説明

半導体装置および半導体装置の製造方法

【課題】 電極の断線等を抑制するとともに、発光部の上面からの電極の引き出し方向の制約を低減することができる発光装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 導電性基板と、半導体素子部と、導電性基板の一方主面の少なくとも一部を覆う第1絶縁膜と、第1絶縁膜上に配置されたパッド電極と、パッド電極の上面に接合したボンディングボールを備えるボンディングワイヤとを有する半導体装置であって、パッド電極の周辺領域で第1絶縁膜を被覆する第2絶縁膜をさらに備え、第2絶縁膜は、第1絶縁膜の周辺領域からパッド電極の側面のうち第1絶縁膜側の一部領域にかけて連続して被覆している被覆部分と、被覆部分に連なってパッド電極の側面から内部に入り込んで延在している延在部分とを備え、延在部分の少なくとも一部が、ボンディングボールの下方に位置していることを特徴とする半導体装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板の上に積層された複数の半導体層からなる機能素子を有する半導体装置が種々提案されている。半導体装置の一例として、例えばpn接合領域を有する発光部が形成された発光装置が利用されている。例えば、特許文献1に記載された発光装置は、基板の上に積層された複数の半導体層を有する発光部を備え、この発光部が備える素子側電極が、基板上に絶縁膜を介して配置されたボンディング用のパッド電極と接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−226085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、例えば発光装置による形成画像の高解像度化の要求に応じ、発光装置における発光部の配置密度が高くなってきている。これにともない、基板上に配置されたパッド電極の配置密度も高くなり、パッド電極の1つ1つの面積は小さくなってきている。
【0005】
図6は、従来の発光装置100のパッド電極の、周辺部分を拡大して示す概略断面図である。従来の発光装置のパッド電極は、GaAs等の半導電性基板102に、絶縁膜104を介してパッド電極106が配置された構成となっている。発光装置100では、パッド電極106の上面に、このパッド電極106の上面と接合したボンディングボール110を備えるボンディングワイヤ109が接続されている。ボンディングワイヤ109は、ボンディングワイヤ109を保持するためのキャピラリ120を備えた公知のボンディング装置を用いて、パッド電極106と接合される。図6では、ボンディングボール110を形成する状態、すなわちボンディング時における、パッド電極106とキャピラリ120をの位置関係を示すために、ボンディング時におけるキャピラリ120の先端部も模式的に示している。
【0006】
絶縁膜104はSiNx等からなり、弾性率が比較的高く変形し難い、一方、金属からなるパッド電極106は弾性率が比較的低く変形し易い。ボンディング時において、パッド電極106および絶縁膜104がキャピラリ120から受ける衝撃は、主にパッド電極106が変形することで緩和される。
【0007】
しかしながら、上述のように、パッド電極106の配置密度が高まってパッド電極106の面積が小さくなると、ボンディングワイヤ109の接合時における、キャピラリ120の先端部分のパッド電極106に対する当接位置が、パッド電極106の周縁部分に近くなる。キャピラリ120の先端部分の当接位置が、パッド電極106の周縁部分に近づくほど、ボンディング時におけるキャピラリ120からの衝撃によって変形する、パッド電極106の面積が小さくなり、ボンディング時の衝撃が、SiNx等からなる絶縁膜に大きく伝わり易い。
【0008】
このため、近年の高密度配置のパッド電極106を有する半導体装置では、ボンディング時の衝撃によって絶縁膜106にクラック等の欠陥が生じ、電流リークによる動作不良が発生し易いといった課題があった。また、発光にともなうボンディングボール110の
温度変化によって、ボンディングボール110が膨張・収縮した場合、ボンディングボール110がパッド電極106を引き伸ばしたり、縮めたりする力が働くが、キャピラリ120の先端部分の当接位置が、パッド電極106のエッジに近くなると、この力が大きくなり、パッド電極106の剥がれが発生し易いといった課題もあった。
