半導体材料に対して高周波四重極リニア加速器を用いて微粒子を導入する装置及び方法
【課題】自立できる、一以上の分離可能な半導体膜を形成するためのシステム。
【解決手段】本装置は、第一のエネルギーレベルにある複数の平行化した荷電粒子を生成するイオン源を備える。本システムは、1からN個の相互に連続した高周波四重極(RFQ)エレメントを有するリニア加速器を備え、Nは1より大きな整数である。本リニア加速器は、第一のエネルギーレベルにある複数の平行化した荷電粒子を、第二のエネルギーレベルを有する荷電粒子ビーム内へと、制御して加速する。1番目のRFQエレメントは、イオン源に動作可能に接続される。本システムは、RFQリニア加速器の番号NのRFQエレメントに接続される出口アパーチャを備える。具体的な実施形態において、本システムは出口アパーチャに接続されるビームエキスパンダを備え、該ビームエキスパンダは第二のエネルギーレベルにある荷電粒子ビームを処理し、荷電粒子の拡大ビームとするよう構成される。本システムは、ビームエキスパンダと、注入のためにプロセスチャンバ内に供給されるワークピースとに接続する、プロセスチャンバを備える。
【解決手段】本装置は、第一のエネルギーレベルにある複数の平行化した荷電粒子を生成するイオン源を備える。本システムは、1からN個の相互に連続した高周波四重極(RFQ)エレメントを有するリニア加速器を備え、Nは1より大きな整数である。本リニア加速器は、第一のエネルギーレベルにある複数の平行化した荷電粒子を、第二のエネルギーレベルを有する荷電粒子ビーム内へと、制御して加速する。1番目のRFQエレメントは、イオン源に動作可能に接続される。本システムは、RFQリニア加速器の番号NのRFQエレメントに接続される出口アパーチャを備える。具体的な実施形態において、本システムは出口アパーチャに接続されるビームエキスパンダを備え、該ビームエキスパンダは第二のエネルギーレベルにある荷電粒子ビームを処理し、荷電粒子の拡大ビームとするよう構成される。本システムは、ビームエキスパンダと、注入のためにプロセスチャンバ内に供給されるワークピースとに接続する、プロセスチャンバを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、全ての目的で全体を参照により本願明細書に援用する、2006年11月8日に出願された米国仮特許出願第60/864966号の優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明に係る実施形態は、概して、半導体材料プロセスのために荷電粒子を導入する装置及び方法を含む技術に関する。より具体的には、本装置及び方法は、光発電セルを含むデバイス応用のための、自立できる一以上の分離可能な半導体膜を製造するために、MeVのエネルギーレベルを有する粒子ビームを得る、高周波四重極リニア加速器等の、リニア加速器(Linac、ライナック)を用いるシステムを提供する。しかし、本発明はより広い範囲の適用性があることが認識されるだろう。集積半導体デバイスの三次元パッケージ、光又は光電子デバイス、圧電デバイス、フラットパネルディスプレイ、微小電気機械システム(“MEMS”)、ナノテクノロジー構造、センサ、アクチュエータ、集積回路、生物学及び生物医学デバイス等、他の種類の応用にも適用することが可能である。
【背景技術】
【0003】
太古から、人間は、ほとんど全ての有用なエネルギーの形態を得るために「太陽」に依存してきた。こうしたエネルギーは、石油、放射、木、及び、様々な形態の熱エネルギーからもたらされる。一例に過ぎないが、人間は需要の大半を石炭及びガス等の石油資源に大幅に頼ってきた。残念なことに、このような石油資源は枯渇してきており、他の問題を引き起こしている。代替として、部分的に、石油資源への依存を減らするために、太陽エネルギーが提案された。一例に過ぎないが、太陽エネルギーは、一般的にシリコンで作られる「太陽電池」から得ることができる。
【0004】
シリコン太陽電池は、太陽からの太陽放射にさらされると電力を発生する。日射は、シリコン原子と相互作用し、シリコン本体内のpドープ及びnドープ領域に移動して電位差及びドープ領域間の電流を生じる、電子及びホールを形成する。用途によるが、太陽電池は、効率を改善するために集光素子を集積している。一例としては、日射を活性光発電材料の一以上の部分に導く集光素子を用いて、太陽放射を集め、焦点を合わせる。効率的ではあるが、このような太陽電池にはまだ多くの制約がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一例に過ぎないが、太陽電池はシリコン等の出発材料に依存する。このようなシリコンは、大抵、ポリシリコン及び/又は単結晶シリコン材料のいずれかを用いて作られる。これらの材料は、大抵、製造するのが困難である。ポリシリコンセルは、大抵、ポリシリコンプレートの製造により形成される。これらのプレートは効率的に形成される場合もあるが、高効率な太陽電池のための最適特性を有していない。単結晶シリコンは、高品位の太陽電池に適した特性を有する。しかしながら、このような単結晶シリコンは高価であり、効率的かつ費用効果的な様式で太陽電池用途に用いることは困難である。概して、薄膜太陽電池は低価格であるが、単結晶シリコン基板から製作される高価なバルクシリコン電池よりも効率は低い。成功してはいるが、太陽電池又は他の材料膜を形成するために従来の技術を用いるならば、まだ多くの制約がある。
【0006】
上述から、半導体材料を製造するための、費用効果的かつ効率的な技術が求められていることが分かる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、概して、半導体材料プロセスのために荷電粒子を導入する装置及び方法を含む技術に関する。より具体的には、本願の装置及び方法は、光発電セルを含むデバイス応用のための、自立できる一以上の分離可能な半導体膜を製造するために、MeVのエネルギーレベルを有する粒子ビームを得る、高周波四重極リニア加速器等の、リニア加速器(RFQ Linac)を用いるシステムを提供する。しかし、本発明はさらに広い応用範囲を有することが認識され、集積半導体デバイスの三次元パッケージ、光又は光電子デバイス、圧電デバイス、フラットパネルディスプレイ、微小電気機械システム(“MEMS”)、ナノテクノロジー構造、センサ、アクチュエータ、集積回路、生物学及び生物医学デバイス等の、他の種類の応用にも適用することが可能である。
【0008】
具体的な実施形態において、本発明は、デバイス応用のための、自立できる一以上の分離可能な半導体膜を製造するために、荷電粒子を導入するための装置を提供する。本装置は、複数の荷電粒子を生成するイオン源を備える。このイオン源は、具体的な実施形態における電子サイクロトロン共鳴(ECR)又はマイクロ波イオン源でありうる。複数の荷電粒子は、第一のエネルギーレベルにあるビームとして平行化される。加えて、この装置は、1からNまでの番号が付けられた複数のモジュール式高周波四重極(RFQ)エレメントを備え、Nは1より大きい整数である。複数のモジュール式RFQエレメントのそれぞれは連続して接続され、RFQリニア加速器を形成する。番号1のRFQエレメントは、低エネルギービーム抽出及び集束エレメントを介して、イオン源に接続される。本装置は、複数のモジュール式RFQライナック(Linac)エレメントのそれぞれを通じて、第一のエネルギーにある荷電粒子ビームを、第二のエネルギーを有する荷電粒子ビームへと、制御し、加速する。本装置は、RFQリニア加速器の番号NのRFQエレメントに接続される、出口アパーチャを、さらに含む。好適な実施形態において、本装置は、拡大され成形された荷電粒子のビームを提供するために、出口アパーチャに接続される、ビームエキスパンダ、ポテンシャルビーム成形光学系、質量分析器及び/又はビームスキャナを備える。具体的な実施形態において、表面領域を含むワークピースが供給される。ワークピースには、ワークピースの厚さの範囲内のある深さに、複数の不純物粒子を供給するための第二のエネルギーにある荷電粒子の拡大ビームを用いて、注入を行うことが可能である。複数の不純物粒子は、具体的な実施形態における表面領域から、約20マイクロメートルを超え、おそらく約50マイクロメートルを超える深さに、劈開領域を形成する。
【0009】
代替の具体的な実施形態において、本発明は、デバイス応用のための、自立できる一以上の分離可能な半導体材料を製造するために、荷電粒子の導入装置を提供する。本装置は、第一の複数の平行化した荷電粒子を生成するイオン源を備える。第一の複数の平行化した荷電粒子は、第一のエネルギーレベルで提供される。本装置は、第一のエネルギーレベルを有する荷電粒子を、第二のエネルギーレベルを有するビームに、集束して加速するために、高周波四重極(RFQ)ライナックサブシステムを、さらに含む。加えて、本装置は、互いに連続して接続される、番号1からNの、複数のモジュール式高周波四重極/ドリフトチューブ(RQD)を備える。Nは1より大きな整数である。具体的な実施形態において、番号1のエレメントは、RFQライナックサブシステムに接続される。複数のモジュール式RQDエレメントのそれぞれは、円柱状の中空構造の長軸に沿った、2つの部分からなるドリフトチューブを含み、この2つの部分からなるドリフトチューブは、大きい方も小さい方も、放射状のステムにより支持され、高周波四重極との間に双方向に、2つの部分からなるドリフトチューブの対向端部に向いた、2つのロッドを有する。隣接するRQDエレメントの、2つの部分からなるドリフトチューブ間の空間的なギャップは、複数のモジュール式RQDエレメントのそれぞれを通じて、第二のエネルギーレベルを有するビームを、第三のエネルギーレベルを有するビームに加速するために、適切に広げられる。本装置は、番号NのRQDエレメントに接続される出口アパーチャをさらに含む。好適な実施形態において、本装置は、出口アパーチャに接続されるビームエキスパンダ、シェーパー、及び質量分析光学エレメントを備える。ビームエキスパンダは、第三のエネルギーレベルにあるビームを、複数の荷電粒子を注入することが可能な拡大ビームサイズへと処理するよう構成される。本発明に係る装置は、ビームエキスパンダに動作可能に接続されるプロセスチャンバを備える。プロセスチャンバ内には、表面領域を含むワークピースが供給される。ワークピースは、具体的な実施形態において、第三のエネルギーレベルにある複数の粒子を用いて注入を行うことが可能な、表面領域を備える好適には、複数の不純物粒子は、ワークピースの表面領域から、約20マイクロメートルを超え、おそらく約50マイクロメートルを超える深さに、劈開領域を形成する。
【0010】
さらなる代替の具体的な実施形態において、本発明は、デバイス応用のための、自立できる一以上の分離可能な半導体膜を製造するために、荷電粒子を導入する方法を提供する。本方法は、イオン源を用いて、第一のエネルギーレベルにあるビーム電流により、荷電粒子のビームを生成することを含む。加えて、本方法は、イオン源に接続される高周波四重極(RFQ)リニア加速器を通じて、第一のエネルギーレベルにあるビームを、第二のエネルギーレベルにあるビームに移送することを含む。RFQリニア加速器は、番号1からNの複数のモジュール式RFQエレメントを含み、Nは1を超える整数である。本方法は、荷電粒子を注入することが可能なビームサイズを拡大するために、RFQリニア加速器に接続されるビームエキスパンダを用いて、第二のエネルギーレベルにあるビームを処理することを、さらに含む。さらに、本方法は、第二のエネルギーレベルにあるビームを、表面領域を通過してワークピース内に放射することを含む。このワークピースは、特定のビームサイズを有して第二のエネルギーレベルにあるビームが、表面領域を横切って走査することができ、ワークピースの表面領域から、約20マイクロメートルを超え、おそらくは約50マイクロメートルを超える深さに、平均注入線量を有する劈開領域を作り出せるように、ビームエキスパンダに接続されるプロセスチャンバ内にマウントされる。
【0011】
本発明のさらなる他の実施形態において、荷電粒子ビームは、費用効果的なリニア加速器システムを用いて、約1MeVから5MeVまで加速される。このようなリニア加速器システムは、荷電粒子ビームを供給するために、高周波四重極又はドリフトチューブ、又はこれらの組み合わせを備えてもよい。荷電粒子ビームは、さらに拡大してもよく、すなわちリニア加速器システムの出口アパーチャに接続されるビームエキスパンダを用いて、そのビーム径を増すことができる。拡大ビームは、ワークピースに注入するための、制御された線量率を有する荷電粒子の高エネルギービームである。ワークピースは、ビームエキスパンダに動作可能に接続されるプロセスチャンバ内のトレイデバイスに取り付けられる、一以上のタイル形状の半導体材料でありうる。高エネルギー荷電粒子の拡大ビームを用いて、ワークピースの厚さの範囲内の深さに、ワークピースへの注入を行うことができる。複数の不純物粒子は、具体的な実施形態における分離可能な材料の厚さを画定する表面領域から、ある深さに劈開領域を形成する。分離可能な材料の厚さは、具体的な実施形態において、約20マイクロメートルを超え、おそらくは約50マイクロメートルを超える厚さでありうる。もちろん、他の変形、変更及び代替物がありうる。
【0012】
本発明の実施形態を用いて、既存の技術以上に数多くの利益がもたらされる。特に、本発明の実施形態は、厚膜転写技術に対して、高エネルギー注入プロセスのための粒子ビームを提供するために、費用効果的なリニア加速器システム及びビームエキスパンダを使用することを含む、装置及び方法を使用する。このようなリニア加速器システムは、ドリフトチューブ法、一般的にRFQと呼ばれる高周波四重極、高周波櫛形(Radio Frequency Interdigited、一般にRFIとして知られる)、又は他のリニア加速方法、及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。具体的な実施形態において、本装置は、注入を受ける材料に過剰の損傷を与える最大フラックスよりも十分に低いが、効率的なプロセスを用いて、平方メートルサイズ等のワークピース上に均一に印加するためには十分に高い、所望のパワーのフラックスを有するビームを供給する、ビームエキスパンダを備える。好適な実施形態において、リニア加速器システムは、ドナー基板内の劈開面により画定する、転写可能な材料層を形成する注入プロセスを提供する。転写可能な材料層は、光発電デバイス、3D MEMS又は集積回路、ICパッケージング、半導体デバイス、これらの任意の組み合わせ等の、高品質の半導体材料を提供するために、さらに処理してもよい。好適な実施形態において、本発明の方法は、とりわけ非常に効率的な光発電セルのための、単結晶シリコン厚膜を提供する。本発明に係る好適な代替実施形態は、さらにヘテロ構造エピタキシャルプロセスの積層を提供することのできる、シード層を提供することができる。ヘテロ構造エピタキシャルプロセスは、とりわけ、薄い多接合光発電セルの形成に用いることができる。一例に過ぎないが、GaAs及びGaInP層を、ゲルマニウムシード層の上に、ヘテロエピタキシャル的に蒸着してもよく、本発明の一実施形態によれば、これは注入プロセスを用いて形成される転写層である。実施形態にもよるが、これらの一以上の利点を達成することもできる。
【0013】
本発明は、周知のプロセス技術の文脈において、これら及び他の利益を得ている。しかしながら、本発明の性質及び利益のさらなる理解は、以下の明細書及び添付図面部分を参照することにより、理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る、半導体材料の分離可能な自立膜を製作するために、荷電粒子ビームを導入する装置を示す、簡略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る、複数の高エネルギー荷電粒子を生成する方法を示す、簡略化したフロー図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る、基板から分離可能な厚膜を形成するステップの上面図を示す、簡略図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る、半導体材料への荷電粒子の注入方法を示す、簡略図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る、半導体基板から劈開プロセスにより形成される自立膜を示す、簡略図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る、半導体基板から分離可能な厚膜を形成する方法を示す、簡略図である。
【図7】図7は、本発明に係る、注入を実施するための装置の実施形態の構成要素を示す、簡略化したブロック図である。
【図7A】図7Aは、イオン源及び図7の装置の低エネルギービーム輸送部の拡大ブロック図である。
【図7B】図7Bは、図7の装置のリニア加速器の拡大ブロック図である。
【図7C】図7Cは、図7の装置のビーム走査デバイスの拡大ブロック図である。
【図7D】図7Dは、本発明の一実施形態に係る、ワークピース表面上への高エネルギーイオンビームの走査をシミュレートした様々なプロットである。
【図7E】図7Eは、本発明の一実施形態に係る、ワークピース表面上への高エネルギーイオンビームの走査をシミュレートした様々なプロットである。
【図7F】図7Fは、本発明の一実施形態に係る、ワークピース表面上への高エネルギーイオンビームの走査をシミュレートした様々なプロットである。
【図7G】図7Gは、本発明の一実施形態に係る、ワークピース表面上への高エネルギーイオンビームの走査をシミュレートした様々なプロットである。
【図8】本発明の実施形態に関連して用いられる、コンピュータシステムのブロック図である。
【図8A】図8Aは、図8のコンピュータシステムの、基本的なサブシステムの例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、概して、半導体材料プロセスのために荷電粒子を導入する装置及び方法を含む技術に関する。より具体的には、本発明の装置及び方法は、光発電セルを含むデバイス応用のための、一以上の分離可能な半導体膜を製造するために、MeVエネルギーレベルを有する粒子ビームを得るための、例えば、高周波四重極リニア加速器等の、リニア加速器を用いるシステムを提供する。しかし、本発明はより広い応用範囲を有すると認識され、集積半導体デバイスの三次元パッケージ、光又は光電子デバイス、圧電デバイス、フラットパネルディスプレイ、微小電気機械システム(“MEMS”)、ナノテクノロジー構造、センサ、アクチュエータ、集積回路、生物学及び生物医学デバイス等の、他の種類の応用にも適用することが可能である。
