説明

半導体装置の製造方法

【課題】チップ厚の薄い半導体チップであっても、正確に画像取得を行うことができる半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】基板上に複数のチップを積層する半導体装置の一連の製造工程において、ダイシングテープ等の固定用シートからの半導体チップのピックアップ(STEP8−3)に先立ち、半導体チップの薄厚化による応力によって反ってしまった半導体チップを、透明矯正板を押圧することによって平坦化させ(STEP8−1)、この状態で半導体チップの撮像を行い、得られた画像から半導体チップの位置・方向および良/不良マークの確認をする(STEP8−2)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップを基板上に積層する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージの高密度化に伴い、半導体チップの高密度実装技術が必要になる。半導体装置の製造工程においては、まず、半導体ウエハの表面に素子を形成し、半導体ウエハの裏面を研削して半導体ウエハの厚みを薄くするとともに、半導体ウエハを個々の半導体チップにダイシングし、これら個片化された半導体チップを順にピックアップする。次いで、ピックアップした半導体チップを配線基板やリードフレーム等の基板上にダイボンディングする。この後、基板上に実装された半導体チップと基板との間でワイヤボンディング及び樹脂封止を実施することによって、各種形状の半導体装置が作製される。
【0003】
なお、ダイシングシートから半導体チップをピックチップする際、これに先立って、ウエハ検出器(たとえばウエハ認識カメラ)で、半導体チップの位置・方向および良/不良マークの確認を行う。従来、半導体チップを認識する場合、半導体チップにハロゲン照明やLED照明などの同軸落射照明を使用し、その反射光をウエハ検出器で撮像することにより、半導体チップの位置・方向および良/不良マークの確認を行い、半導体チップが良品か否かを判断しピックアップを行っている。
【0004】
半導体チップは、チップ厚が100μm程度の薄膜化では、ほとんど変形は発生しない。しかしながら更に薄膜化を進めて85μm程度にすると、半導体チップの内部応力によって凹状または凸状に変形する。そのため、従来の同軸落射照明では半導体チップからの光が均一に反射されず、ウエハ検出器で光を正確に捉えることができなくなり、認識率が低下し、半導体チップの位置・方向および良/不良マークの確認ができなくなる。
【0005】
これに対して従来、面発光照明を用い、さらにその面発光照明からの照射光を拡散板を透過させた後にピックアップ対象の半導体チップの主面に照射し、その反射光をウエハ検出器によって受光することによって、ピックアップ対象の半導体チップの主面の画像を取得することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−66452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記面発光照明からの照射光を拡散板を透過させた後に半導体チップの主面に照射する方法においては、半導体チップの変形量が小さい場合はよいが、変形量が大きくなると照明の数と光の入射角度などの調整が難しく、半導体チップの種類やサイズによって配置を変化させる必要があり調整に時間を有する。チップ厚が85μm以下に薄厚化されている場合、UV照射後の接着剤層の硬さとエキスパンドによる固定用シートの張りにより、40μm〜60μmもの反りが発生し、この方法では対処しきれず実質的に不可能であるという問題があった。
【0008】
さらにチップ厚が85μm以下に薄厚化されている場合、UV照射後の硬化した接着剤層の影響により、半導体チップのピックアップ時(剥離時)に大きな力が必要となり、半導体チップを固定用シートから剥離する際にクラックが発生するという問題もあった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、半導体チップの位置認識を画像取得によって行う工程において、チップ厚が薄く変形量が大きい半導体チップであっても、正確に画像取得を行うことができ、正確な位置認識を行うことができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる半導体装置の製造方法は、基板上