【0009】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、導電性基板と、前記導電性基板の一方主面に積層された複数の半導体層からなる半導体素子部と、前記導電性基板の前記一方主面の少なくとも一部を覆う第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に配置された、前記半導体素子部に電気的に接続されたパッド電極と、前記パッド電極の上面に接合したボンディングボールを備える、前記半導体素子部に電力を供給するためのボンディングワイヤとを有する半導体装置であって、前記パッド電極の周辺領域で前記第1絶縁膜を被覆する第2絶縁膜をさらに備え、前記第2絶縁膜は、前記第1絶縁膜の前記周辺領域から前記パッド電極の側面のうち前記第1絶縁膜側の一部領域にかけて連続して被覆している被覆部分と、前記被覆部分に連なって前記パッド電極の前記側面から内部に入り込んで延在している延在部分とを備え、前記延在部分の少なくとも一部が、前記ボンディングボールの下方に位置していることを特徴とする半導体装置を提供する。
【0011】
また、導電性基板の一方主面に複数の半導体層を積層して半導体素子部を形成する工程と、前記導電性基板の前記一方主面の少なくとも一部を覆う第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜上に、配線導体層を介して前記半導体素子部に接続された第1金属層を形成する工程と、前記第1金属層の周辺領域の前記第1絶縁膜の上面から前記第1金属層の側面を経て前記第1金属層の上面の周縁部分にかけて延在する第2絶縁膜を形成する工程と、前記第1金属層の前記上面に、周縁部分の前記第2絶縁膜も覆うように第2金属層を形成する工程と、前記半導体素子部に電力を供給するためのボンディングワイヤを前記第2金属層の上面に、ボンディングボールの接合面の外周が前記周縁部分の前記第2絶縁膜の上方に位置するように接合する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法を、併せて提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パッド電極層の剥がれを抑制することができるとともに、絶縁膜の損傷にともなう絶縁破壊を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の半導体装置の一実施形態の概略平面図である。
【図2】図1に示す発光装置の概略断面図である。
【図3】図1に示す発光装置の概略断面図であり、図2とは異なる方向から見た図である。
【図4】図1に示す発光装置のパッド電極の周辺を拡大して示す概略断面図であり、図3と同じ方向から見た図である。
【図5】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態について説明する概略断面図である。
【図6】従来の半導体装置の一実施形態について説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る半導体装置の一実施形態として発光装置を例示し、図面を参照しつつ説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する
。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。さらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0015】
図1は、本実施形態の発光装置1の概略平面図である。図1に示したように、本実施形態に係る発光装置1は、基板3と、基板3の上に列をなして設けられている複数の発光部5と、各発光部5に接続されている表面電極層7と、を備えている。
【0016】
基板3は、砒化ガリウム(GaAs)からなっており、n型の導電性を有している。この基板3には、例えばn型の不純物であるシリコン(Si)が1×1017〜1×1019〔atoms/cm〕の範囲の濃度でドーピングされている。このn型の不純物としては、Siの他に、例えばゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、テルル(Te)などのIV族、VI族の元素が挙げられる。また、基板3は、厚さが例えば100〜350〔μm〕の範囲とされる。
【0017】
