説明

半導体材料から単結晶を製造する方法および装置

本発明は、固有るつぼを用いて半導体材料からFZ法による材料特性を有する単結晶を製造する方法および装置に関する。この方法により、公知の方法の典型的な欠点を解消するのが望ましい。チョクラルスキー法では、るつぼにより融解物ひいては結晶が汚染され得る。ペデスタル法では、引き上げられる単結晶は、常に、用いられる素材棒よりも小さな直径を有している。本発明によれば、単結晶(6)が、誘導体(4)の中央開口(5)を通って引き上げられ、誘導体は、平らなディスクとして構成され、高周波磁界透過性の容器(1)内に存在する半導体材料(2)から成る粒状の堆積物の上側に配置されている。誘導体(4)は、追加的な開口を備えており、開口を通って再充填装置(10)を介して半導体材料が再充填可能である。粒状の半導体材料は、溶融池(7)のための容器としていわゆる「固有るつぼ」を形成する。溶融池(7)の大きさは、溶融池の上側に配置される誘導体(4)によりコントロールされる。溶融池(7)が中央で結晶化相境界の下側で大きな結晶直径にとって十分な深さを有するために、追加的な誘導加熱装置(8,9)が設けられている。誘導加熱装置(8,9)は、好適には複数巻きのコイルとして構成されており、その巻体は、容器の周りに配置されている。この方法を実施するための装置が提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体材料から単結晶を製造する方法および装置に関する。単結晶の種結晶が融解物表面に浸漬され、部分的に溶解され、コントロールして鉛直方向に移動され、これにより単結晶が成長する。単結晶シリコンのこのような基本的な製造プロセスは、その利用、たとえば電子産業もしくは太陽光産業における利用とは関係なくほぼ同一である。
【0002】
太陽電池の出発材料として、また電子工学に関して、大きく高まりそしてさらに高まる単結晶シリコンの要求により、できるだけ少ない汚染で大きな寸法を有する単結晶を経済的に製造できる方法が開発されている。そのような単結晶を製造する様々な方法が知られ記載されている。単結晶を製造する一般的で広く知られた標準的な方法は、チョクラルスキー法であり、そこでは、単結晶に引き上げられるべき半導体材料が石英るつぼ内で溶融され、融解物から結晶が上向きに引き上げられる。この方法の主な欠点によれば、融解物があらゆる場合にるつぼを溶解させ、これにより融解物ひいては結晶が汚染される。また石英るつぼは、割合短い耐用期間で交換する必要がある。ドイツ連邦共和国特許出願公開第10217946号明細書に記載されたような、石英るつぼに関する面倒な手段により、比較的長い耐用期間を達成する構成も存在する。しかしこの場合には、CZ法に典型的な汚染物質を含む結晶しか引き上げられず、さらに汚染物質は、軸方向に不均一に分布されている。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第2416489号明細書において、チョクラルスキー法に従ったシリコンから僅かなずれもしくはずれのない単結晶を成長させる方法が記載されており、そこではチョクラルスキー法の欠点が、るつぼの代わりに、ペデスタル法と同様に、融解した貯蔵棒を材料源として用いることにより排除されている。加熱源として誘導体を用い、誘導体を通って流れる交流の周波数を適切に選択すると、表皮効果に従って、貯蔵棒の表面における潜熱損失と相俟って、固体の縁層は融解せず、したがって縁層が、融解物のための容器を成し、ひいてはペデスタル法と同様に、異種のるつぼ材料から解放された結晶引き上げが実現される。このような構成における主な欠点によれば、貯蔵棒に対して極めて小さな直径を有する結晶しか引き上げることができない。さらにこのような構成では、貯蔵棒の非融解縁部は、内実の材料の比較的良好な伝導性に基づいて、安定化のために大量の熱を放出し、この熱は、誘導性のエネルギ供給により補償する必要がある。
【0004】
