説明

半導体装置の製造方法

【課題】トランジスタをより高速に動作させることができるようにする。
【解決手段】リン酸および過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより選択的にInGaAsをエッチングすることで、n−InGaAs層102をパターニングしてソースコンタクト層(第1半導体層)112を形成するとともに、チャネル層114の側部をエッチングして幅が狭くされたチャネル層114aを形成する。このウェットエッチングにより、所望のメサ幅(例えば15nm)としたチャネル層114aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、InPおよびInGaAsを用いて作製される半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化合物半導体を用いた縦型トランジスタは、ボトムアップにより作製する方法と、トップダウンにより作製する方法とがある。ボトムアップにより作製された縦型トランジスタとしては、例えば、InAs基板の上に配置したAuのドットの上に、選択的にInAsのナノワイヤー(メサ構造)を結晶成長させることで形成するナノワイヤートランジスタが提案されている。しかしながら、この技術では、ナノメータサイズのメサ構造を結晶成長により形成できるが、Auのドットの上おける結晶成長の方向制御が容易ではなく、同一基板の上に複数のナノワイヤートランジスタを配列制御することが困難であり、高集積化が容易ではない。
【0003】
一方、トップダウンによる作製は、現在主に半導体装置の製造に用いられている方法であり、この方法により製造された縦型トランジスタが提案されている(非特許文献1参照)。このトップダウンによる製造方法は、トランジスタを構成する各部分となる層を積層し、これらの積層した各層を、公知のリソグラフィー技術およびエッチング技術により、所望の形状にパターニングするものである。
【0004】
例えば、まず、図5Aに示すように、InPからなる基板501の上に、n−InGaAsからなるソースコンタクト層502,n−InP層503,およびi−InGaAs層504をこの順に堆積して形成する。続いて、i−InGaAs層504の上にタングステン層505を形成する。次に、公知のリソグラフィー技術およびエッチング技術によりタングステン層505をパターニングすることで、図5Bに示すように、ドレイン電極515を形成する。
【0005】
次に、よく知られた反応性イオンエッチング(RIE)を用いてi−InGaAs層504を選択的にエッチングすることで、図5Cに示すように、チャネル層514を形成する。このエッチングでは、層厚方向に一部のn−InP層503もエッチングされ、部分的にメサ構造が形成されたn−InP層503aとなる。
【0006】
次に、既に形成されているチャネル層514をマスクとして用いるウェットエッチングによりn−InP層503aを選択的にエッチングすることで、図5Dに示すように、ソース層513を形成する。この後、図5Eに示すように、ゲート絶縁層506を形成し、また、ゲート電極507を形成する。なお、図5Eには示されていない領域において、ソースコンタクト層502に接続するソース電極が形成されている。
【0007】
上述したトップダウンによる製造方法によれば、ソース層513およびチャネル層514を含む縦型トランジスタのメサ構造部を、基板平面の法線方向に再現性よく形成できるため、複数のトランジスタの配列制御は容易であり、高集積化が容易である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】H. SAITO, Y. MIYAMOTO, and K. FURUYA, "VERTICAL InGaAs-MOSFET WITH HETERO-LAUNCHER AND UNDOPED CHANNEL", International Conference on Indium Phosphide & Related Materials, (IPRM '09), pp. 311-314, 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した製造方法では、次に示す問題がある。
【0010】
まず、上述したように、垂直性に優れたメサ構造を形成するために、プラズマを利用したドライエッチングを用いている。このため、高エネルギーのイオンや中性粒子などがエッチングしている半導体の表面に衝突し、ダメージを形成し、トランジスタの特性を悪化させている。この結果、トランジスタをより高速に動作させることができないという問題がある。
【0011】
