説明

半導体発光素子

【課題】反射膜材が基板の側面へ付着するのを防止した半導体発光素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体発光素子10では、基板11は対向する第1および第2の面11a、11bと、第1の面11aから第2の面11b側に向かって略垂直に延在する第1の領域11c1と第1の領域11c1から第2の面11b側に向かって末広がり状に傾斜した第2の領域11c2を有する側面11cを備えている。第1導電型の第1半導体層と、活性層と、第2導電型の第2半導体層が順に積層された半導体積層体12が基板11の第1の面11aに形成されている。反射膜15が基板11の第2の面11bに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窒化物半導体発光素子には、サファイア基板の裏面に反射膜を形成し、発光層からサファイア基板側に放射された光を窒化物半導体層側に反射させ、光取り出し効率を向上させるように構成されているものがある。
【0003】
この種の窒化物半導体発光素子は、以下のようにして製造されていた。まず、サファイア基板上に窒化物半導体層を形成する。次に、窒化物半導体層が形成されたサファイア基板を粘着性シートに貼り付け、ブレード等によりダイシングして直方体状のチップに分割する。
【0004】
次に、粘着性シートを引き伸ばしてりチップに分割されたサファイア基板を別のシートに転写した後、スパッタリング法等によりサファイア基板の裏面に反射膜を形成する。
【0005】
然しながら、反射膜を形成する際に、スパッタされた反射膜材がサファイア基板の側面に回り込み、側面の一部に反射膜が形成されてしまう問題がある。
【0006】
その結果、サファイア基板の側面からの光取り出し効率が低下するという問題がある。製造歩留まりの低下、製造コストの上昇を招き、半導体発光素子の安定した製造が困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−102549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、反射膜材が基板の側面へ付着するのを防止した半導体発光素子およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの実施形態によれば、半導体発光素子では、基板は対向する第1および第2の面と、前記第1の面から前記第2の面側に向かって略垂直に延在する第1の領域と前記第1の領域から前記第2の面側に向かって末広がり状に傾斜した第2の領域を有する側面を備えている。第1導電型の第1半導体層と、活性層と、第2導電型の第2半導体層が順に積層された半導体積層体が、前記基板の前記第1の面に形成されている。反射膜が、前記基板の前記第2の面に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1に係る半導体発光素子を示す断面図。
【図2】実施例1に係る半導体発光素子の製造工程を順に示す断面図。
【図3】実施例1に係る比較例の半導体発光素子を示す断面図。
【図4】実施例1に係る比較例の半導体発光素子の製造工程を順に示す断面図。
【図5】実施例2に係る半導体発光素子を示す断面図。
【図6】実施例2に係る半導体発光素子の製造工程を順に示す断面図。
【図7】実施例2に係る比較例の半導体発光素子を示す断面図。
【図8】実施例2に係る別の比較例の半導体発光素子を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0012】
本実施例に係る半導体発光素子について図1を用いて説明する。本実施例の半導体発光素子は窒化物半導体発光素子である。図1は窒化物半導体発光素子を示す図で、図1(a)はその側面図、図1(b)は図1(a)の要部を示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施例の半導体発光素子10では、基板11、例えば面方位がC面のサファイア基板は対向する第1および第2の面11a、11bと、第1および第2の面11a、11bに略直交する4つの側面11cを有している。半導体発光素子10のサイズは、例えば250μm×250μm角で厚さが約100乃至150μmである。
【0014】
側面11cは、第1の面11aから第2の面11b側に向かって略垂直に延在する第1の領域11c1と、第1の領域11c1から第2の面11b側に向かって末広がり状に傾斜した第2の側面11c2を有している。
