説明

半導体レーザ装置

【課題】 故障した半導体レーザモジュールの交換が容易にできると共に、レーザ出力の安定化、高出力化、長寿命化を維持しながら、結露の発生を防止することのできる半導体レーザ装置を得る。
【解決手段】 複数の半導体レーザモジュール3と、半導体レーザモジュールを収容すると共に収容した該半導体レーザモジュールを外部に取り出し可能にする上面開口を有した容器本体10と、容器本体の開口部に開閉可能に取り付けられた樹脂フィルム22よりなる蓋体20と、容器本体に収容された半導体レーザモジュールを冷却する冷却器8と、容器本体内を乾燥させる乾燥剤9と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結露対策を施した半導体レーザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザ装置に使用される半導体レーザモジュールは、レーザ出力と同時に発熱し、温度の上昇により出力される光強度の低下を来すので、一定の光強度を得るためには、冷却手段により低温かつ定温(例えば、25℃若しくは35℃の±1℃)に維持しなくてはならない。また、半導体レーザモジュールを冷却した場合は、周囲の状況によって冷却部分に結露を生じる虞があり、結露すると種々の故障の原因となるため、結露対策を講じる必要がある。
【0003】
従来、結露対策としては、完全な気密封止構造の容器の中に半導体レーザモジュールを収容したり(例えば、特許文献1参照)、半導体レーザモジュールに閾値以下の電流を流し、モジュール自体の温度を上げて結露を解消したり(例えば、特許文献2参照)することが行われている。
【0004】
【特許文献1】特開昭56−42389号公報
【特許文献2】特開2000−40850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば溶接等により完全な気密封止構造を実現した容器の中に半導体レーザモジュールを収容した場合、気密封止構造自体を作るのに溶接設備等を要するためコストがかかる上、容器の中の半導体レーザモジュールが故障したとき、故障したモジュールを交換することはほとんどできない。したがって、従来は、容器の中の半導体レーザモジュールが故障した時点で、装置全体の故障として扱い、処分しているのが現状であった。しかし、半導体レーザモジュールを1個だけ収容している場合はともかく、複数の半導体レーザモジュールを収容している場合は、1個の半導体レーザモジュールが故障したからといって、装置全部を故障扱いで処分するのは無駄が多い。
【0006】
また、完全な気密封止構造を採る代わりに、半導体レーザモジュールに閾値以下の電流を供給してモジュールの温度を所定温度に維持するようにした場合は、所定の光出力強度が得られなかったり、所定の光出力強度が得られても、その代わりにレーザ装置の耐用年数が短縮してしまうことがあった。
【0007】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、故障した半導体レーザモジュールの交換が容易であると共に、レーザ出力の安定化、高出力化、長寿命化を維持しながら、結露の発生を防止することのできる、安価な構造の半導体レーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、少なくとも1つ以上の半導体レーザモジュールと、前記半導体レーザモジュールを収容すると共に収容した該半導体レーザモジュールを外部に取り出し可能にする開口部を有した容器本体と、該容器本体の開口部に開閉可能に取り付けられた蓋体と、前記容器本体に収容された半導体レーザモジュールを冷却する冷却手段と、前記容器本体内を乾燥させる乾燥剤と、を具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の半導体レーザ装置において、前記蓋体が透湿係数の小さな樹脂フィルムよりなることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載の半導体レーザ装置において、前記樹脂フィルムの透湿係数が0.5g/(m2・日)以下であることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2または3に記載の半導体レーザ装置において、前記樹脂フィルムが、前記