説明

半導体素子の故障解析方法及び故障解析装置

【課題】本発明は、半導体素子の故障解析方法及び故障解析装置に係り、故障箇所を位置精度よく特定して解析することにある。
【解決手段】コントローラに、半導体素子への電力供給により該半導体素子の裏面から発せられる光を撮像手段にて検出させることにより該半導体素子の故障箇所を特定させる。次に、半導体素子の表面電極側に配置された圧痕用プローブを該半導体素子の表面電極に接触させ、かかる状況において、半導体素子の表面電極側から該表面電極へレーザを走査照射した場合に得られる走査位置と電流量との関係を示した電流像に基づいて、半導体素子の表面電極上で圧痕用プローブが接触する接触箇所を特定させる。そして、半導体素子上で特定した故障箇所と接触箇所との位置ズレ量に基づいて、圧痕用プローブを前記半導体素子の表面電極に接触させる位置を変更させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の故障解析方法及び故障解析装置に係り、特に、故障が発生している半導体素子の故障箇所を正確に解析するうえで好適な故障解析方法及び故障解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の故障解析方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この故障解析方法においては、半導体素子の裏面が研磨された後に、その裏面の所定箇所に紫外線レーザでマーキングが施され、かつ、その裏面と面対象の位置関係にある表面の所定箇所に紫外線レーザでマーキングが施されたうえで、半導体素子の故障箇所が特定される。具体的には、半導体素子の電気的な故障箇所を特定する技術としては、半導体素子の裏面から発せられる光を検出することによって故障解析を行う発光解析や、レーザビームの照射によって発生する起電流又は電源電流の変化を像に変換することによって故障解析を行うOBIRCH(Optical Beam Induced Resistance Change)解析などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−66115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、半導体素子の結晶欠陥を含めた故障の原因究明のためには、特定された故障箇所について、試料の厚みを2μm程度まで薄くしたうえで、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた詳細な観察や分析が必要である。しかし、上記した故障解析方法では、半導体素子へのレーザマーキングが一箇所につき数十〜数百μm規模の大きさとなるため、故障箇所を包含したTEM試料の作成のための位置特定精度が不十分であった。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、故障箇所を位置精度よく特定して解析することが可能な半導体素子の故障解析方法及び故障解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、コントローラが、半導体素子への電力供給により該半導体素子の裏面から発せられる光を撮像手段にて検出することにより該半導体素子の故障箇所を特定する工程と、コントローラが、前記半導体素子の表面電極側に配置された圧痕用プローブを該半導体素子の表面電極に接触させる工程と、コントローラが、前記圧痕用プローブが前記半導体素子の表面電極に接触されている状況において、前記半導体素子の表面電極側から該表面電極へレーザを走査照射した場合に得られる走査位置と電流量との関係を示した電流像に基づいて、前記半導体素子の表面電極上で前記圧痕用プローブが接触する接触箇所を特定する工程と、コントローラが、前記半導体素子上で特定した前記故障箇所と前記接触箇所との位置ズレ量に基づいて、前記圧痕用プローブを前記半導体素子の表面電極に接触させる位置を変更する工程と、を備える半導体素子の故障解析方法により達成される。
【0007】