例えば、上記構造の縦型トランジスタは、現在報告されている中で最も高い遮断周波数である765GHzを超える1THz以上の遮断周波数が期待されている。このような高速動作を実現するためには、幅(メサ幅)20nm程度のメサ構造が必要になることが、シミュレーションにより判明している。しかしながら、上述したようにドライエッチングによりパターニングしたメサ構造による縦型トランジスタでは、動作が確認できたのはメサ幅が50nmまでであり、これより小さいメサ幅とした場合には、動作していない。これは、ドライエッチングによる上述したダメージの発生が原因であるものと考えられる。
【0012】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、トランジスタをより高速に動作させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、InPからなる基板の上にInGaAsからなる第1半導体層を形成する工程と、第1半導体層の上にInPからなる第2半導体層を形成する工程と、第2半導体層の上にInGaAsからなる第3半導体層を形成する工程と、第3半導体層の上に電極層を形成する工程とを少なくとも備え、第3半導体層の形成では、反応性イオンエッチングによるパターニングの後、リン酸および過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより選択的にInGaAsをエッチングすることで、第3半導体層の側部をエッチングして第3半導体層の幅を狭くする。
【0014】
上記半導体装置の製造方法において、基板の上にn型のInGaAsからなる第1InGaAs層を形成する工程と、InGaAs層の上にn型のInPからなるInP層を形成する工程と、InP層の上にノンドープのInGaAsからなる第2InGaAs層を形成する工程と、第2InGaAs層の上に金属層を形成する工程と、金属層をパターニングしてドレイン電極となる電極層を形成する工程と、反応性イオンエッチングにより第2InGaAs層をパターニングしてチャネル層となる第3半導体層を形成する工程と、塩酸およびリン酸を用いたウェットエッチングにより選択的にInPをエッチングすることでInP層をパターニングしてソース層となる第2半導体層を形成する工程と、リン酸および過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより選択的にInGaAsをエッチングすることで、第1InGaAs層をパターニングしてソースコンタクト層となる第1半導体層を形成するとともに、第3半導体層の側部をエッチングして第3半導体層の幅を狭くする工程と、第1半導体層に接続するソース電極を形成する工程と、幅が狭くされた第3半導体層の側部にゲート絶縁層を形成する工程と、第3半導体層の側部にゲート絶縁層を介してゲート電極を形成する工程とを備えるようにしてもよい。
【0015】
上記半導体装置の製造方法において、半絶縁性のInPからなる基板の上に第1導電型のInPからなるサブコレクタ層を形成する工程と、サブコレクタ層の上にInGaAsからなる第1InGaAs層を形成する工程と、コレクタ層の上に第2導電型のInGaAsからなる第2InGaAs層を形成する工程と、InGaAs層の上にノンドープInPからなるInP層を形成する工程と、InP層の上に第1導電型のInGaAsからなる第3InGaAs層を形成する工程と、第3InGaAs層の上に金属層を形成する工程と、金属層をパターニングしてエミッタ電極となる電極層を形成する工程と、反応性イオンエッチングにより第3InGaAs層をパターニングしてエミッタコンタクト層となる第3半導体層を形成する工程と、塩酸およびリン酸を用いたウエットエッチングにより選択的にInPをエッチングすることでInP層をパターニングしてエミッタ層となる第2半導体層を形成する工程と、リン酸および過酸化水素水を用いたウエットエッチングにより選択的にInGaAsをエッチングすることで、第3半導体層の側部をエッチングして第3半導体層の幅を狭くする工程と、第2InGaAs層をパターニングしてベース層となる第1半導体層を形成する工程と、第1InGaAs層をパターニングしてコレクタ層を形成する工程と、第1半導体層に接続するベース電極およびコレクタ層に接続するコレクタ電極を形成する工程とを少なくとも備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、反応性イオンエッチングによるパターニングの後、リン酸および過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより選択的にInGaAsをエッチングすることで、第3半導体層の側部をエッチングして第3半導体層の幅を狭くするようにしたので、トランジスタをより高速に動作させることができるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】図1Aは、本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための製造工程における状態を示す断面図である。
【図1B】図1Bは、本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための製造工程における状態を示す断面図である。
