説明

半導体物理量センサ

【課題】接合用電極に起因した不具合の発生を抑制する。
【解決手段】第1の接合用電極28は、フレーム部3において電極部8a,8bよりも重り部4から離れた位置、具体的には、電極部8a,8bを挟んで重り部4と対向するフレーム部3の端部(図1では下端部)に配設されている。同様に第2の接合用電極29は、フレーム部3において電極部9a,9bよりも重り部5から離れた位置、具体的には、電極部9a,9bを挟んで重り部4と対向するフレーム部3の端部(図1では下端部)に配設されている。そのため、従来例のように2つの重り部4,5に挟まれた幅細の部位に接合用電極100,101が設けられる場合と比較して、フレーム部3に残った接合用電極28,29の高温時の膨張や高温環境下での長時間放置による変形による不具合の発生が抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体物理量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体物理量センサとして、特許文献1に記載されている静電容量形の半導体加速度センサがある。
【0003】
特許文献1記載の従来例は、図4に示すように外形が矩形平板状であるセンサチップ1と、センサチップ1の上面側に固定される上部固定板2aと、センサチップ1の下面側に固定される下部固定板2bとを備えている。センサチップ1は、フレーム部3と、2つの重り部4,5とを備えている。フレーム部3は、上下方向から見て矩形の2つの枠部3a,3bが長手方向(横方向)に並設されてなる。2つの重り部4,5は、直方体形状に形成され、枠部3a,3bの内周面と重り部4,5の側面を連結する各一対のビーム部6a,6b及び7a,7bにより、フレーム部3に対して回動軸の回りに回動自在に支持される。なお、重り部4,5の上面には可動電極4a,5aが形成される。
【0004】
重り部4,5は、下面に開口する凹部(図示せず)と凹部を除く充実部(図示せず)が一体に形成されている。凹部は、開口面の法線方向(図4におけるz軸方向)から見て平面視四角形に形成されるとともに、凹部の内壁面及び底壁面と結合され且つ上下方向から見てそれぞれ対角線上に配置されて互いに交差する2つの補強壁(図示せず)が内部に設けられている。
【0005】
一対のビーム部6a,6bは、横方向に対向する枠部3aの内周面における縦方向の中央部に一端が連結され、重り部4の側面における凹部と充実部の境界付近に他端が連結されている。同じく一対のビーム部7a,7bは、横方向に対向する枠部3bの内周面における縦方向の中央部に一端が連結され、重り部5の側面における凹部と充実部の境界付近に他端が連結されている。つまり、一対のビーム部6aと6b、7aと7bをそれぞれ結ぶ直線が回動軸となり、回動軸の回りに各重り部4,5が回動することになる。また、センサチップ1は、後述するように半導体の微細加工技術によりシリコン基板(SOI基板)を加工して形成されるものであり、重り部4,5の上面を含む部分が可動電極4a,5aとなる。
【0006】
上部固定板2aは、石英ガラスなどの絶縁材料によって矩形平板状に形成されている。上部固定板2aの下面には、上下方向に沿ってセンサチップ1の重り部4(可動電極4a)と対向する位置に第1の固定電極20aと第2の固定電極20bが縦方向に並設されている。さらに上部固定板2aの下面には、上下方向に沿ってセンサチップ1の重り部5(可動電極5a)と対向する位置に第1の固定電極21aと第2の固定電極21bが縦方向に並設されている。また、上部固定板2aは、縦方向の一端側に5つの貫通孔22a〜22eが横方向に並べて貫設されている。さらに、上部固定板2aの下面には各固定電極20a,20b及び21a,21bと電気的に接続された複数の導電パターン23a,23b、24a,24b(図5参照)が形成されている。
【0007】
一方、センサチップ1の縦方向一端側にはフレーム部3から離間された合計4つの電極部8a,8b,9a,9bが並設されている。これら4つの電極部8a,8b,9a,9bは、上面における略中央に金属膜からなる検出電極80a,80b,90a,90bがそれぞれ形成されるとともに、枠部3a,3bに臨む端部に圧接電極81a,81b,91a,91bがそれぞれ形成されている。これら4つの圧接電極81a,81b,91a,91bは、各電極部8a,8b,9a,9bの前記端部に設けられた段部82a,82b,92a,92bの底面にアルミなどの金属の膜が成膜されることで形成されている(図5参照)。なお、フレーム部3上面の電極部8b,9aの間には接地電極10が形成されている。そして、センサチップ1の上面に上部固定板2aが接合されると、上部固定板2aの下面に形成されている導電パターン23a,23b、24a,24bと圧接電極81a,81b,91a,91bが圧接接続されることで各検出電極80a,80b,90a,90bが各固定電極20a,20b,21a,21bと電気的に接続されるとともに、上部固定板2aの貫通孔22a〜22dを通して各検出電極80a,80b,90a,90bが外部に露出する。なお、接地電極10も貫通孔22eを通して外部に露出する。
【0008】
下部固定板2bは、上部固定板2aと同じく石英ガラスなどの絶縁材料製であって、その上面には上下方向に沿ってセンサチップ1の重り部4,5と対向する位置にそれぞれ付着防止膜23a,23bが形成されている。この付着防止膜23a,23bは、アルミニウム系合金等の固定電極20a,…と同じ材料で形成されており、回動した重り部4,5の下面が下部固定板2bに付着することを防止している。
【0009】