また、上記の目的は、半導体素子への電力供給により該半導体素子の裏面から発せられる光を撮像手段にて検出することにより該半導体素子の故障箇所を特定する故障箇所特定手段と、前記半導体素子の表面電極側に配置された圧痕用プローブを該半導体素子の表面電極に接触させるプローブ駆動制御手段と、前記圧痕用プローブが前記半導体素子の表面電極に接触されている状況において、前記半導体素子の表面電極側から該表面電極へレーザを走査照射した場合に得られる走査位置と電流量との関係を示した電流像に基づいて、前記半導体素子の表面電極上で前記圧痕用プローブが接触する接触箇所を特定する接触箇所特定手段と、前記半導体素子上で特定された前記故障箇所と前記接触箇所との位置ズレ量に基づいて、前記圧痕用プローブを前記半導体素子の表面電極に接触させる位置を変更する接触位置変更手段と、を備える半導体素子の故障解析装置により達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、故障箇所を位置精度よく特定して解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例である半導体素子の故障解析装置のシステム構成図である。
【図2】本実施例の故障解析装置において実行される制御ルーチンの一例のフローチャートである。
【図3】本実施例の故障解析装置による故障解析方法の工程(その1)を表した図である。
【図4】本実施例の故障解析装置による故障解析方法の工程(その2)を表した図である。
【図5】本実施例の故障解析装置による故障解析方法の工程(その3)を表した図である。
【図6】本実施例の故障解析装置による故障解析方法の工程(その4)を表した図である。
【図7】本実施例の故障解析装置による故障解析方法の工程(その5)を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本発明に係る半導体素子の故障解析方法及び故障解析装置の具体的な実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施例である半導体素子10の故障解析装置12のシステム構成図を示す。本実施例の故障解析装置12は、半導体素子10に生じた故障箇所の特定を電気的に実施し、かつ、物理的に観察できる痕跡を形成するための装置である。
【0012】
本実施例において、半導体素子10は、例えばMOSトランジスタ等であり、例えばシリコンなどからなる半導体基板14と、その半導体基板14の一方の面に設けられた例えばアルミニウムなどの金属からなる表面電極16と、を有している。半導体素子10は、故障解析装置12を用いて故障箇所を特定する処理が行われる際、所定の架台に固定される。
【0013】
故障解析装置12は、コントローラ20と、素子電圧印加部22と、光検出部24と、圧痕用プローブ26と、電流検出部28と、レーザ照射部30と、を有している。コントローラ20は、マイクロコンピュータを主体に構成された電子制御ユニットであり、各部22〜30に電気的に接続されている。コントローラ20は、各部22〜30それぞれの制御を行うことで、半導体素子10に生じる故障箇所を特定する処理を行う。
【0014】
素子電圧印加部22は、架台に固定された半導体素子10の表裏に電源32を用いて所定電圧を印加する部位である。素子電圧印加部22は、コントローラ20からの指示に従って半導体素子10の表裏に所定電圧を印加する。光検出部24は、半導体素子10の故障箇所(電流リーク箇所)で発生する光を検出する部位であって、対物レンズ34と撮像装置36とからなる。撮像装置36は、対物レンズ34を通じて半導体素子10の裏面全体を撮影することが可能なCCDカメラなどである。
【0015】
対物レンズ34は、半導体素子10の裏面側に配置されている。対物レンズ34は、架台に固定された半導体素子10に対して左右前後に2次元平面的(XY方向)に相対移動することが可能である。光検出部24は、入射した光を対物レンズ34を介して集束して撮像装置36で撮影し、その撮像情報をコントローラ20に供給する。コントローラ20は、撮像装置36からの撮像情報に基づいて、半導体素子10の故障箇所を特定する発光解析を行う。
【0016】
圧痕用プローブ26は、対物レンズ34と半導体素子10を挟んで反対側の表面電極16側に配置されており、架台に固定された半導体素子10に対して上下左右前後に三次元的(XYZ方向)に相対移動することが可能である。圧痕用プローブ26は、コントローラ20からの指示に従って半導体素子10に対して相対移動される。圧痕用プローブ26の少なくともZ方向への駆動は、例えばピエゾ素子で制御されることが可能であり、μmレベル以下での移動制御が可能である。
【0017】
圧痕用プローブ26は、半導体素子10の表面電極16上に微小の圧痕を形成することができるように小さい径(例えば1μm)の先端を有している。圧痕用プローブ26は、ダングステンや白金,パラジウム合金などの通常の電気特性測定で用いられるプローブ材質からなる導電性プローブである。圧痕用プローブ26は、その先端が半導体素子10の表面電極16に接触することで、圧痕用プローブ26、表面電極16、プローブ38、及び電流検出部28からなる閉回路を形成することが可能である。
