができる自己組織化単分子膜によってコーティングする段階と;
(c)モノマー単位を含むポリマーブラシを前記電極表面から成長させるのに適した条件下で、ステップ(b)で作製された自己組織化単分子膜によって任意にコートされた電極を前記モノマーの溶液に接触させる段階と、;
(d)ステップ(c)の生成物を、ポリマーブラシが少なくとも一のさらなる半導体材料と接触している生成物を作るような方法で処理する段階と;
(e)ステップ(d)の生成物表面の最上層にさらなる電極を形成させるために材料をコーティングする段階と、を備えた方法。
【請求項25】
前記自己組織化単分子膜が、チオール分子、または開始剤基で末端キャップされたシロキサン分子を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
任意のステップ(b)またはステップ(c)の前に、正孔輸送層または電子輸送層を析出させる、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも2つの電極と半導体層を含み、その半導体層は少なくとも一の正孔輸送半導体材料または少なくとも一の電子輸送半導体材料を含むものであって、前記少なくとも一の半導体材料が、少なくとも一の前記電極表面に付着している、半導体ポリマーブラシの形状を有する有機電子素子。
【請求項28】
素子が電界効果型トランジスタである、請求項27に記載の有機電子素子。
【請求項29】
以下を含む方法であって、請求項27または28に記載の有機電子素子の製造方法であって:
(a)一方の電極を形成するための材料によって基板をコーティングする段階と;
(b)任意で、このように形成された電極を、電子絶縁材料層によってコーティングする段階と;
(c)任意で、(a)で形成された電極、またはそれに続く任意のステップ(b)で形成された電極を、開始剤基で末端キャッピングされた自己組織化単分子膜によって、またはフリーラジカルを発生することができる自己組織化単分子膜によってコーティングする段階と;
(d)モノマー単位を含むポリマーブラシを前記電極表面から成長させるのに適した条件下で、ステップ(c)で作製された自己組織化単分子膜で任意にコートされた電極を前記モノマーの溶液に接触させる段階と;
(e)任意で、(d)で形成されたポリマーブラシを、電子絶縁材料層でコーティングする段階と;
(f)ステップ(d)、またはそれに続く任意のステップ(e)の生成物の最上面にさらなる電極を形成するよう材料をコーティングする段階と、を備えた方法。
【請求項30】
(a)で形成された電極が、ステップ(b)に示したように電子絶縁材料の層でコートされた、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
(d)で形成されたポリマーブラシが、ステップ(e)に示したように電子絶縁材料の層でコートされた、請求項29に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2007−527605(P2007−527605A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506150(P2006−506150)
【出願日】平成16年4月21日(2004.4.21)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001696
【国際公開番号】WO2004/095599
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(503421575)ケンブリッジ・ユニバーシティ・テクニカル・サービシズ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年4月21日(2004.4.21)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001696
【国際公開番号】WO2004/095599
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(503421575)ケンブリッジ・ユニバーシティ・テクニカル・サービシズ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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