【0016】
以下の開示の目的に対し、「自立膜」又は「自立層」という用語は、取っ手又は転写基板等の支持部材との恒常的な接触のない、自身の構造の全体を維持することのできる(すなわち、崩壊も分解もしない)材料の膜として定義する。通常は、例えば、約5〜10μmよりも薄いシリコン薄膜等の極薄のフィルムは、破壊なしに取り扱うことはできない。従来は、そのような薄膜は支持構造を用いて取り扱われ、これは最初の場所に薄膜を作るためにも必要な場合がある。より厚い膜(すなわち、20〜50μmの間の厚さを有するシリコン膜)の取り扱いは、支持体の使用により容易になる場合があるが、このような支持体は必須ではない。従って、本発明の実施形態は、20μmを超える厚さを有する、シリコンの自立膜を作ることに関する。
【0017】
本発明の実施形態は、自立膜の形成に限定されない。代替実施形態は、基板により支持される膜の形成を含んでもよい。さらに、太陽光発電の応用に用いる膜が、光発電セルのプロセス中に真に自立しているか、取り扱い又は転写基板に支持されるかに関わらず、プロセスを受けるセルは、光電力モジュール全体の一部としての最終的な応用のために、通常は、ガラス又はプラスチック等の機械的表面にマウントされる。
【0018】
同様に、以下の開示に対し、「バルク材料」という用語はバルク形態で存在する材料を指す。このようなバルク材料の例としては、ほぼ円環状のインゴット又は単結晶シリコン若しくは成長した他の類似材料のブール、又は切削側面を有してほぼ円環状の断面形状以外を示す、成長したシリコンインゴット又は他の類似の材料が挙げられる。バルク材料の他の実施例としては、正方形、長方形、又は台形の形状を示す、多結晶のシリコンプレート又はタイルが挙げられる。バルク材料のさらに他の実施例については後述する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る、デバイス応用のための、半導体材料の分離可能な自立膜を製作するために、荷電粒子ビームを導入する装置を示す、簡略図である。この図は一例に過ぎず、本願明細書に列挙する特許請求の範囲を過度に制約してはならない。当業者であれば、多くの変形、変更及び代替物を認識する。図示のように、装置1は、デバイス応用のための、自立できる分離可能な半導体材料の膜を製作するために、荷電粒子ビームを導入している。より具体的には、装置1は、荷電粒子ビーム生成システムとしてのシステム3、及びビーム印加システムとしてのシステム5の、2つのシステムを備える。システム3は、次の構成要素を備える。すなわち、イオン源10、第一のエネルギーレベルにある当初の粒子ビーム12を取り込み、導くための低エネルギービーム輸送ユニット15、複数のモジュール式高周波四重極又は他のライナックエレメント40、高周波電力システム20、真空システム30、高エネルギービーム輸送(HEBT)ユニット53及びビーム成形、質量分析、及びビームスキャナ及びエキスパンダ55である。使用に適切な粒子を選択するために、質量分析及びビームスキャナを用いることができる。加えて、装置55のフィルタ基板には適切な厚さがあり、不必要な汚染粒子をさらに最小限にするために用いてもよい。システム5は、ビームエキスパンダ55に接続されるプロセスチャンバであり、拡大ビーム径を有し、第二のエネルギーレベルにある荷電粒子ビーム58が印加される。システム5は、ワークピース70、トレイデバイス75、二軸の移動ステージを、さらに含む。加えて、システム3及びシステム5の両者は、操作及びプロセス制御を提供するコンピュータシステム90と連結される。
【0020】
具体的な実施形態において、装置1は、複数の荷電粒子を生成するためのイオン源10を備える。このイオン源は、実施形態によって、電子サイクロトロン共鳴(ECR)、マイクロ波により生成するプラズマ、誘導結合プラズ、プラズマ系マグネトロンイオン源、又はペニング源、他により生成することができる。当業者であれば、多くの他の変形、変更及び代替物を認識する。好適な実施形態において、複数の荷電粒子は、第一のエネルギーレベルで供給される、第一のビーム12として平行化される。
【0021】
再び図1を参照すると、第一のエネルギーレベルにある第一のビーム12は、低エネルギービーム輸送(LEBT)ユニット15によって、リニア加速器サブシステムに導かれる。リニア加速器サブシステムは、互いに連続して接続される、番号1からNの複数のモジュール式高周波四重極(RFQ)エレメント40を備える。例えば、LEBT装置は、第一のビーム12をRFQアパーチャに導くために用いることができ、三軸ステージにマウントされた電極を収容する、単一の連結したアインツェル(Einzel)レンズに基づく。第一のビーム12をRFQエレメント40に導くため、横方向の動きが用いられる。レンズ電圧及び縦軸の動きを用いて、複数のRFQエレメント40の範囲内において、第一のエネルギーレベルにある第一のビーム12を最適化することができる。他の実施形態において、複数ソレノイド等による磁気拘束も、ライナック(高周波)エレメントへのビーム成形及び荷電粒子の抽出を行うために用いることができる。
【0022】
具体的な実施形態において、複数のモジュール式RFQエレメント40を用い、第一のエネルギーレベルにある第一のビームを圧縮し(bunch)、集束し、加速して、第二のエネルギーレベルにある第二のビームとすることができる。特に、複数のモジュール式RFQエレメント40のそれぞれは、200MHzの共振周波数で動作する、高周波の円筒状構造における高周波共振キャビティとなるよう構成される。高周波の円筒状構造は、高エネルギーの荷電粒子を制限するか又は横方向に集束することが可能な、四重極電極を備えることができる。一実施例において、この四重極電極は、キャビティ内の電場分布を制御するよう構成される。これらは、一定の構成の羽根又は支柱の形式とすることが考えられる。四重極電極は、ビーム内の荷電粒子の分布を、加速方向にあるときには粒子が電場にさらされ、減速方向にあるときには遮へいされるように、制御するよう構成することができる。内部の高周波電場の正味の効果は、第一のビーム12に対して加速効果である。代替実施形態において、RFQエレメント40、又は具体的には番号2のRFQエレメントは、ドリフトチューブ法により他の高周波四重極、並びに他のライナック構成(RFI、QFI等)と接続してもよい。複数のモジュール式RFQエレメントを通じて、第一のビームを、第二のエネルギーレベルにあるビームに加速することができる。具体的な実施形態において、第二のエネルギーレベルは、番号NのRFQエレメントの出口アパーチャにおいて、1MeVから5MeVの範囲でありうる。
【0023】
図1に戻って参照すると、複数のRFQエレメント40は、少なくとも50kWの連続波(CW)出力及び/又は約30%デューティにおいて150kWのパルス出力を供給することが可能な高周波電力システム20により、電力供給される。例えば、高周波電力システム20は、1000MHzまでの動作を定格として、少なくとも2.5kWの陽極定格出力を有する場合がある。このような高周波出力の変換を提供するためには、三極管、四極管、クライストロード(Klystrode)、誘導出力管(IOT)又は同軸IOT(C−IOT)等の、他の実施形態もある。高周波電力システム及びそれぞれの複数のモジュール式RFQエレメントは、システムを過熱から防ぐために、冷却システム(図示せず)に接続される。例えば、冷却システムは、水又は他の冷却流体を用いる、複数の並列した冷却回路を備えてもよい。別の実施形態において、低エネルギービーム輸送ユニット及びそれぞれの複数のモジュール式RFQエレメントは、高真空環境30に設けられる。例えば、少なくとも一以上の、毎秒400リットルのターボ分子真空ポンプを用いて、6.7×10−5Pa(5×l0−7Torr)程度よりも低圧の真空を提供してもよい。もちろん、他の変形、変更及び代替物がありうる。
【0024】
図1に示すように、粒子生成システム3は、番号NのRFQエレメントの出口アパーチャに、ビームエキスパンダ55にビームを取り込み、導くための、高エネルギービーム輸送(HEBT)ユニット53を、さらに含む。例えば、ビームエキスパンダは、荷電粒子ビームを、より大きい直径を有するものに均一に再配分する、四重極、六重極、八重極及び/又はより多くの多重極構成にある複数の磁石によって操作される磁場を用いることができる。このビーム拡大は、ビームの距離上のドリフトによっても同様に発生する可能性があり、ビームは所望のビーム径及びビーム流束の空間分布に自然に拡大する。ビームエキスパンダを用いると、第二のエネルギーレベルにある荷電粒子ビーム58は、基板上において500mmまでのビーム径を有することができる。拡大ビーム径は、高エネルギー粒子の電力束を減少させ、基板の過熱を防止できる。拡大ビームは、基板表面の損傷も防止する。加えて、少なくともビーム径の調節及びビーム電流の制御により、基板へのイオンの線量率を最適化することができる。例えば、拡大された荷電イオンビームの全電流は20mAまででありうる。電力束は十分に低く、拡大ビームを低速走査しても(あるいは走査しない場合でも)表面の過熱が起きないようにすることができるため、500mmのビーム径に対する電力束は、50W/cm2以下に制御可能である。例えば、5cm等の小ビーム径(各タイル内にパターン化した注入線量特性を生成するために有用)を用いると、電力束は5〜10kw/cm2の大きさとなり、過熱を防ぐためには、磁気的又は静電的な高速走査が必要となりうる。別の実施形態において、ビームエキスパンダの出力ポートは、荷電粒子の拡大ビームを、例えば半導体基板に注入するために用いることのできる、ビーム印加システムに、直接的に接続される。注入された半導体基板は、光発電セル等の応用に用いられる、一以上の自立厚膜を形成するために、さらに処理することができる。さらに、HEBTは、基板内にのみ必要な化学種を提供するために、磁気的又は電気的な質量分析のための要素を収容することができる。これは、同様に、いくつかのビーム成形、並びにビームの方向を変えることを可能にし、システム全体のパッケージ化の改良になる。
【0025】
一実施形態において、システム5は、ビームエキスパンダに接続して動作可能であり、荷電粒子の高エネルギービームを受け取ることのできるプロセスチャンバでありうる具体的な実施形態において、拡大ビームを用いて、MeVレベルにある荷電粒子の高エネルギービームを提供することが可能である。例えば、ワークピース70は、一以上のタイル形状の半導体材料とすることが可能であり、トレイデバイス75上にマウントし、荷電粒子の高エネルギービームに露出することができる。具体的な実施形態において、このようなワークピースは、荷電粒子の高エネルギービームの方向に対して、ほぼ垂直となるように配置してもよい。別の実施形態において、トレイデバイスは、トレイデバイス75が二次元的に移動でき、これにより荷電粒子の高エネルギービームをワークピースの表面全体にわたって走査することのできる、二軸ステージ80を備えてもよい。別の実施形態において、システム性能を向上するために、三次元におけるワークピースの移動を用いることも可能である。もちろん、他の変形、変更及び代替物がありうる。
【0026】
再び図1を参照すると、制御システム90が装置に接続される。制御システムは、コンピュータシステムでありうる。制御システムは、システム3及びシステム5の両者に対して、それぞれ、操作及びプロセス制御を提供する。システム3に対しては、例えば30mAまでの所望の電流を有する平行化した荷電粒子ビームを提供するよう、イオン源10を調節することが可能である。高周波電力システム20は、連続波(CW)モード又はパルス化されたモードで動作できる。制御システムは、複数のモジュール式RFQエレメントにより形成されるリニア加速器に送られる、所望の電力レベル及び周波数整合を含めて、RF電力を制御する。例えば、RFQエレメントは、CWモードにおいて、RF四重極エレメント、ドリフトチューブ、又は組み合わせを備えることができる。CWモードにおいて、RF四重極ユニット(又は番号1のRFQエレメント)における全RF電力損失は、小さくとも40kWである可能性があり、残りのRFQエレメント(すなわち、番号2からNまでのRFQエレメント)への全RF電力損失は、小さくとも26kWである。ビーム輸送ユニットは、最適なビーム取り込みを提供するために、三軸移動ステージ及びレンズ電圧の調節により、制御システムによって同様に制御される。出力ビームの所望のビーム径及びビームの均一性を目的として、ビームエキスパンダには制御システムが連結される。具体的な実施形態において、ビームエキスパンダは、磁場を用いて制御される。代替の実施形態において、制御システム90は、トレイデバイス内の温度計測及びワークピース制御等のプロセス制御を提供するために、ビーム印加システムに接続される。もちろん、他の変形、変更及び代替物がありうる。
【0027】
具体的な実施形態において、本発明の方法は、質量選別された高エネルギーの注入を取り扱い、これは適切なビーム強度を有している。費用効果的とするためには、注入ビーム電流は、数十ミリアンペアのオーダーの、H+又はH−イオンビーム電流とすべきである。このような十分に高いエネルギーを、システムが注入することができれば、線量率をより高くするために、H2+イオンも利用することができる。このようなイオン注入装置は、米国カリフォルニア州プレザントンのAccsys Technology Inc.社、米国ニューメキシコ州87109アルバカーキのLinac Systems,LLC社等から入手可能な、高周波四重極リニア加速器(RFQ Linac)、ドリフトチューブ・ライナック(DTL)、高周波(ラジオ波)集束櫛形(RFI)又は四重極集束櫛形(QFI)技術を用いることにより、最近、利用できるようになった。
【0028】
具体的な実施形態において、本発明の実施形態に係る装置は、注入プロセスを提供するために、MeVエネルギーレベルにある荷電粒子ビームを供給する。注入プロセスは、半導体基板の厚さの範囲内の選択された深さに、複数の不純物粒子を導入し、当該厚さの範囲内に劈開領域を画定する。用途によるが、好適な実施形態によれば、材料領域への損傷の可能性を低減するために、一般的には、より質量の小さい粒子が選択される。すなわち、より質量の小さい粒子は、その粒子が通過して横断する材料にほぼ損傷を与えることなく、基板材料内の選択された深さに容易に達する。例えば、より質量の小さい粒子(又はエネルギー性の粒子)、及び又は中性の原子又は分子、又は電子等は、ほとんど全てが帯電(例えば、正又は負に)できる。具体的な実施形態において、粒子は、水素及びその同位体のイオン、ヘリウム及びその同位体等の希ガスイオン、及びネオン等のイオン、又は実施形態によっては他のものを含む、荷電粒子であってよい。粒子は、例えば、水素ガス、水蒸気、メタン、及び水素化合物、及び他の軽い原子質量の粒子等の、化合物にも由来しうる。あるいは、粒子は、上記の粒子の任意の組み合わせ、及び又はイオン及び又は分子種及び又は原子種でありうる。粒子は、一般的には、表面を通過して表面下の選択された深さに貫入する充分な運動エネルギーを有する。
【0029】
ここで図2を参照すると、これは、本発明の一実施形態に係る、高エネルギー荷電粒子を生成する方法の簡略化したフロー図である。図示のように、本方法は、第一のエネルギーレベルにある複数の荷電粒子を生成するステップ(ステップ201)を含む。具体的な実施形態において、電子サイクロトロン共鳴(ECR)、誘導結合プラズマ、プラズマ系マグネトロンイオン源又はペニング源等のイオン源を用いて、第一のエネルギーレベルにある複数の荷電粒子を提供してもよい。第一のエネルギーレベルにある複数の荷電粒子は、低エネルギー輸送(LEBT)装置においてリニア加速器に導かれる(ステップ203)。リニア加速器は、第一のエネルギーレベルにある複数の荷電粒子を加速し、第二のエネルギーレベルにある複数の荷電粒子を作り出す(ステップ205)。第二のエネルギーレベルは、第一のエネルギーレベルより高い。第二のエネルギーレベルにある複数の荷電粒子は、第二のエネルギーレベルにある複数の荷電粒子のビーム径を拡大するためのビームエキスパンダに入れられる(ステップ207)。本方法は、この拡大ビームをワークピース上に照射する(ステップ209)。具体的な実施形態において、ワークピースは、トレイデバイスに設けられる半導体基板のタイルでありうる。複数の荷電粒子の拡大ビームが走査され(ステップ211)、例えば、光発電の応用のための基板を形成するための、注入プロセスを提供する。もちろん、当業者であれば、多くの変形、変更及び代替物を認識し、一以上のステップを加えてもよく、一以上のステップを除いてもよく、又は異なる順序でステップを設けてもよい。
【0030】
一例としては、シリコンウエハへの注入種として水素を用い、特定の条件セットによって注入プロセスが実施される。注入線量は、約1×1015から約1×1016原子/cm2の範囲であり、好適には、線量は約5×1016原子/cm2未満である。注入エネルギーは、光発電応用に有用な厚膜形成に対して、約1MeV以上から約5MeV以上の範囲である。注入温度は、約−50から約550℃の範囲であり、好適には、注入したウエハからの水素イオンの拡散を防ぐため、約400℃未満である。水素イオンは、約±0.03から±1.5マイクロメートルの精度で、選択された深さに、シリコンウエハ内に選択的に導入することが可能である。もちろん、使用するイオンの種類及びプロセス条件は、用途による。
【0031】
