半導体モジュールを備えた半導体装置
【課題】下流側において上流側よりも半導体チップ温度が上昇することが緩和でき、上下流に配置された半導体チップの冷却がより効果的に行われるようにする。
【解決手段】熱抵抗の小さい下アーム側を冷媒流れの下流に位置させることで、冷媒流れの上流側に位置する上アームよりも下流側に位置する下アームの方が冷却効率が高くなるようにする。これにより、上流側での冷媒温度の上昇を抑制して上下流に配置された第1、第2半導体チップ8a、8bを効果的に冷却すること、もしくは、上流側で冷媒温度が上昇したとしても、下流側で高い冷却効率に基づいて十分な冷却を行うことにより、上下流に配置された半導体チップ8a、8bを効果的に冷却することが可能となる。したがって、半導体チップ8a、8bが冷媒流れの上下流に並べられて配置される半導体モジュール4において、下流側において上流側よりも半導体チップ温度が上昇することが緩和できる。
【解決手段】熱抵抗の小さい下アーム側を冷媒流れの下流に位置させることで、冷媒流れの上流側に位置する上アームよりも下流側に位置する下アームの方が冷却効率が高くなるようにする。これにより、上流側での冷媒温度の上昇を抑制して上下流に配置された第1、第2半導体チップ8a、8bを効果的に冷却すること、もしくは、上流側で冷媒温度が上昇したとしても、下流側で高い冷却効率に基づいて十分な冷却を行うことにより、上下流に配置された半導体チップ8a、8bを効果的に冷却することが可能となる。したがって、半導体チップ8a、8bが冷媒流れの上下流に並べられて配置される半導体モジュール4において、下流側において上流側よりも半導体チップ温度が上昇することが緩和できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱板による放熱が行われる半導体パワー素子が形成された半導体チップと放熱板とを樹脂封止して一体構造とした半導体モジュールを備えた半導体装置に関するもので、例えば、上アーム(ハイサイド側素子)と下アーム(ローサイド側素子)の二つの半導体パワー素子を一つの樹脂封止部に封止した2in1構造の半導体モジュールを備えた半導体装置に適用すると好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、半導体パワー素子がそれぞれ備えられた上アームと下アームとを直列に接続した2in1構造の半導体モジュールが開示されている。この半導体モジュールは、半導体パワー素子としてIGBT(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)を備えたもので、上アームおよび下アームそれぞれについて、IGBTが形成された半導体チップのエミッタ側に銅ブロックを介して放熱板を配置すると共にコレクタ側に放熱板を配置し、各放熱板を封止樹脂部から露出させた状態で樹脂封止した構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4192396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構造の半導体モジュールは、例えば冷媒が通過する冷媒通路を有する冷却機構に接合される。これにより、高い冷却性能により半導体モジュールを冷却することが可能となる。このとき、従来の半導体モジュールでは、上アームと下アームを冷媒流れの上流側と下流側に並べて配置されるが、各アームに備えられる放熱板の熱抵抗がほぼ同じになっている。このため、冷媒流れの上流側に配置された半導体パワー素子の熱によって冷媒の温度が上昇し、下流側の冷却性能が上流側に比べて低くなり、下流側に配置された半導体パワー素子が上流側に配置された半導体パワー素子よりも温度が上昇するという現象を生じさせる。
【0005】
したがって、温度が高くなる下流側の半導体パワー素子により熱設計が制限される。このため、上記現象を緩和し、上下流に配置された半導体パワー素子の冷却がより効果的に行われるようにすることが望まれる。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、半導体パワー素子が形成された半導体チップが冷媒流れの上下流に並べられて配置される半導体モジュールを備えた半導体装置において、下流側において上流側よりも半導体チップ温度が上昇することが緩和でき、上下流に配置された半導体チップの冷却がより効果的に行われるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1ないし5に記載の発明は、第1、第2半導体チップ(8a、8b)の表面が反対側に向けられて配置された半導体モジュール(4)を冷却機構(5)によって冷却する半導体装置であって、上アームおよび下アームのうち、第1、第2半導体チップ(8a、8b)から第1〜第3放熱板(10a〜10c)の放熱面までの熱抵抗の合成値(R1、R2)が大きい方を冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの上流側に配置し、熱抵抗の合成値(R1、R2)が小さい方を下流側に配置することを特徴としている。
【0008】
このように、上下アームのうち熱抵抗の大きい方が冷媒流れの上流に位置し、熱抵抗の小さい方が冷媒流れの下流に位置するようにしている。これにより、上流側での冷媒温度の上昇を抑制して上下流に配置された第1、第2半導体チップ(8a、8b)を効果的に冷却すること、もしくは、上流側で冷媒温度が上昇したとしても、下流側で高い冷却効率に基づいて十分な冷却を行うことにより、上下流に配置された第1、第2半導体チップ(8a、8b)を効果的に冷却することが可能となる。
【0009】
したがって、半導体パワー素子が形成された第1、第2半導体チップ(8a、8b)が冷媒流れの上下流に並べられて配置される半導体モジュール(4)を備えた半導体装置において、下流側において上流側よりも半導体チップ温度が上昇することが緩和できる。これにより、上下流に配置された第1、第2半導体チップ(8a、8b)の冷却がより効果的に行われるようにすることができる。
【0010】
例えば、請求項3に記載したように、上アームと下アームの配列方向において、第1放熱板(10a)と第3放熱板(10c)のサイズが等しく、かつ、第2放熱板(10b)の長さが第1放熱板(10a)および第3放熱板(10c)を合わせた長さ以上とされる構成の場合、冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの上流側に上アームが配置され、それよりも下流側に下アームが配置されてるようにすれば良い。
【0011】
この場合、請求項4に記載したように、上アームと前記下アームの配列方向において、第1放熱板(10a)のサイズよりも第3放熱板(10c)のサイズが長くされるようにすれば、より冷媒流れの下流に配置された下アームの冷却効率を高くすることが可能となる。したがって、請求項1に示した効果をより効果的に得ることが可能となる。
【0012】
逆に、請求項5に記載したように、上アームと下アームの配列方向において、第1放熱板(10a)のサイズが第3放熱板(10c)のサイズより長くされるようにするのであれば、冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの上流側に下アームが配置され、それよりも下流側に上アームが配置される構成としても良い。
【0013】
請求項6ないし8に記載の発明は、第1、第2半導体チップ(8a、8b)の表面が同じ方向に向けられて配置された半導体モジュール(4)を冷却機構(5)によって冷却する半導体装置であって、上アームおよび下アームのうち、第1、第2半導体チップ(8a、8b)から第1〜第4放熱板(10d〜10g)の放熱面までの熱抵抗の合成値(R1、R2)が大きい方を冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの上流側に配置し、熱抵抗の合成値(R1、R2)が小さい方を下流側に配置していることを特徴としている。
【0014】
このように、第1、第2半導体チップ(8a、8b)の表面が同じ方向に向けられて配置された半導体モジュール(4)を冷却機構(5)によって冷却する半導体装置でも、上下アームのうち熱抵抗の大きい方が冷媒流れの上流に位置し、熱抵抗の小さい方が冷媒流れの下流に位置するように配置することで、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0015】
例えば、請求項8に記載したように、上アームと下アームの配列方向において、上アーム側となる第1、第2放熱板(10d、10e)と下アーム側となる第3、第4放熱板(10f、10g)のいずれか一方をいずれか他方よりもサイズを長くし、冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの下流側に上アームおよび下アームのうちサイズが長くされた方のアームを配置し、それよりも上流側にもう一方のアームを配置すれば良い。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるインバータ1の回路図である。
【図2】第1実施形態にかかるインバータ1の斜視図である。
【図3】図2に示すインバータ1の断面図である。
【図4】半導体モジュール4の断面図である。
【図5】図4に示す半導体モジュール4の正面図である。
【図6】図4に示す半導体モジュール4の分解図である。
【図7】半導体チップ8の正面図である。
【図8】熱抵抗のイメージ図である。
【図9】本発明の第2実施形態にかかる半導体モジュール4の断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態にかかる半導体モジュール4の断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態にかかる半導体モジュール4の断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態にかかる半導体モジュール4の断面図である。
【図13】他の実施形態で説明する半導体モジュール4の断面図である。
【図14】他の実施形態で説明する半導体モジュール4の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、本発明の一実施形態にかかる半導体モジュールが備えられた半導体装置として、冷却機構を有するインバータを例に挙げて説明する。
【0020】
図1は、インバータ1の回路図、図2は、インバータ1の斜視図、図3は、インバータ1の断面図である。なお、図3は、図2の紙面上下方向に対する垂直平面においてインバータ1を切断した場合の断面に相当している。
【0021】
図1に示すように、インバータ1は、直流電源2に基づいて負荷である三相モータ3を交流駆動するためのもので、直列接続した上下アームが三相分並列接続された構成とされ、上アームと下アームとの中間電位を三相モータ3のU相、V相、W相の各相に順番に入れ替えながら印加する。このインバータ1における上アームと下アームの一相分が、1つの半導体モジュール4とされ、図2および図3に示すように、3つの半導体モジュール4が冷却機構5内に配置されることでインバータ1が構成されている。