【0018】
電流検出部28は、圧痕用プローブ26とプローブ38との間に所定電圧を印加した場合にその間に流れる電流を検出する部位である。電流検出部28は、検出した圧痕用プローブ26とプローブ38との間に流れる電流値の情報をコントローラ20に供給する。コントローラ20は、電流検出部28からの電流値情報に基づいて、圧痕用プローブ26が半導体素子10の表面電極16に接触したか否かを判別する。
【0019】
レーザ照射部30は、対物レンズ34と半導体素子10を挟んで反対側の表面電極16側に配置されており、圧痕用プローブ26に隣接している。レーザ照射部30は、半導体素子10の表面電極16に例えば赤外線のレーザを照射する部位である。レーザ照射部30は、コントローラ20からの指示に従って半導体素子10の表面電極16にレーザを照射してその表面電極16上で照射レーザを走査する。コントローラ20は、レーザ照射部30によるレーザの走査位置と電流検出部28からの電流値情報とに基づいて、走査位置に対応した電流値変化を反映した電流像を取得し、その電流像に基づいて、半導体素子10の表面電極16上での圧痕用プローブ26の接触箇所を特定する。
【0020】
次に、図2〜図7を参照して、本実施例の故障解析装置12により故障解析方法について説明する。図2は、本実施例の故障解析装置12においてコントローラ20が実行する制御ルーチンの一例のフローチャートを示す。図3は、本実施例の故障解析装置12による故障解析方法の工程(その1)を表した図を示す。図4は、本実施例の故障解析装置12による故障解析方法の工程(その2)を表した図を示す。図5は、本実施例の故障解析装置12による故障解析方法の工程(その3)を表した図を示す。図6は、本実施例の故障解析装置12による故障解析方法の工程(その4)を表した図を示す。また、図7は、本実施例の故障解析装置12による故障解析方法の工程(その5)を表した図を示す。
【0021】
尚、図3(A)、図4(A)、図6(A)、及び図7(A)には故障解析装置12の要部構成を、図3(B)にはコントローラ20で得られる発光画像を表面電極16を上方から見たものとして変換した画像を、図4(B)、図6(B)、及び図7(B)にはコントローラ20で得られる表面電極16を上方から見た場合の電流像を、図3(C)、図4(C)、図6(C)、及び図7(C)には表面電極16を上方から見た際の上面図を、また、図5には発光画像と電流像とを重ね合わせた像を、それぞれ示す。
【0022】
本実施例において、試料としての半導体素子10の結晶欠陥を含めた故障原因の究明のため、その半導体素子10の裏面側は研磨装置により研磨される。半導体素子10の研磨は、例えば厚み100〜200μm程度まで薄くなるように行われる。コントローラ20は、上記の如く研磨されて薄膜化された半導体素子10について故障箇所を特定する処理(故障箇所特定処理)を行う(ステップ100)。
【0023】
具体的には、コントローラ20は、故障箇所特定処理として、まず、架台に固定された半導体素子10の表裏に所定電圧を印加するように素子電圧印加部22に対して指令信号を供給する。この場合には、半導体素子10の表面電極16と裏面との間に所定電圧が印加されることで、半導体素子10が動作状態となる。半導体素子10の動作状態では、例えば結晶欠陥などがある箇所ではリーク電流が流れて発光が生じる。
【0024】
光検出部24は、故障箇所特定処理時において、対物レンズ34を任意の位置に固定して、半導体素子10の裏面から入射する光を対物レンズ34を介して集束して撮像装置36で撮影する。撮像装置36の撮像情報はコントローラ20に供給される。コントローラ20は、撮像装置36からの撮像情報に基づいて、入射した光の、半導体素子10の裏面上における位置を表した図3(B)に示す如き発光画像を取得し、そして、その二次元的な発光画像からXY平面内における故障箇所を示す発光箇所Lを特定する。
【0025】
コントローラ20は、発光解析により半導体素子10の発光箇所Lを特定した後、対物レンズ34を半導体素子10に対して相対移動させることで、図3(C)に示す如く、鉛直上方から見てその特定した発光箇所Lが対物レンズ34の中心軸Cに重なるようにその発光箇所Lを対物レンズ34の中心軸C上に位置させる(ステップ110)。そして再び、撮像装置36からの撮像情報に基づいて、入射する光の発光位置を表した発光画像を取得する。尚、この取得した発光画像内において発光位置は略中央に位置する。この際、対物レンズ34の中心軸CのXY平面座標を(0,0)とすると、発光箇所LのXY平面座標は(0,0)となる。