一例として、MeV範囲の注入条件がレウトフらによって開示されており(V.F.Reutov and Sh.Sh.Ibragimov、“Method for Fabricating Thin Silicon Wafers”、USSR’s Inventors Certificate No.1282757、1983年12月30日)、参照により本願明細書に援用するものとする。レウトフ及びイブラギモフの文献においては、注入期間中に適宜加熱を行い、7MeVまでの陽子注入を使用すること、及び注入後に再使用可能基板を加熱することが開示され、分離したシリコンウエハの厚さは350μmまでであった。1MeVの陽子注入を用いる、16μmのシリコン膜の熱的劈開が、同様に、M.K.Weldonら、“On the Mechanism of Hydrogen−Induced Exfoliation of Silicon”、J.Vac.Sci.Technol.、B15(4)、1997年7月/8月に開示されており、参照により本願明細書に援用するものとする。この文脈における「分離した」又は「転写したシリコンの厚さ」という用語は、注入したイオンの範囲によって形成されるシリコン膜厚を、自立状態に解放できるか、あるいは永続的な基板、又は最終的には自立基板として使用するための一時的な基板に解放できるか、あるいは永続的な基板上に設置することができることを意味する。好適な実施形態において、シリコン材料は、十分に厚く、支持部材として作用するハンドル基板からは自由な状態である。もちろん、膜の取り扱い及びプロセスのための具体的方法は、特定の方法及び用途に依存する。
【0032】
図3に、本発明の一実施形態に係る、連続法を用いて基板を形成するためのシステム300の簡略図を示す。この図は単に例示であり、本願明細書において過度に特許請求の範囲を制約してはならない。当業者であれば、他の変形、変更及び代替物を認識する。図3に示すように、本システムは、少なくとも一つの基板部材301を設けることを含む。基板部材のそれぞれは、その上に配置される複数のタイル303を備える。複数の部位のそれぞれは、注入するための再使用可能な基板部材303を備える。具体的な実施形態において、複数のタイルのそれぞれは、単結晶シリコンウエハ、ポリシリコン・キャストウエハ、タイル、又は基板等の半導体基板、シリコン・ゲルマニウム・ウエハ、ゲルマニウム・ウエハ、III/V族材料、II/VI族材料、窒化ガリウム等を含んでもよい。劈開を容易にする等の利点をもたらす特定の方向、好適なデバイス方向等に、任意の単結晶材料を切断することができる。例えば、シリコン太陽電池は、主に(100)、(110)、又は(111)の表面又は方向を有するように切断することができ、この種類の自立基板が得られる。もちろん、主要な結晶方向から意図的に誤って切断した配向面を有する出発材料も、同様に準備できる。本システムは、注入装置(図示せず)も備える。注入装置は、プロセスチャンバ305に収容される。具体的な実施形態において、注入装置は、走査注入プロセスを提供する。このような注入装置は、具体的な実施形態において、リニア加速器に生成する拡大した高エネルギーイオンビームを使用することができる。図4に示すように、注入装置は、複数のタイルに注入用の不純物を供給するため、イオン注入ヘッド402を備える。本システムは、可動トラック部404も備える。可動トラック部は、ある実施形態において、ローラー、エアベアリング、又は可動トラックを含むことができる。可動トラック部404は、走査注入プロセスのために、基板部材の空間移動を提供する。もちろん、他の変形、変更及び代替物がありうる。
【0033】
本発明に係るある実施形態は、注入のための走査モードを使用してもよい。このような実施形態の実施例を、図7から7Cの簡略図に示す。具体的には、図7は、本発明に係る注入を実施するための装置の一実施形態の構成要素を示す簡略ブロック図である。図7Aに、図7の装置のイオン源及び低エネルギービーム輸送部の、拡大した簡略図を示す。
【0034】
装置700は、低エネルギービーム輸送(LEBT)部704と真空連通する、イオン源702を含む。LEBT部704は、電気的及び磁気的なビーム抽出、成形及び集束を含んでよい。LEBT部704は、少なくとも以下の機能を実施する。
【0035】
図7Aを参照すると、LEBTは、イオン源チャンバ703内のアパーチャ703aから流れ出るイオンを取り込み、このイオンを比較的低いエネルギー(100keV以下、ここでは約30keV)に加速する。このイオンの加速により、後続するリニア加速器(ライナック)部720の、最初の高周波四重極(RFQ)ステージ722への接続に必要な、共鳴速度が得られる。あるいは、これは、磁気的にビームを抽出、成形、集束することができる複数のソレノイドを用いることにより、達成できる。
【0036】
イオン源の例としては、ECR、マイクロ波イオン源、マグネトロンイオン源及びペニング源が挙げられる。イオン化法の例としては、eビーム、レーザー、冷陰極及び熱陰極放出及び熱的な技術の使用が挙げられる。
【0037】
LEBT704は、また、通常はライナック部720の第一のRFPステージ722への受け入れを最適化するために、イオンビームを成形するよう機能する。この特定の実施形態において、ビーム成形エレメントは、アインツェルレンズ706である。しかしながら、代替実施形態において、ソレノイド(磁場レンズ作用)等の異なるデザインを用いるLEBTレンズを使用することができる。
【0038】
LEBT704は、電子サプレッサエレメント708を備える。このエレメント708は、LEBTの露出表面と相互作用する不規則なイオンによって生成した、二次電子を抑止するのに役立つ。
【0039】
ライナック部720への入口において、イオンビームは、連続するステージによって、ますます高いエネルギーに加速される。図7Bに、リニア加速器部720の簡略図を示す。
【0040】
第一のRFQステージ722において、イオンは約30keVのエネルギーから約1.1MeVのエネルギーに加速される。第二のライナックステージ724において、イオンは約2.1MeVまで加速される。第三及び最後のライナックステージ726において、イオンは約3.5MeV以上に加速される。
【0041】
LEBTによって第一の加速器722の入口に生じるイオンビームは、イオン源のパルス期間中は連続的である。しかしながら、RF加速器720の加速/集束機構の切り替えにより、この連続的なビームは、これらのライナック内で加速されるにつれて、一時的に一つのRF期間を引き離して間隔を空けた、パケット又はバンチ(bunch)に変換される。図7Bに、典型的なレベルRFアンプ、フィードバック制御、及びライナックへのRF接続を示す。一つ又は複数のRF入力は、RFQ及びRFIライナックの、一以上の組み合わせに接続する。動作中は、RFQ及びRFIキャビティからの反射電力がモニタされる。閉じたフィードバックループにおいて、全てのキャビティ内の共振を同時に維持することにより、反射電力を最小とするよう、RF周波数が調節される。
【0042】
RFQ及びRFIの組み合わせは、システムの効率を最大とするように選択できる。陽子エネルギーが約0.75MeVを上回るとRFQ技術の効率は低下するため、最終的なビームエネルギーを達成するために、RFIライナック(RFQライナックよりも高効率)を、後続のステージ内に用いてもよい。
【0043】
ライナック部720の出口アパーチャ720aを通過すると、イオンビームは、高エネルギービーム輸送(HEBT)部740に入る。HEBT部740の機能は、最後のライナックステージ726(例えば、楕円から円形の)から出る非常に高エネルギーのイオンビームを成形すること、非常に高エネルギーのイオンビームの経路を屈曲すること、及び、適切であれば目標上におけるビーム走査に達することである。ビーム成形及び集束は、四重極又は六重極等の磁場集束の様々な組み合わせを用いて行われ、この磁場は、好適な方向にビームを成形する様式に構成される。ビームは、一組の診断エレメントを通過し、質量分析用の二極磁石に入る。この点では、荷電粒子の運動量を分析するように、磁場が構成される。
【0044】
具体的には、高エネルギー化されたイオンは、最初に、分析磁石742に適宜露出され、高エネルギービームの当初の汚染物質がビームダンプ744に送られるようにビームの方向を変更し、例示的実施形態の各所に記載される清浄化機能を実施する。
【0045】
ある実施形態によれば、分析磁石742は、常に一致した力をビームに対して作用させ、その結果、清浄化したビームの方向が変化しないようにする。しかしながら、代替実施形態によれば、分析磁石は、経時的に変化するビームに対して力を作用する場合があり、ビームの方向は実際には変化する。詳細を後述するように、分析磁石によって達成されるビーム方向のこのような変化を、一つの軸に沿ってビームの所望の走査を達成するために役立ててもよい。
【0046】
この分析磁石エレメントの後には、さらなるビームの集束が生じてもよく、最終的に、DCオフセット及びAC可変ビームの両者を提供する様々な方法を用いて、ビームを走査することになる。領域範囲の全体、又はパターン化した範囲(すなわち、ライン又はスポットのみ)を線書きするためには、洗練された制御システムがありうる。
【0047】
具体的には、分析磁石を出ると、清浄化したイオンビームはビームスキャナ748に入る。図7Cに、本発明に係る、ビームスキャナ748の一実施形態の簡略ブロック図を示す。具体的には、ビームスキャナ748は、第一の平面内でビームの場所を変化させるために走査するよう構成される、第一のスキャナ双極子747を含む。ビームスキャナ748は、第一の平面に対して垂直な第二の平面内で、ビームの場所を変化させるために走査するよう構成される、第二のスキャナ双極子749も備える。
【0048】
HEBTの全体にわたり、ビームは、専用のドリフト部分を許容することによって、拡大することができる。ビームエキスパンダは、HEBTの最後のエレメントであってもよい。ビームエキスパンダは、装置(磁気八重極、等)でもよく、ビームが自分自身の上で拡大できる移動の長さでもよい。スキャナを用いることにより、スキャナ下流のビームの能動的な拡大/成形は、極めて困難になりうるので、追加の移動によるビーム拡大が好適な場合がある。要約すると、ビームは、ライナックからビームアナライザ、次いでビームスキャナに輸送され、最後にビーム拡大を受ける。
【0049】
図7DからGに、本発明の一実施形態に係る、ワークピース上におけるイオンの高エネルギービーム走査を、シミュレーションした結果を示す。具体的には、図7Dは、532のスポット露出のラスタパターンを示す。図7Eは、図7Dにおける532のスポット露出の電力密度を三次元プロットしたものである。図7Eは、図7Dにおける532のスポット露出の電力密度を二次元プロットしたものである。
【0050】
図7Gは、1mドリフト後の、5cmウエハ上における分布に対する電力密度の棒グラフである。総合すれば、これらの図は、3E16毎平方センチメートルの陽子密度を用い、直径5cmのワークピースを、5%以内の電力密度の均一度で照射することが可能であることを示している。
【0051】
図7Cに示すビームスキャナの特定の実施形態は、二つの二極磁石を備えるが、これは本発明に必須ではない。代替実施形態によれば、ビームスキャナは、単一の二極磁石のみを備えることができる。具体的には、ある実施形態によれば、ビームスキャナの単一の二極磁石によって走査が行われる平面に対し、垂直な面内における走査を提供するために、ビームスキャナの上流に位置する分析磁石を用いることができる。そのような一つの実施形態においては、分析磁石の磁場における時間変動は、法線から+/−4°まで方向が変化する励起ビームを生成する場合がある。分析磁石に存在する、清浄化したビームの方向におけるこのような「ふらつき」を、ビームスキャナの第二の二極磁石に替えて、走査に用いてもよい。あるいは、このようなふらつきのあるビームを、第二の二極磁石を有するビームスキャナと連動し、このふらつきの方向における走査の大きさが増加するように用いてもよい。このようなビームスキャナは、DCシフトによってビームを移動し、次いでふらつきが起きるように用いることも可能である。
【0052】
HEBTの全体にわたり、専用のドリフト部を割り当てることにより、ビームを拡大することが可能である。ビームエキスパンダは、HEBTの最後のエレメントである。ビームエキスパンダは、装置(磁気八重極等)でありうるか、又はビームに対して自然な拡大を許容する、移動の長さでありうる。ビームスキャナの使用により、ビーム拡大に対する下流でのアプローチは困難になるため、追加の移動によるビーム拡大が好適な場合がある。要約すると、ビームは、ライナックから、ビームアナライザへ、次いでビームスキャナへ輸送され、最終的にビーム拡大を受ける。
【0053】
図7に示す特定の実施形態は、ビーム経路の成形及び制御のためのエレメントを備えるが、これらは本発明に必須ではない。本発明に係る代替実施形態は、このようなエレメントがなく、加速器から出た後にビーム形状を拡大可能な、ドリフトチューブ構成を使用することができる。
【0054】
図7に、端部ステーション759を含む、装置の残りの構成要素を示す。この端部ステーション759において、エネルギー性のイオンビームによる走査プロセスにあるタイル760は、真空状態で走査ステージ762に支持される。タイル760は、ロボットチャンバ764及びロードロック766を介して、走査ステージに送られる。
【0055】
走査ステージ762は、粒子ビームを受け取るワークピース又はバルク材料の位置を平行移動するように機能してもよい。ある実施形態によれば、走査ステージは、単一の軸のみに沿って移動するよう構成してもよい。さらに他の実施形態によれば、走査ステージは、二つの軸に沿って移動するよう構成してもよい。図7の特定の実施形態に示すように、走査装置単独の動作によるビームの走査によって、又はビームフィルタにより行われる走査と組み合わせて、走査ステージにより目標材料を物理的に平行移動してもよい。走査ステージは、本発明に必須ではなく、ある実施形態においては、ワークピースを、照射への露出中に静止した様式で支持してもよい。
【0056】
図7から7Cの装置の様々な構成要素は、通常は、プロセッサ782及びコンピュータ可読記憶媒体784を含むホストコンピュータ780の管理下にある。具体的には、プロセッサは、イオン源、加速器、LEBT、HEBT及び端部ステーションを備える装置700の異なるエレメントと電子的に通信するよう構成される。コンピュータ可読記憶媒体には、これらの様々な構成要素のいずれかの操作を命令するためのコードが格納される。プロセッサから受信する命令によって制御してもよいプロセスの態様の例としては、端部ステーション及びHEBT等の様々な構成要素内の圧力、ビーム電流、ビーム形状、走査パターン(スキャナ及び/又は分析磁石を利用するビームを走査することによる、及び/又は基板位置でのXY駆動ステージを用いる平行移動を利用して目標を移動すること、すなわち塗装による)、ビームタイミング、端部ステーションへの/からのタイル供給、ビーム清浄化装置(すなわち分析磁石)の操作、及びイオン源に適用するガス及び/又は電力が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
上述のクーポンシステム(coupon system)の様々な構成要素は、様々な特徴を有するコンピュータシステムを用いて実装できる。図8に、ディスプレイ装置820、ディスプレイ画面830、筐体840、キーボード850及びマウス870を備える、一般的なコンピュータシステム810の例を示す。マウス870及びキーボード850は、代表的な「ユーザ入力デバイス」である。マウス870は、グラフィカルユーザインタフェースデバイス上のボタンを選択するための、ボタン880を備える。ユーザ入力デバイスの他の実施例は、タッチスクリーン、ライトペン、トラックボール、データグローブ、マイクロホン他である。図8は、本発明を実施するためのシステムの、単に一つの種類を表す。当業者であれば、多くのシステムの種類及び構成が、本発明と連動して用いるために適切であることは直ちに明らかである。好適な実施形態において、コンピュータシステム810はマイクロソフト社製WindowsNT(登録商標)オペレーティングシステムが動作する、ペンティアム(登録商標)クラス系のコンピュータを備える。しかしながら、本発明の範囲から離れることなく、本装置には当業者によって他のオペレーティングシステム及びアーキテクチャが容易に適用される。
【0058】
前述のように、マウス870は、ボタン880等の、一以上のボタンを有することができる。筐体840は、ディスクドライブ、プロセッサ、記憶装置等の、普通のコンピュータ構成要素を収容する。記憶装置は、ディスクドライブ、磁気テープ、半導体メモリ、バブルメモリ等を備えるが、これらに限定されない。筐体840は、コンピュータシステム810を外部装置、外部記憶、他のコンピュータ、又は詳細を後述する追加の周辺機器に接続するための入力/出力(I/O)インタフェースカード等を備えることができる。
【0059】
図8Aは、図8のコンピュータシステム810の、基本的なサブシステムの説明図である。この図は単に説明であり、本願における特許請求の範囲を制約してはならない。当業者であれば、他の変形、変更及び代替物を認識する。ある実施形態において、このサブシステムは、システムバス875を介して相互接続する。プリンタ874、キーボード878、固定ディスク879、ディスプレイ・アダプタ882に接続されるモニタ876、他の追加サブシステムを示す。周辺機器及び入力/出力(I/O)装置は、I/Oコントローラ871と接続し、シリアルポート877等、当業に公知の任意の数字の手段によって、コンピュータシステムに接続できる。例えば、シリアルポート877は、コンピュータシステムをモデム881に接続するために用いることができ、同様にインターネット等のワイドエリアネットワーク、マウス入力デバイス又はスキャナに接続する。システムバスを介する相互接続によって、中央プロセッサ873は、各サブシステムと通信し、システムメモリ872又は固定ディスク879からの命令の実行、並びにサブシステム間の情報交換を制御することができる。当業者によれば、サブシステムの他の構成及び相互接続は、直ちに達成可能である。システムメモリ、及び固定ディスクは、コンピュータプログラムの格納のための有形媒体の例であり、他のタイプの有形媒体としては、フロッピー(登録商標)ディスク、リムーバブルハードディスク、CD−ROM及びバーコード等の光学記憶媒体、及びフラッシュメモリ、読出し専用メモリ(ROM)及びバッテリ支援メモリ等の半導体メモリが挙げられる。
【0060】
