説明

半導体発光素子

【課題】 一対の端子のどちらからでも電流を流し得るように少なくとも2個の発光部が逆並列に接続されて交流で駆動し得る半導体発光素子をとくに高周波成分を有するサージから保護することができるようにした半導体発光素子の具体的構造を提供する。
【解決手段】 一対の電極パッド17a、17bを有する発光素子チップ1が、両端部に一対の電極端子21、22が設けられた絶縁性基板20の中心部に設けられ、その一対の電極端子21、22の少なくとも一方との間の絶縁性基板20に絶縁性のポール31が設けられ、発光素子チップ1の一対の電極パッドの一方と絶縁性のポール31が設けられた側の電極端子21とを接続するがワイヤ23が、ポール31に複数回巻き付けられることによりコイル部3が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板上に複数個の発光部が形成され、直並列に接続されることにより、たとえば100Vの商用交流電源で照明用の電灯や蛍光管の代りに使用し得るような半導体発光素子に関する。さらに詳しくは、半導体により形成される複数個の発光部を直列に接続してその接続端子を100Vなどの商用交流電源などに接続する場合に、高周波成分のサージなどに対しても強い構造の半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、青色系発光ダイオード(LED)の出現により、ディスプレイの光源や信号装置の光源などにLEDが用いられ、さらに電灯や蛍光管の代りにLEDが用いられるようになってきている。この電灯や蛍光管に代ってLEDを用いる場合、100Vの交流駆動でそのまま動作することが好ましく、たとえば図10に示されるように、LEDを直並列に接続し、交流電源71に接続する構成のものが知られている。なお、Sはスイッチを示す(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
一方、白熱電球などの照明灯と逆並列接続された2個のシリコン制御整流器(SCR)とを直列にしてAC電源に接続された調光装置において、SCRがターンオン時に発生する電流サージを吸収するためインダクタを直列に接続する構造は知られている(たとえば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−083701号公報(図3)
【特許文献2】特開平6−29091号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、複数個のLEDを直並列に接続して電灯などの代りにすることにより、省電力化を行うことができる。しかしながら、LEDは元々半導体層の積層により形成されており、サージなどの高電圧が印加されると半導体層のpn接合が破壊されてショート不良やオープン不良などの問題が発生する場合がある。ショート不良が発生すると直列に接続された他のLEDに印加される電圧が大きくなり、他のLEDの寿命を短くする。また、直列に接続されたLEDの1個にオープン不良が発生すると、直列に接続されたLEDの全てを発光させることができなくなる場合がある。とくに街灯や信号機などに用いられると、たとえば低温になった場合など、とくに静電気が発生しやすいと共に、雷による影響も受けやすいという問題がある。とくに、電源障害などに起因する高周波成分を有するサージが印加される場合が多くなっている。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、一対の端子のどちらからでも電流を流し得るように少なくとも2個の発光部が逆並列に接続されて交流で駆動し得る半導体発光素子をとくに高周波成分を有するサージから保護することができるように、インダクタンス素子を内蔵した半導体発光素子の具体的構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による半導体発光素子は、n形層およびp形層の半導体層が発光層形成部を形成するように積層されて少なくとも2個の発光部ユニットが形成されると共に、該少なくとも2個の発光部ユニットが逆方向で並列に接続されて交流駆動し得るように一対の電極パッド間に接続される発光素子チップと、該発光素子チップの一対の電極パッドと電気的に接続され、かつ、外部電源と接続し得る一対の電極端子またはリードを有し、前記発光素子チップをマウントするパッケージとを具備する半導体発光素子であって、前記一対の電極端子またはリードの少なくとも一方と前記発光素子チップの一対の電極パッドの少なくとも一方との間にサージパルスを吸収するインダクタンス素子が接続されている。