またドイツ連邦共和国特許出願公開第4447398号明細書に記載された方法において、チョクラルスキー法の欠点が排除される。そのためにるつぼに存在する半導体材料が、先ず誘導コイルにより融解される。これにより先ずるつぼを充填する融解物が形成される。そのあとで加熱出力は低減され、安定した固体の層がるつぼ内壁に形成される。凝固した縁層は、その機能において、不動態層であり、追加的に融解物内の温度を自己安定化するための底体として用いられる。融解物の過熱段階において、融解物は、るつぼの外壁と反応し、その際、酸素および別の汚染物質が融解物に侵入する。上記の構成と同様に、この構成でも、固い縁層を安定化するために、縁領域において大量のエネルギが比較的低温の周囲に放出される。融解物の過熱の不足に基づいて、固体のシリコンの再充填が不可能であり、そして液体のシリコンの再充填が異物混入につながるので、提案された装置で製造しようとする結晶の体積は制限されている。
【0005】
別の方法は、浮遊帯域融解(FZ)法であり、高純度のSi単結晶を引き出すことができる。ドイツ連邦共和国特許出願公開第3007377号明細書において、FZ法の基本特性が記載されている。その欠点は、制限された直径であり、相応の多結晶の素材棒の高い製造コストである。
【0006】
単結晶を製造する第3の方法は、同様にるつぼのないペデスタル法である。多結晶の棒が、誘導体により、上側の端面全体で融解される。融解された帯域は、誘導体の開口を通って、種結晶と接触させられ、成長する単結晶が、帯域融解法とは異なり、上向きに引き上げられる。ペデスタル法の主な欠点によれば、依然として、常に、引き出される結晶の直径が素材棒の誘導開口に対して極めて小さくなっている。
【0007】
ペデスタル法の特徴を表す主な方法ステップおよび装置の構成は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2110882号明細書において記載されている。半導体材料から成る多結晶棒は、先端部分で、ヒータにより融解され、そこから単結晶が引き上げられる。
【0008】
ペデスタル法に従って単結晶を引き出す別の構成が、カナダ国特許公開第713524号明細書に詳しく記載されている。
【0009】
米国特許第2961305号明細書において、ペデスタル法に従って単結晶を引き出す構成が記載されている。
【0010】
古典的なペデスタル法の主な欠点によれば、引き出される単結晶が、常に、用いられる素材棒よりも小さな直径を有している。ここでも素材棒は、シリコンを製造するシーメンス法により設定された、制限された直径を有している。とりわけ、大きな結晶直径に関して、貯蔵棒直径に対する結晶直径の比が、熱技術的な理由から常に不都合である。その欠点を排除するために、ペデスタル法を用いる別の構成が公知である。
【0011】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3519632号明細書において、単結晶シリコン棒を引き上げる方法および装置が記載されており、そこでは、シリコン粒子が容器に充填され、容器内で溶融池が表面に形成され、そこから単結晶が引き上げられる。溶融池を形成するために、粒子に入り込む2つのシリコン電極の間の電流により、溶融池が形成されるまで粒子が加熱される。しかしこの方法は、実際には、シリコンから製造する必要がある電極を、生じる融解物ひいては引き出されるべき結晶の汚染を防止するために、溶融温度で、生じる融解物に対して約30倍も高い固有電気抵抗を有するシリコンから製造する必要があるので、実現不可能である。したがって、体積単位に関して、供給される電気エネルギの約3%しか溶融池で熱に変換されず、これに対して電気エネルギの残りの約97%は、固体のシリコン電極において解放する必要があり、これによりシリコン電極自体が融解するかまたは融解物が形成される。
【0012】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3525177号明細書において別の構成が記載されている。そこでは、内実のシリコンブロックに形成された孔にシリコン電極が導入される。シリコン電極の加熱およびシリコンブロックの冷却により、2つのシリコン電極の間にアークが形成され、アークは、第3のシリコン電極により形成される。この構成の欠点によれば、特に電極を追加的に加熱する必要があり、またシリコンブロックを冷却する必要がある。さらに実地に基づいて、提案された構成で実際に両方の電極によりシリコン結晶を引き出すことができる溶融池が形成されるか疑問である。ここでもドイツ連邦共和国特許出願公開第3519632号明細書において記載されたエネルギ問題が存在する。