【0015】
基板11の第1の面11aには、N型(第1導電型)の第1窒化物半導体層と、窒化物活性層と、P型(第2導電型)の第2窒化物半導体層が順に積層された半導体積層体12が形成されている。
【0016】
第1窒化物半導体層は、例えばN型GaN層21とN型GaNクラッド層22を含み、窒化物活性層は、例えばMQW層23を含み、第2窒化物半導体層は、例えばP型GaNクラッド層24とP型GaNコンタクト層25を含んでいる。
【0017】
半導体積層体12上には、電流を広げるとともにP型GaNコンタクト層25側から取り出される光が電極材で遮られるのを防止するために透明導電膜26が形成されている。透明導電膜26の一部に第1電極(P側電極)13、例えばアルミニウム(Al)膜が形成されている。
【0018】
半導体積層体12の一部が除去され、露出したN型GaN層21上に第2電極(N側電極)14、例えばチタン(Ti)/白金(Pt)/金(Au)の積層膜が形成されている。
【0019】
第1電極13および第2電極14はサファイア基板11の対角線に沿って対向するように形成されている。
【0020】
基板11の第2の面11bには、MQW層23から基板11側に放射された光を半導体積層体12側に反射させるための反射膜15、例えば厚さ約200nmの銀(Ag)膜が形成されている。
【0021】
MQW層23から基板11側に放射され、反射膜15で半導体積層体12側に反射された光のうち、光16は側面11cの第1領域11c1に入射し外部に取り出され、光17は側面11cの第2領域11c2に入射し外部に取り出される。
【0022】
半導体積層体12については周知であるが、以下簡単に説明する。N型GaN層21は、N型クラッド層22乃至P型GaNコンタクト層25までを成長させるための下地単結晶層であり、例えば約3μmと厚く形成されている。N型GaNクラッド層22は、例えば厚さ2μm程度に形成されている。
【0023】
MQW層23は、例えば厚さが5nmのGaN障壁層と厚さが2.5nmのInGaN井戸層とが交互に積層され、最上層がInGaN井戸層である多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造に形成されている。
【0024】
P型GaNクラッド層24は、例えば厚さ100nm程度に形成され、P型GaNコンタクト層25は、例えば厚さ10nm程度に形成されている。
【0025】
InGaN井戸層(InGa1−xN層、0<x<1)のIn組成比xは、窒化物半導体層11から取り出される光のピーク波長が、例えば約450nmになるように0.1程度に設定されている。
【0026】
上述した半導体発光素子10は、基板11の側面11cの下部を庇のように突出させて、反射膜15を形成する際に基板11の側面11cに反射膜15が付着するのを防止するように構成されている。従って、側面11cからの光の取り出し効率が低下するのを防止することが可能である。
【0027】
次に半導体発光素子10の製造方法について、図2を用いて説明する。図2は半導体発光素子10の製造工程を順に示す断面図である。
【0028】
始に、サファイア基板30上にMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により、第1導電型の第1半導体層と、活性層と、第2導電型の第2半導体層が順に積層された半導体積層体31を形成する。
【0029】
半導体積層体31の形成方法は周知であるが、以下簡単に説明する。例えば直径150mmで、面方位がC面のサファイア基板に前処理として、例えば有機洗浄、酸洗浄を施した後、MOCVD装置の反応室内に収納する。
【0030】
次に、例えば窒素(N)ガスと水素(H)ガスの常圧混合ガス雰囲気中で、高周波加熱により、サファイア基板の温度を、例えば1100℃まで昇温する。これにより、サファイア基板の表面が気相エッチングされ、表面に形成されている自然酸化膜が除去される。
【0031】
次に、NガスとHガスの混合ガスをキャリアガスとし、プロセスガスとして、例えばアンモニア(NH)ガスとトリメチルガリウム(TMG:Tri-Methyl Gallium)を供給し、N型ドーパントとして、例えばシラン(SiH)ガスを供給し、厚さ3μmのN型GaN層21を形成する。
【0032】
次に、同様にして厚さ2μmのN型GaNクラッド層22を形成した後、NHガスは供給し続けながらTMGおよびSiHガスの供給を停止し、サファイア基板の温度を1100℃より低い温度、例えば800℃まで降温し、800℃で保持する。