に複数のチップを積層する半導体装置の製造方法において、半導体素子が形成されたウエハのダイシングラインまたはチップ分割ラインに沿って、半導体素子の形成面側から完成時のチップの厚さよりも深い溝を形成し、ウエハの半導体素子の形成面上に表面保護シートを貼り付け、ウエハの裏面を完成時のチップの厚さまで研削して、ウエハを個々のチップに分離し、表面に接着剤層が形成された固定用シートを分離されたチップの裏面に貼り付け、表面保護シートを剥離し、分離されたチップに対応して、接着剤層を切断し、固定用シートをエキスパンドして、チップを剥がれやすい状態にし、チップの半導体素子の形成面を透明矯正板で押圧してチップの反りを矯正し、チップを撮像し得られた画像からチップの位置誤差を検出し、チップを固定用シートからピックアップし、ピックアップしたチップを位置誤差を補正して基板上にダイボンディングすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる半導体装置の製造方法によれば、チップ厚の薄い半導体チップであっても、正確に画像取得を行うことができ、これにより半導体チップの位置認識を正確に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施の形態1の半導体装置の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
【図2】図2は、ウエハの表面部に半導体素子を形成する半導体素子形成工程を示す図である。
【図3】図3は、形成された個々の半導体素子に基づいてウエハに溝を形成する工程を示す図である。
【図4】図4は、ウエハに表面保護テープを貼り付ける工程を示す図である。
【図5】図5は、ウエハの裏面部を研削及び研磨して複数の半導体チップに分割する工程を示す図である。
【図6】図6は、ウエハを固定用シートに搭載する工程を示す図である。
【図7】図7は、ウエハを固定用シートに搭載する工程を示す図である。
【図8】図8は、ウエハから表面保護テープを剥離する工程を示す図である。
【図9】図9は、レーザにて接着剤層を切断する工程を示す図である。
【図10】図10は、ダイシングテープをエキスパンドして接着剤層を割断する工程を示す図である。
【図11】図11は、分離した半導体チップをピックアップする工程を示す図である。
【図12】図12は、ピックアップした半導体チップをリードフレームにダイボンディングする工程を示す図である。
【図13】図13は、半導体チップを樹脂にてモールドする工程を示す図である。
【図14】図14は、図1のピックアップ・ダイボンディングの工程の詳細を示すフローチャートである。
【図15】図15は、実施の形態1のダイボンダ装置の斜視図である。
【図16】図16は、ウエハ検出器の模式側面図である。
【図17】図17は、透明矯正板の斜視図である。
【図18】図18は、透明矯正板、ウエハ検出器及びピックアップコレットの動作を示す模式図である。
【図19】図19は、ウエハ検出器の他の例を示す、透明矯正板、ウエハ検出器及びピックアップコレットの動作を示す模式図である。
【図20】図20は、実施の形態2のダイボンダの斜視図である。
【図21】図21は、本実施の形態のピックアップコレットの下面図である。
【図22】図22は、図21のピックアップコレットの側断面図である。
【図23】図23は、実施の形態2のピックアップコレット及びウエハ検出器の動作を示す模式図である。
【図24】図24は、透明矯正板兼用型のピックアップコレットの他の例を示す下面図である。
【図25】図25は、図24のピックアップコレットの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、半導体装置の製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
実施の形態1.
図13は、本実施の形態の半導体装置の製造方法により製造された半導体装置を模式的に示す横断面図である。半導体装置50は、配線基板或いはリードフレームなどの基板41上に積層された9枚の半導体チップ(チップ)40を有している。個々の半導体チップ40は、ボンディングワイヤ42により基板41と電気的に接続されている。基板41及び個々の半導体チップ40は、相互間に挟まれた接着剤層16により固着されている。そして、積層された半導体チップ40とボンディングワイヤ42は、封止樹脂43によって封止されている。基板41の裏面には、はんだボール44が設けられている。