【0013】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第4318184号明細書において、融解物から単結晶を引き上げる方法および装置が記載されている。この方法によれば、種結晶が融解物に浸漬され、コントロールしながら融解物に対して垂直方向に引き上げられることにより、単結晶の種結晶が単結晶に成長する。融解物は、溶融池を形成し、溶融池は、表面張力と誘導コイルの電磁力によってのみ内実の支持体に保持される。支持体は、半導体材料から製造されている。単結晶成長中に固体または液体の状態で半導体材料が融解物に再充填される。支持体を追加的に加熱することにより、溶融池の形成および/またはその維持の熱源として利用される誘導コイルが効率的に支持され、これにより半導体材料の再充填に際して強制的に発生する熱損失を補償することができる。誘導コイルは、好適には平らに形成され、支持体の上に設置される。支持体との間隔は可変である。溶融池は、支持体の上に位置しており、支持体は、追加の加熱源として、支持体の中空室に配置された抵抗加熱器を介して加熱することができる。支持体は、好適には一体的に成形されず、複数のセグメントから構成されている。個々のセグメントの成形を適切に行うことにより、追加的な抵抗加熱器を収容するために利用される中空室が支持体に形成される。この構成の欠点によれば、特に支持体をシリコンから極めて面倒な方法で製造する必要があり、支持体は、引き上げプロセスが終了したあとで、新たな機械加工により、再び当初の状態に戻す必要がある。さらに抵抗加熱器により、極めて大きな追加的な所要エネルギが形成される。支持体を内実のシリコンから製造する必要があるので、抵抗加熱器と溶融池との間の温度勾配を維持し、同時に溶融体積および支持体自体を安定した状態に維持するために追加的な手段が要求される。
【0014】
したがって本発明の課題は、FZ法の材料特性を有する単結晶を連続的なプロセスで経済的に製造できる方法および装置を提供することであり、単結晶の直径および長さは原則的に制限されていない、その際、半導体融解物を提供するために、るつぼは、簡単な容器内に存在する固有材料から形成される。エネルギ供給のために電極もしくは抵抗加熱器は使用されない。この方法は、好ましいエネルギ所要量と僅かなエネルギ損失とを有している。
【0015】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の構成を有する本発明による方法により解決される。その際、単結晶は、融解物から引き上げられ、融解物は、半導体材料の表面に溶融池を形成する。単結晶は、種結晶でもって、誘導体の中央開口を通って引き上げられる。誘導体は、公知の背景技術に従って、平らなディスクから形成される。半導体材料上に溶融池が形成され、半導体材料は、粒状の堆積物として、高周波磁界透過性の容器内に設けられる。粒状の半導体材料は、溶融池のためのいわゆる「固有るつぼ」を形成するので、「固有るつぼ」は、融解物と同一の材料から成る。本発明による方法では、コンパクトな固体の中間層および融解物と比べてルーズな粒子の特に小さな熱伝導性および導電性の物理効果が利用される。粒子は、中間スペースと、個々の粒の間の単に点状の結合とに基づいて、極めて小さな導電性を有しており、これにより粒子において相対的な過電流が誘導されない。これにより粒子は、誘導体により極めて僅かしか加熱されない。最大の導電性を有する融解物には、強い誘導性の過電流が形成されるので、ここでも最大の出力供給が行われ、したがって露出した表面における局所的な過熱まで、最高温度が形成される。粒状の半導体材料はまた不良の熱伝導体であるので、溶融池の大きさを溶融池の上側に配置された誘導体によりコントロールできるように、保証される。したがって融解物が容器と接触しないように保証され、これにより、容器に特別な純粋性要求を課すことなく、融解物の純粋性が認められる。前述の理由から、溶融池内で温度形成するために、専ら誘導性の加熱装置が用いられる。粒状の充填物により包囲された溶融池は、主に溶融池の表面の上側に配置された誘導体のエネルギにより形成され、誘導体に、1MHz〜4MHzの高周波が供給される。