【0022】
また、図1に示すように、各上アームと各下アームは、それぞれ、半導体パワー素子であるIGBT6とフリーホイールダイオード(以下、FWDという)7とによって構成されている。本実施形態では、IGBT6とFWD7を同一の半導体チップ8(図3参照)内に形成しており、IGBT6のエミッタとコレクタに対してFWD7のアノードとカソードとを電気的に接続した構造としている。そして、各半導体モジュール4の上アームの正極端子Pと負極端子Nおよび出力端子Oが、図2に示すように半導体モジュール4から外部に突き出すように延設されている。これら正極端子P、負極端子Nおよび出力端子Oに、直流電源2の正極と負極および三相モータ3がそれぞれ接続されることにより、図1に示す回路構成とされる。
【0023】
図2および図3に示すように、各半導体モジュール4はプレート状とされ、冷却機構5内において表裏面が挟み込まれて固定されている。冷却機構5は、熱伝導率の高いアルミなどの金属にて形成され、図3に示すように複数のプレート5a、フィン5b、冷媒導入ポート5c、冷媒排出ポート5d等によって構成されている。複数のプレート5aおよびフィン5bは、二枚のプレート5aおよび一枚のフィン5bを一組として、二枚のプレート5aによって一枚のフィン5bを挟み込んだ状態でろう付けもしくは溶接などによって接合することで、その内部に冷却水などの冷媒を流す冷媒通路5eを構成している。フィン5bは、図3の紙面垂直方向において波打った形状とされており、波打ったフィン5bの山および谷の部分がフィン5bを挟み込む二枚のプレート5aに接触することで、紙面左右方向に伸びる冷媒通路5eが複数本形成されている。
【0024】
各プレート5aおよびフィン5bのうち冷媒導入ポート5cおよび冷媒排出ポート5dと交差する部分には連通孔が形成されており、各プレート5aおよびフィン5bによって形成される各冷媒通路5eが冷媒導入ポート5cおよび冷媒排出ポート5dによって繋がれている。このため、冷媒導入ポート5cから導入された冷媒が図2中矢印に示したように各冷媒通路5eを通過したのち冷媒排出ポート5dを通じて排出されるようになっている。
【0025】
このように構成された冷却機構5における二枚のプレート5aおよび一枚のフィン5bで構成される各組の間には隙間が設けられており、この隙間に各半導体モジュール4が挟み込まれ、絶縁部材などを介して固定されている。これにより、半導体モジュール4が3つ、つまり三相分備えられたインバータ1が構成されている。
【0026】
次に、このように構成されるインバータ1に備えられる半導体モジュール4の詳細構造について説明する。図4〜図6は、半導体モジュール4を示した図であり、図4は断面図、図5は正面図、図6は分解図である。なお、図4は、図5のA−A’断面図に相当している。
【0027】
図4〜図6に示すように、半導体モジュール4は、半導体チップ8と、銅ブロック9と、放熱板10、およびゲート端子11等を備え、これらが図4に示すように封止樹脂部12によって樹脂封止されることで一体化された構造とされている。
【0028】
半導体チップ8は、二枚備えられており、一方が上アームの半導体チップ8a、他方が下アームの半導体チップ8bとされ、双方共にIGBT6およびFWD7が形成された同じ構造のものとされている。半導体チップ8a、8bに形成されたIGBT6やFWD7は基板垂直方向に電流を流す縦型素子として構成されている。
【0029】
図7は、半導体チップ8の正面図である。半導体チップ8の表面側には、IGBT6のエミッタやFWD7のアノードに電気的に接続されるパッド8cやIGBT6のゲートに接続されるパッド8dが形成されている。パッド8cが形成された半導体チップ8の中央の領域は、IGBT6をオンさせたときの大電流もしくはFWD7を通じて還流電流が流されるアクティブ領域であり、その周囲がガードリングなどの耐圧構造が備えられた外周領域とされ、ゲートに接続されるパッド8dは外周領域側に引き出されて配置されている。一方、図示しないが、半導体チップ8の裏面側には、IGBT6のコレクタやFWDのカソードに電気的に接続されるパッドが裏面全面に形成されている。
【0030】
このような半導体チップ8は、例えば図7中に示したように、12.8mm×12.8mmの寸法とされ、アクティブ領域が10.7mm×11.4mmとされている。アクティブ領域を4辺で囲んでいる外周領域のうちパッド8dが配置される側の辺の幅は、1.4mmとされ、その他のパッド8dが配置されない側の辺の幅は、0.7mmとされている。
【0031】
銅ブロック9は、金属ブロックに相当するものであり、二つ備えられ、一方の銅ブロック9aが上アームの半導体チップ8aにおけるIGBT6のエミッタおよびFWD7のアノードと接続され、他方の銅ブロック9bが下アームの半導体チップ8bにおけるIGBT6のエミッタおよびFWD7のアノードと接続されている。銅ブロック9は、半導体チップ8のアクティブ領域と同じ面積、つまりパッド8cと同じサイズとされ、図示しないはんだ等を介してパッド8cに接続されている。このため、銅ブロック9は、半導体チップ8よりも一回り小さなサイズとされている。具体的には、銅ブロック9のうち半導体チップ8と対向する面は、10.7mm×11.4mmとされている。また、銅ブロック9の厚みは、1.7mmとされている。
【0032】
放熱板10は、熱伝導率の高い金属、例えば銅にて構成されており、半導体チップ8で発した熱を伝熱する役割と、半導体チップ8に形成されたIGBT6やFWD7の電流経路としての役割を果たす。本実施形態の場合、放熱板10として、放熱板10a〜10cの三枚が備えられている。放熱板10aは、上アームの半導体チップ8aにおけるIGBT6のコレクタおよびFWD7のカソードにはんだ等を介して接続される。この放熱板10aには、正極端子Pが備えられている。放熱板10bは、上アームの銅ブロック9aおよび下アームの半導体チップ8bにおけるIGBT6のコレクタおよびFWD7のカソードにはんだ等を介して接続される。この放熱板10bには、出力端子Oが備えられている。放熱板10cは、下アームの銅ブロック9bにはんだ等を介して接続される。この放熱板10cには、負極端子Nが備えられている。
【0033】
放熱板10aは、四角板にて構成されており、その四角板の一辺から張り出すように正極端子Pが形成されている。放熱板10cも、四角板にて構成されており、その四角板の一辺から張り出すように負極端子Nが形成されている。これら放熱板10aや放熱板10cは同じサイズかつ同じ厚さとされており、中心に半導体チップ8aや銅ブロック9bの中心が位置合わせされて接合される。また、放熱板10bは、長方形状とされ、その一辺から張り出すように出力端子Oが形成されている。この放熱板10bは、図4の紙面左右方向において放熱板10aと放熱板10cを合わせた長さより長くされている。また、放熱板10bのうち図4の紙面垂直方向の長さは放熱板10a、10cと等しくされており、厚みは放熱板10a、10bと同じにされている。
【0034】
図5および図6に示すように、ゲート端子11は、上アーム用のゲート端子11aと下アーム用のゲート端子11bがあり、それぞれ複数本の端子で構成されている。そして、各ゲート端子11a、11bは、図示しないボンディングワイヤによりパッド8dに接続されることで、それぞれ上アームや下アームの半導体チップ8a、8bにおけるIGBT6のゲートに電気的に接続されている。
【0035】
このように構成された各部は、図6に示されるように、放熱板10b上に、順に配置される。すなわち、上アーム側では、放熱板10b上に銅ブロック9a、半導体チップ8a、放熱板10aが順に積まれて接合され、下アーム側では、放熱板10b上に半導体チップ8b、銅ブロック9b、放熱板10cが順に積まれて接合される。また、ゲート端子11a、11bについては、図示しないフレーム等に固定されたりすることによって一体化された状態で放熱板10bの表面から所定間隔離間するように配置され、半導体チップ8a、8bのパッド8dとゲート端子11a、11bとがワイヤーボンディングされる。このように各部が配置された状態で、図示しない成形型などに設置され、封止樹脂部12によって樹脂封止されている。そして、半導体モジュール4の表面では、封止樹脂部12の一面と放熱板10a、10cの放熱面とが面一とされることで放熱板10a、10cの放熱面が露出させられ、裏面でも封止樹脂部12の一面と放熱板10bの放熱面とが面一とされることで放熱板10bの放熱面が露出させられる。また、封止樹脂部12における一側面から正極端子Pや負極端子Nおよび出力端子Oが引き出され、その側面と反対側の側面からゲート端子11a、11bが引き出されている。このような構成により、半導体モジュール4が構成されている。そして、このように構成された半導体モジュール4は、図3および図4に示したように、冷却機構5における冷媒流れの上流側に上アームが配置され、下流側に下アームが配置されるようにして、冷却機構5に組み付けられている。
【0036】
このように構成された半導体モジュール4では、正極端子Pが直流電源2の正極に接続され、出力端子Oが三相モータ3に接続され、負極端子Nが直流電源2の負極に接続される。そして、IGBT6のゲートへのゲート電圧の印加に基づいて、一つの相の上アームのIGBT6をオンさせると共に他の相の下アームのIGBT6をオフさせるということを順番に繰り返し行うことで三相モータ3への電流供給経路を形成し、三相モータ3に対して交流電流を供給する。具体的には上アームのIGBT6をオンさせることにより、正極端子Pから放熱板10a→半導体チップ8a→銅ブロック9a→放熱板10bおよび出力端子Oを通じて三相モータ3に電流供給を行う経路を構成する。また、下アームのIGBT6をオンさせることにより、出力端子Oから放熱板10b→半導体チップ8b→銅ブロック9b→放熱板10bおよび負極端子Nを通じて、三相モータ3からの電流を流す経路を構成する。このような動作を行うに際し、半導体モジュール4内の各半導体チップ8a、8bがIGBT6やFWD7に大電流が流れるのに伴って発熱する。しかし、この熱が放熱板10a〜10cを通じて放熱されると共に、冷却機構5によって冷却されるため、半導体チップ8a、8bの過昇温を抑制できるようになっている。
【0037】
次に、本実施形態のように構成された半導体モジュール4および当該半導体モジュール4を備えたインバータ1の作用効果について説明する。
【0038】
本実施形態の半導体モジュール4では、半導体チップ8a、8bが発熱したときに、IGBT6のコレクタおよびFWD7のカソード側では、放熱板10aや放熱板10bの放熱面を介して放熱が行われ、IGBT6のエミッタおよびFWD7のアノード側では、放熱板10bや放熱板10cの放熱面を介して放熱が行われる。
【0039】
この放熱において、本実施形態では、上アームおよび下アームの熱抵抗、つまり各半導体チップ8a、8bから放熱板10a〜10cの放熱面までの熱抵抗の合成値が、冷媒流れの下流側に配置される下アームよりも、上流側に配置される上アームの方が大きくなるようにしている。この上アームおよび下アームの熱抵抗の考え方について、図8に示す熱抵抗のイメージ図を参照して説明する。
【0040】