【0015】
9枚の半導体チップ40は、NAND型フラッシュメモリを内蔵する8枚の半導体チップと、コントローラとしてのドライブ制御回路を内蔵する1枚の半導体チップとからなる。個々の半導体チップ40は薄厚化され、その厚さは約20μmである。また、接着剤層16の厚さは約40μm、基板41の厚さは約110μm、半導体装置50全体の厚さは約770μmである。
【0016】
このような薄厚化された半導体チップ40を積層して実装する半導体装置50(実装する半導体チップ40の厚さが概ね85μm以下)の製造方法について説明する。なお、最初に極薄の半導体装置50の一連の製造方法を最初から最後まで説明し、次いで特定の工程について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態の半導体装置の一連の製造方法の各工程を示すフローチャートである。また、図2は、ウエハの表面部に半導体素子を形成する半導体素子形成工程、図3は、形成された個々の半導体素子に基づいてウエハに溝を形成する工程、図4は、ウエハに表面保護テープを貼り付ける工程、図5は、ウエハの裏面部を研削及び研磨して複数の半導体チップに分割する工程、図6及び図7は、ウエハを固定用シート(ダイシングテープ)に搭載する工程、図8は、ウエハから表面保護テープを剥離する工程、図9は、レーザにて接着剤層を切断する工程、図10は、固定用シート(ダイシングテープ)をエキスパンドして接着剤層を割断する工程、図11は、分離した半導体チップをピックアップする工程、図12は、ピックアップした半導体チップをリードフレームにダイボンディングする工程、及び図13は、半導体チップを樹脂にてモールドする工程を示す図である。
【0018】
図1のフローチャートに沿って、上記半導体装置50の製造方法について説明する。実装する半導体チップ40の厚さが概ね85μm以下の非常に薄い半導体装置50の製造においては、例えば以下のように行われる。
[半導体素子の形成]
まず、図2に示す如く、ウエハ11の主表面に、周知のプロセスにより種々の半導体素子12を形成する(STEP1)。
【0019】
[ウエハのハーフカット]
次に、図3に示す如く、主表面に各種の半導体素子12が形成されたウエハ11を、半導体素子形成面側を上にしてダイシング装置のチャックテーブル23にバキュームその他の方法で吸着して固定する。そして、ダイシング用ブレード24を任意の回転数で回転させ、切削水を掛けながら、ダイシングラインまたはチップ分割ラインに沿って、所定の深さまで溝22を切り込む。この溝22の深さは、完成時のチップの厚さよりも少なくとも5μm深くする(STEP2)。その後、ウエハ11の洗浄と乾燥処理を行う。
【0020】
[表面保護テープ貼付]
その後、ウエハ11の素子形成面側を保護する目的と、次工程のウエハ裏面研削により分割された半導体チップが互いに離れてしまうのを防止する目的で、図4に示す如く、ローラー26等を用いてウエハ11の素子形成面にUV保護テープ(表面保護テープ)14を貼り付ける(STEP3)。なお、UV保護テープ14は、後の工程にて糊材の接着力を低下させる目的で行うUV照射を行わないのであれば、UV保護機能のないテープであってもよい。また、UV保護テープ14は、ローラー26に限らず他の方法にて貼り付けられてもよい。
【0021】
[ウエハ裏面研削]
次いで、図示しない研削装置によりウエハ11の裏面研削及び研磨を行ってウエハ11の切断分離を行い、個々の半導体チップ40に分割する(STEP4)。図5に示す如く、砥石28aのついたホイール28を4000〜6000rpmの高速で回転させながら、回転テーブル29上のウエハ11の裏面を研削してウエハ11の厚さを薄くする。上記砥石は、例えば人工ダイヤモンドをフェノール樹脂で固めて成形したものである。回転テーブル29とホイール28を回転させながら砥石28aを降下させ、ウエハ11の裏面を溝22に達するまで削ると、ウエハ11は個々の半導体チップ40に分割される。
【0022】
この裏面研削工程は、2軸で行うことが多い。1軸で予め320〜600番で荒削りした後、2軸で1500〜2000番で鏡面に仕上げ削り(研磨)を行い、ウエハ11裏面研削の条痕を除去する。ウエハ11が個々の半導体チップ40に分割された後も研削及び研磨を続け、少なくとも溝22に達した後5μm以上研削及び研磨する。これによって、ダイシングによって形成された面と研削及び研磨によって形成された面とが交わる部分にチッピングが発生していても、この領域を除去することができる(ストレスリリーフ)。研削及び研磨する量を増加させれば、より大きなチッピングを除去できるが、この研削及び研磨量はウエハ11の厚さや完成時の半導体チップ40の厚さ等必要に応じて設定すれば良い。これによって、半導体チップ40の完成時の厚さは、例えば20μm程度まで薄厚化が可能となる。