【0033】
次に、Nガスをキャリアガスとし、プロセスガスとして、例えばNHガスおよびTMGを供給し、厚さ5nmのGaN障壁層を形成し、この中にトリメチルインジウム(TMI:Tri-Methyl Indium)を供給することにより、厚さ2.5nm、In組成比が0.1のInGaN井戸層を形成する。
【0034】
次に、TMIの供給を断続することにより、GaN障壁層とInGaN井戸層の形成を、例えば7回繰返す。これにより、MQW層23が得られる。
【0035】
次に、TMG、NHガスは供給し続けながらTMIの供給を停止し、アンドープで厚さ5nmのGaNキャップ層を形成する。
【0036】
次に、NHガスは供給し続けながらTMG、TMAの供給を停止し、Nガス雰囲気中で、サファイア基板の温度を800℃より高い温度、例えば1030℃まで昇温し、1030℃で保持する。
【0037】
次に、NガスとHガスの混合ガスをキャリアガスとし、プロセスガスとしてNHガスおよびTMG、P型ドーパントとしてビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)を供給し、Mg濃度が1E20cm−3、厚さが100nm程度のP型GaNクラッド層24を形成する。
【0038】
次に、CpMgの供給を増やして、Mg濃度が1E21cm−3、厚さ10nm程度のP型GaNコンタクト層25を形成する。
【0039】
次に、NHガスは供給し続けながらTMGの供給を停止し、キャリアガスのみ引き続き供給し、サファイア基板を自然降温する。NHガスの供給は、サファイア基板の温度が500℃に達するまで継続する。
【0040】
これにより、サファイア基板30上に半導体積層体31が形成され、P型GaNコンタクト層25が表面になる。
【0041】
次に、P型GaNコンタクト層25上に透明導電膜26(図示せず)として、例えばスパッタリング法によりITO(Indium Tin Oxide)膜を形成する。
【0042】
次に、図2(b)に示すように、透明導電膜26が形成された半導体積層体31をパターニングして格子状にダイシングライン32を形成する。半導体積層体31は、ダイシングライン32に囲まれた個々の半導体積層体12に区分される。
【0043】
次に、透明導電膜26の一部を、例えば硝酸と塩酸の混酸を用いたウエットエッチングにより除去し、半導体積層体12の一部を露出させる。
【0044】
次に、露出した半導体積層体12の一部を、例えば塩素系ガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)法により異方性エッチングし、N型GaN層21を露出させる。
【0045】
次に、残った透明導電膜26の一部上に第1電極13(図示せず)を形成し、露出したN型GaN層21上に第2電極14(図示せず)を形成する。
【0046】
この段階で、サファイア基板30上に格子状に配列された複数の窒化物半導体発光素子が得られる。
【0047】
次に、図2(c)に示すように、粘着性を有するダイシングシート33にサファイア基板30を貼り付けた後、先端部が順テーパ状に傾斜した、所謂V字状のブレード34を用いて、サファイア基板30をダイシングライン32に沿って切断する。
【0048】
このとき、ダイシングはダイシングシート33まで深く切り込まず(フルカットせず)、ブレード34の先端がダイシングシート33に触れるか触れないか程度に留めることが適当である。
【0049】
これにより、ダイシングされたサファイア基板30が基板11となる。ブレード34の側面に倣って基板11の側面11cの第1の領域11c1が形成される。ブレード34の先端部の傾斜した側面に倣って基板11の側面11cの第2の領域11c2が形成される。
【0050】
次に、図2(d)に示すように、粘着性を有するシート35に基板11を張替え、シード35をエキスパンドして個々のチップに分離する。切断されたサファイア基板30の第2の面に、反射膜15として、例えばスパッタリング法により厚さ約200nmのAg膜を形成する。基板11の第2の面11bをAgターゲット(反射膜ソース)に対向するように配置する。
【0051】
このとき、側面11cの第2の領域11c2が庇となり、スパッタされたAg粒子が回り込んで側面11cに付着するのを防止することが可能である。
【0052】