上述したように、本実施形態の場合、半導体チップ8aで発せられた熱は、放熱板10aに伝わって放熱板10aの放熱面から放出されると共に、銅ブロック9aを通じて放熱板10bに伝わって放熱板10bの放熱面から放出される。また、半導体チップ8bで発せられた熱は、放熱板10bに伝わって放熱板10bの放熱面から放出されると共に、銅ブロック9bを通じて放熱板10cに伝わって放熱板10cの放熱面から放出される。
【0041】
このため、図8に示したように、半導体チップ8aから放熱板10aを通じて放熱面に至る経路の熱抵抗をR11、半導体チップ8aから銅ブロック9aおよび放熱板10bを通じて放熱面に至る経路の熱抵抗をR12とすると、冷媒流れ上流側となる上アームの熱抵抗R1は、各経路の熱抵抗R11、R12の合成値となる。また、半導体チップ8bから放熱板10bを通じて放熱面に至る経路の熱抵抗をR21、半導体チップ8bから銅ブロック9bおよび放熱板10cを通じて放熱面に至る経路の熱抵抗をR22とすると、冷媒流れ下流側となる下アームの熱抵抗R2は、各経路の熱抵抗R21、R22の合成値となる。すなわち、次式のように表される。
【0042】
(数1) R1=R11・R12/(R11+R12)
(数2) R2=R21・R22/(R21+R22)
このように表わされる上アームの熱抵抗R1と下アームの熱抵抗R2について、R1>R2の関係が成り立つ構造としてある。
【0043】
具体的には、熱抵抗R11、R12、R21、R22は、各放熱板10a〜10cの面積と各放熱板10a〜10c内での熱拡散の幅に依存する。そして、半導体モジュール4の一面側から露出させられた放熱板10aの放熱面と放熱板10cの放熱面のサイズの和と比較して、放熱板10bの放熱面のサイズの方が大きく、かつ、放熱板10b内において上アーム側における銅ブロック9aからの熱拡散よりも下アーム側における半導体チップ8bからの熱拡散が広くなる。このため、下アーム側の方が上アーム側よりも熱抵抗が小さくなる。
【0044】
すなわち、熱拡散は、図4中の破線で示したように45度と考えることができる。このため、半導体チップ8a、8bに直接接合されている上アーム側の放熱板10aや放熱板10bのうちの下アーム側の部分の熱拡散は等しくなり、銅ブロック9a、9bに接合されている放熱板10bのうちの上アーム側の部分と下アーム側の放熱板10cでの熱拡散は等しくなる。そして、放熱板10bのうち上アーム側の銅ブロック9aから伝わる熱の放熱に寄与する部分と下アーム側の半導体チップ8bから伝わる熱の放熱に寄与する部分の境界は、上アーム側での熱拡散と下アーム側での熱拡散の中間位置となる。したがって、放熱板10bのうち下アーム側の半導体チップ8bから伝わる熱の放熱に寄与する部分の面積が、上アーム側の半導体チップ8aの放熱に用いられる放熱板10aの面積よりも大きくなる。このことから、下アームにおける半導体チップ8bから放熱板10bの放熱面までの経路の熱抵抗R21の方が、上アームにおける半導体チップ8aから放熱板10aの放熱面までの熱抵抗R11よりも小さくなり、下アームの熱抵抗R2が上アームの熱抵抗R1よりも小さくなる。
【0045】
したがって、本実施形態では、上述したように、冷却機構5における冷媒流れの上流側に熱抵抗が大きな上アームが配置され、下流側に熱抵抗が小さな下アームが配置されるようにして、半導体モジュール4を冷却機構5に組み付けられることになる。
【0046】
このように、熱抵抗の小さい下アーム側の方が冷媒流れの下流に位置するようにすることで、冷媒流れの上流側に位置する上アームよりも下流側に位置する下アームの方が冷却効率を高くすることが可能となる。これにより、上流側での冷媒温度の上昇を抑制して上下流に配置された第1、第2半導体チップ8a、8bを効果的に冷却することができる。もしくは、上流側で冷媒温度が上昇したとしても、下流側で高い冷却効率に基づいて十分な冷却を行うことにより、上下流に配置された第1、第2半導体チップ8a、8bを効果的に冷却することが可能となる。
【0047】
したがって、半導体パワー素子であるIGBT6が形成された半導体チップ8a、8bが冷媒流れの上下流に並べられて配置される半導体モジュール4において、下流側において上流側よりも半導体チップ温度が上昇することが緩和できる。これにより、上下流に配置された半導体チップ8a、8bの冷却がより効果的に行われるようにすることができる。
【0048】
また、このような効果が得られるため、下流側の半導体チップ8bにより熱設計が制限されないようにできる。このため、半導体チップ8a、8bには基本的に同じものが用いられることから、一方の半導体チップ8bに熱設計が制限されると、他方の半導体チップ8bの耐熱設計に無駄(余裕)が生じたりする可能性があるが、これについても防止することが可能となる。
【0049】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して半導体モジュール4の構造を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0050】
図9は、本実施形態の半導体モジュール4の断面図である。この図に示されるように、本実施形態の半導体モジュール4も基本的には第1実施形態と同様の構造とされているが、放熱板10aと放熱板10cのサイズを第1実施形態に対して変更している。具体的には、図9の紙面左右方向において放熱板10aよりも放熱板10cの方が大きなサイズとなるようにしている。
【0051】
このような構造とすれば、より冷媒流れの下流に配置された下アームの熱抵抗R2が上アームの熱抵抗R1よりも小さくなり、下アームの冷却効率を高くすることが可能となる。したがって、第1実施形態の効果をより効果的に得ることが可能となる。
【0052】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して半導体モジュール4の構造を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0053】
図10は、本実施形態の半導体モジュール4の断面図である。この図に示されるように、本実施形態の半導体モジュール4も基本的には第1実施形態と同様の構造とされているが、冷却機構5における冷媒流れの上流側に下アームが配置され、下流側に上アームが配置されるようにして、半導体モジュール4を冷却機構5に組み付けている。また、図10の紙面左右方向において、上流側に配置される下アームの放熱板10cと比べて上アームの放熱板10aの幅が大きくされている。
【0054】
このように各放熱板10a〜10cのサイズを設定すれば、半導体チップ8aから放熱板10aを通じて放熱面に至る経路の熱抵抗R11が半導体チップ8bから銅ブロック9bおよび放熱板10cを通じて放熱面に至る経路の熱抵抗R22よりも小さくなる。このため、半導体チップ8bから銅ブロック9bおよび放熱板10cを通じて放熱面に至る経路の熱抵抗R22が半導体チップ8aから銅ブロック9aおよび放熱板10bを通じて放熱面に至る経路の熱抵抗R12よりも小さかったとしても、上アームの熱抵抗R1を下アームの熱抵抗R2よりも小さくできる。
【0055】
このため、熱抵抗の小さい上アーム側の方が冷媒流れの下流に位置するようにでき、冷媒流れの上流側に位置する下アームよりも下流側に位置する上アームの方が冷却効率を高くすることが可能となる。これにより、上流側での冷媒温度の上昇を抑制して上下流に配置された半導体チップ8a、8bを効果的に冷却すること、もしくは、上流側で冷媒温度が上昇したとしても、下流側で高い冷却効率に基づいて十分な冷却を行うことにより、上下流に配置された半導体チップ8a、8bを効果的に冷却することが可能となる。
【0056】
したがって、半導体パワー素子であるIGBT6が形成された半導体チップ8a、8bが冷媒流れの上下流に並べられて配置される半導体モジュール4において、下流側において上流側よりも半導体チップ温度が上昇することが緩和できる。これにより、上下流に配置された半導体チップ8a、8bの冷却がより効果的に行われるようにすることができる。
【0057】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態も、第1実施形態に対して半導体モジュール4の構造を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0058】
図11は、本実施形態の半導体モジュール4の断面図である。この図に示されるように、本実施形態の半導体モジュール4も2in1構造のものであるが、上アームと下アームとで半導体チップ8a、8bの表面が同じ方向に向けられた構造とされている。
【0059】
本実施形態の半導体モジュール4では、上アームの半導体チップ8aのIGBT6のエミッタおよびFWD7のアノードが銅ブロック9aを介して放熱板10dに接続されていると共に、半導体チップ8aのIGBT6のコレクタおよびFWD7のカソードが放熱板10eに接続されている。また、下アームの半導体チップ8bのIGBT6のエミッタおよびFWD7のアノードが銅ブロック9bを介して放熱板10fに接続されていると共に、半導体チップ8bのIGBT6のコレクタおよびFWD7のカソードが放熱板10gに接続されている。そして、各放熱板10d〜10gのうち第1、第2半導体チップ8a、8bと反対側の面が封止樹脂部12から露出させられ、封止樹脂部12内において、放熱板10dおよび放熱板10gが接続配線13を介して電気的に接続されている。接続配線13と放熱板10dおよび放熱板10gとの接続は溶接もしくははんだ付けなどによって行われている。
【0060】
このように、第1、第2半導体チップ8a、8bの表面が同じ方向に向けられて配置された半導体モジュール4を冷却機構5によって冷却する構成において、冷媒流れの上流側に上アームを配置すると共に下流側に下アームを配置し、かつ、図11の紙面左右方向において、上アーム側の放熱板10d、10eのサイズよりも、下アーム側の放熱板10f、10gのサイズの方が大きくなるようにしている。
【0061】
このような構造としても、上下アームのうち熱抵抗の大きい方が冷媒流れの上流に位置し、熱抵抗の小さい方が冷媒流れの下流に位置するようにできる。このため、冷媒流れの下流に配置された下アーム側の半導体チップ8bの冷却効率を上流に配置された上アーム側の半導体チップ8aよりも高くすることが可能となる。したがって、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0062】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して半導体装置のうち半導体モジュール4の構造を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0063】
図12は、本実施形態の半導体モジュール4の断面図である。この図に示されるように、本実施形態の半導体モジュール4も第4実施形態と同様に、上アームと下アームとで半導体チップ8a、8bの向きを同じにした構造としている。ただし、本実施形態では、冷媒流れの上流側に下アームを配置すると共に下流側に上アームを配置し、かつ、図12の紙面左右方向において、下アーム側の放熱板10f、10gのサイズよりも、上アーム側の放熱板10d、10eのサイズの方が大きくなるようにしている。