表面に対する誘導体の間隔と供給されるHF電流とにより、溶融池の大きさおよび深さは、良好にコントロール可能である。誘導体の形状は、誘導性の出力分布により溶融池が形成されるように選択され、その深さは、直径の少なくとも20%であり、その露出した表面は、誘導体基本輪郭よりも横向きに少なくとも5mm〜10mm拡張して延在している。誘導体は、さらに、所望の結晶横断面に応じた中央開口を備えている。主スリットと丸い中央開口とを備えた1巻きの誘導体により、たとえばほぼ回転対称的な温度分布が形成されるので、ほぼ丸い溶融池が形成され、丸い横断面を有する結晶が中央開口から引き上げられる。丸い結晶の引き上げは、好適には、引き上げ装置が成長する結晶と共に軸線を中心に回転することにより補助される。
【0016】
たとえば矩形もしくは多角形の中央開口を備えた、また副スリットと組み合わせられた別の誘導体形状の選択により、幾何学形状が相応に変化した、矩形もしくは多角形の横断面を有する結晶の成長に好適に作用する温度分布が形成され、この場合には、原則として結晶の回転が止められている。誘導体の横方向の延在長さは、外縁全体で20mm〜30mm以上結晶横断面を越えていて、好適には結晶横断面の1.5倍〜2倍である。
【0017】
好適には、丸い溶融池および再充填される材料の均一な融解を保証するために、容器は、ゆっくりとその軸線を中心に回転する。
【0018】
中央で溶融池が大きな結晶横断面にとって十分な深さを有し、粒状の半導体材料の再充填に際して十分な溶融熱を提供するために、追加的な誘導加熱装置が設けられており、この誘導加熱装置は、主に下側から溶融池を加熱し、その際、同様に粒子に大きなエネルギ供給が行われることはない。このような誘導加熱装置は、コイルとして構成されており、コイルには、約5kHz〜500kHzの比較的低い周波数の高周波電流が供給され、その巻体は、容器の周りに配置されている。周波数に起因する大きな侵入深さおよび誘導コイルの配置選択により、熱エネルギは、好適には粒状の半導体材料と融解物との間の境界部分で誘導される。同時に容器壁と溶融池との間の温度勾配が所望に調節され、半導体材料は、非加熱の容器壁の周囲に安定したまま存在する、つまり十分な熱抵抗および電気抵抗を有している。したがって単結晶が引き上げられる融解物は、容器壁と接触せず、容器壁から、融解物を汚染することになる物質が剥離されることはない。好適には、最適に構成された溶融池を実現するために、好適には平らな別の誘導体が容器の直ぐ下に配置されている。選択的に、容器の周りに配置され、また容器の底の下側に配置された別の両方の誘導体は、1つのコイルとしてまとめることができる。
【0019】
好適には、粒状の半導体材料は、砕片もしくは流動層・粒子から成る。好適な粒子サイズは、約0.001mm〜20mmである。
【0020】
前述の方法を実施するための本発明による装置は、請求項11の特徴部に記載されている。その際、原則としてペデスタル法を実施するための公知の装置と同等の装置が用いられる。粒状の半導体材料が存在し、その上に溶融池が形成される容器の上側に、ディスク状の1巻きの誘導体が配置されており、誘導体の中央開口を通って、単結晶が引き上げられる。中央開口の横断面は、引き上げられるべき結晶の横断面に応じて設定される。丸い横断面を有する結晶は、丸い中央開口から引き上げられる。矩形もしくは多角形の横断面を有する、また副スリットと組み合わせられた中央開口は、相応に幾何学的に変化した、矩形もしくは多角形の横断面を有する結晶の成長にとって好適な温度分布を形成する。誘導体の上側に、種結晶が取り付けられる一般的な引き上げ装置が存在する。容器は、容器壁と溶融池との間に全方向に少なくとも十分な厚さの非融解半導体材料が存在するような直径および高さを有している。そのように形成される「固有るつぼ」は、数センチメートルの壁厚さを有している。容器は、電気絶縁性、耐熱性ならびに高周波磁界透過性の材料から成る。容器の材料に、純粋性または化学安定性もしくは機械安定性/熱安定性に関する高い要求は課せられていない。容器として、たとえば石英ガラスが適切である。鉛直方向に容器が移動可能である必要はない。容器の上側のディスク状の誘導体は、鉛直方向に容器に対して移動可能に構成されている。
【0021】