【0007】
なお、発光部ユニットは、たとえば100Vなどの商用交流電源で駆動できるように、100V近くの駆動電圧になるように直列に接続したものを逆並列(pn接合が逆方向の並列)に接続してもよいし、2個逆並列接続された組を直列に接続して100Vなどの商用交流電源で駆動できるように直列に接続されてもよいし、これらの組をさらに並列に接続されて100Vなどの商用交流電源に接続されてもよいし、100Vではなく低い電圧、または高い電圧の交流電源で駆動するように接続されてもよい。
【0008】
具体的には、前記パッケージが、両端部に前記一対の電極端子が設けられた絶縁性基板の中心部に前記発光素子チップが設けられると共に、該発光素子チップおよび該発光素子チップと前記一対の電極端子とを電気的に接続する部分が透光性樹脂部により被覆されるチップタイプに形成され、前記発光素子チップと前記一対の電極端子の少なくとも一方との間の前記絶縁性基板に絶縁性のポールが設けられ、前記発光素子チップの一対の電極パッドの一方と前記絶縁性のポールが設けられた側の電極端子とを接続するワイヤが、前記ポールに複数回巻き付けられることにより形成されるコイル部を経由して接続されることにより、高周波のサージパルスが入力しても保護されるチップ型の半導体発光素子が得られる。
【0009】
前記絶縁性のポールが、前記絶縁性基板に形成された凹部内に挿入して接着剤で固着されることにより、小さな絶縁性基板にも、確実に絶縁性のポールを立てることができる。
【0010】
前記透光性樹脂部の外周の少なくとも一部に光反射壁が形成されることにより、所望の指向性を有する半導体発光素子とすることができる。
【0011】
本発明による半導体発光素子は、また、前記パッケージが、一対のリードの一方の先端部に形成された湾曲状の凹部内に前記発光素子チップがマウントされ、該一対のリードと前記発光素子チップの一対の電極パッドとが電気的に接続されてその周囲が透光性樹脂部により被覆されるランプタイプにより形成され、前記一対のリードの他方の先端部に絶縁性のポールが取り付けられ、前記発光素子チップの一対の電極パッドの一方と前記一対のリードの他方とを接続するがワイヤが、前記ポールに複数回巻き付けられることにより形成されるコイル部を経由して接続される構造にすることにより、高周波のサージパルスが入力しても保護されるランプタイプの半導体発光素子が得られる。
【0012】
前記透光性樹脂部から延出する一対のリードの少なくとも一方に、前記透光性樹脂部の外周に巻き付けられることにより形成される第2のコイル部が接続されることにより、さらにサージパルスを吸収することができる。
【0013】
ランプタイプの半導体発光素子の具体的構造としては、また、前記パッケージが、一対のリードの一方の先端部に形成された湾曲状の凹部内に前記発光素子チップがマウントされ、該一対のリードと前記発光素子チップの一対の電極パッドとが電気的に接続されてその周囲が透光性樹脂部により被覆されるランプタイプにより形成され、前記透光性樹脂部から延出する一対のリードの少なくとも一方に、前記透光性樹脂部の外周に巻き付けられることにより形成されるコイル部が接続される構造にすることができる。
【0014】
前記絶縁性のポール内に鉄心が設けられていることにより、より高周波成分のサージを吸収しながら、駆動用の直流電流を殆ど減衰させることがないため好ましい。
【0015】
前記発光素子チップが窒化物半導体により青色光または紫外光を発光するように形成され、該発光素子チップの発光面側に該発光素子チップが発光する光を白色光に変換する発光色変換部材が塗布されていることにより、白色光を発光させることができ、電灯や各種照明装置の代りに使用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発光素子チップがチップ型やランプ型などのパッケージに組み込まれる際に、そのパッケージ内の空間を有効に利用することにより、インダクタンス素子が設けられているため、半導体発光素子を大形化することなく、高周波成分を有するサージパルスを吸収することができる。