【0064】
このような構造としても、上下アームのうち熱抵抗の大きい方が冷媒流れの上流に位置し、熱抵抗の小さい方が冷媒流れの下流に位置するようにできる。このため、冷媒流れの下流に配置された上アーム側の半導体チップ8aの冷却効率を上流に配置された下アーム側の半導体チップ8bよりも高くすることが可能となる。したがって、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0065】
(他の実施形態)
上記第4、第5実施形態では、封止樹脂部12内において放熱板10dおよび放熱板10gが接続配線13を介して電気的に接続された構造について説明したが、封止樹脂部12内で放熱板10d、10gを電気的に接続しなければならない訳ではない。図13に示すように、上アームを構成する放熱板10d、10eの間に半導体チップ8aと銅ブロック9aを配置したものと、下アームを構成する放熱板10f、10gの間に半導体チップ8bと銅ブロック9bを配置したものとを単に封止樹脂部12によって一体化した構造としても良い。この場合、例えば、放熱板10dや放熱板10gそれぞれから封止樹脂部12の外に出力端子Oを突き出させることで、これらの接続を行うことが可能となる。なお、図13では、第4実施形態のように、熱抵抗の大きな上アームを冷媒流れの上流側に配置し、熱抵抗の小さな下アームを冷媒流れの下流側に配置する構造について図示したが、第5実施形態のように、熱抵抗の大きな下アームを冷媒流れの上流側に配置し、熱抵抗の小さな上アームを冷媒流れの下流側に配置する構造としても良い。
【0066】
また、上記各実施形態では、各放熱板10a〜10gの寸法に基づいて、冷媒流れの上流側に配置されるアームの熱抵抗が下流側に配置されるアームの熱抵抗よりも小さくなる関係を満たすようにしている。しかしながら、上アームの熱抵抗R1と下アームの熱抵抗R2について、この関係を満たしていれば良いだけであり、必ずしも各放熱板10a〜10gの寸法に基づいてこの関係を満たさなければならない訳ではない。
【0067】
図14は、上アームと下アームとで半導体チップ8a、8bの表面が同じ方向に向けられた構造において、各放熱板10d〜10gの寸法を等しくしつつ、上アームの熱抵抗R1が下アームの熱抵抗R2よりも大きくされる場合を示した断面図である。この図に示すように、各放熱板10d〜10gの寸法、つまり各幅や厚みが等しくされているが、上アームの放熱板10d、10eと下アームの放熱板10f、10gの材質を異ならせてある。このように、放熱板10d〜10eの材質を異ならせ、例えば冷媒流れの上流側に位置する上アームの放熱板10d、10eよりも下流側に位置する下アームの放熱板10f、10gの方が熱伝達率の高い材質にすることで、上アームの熱抵抗R1が下アームの熱抵抗R2よりも大きくようにすることもできる。
【0068】
また、各放熱板10d〜10gが同じ材質とされ、かつ、各幅を等しくする場合であっても、各放熱板10d〜10gの厚みを変えることで、冷媒流れの上流側に配置されるアームの熱抵抗が下流側に配置されるアームの熱抵抗よりも小さくなる関係を満たすようにすることもできる。
【0069】
上記実施形態では、三相モータ3を駆動するインバータ1について説明したが、半導体装置としてはインバータ1に限るものではなく、少なくとも半導体モジュール4が備えられるものであれば、どのようなものに対しても第1〜第5実施形態に示した半導体モジュール4を適用することができる。例えば、コンバータなどに対して第1〜第5実施形態に示した半導体モジュール4を適用することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、半導体チップ8にIGBT6とFWD7が一体形成されているものについて説明したが、これらがそれぞれ別チップとされている構造についても本発明を適用することができる。また、銅ブロック9a、9bを放熱板10b、10c、10d、10fとは別体とした構造について説明したが、これらが一体化された構造であっても構わない。
【0071】
また、半導体パワー素子としてIGBTを例に挙げて説明したが、他の素子、例えばパワーMOSFETなどが用いられる場合についても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 インバータ
2 直流電源
3 三相モータ
4 半導体モジュール
5 冷却機構
6 IGBT
7 FWD
8 半導体チップ
9 銅ブロック
10 放熱板
11 ゲート端子
12 封止樹脂部
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱板による放熱が行われる半導体パワー素子が形成された半導体チップと放熱板とを樹脂封止して一体構造とした半導体モジュールを備えた半導体装置に関するもので、例えば、上アーム(ハイサイド側素子)と下アーム(ローサイド側素子)の二つの半導体パワー素子を一つの樹脂封止部に封止した2in1構造の半導体モジュールを備えた半導体装置に適用すると好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1において、半導体パワー素子がそれぞれ備えられた上アームと下アームとを直列に接続した2in1構造の半導体モジュールが開示されている。この半導体モジュールは、半導体パワー素子としてIGBT(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)を備えたもので、上アームおよび下アームそれぞれについて、IGBTが形成された半導体チップのエミッタ側に銅ブロックを介して放熱板を配置すると共にコレクタ側に放熱板を配置し、各放熱板を封止樹脂部から露出させた状態で樹脂封止した構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4192396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構造の半導体モジュールは、例えば冷媒が通過する冷媒通路を有する冷却機構に接合される。これにより、高い冷却性能により半導体モジュールを冷却することが可能となる。このとき、従来の半導体モジュールでは、上アームと下アームを冷媒流れの上流側と下流側に並べて配置されるが、各アームに備えられる放熱板の熱抵抗がほぼ同じになっている。このため、冷媒流れの上流側に配置された半導体パワー素子の熱によって冷媒の温度が上昇し、下流側の冷却性能が上流側に比べて低くなり、下流側に配置された半導体パワー素子が上流側に配置された半導体パワー素子よりも温度が上昇するという現象を生じさせる。
【0005】
したがって、温度が高くなる下流側の半導体パワー素子により熱設計が制限される。このため、上記現象を緩和し、上下流に配置された半導体パワー素子の冷却がより効果的に行われるようにすることが望まれる。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、半導体パワー素子が形成された半導体チップが冷媒流れの上下流に並べられて配置される半導体モジュールを備えた半導体装置において、下流側において上流側よりも半導体チップ温度が上昇することが緩和でき、上下流に配置された半導体チップの冷却がより効果的に行われるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1ないし5に記載の発明は、第1、第2半導体チップ(8a、8b)の表面が反対側に向けられて配置された半導体モジュール(4)を冷却機構(5)によって冷却する半導体装置であって、上アームおよび下アームのうち、第1、第2半導体チップ(8a、8b)から第1〜第3放熱板(10a〜10c)の放熱面までの熱抵抗の合成値(R1、R2)が大きい方を冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの上流側に配置し、熱抵抗の合成値(R1、R2)が小さい方を下流側に配置することを特徴としている。
【0008】
このように、上下アームのうち熱抵抗の大きい方が冷媒流れの上流に位置し、熱抵抗の小さい方が冷媒流れの下流に位置するようにしている。これにより、上流側での冷媒温度の上昇を抑制して上下流に配置された第1、第2半導体チップ(8a、8b)を効果的に冷却すること、もしくは、上流側で冷媒温度が上昇したとしても、下流側で高い冷却効率に基づいて十分な冷却を行うことにより、上下流に配置された第1、第2半導体チップ(8a、8b)を効果的に冷却することが可能となる。
【0009】
したがって、半導体パワー素子が形成された第1、第2半導体チップ(8a、8b)が冷媒流れの上下流に並べられて配置される半導体モジュール(4)を備えた半導体装置において、下流側において上流側よりも半導体チップ温度が上昇することが緩和できる。これにより、上下流に配置された第1、第2半導体チップ(8a、8b)の冷却がより効果的に行われるようにすることができる。
【0010】
例えば、請求項3に記載したように、上アームと下アームの配列方向において、第1放熱板(10a)と第3放熱板(10c)のサイズが等しく、かつ、第2放熱板(10b)の長さが第1放熱板(10a)および第3放熱板(10c)を合わせた長さ以上とされる構成の場合、冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの上流側に上アームが配置され、それよりも下流側に下アームが配置されてるようにすれば良い。
【0011】
この場合、請求項4に記載したように、上アームと前記下アームの配列方向において、第1放熱板(10a)のサイズよりも第3放熱板(10c)のサイズが長くされるようにすれば、より冷媒流れの下流に配置された下アームの冷却効率を高くすることが可能となる。したがって、請求項1に示した効果をより効果的に得ることが可能となる。
【0012】
逆に、請求項5に記載したように、上アームと下アームの配列方向において、第1放熱板(10a)のサイズが第3放熱板(10c)のサイズより長くされるようにするのであれば、冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの上流側に下アームが配置され、それよりも下流側に上アームが配置される構成としても良い。
【0013】
請求項6ないし8に記載の発明は、第1、第2半導体チップ(8a、8b)の表面が同じ方向に向けられて配置された半導体モジュール(4)を冷却機構(5)によって冷却する半導体装置であって、上アームおよび下アームのうち、第1、第2半導体チップ(8a、8b)から第1〜第4放熱板(10d〜10g)の放熱面までの熱抵抗の合成値(R1、R2)が大きい方を冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの上流側に配置し、熱抵抗の合成値(R1、R2)が小さい方を下流側に配置していることを特徴としている。
【0014】
このように、第1、第2半導体チップ(8a、8b)の表面が同じ方向に向けられて配置された半導体モジュール(4)を冷却機構(5)によって冷却する半導体装置でも、上下アームのうち熱抵抗の大きい方が冷媒流れの上流に位置し、熱抵抗の小さい方が冷媒流れの下流に位置するように配置することで、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0015】