図3は比較例の半導体発光素子を示す図である。比較例の半導体発光素子とは、図1に示す側面11cの第2の領域11c2を有さない半導体発光素子のことである。
【0053】
図3に示すように、比較例の半導体発光素子40では、基板41は対向する第1の面41aおよび第2の面41bと、第1および第2の面41a、41bに略垂直な側面41cを有する、直方体状である。
【0054】
基板41の第1の面41aに半導体積層体12が形成されている。基板41の第2の面41bに反射膜42が形成されている。基板41には庇に相当するものがないため、スパッタされたAg粒子が回り込んで側面41cの下部にも反射膜42が付着している。
【0055】
これにより、MQW層23から基板41側に放射され、反射膜42で半導体積層体12側に反射された光のうち、光16は側面41cに入射し外部に取り出されるが、光17は反射膜42が付着した側面41cに入射し外部に取り出せなくなる。その結果、基板41の側面41cからの光取り出し効率が低下する。
【0056】
図4は比較例の半導体発光素子の製造方法を示す図である。図4(a)に示すように、ダイシングシート33に貼り付けられたサファイア基板30を、例えば内部照射型のレーザダイシング法によりダイシングライン32に沿ってダイシングし、サファイア基板30を個々の直方体状の基板41に分割する。
【0057】
内部照射型のレーザダイシング法とは、レーザ45をサファイア基板30の内部に集光して、内部に加工変質層を形成し、ブレーキングにより加工変質層の亀裂などを起点としてチップに分離する方法である。
【0058】
次に、図4(b)に示すように、基板41をシート35に張替えて反転させ、反射膜42を形成する。このとき、基板41には庇に相当するものがないため、側面41cの下部にも反射膜42が付着するのが避けられない。
【0059】
以上説明したように、本実施例では、基板11は第1の領域11c1から第2の面11b側に向かって末広がり状に傾斜した第2の領域11c2を有している。
【0060】
反射膜15を形成するときに、第2の領域11c2が庇となり、側面11cへの反射膜材の回り込みを防止することができる。従って、反射膜材が基板の側面へ付着するのを防止した半導体発光素子およびその製造方法が得られる。
【0061】
ここでは、反射膜15がAgである場合について説明したが光反射率の高いその他の金属、例えばアルミニウムでも構わない。また反射膜15の形成方法は真空蒸着法でも同様である。
【0062】
基板が、サファイア基板である場合について説明したが、その他の透明な基板、例えばSiC基板、GaN基板とすることも可能である。この場合、SiC、GaNは導電性を有するので、第2電極14は反射膜15上に形成する。
【実施例2】
【0063】
本実施例に係る半導体発光素子について図5を用いて説明する。図5は半導体発光素子を示す断面図である。本実施例において、上記実施例1と同一の構成部分には同一符号を付してその部分の説明は省略し、異なる部分について説明する。本実施例が実施例1と異なる点は、側面の第2の領域にも反射膜を形成したことにある。
【0064】
即ち、図5に示すように、本実施例の半導体発光素子50では、基板51は対向する第1の面51aおよび第2の面51bと、側面51cを有している。
【0065】
側面51cは、第1の面51aから第2の面51b側に向かって末広がり状に傾斜した第1の領域51c1と第2の面側51bから第1の面51a側に向かって末広がり状に傾斜した第2の領域51c2を有している。
【0066】
基板51の第1の面51aに半導体積層体12が形成されている。基板51の第2の面51bおよび側面51cの第2の領域51c2に反射膜52が形成されている。
【0067】
MQW層23から基板51側に放射され、反射膜52で半導体積層体12側に反射された光のうち、光53は第2の面51bで反射されて側面51cの第1領域51c1に入射し外部に取り出される。光54は側面51cの第2領域51c2で反射されて第1領域51c1に入射し外部に取り出される。
【0068】
上述した半導体発光素子50は、サファイア基板51の側面51cの中央部を庇のように突出させることにより、反射膜52を形成する際に、基板51の側面51cの第1領域51c1に反射膜52が付着するのを防止し、第2の領域51c2には反射膜52が付着するように構成されている。従って、側面51cからの光の取り出し効率が低下するのを防止している。
【0069】
次に半導体発光素子50の製造方法について、図6を用いて説明する。図6は半導体発光素子50の製造方法の要部を順に示す断面図である。