その結果、電灯や各種照明装置や信号灯など室外で使用する場合で、パルスのようなサージが入りやすい場合でも、サージで破壊しやすい半導体のpn接合を有効に保護することができ、信頼性の高い照明装置などとして使用することができる。一方、本発明によるインダクタンス素子は、コイルに形成されているため、高周波成分に対しては大きなインピーダンスになるが、発光素子駆動用の直流電源に対して(交流電源を使用しても、一方のpn接合に対しては半波の一方向の電圧で直流的に作用する)は殆どインピーダンスの上昇にはならず、影響を及ぼさない。その結果、従来と同様に動作させながら、高周波成分のサージに対して保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
つぎに、図面を参照しながら本発明の半導体発光素子について説明をする。本発明による半導体発光素子は、図1にその一実施形態のチップ型発光素子の断面説明図が示されるように、n形層およびp形層の半導体層が発光層形成部を形成するように積層されて少なくとも2個の発光部ユニットが形成されると共に、その少なくとも2個の発光部ユニットが逆方向で並列に接続されて交流駆動し得るように一対の電極パッド17a、17b間に接続される発光素子チップ1が、両端部に一対の電極端子21、22が設けられた絶縁性基板20の中心部近傍に設けられると共に、その発光素子チップ1および発光素子チップ1と一対の電極端子21、22とを電気的に接続する部分が透光性樹脂部26により被覆されて正面側に光を放射するようになっている。本発明では、この発光素子チップ1と一対の電極端子21、22の少なくとも一方との間の絶縁性基板20に絶縁性のポール31が設けられ、発光素子チップ1の一対の電極パッドの一方と絶縁性のポール31が設けられた側の電極端子21とを接続するがワイヤ23が、ポール31に複数回巻き付けられることにより形成されるコイル部3(インダクタンス素子)を経由して接続されることにより、高周波のサージパルスが入力しても保護される構造になっている。なお、インダクタンス素子としては、コイル部でなくても、インダクタとして製造されるチップ素子を用いることもできる。
【0018】
すなわち、図1に示される例は、チップ型の絶縁性基板20の表面に発光素子チップ1がマウントされ、その発光素子1およびワイヤボンディング部などの周囲が透光性樹脂部26により被覆される構造でパッケージが形成された例である。そして、この図1に示される例では、絶縁性基板20の発光素子チップ1と少なくとも一方の電極端子21との間の絶縁性基板20の表面に凹部20aが形成され、その凹部20a内に、たとえば2〜3mmφ程度の太さで、5mm程度の長さのセラミックスなどからなる絶縁性のポール31が接着剤32などにより固着されている。そして、発光素子チップ1の一方の電極パッド17aと第1の電極端子21とを接続する金線23をポール31に螺旋状に巻き付けることにより、コイル部(インダクタンス素子)3が形成されている。このようなポール31に、たとえば金線などの通常用いられるワイヤボンディング用のワイヤまたはそれより太いワイヤなど、直径が0.01〜0.1mmφ程度の太さのワイヤを、たとえば5ターン程度巻き付けることにより、0.2nH程度のインダクタンスとなり、500MHz程度の高周波に対して、10Ω程度のインピーダンスとして寄与し、充分に高周波成分のサージを吸収することができる。このような細いワイヤをポール31に巻きつけるには、予めポール31の外表面に螺旋状の溝を形成しておくことにより、その溝内にワイヤを入れ込めばよいため、短絡させることなく簡単に巻き付けることができる。
【0019】
前述の例では、絶縁性のポール31にワイヤを巻き付けたが、絶縁性のポールをパイプ上に形成し、そのパイプ内に鉄などの透磁率の大きい材料を鉄心として挿入することにより、インダクタンスを大きくすることができ、さらに高周波成分のサージを減衰させる特性を向上させることができる。たとえば前述のポール31として、3mmφ程度の外径で、内径を2mmφ程度とし、1.8mmφ程度の太さの鉄心を挿入することにより、前述の高周波に対してインピーダンスが1000倍程度に上昇し、同じスペースでより一層の高周波成分を有するサージを吸収することができる。また、同程度のインダクタンスを得るにはワイヤの巻き数を減らすことができ、前述のワイヤの巻き数も少なくとも2ターン以上あれば効果がある。