容器の周りに配置された誘導コイルは、約3〜5巻きの巻体を有しており、巻体は、ほぼ溶融池の高さで、容器の外壁に対して5mm以上の間隔を有して配置されている。容器の下側に配置された誘導コイルは、同様に容器の底に対して5mm以上の間隔を有している。
【0022】
粒状の半導体材料の再充填のために供給部が設けられており、供給部は、誘導体に設けられた追加的な開口を通って容器にガイドされているので、再充填される半導体材料が溶融池の縁で再充填され、したがって一方では溶融池の液位が一定に維持され、他方では浮遊して結晶化相境界に達するまえに粒子が融解する。結晶化相境界の到達は、単結晶性の損失につながる。
【0023】
粒子品質が単結晶成長にとって十分ではないと、記載の方法に対して選択的に、多結晶の半導体棒をたとえば後続のFZ結晶成長のための素材棒として引き上げることができる。
【0024】
別の好適な態様は、従属請求項から明らかである。
【0025】
本発明による方法の利点によれば、帯域融解法による単結晶の材料特性を有する単結晶を連続的なプロセスで引き出すことができ、その横断面は、FZ法およびペデスタル法の場合のように、原則として素材により特定されない。横断面は、原則として用いられる誘導体の中央開口の横断面により限定される。その長さは、特に本発明による装置が配置された設備における気密の成長チャンバの大きさならびに用いられる引き上げ装置の移動距離により制限される。粒状の半導体材料を収容するために用いられる容器は、融解物と接触せず原則として融解しないので、電気絶縁性の非磁性材料から、たとえば安価な石英ガラスから形成される。半導体材料は、割安な粒子または粒状の破片として用いることができる。本発明による方法のエネルギ所要量は、公知の背景技術による比較可能な方法よりも僅かである。
【0026】
本発明による方法ならびにこの方法を実施する装置を、以下に、発明を実施するための形態に基づいて説明する。選択された態様では、約50mmの直径を有するシリコン結晶が引き上げられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による装置の概略側面図である。
【0028】
図1には、本発明による方法を実施するための本発明による装置を概略側面図で示す。図示の装置は、アルゴンが充填された、図示していないFZ設備の気密の成長チャンバ内に取り付けられる。選択した態様では、丸い横断面を有する単結晶が引き上げられる。容器1内に、シリコン粒子2としてシリコン結晶を製造するための出発材料が存在し、容器1は、FZ設備の下側の引き上げシャフト11上に配置されている。使用される容器1は、標準的な石英ガラスから成り、約20cmの直径D1ならびに約10cmの高さH1を有している。容器1には、選択した態様では、シリコン粒子2が約9cmの高さまで充填される。シリコン粒子2の粒子サイズは、約0.3mm〜3mmである。
【0029】
容器1の上側で、シリコン粒子2の上に、1巻きのディスク状に形成された丸い誘導体4が配置されており、誘導体4は、丸い中央開口5と主スリットとを備えており、主スリットに、両方の給電部が接続されている。誘導体4の直径D2は、容器1の直径D1よりも小さく、これにより誘導体4は、堆積物の表面に僅かな間隔でぴったりと位置決めすることができる。誘導体4の丸い中央開口5の直径D4は、選択した態様では、約60mmである。したがって約50mmの直径D5を有する結晶6が引き上げ可能である。誘導体4には、約25kWの発電出力の場合に約3MHzの周波数を有するHF電流が通電される。この誘導体4は、回転対称的な温度分布を形成し、これにより丸い溶融池7が維持される。溶融池7の直径D3は、選択した態様では、約120mmである。誘導体4の上側に、上側の引き上げシャフト3が設けられており、上側の引き上げシャフト3は、種結晶とあとで成長する単結晶6とを支持し、融解物から上方へ引き上げる。
【0030】