而して、この従来例では、枠部3a、重り部4、ビーム部6a,6b、可動電極4a、第1及び第2の固定電極20a,20b、検出電極80a,80bと、枠部3b、重り部5、ビーム部7a,7b、可動電極5a、第1及び第2の固定電極21a,21b、検出電極81a,81bとで各々加速度センサが構成される。そして、重り部4,5の向き(凹部と充実部の配置)を180度反転させた状態で2つの加速度センサが一体に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−210416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記従来例ではセンサチップ1に対して上部固定板2a及び下部固定板2bがそれぞれ陽極接合される。この接合工程において、センサチップ1と上部固定板2aとの間に高電圧が印加されることによって重り部4が上部固定板2aに吸引されることを防ぐため、上部固定板2aの第1及び第2の固定電極20a,20b,21a,21bと重り部4を同電位に保つ必要がある。そのために上記従来例では、第1の固定電極20a,21a同士を接続する第1の接合用導電パターン25aと、第2の固定電極20b,21b同士を接続する第2の接合用導電パターン25bとが上部固定板2aに形成されている。一方、センサチップ1のフレーム部3には、第1及び第2の接合用導電パターン25a,25bの端部にそれぞれ圧接接続される接合用電極100,101が設けられている。これら2つの接合用電極100,101は、フレーム部3における重り部4,5に挟まれた部位(2つの枠部3a,3bの間を仕切る幅細の部位)に設けられた凹部102,103の底面にアルミなどの金属の膜が成膜されることで形成されている(図5参照)。
【0012】
而して、第1及び第2の接合用導電パターン25a,25bが接合用電極100,101に圧接接続されることで上部固定板2aの第1及び第2の固定電極20a,20b,21a,21bと重り部4を同電位に保つことができる。ただし、接合工程の終了後、不要な第1及び第2の接合用導電パターン25a,25bがレーザビームの照射等によって切断される。
【0013】
しかしながら、上記従来例では、フレーム部3におけるビーム部6b,7aの近傍に不要な接合用電極100,101が残ってしまう。そして、残った接合用電極100,101が高温時に膨張し、フレーム部3における重り部4,5に挟まれた部位に応力が発生するため、センサチップ1の温度特性が低下する虞がある。また、高温環境下に長時間放置された場合、接合用電極100,101が変形して応力の状態が変化し、応力状態の変化に起因して常温時のセンサチップ1の出力に変動が発生する虞がある。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、接合用電極に起因した不具合の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の半導体物理量センサは、半導体基板からなるセンサチップと、前記センサチップの厚み方向に沿って前記センサチップと接合される板状の固定板とを有し、前記センサチップは、前記固定板との対向面に可動電極が設けられる1乃至複数の重り部と、ビーム部を介して前記重り部を回動軸の回りに回動自在に支持するフレーム部と、前記フレーム部から分離された複数の電極部と、前記各電極部に設けられる圧接電極とを備え、前記固定板は、前記可動電極と対向する複数の固定電極と、一端部で前記複数の固定電極に接続され、他端部が前記圧接電極と圧接される複数の導電パターンとが前記センサチップとの対向面に形成される半導体物理量センサであって、前記固定板は、前記複数の固定電極同士を導通させ且つ前記固定板が前記センサチップと接合された後に切断される1乃至複数の接合用導電パターンが前記センサチップとの対向面に形成され、前記センサチップは、前記接合用導電パターンの端部と圧接される接合用電極が、前記フレーム部において前記電極部よりも前記重り部から離れた位置に設けられることを特徴とする。
【0016】
この半導体物理量センサにおいて、前記フレーム部は、前記固定板と接合される側の面における前記位置に凹部が形成され、前記接合用電極は、前記凹部の底面に成膜される金属膜からなり、熱膨張係数が前記半導体基板と近い材料からなる台座が前記金属膜と前記凹部の底面との間に配設されることが好ましい。
【0017】
この半導体物理量センサにおいて、前記台座は、前記半導体基板と同一の半導体材料で形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の半導体物理量センサは、接合用電極に起因した不具合の発生を抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る半導体加速度センサの実施形態を示す一部省略した平面図である。
【図2】同上における要部の断面図である。
【図3】同上における要部の分解断面図である。
【図4】従来例を示す分解斜視図である。
【図5】同上の一部省略した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、従来技術で説明した半導体加速度センサに本発明の技術思想を適用した実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、本発明の技術思想が適用可能な半導体物理量センサは加速度センサに限定されるものではない。
【0021】
本実施形態の半導体加速度センサは、図1に示すように従来例(図4及び図5参照)とほぼ共通の構成を有しているので、従来例と共通の構成要素には同一の符号を付して適宜図示並びに説明を省略する。
【0022】