【0070】
図6(a)に示すように、先端がV字状のブレード56を用いて粘着性のダイシングシート33に貼り付けられたサフアイア基板30を第1の面51a側からダイシングライン32に沿ってハーフダイシングする。
【0071】
ハーフダイシング量は特に限定されないが、サファイア基板30の厚さの1/2程度が適当である。
【0072】
次に、図6(b)に示すように、ハーフダイシングされたサファイア基板30をダイシングシート57に張替えて反転させる。
【0073】
次に、図6(c)に示すように、ブレード56を用いてダイシングシート57に貼り付けられたサフアイア基板30を第2の面51b側からダイシングライン32に沿ってハーフダイシングする。
【0074】
これにより、ダイシングされたサファイア基板30が基板51となる。ブレード56の傾斜した側面に倣って基板51の側面51cの第1の領域51c1が形成される。ブレード56の先端部の傾斜した側面に倣って基板51の側面51cの第2の領域51c2が形成される。
【0075】
次に、図6(d)に示すように、粘着性を有するシート35に基板51を張替え、シート35をエキスパンドして個々のチップに分離する。基板51の第2の面51bおよび側面51cの第2の領域51c2に反射膜52を形成する。
【0076】
このとき、側面51cの第2の領域51c2が庇となり、スパッタされたAg粒子が回り込んで側面11cの第1の領域51c1に付着するのを防止することが可能である。
【0077】
図7は第1比較例の半導体発光素子を示す断面図である。ここで、第1比較例の半導体発光素子とは、第2の面から第1の面に向かって末広がり状に傾斜した第1および第2の領域を有する側面を備えた半導体発光素子のことである。
【0078】
図7に示すように、第1比較例の半導体発光素子70では、対向する第1の面71aと第2の面71b、および側面71cを有している。
【0079】
側面71cは、第2の面71bから第1の面71aに向かって末広がり状に傾斜した第1の領域71c1と第2の領域71c2を有している。基板71の第1の面71aに半導体積層体12が形成されている。
【0080】
反射膜72を形成する場合、基板71の第2の面71bおよび側面71cの第2の領域71c2を超えて側面71cの第1の領域71c1まで反射膜72が形成される。その結果、側面71cからの光取り出し効率が低下する。
【0081】
図8は第2比較例の半導体発光素子を示す断面図である。第2比較例の半導体発光素子とは、第1の面から第2の面側に向かって略垂直に延在した第1の領域と、第2の面から第1の面側に向かって末広がり状に傾斜した第2の領域を有する側面を備えた半導体発光素子のことである。
【0082】
図8に示すように、第2比較例の半導体発光素子80では、対向する第1の面81aと第2の面81b、および側面81cを有している。
【0083】
側面81cは、第1の面81aから第2の面81b側に向かって略垂直に延在する第1の領域81c1と、第2の面81bから第1の面81a側に向かって末広がり状に傾斜した第2の領域81c2を有している。基板81の第1の面81aに半導体積層体12が形成されている。
【0084】
反射膜82を形成する場合、基板81の第2の面81bおよび側面81cの第2の領域81c2だけでなく、反射膜材の回り込みにより第1の領域81c1まで反射膜82が形成される。その結果、側面81cからの光取り出し効率が低下する。
【0085】
一方、上述したように、本実施例の半導体発光素子50では、側面51cの第2の領域51c2が庇となり、反射膜材が第1の領域51c1に回り込まない。基板51の第2の面51bおよび側面51cの第2の領域51c2だけに反射膜52が形成される。その結果、側面51cからの光取り出し効率の低下が防止される。
【0086】
以上説明したように、本実施例では、基板51の側面51cは、中央部が突出するように、第1の面51aから第2の面51b側に向かって末広がり状に傾斜した第1の領域51c1と第2の面側51bから第1の面51a側に向かって末広がり状に傾斜した第2の領域51c2を有している。
【0087】
これにより、反射膜52を形成する際に、基板51の側面51cの第1領域51c1に反射膜が付着するのを防止し且つ第2の領域51c2には反射膜を付着させることができる利点がある。
【0088】