【0023】
[固定用シートへ搭載]
その後、個々の半導体チップ40に分割されたウエハ11を、半導体チップ40が互いに離れないようにする目的と、搬送を容易にする目的で、素子形成面側を上に向けて固定用シート(ダイシングテープ)上に載置する(STEP5)。図6に示すような環状のフラットリング30の枠内に固定用シート(ダイシングテープ)31を張り、固定用シート31の弛みや皺などの発生を防止した状態で、図6及び図7に示す如く、フラットリング30の開口内の固定用シート31上にウエハ11を載置する。ここで固定用シート31上には、DAF(Die Attach Film)と呼ばれる接着剤層16が形成されている。ウエハ11は、この接着剤層16上に固着される。
【0024】
次に、UV照射を行ってUV保護テープ14の糊材の接着力を低下させたのち、図8に示す如く、UV保護テープ14をウエハ11から剥離する。
【0025】
[レーザによる接着剤層を切断]
その後、図9に示す如く、ウエハ11を固着した固定用シート31及びフラットリング30を、図示しないチャックテーブルに固定し、上記ウエハハーフカット工程にて形成した溝22に沿ってレーザノズル33を移動させ、接着剤層16を個々の半導体チップ40に対応させて切断する(STEP6)。この接着剤層16の切断工程が完了した時点では、個々の半導体チップ40に対応して接着剤層16に微細な切り込みが入った状態となる。
【0026】
[エキスパンド・接着剤層の割段]
このようにしてレーザにて接着剤層16が切断されたウエハ11は、UV照射を行って接着剤層16を硬化させて接着力を低下させたのち、後で説明するダイボンダ装置のウエハリングホルダ55にセットされる。そして、図10に示す如く、固定用シート31を周囲に向けて広げるようにエキスパンドすることにより、隣接する接着剤層16間を広げるように割段して、半導体チップ40(接着剤層16)を固定用シート31から剥がれやすくした状態にする(STEP7)。この時点で、切断分離された半導体チップ40が固定用シート31上に整列して担持されている状態にある。
【0027】
[ピックアップ・ダイボンディング]
その後、ダイボンダ装置にて半導体チップ40のピックアップ及びダイボンディングを行う(STEP8)。切断分離され整列して担持されている半導体チップ40の固定用シート31からの引き剥がしは、次のようにして行われる。すなわち、図11に示す如く、目標の半導体チップ40を、ウエハリングホルダ55の所定の場所に設けられた突き上げ部34上に移動させ、固定用シート31側をバッキューム吸着して保持する一方、多段突き上げジグ35で半導体チップ40の裏面を突き上げて、固定用シート31の伸張性を利用して、固定用シート31から半導体チップ40を引き離すとともに、ピックアップコレット71で半導体チップ40を吸着把持して、図示しない位置修正ステージに移載する。そして、半導体チップ40の位置・方向や必要に応じて表裏を修正した後、図12に示す如く、ダイボンディングヘッド53により基板41上に移送する。
【0028】
[ワイヤボンディング・モールド等]
次いで、図13に示す如く、各半導体チップ40の電極端子と基板41のインナリードとの間をボンディングワイヤ42で電気的に接続し、半導体チップ40とボンディングワイヤ42を封止樹脂43によって封止し、基板41の裏面にはんだボール44を形成する等を行って、半導体装置50が完成する(STEP9)。
【0029】
[ピックアップ・ダイボンディングの工程の詳細]
次に、上記ピックアップ・ダイボンディングの工程をさらに詳細に説明する。ピックアップ・ダイボンディングの工程は、図14に示すように、目標とする半導体チップ40の反りを矯正する工程(STEP8−1)と、反りが矯正された状態の半導体チップ40の位置・方向及び良/不良マークを確認する工程(STEP8−2)と、位置・方向及び良/不良マークの確認が終了した半導体チップ40をピックアップする工程(STEP8−3)と、ピックアップした半導体チップ40を基板41にダイボンディングする工程(STEP8−4)とを含んでいる。そして、半導体チップ40を1枚引き剥がすたびに、上記STEP8−1〜STEP8−4の工程を繰り返す。