容器本体内部の気体の体積変動に伴って変形し得る程度の可撓性を有していることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1に記載の半導体レーザ装置において、前記蓋体が高い剛性を有した硬質の板材により構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項5に記載の半導体レーザ装置において、前記容器本体と前記蓋体との間にシール手段が設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項6に記載の半導体レーザ装置において、前記シール手段が、グリース、ペースト状シール材料、シールリングのうちの一つ、または、二つ以上の組み合わせよりなることを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の半導体レーザ装置において、前記容器本体が熱伝導性に優れた材料で形成されると共に、該容器本体内に断熱性の高い気体が充填されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、必要に応じて蓋体を開くことにより、容器本体の開口部を通して、容器の中の半導体レーザモジュールを自由に交換することができる。また、開いた蓋体を再び閉じれば、完全な気密密封ではないものの、容器本体内を再密封することができる。従って、故障した半導体レーザモジュールだけ交換して、他の故障していない半導体レーザモジュールや容器本体、冷却手段についてはそれぞれの寿命の限り長時間使用可能とするので、無駄が少ない。また、冷却手段と乾燥剤を具備するので、冷却によりレーザ出力の安定化、高出力化、長寿命化を維持しながら、乾燥剤により冷却部分に発生する結露を防止することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、蓋体の少なくとも主要部分を透湿係数の小さな樹脂フィルムで構成しているので、金属や板状樹脂等の高剛性の硬質の材料で蓋体を構成する場合に比べて、蓋体を容器の形状に合わせて変形させやすく、容器の密封が容易にできるし、容器からの蓋体の取り外しも容易にできる。従って、半導体レーザモジュールの交換作業性が一層向上する。また、樹脂フィルムで構成することにより蓋体を安価に製作できるので、半導体レーザモジュールの交換時に使い捨てにしても、費用の無駄が少ない。なお、蓋体は、硬質の材料で構成して開口部の周縁に装着される枠部に、樹脂フィルムの周囲を固着させたものとしてもよいが、樹脂フィルム自身の周縁部を枠部として成形し、容器に装着できるようにしてもよい。また、装着の際に接着剤等で枠部と容器本体を固着すれば、高い再密封性を確保することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、一般的な使用条件において、冷却部分への結露の発生を有効に防ぐことができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、蓋体を構成する樹脂フィルムが容器本体内部の気体の体積変化に合わせて変形するので、装置の内外での圧力差がほとんど生じない。その結果、容器が完全に気密に封止されていなくても、外気の侵入が抑制され、内部に侵入する水蒸気量が低減され、それにより、乾燥剤の使用量や交換頻度を減らせる。
【0020】
請求項5の発明によれば、蓋体を高い剛性の硬質の板材で構成したので、加工しやすいし、取り扱いやすくなる。
【0021】
請求項6の発明によれば、容器本体と蓋体との間にシール手段が設けられているので、高い密封性を保つことができる。
【0022】
請求項7の発明によれば、シール手段が、グリース、ペースト状シール材料、シールリングのうちの一つまたは二つ以上の組み合わせよりなるので、次の効果を期待できる。即ち、グリースやペースト状シール材料を用いた場合は、容器本体と蓋体の合わせ面に塗るだけで再密封が可能である。また、シールリングを用いた場合は、容器本体と蓋体の合わせ面に挟むだけで再密封が可能である。また、それらの二つ以上の組み合わせを用いた場合は、相乗効果により、一層の密封性向上を図ることができる。
【0023】