【0026】
次に、コントローラ20は、圧痕用プローブ26を半導体素子10に対してXY平面内において相対移動させることで、鉛直上方から見てその圧痕用プローブ26の先端を対物レンズ34の中心軸C付近に位置調整する(ステップ120)。そして、圧痕用プローブ26を半導体素子10に対してZ方向に相対移動させることで、図4(A)に示す如くその圧痕用プローブ26の先端を半導体素子10の表面電極16に接触させる(ステップ130)。かかる接触がなされると、図4(C)に示す如く、半導体素子10の表面電極16上に圧痕用プローブ26による圧痕40−1が形成される。
【0027】
尚、圧痕用プローブ26の先端が半導体素子10の表面電極16に接触したか否かを判別する手法としては、まず、プローブ38を表面電極16の一部に接触させたうえで、圧痕用プローブ26とプローブ38との間に電圧印加を行う。そして、電流検出部28により圧痕用プローブ26とプローブ38との間に流れる電流を検出することで、その検出電流値に基づいて圧痕用プローブ26が半導体素子10の表面電極16に接触したか否かを判別することとすればよい。また、圧痕用プローブ26のZ方向への駆動は、上記の如くμmレベル以下での移動制御が可能であるので、半導体素子10の表面電極16上に形成される圧痕40の深さ(Z方向)はミクロン単位で制御されることが可能である。
【0028】
コントローラ20は、圧痕用プローブ26の先端が半導体素子10の表面電極16に接触したと判別した後、その表面電極16にレーザ照射を行ってその照射レーザを走査するようにレーザ照射部30に対して指令信号を供給すると共に、その走査と同期して電流検出部28から電流像を取得する。この場合、半導体素子10の表面電極16にはレーザ照射部30からのレーザ照射が行われてその走査が行われつつ、コントローラ20にその走査と同期した圧痕40−1に対応する電流像(例えば電流量変化をグレースケールでコントラスト表示した像)が取得される。
【0029】
圧痕用プローブ26と表面電極16との間には接触抵抗が存在するが、レーザ照射が行われると、その接触抵抗が変化して、圧痕用プローブ26とプローブ38との間に流れる電流量が変化する。コントローラ20は、レーザ照射部30から表面電極16へ照射するレーザをその表面電極16上で走査させつつ、電流検出部28から取得される電流像に電流量変化を画像化したコントラスト変化が発生するか否かを判別する。そして、図4(B)に示す如く、そのコントラスト変化が発生した位置を、圧痕用プローブ26が表面電極16に接触する圧痕40−1の箇所(第1接触箇所M1)として特定する(ステップ140)。尚、この特定される第1接触箇所M1のXY平面座標を、対物レンズ34の中心軸CのXY平面座標を基準とした場合に(Xp,Yp)とする。
【0030】
コントローラ20は、上記の如く発光画像中の発光箇所L及び電流像中の第1接触箇所M1をそれぞれ特定すると、図5に示す如く、撮像装置36からの撮像情報に基づいて取得した発光画像と、電流検出部28から取得されたレーザ走査位置に対応した電流量変化を反映した電流像と、を重ね合わせる。そして、発光画像中の発光箇所Lと電流像中の第1接触箇所M1との位置ズレ量(△x,△y)を算出する(ステップ150)。この場合、第1接触箇所M1の位置は、対物レンズ34の中心軸Cすなわち発光箇所Lを基準にして(Xp,Yp)=(△x,△y)である。
【0031】
次に、コントローラ20は、圧痕用プローブ26を半導体素子10に対してZ方向にその表面電極16から遠ざけるように相対移動させることで、圧痕用プローブ26の先端を表面電極16に対して非接触状態とする。尚、圧痕用プローブ26の先端が半導体素子10の表面電極16に対して非接触状態にあるか否かを判別する手法としては、圧痕用プローブ26とプローブ38との間の電圧印加時に電流検出部28により圧痕用プローブ26とプローブ38との間に流れる電流をモニタすることで、その検出電流値に基づいて圧痕用プローブ26が半導体素子10の表面電極16に対して非接触状態に移行したか否かを判別することとすればよい。
【0032】