【0030】
[ダイボンダ装置]
図15は、これらの工程にて用いられる本実施の形態のダイボンダ装置(半導体製造装置)の斜視図である。図16は、ウエハ検出器の模式側面図である。図17は、透明矯正板の斜視図である。図18は、透明矯正板、ウエハ検出器及びピックアップコレットの動作を示す模式図である。図15に示すように、ダイボンダ装置100は、レーザにて接着剤層16が切断分離されたウエハ11が供給されるウエハ供給部51と、供給されたウエハ11がウエハ供給部51を介して装着されるウエハリングホルダ55と、半導体チップ40を実装する基板41を搬送するフィーダー52と、半導体チップ40を基板41に圧着するダイボンディングヘッド53と、半導体チップ40の位置・方向を修正する位置修正ステージ56と、半導体チップ40を吸着して把持するピックアップコレット71及びこのピックアップコレット71を移動させるピックアップヘッド70と、ウエハ検出器(ウエハ認識カメラ)60とを備えている。また、マン・マシンインターフェースとしてモニタ81、カラータッチパネル82、ジョイスティック83が装備されている。そして、本実施の形態のダイボンダ装置100においては、半導体チップ40の反りを矯正する透明矯正板76と、この透明矯正板76を移動させる透明矯正板移動用ヘッド75が設けられている。ここで、ピックアップヘッド70は、ピックアップコレット71を移動させる移動手段を構成している。また、透明矯正板移動用ヘッド75は、透明矯正板76を移動させる移動手段を構成している。
【0031】
ウエハリングホルダ55は、固定用シート31の周縁をクランプして周囲に広げるエキスパンド構造を有している。また、ウエハリングホルダ55は、目標となる半導体チップ40を所定の位置へ移動させるために、X軸、Y軸の移動及びθ軸(Z軸回り)の回転ができるようにされている。ピックアップヘッド70は、ピックアップコレット71をY軸及びZ軸に沿って移動可能に支持する。ピックアップコレット71には、半導体チップ40を把持する吸着構造が設けられている。透明矯正板移動用ヘッド75は、ピックアップヘッド70から独立した状態で、透明矯正板76をY軸及びZ軸に沿って移動可能に支持する。ダイボンディングヘッド53においては、半導体チップ吸着把持部53aが、X軸、Y軸、Z軸の移動及びθ軸(Z軸回り)の回転をするようにされており、位置修正ステージ56からピックアップした半導体チップ40の位置・向きを補正して基板41上に押圧(ダイボンディング)できるようにされている。なお、位置修正ステージ56を経由せず、ウエハリングホルダ55から基板41上にピックアップコレット71により直接移送する場合もある。
【0032】
[ウエハ検出器]
ウエハ検出器(ウエハ認識カメラ)60は、ウエハリングホルダ55上のウエハ11(半導体チップ40)が撮像可能な位置に取り付けられ、図16に示すように、筒状の鏡筒61と、鏡筒61の一方の開口端部に設けられたカメラ62と、鏡筒61の他方の開口端外周部に設けられたリング照明63とを有している。リング照明63から照射された光が、半導体チップ40の表面にてはね返り、鏡筒61を介してカメラ62に入射されて、半導体チップ40の画像が撮像される。なお、図16は、本実施の形態の透明矯正板76を用いずに半導体チップ40を撮像する様子を示している。半導体チップ40の薄厚化に伴い、半導体チップ40の内部応力及び裏面の接着剤層16の影響により半導体チップ40が沿ってしまい光が正常に戻らないので正確に撮像することが困難となる場合がある。
【0033】
[透明矯正板]
透明矯正板76は、図17に示す如く、矩形平板状を成し、アクリル等の透明樹脂で、半導体チップ40のパターンが認識できる透過率の材料で作製されている。そして、XY方向大きさは、対象となる半導体チップ40のXY方向大きさと同じかそれ以上の大きさになっている。透明矯正板76は、半導体チップ40のパターンが認識できる透過率の材料であればよく、例えばガラスなどにより作製されてもよい。なお、透明矯正板76の大きさを半導体チップ40のダイシングラインまたはチップ分割ラインを超える大きさとしてもよい。このような大きさとすることにより、隣接する半導体チップの変形による固定用シート31の変形も矯正することができる。
【0034】