例えば、請求項8に記載したように、上アームと下アームの配列方向において、上アーム側となる第1、第2放熱板(10d、10e)と下アーム側となる第3、第4放熱板(10f、10g)のいずれか一方をいずれか他方よりもサイズを長くし、冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの下流側に上アームおよび下アームのうちサイズが長くされた方のアームを配置し、それよりも上流側にもう一方のアームを配置すれば良い。
【0016】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるインバータ1の回路図である。
【図2】第1実施形態にかかるインバータ1の斜視図である。
【図3】図2に示すインバータ1の断面図である。
【図4】半導体モジュール4の断面図である。
【図5】図4に示す半導体モジュール4の正面図である。
【図6】図4に示す半導体モジュール4の分解図である。
【図7】半導体チップ8の正面図である。
【図8】熱抵抗のイメージ図である。
【図9】本発明の第2実施形態にかかる半導体モジュール4の断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態にかかる半導体モジュール4の断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態にかかる半導体モジュール4の断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態にかかる半導体モジュール4の断面図である。
【図13】他の実施形態で説明する半導体モジュール4の断面図である。
【図14】他の実施形態で説明する半導体モジュール4の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、本発明の一実施形態にかかる半導体モジュールが備えられた半導体装置として、冷却機構を有するインバータを例に挙げて説明する。
【0020】
図1は、インバータ1の回路図、図2は、インバータ1の斜視図、図3は、インバータ1の断面図である。なお、図3は、図2の紙面上下方向に対する垂直平面においてインバータ1を切断した場合の断面に相当している。
【0021】
図1に示すように、インバータ1は、直流電源2に基づいて負荷である三相モータ3を交流駆動するためのもので、直列接続した上下アームが三相分並列接続された構成とされ、上アームと下アームとの中間電位を三相モータ3のU相、V相、W相の各相に順番に入れ替えながら印加する。このインバータ1における上アームと下アームの一相分が、1つの半導体モジュール4とされ、図2および図3に示すように、3つの半導体モジュール4が冷却機構5内に配置されることでインバータ1が構成されている。
【0022】
また、図1に示すように、各上アームと各下アームは、それぞれ、半導体パワー素子であるIGBT6とフリーホイールダイオード(以下、FWDという)7とによって構成されている。本実施形態では、IGBT6とFWD7を同一の半導体チップ8(図3参照)内に形成しており、IGBT6のエミッタとコレクタに対してFWD7のアノードとカソードとを電気的に接続した構造としている。そして、各半導体モジュール4の上アームの正極端子Pと負極端子Nおよび出力端子Oが、図2に示すように半導体モジュール4から外部に突き出すように延設されている。これら正極端子P、負極端子Nおよび出力端子Oに、直流電源2の正極と負極および三相モータ3がそれぞれ接続されることにより、図1に示す回路構成とされる。
【0023】
図2および図3に示すように、各半導体モジュール4はプレート状とされ、冷却機構5内において表裏面が挟み込まれて固定されている。冷却機構5は、熱伝導率の高いアルミなどの金属にて形成され、図3に示すように複数のプレート5a、フィン5b、冷媒導入ポート5c、冷媒排出ポート5d等によって構成されている。複数のプレート5aおよびフィン5bは、二枚のプレート5aおよび一枚のフィン5bを一組として、二枚のプレート5aによって一枚のフィン5bを挟み込んだ状態でろう付けもしくは溶接などによって接合することで、その内部に冷却水などの冷媒を流す冷媒通路5eを構成している。フィン5bは、図3の紙面垂直方向において波打った形状とされており、波打ったフィン5bの山および谷の部分がフィン5bを挟み込む二枚のプレート5aに接触することで、紙面左右方向に伸びる冷媒通路5eが複数本形成されている。
【0024】
各プレート5aおよびフィン5bのうち冷媒導入ポート5cおよび冷媒排出ポート5dと交差する部分には連通孔が形成されており、各プレート5aおよびフィン5bによって形成される各冷媒通路5eが冷媒導入ポート5cおよび冷媒排出ポート5dによって繋がれている。このため、冷媒導入ポート5cから導入された冷媒が図2中矢印に示したように各冷媒通路5eを通過したのち冷媒排出ポート5dを通じて排出されるようになっている。
【0025】
このように構成された冷却機構5における二枚のプレート5aおよび一枚のフィン5bで構成される各組の間には隙間が設けられており、この隙間に各半導体モジュール4が挟み込まれ、絶縁部材などを介して固定されている。これにより、半導体モジュール4が3つ、つまり三相分備えられたインバータ1が構成されている。
【0026】
次に、このように構成されるインバータ1に備えられる半導体モジュール4の詳細構造について説明する。図4〜図6は、半導体モジュール4を示した図であり、図4は断面図、図5は正面図、図6は分解図である。なお、図4は、図5のA−A’断面図に相当している。
【0027】
図4〜図6に示すように、半導体モジュール4は、半導体チップ8と、銅ブロック9と、放熱板10、およびゲート端子11等を備え、これらが図4に示すように封止樹脂部12によって樹脂封止されることで一体化された構造とされている。
【0028】
半導体チップ8は、二枚備えられており、一方が上アームの半導体チップ8a、他方が下アームの半導体チップ8bとされ、双方共にIGBT6およびFWD7が形成された同じ構造のものとされている。半導体チップ8a、8bに形成されたIGBT6やFWD7は基板垂直方向に電流を流す縦型素子として構成されている。
【0029】
図7は、半導体チップ8の正面図である。半導体チップ8の表面側には、IGBT6のエミッタやFWD7のアノードに電気的に接続されるパッド8cやIGBT6のゲートに接続されるパッド8dが形成されている。パッド8cが形成された半導体チップ8の中央の領域は、IGBT6をオンさせたときの大電流もしくはFWD7を通じて還流電流が流されるアクティブ領域であり、その周囲がガードリングなどの耐圧構造が備えられた外周領域とされ、ゲートに接続されるパッド8dは外周領域側に引き出されて配置されている。一方、図示しないが、半導体チップ8の裏面側には、IGBT6のコレクタやFWDのカソードに電気的に接続されるパッドが裏面全面に形成されている。
【0030】
このような半導体チップ8は、例えば図7中に示したように、12.8mm×12.8mmの寸法とされ、アクティブ領域が10.7mm×11.4mmとされている。アクティブ領域を4辺で囲んでいる外周領域のうちパッド8dが配置される側の辺の幅は、1.4mmとされ、その他のパッド8dが配置されない側の辺の幅は、0.7mmとされている。
【0031】
銅ブロック9は、金属ブロックに相当するものであり、二つ備えられ、一方の銅ブロック9aが上アームの半導体チップ8aにおけるIGBT6のエミッタおよびFWD7のアノードと接続され、他方の銅ブロック9bが下アームの半導体チップ8bにおけるIGBT6のエミッタおよびFWD7のアノードと接続されている。銅ブロック9は、半導体チップ8のアクティブ領域と同じ面積、つまりパッド8cと同じサイズとされ、図示しないはんだ等を介してパッド8cに接続されている。このため、銅ブロック9は、半導体チップ8よりも一回り小さなサイズとされている。具体的には、銅ブロック9のうち半導体チップ8と対向する面は、10.7mm×11.4mmとされている。また、銅ブロック9の厚みは、1.7mmとされている。
【0032】
放熱板10は、熱伝導率の高い金属、例えば銅にて構成されており、半導体チップ8で発した熱を伝熱する役割と、半導体チップ8に形成されたIGBT6やFWD7の電流経路としての役割を果たす。本実施形態の場合、放熱板10として、放熱板10a〜10cの三枚が備えられている。放熱板10aは、上アームの半導体チップ8aにおけるIGBT6のコレクタおよびFWD7のカソードにはんだ等を介して接続される。この放熱板10aには、正極端子Pが備えられている。放熱板10bは、上アームの銅ブロック9aおよび下アームの半導体チップ8bにおけるIGBT6のコレクタおよびFWD7のカソードにはんだ等を介して接続される。この放熱板10bには、出力端子Oが備えられている。放熱板10cは、下アームの銅ブロック9bにはんだ等を介して接続される。この放熱板10cには、負極端子Nが備えられている。
【0033】
放熱板10aは、四角板にて構成されており、その四角板の一辺から張り出すように正極端子Pが形成されている。放熱板10cも、四角板にて構成されており、その四角板の一辺から張り出すように負極端子Nが形成されている。これら放熱板10aや放熱板10cは同じサイズかつ同じ厚さとされており、中心に半導体チップ8aや銅ブロック9bの中心が位置合わせされて接合される。また、放熱板10bは、長方形状とされ、その一辺から張り出すように出力端子Oが形成されている。この放熱板10bは、図4の紙面左右方向において放熱板10aと放熱板10cを合わせた長さより長くされている。また、放熱板10bのうち図4の紙面垂直方向の長さは放熱板10a、10cと等しくされており、厚みは放熱板10a、10bと同じにされている。
【0034】
図5および図6に示すように、ゲート端子11は、上アーム用のゲート端子11aと下アーム用のゲート端子11bがあり、それぞれ複数本の端子で構成されている。そして、各ゲート端子11a、11bは、図示しないボンディングワイヤによりパッド8dに接続されることで、それぞれ上アームや下アームの半導体チップ8a、8bにおけるIGBT6のゲートに電気的に接続されている。
【0035】
このように構成された各部は、図6に示されるように、放熱板10b上に、順に配置される。すなわち、上アーム側では、放熱板10b上に銅ブロック9a、半導体チップ8a、放熱板10aが順に積まれて接合され、下アーム側では、放熱板10b上に半導体チップ8b、銅ブロック9b、放熱板10cが順に積まれて接合される。また、ゲート端子11a、11bについては、図示しないフレーム等に固定されたりすることによって一体化された状態で放熱板10bの表面から所定間隔離間するように配置され、半導体チップ8a、8bのパッド8dとゲート端子11a、11bとがワイヤーボンディングされる。このように各部が配置された状態で、図示しない成形型などに設置され、封止樹脂部12によって樹脂封止されている。そして、半導体モジュール4の表面では、封止樹脂部12の一面と放熱板10a、10cの放熱面とが面一とされることで放熱板10a、10cの放熱面が露出させられ、裏面でも封止樹脂部12の一面と放熱板10bの放熱面とが面一とされることで放熱板10bの放熱面が露出させられる。また、封止樹脂部12における一側面から正極端子Pや負極端子Nおよび出力端子Oが引き出され、その側面と反対側の側面からゲート端子11a、11bが引き出されている。このような構成により、半導体モジュール4が構成されている。そして、このように構成された半導体モジュール4は、図3および図4に示したように、冷却機構5における冷媒流れの上流側に上アームが配置され、下流側に下アームが配置されるようにして、冷却機構5に組み付けられている。