本実施形態の半導体加速度センサは、上部固定板2aとセンサチップ1の接合時に可動電極4,5と第1及び第2の固定電極20a,20b、21a,21bを導通させて同電位とするための接合用導電パターン26、27並びに接合用電極28,29の構成が従来例と異なる。
【0023】
第1の接合用導電パターン26は、導電パターン23aと導電パターン23bの最も接近している部分を連結する連結部260と、連結部260の略中央から固定電極20a,20bと反対側に延出される延出部261とを有し、平面視略T字形に形成されている。同様に第2の接合用導電パターン27は、導電パターン24aと導電パターン24bの最も接近している部分を連結する連結部270と、連結部270の略中央から固定電極21a,21bと反対側に延出される延出部271とを有し、平面視略T字形に形成されている。なお、延出部261,271の先端はフレーム部3の端縁近傍まで達している。
【0024】
一方、第1の接合用電極28は、フレーム部3において電極部8a,8bよりも重り部4から離れた位置、具体的には、電極部8a,8bを挟んで重り部4と対向するフレーム部3の端部(図1では下端部)に配設されている。同様に第2の接合用電極29は、フレーム部3において電極部9a,9bよりも重り部5から離れた位置、具体的には、電極部9a,9bを挟んで重り部4と対向するフレーム部3の端部(図1では下端部)に配設されている。
【0025】
フレーム部3における前記端部にはそれぞれ凹部30,31が形成され、各凹部30,31の底面に金属(例えば、アルミ)の膜が成膜されることで第1及び第2の接合用電極28,29が形成されている。
【0026】
従来例で説明したように、第1及び第2の接合用導電パターン26,27が第1及び第2の接合用電極28,29に圧接接続されることで上部固定板2aの第1及び第2の固定電極20a,20b,21a,21bと重り部4を同電位に保つことができる。そして、センサチップ1と上部固定板2aとの接合工程の終了後、不要な第1及び第2の接合用導電パターン26,27がレーザビームの照射等によって切断される。
【0027】
ここで、本実施形態では接合用電極28,29がフレーム部3において電極部8a,…よりも重り部4,5から離れた位置に配設されている。そのため、従来例のように2つの重り部4,5に挟まれた幅細の部位に接合用電極100,101が設けられる場合と比較して、フレーム部3に残った接合用電極28,29の高温時の膨張や高温環境下での長時間放置による変形による不具合の発生が抑制できる。
【0028】
ところで、図2に示すように接合用電極28,29を構成する金属膜と凹部30,31の底面との間に台座32が配設されてもよい。つまり、台座32が配設されることで接合用電極28,29の厚みが小さくなり、熱による接合用電極28,29の総膨張量が減少してフレーム部3の応力が低減できる。なお、台座32は熱膨張係数がセンサチップ1を構成する半導体基板(シリコン)に近い材料、例えば、SiO2又はSiNで形成されることが好ましい。
【0029】
あるいは、図3に示すようにセンサチップ1を構成する半導体基板で台座32が形成されても構わない。
【符号の説明】
【0030】
1 センサチップ
2a 上部固定板(固定板)
3 フレーム部
4 重り部
5 重り部
6a,6b ビーム部
7a,7b ビーム部
8a,8b 電極部
9a,9b 電極部
20a,21a 第1の固定電極(固定電極)
20b,21b 第2の固定電極(固定電極)
23a,23b 導電パターン
24a,24b 導電パターン
26 接合用導電パターン
27 接合用導電パターン
28 接合用電極
29 接合用電極
81a,82a 圧接電極
91a,92a 圧接電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板からなるセンサチップと、前記センサチップの厚み方向に沿って前記センサチップと接合される板状の固定板とを有し、前記センサチップは、前記固定板との対向面に可動電極が設けられる1乃至複数の重り部と、ビーム部を介して前記重り部を回動軸の回りに回動自在に支持するフレーム部と、前記フレーム部から分離された複数の電極部と、前記各電極部に設けられる圧接電極とを備え、前記固定板は、前記可動電極と対向する複数の固定電極と、一端部で前記複数の固定電極に接続され、他端部が前記圧接電極と圧接される複数の導電パターンとが前記センサチップとの対向面に形成される半導体物理量センサであって、前記固定板は、前記複数の固定電極同士を導通させ且つ前記固定板が前記センサチップと接合された後に切断される1乃至複数の接合用導電パターンが前記センサチップとの対向面に形成され、前記センサチップは、前記接合用導電パターンの端部と圧接される接合用電極が、前記フレーム部において前記電極部よりも前記重り部から離れた位置に設けられることを特徴とする半導体物理量センサ。
【請求項2】
前記フレーム部は、前記固定板と接合される側の面における前記位置に凹部が形成され、前記接合用電極は、前記凹部の底面に成膜される金属膜からなり、熱膨張係数が前記半導体基板と近い材料からなる台座が前記金属膜と前記凹部の底面との間に配設されることを特徴とする請求項1記載の半導体物理量センサ。
【請求項3】
前記台座は、前記半導体基板と同一の半導体材料で形成されることを特徴とする請求項2記載の半導体物理量センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−79895(P2013−79895A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220774(P2011−220774)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】