【0020】
また、前述の例では、絶縁性基板20に立てた絶縁性のポール31に直接ワイヤボンディング用のワイヤ23を巻き付けたが、たとえば図2に変形例の平面説明図が示されるように、電極端子21、22と同様に銀ペーストなどにより中継用電極25を予め形成しておき、絶縁性のポール31にワイヤを巻き付けたコイル部3を形成しておき、そのコイル部3の一端部を中継用電極25と接続し、他端部を第1の電極端子21と接続しておいて、発光素子チップ1の電極パッド17aと中継用電極25とをワイヤ23により接続してもよい。このような構造にすることにより、コイル部3の形成が容易になる。なお、絶縁性のポール31に巻きつけたワイヤは、接着剤などにより固定することにより、電極端子21などとの接続も容易になる。
【0021】
発光素子チップ1は、たとえば図3に一部の断面説明図が、図4に発光部ユニット10の配置例の平面説明図がそれぞれ示されるように、窒化物半導体を用いた青色光または紫外光の発光で、たとえばYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)蛍光体やSr-Zn-La蛍光体などからなる発光色変換部材が設けられることにより、白色光を発光する発光素子にすることができ、しかも交流の100V電源で動作し得るように複数個直列に接続され、かつ、2個づつ逆並列に接続されている。しかし、このような構成には限定されず、たとえば赤、緑、青の3原色の発光部を形成して白色光になるようにすることもできるし、必ずしも白色光にする必要はなく、所望の発光色の発光部に形成することができるし、また、100Vで動作するようにする必要もない。
【0022】
ここに窒化物半導体とは、III 族元素のGaとV族元素のNとの化合物またはIII 族元素のGaの一部または全部がAl、Inなどの他のIII 族元素と置換したものおよび/またはV族元素のNの一部がP、Asなどの他のV族元素と置換した化合物(窒化物)からなる半導体をいう。
【0023】
すなわち、図3〜4に示される例では、一対の電極パッド17a17b間に、各発光部ユニット10のpn接合が逆方向に接続(1つの発光部ユニットのp側電極14aと他の発光部ユニットのn側電極14bとが接続)された組が、たとえば100Vを印加することができるように直列に接続されている。たとえば2個1組で24組、合計48個の発光部ユニット10が形成され、発光素子チップ1の1個の大きさは、たとえば1.5mm×1.5mm程度の大きさに形成されている。なお、直列に接続される複数個の発光部ユニット10の動作電圧の合計が丁度100Vなどの商用交流電源電圧にならない場合には、抵抗またはキャパシタが直列に接続されて調整される。また、必要な明るさに合せて、この組をさらに並列に形成することもできる。さらに、逆並列に接続した組を直列に接続するのではなく、たとえば前述の例で、24個づつ直列に接続したものを逆並列に電極パッド17a、17b間に接続することもできる。しかし、前述のように、100V動作には限定されないし、白色発光にも限定されない。
【0024】
基板11としては、窒化物半導体を積層するには、サファイア(Al23単結晶)またはSiCが一般的には用いられるが、これらに限定されるものではなく、SiやGaAsなどの半導体基板が、積層される半導体層に応じて格子定数や熱膨張係数などの観点から選ばれることもある。図3に示される例では、サファイア(Al23単結晶)が用いられている。
【0025】
サファイア基板11上に積層される半導体積層部12は、たとえばGaNからなる低温バッファ層12aが0.005〜0.1μm程度、ついでアンドープのGaNからなる高温バッファ層12bが1〜3μm程度、その上にSiをドープしたn形GaNからなるコンタクト層およびn形AlGaN系化合物半導体層からなる障壁層(バンドギャップエネルギーの大きい層)などにより形成されるn形層12cが1〜5μm程度、バンドギャップエネルギーが障壁層のそれよりも小さくなる材料、たとえば1〜3nmのIn0.13Ga0.87Nからなるウェル層と10〜20nmのGaNからなるバリア層とが3〜8ペア積層される多重量子井戸 (MQW)構造の活性層12dが0.05〜0.3μm程度、p形のAlGaN系化合物半導体層からなるp形障壁層(バンドギャップエネルギーの大きい層)とp形GaNからなるコンタクト層とによるp形層12eが合せて0.2〜1μm程度、それぞれ順次積層されることにより形成されている。