次に、上記目標とする半導体チップ40の反りを矯正する工程(STEP8−1)と、反りが矯正された状態の半導体チップ40の位置及び良/不良マークを確認する工程(STEP8−2)と、位置及び良/不良マークの確認が終了した半導体チップ40をピックアップする工程(STEP8−3)の動作を図18に沿って説明する。まず、上記レーザによる接着剤層16を切断の工程を終了したウエハ11が、ウエハ供給部51からウエハリングホルダ55にセットされる。そして、このウエハリングホルダ55上にて、固定用シート31を周囲に向けて広げるエキスパンドが行われる。
【0035】
その後、ウエハリングホルダ55をX軸Y軸にて移動させて、これからピックアップしようとする半導体チップ40がウエハ検出器60の撮像位置(本実施の形態においてはウエハ検出器60の鉛直下)に来るようにする。次いで、透明矯正板移動用ヘッド75は、ピックアップしようとする半導体チップ40の上方に透明矯正板76を移動させ(図18の(a))、その後、所定の高さまで透明矯正板76を下げる。これにより、透明矯正板76は、半導体チップ40の素子形成面を所定の圧力で押圧する。目標の半導体チップ40は、透明矯正板76の下面にて押圧されて押し広げられるように延びて平坦化する。
【0036】
この状態でウエハ検出器60が半導体チップ40の表面を撮像し、この撮像により得た画像データを二値化もしくは多値化して半導体チップ40の位置検出、及び良品/不良品を判別するためのマーク検出等を行う。ウエハ検出器60から照射された光は、半導体チップ40の表面で均一に反射する。なお、半導体チップ40の良品/不良品の判別は、上位工程にてウエハ11内に記憶させた良品/不良品の存在位置のデータを使用して行ってもよい。そして、不良品と判断した場合には、該当する半導体チップ40を破棄する等の動作をする。その後、透明矯正板移動用ヘッド75は、透明矯正板76は、ピックアップコレット71の稼動範囲外に退避する(図18の(b))。
【0037】
続く工程は、周知の半導体装置の製造方法と同様に、多段突き上げジグ35にて裏面より突き上げることで(図11)、固定用シート31の伸張性を利用して固定用シート31から半導体チップ40を引き剥がすとともに、半導体チップ40をピックアップコレット71で吸着把持して、位置修正ステージ56に移載する。そして、半導体チップ40の位置や方向、必要に応じて表裏を修正した後、半導体チップ40をダイボンディングヘッド53によりリードフレーム上に移送し、基板41或いは先に実装されている半導体チップ40に重ねて圧着する(図18の(c))。
【0038】
なお、ウエハ検出器60は、図16に示すタイプのものに限らず、図19に示すようなタイプのものであってもよい。図19に示すウエハ検出器60Bにおいては、装置の側部に設けられた面発光照明66から照射された平行光が、ハーフミラー67にて半導体チップ40方向に屈折される。リング照明63からの光の照射も同時に行われる。両照明の光が組合わされ、その平行光が半導体チップ表面にてはね返り、鏡筒61を介してカメラ62に入射されて、半導体チップ40の画像が撮像される。このようなタイプのウエハ検出器60Bを用いると、より解像度の高い画像が得られ、信頼性が向上する。
【0039】
上記のように、本実施の形態の半導体装置の製造方法は、配線基板或いはリードフレームなどの基板41上に複数の半導体チップ40を積層する半導体装置50の一連の製造工程のなかの半導体チップ40のピックアップ工程において、ダイシングテープ等の固定用シートからの半導体チップ40のピックアップに先立ち、半導体チップ40の薄厚化による応力によって反ってしまった半導体チップ40を、透明矯正板によって平坦化させ、この状態で半導体チップ40の撮像を行い、半導体チップの位置・方向および良/不良マークの確認をする。チップ厚が薄く変形量が大きい半導体チップであっても、ウエハ検出器60から照射された光は、半導体チップ40の表面で均一に反射する。これにより、正確に画像取得を行うことができ、半導体チップの位置認識を正確に行うことができる。
【0040】
また、半導体チップ40のピックアップ工程において、ダイシングテープ等の固定用シート31から半導体チップ40を引き剥がす前に、反ってしまった半導体チップ40を透明矯正板76によって平坦化させるので、半導体チップ40の応力が開放されるとともに、半導体チップ40が固定用シート31上で形状変化することにより、固定用シート31との固着が解け、より剥がしやすい状態となり、半導体チップ剥離時のクラックの発生が減少する。
【0041】
実施の形態2.