本出願に記載のソフトウェア構成要素又は機能は、いずれも、例えばJava(登録商標)、例えば従来の又はオブジェクト指向技術を用いるC++(登録商標)又はPerl(登録商標)等の、任意の適切なコンピュータ言語を用いて、プロセッサによって実行されるソフトウェアコードとして実装してもよい。ソフトウェアコードは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、ハードドライブ又はフロッピー(登録商標)ディスク等の磁気媒体、又はCD−ROM等の光学媒体等の、コンピュータ可読媒体上の一連の命令又はコマンドとして格納されてもよい。このようなコンピュータ可読媒体は、いずれも、単一のコンピュータ装置上にあってもよく、内蔵されてもよく、システム又はネットワーク内の異なるコンピュータ装置上にあってもよく、内蔵されてもよい。
【0061】
事実上、注入された粒子は、選択された深さにおいて、基板上面に平行な面に沿って、応力を加えるか、又は破壊エネルギーを低減する。このエネルギーは、部分的には、注入種及び状態に依存する。これらの粒子は、選択された深さにおいて、基板の破壊エネルギーレベルを低下させる。これにより、選択された深さにおいて、注入面に沿った劈開を制御することができる。
【0062】
特定の実施形態によれば、注入は、全ての内部位置における基板のエネルギー状態が、不可逆的な破壊(すなわち、分離又は劈開)を開始するのに不十分であるような条件下において、起こりうる。あるいは、パターン化した注入を用い、基板のある領域のみに粒子を供給するか、又はある領域に導入する線量を低くすることが可能である。
【0063】
このようなある実施形態によれば、劈開が開始される領域のみが最大又は高線量を受けるように、パターン化した注入を用いることができる。劈開が進行するだけの他の領域は、受ける線量を低下させるか又は全く無線量としてもよい。このような線量の変動は、特定の領域におけるビームの滞留時間を制御することにより、特定の領域をビームに露出する回数を制御することにより、又はこれらの二つのアプローチの何らかの組み合わせにより、達成することができる。一実施形態において、20mAのH+イオンのビームは、最小滞留時間200μ秒、走査速度2.5km/秒(直径5cmのビーム径を用い、トレイ幅1m以内において、対応する走査周波数は1.25kHz)の結果として、1.25×1017H原子/(cm2秒)のフラックスを供給し、パス当たり最小線量を2.5×1013H原子/cm2とすることができる。もちろん、滞留時間が長ければ、受ける線量は増加する。
【0064】
ある実施形態によれば、高線量領域における劈開の作用は、物理的打撃(ブレード)、超音波、又は異種材料間の熱膨張/収縮係数の差による応力を含む、他の力によって開始できるが、限定されない。一実施形態によれば、基板を金属層に接着してもよく、これは基板/金属の組み合わせが冷却するにつれて、高い注入線量を受ける領域において、劈開を開始するために十分な応力を誘起し、かつ/又は予め存在する注入開始領域を拡大する。
【0065】
しかしながら、注入により、例えば、熱アニール又は急速な熱アニール等の、後続の熱処理によって少なくとも部分的には修復可能な、ある量の欠陥(例えば、微小欠陥)が、一般的には、大抵基板内に実際に生じることに留意しなければならない。適宜、具体的な実施形態において、本方法は、注入プロセス後の熱処理プロセスを含む。具体的な実施形態において、本発明の方法は、シリコン材料に対して、約450℃から約600℃の範囲の熱プロセスを用いる。好適な実施形態において、導通、対流、放射、又はこれらの技術の任意の組み合わせを用いて、熱処理が生じうる。高エネルギーの粒子ビームは、所望の注入温度に到達するための、部分的な、及び外部の熱源との組み合わせによる、熱エネルギーを供給することもできる。ある実施形態において、高エネルギーの粒子ビームは、単独で、注入に求められる熱エネルギーの全体を提供することができる。好適な実施形態において、この処理プロセスにより、後続の劈開プロセスに対する、劈開領域の予備処理が生じる。もちろん、他の変形、変更及び代替物がありうる。
【0066】
具体的な実施形態において、本方法は、劈開プロセスを用いて、自立する分離可能な材料層を分離するステップを含み、この分離可能な材料は、図5に示すような上部支持部材又は同様品から分離される。図示のように、分離可能な材料501は、残りの基板部505から取り外される。具体的な実施形態において、この分離するステップは、劈開プロセスの制御を用いて実施することができる。劈開プロセスの制御により、ドナー基板の部分的な劈開領域内に、選択されたエネルギーが供給される。単に一例として、劈開プロセスの制御は、米国特許第6013563号、発明の名称「劈開プロセス制御」、米国カリフォルニア州サンノゼのシリコン・ジェネシス社出願に記載され、本願明細書の参照により全ての目的に対して援用する。図示のように、本方法は、材料層を基板から分離し、完全に材料層を取り外す。もちろん、他の変形、変更及び代替物がありうる。
【0067】
一実施形態において、本方法は、劈開作用の開始を容易にするために、一以上のパターン領域を用いる。具体的な実施形態において、本発明の方法は、表面領域及び厚さを有する半導体基板を提供する。本方法は、劈開領域内に複数のゲッターサイトのパターン領域を形成するために、半導体基板の表面領域を、リニア加速器によって生成する第一の複数の高エネルギー粒子にさらすことを含む。好適な実施形態において、劈開領域は、表面領域の下方に、分離される材料の画定した厚さまで設けられる。半導体基板は、第一の温度に維持される。本方法は、半導体基板を、熱処理等の処理プロセスにさらすことを含む。本方法は、半導体基板の表面を、劈開領域の応力レベルを第一の応力レベルから第二の応力レベルに増すために設けられる、第二の複数の高エネルギー粒子にさらすことを含む。本方法は、劈開プロセスを用いて、分離可能な材料層の一部を分離するために、パターン領域の選択領域において、劈開作用を開始することと、劈開プロセスを用いて分離可能な材料層を分離することを含む。
【0068】
パターン化した注入シーケンスは、表面を線量の変動にさらし、開始領域は、通常は、高線量及び/又はサーマルバジェットシーケンス(thermal budget sequence)を用いて展開される。劈開動作を完了するための劈開の進行は、数多くのやり方で起こすことができる。一つのアプローチとして、劈開が進行する前線ガイドとして、線量を追加した領域が用いられる。劈開の進行に対する別のアプローチとして、応力制御を用いる深さのガイドが挙げられる。さらに別の劈開進行のアプローチとして、自然な結晶劈開面が挙げられる。
【0069】
いくつかの又は大抵の領域は、使われた特定の劈開技術によっては、より少ない線量で注入が行われる場合もあり、全く注入が行われない場合もある。このような低線量領域は、基板からそれぞれの膜を分離するために必要な全線量を低減することによって、注入システムの全体的な生産性を向上させるのに役立てることができる。
【0070】
図6に、本発明の別の実施形態に係る、分離可能な材料610の層を分離する方法600を例示する。図示のように、劈開面602は、表面領域606を有する基板604に設けられる。この基板は、シリコンウエハ等でありうる。劈開面は、具体的な実施形態において、本願明細書に別途記載の、注入水素種を用いて設けることができる。他の注入種を用いてもよい。これらの他の注入種は、ヘリウム種、又は組み合わせを含むことができる。具体的な実施形態において、基板は、予め定められた温度範囲に維持される。図示のように、チャック部材608が設けられる。チャック部材は、真空、加熱ガス、及び極低温/低温ガスを供給する手段を備える。分離可能な材料を外すために、チャック部材は表面領域に接続され、基板の温度を他の範囲に上昇するための加熱ガスを放出する。基板は、基板から厚膜材料を分離するために、極低温/低温ガスを用いて冷やされる。次いで、表面領域612を真空とすることによって、分離した厚膜材料を取り外すことができる。もちろん、他の変形、変更及び代替物がありうる。
【0071】
具体的な実施形態において、本発明の方法は、他のプロセスを実行することができる。例えば、本方法は、分離した材料の厚膜を支持部材に乗せることができ、これが後にロセスを受ける。加えて又は適宜、本方法は、第一の複数の高エネルギー粒子に表面領域をさらす前に、半導体基板上において一以上のプロセスを実施してもよい。実施形態にもよるが、本方法は、光発電セル、集積回路、光学装置、これらの任意の組み合わせ等の形成のためになりうる。もちろん、他の変形、変更及び代替物がありうる。
【0072】
本願明細書に記載される実施例及び実施形態は例示のみの目的であり、それらの考慮における様々な変更又は変化は、当業者には示唆されること、及び本出願及び添付の特許請求の範囲の精神及び趣旨の範囲内に含まれることも理解されたい。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、全ての目的で全体を参照により本願明細書に援用する、2006年11月8日に出願された米国仮特許出願第60/864966号の優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明に係る実施形態は、概して、半導体材料プロセスのために荷電粒子を導入する装置及び方法を含む技術に関する。より具体的には、本装置及び方法は、光発電セルを含むデバイス応用のための、自立できる一以上の分離可能な半導体膜を製造するために、MeVのエネルギーレベルを有する粒子ビームを得る、高周波四重極リニア加速器等の、リニア加速器(Linac、ライナック)を用いるシステムを提供する。しかし、本発明はより広い範囲の適用性があることが認識されるだろう。集積半導体デバイスの三次元パッケージ、光又は光電子デバイス、圧電デバイス、フラットパネルディスプレイ、微小電気機械システム(“MEMS”)、ナノテクノロジー構造、センサ、アクチュエータ、集積回路、生物学及び生物医学デバイス等、他の種類の応用にも適用することが可能である。
【背景技術】
【0003】
太古から、人間は、ほとんど全ての有用なエネルギーの形態を得るために「太陽」に依存してきた。こうしたエネルギーは、石油、放射、木、及び、様々な形態の熱エネルギーからもたらされる。一例に過ぎないが、人間は需要の大半を石炭及びガス等の石油資源に大幅に頼ってきた。残念なことに、このような石油資源は枯渇してきており、他の問題を引き起こしている。代替として、部分的に、石油資源への依存を減らするために、太陽エネルギーが提案された。一例に過ぎないが、太陽エネルギーは、一般的にシリコンで作られる「太陽電池」から得ることができる。
【0004】
シリコン太陽電池は、太陽からの太陽放射にさらされると電力を発生する。日射は、シリコン原子と相互作用し、シリコン本体内のpドープ及びnドープ領域に移動して電位差及びドープ領域間の電流を生じる、電子及びホールを形成する。用途によるが、太陽電池は、効率を改善するために集光素子を集積している。一例としては、日射を活性光発電材料の一以上の部分に導く集光素子を用いて、太陽放射を集め、焦点を合わせる。効率的ではあるが、このような太陽電池にはまだ多くの制約がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一例に過ぎないが、太陽電池はシリコン等の出発材料に依存する。このようなシリコンは、大抵、ポリシリコン及び/又は単結晶シリコン材料のいずれかを用いて作られる。これらの材料は、大抵、製造するのが困難である。ポリシリコンセルは、大抵、ポリシリコンプレートの製造により形成される。これらのプレートは効率的に形成される場合もあるが、高効率な太陽電池のための最適特性を有していない。単結晶シリコンは、高品位の太陽電池に適した特性を有する。しかしながら、このような単結晶シリコンは高価であり、効率的かつ費用効果的な様式で太陽電池用途に用いることは困難である。概して、薄膜太陽電池は低価格であるが、単結晶シリコン基板から製作される高価なバルクシリコン電池よりも効率は低い。成功してはいるが、太陽電池又は他の材料膜を形成するために従来の技術を用いるならば、まだ多くの制約がある。
【0006】
上述から、半導体材料を製造するための、費用効果的かつ効率的な技術が求められていることが分かる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、概して、半導体材料プロセスのために荷電粒子を導入する装置及び方法を含む技術に関する。より具体的には、本願の装置及び方法は、光発電セルを含むデバイス応用のための、自立できる一以上の分離可能な半導体膜を製造するために、MeVのエネルギーレベルを有する粒子ビームを得る、高周波四重極リニア加速器等の、リニア加速器(RFQ Linac)を用いるシステムを提供する。しかし、本発明はさらに広い応用範囲を有することが認識され、集積半導体デバイスの三次元パッケージ、光又は光電子デバイス、圧電デバイス、フラットパネルディスプレイ、微小電気機械システム(“MEMS”)、ナノテクノロジー構造、センサ、アクチュエータ、集積回路、生物学及び生物医学デバイス等の、他の種類の応用にも適用することが可能である。
【0008】
具体的な実施形態において、本発明は、デバイス応用のための、自立できる一以上の分離可能な半導体膜を製造するために、荷電粒子を導入するための装置を提供する。本装置は、複数の荷電粒子を生成するイオン源を備える。このイオン源は、具体的な実施形態における電子サイクロトロン共鳴(ECR)又はマイクロ波イオン源でありうる。複数の荷電粒子は、第一のエネルギーレベルにあるビームとして平行化される。加えて、この装置は、1からNまでの番号が付けられた複数のモジュール式高周波四重極(RFQ)エレメントを備え、Nは1より大きい整数である。複数のモジュール式RFQエレメントのそれぞれは連続して接続され、RFQリニア加速器を形成する。番号1のRFQエレメントは、低エネルギービーム抽出及び集束エレメントを介して、イオン源に接続される。本装置は、複数のモジュール式RFQライナック(Linac)エレメントのそれぞれを通じて、第一のエネルギーにある荷電粒子ビームを、第二のエネルギーを有する荷電粒子ビームへと、制御し、加速する。本装置は、RFQリニア加速器の番号NのRFQエレメントに接続される、出口アパーチャを、さらに含む。好適な実施形態において、本装置は、拡大され成形された荷電粒子のビームを提供するために、出口アパーチャに接続される、ビームエキスパンダ、ポテンシャルビーム成形光学系、質量分析器及び/又はビームスキャナを備える。具体的な実施形態において、表面領域を含むワークピースが供給される。ワークピースには、ワークピースの厚さの範囲内のある深さに、複数の不純物粒子を供給するための第二のエネルギーにある荷電粒子の拡大ビームを用いて、注入を行うことが可能である。複数の不純物粒子は、具体的な実施形態における表面領域から、約20マイクロメートルを超え、おそらく約50マイクロメートルを超える深さに、劈開領域を形成する。
【0009】
代替の具体的な実施形態において、本発明は、デバイス応用のための、自立できる一以上の分離可能な半導体材料を製造するために、荷電粒子の導入装置を提供する。本装置は、第一の複数の平行化した荷電粒子を生成するイオン源を備える。第一の複数の平行化した荷電粒子は、第一のエネルギーレベルで提供される。本装置は、第一のエネルギーレベルを有する荷電粒子を、第二のエネルギーレベルを有するビームに、集束して加速するために、高周波四重極(RFQ)ライナックサブシステムを、さらに含む。加えて、本装置は、互いに連続して接続される、番号1からNの、複数のモジュール式高周波四重極/ドリフトチューブ(RQD)を備える。Nは1より大きな整数である。具体的な実施形態において、番号1のエレメントは、RFQライナックサブシステムに接続される。複数のモジュール式RQDエレメントのそれぞれは、円柱状の中空構造の長軸に沿った、2つの部分からなるドリフトチューブを含み、この2つの部分からなるドリフトチューブは、大きい方も小さい方も、放射状のステムにより支持され、高周波四重極との間に双方向に、2つの部分からなるドリフトチューブの対向端部に向いた、2つのロッドを有する。隣接するRQDエレメントの、2つの部分からなるドリフトチューブ間の空間的なギャップは、複数のモジュール式RQDエレメントのそれぞれを通じて、第二のエネルギーレベルを有するビームを、第三のエネルギーレベルを有するビームに加速するために、適切に広げられる。本装置は、番号NのRQDエレメントに接続される出口アパーチャをさらに含む。好適な実施形態において、本装置は、出口アパーチャに接続されるビームエキスパンダ、シェーパー、及び質量分析光学エレメントを備える。ビームエキスパンダは、第三のエネルギーレベルにあるビームを、複数の荷電粒子を注入することが可能な拡大ビームサイズへと処理するよう構成される。本発明に係る装置は、ビームエキスパンダに動作可能に接続されるプロセスチャンバを備える。プロセスチャンバ内には、表面領域を含むワークピースが供給される。ワークピースは、具体的な実施形態において、第三のエネルギーレベルにある複数の粒子を用いて注入を行うことが可能な、表面領域を備える好適には、複数の不純物粒子は、ワークピースの表面領域から、約20マイクロメートルを超え、おそらく約50マイクロメートルを超える深さに、劈開領域を形成する。
【0010】
さらなる代替の具体的な実施形態において、本発明は、デバイス応用のための、自立できる一以上の分離可能な半導体膜を製造するために、荷電粒子を導入する方法を提供する。本方法は、イオン源を用いて、第一のエネルギーレベルにあるビーム電流により、荷電粒子のビームを生成することを含む。加えて、本方法は、イオン源に接続される高周波四重極(RFQ)リニア加速器を通じて、第一のエネルギーレベルにあるビームを、第二のエネルギーレベルにあるビームに移送することを含む。RFQリニア加速器は、番号1からNの複数のモジュール式RFQエレメントを含み、Nは1を超える整数である。本方法は、荷電粒子を注入することが可能なビームサイズを拡大するために、RFQリニア加速器に接続されるビームエキスパンダを用いて、第二のエネルギーレベルにあるビームを処理することを、さらに含む。さらに、本方法は、第二のエネルギーレベルにあるビームを、表面領域を通過してワークピース内に放射することを含む。このワークピースは、特定のビームサイズを有して第二のエネルギーレベルにあるビームが、表面領域を横切って走査することができ、ワークピースの表面領域から、約20マイクロメートルを超え、おそらくは約50マイクロメートルを超える深さに、平均注入線量を有する劈開領域を作り出せるように、ビームエキスパンダに接続されるプロセスチャンバ内にマウントされる。
【0011】