【0026】
図3に示される例では、アンドープで、半絶縁性のGaNからなる高温バッファ層12bが形成されている。基板がサファイアのような絶縁性基板からなる場合には、必ずしも半絶縁になっていなくても基板まで後述する分離溝を形成すれば支障はないが、アンドープにした方が積層する半導体層の結晶性が良くなるため、さらには、半絶縁性半導体層が設けられていることにより、各発光部に電気的分離する際に、基板表面までを完全にエッチングしなくても、電気的に分離することができるため好ましい。基板11がSiCのような半導体基板からなる場合には、隣接する発光部間を電気的に分離させるため、アンドープで半絶縁性の高温バッファ層12bが形成されることが各発光部を独立させるために必要となる。
【0027】
また、n形層12cおよびp形層12eは、障壁層とコンタクト層の2種類で構成する例であったが、キャリアの閉じ込め効果の点から活性層12d側にAlを含む層が設けられることが好ましいものの、GaN層だけでもよい。また、これらを他の窒化物半導体層で形成することもできるし、他の半導体層がさらに介在されてもよい。さらに、この例では、n形層12cとp形層12eとで活性層12dが挟持されたダブルヘテロ接合構造であるが、n形層とp形層とが直接接合するpn接合構造のものでもよい。また、活性層12d上に直接p形AlGaN系化合物層を成長したが、数nm程度のアンドープAlGaN系化合物層を成長することにより、活性層12dの下側にピット発生層を形成して活性層12dにできたピットを埋め込みながら、p形層とn形層との接触によるリークを防止することもできる。
【0028】
半導体積層部12上には、たとえばZnOなどからなり、p形半導体層12eとオーミックコンタクトをとることができる透光性導電層13が0.01〜0.5μm程度設けられている。この透光性導電層13は、ZnOに限定されるものではなく、ITOやNiとAuとの2〜100nm程度の薄い合金層でも、光を透過させながら、電流をチップ全体に拡散することができる。この半導体積層部12の一部がエッチングにより除去されてn形層12cが露出され、さらにそのn形層12cの露出部の近傍で間隔dだけ離間してエッチングにより分離溝12fが形成されている。この離間する部分は発光領域(長さL1の部分)としては寄与せずダミー領域12gとなり、熱放散部、配線などの形成スペースなどとすることができ、目的に応じて間隔dは1〜50μm程度の範囲内で設定される。この分離溝12fは、ドライエッチングなどにより形成されるが、電気的に分離できる範囲で、できるだけ狭い幅wで形成され、0.6〜5μm程度、たとえば1μm程度(深さは5μm程度)に形成される。
【0029】
そして、透光性導電層13上の一部に、TiとAuとの積層構造により、p側電極14aが形成され、半導体積層部12の一部がエッチングにより除去されて露出するn形層12cにオーミックコンタクト用のn側電極14bが、Ti-Al合金などにより形成されている。図3に示される例では、このn側電極14bが、0.4〜0.6μm程度の厚さに形成され、p側電極14aとほぼ同程度の高さになるように形成されている。そして、このp側電極14aおよびn側電極14bの表面が露出するように半導体積層部12の露出する表面および分離溝12f内に、たとえばSiO2などからなる絶縁膜15が設けられている。その結果、分離溝12fで区切られた発光部ユニット10が基板11上に複数個形成されている。その絶縁膜15の表面で、1個の発光部ユニット10aのn側電極14bとその発光部ユニット10aと隣接する発光部ユニット10bのp側電極14aとが配線膜16により接続されている。この配線膜16は、AuまたはAlなどの金属膜を真空蒸着またはスパッタリングなどにより0.3〜1μm程度の厚さに形成されている。この配線膜16は、たとえば図4または図5の等価回路図に示されるように、一対の電極パッド17a、17b間に各発光部ユニット10が直列または並列の所望の接続になるように形成される。
【0030】