図2および図3は、発光装置1の概略断面図であり、図2は図1に示すII−II線に沿った断面、図3は図1に示すIII−III線に沿った断面それぞれ示している。また、図4は、パッド電極7aの周辺を拡大して示す概略断面図であり、図1に示すIV−IV線に沿った断面である、。各発光部5は、図2、3に示したように、基板3の上に設けられている第1の積層領域S1と、第1の積層領域S1の上に設けられている第2の積層領域S2と、を備えている。この第1の積層領域S1は、n型クラッド層9と、活性層11とが順次積層されている。この第2の積層領域S2は、p型クラッド層13と、コンタクト層15とが順次積層されている。
【0018】
第1の積層領域S1を構成するn型クラッド層9は、基板3の上面に設けられている。このn型クラッド層9は、アルミニウムインジウム燐(AlInP)からなっており、n型の導電性を有している。このn型クラッド層9は、例えばn型の不純物であるSiが1×1017〜1×1019〔atoms/cm〕の範囲の濃度でドーピングされている。このn型の不純物としては、Siの他に、例えばGe、Sn、Se、TeなどのIV族、VI族の元素が挙げられる。また、n型クラッド層9は、厚さが例えば0.4〜1〔μm〕の範囲とされる。
【0019】
活性層11は、n型クラッド層9の上面の上に設けられている。この活性層11は、アルミニウムガリウムインジウム燐(AlGaInP)からなっている。この活性層11には、不純物がドーピングされていない。この活性層11は、厚さが例えば0.3〜1〔μm〕とされる。
【0020】
第2の積層領域S2を構成するp型クラッド層13は、AlInPからなっており、p型の導電性を有している。このp型クラッド層13は、例えばp型の不純物である亜鉛(Zn)が、1×1017〜1×1019〔atoms/cm〕の範囲の濃度でドーピングされている。このp型の不純物としては、Znの他に、例えばベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、炭素(C)などの元素が挙げられる。また、p型クラッド層13は、厚さが例えば0.4〜1〔μm〕の範囲とされる。
【0021】
コンタクト層15は、燐化ガリウム(GaP)からなっており、p型の導電性を有している。このコンタクト層15には、例えばp型の不純物であるZnが、1×1017〜1×1019〔atoms/cm〕の範囲の濃度でドーピングされている。このp型の不純物としては、Znの他に、例えばBe、Mg、Ca、Cなどの元素が挙げられる。また、コンタクト層15は、厚さが例えば0.1〜5〔μm〕の範囲とされる。このコンタク
ト層15は、発光部5の最上層に形成されており、表面電極層7の配線導体部7bが接続されている。
【0022】
図4に示したように、発光部5が積層された基板3の上面側は、第1絶縁膜17と、第1絶縁膜17の上に設けられた第2絶縁膜19とによって被覆されている。この第1絶縁膜17および第2絶縁膜19はいずれも、電気絶縁性および透光性を有するSiNなどからなる。第2絶縁膜19は、表面電極7のパッド電極7aの周辺を覆うとともに、パッド電極7aの側面の一部を被覆している。第2絶縁膜19を含めたパッド電極7aの周辺部分の構成については、後に詳述する。なお、第1絶縁膜17は、コンタクト層15の上面に貫通孔17aが設けられている。この貫通孔17aを介し、表面電極7の配線導体部7bがコンタクト層15の上面に接続されている。なお、図1では、説明の便宜上、第1絶縁膜17および第2絶縁膜19については図示していない。
【0023】
図1に示した表面電極7は、基板3を被覆する第1絶縁膜17(図1において不図示)の上に設けられており、パッド電極7aと、配線導体部7bとを有している。このパッド電極7aは複数設けられており、千鳥状に配置されている。この配線導体部7bは、発光部5とパッド電極7aとを接続している。図2に示したように、配線導体部7bは、第1絶縁膜17に形成された貫通孔17aを介して、発光部5のコンタクト層15の上面に接続されている。この配線導体部7bは、コンタクト層15の上面から発光部5の側面の上を介して基板3の上に引き出されている。より詳細には、この配線導体部7bは、コンタクト層15の上面から、該コンタクト層15およびp型クラッド層13からなる第2の積層領域S2の側面の上を介して第1の積層領域S1の上面の上に引き出されている。さらに、この第1の積層領域S1の上面の上に引き出された配線導体部7bは、活性層11およびn型クラッド層9からなる第1の積層領域S1の上面および側面の上を介して基板3の上面の上に引き出されている。この基板3の上面の上に引き出され配線導体部7bまで延在してパッド電極7aと接続している。このパッド電極7aおよび配線導体部7bによって構成される表面電極7は、例えば厚さが250〔Å〕程度のCr層と、厚さが1〔μm〕程度のAu層との積層体で形成することができる。
【0024】