コントローラ20は、上記の如く重ね合わせ画像から計算した位置ズレ量(△x,△y)の2倍値である(2△x,2△y)を算出したうえで、表面電極16に対して非接触とした圧痕用プローブ26を半導体素子10に対してXY平面内において相対移動させることで、鉛直上方から見てその圧痕用プローブ26の先端を、現座標(Xp,Yp)から(2△x,2△y)を減算した座標位置(Xp−2△x,Yp−2△y)に位置させる(ステップ160)。そして、圧痕用プローブ26を半導体素子10に対してZ方向に相対移動させることで、図6(A)に示す如くその圧痕用プローブ26の先端を半導体素子10の表面電極16に接触させる(ステップ170)。かかる接触がなされると、図6(C)に示す如く、半導体素子10の表面電極16上に圧痕用プローブ26による圧痕40−2が形成される。
【0033】
尚、コントローラ20は、圧痕用プローブ26の先端が半導体素子10の表面電極16に接触したと判別した後、その表面電極16にレーザ照射を行ってその照射レーザを走査するようにレーザ照射部30に対して指令信号を供給すると共に、その走査と同期して電流検出部28から電流像を取得することとしてもよい。この場合は、コントローラ20が、電流検出部28から取得した圧痕40−2に対応する電流像と、既に撮像装置36から取得している撮像情報に基づく発光画像と、を重ね合わせることで、発光画像中の発光箇所Lと電流像中の圧痕用プローブ26が表面電極16に接触する圧痕40−2の箇所(第2接触箇所M2)との位置関係を確認することとしてもよい。
【0034】
次に、コントローラ20は、圧痕用プローブ26を半導体素子10に対してZ方向にその表面電極16から遠ざけるように相対移動させることで、圧痕用プローブ26の先端を表面電極16に対して非接触状態とする。尚、圧痕用プローブ26の先端が半導体素子10の表面電極16に対して非接触状態にあるか否かを判別する手法としては、圧痕用プローブ26とプローブ38との間の電圧印加時に電流検出部28により圧痕用プローブ26とプローブ38との間に流れる電流をモニタすることで、その検出電流値に基づいて圧痕用プローブ26が半導体素子10の表面電極16に対して非接触状態に移行したか否かを判別することとすればよい。
【0035】
コントローラ20は、圧痕用プローブ26をZ方向に表面電極16から遠ざけるように相対移動させた後、その圧痕用プローブ26を半導体素子10に対してXY平面内において相対移動させることで、鉛直上方から見てその圧痕用プローブ26の先端を、現座標(Xp−2△x,Yp−2△y)から(△x,△y)を加算した座標位置(Xp−△x,Yp−△y)に位置させる(ステップ180)。そして、圧痕用プローブ26を半導体素子10に対してZ方向に相対移動させることで、図7(A)に示す如くその圧痕用プローブ26の先端を半導体素子10の表面電極16に接触させる(ステップ190)。かかる接触がなされると、図7(C)に示す如く、半導体素子10の表面電極16上に圧痕用プローブ26による圧痕40−3が形成される。この圧痕40−3の位置は、XY平面座標上の基準位置(すなわち、対物レンズ34の中心軸Cの位置=故障箇所を示す発光箇所Lの位置)と一致する。
【0036】
尚、コントローラ20は、圧痕用プローブ26の先端が半導体素子10の表面電極16に接触したと判別した後、その表面電極16にレーザ照射を行ってその照射レーザを走査するようにレーザ照射部30に対して指令信号を供給すると共に、その走査と同期して電流検出部28から電流像を取得することとしてもよい。この場合は、コントローラ20が、電流検出部28から取得した圧痕40−3に対応する電流像と、既に撮像装置36から取得している撮像情報に基づく発光画像と、を重ね合わせることで、発光画像中の発光箇所Lと電流像中の圧痕用プローブ26が表面電極16に接触する圧痕40−3の箇所(第3接触箇所M3)との位置関係を確認することとしてもよい。
【0037】
図2に示すルーチンによる処理によれば、半導体素子10の表面電極16上に直線状に並んだ3つの圧痕40−1,40−2,40−3を形成することができ、その3つの圧痕40−1,40−2,40−3のうち中央の圧痕40−3の直下に故障箇所が存在することを表すことができる。表面電極16上の圧痕40−1,40−2,40−3は、小径(例えば1μm)の先端を有する圧痕用プローブ26により形成されるものである。このため、半導体素子10の故障箇所の位置を表面電極16上にマーキングするうえでの圧痕を極めて小さくすることができ、その故障箇所の位置を表す圧痕40−3の位置精度を高めることができる。
【0038】
このように圧痕40−3を用いて高精度に故障箇所の位置を表すことができれば、その後、その故障箇所を、走査電子顕微鏡や集束イオンビーム加工装置における走査イオン顕微鏡などの観察装置にて表面電極16上の凹み(圧痕40−3)として確認することができる。従って、本実施例によれば、半導体素子10の故障箇所の断面観察や故障箇所を包含したTEM試料の作成を容易に実現することができ、半導体素子10の故障箇所を位置精度よく特定して解析することができる。