絶縁性基板21は、前述の1.5mm×1.5mm程度の大きさの発光素子チップ1を用いる場合、たとえば縦×横×厚さが7mm×7mm×1〜2mm程度のものを使用することができ、材料としては、できるだけ熱伝導や耐熱性の良好なアルミナや窒化アルミナなどのセラミックスが好ましいが、発光素子チップ1の発光出力がそれほど大きくない場合には、通常のガラスエポキシ樹脂やガラスクロスに耐熱性のBT樹脂を含浸させたBTレジンなどを用いることもできる。しかし、白色の方が光を反射しやすく、照度を上げやすいという点から好ましい。絶縁性基板21の大きさも、発光素子チップの大きさや発光素子の目的などに応じて自由に選定することができる。この両端部には、第1および第2の電極端子21、22が形成されているが、この電極端子21、22は、大きな基板の状態で、スクリーン印刷などにより銀ペーストが塗布され、乾燥させることにより表面および裏面ならびにスルーホールを介して側面に形成されている。このような電極端子に形成されれば、絶縁性基板21の裏面で直接固着させながら電極を接続することができるため、便利であるが、このような構造には限定されず、チップ型であっても、リードを両側に延出させる構造にすることもできる。
【0031】
この絶縁性基板21の表面に、前述の発光素子チップ1が接着剤などによりボンディングされ、発光素子チップ1の一対の電極パッド17a、17bがワイヤ23、24をボンディングすることなどにより第1および第2の電極端子21、22と接続されている。なお、発光素子チップ1の一方の電極パッド(発光素子チップの電極)が基板裏面に設けられている場合には、たとえば第2の電極端子22上に直接導電性接着剤などによりボンディングすることができる。この第1の電極端子21との接続の際に、前述のように、ポール31にワイヤ23を巻き付けてその先を第1の電極端子21にボンディングするか、予めコイル部3の一端部が接続された中継電極25にワイヤボンディングすることにより、一対の電極端子21、22の間に発光素子チップ1とインダクタンス素子3とを直列に接続することができる。
【0032】
図1には図示されていないが、発光素子チップ1が青色光または紫外光を発光し、白色光の発光素子にする場合には、YAGなどの発光色変換部材を混入した樹脂が発光素子チップ1の周囲を被覆するように設けられる。そして、その周りのワイヤボンディング部分の全体を覆うように、エポキシ樹脂などからなる透光性樹脂部26がモールド成形などにより形成される。しかし、発光素子チップ1の発光色をそのまま使用する場合には、発光色変換部材を混入した樹脂を用いる必要はない。なお、これらの組立ては、大きな絶縁性基板にマトリクス状に多数固形成し、透光性樹脂部26が形成された後に、大きな基板を切断することにより個々の発光素子が形成される。
【0033】
図1に示される例では、発光素子チップ1の周囲を透光性樹脂部26のみで被覆する構造で、光は正面側が強いものの平面内のほぼ全面に放射される。しかし、中心部に照射する光が集中するように指向性をもたせるためには、たとえば図6に示されるように、透光性樹脂層26の周囲に反射壁27を形成する構造にすることもできる。発光素子チップ1およびコイル部(インダクタンス素子)3の部分の構造は図1に示される例と同じで、同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0034】
図7は、ランプタイプの半導体発光素子に本発明を適用する具体的な構造例を示す図である。すなわち、リードフレームなどにより形成された第1および第2のリード41、42の一方の第1のリード41に前述と同様の絶縁性のポール31が接着剤などにより固着され、第2のリード42の先端部に湾曲状凹部42aが形成され、その凹部42a内に前述の発光素子チップ1がダイボンディングされている。そして、その第1の電極パッド17aにワイヤ43の一端部がボンディングされ、その他端部はポール31の螺旋状の溝内に巻き付けてコイル部3を形成しながら第1のリード41の先端部にボンディングされている。その結果、発光素子チップ1の一方の電極パッド17aと第1のリード41との間にコイル部(インダクタンス素子)3が直列に接続される構造になっている。そして、その周囲がエポキシ樹脂などによりモールド成形されることにより、透光性樹脂部46が形成され、従来のランプ型発光素子と同様の構造になっている。もちろん、発光素子チップ1が青色光または紫外光を発光する素子で、白色光にする場合には、発光素子チップ1の周囲に発光色変換部材を混入した樹脂が塗布される。この構造にすることにより、高周波成分を有するサージを吸収することができる交流電源駆動の発光素子で、正面側に強い指向性を有する半導体発光素子が得られる。