容器1の周りに別の誘導体8が配置されており、別の誘導体8は、複数巻きの(複数の巻数を有する)誘導コイルとして形成されている。巻数は、約4であり、容器1の外壁に対する巻体の間隔は約3mmである。誘導コイル8は、約30mmの高さを有していて、容器の上側付近に配置されている。誘導コイル8には、約3kWの出力で約10kHzの周波数を有するHF電流が通電される。円筒形の誘導体8により形成される温度分布により、中央で溶融池7の下部で、シリコン粒子2が約1412℃の溶融温度に保持される。シリコン粒子2では、その高い電気的かつ熱的な抵抗に基づいて、容器1の内壁で最高約500℃の温度が生じるような温度勾配がもたらされる。シリコン粒子2が要求される純粋性を有しており、融解物が、シリコン粒子2とのみ接触して、ハウジング壁と接触しないので、ハウジング壁から実際に汚染物質が融解物および引き上げられる単結晶6に侵入しない。したがってこのような配置構造は、るつぼが種固有の半導体材料により形成されるので、「固有るつぼ」とも云われる。
【0031】
本発明による装置は、選択した態様では、追加的な誘導体9を備えており、この誘導体9は、容器1の下側に配置されている。この別の誘導体9は、好適には複数巻きで渦巻き状の平らな誘導コイルとして形成されている。この追加的な誘導体9により、シリコン粒子・堆積物2に対する境界面に対する作用による溶融池7のサイズおよび特に深さが、最適にコントロール可能である。
【0032】
再充填装置10により、連続的に、引き上げ速度および結晶6の直径とは無関係に、誘導体4に設けられた追加的な開口を通って、溶融池7の液位H2が常に一定に維持されるような量の粒子2が再充填される。これにより結晶6を連続的に引き上げることが保証され、材料が堆積物もしくは固有るつぼから消費されることはない。容器1は、下側の引き上げシャフト11により、その軸線を中心に1分あたり約3回転で回転させられる。したがって再充填される材料の均一な溶融が保証され、これにより常に丸い溶融池7を維持して、不完全に溶融した粒子2が結晶6の成長境界に到達することが防止される。
【0033】
結晶6が引き上げ装置の寸法により制限された所定の長さに達すると、結晶6は、融解物から引き出され、その際、誘導体4ならびに誘導コイル8および場合によっては誘導コイル9を通る電流の遮断後に、溶融池に残る半導体材料が凝固する。この装置が新たな引き上げプロセスのために準備されると、余加熱のあとで、凝固した溶融池7は、誘導式に再び融解し、溶融液位の再形成および種結晶の種付け後に、新たな引き上げプロセスが開始される。
【符号の説明】
【0034】
1 容器、 2 シリコン粒子、 3 上側のシャフト、 4 1条でディスク状の誘導体、 5 誘導体4の中央開口、 6 結晶、 7 溶融池、 8 多条で円筒形の誘導体、 9 多条で平らな誘導体、 10 再充填装置、 11 下側の引き上げシャフト、 D1 容器直径、 D2 誘導体4の直径、 D3 溶融池の直径、 D4 誘導体4の中央開口の直径、 D5 結晶直径、 H1 容器の高さ、 H2 溶融池の液位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯域融解法による単結晶の材料特性を有する半導体材料から単結晶を製造する方法であって、単結晶を、種結晶でもって、融解物から、平らな誘導体の中心開口を通って上向きに引き上げ、その際、融解物は、溶融池として、粒状の半導体材料から成る堆積物の上に存在し、融解物は、HF電流が通電される平らな誘導体(いわゆるPancace−Induktor)により形成され、誘導体は、1巻きの巻体と給電部としての1つのスリットとを備えているものにおいて、
粒状の半導体材料(2)を、高周波磁界透過性の容器(1)内に設け、該容器(1)の壁は、溶融池(7)と接触せず、容器(1)の上側に配置された平らな誘導体(4)の熱出力結合により、ならびに容器(1)の外側に配置された少なくとも1つの別の誘導体(8,9)の加熱作用により、堆積物(2)の表面に、粗い粒状の堆積物(2)の上表面において開いたかつ十分に深い溶融池(7)の形成を保証する温度分布を形成し、溶融池(7)は、溶融されていない半導体材料(2)に埋設されていることを特徴とする、半導体材料から単結晶を製造する方法。
【請求項2】
粒状の半導体材料(2)は、0.01mm〜20mmの粒子サイズを有している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1巻きのディスク状の誘導体(4)の中央開口(5)は、丸い横断面を有する結晶(6)を引き上げるために、同様に丸い横断面を有している、請求項1記載の方法。