【図1C】図1Cは、本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための製造工程における状態を示す断面図である。
【図1D】図1Dは、本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための製造工程における状態を示す断面図である。
【図1E】図1Eは、本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための製造工程における状態を示す断面図である。
【図1F】図1Fは、本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための製造工程における状態を示す断面図である。
【図1G】図1Gは、本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための製造工程における状態を示す断面図である。
【図1H】図1Hは、本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための製造工程における状態を示す断面図である。
【図1I】図1Iは、本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための製造工程における状態を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態により作製したチャネル層の状態を走査型電子顕微鏡で観察した写真である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態により作製したチャネル層の状態を走査型電子顕微鏡で観察した写真である。
【図4】図4は、ヘテロバイポーラトランジスタの構成を示す断面図である。
【図5A】図5Aは、縦型トランジスタの製造方法を説明するための製造工程における状態を示す断面図である。
【図5B】図5Bは、縦型トランジスタの製造方法を説明するための製造工程における状態を示す断面図である。
【図5C】図5Cは、縦型トランジスタの製造方法を説明するための製造工程における状態を示す断面図である。
【図5D】図5Dは、縦型トランジスタの製造方法を説明するための製造工程における状態を示す断面図である。
【図5E】図5Eは、縦型トランジスタの製造方法を説明するための製造工程における状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1A〜図1Iは、本発明の実施の形態における半導体装置の製造方法を説明するための各工程における断面の状態を示す断面図である。
【0019】
まず、図1Aに示すように、半絶縁性のInPからなる基板101の上に、n型とされたInGaAsからなるn−InGaAs層(第1InGaAs層)102,n型とされたInPからなるn−InP層(InP層)103,およびi型とされた(ノンドープの)InGaAsからなるi−InGaAs層(第2InGaAs層)104をこの順に堆積して形成する。続いて、i−InGaAs層104の上に、例えばタングステン(W)からなる金属層105を形成する。
【0020】
次に、金属層105をパターニングすることで、図1Bに示すように、ドレイン電極(電極層)115を形成する。例えば、クロムからなる金属マスク(不図示)を用い、CF4ガスによるドライエッチング(反応性イオンエッチング)により金属層105を選択的にエッチングすることで、ドレイン電極115が形成できる。なお、金属マスクは、例えば、よく知られたリフトオフ法により形成すればよい。
【0021】
次に、よく知られた反応性イオンエッチング(RIE)によりi−InGaAs層104をパターニングし、図1Cに示すように、チャネル層(第3半導体層)114を形成する。例えば、CH4ガスおよびH2ガスを用いたICP−RIEにより、前述した金属マスクおよびドレイン電極115をマスクパターンとしてi−InGaAs層104を選択的にエッチングすることで、チャネル層114が形成できる。ここで、チャネル層114を形成するためのドライエッチングでは、層厚方向に一部のn−InP層103もエッチングされ、部分的にメサ構造が形成されたn−InP層103aとなる。
【0022】
次に、塩酸およびリン酸からなる水溶液をエッチング液としたウェットエッチングにより選択的にInPをエッチングすることで、n−InP層103aをパターニングし、図1Dに示すように、ソース層(第2半導体層)113を形成する。このエッチングでは、InGaAsに対してInPが選択的にエッチングされるので、n−InGaAs層102がエッチングストップ層として機能する。
【0023】