【0035】
図8は、ランプタイプの半導体発光素子に本発明を適用した具体的な構造のさらに他の実施形態を示す図である。すなわち、この例では、発光素子チップ1が第2のリード先端部に形成された湾曲状凹部内にボンディングされ、その一対の電極パッド17a、17bがそれぞれワイヤ43、44によりボンディングされている構造は、従来のランプタイプの発光素子と同様である。なお、電極パッドのリードとの接続はワイヤボンディングに限定されるものではなく、発光素子チップ1の裏面に電極パッド(チップの電極)が形成されている場合には、導電性接着剤により直接リードと接続することができることは、前述の各実施例と同様である。図8に示される実施形態では、透光性樹脂部46から導出される第1および第2のリードの少なくとも一方にワイヤ33が接続され、そのワイヤ33が透光性樹脂部46の光が殆ど放射されない下部領域に巻き付けられることによりコイル部3が形成され、第1のリード41の端部と付属第1リード41aとに接続することにより、第1のリード43の間にコイル部3が接続されている。なお、第1のリード41の端部と付属第1リード41aとはたとえば絶縁部材41bに固着されている。しかし、付属第1リード41aを設けないで、コイル部3の端部を直接第1リードとして使用することもできる。また、透光性樹脂部46に巻き付けたワイヤ33の透光性樹脂部46における端部または全体を接着剤38などにより固定することにより、第1のリード41や付属第1リード41aとの接続が容易になる。
【0036】
前述の各例では、発光素子チップ1の電極パッドと外部接続用の電極端子またはリードとの間にインダクタンス素子を直列に接続する構造であったが、発光素子チップ1内で、たとえば電極パッドの周囲に配線を複数ターン形成することにより、コイル部3を形成することもできる。その例が図9に示されている。図9(a)において、たとえば電極パッド17a、17bが100μm程度の直径dで形成され、その周囲に20μm程度の間隔aを空けて、20μm程度の幅bの配線34、35をそれぞれ同心状に5ターン(図では2ターンのみ)ほど形成することにより、500μmの直径でコイル部3と電極パッド17aとを形成することができる。なお、この配線などは、図4に示される配線16の形成と同時に形成され、図9(b)に一部の断面説明図が示されるように、その表面はSiO2などの絶縁膜36で保護される。
【0037】
以上のように、本発明によれば、発光素子チップと電極端子またはリードとの間にインダクタンス素子3が形成されているため、高周波成分を有するサージが入ってきても、発光部ユニットを保護することができる。その結果、照明装置や街灯、信号機など屋外で使用する場合でも、非常に信頼性の高い発光素子とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による半導体発光素子の一実施形態の断面説明図である。
【図2】図1の変形例を示す平面説明図である。
【図3】図1の発光素子チップの一例を示す一部の断面説明図である。
【図4】図1の発光素子チップのユニット配置例を示す平面の説明図である。
【図5】図1の発光部ユニットの接続例を示す等価回路図である。
【図6】図1の半導体発光素子の変形例を示す図1と同様の断面説明図である。
【図7】本発明による半導体発光素子の他の実施形態を示す説明図である。
【図8】本発明による半導体発光素子のさらに他の実施形態を示す説明図である。
【図9】本発明による半導体発光素子のさらに他の実施形態を示す説明図である。
【図10】従来のLEDを用いて交流電源に接続する例の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 発光素子チップ
3 コイル部(インダクタンス素子)
10 発光部ユニット
17a、17b 電極パッド
21 第1の電極端子
22 第2の電極端子
23、24 ワイヤ
31 ポール
33 ワイヤ
41 第1のリード