【0039】
また、半導体素子10の故障箇所の位置を表面電極16上にマーキングするうえで、3つの圧痕40−1,40−2,40−3を直線状に並べて形成することができる。従って、本実施例によれば、表面電極16上で故障箇所の位置を表す圧痕の視認性を向上させることができると共に、解析対象となる故障箇所の位置を表す圧痕を他の圧痕と明確に区別して形成させることができるため、半導体素子10の故障箇所を正確に解析することができる。
【0040】
尚、上記の実施例においては、コントローラ20が、図2に示すルーチン中ステップ100の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「故障箇所特定手段」が、ステップ130の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「プローブ駆動制御手段」が、ステップ140の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「接触箇所特定手段」が、ステップ150〜190の処理を実行することにより特許請求の範囲に記載した「接触位置変更手段」が、それぞれ実現されている。
【0041】
ところで、上記の実施例においては、半導体素子10の表面電極16上に3つの圧痕40−1,40−2,40−3を形成することとし、圧痕40−1,40−2,40−3ごとに発光画像中の発光箇所Lとの位置関係を確認することが可能であるが、更に、各圧痕40−1,40−2,40−3を示す電流像を重ね合わせることで表面電極16上に圧痕パターン像を形成して、故障箇所の位置を表す圧痕40−3の位置精度を更に高めることも可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 半導体素子
12 故障解析装置
14 半導体基板
16 表面電極
20 コントローラ
22 素子電圧印加部
24 光検出部
26 圧痕用プローブ
28 電流検出部
30 レーザ照射部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラが、半導体素子への電力供給により該半導体素子の裏面から発せられる光を撮像手段にて検出することにより該半導体素子の故障箇所を特定する工程と、
コントローラが、前記半導体素子の表面電極側に配置された圧痕用プローブを該半導体素子の表面電極に接触させる工程と、
コントローラが、前記圧痕用プローブが前記半導体素子の表面電極に接触されている状況において、前記半導体素子の表面電極側から該表面電極へレーザを走査照射した場合に得られる走査位置と電流量との関係を示した電流像に基づいて、前記半導体素子の表面電極上で前記圧痕用プローブが接触する接触箇所を特定する工程と、
コントローラが、前記半導体素子上で特定した前記故障箇所と前記接触箇所との位置ズレ量に基づいて、前記圧痕用プローブを前記半導体素子の表面電極に接触させる位置を変更する工程と、
を備えることを特徴とする半導体素子の故障解析方法。
【請求項2】
半導体素子への電力供給により該半導体素子の裏面から発せられる光を撮像手段にて検出することにより該半導体素子の故障箇所を特定する故障箇所特定手段と、
前記半導体素子の表面電極側に配置された圧痕用プローブを該半導体素子の表面電極に接触させるプローブ駆動制御手段と、
前記圧痕用プローブが前記半導体素子の表面電極に接触されている状況において、前記半導体素子の表面電極側から該表面電極へレーザを走査照射した場合に得られる走査位置と電流量との関係を示した電流像に基づいて、前記半導体素子の表面電極上で前記圧痕用プローブが接触する接触箇所を特定する接触箇所特定手段と、
前記半導体素子上で特定された前記故障箇所と前記接触箇所との位置ズレ量に基づいて、前記圧痕用プローブを前記半導体素子の表面電極に接触させる位置を変更する接触位置変更手段と、
を備えることを特徴とする半導体素子の故障解析装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−208100(P2012−208100A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76099(P2011−76099)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】