請求項8の発明によれば、容器本体内に断熱性の高い気体を充填することにより、冷却手段による冷熱の容器本体側への逃げを極力防ぐことができ、容器本体が冷えることでその外周に結露が生じるのを防ぐことができる。また、冷熱の逃げを抑制できるので、冷熱を有効に半導体レーザモジュールを冷やすことに使うことができる。また、容器本体を熱伝導性に優れた材料で形成することにより、冷却手段として例えばペルチェ素子を用いた場合、その高温部に生じる熱を容器本体を通して外部に逃がすことができる。また、容器本体は冷却手段の高温部の熱により比較的高温に維持されるため、容器本体の外周への結露の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は第1実施形態の半導体レーザ装置の構成図で、(a)は蓋体を外した状態を示す平面図、(b)は蓋体を取り付けた状態を示す側断面図である。また、図2は蓋体の構成を示す斜視図である。
【0025】
図1において、半導体レーザ装置1は、容器本体10の中に半導体レーザモジュール3を収容して、容器本体10を蓋体20で気密密封して構成される。
容器本体10は、上面が開放した直方体形の箱であり、蓋体20はその上面開口を塞ぐものである。容器本体10の内部には、アルミニウムや銅等の伝熱良導体で構成された伝熱ホルダ2に保持された状態で、複数(図では12個)の半導体レーザモジュール3が決められた配置で収容されている。
【0026】
各半導体レーザモジュール3には、一端側に、各半導体レーザモジュール3の出力光をガイドして一つに束ねて出力する光ファイバ4が、他端側に、各半導体レーザモジュール3に電力を供給する電気配線5がそれぞれ接続されている。また、モジュール3の内部には、半導体レーザ素子、素子からの出力光を光ファイバ入力端へ集光するレンズ(いずれも図示せず)が設けられている。
【0027】
このように複数の半導体レーザモジュール3の光を束ねて出力することにより、1個のレーザモジュールでは得られない高パワー密度、広パワー分布のレーザ光が得られるようになる。また、半導体レーザモジュール3は、1000〜10000時間のスケールで同じ電流での出力が徐々に低下するが、本実施の形態のように、複数個のレーザ光を束ねて出力する構成を採れば、特定の半導体レーザモジュール3の出力低下を他の半導体レーザモジュール3の出力増大により補うという制御を行うことができ、結果的に故障率を下げられる利点がある。
【0028】
また、特定の半導体レーザモジュール3の出力低下が他の半導体レーザモジュール3の出力増大により補い切れない場合は、出力低下した半導体レーザモジュール3のみを交換し、全体の使用を継続することができる。単数の半導体レーザモジュール3を使用している場合は、半導体レーザモジュール3の故障を全体故障として扱いがちであったが、複数の半導体レーザモジュール3を使用している場合は、交換によるメリットが出てくる。従って、特に複数個の半導体レーザモジュール3を収容した半導体レーザ装置1では、半導体レーザモジュール3の交換が容易にできることが求められる。本実施の形態では、容器本体10の上面を全面開口としてあるので、蓋体20を外し、その開口部を通して半導体レーザモジュール3の交換が容易にできる。
【0029】
また、半導体レーザモジュール3は、連続して一定の光強度を得る場合、高温・大電流で使用する場合、光出力時に低温かつ定温に維持する必要があることから、本実施の形態では、容器本体10の底部に冷却器(冷却手段)8を設けている。冷却器8には、冷媒等を必要としないペルチェ素子(他の冷却手段でも勿論よい)が用いられており、装置の小型化が図られている。ペルチェ素子よりなる冷却器8は、低温部を伝熱ホルダ2に接触させ、また、高温部を容器本体10に接触させて固定されている。したがって、冷却器8の高温部の熱は、容器本体10に伝わり、環境中に放出される。容器本体10は、このように冷却器8の高温部の熱を効率良く放散するために、金属等の熱伝導性の良好な材料により構成されているのが望ましい。
【0030】
また、伝熱ホルダ2は、冷却器8で発生した冷熱を半導体レーザモジュール3に効率良く伝える役目を果たすものであり、半導体レーザモジュール3の特に発熱源であるレーザ素子の周辺と密着するような形状に形成されている。そして、伝熱ホルダ2と半導体レーザモジュール3の隙間には、伝熱性のよいグリース等が充填されている。また、伝熱ホルダ2と冷却器8の低温部との接触面、および冷却器8の高温部と容器本体10との接触面にも、伝熱性のよいグリース等が塗られている。