42 第2のリード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n形層およびp形層の半導体層が発光層形成部を形成するように積層されて少なくとも2個の発光部ユニットが形成されると共に、該少なくとも2個の発光部ユニットが逆方向で並列に接続されて交流駆動し得るように一対の電極パッド間に接続される発光素子チップと、該発光素子チップの一対の電極パッドと電気的に接続され、かつ、外部電源と接続し得る一対の電極端子またはリードを有し、前記発光素子チップをマウントするパッケージとを具備する半導体発光素子であって、前記一対の電極端子またはリードの少なくとも一方と前記発光素子チップの一対の電極パッドの少なくとも一方との間にサージパルスを吸収するインダクタンス素子が接続されてなる半導体発光素子。
【請求項2】
前記パッケージが、両端部に前記一対の電極端子が設けられた絶縁性基板の中心部に前記発光素子チップが設けられると共に、該発光素子チップおよび該発光素子チップと前記一対の電極端子とを電気的に接続する部分が透光性樹脂部により被覆されるチップタイプに形成され、前記発光素子チップと前記一対の電極端子の少なくとも一方との間の前記絶縁性基板に絶縁性のポールが設けられ、前記発光素子チップの一対の電極パッドの一方と前記絶縁性のポールが設けられた側の電極端子とを接続するワイヤが、前記ポールに複数回巻き付けられることにより形成されるコイル部を経由して接続されてなる請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記絶縁性のポールが、前記絶縁性基板に形成された凹部内に挿入して接着剤で固着されてなる請求項1または2記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記透光性樹脂部の外周の少なくとも一部に光反射壁が形成されてなる請求項1ないし3のいずれか1記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記パッケージが、一対のリードの一方の先端部に形成された湾曲状の凹部内に前記発光素子チップがマウントされ、該一対のリードと前記発光素子チップの一対の電極パッドとが電気的に接続されてその周囲が透光性樹脂部により被覆されるランプタイプにより形成され、前記一対のリードの他方の先端部に絶縁性のポールが取り付けられ、前記発光素子チップの一対の電極パッドの一方と前記一対のリードの他方とを接続するワイヤが、前記ポールに複数回巻き付けられることにより形成されるコイル部を経由して接続されてなる請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記透光性樹脂部から延出する一対のリードの少なくとも一方に、前記透光性樹脂部の外周に巻き付けられることにより形成される第2のコイル部が接続されてなる請求項5記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記パッケージが、一対のリードの一方の先端部に形成された湾曲状の凹部内に前記発光素子チップがマウントされ、該一対のリードと前記発光素子チップの一対の電極パッドとが電気的に接続されてその周囲が透光性樹脂部により被覆されるランプタイプにより形成され、前記透光性樹脂部から延出する一対のリードの少なくとも一方に、前記透光性樹脂部の外周に巻き付けられることにより形成されるコイル部が接続されてなる請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記絶縁性のポール内に鉄心が設けられてなる請求項2ないし6のいずれか1項記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記発光素子チップが窒化物半導体により青色光または紫外光を発光するように形成され、該発光素子チップの発光面側に該発光素子チップが発光する光を白色光に変換する発光色変換部材が塗布されてなる請求項1ないし8のいずれか1項記載の半導体発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−157895(P2007−157895A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349055(P2005−349055)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】