本発明のさらなる他の実施形態において、荷電粒子ビームは、費用効果的なリニア加速器システムを用いて、約1MeVから5MeVまで加速される。このようなリニア加速器システムは、荷電粒子ビームを供給するために、高周波四重極又はドリフトチューブ、又はこれらの組み合わせを備えてもよい。荷電粒子ビームは、さらに拡大してもよく、すなわちリニア加速器システムの出口アパーチャに接続されるビームエキスパンダを用いて、そのビーム径を増すことができる。拡大ビームは、ワークピースに注入するための、制御された線量率を有する荷電粒子の高エネルギービームである。ワークピースは、ビームエキスパンダに動作可能に接続されるプロセスチャンバ内のトレイデバイスに取り付けられる、一以上のタイル形状の半導体材料でありうる。高エネルギー荷電粒子の拡大ビームを用いて、ワークピースの厚さの範囲内の深さに、ワークピースへの注入を行うことができる。複数の不純物粒子は、具体的な実施形態における分離可能な材料の厚さを画定する表面領域から、ある深さに劈開領域を形成する。分離可能な材料の厚さは、具体的な実施形態において、約20マイクロメートルを超え、おそらくは約50マイクロメートルを超える厚さでありうる。もちろん、他の変形、変更及び代替物がありうる。
【0012】
本発明の実施形態を用いて、既存の技術以上に数多くの利益がもたらされる。特に、本発明の実施形態は、厚膜転写技術に対して、高エネルギー注入プロセスのための粒子ビームを提供するために、費用効果的なリニア加速器システム及びビームエキスパンダを使用することを含む、装置及び方法を使用する。このようなリニア加速器システムは、ドリフトチューブ法、一般的にRFQと呼ばれる高周波四重極、高周波櫛形(Radio Frequency Interdigited、一般にRFIとして知られる)、又は他のリニア加速方法、及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。具体的な実施形態において、本装置は、注入を受ける材料に過剰の損傷を与える最大フラックスよりも十分に低いが、効率的なプロセスを用いて、平方メートルサイズ等のワークピース上に均一に印加するためには十分に高い、所望のパワーのフラックスを有するビームを供給する、ビームエキスパンダを備える。好適な実施形態において、リニア加速器システムは、ドナー基板内の劈開面により画定する、転写可能な材料層を形成する注入プロセスを提供する。転写可能な材料層は、光発電デバイス、3D MEMS又は集積回路、ICパッケージング、半導体デバイス、これらの任意の組み合わせ等の、高品質の半導体材料を提供するために、さらに処理してもよい。好適な実施形態において、本発明の方法は、とりわけ非常に効率的な光発電セルのための、単結晶シリコン厚膜を提供する。本発明に係る好適な代替実施形態は、さらにヘテロ構造エピタキシャルプロセスの積層を提供することのできる、シード層を提供することができる。ヘテロ構造エピタキシャルプロセスは、とりわけ、薄い多接合光発電セルの形成に用いることができる。一例に過ぎないが、GaAs及びGaInP層を、ゲルマニウムシード層の上に、ヘテロエピタキシャル的に蒸着してもよく、本発明の一実施形態によれば、これは注入プロセスを用いて形成される転写層である。実施形態にもよるが、これらの一以上の利点を達成することもできる。
【0013】
本発明は、周知のプロセス技術の文脈において、これら及び他の利益を得ている。しかしながら、本発明の性質及び利益のさらなる理解は、以下の明細書及び添付図面部分を参照することにより、理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る、半導体材料の分離可能な自立膜を製作するために、荷電粒子ビームを導入する装置を示す、簡略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る、複数の高エネルギー荷電粒子を生成する方法を示す、簡略化したフロー図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る、基板から分離可能な厚膜を形成するステップの上面図を示す、簡略図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る、半導体材料への荷電粒子の注入方法を示す、簡略図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る、半導体基板から劈開プロセスにより形成される自立膜を示す、簡略図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る、半導体基板から分離可能な厚膜を形成する方法を示す、簡略図である。
【図7】図7は、本発明に係る、注入を実施するための装置の実施形態の構成要素を示す、簡略化したブロック図である。
【図7A】図7Aは、イオン源及び図7の装置の低エネルギービーム輸送部の拡大ブロック図である。
【図7B】図7Bは、図7の装置のリニア加速器の拡大ブロック図である。
【図7C】図7Cは、図7の装置のビーム走査デバイスの拡大ブロック図である。
【図7D】図7Dは、本発明の一実施形態に係る、ワークピース表面上への高エネルギーイオンビームの走査をシミュレートした様々なプロットである。
【図7E】図7Eは、本発明の一実施形態に係る、ワークピース表面上への高エネルギーイオンビームの走査をシミュレートした様々なプロットである。
【図7F】図7Fは、本発明の一実施形態に係る、ワークピース表面上への高エネルギーイオンビームの走査をシミュレートした様々なプロットである。
【図7G】図7Gは、本発明の一実施形態に係る、ワークピース表面上への高エネルギーイオンビームの走査をシミュレートした様々なプロットである。
【図8】本発明の実施形態に関連して用いられる、コンピュータシステムのブロック図である。
【図8A】図8Aは、図8のコンピュータシステムの、基本的なサブシステムの例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、概して、半導体材料プロセスのために荷電粒子を導入する装置及び方法を含む技術に関する。より具体的には、本発明の装置及び方法は、光発電セルを含むデバイス応用のための、一以上の分離可能な半導体膜を製造するために、MeVエネルギーレベルを有する粒子ビームを得るための、例えば、高周波四重極リニア加速器等の、リニア加速器を用いるシステムを提供する。しかし、本発明はより広い応用範囲を有すると認識され、集積半導体デバイスの三次元パッケージ、光又は光電子デバイス、圧電デバイス、フラットパネルディスプレイ、微小電気機械システム(“MEMS”)、ナノテクノロジー構造、センサ、アクチュエータ、集積回路、生物学及び生物医学デバイス等の、他の種類の応用にも適用することが可能である。
【0016】
以下の開示の目的に対し、「自立膜」又は「自立層」という用語は、取っ手又は転写基板等の支持部材との恒常的な接触のない、自身の構造の全体を維持することのできる(すなわち、崩壊も分解もしない)材料の膜として定義する。通常は、例えば、約5〜10μmよりも薄いシリコン薄膜等の極薄のフィルムは、破壊なしに取り扱うことはできない。従来は、そのような薄膜は支持構造を用いて取り扱われ、これは最初の場所に薄膜を作るためにも必要な場合がある。より厚い膜(すなわち、20〜50μmの間の厚さを有するシリコン膜)の取り扱いは、支持体の使用により容易になる場合があるが、このような支持体は必須ではない。従って、本発明の実施形態は、20μmを超える厚さを有する、シリコンの自立膜を作ることに関する。
【0017】
本発明の実施形態は、自立膜の形成に限定されない。代替実施形態は、基板により支持される膜の形成を含んでもよい。さらに、太陽光発電の応用に用いる膜が、光発電セルのプロセス中に真に自立しているか、取り扱い又は転写基板に支持されるかに関わらず、プロセスを受けるセルは、光電力モジュール全体の一部としての最終的な応用のために、通常は、ガラス又はプラスチック等の機械的表面にマウントされる。
【0018】
同様に、以下の開示に対し、「バルク材料」という用語はバルク形態で存在する材料を指す。このようなバルク材料の例としては、ほぼ円環状のインゴット又は単結晶シリコン若しくは成長した他の類似材料のブール、又は切削側面を有してほぼ円環状の断面形状以外を示す、成長したシリコンインゴット又は他の類似の材料が挙げられる。バルク材料の他の実施例としては、正方形、長方形、又は台形の形状を示す、多結晶のシリコンプレート又はタイルが挙げられる。バルク材料のさらに他の実施例については後述する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る、デバイス応用のための、半導体材料の分離可能な自立膜を製作するために、荷電粒子ビームを導入する装置を示す、簡略図である。この図は一例に過ぎず、本願明細書に列挙する特許請求の範囲を過度に制約してはならない。当業者であれば、多くの変形、変更及び代替物を認識する。図示のように、装置1は、デバイス応用のための、自立できる分離可能な半導体材料の膜を製作するために、荷電粒子ビームを導入している。より具体的には、装置1は、荷電粒子ビーム生成システムとしてのシステム3、及びビーム印加システムとしてのシステム5の、2つのシステムを備える。システム3は、次の構成要素を備える。すなわち、イオン源10、第一のエネルギーレベルにある当初の粒子ビーム12を取り込み、導くための低エネルギービーム輸送ユニット15、複数のモジュール式高周波四重極又は他のライナックエレメント40、高周波電力システム20、真空システム30、高エネルギービーム輸送(HEBT)ユニット53及びビーム成形、質量分析、及びビームスキャナ及びエキスパンダ55である。使用に適切な粒子を選択するために、質量分析及びビームスキャナを用いることができる。加えて、装置55のフィルタ基板には適切な厚さがあり、不必要な汚染粒子をさらに最小限にするために用いてもよい。システム5は、ビームエキスパンダ55に接続されるプロセスチャンバであり、拡大ビーム径を有し、第二のエネルギーレベルにある荷電粒子ビーム58が印加される。システム5は、ワークピース70、トレイデバイス75、二軸の移動ステージを、さらに含む。加えて、システム3及びシステム5の両者は、操作及びプロセス制御を提供するコンピュータシステム90と連結される。
【0020】
具体的な実施形態において、装置1は、複数の荷電粒子を生成するためのイオン源10を備える。このイオン源は、実施形態によって、電子サイクロトロン共鳴(ECR)、マイクロ波により生成するプラズマ、誘導結合プラズ、プラズマ系マグネトロンイオン源、又はペニング源、他により生成することができる。当業者であれば、多くの他の変形、変更及び代替物を認識する。好適な実施形態において、複数の荷電粒子は、第一のエネルギーレベルで供給される、第一のビーム12として平行化される。
【0021】
再び図1を参照すると、第一のエネルギーレベルにある第一のビーム12は、低エネルギービーム輸送(LEBT)ユニット15によって、リニア加速器サブシステムに導かれる。リニア加速器サブシステムは、互いに連続して接続される、番号1からNの複数のモジュール式高周波四重極(RFQ)エレメント40を備える。例えば、LEBT装置は、第一のビーム12をRFQアパーチャに導くために用いることができ、三軸ステージにマウントされた電極を収容する、単一の連結したアインツェル(Einzel)レンズに基づく。第一のビーム12をRFQエレメント40に導くため、横方向の動きが用いられる。レンズ電圧及び縦軸の動きを用いて、複数のRFQエレメント40の範囲内において、第一のエネルギーレベルにある第一のビーム12を最適化することができる。他の実施形態において、複数ソレノイド等による磁気拘束も、ライナック(高周波)エレメントへのビーム成形及び荷電粒子の抽出を行うために用いることができる。
【0022】
具体的な実施形態において、複数のモジュール式RFQエレメント40を用い、第一のエネルギーレベルにある第一のビームを圧縮し(bunch)、集束し、加速して、第二のエネルギーレベルにある第二のビームとすることができる。特に、複数のモジュール式RFQエレメント40のそれぞれは、200MHzの共振周波数で動作する、高周波の円筒状構造における高周波共振キャビティとなるよう構成される。高周波の円筒状構造は、高エネルギーの荷電粒子を制限するか又は横方向に集束することが可能な、四重極電極を備えることができる。一実施例において、この四重極電極は、キャビティ内の電場分布を制御するよう構成される。これらは、一定の構成の羽根又は支柱の形式とすることが考えられる。四重極電極は、ビーム内の荷電粒子の分布を、加速方向にあるときには粒子が電場にさらされ、減速方向にあるときには遮へいされるように、制御するよう構成することができる。内部の高周波電場の正味の効果は、第一のビーム12に対して加速効果である。代替実施形態において、RFQエレメント40、又は具体的には番号2のRFQエレメントは、ドリフトチューブ法により他の高周波四重極、並びに他のライナック構成(RFI、QFI等)と接続してもよい。複数のモジュール式RFQエレメントを通じて、第一のビームを、第二のエネルギーレベルにあるビームに加速することができる。具体的な実施形態において、第二のエネルギーレベルは、番号NのRFQエレメントの出口アパーチャにおいて、1MeVから5MeVの範囲でありうる。
【0023】
図1に戻って参照すると、複数のRFQエレメント40は、少なくとも50kWの連続波(CW)出力及び/又は約30%デューティにおいて150kWのパルス出力を供給することが可能な高周波電力システム20により、電力供給される。例えば、高周波電力システム20は、1000MHzまでの動作を定格として、少なくとも2.5kWの陽極定格出力を有する場合がある。このような高周波出力の変換を提供するためには、三極管、四極管、クライストロード(Klystrode)、誘導出力管(IOT)又は同軸IOT(C−IOT)等の、他の実施形態もある。高周波電力システム及びそれぞれの複数のモジュール式RFQエレメントは、システムを過熱から防ぐために、冷却システム(図示せず)に接続される。例えば、冷却システムは、水又は他の冷却流体を用いる、複数の並列した冷却回路を備えてもよい。別の実施形態において、低エネルギービーム輸送ユニット及びそれぞれの複数のモジュール式RFQエレメントは、高真空環境30に設けられる。例えば、少なくとも一以上の、毎秒400リットルのターボ分子真空ポンプを用いて、6.7×10−5Pa(5×l0−7Torr)程度よりも低圧の真空を提供してもよい。もちろん、他の変形、変更及び代替物がありうる。
【0024】
図1に示すように、粒子生成システム3は、番号NのRFQエレメントの出口アパーチャに、ビームエキスパンダ55にビームを取り込み、導くための、高エネルギービーム輸送(HEBT)ユニット53を、さらに含む。例えば、ビームエキスパンダは、荷電粒子ビームを、より大きい直径を有するものに均一に再配分する、四重極、六重極、八重極及び/又はより多くの多重極構成にある複数の磁石によって操作される磁場を用いることができる。このビーム拡大は、ビームの距離上のドリフトによっても同様に発生する可能性があり、ビームは所望のビーム径及びビーム流束の空間分布に自然に拡大する。ビームエキスパンダを用いると、第二のエネルギーレベルにある荷電粒子ビーム58は、基板上において500mmまでのビーム径を有することができる。拡大ビーム径は、高エネルギー粒子の電力束を減少させ、基板の過熱を防止できる。拡大ビームは、基板表面の損傷も防止する。加えて、少なくともビーム径の調節及びビーム電流の制御により、基板へのイオンの線量率を最適化することができる。例えば、拡大された荷電イオンビームの全電流は20mAまででありうる。電力束は十分に低く、拡大ビームを低速走査しても(あるいは走査しない場合でも)表面の過熱が起きないようにすることができるため、500mmのビーム径に対する電力束は、50W/cm2以下に制御可能である。例えば、5cm等の小ビーム径(各タイル内にパターン化した注入線量特性を生成するために有用)を用いると、電力束は5〜10kw/cm2の大きさとなり、過熱を防ぐためには、磁気的又は静電的な高速走査が必要となりうる。別の実施形態において、ビームエキスパンダの出力ポートは、荷電粒子の拡大ビームを、例えば半導体基板に注入するために用いることのできる、ビーム印加システムに、直接的に接続される。注入された半導体基板は、光発電セル等の応用に用いられる、一以上の自立厚膜を形成するために、さらに処理することができる。さらに、HEBTは、基板内にのみ必要な化学種を提供するために、磁気的又は電気的な質量分析のための要素を収容することができる。これは、同様に、いくつかのビーム成形、並びにビームの方向を変えることを可能にし、システム全体のパッケージ化の改良になる。
【0025】
一実施形態において、システム5は、ビームエキスパンダに接続して動作可能であり、荷電粒子の高エネルギービームを受け取ることのできるプロセスチャンバでありうる具体的な実施形態において、拡大ビームを用いて、MeVレベルにある荷電粒子の高エネルギービームを提供することが可能である。例えば、ワークピース70は、一以上のタイル形状の半導体材料とすることが可能であり、トレイデバイス75上にマウントし、荷電粒子の高エネルギービームに露出することができる。具体的な実施形態において、このようなワークピースは、荷電粒子の高エネルギービームの方向に対して、ほぼ垂直となるように配置してもよい。別の実施形態において、トレイデバイスは、トレイデバイス75が二次元的に移動でき、これにより荷電粒子の高エネルギービームをワークピースの表面全体にわたって走査することのできる、二軸ステージ80を備えてもよい。別の実施形態において、システム性能を向上するために、三次元におけるワークピースの移動を用いることも可能である。もちろん、他の変形、変更及び代替物がありうる。
【0026】