【0031】
また、容器本体10の内部の適当な箇所には乾燥剤9が配置されている。乾燥剤9には、例えば低廉なシリカゲルが使用されている。乾燥剤9は、気密性が不十分な箇所から侵入した水蒸気を吸収し、冷却器8が結露しない程度に内部気体を乾燥した状態に維持する役目を果たす。例えば、本半導体レーザ装置1を空調のある室内で使用する場合、半導体レーザ装置1の周囲の外気は、例えば40℃、湿度80%まで高温多湿になり得る。この温度での露点は35℃であるため、それ以下の温度に半導体レーザモジュール3を冷却すると、半導体レーザモジュール3に結露を生じ、錆、漏電等の故障の原因となり得る。従って、冷却される部分の露点が冷却温度以下になる湿度まで乾燥させる。
【0032】
以上のように、容器本体10には、冷却器8を介して伝熱ホルダ2、半導体レーザモジュール3が固定され、さらに、容器本体10の上部開口が蓋体20で覆われている。この場合の蓋体20は、図2に示すように、樹脂フィルム22を主要部分として構成されている。即ち、蓋体20が、容器本体10の開口周縁に装着される硬質材料の枠部21と、該枠部21に周囲が固着された透湿係数の小さな樹脂フィルム22とにより構成されている。
【0033】
また、樹脂フィルム22は、容器本体10の内部気体の体積変化に伴って変形しやすいように、例えば、ドーム形状に成形された上で容器本体10に固定されている。これにより、内部気体が温度変化により体積変化を起こしても、樹脂フィルム22が変形することによって、内圧が外気圧と等しい状態で維持され、気密性が完全でなくとも、外気の侵入が低減され、外からの水蒸気の侵入が最小限に抑制される。従って、必要な乾燥剤9の含有量を低減することができる。なお、樹脂フィルム22の形状を蛇腹状にしても、変形しやすさを確保することができる。
【0034】
また、樹脂フィルム22には、透湿度が低いことが求められる。例えば、以下の条件を仮定してみる。
・容器本体の寸法 :200mm×200mm×20mm=800,000mm3
・樹脂フィルムの寸法:200×200=0.04m2
・外気の条件 :40℃、湿度85%
・冷却器の温度 :15℃〜40℃の温度変化で内気が結露しない湿度は25%
・シリカゲル量 :容器内容量の10%→80,000mm3→80g
※JISーZ0701に定めるシリカゲルA型の吸湿率(@25%)は概ね16%なので、総吸水量は80g×16%=13g
・交換期間:1年
以上の条件より、
・1日当たりの吸水量≦13g÷365日=0.035[g/日]
・樹脂フィルムの単位面積当たりの1日の透湿量≦0.035[g/日]÷0.04m2≒1[g/(m2・日)]
となる。
【0035】
したがって、材料としては、ポリオレフィン系樹脂(透湿量=0.2〜0.6[g/(m2・日)])や、PET等の一般的なシリカ(SiO2)、アルミ等をコーティングした材料(透湿量=0.1〜0.2[g/(m2・日)])などが、透湿度が低く好適であると言える。例えば、透湿係数が0.5g/(m2・日)以下の樹脂フィルム22を用いれば、一般的な使用条件において、冷却部分への結露の発生を有効に防ぐことができると考えられる。
【0036】
このように主要部分を樹脂フィルム22により構成された蓋体20は、接着剤等により容器本体10の上面に固定され、容器本体10と蓋体20で包まれた内部は概ね密封されている。また、半導体レーザモジュール3に接続された光ファイバ4や電気配線5は、容器本体10の壁を貫通して引き出されており、導出部分は接着剤11等により概ね密封されている。また、容器本体10の内部には、断熱性の高い気体を充填しておくのがよい。
【0037】
次に作用を説明する。
本半導体レーザ装置1は、必要に応じて蓋体20を開くことにより、容器本体10の上面開口を通して、中の半導レーザモジュール3を自由に交換することができる。また、開いた蓋体20を再び閉じれば、完全な気密密封ではないものの、容器本体10内を再密封することができる。従って、故障した半導体レーザモジュール3だけ交換して、他の故障していない半導体レーザモジュールや容器本体、冷却手段についてはそれぞれの寿命の限り長時間使用可能とするので、無駄が少ない。また、冷却器8と乾燥剤9を備えているので、冷却によりレーザ出力の安定化、高出力化、長寿命化を維持しながら、乾燥剤9により冷却部分に発生する結露を有効に防止することができる。
【0038】