次に、メサ構造の近傍以外をレジスト層(不図示)などで保護した状態で、リン酸および過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより選択的にInGaAsをエッチングすることで、図1Eに示すように、n−InGaAs層102をパターニングしてソースコンタクト層(第1半導体層)112を形成するとともに、チャネル層114の側部をエッチングして幅が狭くされたチャネル層114aを形成する。このウェットエッチングにより、所望のメサ幅(例えば15nm)としたチャネル層114aを形成する。メサ幅は、図1Eの断面におけるチャネル層114aの幅である。なお、このエッチングにより、ソースコンタクト層112以外の領域の基板101が露出する。
【0024】
リン酸および過酸化水素水からなるエッチャント(エッチング液)は、InGaAsとInPの選択性に優れ、また、InGaAsの縦方向のエッチングレートよりも横方向のエッチングレートが遅く、異方性のあるエッチングが行える。例えば、リン酸:過酸化水素水:水=1:2:40(体積比)としたエッチング液を用いればよい。このエッチング液は、InGaAsの<01−1>方向のエッチングが<−100>方向よりも2倍程度遅い。なお、<−100>方向は、基板の法線方向であり、<01−1>方向は、図1Eの紙面左右の方向である。また、発明者らの実験によれば、上記エッチング液では、InPのエッチングは観測されていない。従って、上記エッチング液によるInPのエッチングレートは、InGaAsのエッチングレートよりも大幅に遅いものと考えられる。
【0025】
上述したリン酸および過酸化水素水によるエッチング液を用いることで、エッチング時間10秒で、InGaAsの層は、幅方向に30nmエッチングできる。例えば、チャネル層114をメサ幅75nmに形成すれば、上記エッチング液によるエッチングを10秒行うことで、メサ幅15nmのチャネル層114aが形成できる。また、このエッチングによる寸法制御は、高い再現性を備えている。
【0026】
次に、図1Fに示すように、基板101の表面,ソースコンタクト層112の側面,ソース層113の露出している面,チャネル層114aの側面,およびドレイン電極115の露出している面に、酸化アルミニウムからなる絶縁膜106を形成する。例えば、よく知られた原子層成長(ALD)法により、絶縁膜106を形成すればよい。また、少なくともチャネル層114aの側方が埋め込まれ、ドレイン電極115の途中までが埋め込まれるように、レジスト層107を形成する。例えば、レジストを塗布して塗布膜を形成した後、所望とする厚さにまで塗布膜をエッチバックすることで、レジスト層107が形成できる。
【0027】
次に、レジスト層107に覆われずに露出している絶縁膜106を選択的にエッチング除去することで、図1Gに示すように、ゲート絶縁層116を形成する。この後、レジスト層107は除去する。
【0028】
次に、図1Hに示すように、ゲート電極108aおよび金属層108bを形成することで、縦型MOSFETが完成する。例えば、基板101の平面に対して斜めの方向より蒸着することで、分離した状態でゲート電極108aおよび金属層108bが形成できる。この後、図1Iに示すように、例えばベンゾシクロブテンからなるパッシベーション膜109を形成する。例えば、ベンゾシクロブテンを塗布して樹脂膜を形成し、この樹脂膜を熱硬化した後、所望とする厚さまでエッチバックすることで、パッシベーション膜109が形成できる。ベンゾシクロブテンからなる樹脂膜のエッチバックは、CF4ガスを用いたドライエッチングにより行えばよい。なお、図1Eから図1Iの図示されていない領域において、ソースコンタクト層112に接続するソース電極が形成されている。
【0029】
この縦型MOSFETは、ソース層113とチャネル層114とによるいわゆるヘテロ構造電子ランチャにより電子を飛び出させ、飛び出させた電子を、散乱させることなく、チャネル層114を走行させることで、高速動作を可能としている。チャネル層114は、真性半導体から構成されており、電子が走行するときの障害が抑制され、電子をより高速に走行させることを可能としている。
【0030】
図2および図3は、本実施の形態により作製したチャネル層の状態を走査型電子顕微鏡で観察した写真である。図2は、ドライエッチングでチャネル層を形成した状態を示し、図3は、ウェットエッチングで所望とするメサ幅にチャネル層を形成した状態を示している。リン酸および過酸化水素水によるエッチング液を用いることで、図3に示すように、
InGaAsからなるチャネル層が選択的に横方向にエッチングされ、かつ、チャネル層の側面においては、垂直性が維持されていることが確認される。
【0031】
上述した実施の形態によれば、ドライエッチングにより生じたチャネル層114の側面のプラズマによるダメージ層が、所望とする幅のチャネル層114aを形成するときのウェットエッチングにより除去されるものと考えられ、デバイス特性には有利に働くと考えられる。