図2、3に示したように、基板3は、発光部5が形成されている上面と反対側の底面の上に、当該底面の全体に亘って裏面電極29が形成されている。この裏面電極29は、例えば厚さが250〔Å〕程度のCr層と、厚さが500〜1000〔Å〕程度のAuおよびGeの合金層と、厚さが250〔Å〕程度のCr層と、厚さが1〔μm〕程度のAu層との積層体で形成することができる。
【0025】
パッド電極7aの上面には、パッド電極7aの上面と接合したボンディングボール22を備える、発光部5に電流を供給するためのボンディングワイヤ24が接続されている。ボンディングワイヤ24の他方は、図示しない外部の駆動回路等と接続されており、駆動回路からボンディングワイヤ24を介して発光部5に電流が供給される。上述のように構成された発光装置1は、表面電極7と裏面電極29との間に順方向電圧を印加することで、発光部5に電流が供給され、活性層11が発光する。
【0026】
本実施形態では、パッド電極7aは、第1金属層41と第2金属層42とが積層されて構成されている。図4に示すように、発光装置1は、パッド電極7aの周辺から、パッド電極7aの側面31の第1絶縁膜17側の一部領域(側面部分45)にかけて連続した、第1絶縁膜17上に一部が積層した第2絶縁膜19を備えている。図4に示すように、第2絶縁膜19は、第1絶縁膜17のパッド電極7aの周辺領域から、パッド電極7aの側面部分45にかけて連続して被覆している被覆部分31と、被覆部分31に連なってパッド電極7aの側面から内部に入り込んで延在している延在部分32とを備えている。
【0027】
発光装置1では、延在部分32の少なくとも一部が、ボンディングボール22の下方に位置している。すなわち、基板3に垂直な方向からの平面視において、延在部分32は、ボンディングボール22に重なる位置まで、パッド電極7a内に入り込んでいる。これにより、ボンディングボール22の下方には、パッド電極7aを構成する第1金属層41と、第1金属層41に積層した第2絶縁膜19(の延在部分32)と、第2絶縁膜の上に積層した第2金属層42とが積層した領域が配置された状態となっている。
【0028】
図1に示すように、発光装置1は、複数のパッド電極7aが比較的高密度に配置されており、1つ1つのパッド電極7aの上面は比較的小さくなっている。このため、発光装置1では、ボンディングボール22の最大外接円22Sの一部が、パッド電極7aの最大外接円7Sに対して、パッド電極7aよりも外側に位置する部分がある。ボンディングボール22の最大外接円22Sとは、基板3の主面に平行な仮想平面による、ボンディングボール22の断面形状における外接円のうち、その半径が最大となるものという。同様に、パッド電極7aの最大外接円7Sとは、基板3の主面に平行な仮想平面による、パッド電極7aの断面形状における外接円のうち、その半径が最大となるものという。発光装置1は、例えば1200dpi規格の画像形成に用いられ、発光部5の中心位置同士の間隔(配列ピッチ)は、21.15μmと非常に小さく、パッド電極7aの最大外接円7Sの直径は、50μm〜60μmとされている。
【0029】
ボンディングボール22は、発光部の発熱や周辺温度の変動にともなって温度が変化することで、膨張または収縮する。発光装置1では、この膨張や収縮にともなう応力が、パッド電極7aの側面31の図中上側部分に直接的に作用する。例えば、ボンディングボール22が収縮する際、パッド電極7aを第1絶縁膜17から引き剥がす方向の力が、パッド電極7aの側面31の側から働く。発光装置1では、パッド電極7aの側面31近傍に、パッド電極7aを構成する第1金属層41と、第1金属層41に積層した第2絶縁膜19と、第2絶縁膜の上に積層した第2金属層42とからなる積層構造が配置されている。このため、ボンディングボール22の温度変化にともなう応力がパッド電極7aに働いた場合も、第2金属層42と上記延在部分32との境界部分に応力が集中し、第1絶縁膜17とパッド電極7aとの境界部分(すなわち、第1金属層41と第1絶縁膜17との接合部分)にかかる応力は、比較的少なくされている。たとえこの応力によって、第2金属層42と上記延在部分32との接合部分が剥がれたとしても、第1絶縁膜17とパッド電極7aとの接合部分の剥がれは抑制される。
【0030】
なお、本実施形態の発光装置1では、パッド電極7aの側面31のうち、第2金属層42に対応する側面部分47は、第1金属層41に対応する側面部分45よりも外側に位置している。この第2金属層42の側面部分47を、第1金属層41の側面部分45よりも外側に位置させることで、第2金属層42の上面の面積を比較的大きくとることが可能となっている。これにより、ボンディングの際の微妙な位置ずれに起因する、電極とボンディングワイヤとの接合不良の発生を抑制することができる。