再び図1を参照すると、制御システム90が装置に接続される。制御システムは、コンピュータシステムでありうる。制御システムは、システム3及びシステム5の両者に対して、それぞれ、操作及びプロセス制御を提供する。システム3に対しては、例えば30mAまでの所望の電流を有する平行化した荷電粒子ビームを提供するよう、イオン源10を調節することが可能である。高周波電力システム20は、連続波(CW)モード又はパルス化されたモードで動作できる。制御システムは、複数のモジュール式RFQエレメントにより形成されるリニア加速器に送られる、所望の電力レベル及び周波数整合を含めて、RF電力を制御する。例えば、RFQエレメントは、CWモードにおいて、RF四重極エレメント、ドリフトチューブ、又は組み合わせを備えることができる。CWモードにおいて、RF四重極ユニット(又は番号1のRFQエレメント)における全RF電力損失は、小さくとも40kWである可能性があり、残りのRFQエレメント(すなわち、番号2からNまでのRFQエレメント)への全RF電力損失は、小さくとも26kWである。ビーム輸送ユニットは、最適なビーム取り込みを提供するために、三軸移動ステージ及びレンズ電圧の調節により、制御システムによって同様に制御される。出力ビームの所望のビーム径及びビームの均一性を目的として、ビームエキスパンダには制御システムが連結される。具体的な実施形態において、ビームエキスパンダは、磁場を用いて制御される。代替の実施形態において、制御システム90は、トレイデバイス内の温度計測及びワークピース制御等のプロセス制御を提供するために、ビーム印加システムに接続される。もちろん、他の変形、変更及び代替物がありうる。
【0027】
具体的な実施形態において、本発明の方法は、質量選別された高エネルギーの注入を取り扱い、これは適切なビーム強度を有している。費用効果的とするためには、注入ビーム電流は、数十ミリアンペアのオーダーの、H+又はH−イオンビーム電流とすべきである。このような十分に高いエネルギーを、システムが注入することができれば、線量率をより高くするために、H2+イオンも利用することができる。このようなイオン注入装置は、米国カリフォルニア州プレザントンのAccsys Technology Inc.社、米国ニューメキシコ州87109アルバカーキのLinac Systems,LLC社等から入手可能な、高周波四重極リニア加速器(RFQ Linac)、ドリフトチューブ・ライナック(DTL)、高周波(ラジオ波)集束櫛形(RFI)又は四重極集束櫛形(QFI)技術を用いることにより、最近、利用できるようになった。
【0028】
具体的な実施形態において、本発明の実施形態に係る装置は、注入プロセスを提供するために、MeVエネルギーレベルにある荷電粒子ビームを供給する。注入プロセスは、半導体基板の厚さの範囲内の選択された深さに、複数の不純物粒子を導入し、当該厚さの範囲内に劈開領域を画定する。用途によるが、好適な実施形態によれば、材料領域への損傷の可能性を低減するために、一般的には、より質量の小さい粒子が選択される。すなわち、より質量の小さい粒子は、その粒子が通過して横断する材料にほぼ損傷を与えることなく、基板材料内の選択された深さに容易に達する。例えば、より質量の小さい粒子(又はエネルギー性の粒子)、及び又は中性の原子又は分子、又は電子等は、ほとんど全てが帯電(例えば、正又は負に)できる。具体的な実施形態において、粒子は、水素及びその同位体のイオン、ヘリウム及びその同位体等の希ガスイオン、及びネオン等のイオン、又は実施形態によっては他のものを含む、荷電粒子であってよい。粒子は、例えば、水素ガス、水蒸気、メタン、及び水素化合物、及び他の軽い原子質量の粒子等の、化合物にも由来しうる。あるいは、粒子は、上記の粒子の任意の組み合わせ、及び又はイオン及び又は分子種及び又は原子種でありうる。粒子は、一般的には、表面を通過して表面下の選択された深さに貫入する充分な運動エネルギーを有する。
【0029】
ここで図2を参照すると、これは、本発明の一実施形態に係る、高エネルギー荷電粒子を生成する方法の簡略化したフロー図である。図示のように、本方法は、第一のエネルギーレベルにある複数の荷電粒子を生成するステップ(ステップ201)を含む。具体的な実施形態において、電子サイクロトロン共鳴(ECR)、誘導結合プラズマ、プラズマ系マグネトロンイオン源又はペニング源等のイオン源を用いて、第一のエネルギーレベルにある複数の荷電粒子を提供してもよい。第一のエネルギーレベルにある複数の荷電粒子は、低エネルギー輸送(LEBT)装置においてリニア加速器に導かれる(ステップ203)。リニア加速器は、第一のエネルギーレベルにある複数の荷電粒子を加速し、第二のエネルギーレベルにある複数の荷電粒子を作り出す(ステップ205)。第二のエネルギーレベルは、第一のエネルギーレベルより高い。第二のエネルギーレベルにある複数の荷電粒子は、第二のエネルギーレベルにある複数の荷電粒子のビーム径を拡大するためのビームエキスパンダに入れられる(ステップ207)。本方法は、この拡大ビームをワークピース上に照射する(ステップ209)。具体的な実施形態において、ワークピースは、トレイデバイスに設けられる半導体基板のタイルでありうる。複数の荷電粒子の拡大ビームが走査され(ステップ211)、例えば、光発電の応用のための基板を形成するための、注入プロセスを提供する。もちろん、当業者であれば、多くの変形、変更及び代替物を認識し、一以上のステップを加えてもよく、一以上のステップを除いてもよく、又は異なる順序でステップを設けてもよい。
【0030】
一例としては、シリコンウエハへの注入種として水素を用い、特定の条件セットによって注入プロセスが実施される。注入線量は、約1×1015から約1×1016原子/cm2の範囲であり、好適には、線量は約5×1016原子/cm2未満である。注入エネルギーは、光発電応用に有用な厚膜形成に対して、約1MeV以上から約5MeV以上の範囲である。注入温度は、約−50から約550℃の範囲であり、好適には、注入したウエハからの水素イオンの拡散を防ぐため、約400℃未満である。水素イオンは、約±0.03から±1.5マイクロメートルの精度で、選択された深さに、シリコンウエハ内に選択的に導入することが可能である。もちろん、使用するイオンの種類及びプロセス条件は、用途による。
【0031】
一例として、MeV範囲の注入条件がレウトフらによって開示されており(V.F.Reutov and Sh.Sh.Ibragimov、“Method for Fabricating Thin Silicon Wafers”、USSR’s Inventors Certificate No.1282757、1983年12月30日)、参照により本願明細書に援用するものとする。レウトフ及びイブラギモフの文献においては、注入期間中に適宜加熱を行い、7MeVまでの陽子注入を使用すること、及び注入後に再使用可能基板を加熱することが開示され、分離したシリコンウエハの厚さは350μmまでであった。1MeVの陽子注入を用いる、16μmのシリコン膜の熱的劈開が、同様に、M.K.Weldonら、“On the Mechanism of Hydrogen−Induced Exfoliation of Silicon”、J.Vac.Sci.Technol.、B15(4)、1997年7月/8月に開示されており、参照により本願明細書に援用するものとする。この文脈における「分離した」又は「転写したシリコンの厚さ」という用語は、注入したイオンの範囲によって形成されるシリコン膜厚を、自立状態に解放できるか、あるいは永続的な基板、又は最終的には自立基板として使用するための一時的な基板に解放できるか、あるいは永続的な基板上に設置することができることを意味する。好適な実施形態において、シリコン材料は、十分に厚く、支持部材として作用するハンドル基板からは自由な状態である。もちろん、膜の取り扱い及びプロセスのための具体的方法は、特定の方法及び用途に依存する。
【0032】
図3に、本発明の一実施形態に係る、連続法を用いて基板を形成するためのシステム300の簡略図を示す。この図は単に例示であり、本願明細書において過度に特許請求の範囲を制約してはならない。当業者であれば、他の変形、変更及び代替物を認識する。図3に示すように、本システムは、少なくとも一つの基板部材301を設けることを含む。基板部材のそれぞれは、その上に配置される複数のタイル303を備える。複数の部位のそれぞれは、注入するための再使用可能な基板部材303を備える。具体的な実施形態において、複数のタイルのそれぞれは、単結晶シリコンウエハ、ポリシリコン・キャストウエハ、タイル、又は基板等の半導体基板、シリコン・ゲルマニウム・ウエハ、ゲルマニウム・ウエハ、III/V族材料、II/VI族材料、窒化ガリウム等を含んでもよい。劈開を容易にする等の利点をもたらす特定の方向、好適なデバイス方向等に、任意の単結晶材料を切断することができる。例えば、シリコン太陽電池は、主に(100)、(110)、又は(111)の表面又は方向を有するように切断することができ、この種類の自立基板が得られる。もちろん、主要な結晶方向から意図的に誤って切断した配向面を有する出発材料も、同様に準備できる。本システムは、注入装置(図示せず)も備える。注入装置は、プロセスチャンバ305に収容される。具体的な実施形態において、注入装置は、走査注入プロセスを提供する。このような注入装置は、具体的な実施形態において、リニア加速器に生成する拡大した高エネルギーイオンビームを使用することができる。図4に示すように、注入装置は、複数のタイルに注入用の不純物を供給するため、イオン注入ヘッド402を備える。本システムは、可動トラック部404も備える。可動トラック部は、ある実施形態において、ローラー、エアベアリング、又は可動トラックを含むことができる。可動トラック部404は、走査注入プロセスのために、基板部材の空間移動を提供する。もちろん、他の変形、変更及び代替物がありうる。
【0033】
本発明に係るある実施形態は、注入のための走査モードを使用してもよい。このような実施形態の実施例を、図7から7Cの簡略図に示す。具体的には、図7は、本発明に係る注入を実施するための装置の一実施形態の構成要素を示す簡略ブロック図である。図7Aに、図7の装置のイオン源及び低エネルギービーム輸送部の、拡大した簡略図を示す。
【0034】
装置700は、低エネルギービーム輸送(LEBT)部704と真空連通する、イオン源702を含む。LEBT部704は、電気的及び磁気的なビーム抽出、成形及び集束を含んでよい。LEBT部704は、少なくとも以下の機能を実施する。
【0035】
図7Aを参照すると、LEBTは、イオン源チャンバ703内のアパーチャ703aから流れ出るイオンを取り込み、このイオンを比較的低いエネルギー(100keV以下、ここでは約30keV)に加速する。このイオンの加速により、後続するリニア加速器(ライナック)部720の、最初の高周波四重極(RFQ)ステージ722への接続に必要な、共鳴速度が得られる。あるいは、これは、磁気的にビームを抽出、成形、集束することができる複数のソレノイドを用いることにより、達成できる。
【0036】
イオン源の例としては、ECR、マイクロ波イオン源、マグネトロンイオン源及びペニング源が挙げられる。イオン化法の例としては、eビーム、レーザー、冷陰極及び熱陰極放出及び熱的な技術の使用が挙げられる。
【0037】
LEBT704は、また、通常はライナック部720の第一のRFPステージ722への受け入れを最適化するために、イオンビームを成形するよう機能する。この特定の実施形態において、ビーム成形エレメントは、アインツェルレンズ706である。しかしながら、代替実施形態において、ソレノイド(磁場レンズ作用)等の異なるデザインを用いるLEBTレンズを使用することができる。
【0038】
LEBT704は、電子サプレッサエレメント708を備える。このエレメント708は、LEBTの露出表面と相互作用する不規則なイオンによって生成した、二次電子を抑止するのに役立つ。
【0039】
ライナック部720への入口において、イオンビームは、連続するステージによって、ますます高いエネルギーに加速される。図7Bに、リニア加速器部720の簡略図を示す。
【0040】
第一のRFQステージ722において、イオンは約30keVのエネルギーから約1.1MeVのエネルギーに加速される。第二のライナックステージ724において、イオンは約2.1MeVまで加速される。第三及び最後のライナックステージ726において、イオンは約3.5MeV以上に加速される。
【0041】
LEBTによって第一の加速器722の入口に生じるイオンビームは、イオン源のパルス期間中は連続的である。しかしながら、RF加速器720の加速/集束機構の切り替えにより、この連続的なビームは、これらのライナック内で加速されるにつれて、一時的に一つのRF期間を引き離して間隔を空けた、パケット又はバンチ(bunch)に変換される。図7Bに、典型的なレベルRFアンプ、フィードバック制御、及びライナックへのRF接続を示す。一つ又は複数のRF入力は、RFQ及びRFIライナックの、一以上の組み合わせに接続する。動作中は、RFQ及びRFIキャビティからの反射電力がモニタされる。閉じたフィードバックループにおいて、全てのキャビティ内の共振を同時に維持することにより、反射電力を最小とするよう、RF周波数が調節される。
【0042】
RFQ及びRFIの組み合わせは、システムの効率を最大とするように選択できる。陽子エネルギーが約0.75MeVを上回るとRFQ技術の効率は低下するため、最終的なビームエネルギーを達成するために、RFIライナック(RFQライナックよりも高効率)を、後続のステージ内に用いてもよい。
【0043】
ライナック部720の出口アパーチャ720aを通過すると、イオンビームは、高エネルギービーム輸送(HEBT)部740に入る。HEBT部740の機能は、最後のライナックステージ726(例えば、楕円から円形の)から出る非常に高エネルギーのイオンビームを成形すること、非常に高エネルギーのイオンビームの経路を屈曲すること、及び、適切であれば目標上におけるビーム走査に達することである。ビーム成形及び集束は、四重極又は六重極等の磁場集束の様々な組み合わせを用いて行われ、この磁場は、好適な方向にビームを成形する様式に構成される。ビームは、一組の診断エレメントを通過し、質量分析用の二極磁石に入る。この点では、荷電粒子の運動量を分析するように、磁場が構成される。
【0044】
具体的には、高エネルギー化されたイオンは、最初に、分析磁石742に適宜露出され、高エネルギービームの当初の汚染物質がビームダンプ744に送られるようにビームの方向を変更し、例示的実施形態の各所に記載される清浄化機能を実施する。
【0045】
ある実施形態によれば、分析磁石742は、常に一致した力をビームに対して作用させ、その結果、清浄化したビームの方向が変化しないようにする。しかしながら、代替実施形態によれば、分析磁石は、経時的に変化するビームに対して力を作用する場合があり、ビームの方向は実際には変化する。詳細を後述するように、分析磁石によって達成されるビーム方向のこのような変化を、一つの軸に沿ってビームの所望の走査を達成するために役立ててもよい。
【0046】
この分析磁石エレメントの後には、さらなるビームの集束が生じてもよく、最終的に、DCオフセット及びAC可変ビームの両者を提供する様々な方法を用いて、ビームを走査することになる。領域範囲の全体、又はパターン化した範囲(すなわち、ライン又はスポットのみ)を線書きするためには、洗練された制御システムがありうる。
【0047】
具体的には、分析磁石を出ると、清浄化したイオンビームはビームスキャナ748に入る。図7Cに、本発明に係る、ビームスキャナ748の一実施形態の簡略ブロック図を示す。具体的には、ビームスキャナ748は、第一の平面内でビームの場所を変化させるために走査するよう構成される、第一のスキャナ双極子747を含む。ビームスキャナ748は、第一の平面に対して垂直な第二の平面内で、ビームの場所を変化させるために走査するよう構成される、第二のスキャナ双極子749も備える。
【0048】
HEBTの全体にわたり、ビームは、専用のドリフト部分を許容することによって、拡大することができる。ビームエキスパンダは、HEBTの最後のエレメントであってもよい。ビームエキスパンダは、装置(磁気八重極、等)でもよく、ビームが自分自身の上で拡大できる移動の長さでもよい。スキャナを用いることにより、スキャナ下流のビームの能動的な拡大/成形は、極めて困難になりうるので、追加の移動によるビーム拡大が好適な場合がある。要約すると、ビームは、ライナックからビームアナライザ、次いでビームスキャナに輸送され、最後にビーム拡大を受ける。
【0049】
図7DからGに、本発明の一実施形態に係る、ワークピース上におけるイオンの高エネルギービーム走査を、シミュレーションした結果を示す。具体的には、図7Dは、532のスポット露出のラスタパターンを示す。図7Eは、図7Dにおける532のスポット露出の電力密度を三次元プロットしたものである。図7Eは、図7Dにおける532のスポット露出の電力密度を二次元プロットしたものである。
【0050】
図7Gは、1mドリフト後の、5cmウエハ上における分布に対する電力密度の棒グラフである。総合すれば、これらの図は、3E16毎平方センチメートルの陽子密度を用い、直径5cmのワークピースを、5%以内の電力密度の均一度で照射することが可能であることを示している。
【0051】
図7Cに示すビームスキャナの特定の実施形態は、二つの二極磁石を備えるが、これは本発明に必須ではない。代替実施形態によれば、ビームスキャナは、単一の二極磁石のみを備えることができる。具体的には、ある実施形態によれば、ビームスキャナの単一の二極磁石によって走査が行われる平面に対し、垂直な面内における走査を提供するために、ビームスキャナの上流に位置する分析磁石を用いることができる。そのような一つの実施形態においては、分析磁石の磁場における時間変動は、法線から+/−4°まで方向が変化する励起ビームを生成する場合がある。分析磁石に存在する、清浄化したビームの方向におけるこのような「ふらつき」を、ビームスキャナの第二の二極磁石に替えて、走査に用いてもよい。あるいは、このようなふらつきのあるビームを、第二の二極磁石を有するビームスキャナと連動し、このふらつきの方向における走査の大きさが増加するように用いてもよい。このようなビームスキャナは、DCシフトによってビームを移動し、次いでふらつきが起きるように用いることも可能である。
【0052】
HEBTの全体にわたり、専用のドリフト部を割り当てることにより、ビームを拡大することが可能である。ビームエキスパンダは、HEBTの最後のエレメントである。ビームエキスパンダは、装置(磁気八重極等)でありうるか、又はビームに対して自然な拡大を許容する、移動の長さでありうる。ビームスキャナの使用により、ビーム拡大に対する下流でのアプローチは困難になるため、追加の移動によるビーム拡大が好適な場合がある。要約すると、ビームは、ライナックから、ビームアナライザへ、次いでビームスキャナへ輸送され、最終的にビーム拡大を受ける。