【0036】
このように構成された半導体モジュール4では、正極端子Pが直流電源2の正極に接続され、出力端子Oが三相モータ3に接続され、負極端子Nが直流電源2の負極に接続される。そして、IGBT6のゲートへのゲート電圧の印加に基づいて、一つの相の上アームのIGBT6をオンさせると共に他の相の下アームのIGBT6をオフさせるということを順番に繰り返し行うことで三相モータ3への電流供給経路を形成し、三相モータ3に対して交流電流を供給する。具体的には上アームのIGBT6をオンさせることにより、正極端子Pから放熱板10a→半導体チップ8a→銅ブロック9a→放熱板10bおよび出力端子Oを通じて三相モータ3に電流供給を行う経路を構成する。また、下アームのIGBT6をオンさせることにより、出力端子Oから放熱板10b→半導体チップ8b→銅ブロック9b→放熱板10bおよび負極端子Nを通じて、三相モータ3からの電流を流す経路を構成する。このような動作を行うに際し、半導体モジュール4内の各半導体チップ8a、8bがIGBT6やFWD7に大電流が流れるのに伴って発熱する。しかし、この熱が放熱板10a〜10cを通じて放熱されると共に、冷却機構5によって冷却されるため、半導体チップ8a、8bの過昇温を抑制できるようになっている。
【0037】
次に、本実施形態のように構成された半導体モジュール4および当該半導体モジュール4を備えたインバータ1の作用効果について説明する。
【0038】
本実施形態の半導体モジュール4では、半導体チップ8a、8bが発熱したときに、IGBT6のコレクタおよびFWD7のカソード側では、放熱板10aや放熱板10bの放熱面を介して放熱が行われ、IGBT6のエミッタおよびFWD7のアノード側では、放熱板10bや放熱板10cの放熱面を介して放熱が行われる。
【0039】
この放熱において、本実施形態では、上アームおよび下アームの熱抵抗、つまり各半導体チップ8a、8bから放熱板10a〜10cの放熱面までの熱抵抗の合成値が、冷媒流れの下流側に配置される下アームよりも、上流側に配置される上アームの方が大きくなるようにしている。この上アームおよび下アームの熱抵抗の考え方について、図8に示す熱抵抗のイメージ図を参照して説明する。
【0040】
上述したように、本実施形態の場合、半導体チップ8aで発せられた熱は、放熱板10aに伝わって放熱板10aの放熱面から放出されると共に、銅ブロック9aを通じて放熱板10bに伝わって放熱板10bの放熱面から放出される。また、半導体チップ8bで発せられた熱は、放熱板10bに伝わって放熱板10bの放熱面から放出されると共に、銅ブロック9bを通じて放熱板10cに伝わって放熱板10cの放熱面から放出される。
【0041】
このため、図8に示したように、半導体チップ8aから放熱板10aを通じて放熱面に至る経路の熱抵抗をR11、半導体チップ8aから銅ブロック9aおよび放熱板10bを通じて放熱面に至る経路の熱抵抗をR12とすると、冷媒流れ上流側となる上アームの熱抵抗R1は、各経路の熱抵抗R11、R12の合成値となる。また、半導体チップ8bから放熱板10bを通じて放熱面に至る経路の熱抵抗をR21、半導体チップ8bから銅ブロック9bおよび放熱板10cを通じて放熱面に至る経路の熱抵抗をR22とすると、冷媒流れ下流側となる下アームの熱抵抗R2は、各経路の熱抵抗R21、R22の合成値となる。すなわち、次式のように表される。
【0042】
(数1) R1=R11・R12/(R11+R12)
(数2) R2=R21・R22/(R21+R22)
このように表わされる上アームの熱抵抗R1と下アームの熱抵抗R2について、R1>R2の関係が成り立つ構造としてある。
【0043】
具体的には、熱抵抗R11、R12、R21、R22は、各放熱板10a〜10cの面積と各放熱板10a〜10c内での熱拡散の幅に依存する。そして、半導体モジュール4の一面側から露出させられた放熱板10aの放熱面と放熱板10cの放熱面のサイズの和と比較して、放熱板10bの放熱面のサイズの方が大きく、かつ、放熱板10b内において上アーム側における銅ブロック9aからの熱拡散よりも下アーム側における半導体チップ8bからの熱拡散が広くなる。このため、下アーム側の方が上アーム側よりも熱抵抗が小さくなる。
【0044】
すなわち、熱拡散は、図4中の破線で示したように45度と考えることができる。このため、半導体チップ8a、8bに直接接合されている上アーム側の放熱板10aや放熱板10bのうちの下アーム側の部分の熱拡散は等しくなり、銅ブロック9a、9bに接合されている放熱板10bのうちの上アーム側の部分と下アーム側の放熱板10cでの熱拡散は等しくなる。そして、放熱板10bのうち上アーム側の銅ブロック9aから伝わる熱の放熱に寄与する部分と下アーム側の半導体チップ8bから伝わる熱の放熱に寄与する部分の境界は、上アーム側での熱拡散と下アーム側での熱拡散の中間位置となる。したがって、放熱板10bのうち下アーム側の半導体チップ8bから伝わる熱の放熱に寄与する部分の面積が、上アーム側の半導体チップ8aの放熱に用いられる放熱板10aの面積よりも大きくなる。このことから、下アームにおける半導体チップ8bから放熱板10bの放熱面までの経路の熱抵抗R21の方が、上アームにおける半導体チップ8aから放熱板10aの放熱面までの熱抵抗R11よりも小さくなり、下アームの熱抵抗R2が上アームの熱抵抗R1よりも小さくなる。
【0045】
したがって、本実施形態では、上述したように、冷却機構5における冷媒流れの上流側に熱抵抗が大きな上アームが配置され、下流側に熱抵抗が小さな下アームが配置されるようにして、半導体モジュール4を冷却機構5に組み付けられることになる。
【0046】
このように、熱抵抗の小さい下アーム側の方が冷媒流れの下流に位置するようにすることで、冷媒流れの上流側に位置する上アームよりも下流側に位置する下アームの方が冷却効率を高くすることが可能となる。これにより、上流側での冷媒温度の上昇を抑制して上下流に配置された第1、第2半導体チップ8a、8bを効果的に冷却することができる。もしくは、上流側で冷媒温度が上昇したとしても、下流側で高い冷却効率に基づいて十分な冷却を行うことにより、上下流に配置された第1、第2半導体チップ8a、8bを効果的に冷却することが可能となる。
【0047】
したがって、半導体パワー素子であるIGBT6が形成された半導体チップ8a、8bが冷媒流れの上下流に並べられて配置される半導体モジュール4において、下流側において上流側よりも半導体チップ温度が上昇することが緩和できる。これにより、上下流に配置された半導体チップ8a、8bの冷却がより効果的に行われるようにすることができる。
【0048】
また、このような効果が得られるため、下流側の半導体チップ8bにより熱設計が制限されないようにできる。このため、半導体チップ8a、8bには基本的に同じものが用いられることから、一方の半導体チップ8bに熱設計が制限されると、他方の半導体チップ8bの耐熱設計に無駄(余裕)が生じたりする可能性があるが、これについても防止することが可能となる。
【0049】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して半導体モジュール4の構造を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0050】
図9は、本実施形態の半導体モジュール4の断面図である。この図に示されるように、本実施形態の半導体モジュール4も基本的には第1実施形態と同様の構造とされているが、放熱板10aと放熱板10cのサイズを第1実施形態に対して変更している。具体的には、図9の紙面左右方向において放熱板10aよりも放熱板10cの方が大きなサイズとなるようにしている。
【0051】
このような構造とすれば、より冷媒流れの下流に配置された下アームの熱抵抗R2が上アームの熱抵抗R1よりも小さくなり、下アームの冷却効率を高くすることが可能となる。したがって、第1実施形態の効果をより効果的に得ることが可能となる。
【0052】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して半導体モジュール4の構造を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0053】
図10は、本実施形態の半導体モジュール4の断面図である。この図に示されるように、本実施形態の半導体モジュール4も基本的には第1実施形態と同様の構造とされているが、冷却機構5における冷媒流れの上流側に下アームが配置され、下流側に上アームが配置されるようにして、半導体モジュール4を冷却機構5に組み付けている。また、図10の紙面左右方向において、上流側に配置される下アームの放熱板10cと比べて上アームの放熱板10aの幅が大きくされている。
【0054】
このように各放熱板10a〜10cのサイズを設定すれば、半導体チップ8aから放熱板10aを通じて放熱面に至る経路の熱抵抗R11が半導体チップ8bから銅ブロック9bおよび放熱板10cを通じて放熱面に至る経路の熱抵抗R22よりも小さくなる。このため、半導体チップ8bから銅ブロック9bおよび放熱板10cを通じて放熱面に至る経路の熱抵抗R22が半導体チップ8aから銅ブロック9aおよび放熱板10bを通じて放熱面に至る経路の熱抵抗R12よりも小さかったとしても、上アームの熱抵抗R1を下アームの熱抵抗R2よりも小さくできる。
【0055】
このため、熱抵抗の小さい上アーム側の方が冷媒流れの下流に位置するようにでき、冷媒流れの上流側に位置する下アームよりも下流側に位置する上アームの方が冷却効率を高くすることが可能となる。これにより、上流側での冷媒温度の上昇を抑制して上下流に配置された半導体チップ8a、8bを効果的に冷却すること、もしくは、上流側で冷媒温度が上昇したとしても、下流側で高い冷却効率に基づいて十分な冷却を行うことにより、上下流に配置された半導体チップ8a、8bを効果的に冷却することが可能となる。
【0056】
したがって、半導体パワー素子であるIGBT6が形成された半導体チップ8a、8bが冷媒流れの上下流に並べられて配置される半導体モジュール4において、下流側において上流側よりも半導体チップ温度が上昇することが緩和できる。これにより、上下流に配置された半導体チップ8a、8bの冷却がより効果的に行われるようにすることができる。
【0057】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態も、第1実施形態に対して半導体モジュール4の構造を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0058】