【請求項4】
丸い結晶(6)を引き上げるために、上側の引き上げシャフト(3)は、結晶(6)の成長と共に結晶(6)の軸線を中心に回転する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
矩形の横断面を有する結晶(6)を引き上げるために、1巻きのディスク状の誘導体(4)の中央開口(5)は、同様に矩形の横断面を有している、請求項1記載の方法。
【請求項6】
多角形の横断面を有する結晶(6)を引き上げるために、1巻きのディスク状の誘導体(4)の中央開口(5)は、同様に多角形の横断面を有している、請求項1記載の方法。
【請求項7】
平らな誘導体(4)を通流する高周波電流は、1MHz〜4MHzの周波数を有している、請求項1記載の方法。
【請求項8】
別の誘導体(8,9)を通流する高周波電流は、5kHz〜500kHzの周波数を有している、請求項1記載の方法。
【請求項9】
単結晶(6)の引き上げ速度に応じて、粒状の半導体材料(2)を溶融池に再充填して溶融させ、容器(1)内の半導体材料(2)の液位(H2)を一定に維持する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
容器(1)は、粒状の半導体材料(2)と共に、該容器(1)の軸線を中心に回転する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法により、帯域融解法による単結晶の材料特性を有する半導体材料から単結晶を製造する装置において、
粒状の半導体材料(2)が充填された鉢状の容器(1)の上側に、ディスク状に形成された平らな誘導体(4)が配置されており、該誘導体(4)は、給電部としての主スリットと中央開口(5)とを備えており、該中央開口(5)は、所望の結晶横断面に相当する形状を有しており、該中央開口(5)を通って、引き上げ装置(3)を用いて単結晶(6)が上向きに引き上げ可能であり、ディスク状の誘導体(4)は、追加的な開口または凹所を有しており、該開口または凹所を通って、再充填装置(10)を介して半導体材料が再充填可能であり、少なくとも1つの別の誘導体(8,9)が設けられており、該別の誘導体(8,9)は、容器(1)を外側から包囲していることを特徴とする、半導体材料から単結晶を製造する装置。
【請求項12】
ディスク状に形成された1巻きの平らな誘導体(4)の横方向延伸長さは、全ての外縁において結晶横断面を20mm〜30mm以上越えていて、結晶横断面の少なくとも1.5倍〜2倍である、請求項11記載の装置。
【請求項13】
ディスク状に形成された1巻きの平らな誘導体(4)の中央開口(5)は、誘導体と結晶または融解物メニスカスとの間の接触が回避されるように、結晶を該中央開口(5)を通って引き上げることができる所望の結晶横断面に応じた形状を有している、請求項11記載の装置。
【請求項14】
少なくとも1つの別の誘導体(8)を備え、該別の誘導体(8)は、コイルとして形成されていて、容器の周りに配置されている、請求項11記載の装置。
【請求項15】
追加的な平らな誘導体(9)が、容器の下側に配置されている、請求項11記載の装置。
【請求項16】
容器(1)は、電気絶縁性で耐熱性かつ耐摩耗性の材料から成る、請求項11記載の装置。
【請求項17】
容器(1)は、石英ガラスから成る、請求項17記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2013−511468(P2013−511468A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540285(P2012−540285)
【出願日】平成22年11月23日(2010.11.23)
【国際出願番号】PCT/DE2010/001371
【国際公開番号】WO2011/063795
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(502327850)
【氏名又は名称原語表記】Forschungsverbund Berlin e.V.
【住所又は居所原語表記】Rudower Chaussee17,D−12489 Berlin,Germany
【Fターム(参考)】