また、本実施の形態では、蓋体20の少なくとも主要部分を透湿係数の小さな樹脂フィルム22で構成しているので、金属や板状樹脂等の高剛性の硬質の材料で蓋体を構成する場合に比べて、蓋体20を容器本体10の形状に合わせて変形させやすく、容器本体10の密封が容易にできるし、容器本体10からの蓋体20の取り外しも容易にできる。従って、半導体レーザモジュール3の交換作業性が一層向上する。
【0039】
また、樹脂フィルム22で構成することにより蓋体20を安価に製作できるので、半導体レーザモジュール3の交換時に蓋体20を使い捨てにしても、費用の無駄が少ない。新たに蓋体20を装着する際には、接着剤等で枠部21と容器本体10を固着すれば、接着剤のシール機能により、高い再密封性を確保することができる。
【0040】
また、蓋体20を構成する樹脂フィルム22が容器本体10内部の気体の体積変化に合わせて変形するので、装置の内外での圧力差がほとんど生じず、その結果、容器本体10が完全に気密に封止されていなくても、外気の侵入が抑制され、内部に侵入する水蒸気量が低減される。万一外気に伴って多少の水蒸気が侵入したとしても、水蒸気は乾燥剤9により吸収されるため、全く問題を生じる心配はない。
【0041】
また、容器本体10内に断熱性の高い気体を充填した場合は、冷却器8による冷熱の容器本体10側への逃げを極力防ぐことができるので、容器本体10が冷えることでその外周に結露が生じるのを防ぐことができる。また、冷熱の逃げを抑制できることから、冷熱を有効に半導体レーザモジュール3を冷やすことに使うことができ、冷却効率が良くなる。また、容器本体10を熱伝導性に優れた材料で形成した場合は、冷却器8として用いたペルチェ素子の高温部の熱を容器本体10を通して外部に有効に逃がすことができる。また、容器本体10を比較的高温に維持することができるため、容器本体10の外周への結露の発生を防止することができる。
【0042】
なお、上記実施の形態では、蓋体20は、樹脂フィルム22と別の材料で枠部21を構成して、樹脂フィルム22の周囲をそれに接着剤等で固着する構成としたが、他の例として、図3に示すように樹脂フィルム22自身の周縁部を枠部21Aとして成形して、この成形した蓋体20Aを容器本体10に接着材23等で固定して装着することもできる。
【0043】
図4は本発明の第2の実施の形態の半導体レーザ装置1Bの構成図で、(a)は蓋体を外した状態を示す平面図、(b)は蓋体を取り付けた状態を示す側断面図である。
【0044】
この半導体レーザ装置1Bでは、シールリング31を用いて蓋体30と容器本体10の密封性を保っており、それ以外の点は図1の第1の実施の形態のものと全く同じである。したがって、同一部分、部位には同一符号を付して異なる点のみ説明する。
【0045】
シールリング31は、例えば断面円形のもので、材質はシリコーンゴムやバイトンゴムなどである。蓋体30には、シールリング31との気密性を高めるために、高い剛性の硬質の板体を使用している。材料はアルミニウム等の金属、アクリル等の樹脂、あるいはガラスなどである。アクリルやガラス等の透明材料であれば、内部の結露の有無が目視で確認できるので好適である。これらは材料特性あるいは厚みがあることにより、透湿度は無視できるほど低い。従って、外気は蓋体30からの透湿ではなく、気密性が不完全な箇所より侵入する。蓋体30は、何らかのクランプ手段により容器本体10に固定する。
【0046】
容器本体10内部の伝熱ホルダ2上には温度・湿度センサ12が配置されており、容器本体10内部の温度および湿度を測定している。これにより、温湿度が冷却部の露点を超えた時のレーザのOFF、一時的な冷却温度の上昇などの結露防止制御やシリカゲル交換の要否確認が可能になる。
【0047】
なお、図5に示す第3の実施の形態の半導体レーザ装置1Cのように、シールリング31の代わりに、グリース状、ペースト状のシール剤32を、蓋体30と容器本体10の上端面に介在させてもよい。例えば、接着剤ではなく、真空用などのシリコーングリースや液状ガスケット等を用いた場合、これらは接着力がないか非常に弱いため、蓋体30の取り外しが容易である。
【0048】
また、容器本体10と蓋体30を固定するためのクランプ手段としては、図6に示すように、ネジ41を用いてもよいし、図7に示すように、L形フック42を容器本体10側に取り付けておき、L形フック42を回動させて蓋体30をロックするようにしてもよい。