図11は、本実施形態の半導体モジュール4の断面図である。この図に示されるように、本実施形態の半導体モジュール4も2in1構造のものであるが、上アームと下アームとで半導体チップ8a、8bの表面が同じ方向に向けられた構造とされている。
【0059】
本実施形態の半導体モジュール4では、上アームの半導体チップ8aのIGBT6のエミッタおよびFWD7のアノードが銅ブロック9aを介して放熱板10dに接続されていると共に、半導体チップ8aのIGBT6のコレクタおよびFWD7のカソードが放熱板10eに接続されている。また、下アームの半導体チップ8bのIGBT6のエミッタおよびFWD7のアノードが銅ブロック9bを介して放熱板10fに接続されていると共に、半導体チップ8bのIGBT6のコレクタおよびFWD7のカソードが放熱板10gに接続されている。そして、各放熱板10d〜10gのうち第1、第2半導体チップ8a、8bと反対側の面が封止樹脂部12から露出させられ、封止樹脂部12内において、放熱板10dおよび放熱板10gが接続配線13を介して電気的に接続されている。接続配線13と放熱板10dおよび放熱板10gとの接続は溶接もしくははんだ付けなどによって行われている。
【0060】
このように、第1、第2半導体チップ8a、8bの表面が同じ方向に向けられて配置された半導体モジュール4を冷却機構5によって冷却する構成において、冷媒流れの上流側に上アームを配置すると共に下流側に下アームを配置し、かつ、図11の紙面左右方向において、上アーム側の放熱板10d、10eのサイズよりも、下アーム側の放熱板10f、10gのサイズの方が大きくなるようにしている。
【0061】
このような構造としても、上下アームのうち熱抵抗の大きい方が冷媒流れの上流に位置し、熱抵抗の小さい方が冷媒流れの下流に位置するようにできる。このため、冷媒流れの下流に配置された下アーム側の半導体チップ8bの冷却効率を上流に配置された上アーム側の半導体チップ8aよりも高くすることが可能となる。したがって、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0062】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して半導体装置のうち半導体モジュール4の構造を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0063】
図12は、本実施形態の半導体モジュール4の断面図である。この図に示されるように、本実施形態の半導体モジュール4も第4実施形態と同様に、上アームと下アームとで半導体チップ8a、8bの向きを同じにした構造としている。ただし、本実施形態では、冷媒流れの上流側に下アームを配置すると共に下流側に上アームを配置し、かつ、図12の紙面左右方向において、下アーム側の放熱板10f、10gのサイズよりも、上アーム側の放熱板10d、10eのサイズの方が大きくなるようにしている。
【0064】
このような構造としても、上下アームのうち熱抵抗の大きい方が冷媒流れの上流に位置し、熱抵抗の小さい方が冷媒流れの下流に位置するようにできる。このため、冷媒流れの下流に配置された上アーム側の半導体チップ8aの冷却効率を上流に配置された下アーム側の半導体チップ8bよりも高くすることが可能となる。したがって、第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0065】
(他の実施形態)
上記第4、第5実施形態では、封止樹脂部12内において放熱板10dおよび放熱板10gが接続配線13を介して電気的に接続された構造について説明したが、封止樹脂部12内で放熱板10d、10gを電気的に接続しなければならない訳ではない。図13に示すように、上アームを構成する放熱板10d、10eの間に半導体チップ8aと銅ブロック9aを配置したものと、下アームを構成する放熱板10f、10gの間に半導体チップ8bと銅ブロック9bを配置したものとを単に封止樹脂部12によって一体化した構造としても良い。この場合、例えば、放熱板10dや放熱板10gそれぞれから封止樹脂部12の外に出力端子Oを突き出させることで、これらの接続を行うことが可能となる。なお、図13では、第4実施形態のように、熱抵抗の大きな上アームを冷媒流れの上流側に配置し、熱抵抗の小さな下アームを冷媒流れの下流側に配置する構造について図示したが、第5実施形態のように、熱抵抗の大きな下アームを冷媒流れの上流側に配置し、熱抵抗の小さな上アームを冷媒流れの下流側に配置する構造としても良い。
【0066】
また、上記各実施形態では、各放熱板10a〜10gの寸法に基づいて、冷媒流れの上流側に配置されるアームの熱抵抗が下流側に配置されるアームの熱抵抗よりも小さくなる関係を満たすようにしている。しかしながら、上アームの熱抵抗R1と下アームの熱抵抗R2について、この関係を満たしていれば良いだけであり、必ずしも各放熱板10a〜10gの寸法に基づいてこの関係を満たさなければならない訳ではない。
【0067】
図14は、上アームと下アームとで半導体チップ8a、8bの表面が同じ方向に向けられた構造において、各放熱板10d〜10gの寸法を等しくしつつ、上アームの熱抵抗R1が下アームの熱抵抗R2よりも大きくされる場合を示した断面図である。この図に示すように、各放熱板10d〜10gの寸法、つまり各幅や厚みが等しくされているが、上アームの放熱板10d、10eと下アームの放熱板10f、10gの材質を異ならせてある。このように、放熱板10d〜10eの材質を異ならせ、例えば冷媒流れの上流側に位置する上アームの放熱板10d、10eよりも下流側に位置する下アームの放熱板10f、10gの方が熱伝達率の高い材質にすることで、上アームの熱抵抗R1が下アームの熱抵抗R2よりも大きくようにすることもできる。
【0068】
また、各放熱板10d〜10gが同じ材質とされ、かつ、各幅を等しくする場合であっても、各放熱板10d〜10gの厚みを変えることで、冷媒流れの上流側に配置されるアームの熱抵抗が下流側に配置されるアームの熱抵抗よりも小さくなる関係を満たすようにすることもできる。
【0069】
上記実施形態では、三相モータ3を駆動するインバータ1について説明したが、半導体装置としてはインバータ1に限るものではなく、少なくとも半導体モジュール4が備えられるものであれば、どのようなものに対しても第1〜第5実施形態に示した半導体モジュール4を適用することができる。例えば、コンバータなどに対して第1〜第5実施形態に示した半導体モジュール4を適用することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、半導体チップ8にIGBT6とFWD7が一体形成されているものについて説明したが、これらがそれぞれ別チップとされている構造についても本発明を適用することができる。また、銅ブロック9a、9bを放熱板10b、10c、10d、10fとは別体とした構造について説明したが、これらが一体化された構造であっても構わない。
【0071】
また、半導体パワー素子としてIGBTを例に挙げて説明したが、他の素子、例えばパワーMOSFETなどが用いられる場合についても、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 インバータ
2 直流電源
3 三相モータ
4 半導体モジュール
5 冷却機構
6 IGBT
7 FWD
8 半導体チップ
9 銅ブロック
10 放熱板
11 ゲート端子
12 封止樹脂部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面および裏面を有し、半導体パワー素子(6)が形成された上アームを構成する第1半導体チップ(8a)および下アームを構成する第2半導体チップ(8b)と、
前記第1半導体チップ(8a)の裏面側に配置される第1放熱板(10a)と、
前記第1半導体チップ(8a)の表面側に配置されると共に、前記第2半導体チップ(8b)の裏面側に配置される第2放熱板(10b)と、
前記第2半導体チップ(8b)の表面側に配置される第3放熱板(10c)と、
前記第1、第2半導体チップ(8a、8b)および前記第1〜第3放熱板(10a〜10c)を封止する樹脂封止部(12)とを有し、
前記第1〜第3放熱板(10a〜10c)のうち前記第1、第2半導体チップ(8a、8b)と反対側の面を放熱面として前記樹脂封止部(12)から露出させてなる半導体モジュール(4)と、
冷媒が流れる冷媒通路(5e)が備えられ、前記半導体モジュール(4)を挟み込むことで、前記封止樹脂部(12)から露出させられた前記第1〜第3放熱板(10a〜10c)の前記放熱面に接触し、前記半導体モジュール(4)に備えられた前記第1、第2半導体チップ(8a、8b)を冷却する冷却機構(5)とを備え、
前記上アームおよび前記下アームのうち、前記第1、第2半導体チップ(8a、8b)から前記第1〜第3放熱板(10a〜10c)の前記放熱面までの熱抵抗の合成値(R1、R2)が大きい方を前記冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの上流側に配置し、前記熱抵抗の合成値(R1、R2)が小さい方を前記下流側に配置することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1半導体チップ(8a)の表面側に形成され、該第1半導体チップ(8a)よりも小さなサイズで、かつ、該第1半導体チップ(8a)のうち前記半導体パワー素子(6)の電流が流れるアクティブ領域に接合される第1金属ブロック(9a)を有し、前記第2放熱板(10b)は、前記第1金属ブロック(9a)に対して前記第1半導体チップ(8a)と反対側に配置され、
前記第2半導体チップ(8b)の表面側に形成され、該第2半導体チップ(8b)よりも小さなサイズで、かつ、該第2半導体チップ(8b)のうち前記半導体パワー素子(6)の電流が流れるアクティブ領域に接合される第2金属ブロック(9b)を有し、前記第3放熱板(10c)は、前記第2金属ブロック(9b)に対して前記第2半導体チップ(8b)と反対側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記上アームと前記下アームの配列方向において、前記第1放熱板(10a)と前記第3放熱板(10c)のサイズが等しく、かつ、前記第2放熱板(10b)の長さが前記第1放熱板(10a)および前記第3放熱板(10c)を合わせた長さ以上とされ、
前記冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの上流側に前記上アームが配置され、それよりも下流側に前記下アームが配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記上アームと前記下アームの配列方向において、前記第1放熱板(10a)のサイズよりも前記第3放熱板(10c)のサイズが長くされていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記上アームと前記下アームの配列方向において、前記第1放熱板(10a)のサイズが前記第3放熱板(10c)のサイズより長くされ、