【0031】
発光装置1は、以下のように作製することができる。
【0032】
図5は、本発明の発光装置の製造方法の一例である、図1に示す発光装置1の製造工程について説明するための図であり、発光装置1のパッド電極7a近傍を拡大して示す概略断面図である。
【0033】
まず、基板3の上に、例えば有機金属化学気相成長法(MOCVD法)等を用いて、n型クラッド層9、活性層11、p型クラッド層13、およびコンタクト層15となる各半導体層9X、11X、13X、15Xを順次積層したのち、公知のフォトリソグラフィー法によるエッチング成型を行い、n型クラッド層9、活性層11、p型クラッド層13、
およびコンタクト層15を有する発光部5を形成しておく(発光部5について、図5では図示していない)。
【0034】
続いて、図5(a)に示したように、発光部5が形成された基板3の上に化学蒸着法(CVD法)などを用いて第1絶縁膜17を形成する。この際、この第1絶縁膜17の、発光部5上に、フォトリソグラフィー法などを用いて貫通孔17aを形成しておく。
【0035】
次いで、第1絶縁膜17の上にレジスト膜を塗布して、フォトリソグラフィー法によって、所望のパターンを露光、現像した後に、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法などを用いて、表面電極7を構成する第1金属層41を形成するための金属層を形成する。そして、リフトオフ法によって、レジスト膜を除去して、図5(b)に示したように第1金属層41を所定の形状に形成する。
【0036】
続いて、絶縁膜17が形成された基板3の上に、化学蒸着法(CVD法)などを用いて、表面電極7を構成する第2金属層42を形成するための金属層を形成する。次いで、フォトリソグラフィー法などを用いて、成膜した第2絶縁膜19をエッチング加工し、第1絶縁膜17の上面、第1金属層41の側面、および第1金属層41の上面の周縁部分を覆う、第2絶縁膜19を形成する。その後、第2絶縁膜19の上にレジスト膜を塗布して、フォトリソグラフィー法によって、所望のパターンを露光、現像した後に、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法などを用いて、第2金属層42を形成するための金属層を形成する。続いて、リフトオフ法によって、レジスト膜を除去して、第2絶縁膜19の上記周縁部分に対応する領域の少なくとも一部を覆う、第2金属層42を形成する(図5(c))。
【0037】
次に、第2金属層42が形成されている状態で、全体を加熱処理する。この加熱処理によって、図5(d)に示すように、第2金属層42の側面部分47は全体が丸みを帯びた形状になる。この加熱処理によって、側面部分47の全体を丸みを帯びた形状とすることができ、側面部分47の特定部分に応力が集中することが抑制できる。この加熱処理では、大気中で全体を350℃〜400℃で、30分〜60分かけて加熱した後、1分間に1℃の割合で除々に温度を低減させればよい。
【0038】
次いで、図5(e)に示すように、キャピラリ50を備えるボンディング装置によって、ボンディングワイヤ24を第2金属層42の上面に接合する。このボンディング工程によって、発光装置1では、パッド電極7aの上面の周縁近くまで、ボンディングボール22が拡がって配置されている。第2金属層42の上面は比較的狭く、キャピラリ50は第2金属層42の側面の近傍に押圧される。発光装置1では、上述の第2絶縁膜19の形成工程において、第1金属層41の側面、および第1金属層41の上面の周縁部分を覆うように第2絶縁膜19が形成されているとともに、上述の第2金属層の形成工程において、第2絶縁膜19の上記周縁部分に対応する領域の少なくとも一部を覆うように、第2金属層42が形成されている。
【0039】
このため、ボンディング工程においては、キャピラリ50による押圧力がかかる部分は、第1金属層41と、第2絶縁膜19と、第2金属層42とが重なっている状態となっている。この部分では、第1金属層41と第2絶縁膜19と第2金属層42とが、それぞれ応力緩和層として機能し、キャピラリ50による応力が、各層および各層同士の接合部分に分散される。これにより、キャピラリ50による押圧力が、第1金属層41や第2絶縁膜19や第2金属層42のいずれかに集中して作用することが抑制され、各層が破壊されることが抑止されている。発光装置1は、このような工程を経て、作製することができる。
【0040】