【0032】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、ドライエッチングをした後にウェットエッチングをすることで、所望とするメサ幅にInGaAsからなる半導体層を形成するようにしたので、トップダウン法でも微細かつ垂直な半導体メサの形成が可能となる。また、ウェットエッチングを用いているため、ドライエッチングで生じた半導体層側面のダメージ層が除去されるようになる。
【0033】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形が実施可能であることは明白である。例えば、上述した実施の形態では、半絶縁性のInP基板を用いているが、n型のInP基板を用いても、上記実施の形態と同様に、縦型の電界効果型トランジスタが製造可能である。
【0034】
また、例えば、上述では、縦型の電界効果型トランジスタを例に説明したが、これに限るものではなく、InP系の化合物半導体を用いたヘテロ接合バイポーラトランジスタにも適用可能である。
【0035】
InP系のヘテロバイポーラトランジスタは、例えば、図4に示すように、まず、半絶縁性のInPからなる基板401の上に、n+−InPからなるサブコレクタ層402、n-−InGaAsからなるコレクタ層404、p+−InGaAsからなるベース層405、i−InPからなるエミッタ層407、およびn+−InGaAsからなるエミッタコンタクト層408を備える。
【0036】
また、エミッタコンタクト層408の上には、エミッタ電極409が形成され、コレクタ層404の周囲のサブコレクタ層402の上には、コレクタ電極403が形成され、エミッタ層407の周囲のベース層405の上には、エミッタ層407より離間してベース電極406が形成されている。また、ベース層405の上のエミッタコンタクト層408の領域とベース電極406との間の領域である外部ベース層の表面に流れる表面再結合電流を抑制するために、エミッタコンタクト層408の領域より延長してエミッタ層407が形成されている。エミッタ層407の延長部分は、いわゆるレッジ構造と呼ばれている。
【0037】
上述したヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいては、動作速度向上のために、エミッタコンタクト層408によるエミッタメサ部の幅(いわゆるエミッタ幅)およびベース電極406の幅をより小さくし、ベース抵抗およびベース・コレクタ容量を低減することが重要となる。
【0038】
従って、ヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいても、InGaAsからなるエミッタコンタクト層408の幅を、例えば、20nm程度にすることが要求される。このように狭い幅のエミッタコンタクト層408は、前述した実施の形態と同様に、ドライエッチングによりInGaAs層をパターニングした後、リン酸および過酸化水素水を用いたウェットエッチングによる選択的なInGaAsのエッチングにより、側部を除去することで形成すればよい。
【0039】
このヘテロ接合バイポーラトランジスタの製造について簡単に説明すると、まず、Feをドープすることなどにより半絶縁性とされたInPからなる基板の上にn+−InPからなるサブコレクタ層402を形成し、この上にn-−InGaAsの層(第1InGaAs層)を形成し、この上にp+−InGaAsの層(第2InGaAs層)を形成し、この上にi−InPの層(InP層)を形成し、この上にn+−InGaAsの層(第3InGaAs層)を形成し、また、この上に、金属層を形成する。
【0040】
次に、金属層をパターニングしてエミッタ電極409(電極層)を形成する。
【0041】
次に、反応性イオンエッチングによりn+−InGaAsの層をパターニングしてエミッタコンタクト層408(第3半導体層)を形成し、また、塩酸およびリン酸を用いたウェットエッチングにより選択的にInPをエッチングすることでi−InPの層をパターニングしてエミッタ層407(第2半導体層)を形成する。
【0042】
次に、リン酸および過酸化水素水を用いたウェットエッチングにより選択的にInGaAsをエッチングすることで、エミッタコンタクト層408の側部をエッチングしてエミッタコンタクト層408の幅を狭くする。
【0043】
次に、エミッタ電極409より広い面積のマスクパターンを用い、エミッタ層407および幅を狭くしたエミッタコンタクト層408をこのマスクパターンで覆った状態で、n+−InGaAsの層およびn-−InGaAsの層をパターニングすることで、ベース層405およびコレクタ層404を形成する。この後、コレクタ電極403およびベース電極406を形成する。
【0044】
以上のようにすることで、エミッタコンタクト層408におけるプラズマダメージを除去した上で、エミッタコンタクト層408を所望とするエミッタ幅に形成するとこができる。なお、上述したバイポーラトランジスタにおいて、n型およびp型を入れ替えてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0045】