図20は、実施の形態2のダイボンダ(半導体製造装置)の斜視図である。図21は、本実施の形態のピックアップコレットの下面図である。図22は、図21のピックアップコレットの側断面図である。本実施の形態のダイボンダ装置101においては、ピックアップコレット77は、上記実施の形態1の透明矯正板の機能も兼ね備えている。すなわち、本実施の形態においては、ピックアップコレットと透明矯正板とが兼用となっている。そのため、図20に示すように、本実施の形態のダイボンダ装置101は、図15に示す実施の形態1のダイボンダ装置100と比較して、透明矯正板76と透明矯正板移動用ヘッド(移動手段)75が省略されている。
【0042】
図21及び図22において、ピックアップコレット77は、アクリル等の透明樹脂で、半導体チップ40のパターンが認識できる透過率の材料で作製された矩形平板状のコレット本体77aを有している。コレット本体77aのXY方向大きさは、対象となる半導体チップ40のXY方向大きさと同じかそれ以上の大きさになっている。また、コレット本体77aのZ方向厚さaは、抗折強度が3N(ニュートン)以上となるような厚さになっている。
【0043】
コレット本体77aの下面には、概略中央部に吸着構造として半導体チップ40を吸着把持するための複数の吸引口77bが形成されている。吸引口77bは、中央に1つと90度ずつ等間隔に離れた位置に4つが形成されている。吸引口77bに連通する吸引通路77cは、中央部から各吸引口77bに向かって十字型に延びるが、吸引口77b及び吸引通路77cは、ウエハ検出器60が行う半導体チップ40の位置及び良/不良マークの確認動作に、支障がない位置に形成されている。つまり、ウエハ検出器60Bは、半導体チップ40の位置(向きを含む)を認識する際、例えば半導体チップ40の周囲の輪郭形状を検出して行い、中央部の画像は使わない。また、良/不良マークは、多少位置がズレても吸引口77b及び吸引通路77cと重ならない位置に印されている。
【0044】
吸着した半導体チップ40の有無を検知する図示しない圧力センサが良好に動作するために、吸引口77bの開口径bは、半導体チップ40を吸着している場合としていない場合とで5kpa以上の差となるような通路径となっている。
【0045】
図23は、本実施の形態のピックアップコレット及びウエハ検出器の動作を示す模式図である。透明矯正板兼用型のピックアップコレット77の動作は、以下のようになる。まず、ピックアップヘッド70は、これからピックアップしようとする半導体チップ40の上方にピックアップコレット77を移動させ(図23の(a))、その後、所定の高さまでピックアップコレット77を下げる。目標の半導体チップ40は、ピックアップコレット77にて押圧されて押し広げられるように延びて平坦化する。この状態でウエハ検出器60Bにより半導体チップ40の位置および良/不良マークの確認が行われる(図23の(b))。
【0046】
その後、多段突き上げジグ35にて裏面より突き上げて(図11)、固定用シート31の伸張性を利用して固定用シート31から半導体チップ40を引き剥がすとともに、ピックアップコレット77の吸引口77bから空気を吸引して半導体チップ40を吸着把持して、位置修正ステージ56に移載する。そして、半導体チップ40の位置や必要に応じて表裏を修正した後、ダイボンディングヘッド53によりリードフレーム上に移送する(図23の(c))。
【0047】
なお、本実施の形態のピックアップコレット77は、アクリル等の透明樹脂で作製されているが、半導体チップ40のパターンが認識できる透過率の材料であればよく、例えばガラスなどにより作製されてもよい。
【0048】
このような構成の半導体装置の製造方法によれば、実施の形態1の半導体装置の製造方法と同様の効果が得られることに加えて、半導体製造装置の構成が簡素化されるので、装置のコストダウンを図ることができる。また、製造タクトが短縮されるので、製品である半導体装置のコストダウンを図ることができる。
【0049】
図24は、透明矯正板兼用型のピックアップコレットの他の例を示す下面図である。図25は、図24のピックアップコレットの側断面図である。図24及び図25に示すピックアップコレット78においては、コレット本体78aの下面に、半導体チップ40を吸着把持するための十字型の吸引溝78bが形成されている。吸引溝78bは、幅が0.5mm程度、深さが0.2mm程度である。吸引溝78bに連通する吸引通路78cは、中央部からコレット本体78aの一端に向けて延びている。吸引溝78b及び吸引通路78cは、図21及び図22に示すものと同様に、ウエハ検出器60が行う半導体チップ40の位置及び良/不良マークの確認動作に、支障がない位置に形成されている。
【0050】