本発明の製造方法によれば、ボンディング時における絶縁膜の損傷を抑制し、この絶縁
膜の抑制にともなう絶縁破壊を低減することができる。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、GaPからなるコンタクト層15を例示しているが、これに限定されるものではない。また、上記実施形態では、パッド電極7aを、第1金属層41と第2金属層42との2層構造で構成したが、電極パッド部は、例えば3層以上の金属層が積層された構造でもよく、また、1つの金属層から構成してもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、半導体装置として、発光素子を備える発光装置を例に説明したが、半導体装置としては、発光素子を備える発光装置の他に、受光素子を備える受光装置や、光電変換素子を備える光電変換装置などであってもよく、特に限定されない。
【符号の説明】
【0043】
3 基板
5 発光部
7 表面電極
7a パッド電極
7b 配線導体部
17 第1絶縁膜
19 第2絶縁膜
22 ボンディングボール
22S 最大外接円
24 ボンディングワイヤ
41 第1金属層
42 第2金属層
45、47 側面部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基板と、
前記導電性基板の一方主面に積層された複数の半導体層からなる半導体素子部と、
前記導電性基板の前記一方主面の少なくとも一部を覆う第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に配置された、前記半導体素子部に電気的に接続されたパッド電極と、前記パッド電極の上面に接合したボンディングボールを備える、前記半導体素子部に電力を供給するためのボンディングワイヤと
を有する半導体装置であって、
前記パッド電極の周辺領域で前記第1絶縁膜を被覆する第2絶縁膜をさらに備え、
前記第2絶縁膜は、前記第1絶縁膜の前記周辺領域から前記パッド電極の側面のうち前記第1絶縁膜側の一部領域にかけて連続して被覆している被覆部分と、前記被覆部分に連なって前記パッド電極の前記側面から内部に入り込んで延在している延在部分とを備え、
前記延在部分の少なくとも一部が、前記ボンディングボールの下方に位置していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記パッド電極は、前記半導体素子部に配線導体層を介して接続された第1金属層と、前記第1金属層上に積層された第2金属層とを有しており、
前記第2絶縁膜の前記延在部分は、前記第1金属層と前記第2金属層との間に入り込んでいることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記パッド電極の前記側面のうち、前記第1金属層に対応する側面部分は、前記第2金属層に対応する側面部分よりも、前記パッド電極の中央に近い側に位置していることを特徴とする請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体素子部は、前記ボンディングワイヤを介して供給された電力によって発光する発光素子部分を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
導電性基板の一方主面に複数の半導体層を積層して半導体素子部を形成する工程と、
前記導電性基板の前記一方主面の少なくとも一部を覆う第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜上に、配線導体層を介して前記半導体素子部に接続された第1金属層を形成する工程と、
前記第1金属層の周辺領域の前記第1絶縁膜の上面から前記第1金属層の側面を経て前記第1金属層の上面の周縁部分にかけて延在する第2絶縁膜を形成する工程と、
前記第1金属層の前記上面に、周縁部分の前記第2絶縁膜も覆うように第2金属層を形成する工程と、
前記半導体素子部に電力を供給するためのボンディングワイヤを前記第2金属層の上面に、ボンディングボールの接合面の外周が前記周縁部分の前記第2絶縁膜の上方に位置するように接合する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−212743(P2012−212743A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76966(P2011−76966)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】