【0049】
ネジ41で止めた場合、ネジ41を外して蓋体30を開ければ、容易に内部の半導体レーザモジュール3の交換が可能である。また、L形フック42で止めた場合も同様である。
【0050】
このように、蓋体30を高い剛性の硬質の板材で構成した場合、蓋体30の加工がしやすいくなるし、取り扱いもやりやすくなる。また、シール手段として各種のものを使用できる利点もある。
なお、シール手段として、上記したシールリング31やシール剤32を単独で用いるのではなく、それらを組み合わせて用いて、一層の密封性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施の形態の半導体レーザ装置の構成図で、(a)は蓋体を外した状態を示す平面図、(b)は蓋体を取り付けた状態を示す側断面図である。
【図2】第1の実施の形態の半導体レーザ装置における蓋体の構成を示す斜視図である。
【図3】他の蓋体の構成による半導体レーザ装置の側断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態の半導体レーザ装置の構成図で、(a)は蓋体を外した状態を示す平面図、(b)は蓋体を取り付けた状態を示す側断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態の側断面図である。
【図6】第2、第3の実施の形態における蓋体と容器本体の固定の仕方の例を示す図である。
【図7】図6と別の例を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1,1B,1C 半導体レーザ装置
3 半導体レーザモジュール
8 冷却器(冷却手段)
9 乾燥剤
10 容器本体
20,30 蓋体
21 枠部
22 樹脂フィルム
31 シールリング(シール手段)
32 シール剤(シール手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つ以上の半導体レーザモジュールと、
前記半導体レーザモジュールを収容すると共に収容した該半導体レーザモジュールを外部に取り出し可能にする開口部を有した容器本体と、
該容器本体の開口部に開閉可能に取り付けられた蓋体と、
前記容器本体に収容された半導体レーザモジュールを冷却する冷却手段と、
前記容器本体内を乾燥させる乾燥剤と、
を具備したことを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項2】
前記蓋体が透湿係数の小さな樹脂フィルムよりなることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ装置。
【請求項3】
前記樹脂フィルムの透湿係数が0.5g/(m2・日)以下であることを特徴とする請求項2に記載の半導体レーザ装置。
【請求項4】
前記樹脂フィルムが、前記容器本体内部の気体の体積変動に伴って変形し得る程度の可撓性を有していることを特徴とする請求項2または3に記載の半導体レーザ装置。
【請求項5】
前記蓋体が高い剛性を有した硬質の板材により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ装置。
【請求項6】
前記容器本体と前記蓋体との間にシール手段が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の半導体レーザ装置。
【請求項7】
前記シール手段が、グリース、ペースト状シール材料、シールリングのうちの一つ、または、二つ以上の組み合わせよりなることを特徴とする請求項6に記載の半導体レーザ装置。
【請求項8】
前記容器本体が熱伝導性に優れた材料で形成されると共に、該容器本体内に断熱性の高い気体が充填されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の半導体レーザ装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−49605(P2006−49605A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−229028(P2004−229028)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】