前記冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの上流側に前記下アームが配置され、それよりも下流側に前記上アームが配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項6】
表面および裏面を有し、半導体パワー素子(6)が形成された上アームを構成する第1半導体チップ(8a)および下アームを構成する第2半導体チップ(8b)と、
前記第1半導体チップ(8a)の表面側に配置された第1放熱板(10d)と、
前記第1半導体チップ(8a)の裏面側に配置された第2放熱板(10e)と、
前記第2半導体チップ(8b)の表面側に配置された第3放熱板(10f)と、
前記第2半導体チップ(8b)の裏面側に配置された第4放熱板(10g)と、
前記第1、第2半導体チップ(8a、8b)および前記第1〜第4放熱板(10d〜10g)を封止する樹脂封止部(12)とを有し、
前記第1〜第4放熱板(10d〜10g)のうち前記第1、第2半導体チップ(8a、8b)と反対側の面を放熱面として前記樹脂封止部(12)から露出させてなる半導体モジュール(4)と、
冷媒が流れる冷媒通路(5e)が備えられ、前記半導体モジュール(4)を挟み込むことで、前記封止樹脂部(12)から露出させられた前記第1〜第4放熱板(10d〜10g)の前記放熱面に接触し、前記半導体モジュール(4)に備えられた前記第1、第2半導体チップ(8a、8b)を冷却する冷却機構(5)とを備え、
前記上アームおよび前記下アームのうち、前記第1、第2半導体チップ(8a、8b)から前記第1〜第4放熱板(10d〜10g)の前記放熱面までの熱抵抗の合成値(R1、R2)が大きい方を前記冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの上流側に配置し、前記熱抵抗の合成値(R1、R2)が小さい方を前記下流側に配置していることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
前記第1半導体チップ(8a)の表面側に形成され、該第1半導体チップ(8a)よりも小さなサイズで、かつ、該第1半導体チップ(8a)のうち前記半導体パワー素子(6)の電流が流れるアクティブ領域に接合される第1金属ブロック(9a)を有し、前記第1放熱板(10d)は、前記第1金属ブロック(9a)に対して前記第1半導体チップ(8a)と反対側に配置され、
前記第2半導体チップ(8b)の表面側に形成され、該第2半導体チップ(8b)よりも小さなサイズで、かつ、該第2半導体チップ(8b)のうち前記半導体パワー素子(6)の電流が流れるアクティブ領域に接合される第2金属ブロック(9b)を有し、前記第3放熱板(10f)は、前記第2金属ブロック(9b)に対して前記第2半導体チップ(8b)と反対側に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記上アームと前記下アームの配列方向において、前記上アーム側となる前記第1、第2放熱板(10d、10e)と前記下アーム側となる前記第3、前記第4放熱板(10f、10g)のいずれか一方がいずれか他方よりもサイズが長くされ、
前記冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの下流側に前記上アームおよび前記下アームのうち前記サイズが長くされた方のアームが配置され、それよりも上流側にもう一方のアームを配置していることを特徴とする請求項6または7に記載の半導体装置。
【請求項1】
表面および裏面を有し、半導体パワー素子(6)が形成された上アームを構成する第1半導体チップ(8a)および下アームを構成する第2半導体チップ(8b)と、
前記第1半導体チップ(8a)の裏面側に配置される第1放熱板(10a)と、
前記第1半導体チップ(8a)の表面側に配置されると共に、前記第2半導体チップ(8b)の裏面側に配置される第2放熱板(10b)と、
前記第2半導体チップ(8b)の表面側に配置される第3放熱板(10c)と、
前記第1、第2半導体チップ(8a、8b)および前記第1〜第3放熱板(10a〜10c)を封止する樹脂封止部(12)とを有し、
前記第1〜第3放熱板(10a〜10c)のうち前記第1、第2半導体チップ(8a、8b)と反対側の面を放熱面として前記樹脂封止部(12)から露出させてなる半導体モジュール(4)と、
冷媒が流れる冷媒通路(5e)が備えられ、前記半導体モジュール(4)を挟み込むことで、前記封止樹脂部(12)から露出させられた前記第1〜第3放熱板(10a〜10c)の前記放熱面に接触し、前記半導体モジュール(4)に備えられた前記第1、第2半導体チップ(8a、8b)を冷却する冷却機構(5)とを備え、
前記上アームおよび前記下アームのうち、前記第1、第2半導体チップ(8a、8b)から前記第1〜第3放熱板(10a〜10c)の前記放熱面までの熱抵抗の合成値(R1、R2)が大きい方を前記冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの上流側に配置し、前記熱抵抗の合成値(R1、R2)が小さい方を前記下流側に配置することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1半導体チップ(8a)の表面側に形成され、該第1半導体チップ(8a)よりも小さなサイズで、かつ、該第1半導体チップ(8a)のうち前記半導体パワー素子(6)の電流が流れるアクティブ領域に接合される第1金属ブロック(9a)を有し、前記第2放熱板(10b)は、前記第1金属ブロック(9a)に対して前記第1半導体チップ(8a)と反対側に配置され、
前記第2半導体チップ(8b)の表面側に形成され、該第2半導体チップ(8b)よりも小さなサイズで、かつ、該第2半導体チップ(8b)のうち前記半導体パワー素子(6)の電流が流れるアクティブ領域に接合される第2金属ブロック(9b)を有し、前記第3放熱板(10c)は、前記第2金属ブロック(9b)に対して前記第2半導体チップ(8b)と反対側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記上アームと前記下アームの配列方向において、前記第1放熱板(10a)と前記第3放熱板(10c)のサイズが等しく、かつ、前記第2放熱板(10b)の長さが前記第1放熱板(10a)および前記第3放熱板(10c)を合わせた長さ以上とされ、
前記冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの上流側に前記上アームが配置され、それよりも下流側に前記下アームが配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記上アームと前記下アームの配列方向において、前記第1放熱板(10a)のサイズよりも前記第3放熱板(10c)のサイズが長くされていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記上アームと前記下アームの配列方向において、前記第1放熱板(10a)のサイズが前記第3放熱板(10c)のサイズより長くされ、
前記冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの上流側に前記下アームが配置され、それよりも下流側に前記上アームが配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項6】
表面および裏面を有し、半導体パワー素子(6)が形成された上アームを構成する第1半導体チップ(8a)および下アームを構成する第2半導体チップ(8b)と、
前記第1半導体チップ(8a)の表面側に配置された第1放熱板(10d)と、
前記第1半導体チップ(8a)の裏面側に配置された第2放熱板(10e)と、
前記第2半導体チップ(8b)の表面側に配置された第3放熱板(10f)と、
前記第2半導体チップ(8b)の裏面側に配置された第4放熱板(10g)と、
前記第1、第2半導体チップ(8a、8b)および前記第1〜第4放熱板(10d〜10g)を封止する樹脂封止部(12)とを有し、
前記第1〜第4放熱板(10d〜10g)のうち前記第1、第2半導体チップ(8a、8b)と反対側の面を放熱面として前記樹脂封止部(12)から露出させてなる半導体モジュール(4)と、
冷媒が流れる冷媒通路(5e)が備えられ、前記半導体モジュール(4)を挟み込むことで、前記封止樹脂部(12)から露出させられた前記第1〜第4放熱板(10d〜10g)の前記放熱面に接触し、前記半導体モジュール(4)に備えられた前記第1、第2半導体チップ(8a、8b)を冷却する冷却機構(5)とを備え、
前記上アームおよび前記下アームのうち、前記第1、第2半導体チップ(8a、8b)から前記第1〜第4放熱板(10d〜10g)の前記放熱面までの熱抵抗の合成値(R1、R2)が大きい方を前記冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの上流側に配置し、前記熱抵抗の合成値(R1、R2)が小さい方を前記下流側に配置していることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
前記第1半導体チップ(8a)の表面側に形成され、該第1半導体チップ(8a)よりも小さなサイズで、かつ、該第1半導体チップ(8a)のうち前記半導体パワー素子(6)の電流が流れるアクティブ領域に接合される第1金属ブロック(9a)を有し、前記第1放熱板(10d)は、前記第1金属ブロック(9a)に対して前記第1半導体チップ(8a)と反対側に配置され、
前記第2半導体チップ(8b)の表面側に形成され、該第2半導体チップ(8b)よりも小さなサイズで、かつ、該第2半導体チップ(8b)のうち前記半導体パワー素子(6)の電流が流れるアクティブ領域に接合される第2金属ブロック(9b)を有し、前記第3放熱板(10f)は、前記第2金属ブロック(9b)に対して前記第2半導体チップ(8b)と反対側に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記上アームと前記下アームの配列方向において、前記上アーム側となる前記第1、第2放熱板(10d、10e)と前記下アーム側となる前記第3、前記第4放熱板(10f、10g)のいずれか一方がいずれか他方よりもサイズが長くされ、
前記冷媒通路(5e)内を流れる冷媒流れの下流側に前記上アームおよび前記下アームのうち前記サイズが長くされた方のアームが配置され、それよりも上流側にもう一方のアームを配置していることを特徴とする請求項6または7に記載の半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−228638(P2011−228638A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28680(P2011−28680)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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