また、吸着した半導体チップ40の有無を検知する図示しない圧力センサが良好に動作するために、吸引通路78cの通路径cは、半導体チップ40を吸着している場合としていない場合とで5kpa以上の差となるような通路径となっている。その他の構成は、図21及び図22に示すものと概略同様である。このような形状のピックアップコレット78においても、図21及び図22に示すものと概略同様の動作をさせることができる。
【符号の説明】
【0051】
11 ウエハ
12 半導体素子
14 保護テープ
16 接着剤層
22 溝
23 チャックテーブル
24 ダイシング用ブレード
26 ローラー
28 ホイール
28a 砥石
29 回転テーブル
30 フラットリング
31 固定用シート(ダイシングテープ)
33 レーザノズル
34 突き上げ部
35 多段突き上げジグ
40 半導体チップ(チップ)
41 基板
42 ボンディングワイヤ
43 封止樹脂
44 はんだボール
50 半導体装置
51 ウエハ供給部
52 フィーダー
53 ダイボンディングヘッド
55 ウエハリングホルダ
56 位置修正ステージ
60,60B ウエハ検出器
61 鏡筒
62 カメラ
63 リング照明
66 面発光照明
67 ハーフミラー
70 ピックアップヘッド
71,77,78 ピックアップコレット
75 透明矯正板移動用ヘッド
76 透明矯正板
77a コレット本体
77b 吸引口
77c,78c 吸引通路
78a コレット本体
78b 吸引溝
81 モニタ
82 カラータッチパネル
83 ジョイスティック
100,101 ダイボンダ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複数のチップを積層する半導体装置の製造方法において、
半導体素子が形成されたウエハのダイシングラインまたはチップ分割ラインに沿って、前記半導体素子の形成面側から完成時のチップの厚さよりも深い溝を形成し、
前記ウエハの半導体素子の形成面上に表面保護シートを貼り付け、
前記ウエハの裏面を前記完成時のチップの厚さまで研削して、ウエハを個々のチップに分離し、
表面に接着剤層が形成された固定用シートを前記分離されたチップの裏面に貼り付け、 前記表面保護シートを剥離し、
前記分離されたチップに対応して、前記接着剤層を切断し、
前記固定用シートをエキスパンドして、前記チップを剥がれやすい状態にし、
前記チップの半導体素子の形成面を透明矯正板で押圧してチップの反りを矯正し、
前記チップを撮像し得られた画像から前記チップの位置誤差を検出し、
前記チップを前記固定用シートからピックアップし、
ピックアップした前記チップを位置誤差を補正して基板上にダイボンディングする
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記チップを前記固定用シートからピックアップするコレットと前記透明矯正板とを同一の移動手段にて移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記透明矯正板に、前記チップを吸着して保持可能な吸着構造を構成し
前記チップを前記透明矯正板で押圧して前記チップの反りを矯正した状態から、前記透明矯正板にて前記チップをピックアップする
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記吸着構造を前記透明矯正板の中央部に構成し、
前記チップの外周部の画像を画像処理することにより前記チップの位置誤差を検出する ことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記チップを撮像をする工程の前に、チップの検査を行い、検査結果をチップにマーキングしておき、前記画像からこのマーキングの確認も行う
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
個々に切断分離された半導体チップが固定用シート上に整列して担持されている状態から、前記半導体チップをピックアップし、このピックアップされた半導体チップを基板上にダイボンディングする半導体チップのピックアップ方法であって、
前記固定用シートをエキスパンドして、前記チップを剥がれやすい状態にし、
前記チップの半導体素子の形成面を透明矯正板で押圧してチップの反りを矯正し、
前記チップを撮像し得られた画像から前記チップの位置誤差を検出し、
前記チップを前記固定用シートからピックアップし、
ピックアップした前記チップを位置誤差を補正して基板上にダイボンディングする
ことを特徴とする半導体チップのピックアップ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−44497(P2011−44497A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190397(P2009−190397)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】