101…基板、102…n−InGaAs層(第1InGaAs層)、103…n−InP層(InP層)、103a…n−InP層、104…i−InGaAs層(第2InGaAs層)、105…金属層、106…絶縁膜、107…レジスト層、108a…ゲート電極、108b…金属層、109…パッシベーション膜、112…ソースコンタクト層(第1半導体層)、113…ソース層(第2半導体層)、114,114a…チャネル層(第3半導体層)、115…ドレイン電極(電極層)、116…ゲート絶縁層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
InPからなる基板の上にInGaAsからなる第1半導体層を形成する工程と、
前記第1半導体層の上にInPからなる第2半導体層を形成する工程と、
前記第2半導体層の上にInGaAsからなる第3半導体層を形成する工程と、
前記第3半導体層の上に電極層を形成する工程と
を少なくとも備え、
前記第3半導体層の形成では、反応性イオンエッチングによるパターニングの後、リン酸および過酸化水素水を用いたウエットエッチングにより選択的にInGaAsをエッチングすることで、前記第3半導体層の側部をエッチングして前記第3半導体層の幅を狭くする
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記基板の上にn型のInGaAsからなる第1InGaAs層を形成する工程と、
前記InGaAs層の上にn型のInPからなるInP層を形成する工程と、
前記InP層の上にノンドープのInGaAsからなる第2InGaAs層を形成する工程と、
前記第2InGaAs層の上に金属層を形成する工程と、
前記金属層をパターニングしてドレイン電極となる前記電極層を形成する工程と、
反応性イオンエッチングにより前記第2InGaAs層をパターニングしてチャネル層となる前記第3半導体層を形成する工程と、
塩酸およびリン酸を用いたウエットエッチングにより選択的にInPをエッチングすることで前記InP層をパターニングしてソース層となる前記第2半導体層を形成する工程と、
リン酸および過酸化水素水を用いたウエットエッチングにより選択的にInGaAsをエッチングすることで、前記第1InGaAs層をパターニングしてソースコンタクト層となる前記第1半導体層を形成するとともに、前記第3半導体層の側部をエッチングして前記第3半導体層の幅を狭くする工程と、
前記第1半導体層に接続するソース電極を形成する工程と、
幅が狭くされた前記第3半導体層の側部にゲート絶縁層を形成する工程と、
前記第3半導体層の側部にゲート絶縁層を介してゲート電極を形成する工程と
を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
半絶縁性のInPからなる前記基板の上に第1導電型のInPからなるサブコレクタ層を形成する工程と、
前記サブコレクタ層の上にInGaAsからなる第1InGaAs層を形成する工程と、
前記コレクタ層の上に第2導電型のInGaAsからなる第2InGaAs層を形成する工程と、
前記InGaAs層の上にノンドープInPからなるInP層を形成する工程と、
前記InP層の上に第1導電型のInGaAsからなる第3InGaAs層を形成する工程と、
前記第3InGaAs層の上に金属層を形成する工程と、
前記金属層をパターニングしてエミッタ電極となる前記電極層を形成する工程と、
反応性イオンエッチングにより前記第3InGaAs層をパターニングしてエミッタコンタクト層となる前記第3半導体層を形成する工程と、
塩酸およびリン酸を用いたウエットエッチングにより選択的にInPをエッチングすることで前記InP層をパターニングしてエミッタ層となる前記第2半導体層を形成する工程と、
リン酸および過酸化水素水を用いたウエットエッチングにより選択的にInGaAsをエッチングすることで、前記第3半導体層の側部をエッチングして前記第3半導体層の幅を狭くする工程と、
前記第2InGaAs層をパターニングしてベース層となる前記第1半導体層を形成する工程と、
第1InGaAs層をパターニングしてコレクタ層を形成する工程と、
前記第1半導体層に接続するベース電極および前記コレクタ層に接続するコレクタ電極を形成する工程と
を少なくとも備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−233617(P2011−233617A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100797(P2010−100797)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年3月3日 社団法人応用物理学会発行の「2010年春季<第57回>応用物理学関係連合講演会[講演予稿集](DVD)」に発表
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】