【0053】
図7に示す特定の実施形態は、ビーム経路の成形及び制御のためのエレメントを備えるが、これらは本発明に必須ではない。本発明に係る代替実施形態は、このようなエレメントがなく、加速器から出た後にビーム形状を拡大可能な、ドリフトチューブ構成を使用することができる。
【0054】
図7に、端部ステーション759を含む、装置の残りの構成要素を示す。この端部ステーション759において、エネルギー性のイオンビームによる走査プロセスにあるタイル760は、真空状態で走査ステージ762に支持される。タイル760は、ロボットチャンバ764及びロードロック766を介して、走査ステージに送られる。
【0055】
走査ステージ762は、粒子ビームを受け取るワークピース又はバルク材料の位置を平行移動するように機能してもよい。ある実施形態によれば、走査ステージは、単一の軸のみに沿って移動するよう構成してもよい。さらに他の実施形態によれば、走査ステージは、二つの軸に沿って移動するよう構成してもよい。図7の特定の実施形態に示すように、走査装置単独の動作によるビームの走査によって、又はビームフィルタにより行われる走査と組み合わせて、走査ステージにより目標材料を物理的に平行移動してもよい。走査ステージは、本発明に必須ではなく、ある実施形態においては、ワークピースを、照射への露出中に静止した様式で支持してもよい。
【0056】
図7から7Cの装置の様々な構成要素は、通常は、プロセッサ782及びコンピュータ可読記憶媒体784を含むホストコンピュータ780の管理下にある。具体的には、プロセッサは、イオン源、加速器、LEBT、HEBT及び端部ステーションを備える装置700の異なるエレメントと電子的に通信するよう構成される。コンピュータ可読記憶媒体には、これらの様々な構成要素のいずれかの操作を命令するためのコードが格納される。プロセッサから受信する命令によって制御してもよいプロセスの態様の例としては、端部ステーション及びHEBT等の様々な構成要素内の圧力、ビーム電流、ビーム形状、走査パターン(スキャナ及び/又は分析磁石を利用するビームを走査することによる、及び/又は基板位置でのXY駆動ステージを用いる平行移動を利用して目標を移動すること、すなわち塗装による)、ビームタイミング、端部ステーションへの/からのタイル供給、ビーム清浄化装置(すなわち分析磁石)の操作、及びイオン源に適用するガス及び/又は電力が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
上述のクーポンシステム(coupon system)の様々な構成要素は、様々な特徴を有するコンピュータシステムを用いて実装できる。図8に、ディスプレイ装置820、ディスプレイ画面830、筐体840、キーボード850及びマウス870を備える、一般的なコンピュータシステム810の例を示す。マウス870及びキーボード850は、代表的な「ユーザ入力デバイス」である。マウス870は、グラフィカルユーザインタフェースデバイス上のボタンを選択するための、ボタン880を備える。ユーザ入力デバイスの他の実施例は、タッチスクリーン、ライトペン、トラックボール、データグローブ、マイクロホン他である。図8は、本発明を実施するためのシステムの、単に一つの種類を表す。当業者であれば、多くのシステムの種類及び構成が、本発明と連動して用いるために適切であることは直ちに明らかである。好適な実施形態において、コンピュータシステム810はマイクロソフト社製WindowsNT(登録商標)オペレーティングシステムが動作する、ペンティアム(登録商標)クラス系のコンピュータを備える。しかしながら、本発明の範囲から離れることなく、本装置には当業者によって他のオペレーティングシステム及びアーキテクチャが容易に適用される。
【0058】
前述のように、マウス870は、ボタン880等の、一以上のボタンを有することができる。筐体840は、ディスクドライブ、プロセッサ、記憶装置等の、普通のコンピュータ構成要素を収容する。記憶装置は、ディスクドライブ、磁気テープ、半導体メモリ、バブルメモリ等を備えるが、これらに限定されない。筐体840は、コンピュータシステム810を外部装置、外部記憶、他のコンピュータ、又は詳細を後述する追加の周辺機器に接続するための入力/出力(I/O)インタフェースカード等を備えることができる。
【0059】
図8Aは、図8のコンピュータシステム810の、基本的なサブシステムの説明図である。この図は単に説明であり、本願における特許請求の範囲を制約してはならない。当業者であれば、他の変形、変更及び代替物を認識する。ある実施形態において、このサブシステムは、システムバス875を介して相互接続する。プリンタ874、キーボード878、固定ディスク879、ディスプレイ・アダプタ882に接続されるモニタ876、他の追加サブシステムを示す。周辺機器及び入力/出力(I/O)装置は、I/Oコントローラ871と接続し、シリアルポート877等、当業に公知の任意の数字の手段によって、コンピュータシステムに接続できる。例えば、シリアルポート877は、コンピュータシステムをモデム881に接続するために用いることができ、同様にインターネット等のワイドエリアネットワーク、マウス入力デバイス又はスキャナに接続する。システムバスを介する相互接続によって、中央プロセッサ873は、各サブシステムと通信し、システムメモリ872又は固定ディスク879からの命令の実行、並びにサブシステム間の情報交換を制御することができる。当業者によれば、サブシステムの他の構成及び相互接続は、直ちに達成可能である。システムメモリ、及び固定ディスクは、コンピュータプログラムの格納のための有形媒体の例であり、他のタイプの有形媒体としては、フロッピー(登録商標)ディスク、リムーバブルハードディスク、CD−ROM及びバーコード等の光学記憶媒体、及びフラッシュメモリ、読出し専用メモリ(ROM)及びバッテリ支援メモリ等の半導体メモリが挙げられる。
【0060】
本出願に記載のソフトウェア構成要素又は機能は、いずれも、例えばJava(登録商標)、例えば従来の又はオブジェクト指向技術を用いるC++(登録商標)又はPerl(登録商標)等の、任意の適切なコンピュータ言語を用いて、プロセッサによって実行されるソフトウェアコードとして実装してもよい。ソフトウェアコードは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、ハードドライブ又はフロッピー(登録商標)ディスク等の磁気媒体、又はCD−ROM等の光学媒体等の、コンピュータ可読媒体上の一連の命令又はコマンドとして格納されてもよい。このようなコンピュータ可読媒体は、いずれも、単一のコンピュータ装置上にあってもよく、内蔵されてもよく、システム又はネットワーク内の異なるコンピュータ装置上にあってもよく、内蔵されてもよい。
【0061】
事実上、注入された粒子は、選択された深さにおいて、基板上面に平行な面に沿って、応力を加えるか、又は破壊エネルギーを低減する。このエネルギーは、部分的には、注入種及び状態に依存する。これらの粒子は、選択された深さにおいて、基板の破壊エネルギーレベルを低下させる。これにより、選択された深さにおいて、注入面に沿った劈開を制御することができる。
【0062】
特定の実施形態によれば、注入は、全ての内部位置における基板のエネルギー状態が、不可逆的な破壊(すなわち、分離又は劈開)を開始するのに不十分であるような条件下において、起こりうる。あるいは、パターン化した注入を用い、基板のある領域のみに粒子を供給するか、又はある領域に導入する線量を低くすることが可能である。
【0063】
このようなある実施形態によれば、劈開が開始される領域のみが最大又は高線量を受けるように、パターン化した注入を用いることができる。劈開が進行するだけの他の領域は、受ける線量を低下させるか又は全く無線量としてもよい。このような線量の変動は、特定の領域におけるビームの滞留時間を制御することにより、特定の領域をビームに露出する回数を制御することにより、又はこれらの二つのアプローチの何らかの組み合わせにより、達成することができる。一実施形態において、20mAのH+イオンのビームは、最小滞留時間200μ秒、走査速度2.5km/秒(直径5cmのビーム径を用い、トレイ幅1m以内において、対応する走査周波数は1.25kHz)の結果として、1.25×1017H原子/(cm2秒)のフラックスを供給し、パス当たり最小線量を2.5×1013H原子/cm2とすることができる。もちろん、滞留時間が長ければ、受ける線量は増加する。
【0064】
ある実施形態によれば、高線量領域における劈開の作用は、物理的打撃(ブレード)、超音波、又は異種材料間の熱膨張/収縮係数の差による応力を含む、他の力によって開始できるが、限定されない。一実施形態によれば、基板を金属層に接着してもよく、これは基板/金属の組み合わせが冷却するにつれて、高い注入線量を受ける領域において、劈開を開始するために十分な応力を誘起し、かつ/又は予め存在する注入開始領域を拡大する。
【0065】
しかしながら、注入により、例えば、熱アニール又は急速な熱アニール等の、後続の熱処理によって少なくとも部分的には修復可能な、ある量の欠陥(例えば、微小欠陥)が、一般的には、大抵基板内に実際に生じることに留意しなければならない。適宜、具体的な実施形態において、本方法は、注入プロセス後の熱処理プロセスを含む。具体的な実施形態において、本発明の方法は、シリコン材料に対して、約450℃から約600℃の範囲の熱プロセスを用いる。好適な実施形態において、導通、対流、放射、又はこれらの技術の任意の組み合わせを用いて、熱処理が生じうる。高エネルギーの粒子ビームは、所望の注入温度に到達するための、部分的な、及び外部の熱源との組み合わせによる、熱エネルギーを供給することもできる。ある実施形態において、高エネルギーの粒子ビームは、単独で、注入に求められる熱エネルギーの全体を提供することができる。好適な実施形態において、この処理プロセスにより、後続の劈開プロセスに対する、劈開領域の予備処理が生じる。もちろん、他の変形、変更及び代替物がありうる。
【0066】
具体的な実施形態において、本方法は、劈開プロセスを用いて、自立する分離可能な材料層を分離するステップを含み、この分離可能な材料は、図5に示すような上部支持部材又は同様品から分離される。図示のように、分離可能な材料501は、残りの基板部505から取り外される。具体的な実施形態において、この分離するステップは、劈開プロセスの制御を用いて実施することができる。劈開プロセスの制御により、ドナー基板の部分的な劈開領域内に、選択されたエネルギーが供給される。単に一例として、劈開プロセスの制御は、米国特許第6013563号、発明の名称「劈開プロセス制御」、米国カリフォルニア州サンノゼのシリコン・ジェネシス社出願に記載され、本願明細書の参照により全ての目的に対して援用する。図示のように、本方法は、材料層を基板から分離し、完全に材料層を取り外す。もちろん、他の変形、変更及び代替物がありうる。
【0067】
一実施形態において、本方法は、劈開作用の開始を容易にするために、一以上のパターン領域を用いる。具体的な実施形態において、本発明の方法は、表面領域及び厚さを有する半導体基板を提供する。本方法は、劈開領域内に複数のゲッターサイトのパターン領域を形成するために、半導体基板の表面領域を、リニア加速器によって生成する第一の複数の高エネルギー粒子にさらすことを含む。好適な実施形態において、劈開領域は、表面領域の下方に、分離される材料の画定した厚さまで設けられる。半導体基板は、第一の温度に維持される。本方法は、半導体基板を、熱処理等の処理プロセスにさらすことを含む。本方法は、半導体基板の表面を、劈開領域の応力レベルを第一の応力レベルから第二の応力レベルに増すために設けられる、第二の複数の高エネルギー粒子にさらすことを含む。本方法は、劈開プロセスを用いて、分離可能な材料層の一部を分離するために、パターン領域の選択領域において、劈開作用を開始することと、劈開プロセスを用いて分離可能な材料層を分離することを含む。
【0068】
パターン化した注入シーケンスは、表面を線量の変動にさらし、開始領域は、通常は、高線量及び/又はサーマルバジェットシーケンス(thermal budget sequence)を用いて展開される。劈開動作を完了するための劈開の進行は、数多くのやり方で起こすことができる。一つのアプローチとして、劈開が進行する前線ガイドとして、線量を追加した領域が用いられる。劈開の進行に対する別のアプローチとして、応力制御を用いる深さのガイドが挙げられる。さらに別の劈開進行のアプローチとして、自然な結晶劈開面が挙げられる。
【0069】
いくつかの又は大抵の領域は、使われた特定の劈開技術によっては、より少ない線量で注入が行われる場合もあり、全く注入が行われない場合もある。このような低線量領域は、基板からそれぞれの膜を分離するために必要な全線量を低減することによって、注入システムの全体的な生産性を向上させるのに役立てることができる。
【0070】
図6に、本発明の別の実施形態に係る、分離可能な材料610の層を分離する方法600を例示する。図示のように、劈開面602は、表面領域606を有する基板604に設けられる。この基板は、シリコンウエハ等でありうる。劈開面は、具体的な実施形態において、本願明細書に別途記載の、注入水素種を用いて設けることができる。他の注入種を用いてもよい。これらの他の注入種は、ヘリウム種、又は組み合わせを含むことができる。具体的な実施形態において、基板は、予め定められた温度範囲に維持される。図示のように、チャック部材608が設けられる。チャック部材は、真空、加熱ガス、及び極低温/低温ガスを供給する手段を備える。分離可能な材料を外すために、チャック部材は表面領域に接続され、基板の温度を他の範囲に上昇するための加熱ガスを放出する。基板は、基板から厚膜材料を分離するために、極低温/低温ガスを用いて冷やされる。次いで、表面領域612を真空とすることによって、分離した厚膜材料を取り外すことができる。もちろん、他の変形、変更及び代替物がありうる。
【0071】
具体的な実施形態において、本発明の方法は、他のプロセスを実行することができる。例えば、本方法は、分離した材料の厚膜を支持部材に乗せることができ、これが後にロセスを受ける。加えて又は適宜、本方法は、第一の複数の高エネルギー粒子に表面領域をさらす前に、半導体基板上において一以上のプロセスを実施してもよい。実施形態にもよるが、本方法は、光発電セル、集積回路、光学装置、これらの任意の組み合わせ等の形成のためになりうる。もちろん、他の変形、変更及び代替物がありうる。
【0072】
本願明細書に記載される実施例及び実施形態は例示のみの目的であり、それらの考慮における様々な変更又は変化は、当業者には示唆されること、及び本出願及び添付の特許請求の範囲の精神及び趣旨の範囲内に含まれることも理解されたい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立できる一以上の分離可能な半導体膜の製造のために荷電粒子を提供する装置であって、
複数の荷電粒子を生成するイオン源であって、前記複数の荷電粒子は第一のエネルギーレベルにある平行化したビームとして提供されるイオン源と、
高周波四重極(RFQ)リニア加速器であって、前記RFQリニア加速器は1からNまでの番号が付けられた複数のモジュール式高周波四重極(RFQ)エレメントを含み、Nは1より大きな整数であり、前記複数のモジュール式RFQエレメントのそれぞれは相互に連続して接続され、RFQリニア加速器は前記荷電粒子を第一のエネルギービームに制御及び加速して第二のエネルギーレベルを有する荷電粒子のビームとし、番号1のRFQエレメントは前記イオン源に接続されて動作可能である加速器と、
RFQリニア加速器の番号NのRFQエレメントに接続される出口アパーチャと、
前記出口アパーチャに接続されるビームエキスパンダであって、前記ビームエキスパンダは前記第二のエネルギーレベルにある荷電粒子の前記ビームを荷電粒子の拡大ビームに処理するよう構成されるビームエキスパンダと、
前記ビームエキスパンダに接続されるプロセスチャンバと、
前記プロセスチャンバ内に供給されるワークピースであって、前記ワークピースは荷電粒子の前記拡大ビームによって注入される表面領域を含むワークピースと、
を含む装置。
【請求項2】
前記イオン源は、ECRイオン源、マイクロ波イオン源、ICPイオン源又は他から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記イオン源によって生成した前記複数の荷電粒子は、H−又はH+(陽子)又はH2+から選択することができる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記イオン源は、30mAまでの調節可能な電流を用いて約25keVのエネルギーレベルにあるイオンビームを生成することができる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記イオン源は、連続モード、又は10から100μsの調節可能なパルス幅及び10から3000Hzの調節可能な繰り返し周期を有するパルス化モードにおいて動作することができる、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
番号1の前記RFQエレメントは、25keVのエネルギーから少なくとも0.75MeVのエネルギーまでのイオンビームの、集束、圧縮(bunching)及び加速が可能である、約200MHzの共振周波数を有するRFQライナックサブシステムを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