ここでは、第1の面51a側からサファイア基板30を途中まで切断し、次に第2の面51b側からサファイア基板30の未切断部を切断する場合について説明したが、第2の面51b側から切断し、次に第1の面51a側から切断することも可能である。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0090】
本発明は、以下の付記に記載されているような構成が考えられる。
(付記1) 前記基板はサファイアであり、前記半導体積層体は窒化物半導体積層体である請求項1または請求項3に記載の半導体発光素子。
【符号の説明】
【0091】
10、40、50、70、80 窒化物半導体発光素子
11、41、51、71、81 基板
11a、41a、51a、71a、81a 第1の面
11b、41b、51b、71b、81b 第2の面
11c、41c、51c、71c、81c 側面
11c1、51c1、71c1、81c1 第1の領域
11c2、51c2、71c2、81c2 第2の領域
12 半導体積層体
13、42、52、72、82 反射膜
14 第1電極
15 第2電極
16、17、53、54 光
21 N型GaN層
22 N型GaNクラッド層
23 MQW層
24 P型GaNクラッド層
25 P型GaNコンタクト層
26 透明導電膜
30 サファイア基板
31 半導体積層体
32 ダイシングライン
33、57 ダイシングシート
34、56 ブレード
35 シート
45 レーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1および第2の面と、前記第1の面から前記第2の面側に向かって略垂直に延在する第1の領域と前記第1の領域から前記第2の面側に向かって末広がり状に傾斜した第2の領域を有する側面を備えた基板と、
前記基板の前記第1の面に形成され、第1導電型の第1半導体層と、活性層と、第2導電型の第2半導体層が順に積層された半導体積層体と、
前記基板の前記第2の面に形成された反射膜と、
を具備することを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
対向する第1および第2の面を有し、前記第1の面に第1導電型の第1半導体層と、活性層と、第2導電型の第2半導体層が順に積層された半導体積層体が形成された基板を、前記第1の面側から、先端部に末広がり状の傾斜面を有するブレードを用いてダイシングラインに沿って切断する工程と、
切断された前記基板の前記第2の面を反射膜ソースに対向させて、前記基板の前記第2の面側に反射膜を形成する工程と、
を具備することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項3】
対向する第1および第2の面と、前記第1の面から前記第2の面側に向かって末広がり状に傾斜した第1の領域と前記第2の面側から前記第1の面側に向かって末広がり状に傾斜した第2の領域を有する側面を備えた基板と、
前記基板の前記第1の面に形成され、第1導電型の第1半導体層と、活性層と、第2導電型の第2半導体層が順に積層された半導体積層体と、
前記基板の前記第2の面および前記側面の前記第2の領域に形成された反射膜と、
を具備することを特徴とする半導体発光素子。
【請求項4】
対向する第1および第2の面を有し、前記第1の面に第1導電型の第1半導体層と、活性層と、第2導電型の第2半導体層が順に積層された半導体積層体が形成された基板を、前記第1の面側から、先端部に末広がり状の傾斜面を有するブレードを用いて、ダイシングラインに沿って前記基板を途中まで切断する工程と、
前記第2の面側から、先端部に末広がり状の傾斜面を有するブレードを用いて、前記ダイシングラインに沿って前記基板の未切断部を切断する工程と、
切断された前記基板の前記第2の面を反射膜ソースに対向させ、前記基板の前記第2の面側に反射膜を形成する工程と、
を具備することを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記反射膜は、蒸着法またはスパッタリング法により形成することを特徴とする請求項2または請求項4に記載の半導体発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−21252(P2013−21252A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155454(P2011−155454)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】