番号Nの前記RFQエレメントを出る前記加速されたビームは、0.5から7MeVのエネルギーレベルにおける約30mAまでの電流を有する陽子ビームであってもよい、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ビームエキスパンダは、四重極又は八重極の磁場を用いて、3mm以下から約50cmまで調節可能なビームサイズを有する前記ビームを処理することができる、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記プロセスチャンバは、少なくとも前記表面領域の部分が、前記第二のレベルにある荷電粒子のビームで照射されるように、前記ワークピースを支持するトレイデバイスを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記トレイデバイスは、荷電粒子の前記ビームが、前記表面領域を横切って走査することと、前記ワークピースに注入されることと、を可能とするために移動するよう構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記イオン源のビーム電流、高周波電源、ビーム動力学、注入又は劈開プロセスを制御するよう構成されるコンピュータ制御システムを、さらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
デバイス用途の自立できる一以上の分離可能な半導体膜を製造するために荷電粒子を導入する方法であって、
イオン源を用いて、第一のエネルギーレベルにあるビーム電流を有する荷電粒子のビームを生成するステップと、
前記イオン源に接続される高周波四重極(RFQ)リニア加速器を通じて、第一のエネルギーレベルにある前記ビームを、第二のエネルギーレベルにあるビームに移送するステップであって、前記RFQリニア加速器は1からNの番号が付けられたモジュール式RFQエレメントを含み、Nは1より大きな整数であるステップと、
前記荷電粒子を注入することができるビームサイズを拡大するために、前記RFQリニア加速器に接続されるビームエキスパンダを用いて、前記第二のエネルギーレベルにある前記ビームを処理するステップと、
前記第二のエネルギーレベルにある前記ビームを表面領域を通じてワークピースに照射するステップであって、前記ワークピースは、前記表面領域を横切って走査し、前記ワークピースの表面領域から約50マイクロメートルを超える深さに、平均注入線量を有する劈開領域を作り出せるように、前記ビームエキスパンダに接続されるプロセスチャンバ内にマウントされるステップと、
を含む方法。
【請求項13】
前記第二のエネルギーレベルは、約0.5から7MeVの間である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
荷電粒子の前記ビームは、水素イオンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ビームを照射するステップは、前記ビームを走査すること又は前記ワークピースを平行移動することにより、前記ワークピース上の前記ビームの位置を変えるステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
低エネルギーイオンビームを出力するよう構成されるイオン源と、
前記イオン源から受けた前記低エネルギーイオンビームを集束するよう構成される低エネルギーイオンビーム輸送(LEBT)部と、
前記集束した低エネルギーイオンビームを高エネルギーイオンビームに変換するよう構成されるリニア加速器と、
前記高エネルギーイオンビームを受けるよう構成される高エネルギーイオンビーム輸送(HEBT)部と、
バルク材料を、前記バルク材料が前記高エネルギーイオンビームに露出されるように支持するよう構成される端部ステーションと、
を含むシステム。
【請求項17】
前記イオン源は、電子サイクロトロン共鳴(ECR)又は水素イオンを含むビームのマイクロ波源を含み、
前記LEBT部は、アインツェルレンズ又はソレノイドレンズを含み、
前記リニア加速器は、水素イオンの前記ビームを約0.5〜7MeVの間のエネルギーに加速するよう構成される、一連の連続した高周波四重極(RFQ)ステージを含み、
前記HEBT部は走査デバイスを含み、前記端部ステーションは、共通トレイ上に複数のバルク材料を支持するよう構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記HEBT部は、複数の前記バルク材料の一つを横切って前記ビームを走査するよう構成される装置を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記走査デバイスは、静電又は磁気素子を含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記走査デバイスは、前記走査される高エネルギービームを、法線から約4度未満の角度で前記バルク材料の表面に衝突させるよう構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記端部ステーションは、前記イオンビームへの露出の間、少なくとも一つの軸に沿って前記バルク材料を物理的に平行移動するよう構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項22】
前記HEBT部は、ビームエキスパンダを、さらに含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項23】
前記リニア加速器は、RFQ、QFI、RFI、又はDTLエレメントを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項24】
バルク材料から自立膜を作る方法であって、
前記バルク材料の表面を、RFQリニア加速器に接続されるECRイオン源によって生成したイオンの高エネルギービームに露出するステップであって、前記イオンビームからの水素イオンが前記バルク材料の中に約20マイクロメートル以上の深さに注入されるようにするステップと、
前記自立膜を前記深さにおいて前記バルク材料から劈開するステップと、
を含む方法。
【請求項25】
前記ビームは、約0.5及から7MeVの間のエネルギーを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記バルク材料の表面を横切って前記高エネルギービームを走査するステップを、さらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記露出するステップの間に、少なくとも一つの軸に沿って前記バルク材料を平行移動するステップを、さらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
ECRイオン源と、
アインツェルレンズを含み、前記ECRイオン源と連通して真空にある入口を有する低エネルギービーム輸送(LEBT)部と、
前記LEBT部からの水素イオンのビームの出口を、約0.5から7MeVの間のエネルギーに上昇する、3つの連続するRFQステージを含むリニア加速器部と、
前記リニア加速器部の前記出口と連通して真空にあり、ビームスキャナを含む、高エネルギービーム輸送(HEBT)部と、
バルク材料の表面を、前記表面が走査される高エネルギービームに露出される間に、軸に沿って平行移動するよう構成される端部ステーションと、
を含む装置。
【請求項1】
自立できる一以上の分離可能な半導体膜の製造のために荷電粒子を提供する装置であって、
複数の荷電粒子を生成するイオン源であって、前記複数の荷電粒子は第一のエネルギーレベルにある平行化したビームとして提供されるイオン源と、
高周波四重極(RFQ)リニア加速器であって、前記RFQリニア加速器は1からNまでの番号が付けられた複数のモジュール式高周波四重極(RFQ)エレメントを含み、Nは1より大きな整数であり、前記複数のモジュール式RFQエレメントのそれぞれは相互に連続して接続され、RFQリニア加速器は前記荷電粒子を第一のエネルギービームに制御及び加速して第二のエネルギーレベルを有する荷電粒子のビームとし、番号1のRFQエレメントは前記イオン源に接続されて動作可能である加速器と、
RFQリニア加速器の番号NのRFQエレメントに接続される出口アパーチャと、
前記出口アパーチャに接続されるビームエキスパンダであって、前記ビームエキスパンダは前記第二のエネルギーレベルにある荷電粒子の前記ビームを荷電粒子の拡大ビームに処理するよう構成されるビームエキスパンダと、
前記ビームエキスパンダに接続されるプロセスチャンバと、
前記プロセスチャンバ内に供給されるワークピースであって、前記ワークピースは荷電粒子の前記拡大ビームによって注入される表面領域を含むワークピースと、
を含む装置。
【請求項2】
前記イオン源は、ECRイオン源、マイクロ波イオン源、ICPイオン源又は他から選択される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記イオン源によって生成した前記複数の荷電粒子は、H−又はH+(陽子)又はH2+から選択することができる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記イオン源は、30mAまでの調節可能な電流を用いて約25keVのエネルギーレベルにあるイオンビームを生成することができる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記イオン源は、連続モード、又は10から100μsの調節可能なパルス幅及び10から3000Hzの調節可能な繰り返し周期を有するパルス化モードにおいて動作することができる、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
番号1の前記RFQエレメントは、25keVのエネルギーから少なくとも0.75MeVのエネルギーまでのイオンビームの、集束、圧縮(bunching)及び加速が可能である、約200MHzの共振周波数を有するRFQライナックサブシステムを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
番号Nの前記RFQエレメントを出る前記加速されたビームは、0.5から7MeVのエネルギーレベルにおける約30mAまでの電流を有する陽子ビームであってもよい、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ビームエキスパンダは、四重極又は八重極の磁場を用いて、3mm以下から約50cmまで調節可能なビームサイズを有する前記ビームを処理することができる、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記プロセスチャンバは、少なくとも前記表面領域の部分が、前記第二のレベルにある荷電粒子のビームで照射されるように、前記ワークピースを支持するトレイデバイスを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記トレイデバイスは、荷電粒子の前記ビームが、前記表面領域を横切って走査することと、前記ワークピースに注入されることと、を可能とするために移動するよう構成される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記イオン源のビーム電流、高周波電源、ビーム動力学、注入又は劈開プロセスを制御するよう構成されるコンピュータ制御システムを、さらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
デバイス用途の自立できる一以上の分離可能な半導体膜を製造するために荷電粒子を導入する方法であって、
イオン源を用いて、第一のエネルギーレベルにあるビーム電流を有する荷電粒子のビームを生成するステップと、
前記イオン源に接続される高周波四重極(RFQ)リニア加速器を通じて、第一のエネルギーレベルにある前記ビームを、第二のエネルギーレベルにあるビームに移送するステップであって、前記RFQリニア加速器は1からNの番号が付けられたモジュール式RFQエレメントを含み、Nは1より大きな整数であるステップと、
前記荷電粒子を注入することができるビームサイズを拡大するために、前記RFQリニア加速器に接続されるビームエキスパンダを用いて、前記第二のエネルギーレベルにある前記ビームを処理するステップと、
前記第二のエネルギーレベルにある前記ビームを表面領域を通じてワークピースに照射するステップであって、前記ワークピースは、前記表面領域を横切って走査し、前記ワークピースの表面領域から約50マイクロメートルを超える深さに、平均注入線量を有する劈開領域を作り出せるように、前記ビームエキスパンダに接続されるプロセスチャンバ内にマウントされるステップと、
を含む方法。
【請求項13】
前記第二のエネルギーレベルは、約0.5から7MeVの間である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
荷電粒子の前記ビームは、水素イオンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ビームを照射するステップは、前記ビームを走査すること又は前記ワークピースを平行移動することにより、前記ワークピース上の前記ビームの位置を変えるステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
低エネルギーイオンビームを出力するよう構成されるイオン源と、
前記イオン源から受けた前記低エネルギーイオンビームを集束するよう構成される低エネルギーイオンビーム輸送(LEBT)部と、
前記集束した低エネルギーイオンビームを高エネルギーイオンビームに変換するよう構成されるリニア加速器と、
前記高エネルギーイオンビームを受けるよう構成される高エネルギーイオンビーム輸送(HEBT)部と、
バルク材料を、前記バルク材料が前記高エネルギーイオンビームに露出されるように支持するよう構成される端部ステーションと、
を含むシステム。
【請求項17】
前記イオン源は、電子サイクロトロン共鳴(ECR)又は水素イオンを含むビームのマイクロ波源を含み、
前記LEBT部は、アインツェルレンズ又はソレノイドレンズを含み、
前記リニア加速器は、水素イオンの前記ビームを約0.5〜7MeVの間のエネルギーに加速するよう構成される、一連の連続した高周波四重極(RFQ)ステージを含み、
前記HEBT部は走査デバイスを含み、前記端部ステーションは、共通トレイ上に複数のバルク材料を支持するよう構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記HEBT部は、複数の前記バルク材料の一つを横切って前記ビームを走査するよう構成される装置を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記走査デバイスは、静電又は磁気素子を含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記走査デバイスは、前記走査される高エネルギービームを、法線から約4度未満の角度で前記バルク材料の表面に衝突させるよう構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記端部ステーションは、前記イオンビームへの露出の間、少なくとも一つの軸に沿って前記バルク材料を物理的に平行移動するよう構成される、請求項16に記載のシステム。
【請求項22】
前記HEBT部は、ビームエキスパンダを、さらに含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項23】
前記リニア加速器は、RFQ、QFI、RFI、又はDTLエレメントを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項24】
バルク材料から自立膜を作る方法であって、
前記バルク材料の表面を、RFQリニア加速器に接続されるECRイオン源によって生成したイオンの高エネルギービームに露出するステップであって、前記イオンビームからの水素イオンが前記バルク材料の中に約20マイクロメートル以上の深さに注入されるようにするステップと、
前記自立膜を前記深さにおいて前記バルク材料から劈開するステップと、
を含む方法。
【請求項25】
前記ビームは、約0.5及から7MeVの間のエネルギーを有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記バルク材料の表面を横切って前記高エネルギービームを走査するステップを、さらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記露出するステップの間に、少なくとも一つの軸に沿って前記バルク材料を平行移動するステップを、さらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
ECRイオン源と、
アインツェルレンズを含み、前記ECRイオン源と連通して真空にある入口を有する低エネルギービーム輸送(LEBT)部と、
前記LEBT部からの水素イオンのビームの出口を、約0.5から7MeVの間のエネルギーに上昇する、3つの連続するRFQステージを含むリニア加速器部と、
前記リニア加速器部の前記出口と連通して真空にあり、ビームスキャナを含む、高エネルギービーム輸送(HEBT)部と、
バルク材料の表面を、前記表面が走査される高エネルギービームに露出される間に、軸に沿って平行移動するよう構成される端部ステーションと、
を含む装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図8】
【図8A】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図7G】
【図8】
【図8A】
【公表番号】特表2010−509714(P2010−509714A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535514(P2009−535514)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/084130
【国際公開番号】WO2008/058248
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(506212569)シリコン ジェネシス コーポレーション (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/084130
【国際公開番号】WO2008/058248
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(506212569)シリコン ジェネシス コーポレーション (11)
【Fターム(参考)】
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