説明

半導体装置の製造方法

【課題】レーザアニールによって金属シリサイド膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法において、金属シリサイド膜を形成する領域以外の領域に加わる熱負荷を低減して、半導体装置の特性劣化を抑制できる技術を提供する。
【解決手段】本発明では、例えば、シリサイド化する領域(領域AR1)に透過膜PFを形成し、シリサイド化しない領域(領域AR2)に透過膜PFを形成しないことにより、紫外線レーザ光UVを照射した際、シリサイド化する領域の温度をシリサイド化するための共晶化温度よりも高くする一方、シリサイド化しない領域の温度をシリサイド化するための共晶化温度よりも低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造技術に関し、特に、半導体基板上にレーザ光を照射することにより金属シリサイド膜を形成する工程に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザアニールを使用して半導体基板中の不純物を活性化させたり、半導体基板上に金属シリサイド膜を形成する技術は、よく知られており、例えば、以下に示すような特許文献が公開されている。
【0003】
特開平07−066152号公報(特許文献1)には、レーザアニールを使用した不純物活性化技術が記載されており、例えば、照射するレーザ光の波長において反射率が最大もしくは最小となるように、酸化シリコン膜を成膜してアニール温度を変えることが記載されている。特に、特許文献1には、XeClエキシマレーザ(波長=308nm)により、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)のソース領域とドレイン領域に導入されている不純物を活性化することが記載されている。
【0004】
特開2004−140175号公報(特許文献2)には、XeClエキシマレーザを使用したレーザアニールにおいて、レーザ光の反射を防止する機能を有する反射防止膜の膜厚をレーザ光の波長との関係で規定し、所望の領域の温度が高くなるように制御する技術が記載されている。
【0005】
特開2008−311633号公報(特許文献3)には、エキシマレーザを利用したシリサイド形成技術について、加熱対象外領域に反射膜を設けて、所望の領域に金属シリサイド膜を形成する技術が記載されている。特に、特許文献3では、反射膜として金属膜を使用することが記載されており、さらには、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜を複数層積層することにより生じる薄膜干渉効果を利用して反射膜とするという記載もある。
【0006】
特開2003−229568号公報(特許文献4)には、XeClエキシマレーザの反射率をゲート電極上と、ソース領域およびドレイン領域上で変える技術が記載されている。
【0007】
特開平07−058124号公報(特許文献5)には、反射率を調整する膜の厚さに対するXeClエキシマレーザの反射率特性が記載されている。
【0008】
特開2008−153442号公報(特許文献6)には、シリコンを使用したMOSFETの製造工程において、長波長レーザ(波長=3μm以上)によるレーザアニールを使用して金属シリサイド膜を形成する際、ゲート電極上にシリサイド金属膜以外の金属膜を成膜し、この金属膜をレーザ光の反射膜として利用する技術が記載されている。
【0009】
特開2009−016483号公報(特許文献7)には、COレーザによる加熱によって、シリコン(Si)とゲルマニウム(Ge)を反応させて、ソース領域およびドレイン領域に単結晶シリコンゲルマニウムを形成する技術が記載されている。
【0010】
特開平07−115072号公報(特許文献8)には、ゲート電極上に反射膜を成膜した後、エキシマレーザを使用してアニールする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平07−066152号公報
【特許文献2】特開2004−140175号公報
【特許文献3】特開2008−311633号公報
【特許文献4】特開2003−229568号公報
【特許文献5】特開平07−058124号公報
【特許文献6】特開2008−153442号公報
【特許文献7】特開2009−016483号公報
【特許文献8】特開平07−115072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
例えば、半導体デバイスであるMOSFETの製造工程では、MOSFETのソース領域やドレイン領域とプラグとを低抵抗で接続し、かつ、オーミック接触(オーム性の電気的接触)させるために、MOSFETのソース領域やドレイン領域の表面に、コバルトシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜などからなる金属シリサイド膜を形成することが行なわれている。この金属シリサイド膜を形成する工程は、例えば、半導体基板上に金属膜を形成した後、半導体基板の所定領域にレーザ光を照射することにより行なわれる。これにより、レーザ光を照射した所定領域の温度が上昇し、所定領域において、半導体基板と金属膜が反応して金属シリサイド膜が形成される。
【0013】
ここで、ソース領域やドレイン領域に代表されるシリサイド化したい領域の大きさは、数μm×数μm程度であるが、レーザ光の照射径(スポット径)(直径)は、数100μmにもなる。つまり、レーザ光の照射領域は、シリサイド化領域よりもかなり大きくなっている。このことは、シリサイド化したい領域以外のシリサイド化したくない領域にも、レーザ光が照射されてしまうことを意味する。レーザ光が照射された領域は、レーザ光の強度にも依存するが、数100℃まで加熱されるため、シリサイド化したくない領域もレーザ光の照射によって加熱されることになる。ところが、シリサイド化したくない領域には、例えば、MOSFETのゲート絶縁膜のように、デバイス特性に大きな影響を与える薄膜が成膜されていることが多い。上述したゲート絶縁膜は、熱負荷に対して敏感であるため、所望の条件で成膜した後のプロセスにおいては、ゲート絶縁膜に加わる熱負荷を抑制する必要がある。つまり、レーザ光を使用したレーザアニールでは、いかにして、シリサイド化したくない領域に加わる熱負荷を充分に低減することができるかが重要となってくる。
【0014】
この点に関し、レーザ光を用いたレーザアニールにおいて、所定領域のみを加熱するために、加熱する領域(シリサイド化したい領域)を被覆する薄膜の膜厚と、加熱したくない領域(シリサイド化したくない領域)を被覆する薄膜の膜厚を分ける技術がある。具体的には、レーザ光の可干渉性の高さを利用して、レーザ光の干渉効果により、加熱する領域を被覆する薄膜の膜厚と、加熱しない領域を被覆する薄膜の膜厚とを相違させることにより、レーザ光の反射率を変化させる技術である。加熱する領域を被覆する薄膜には、レーザ光の反射率が低くなるような膜厚を成膜し、加熱したくない領域を被覆する薄膜には、レーザ光の反射率が高くなるような膜厚を成膜する。このとき、薄膜の材質は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜などの絶縁膜、もしくは、ニッケル膜、アルミニウム膜などの金属膜が使用される。薄膜の膜厚は照射するレーザ光の波長程度が適切であり、XeClエキシマレーザであれば、約300nm程度の膜厚の薄膜を使用する。
【0015】
しかし、上述した技術では、レーザ光の反射率に差をつけることにのみ着目しており、加熱された半導体基板(もしくは、金属膜)と反射率を調整する薄膜(以下、反射率調整膜という)との反応は考慮されていない。例えば、半導体基板を加熱して、ソース領域やドレイン領域に導入された不純物を活性化するためにレーザアニールを使用する場合、不純物が反射率調整膜に偏析する可能性があり、所望の電気的特性が得られない可能性がある。また、半導体基板と金属膜を反応させて金属シリサイド膜を形成するためにレーザアニールを使用する場合には、金属膜と反射率調整膜が反応して、不必要な膜が形成されてしまう可能性がある。
【0016】
本発明の目的は、レーザアニールによって金属シリサイド膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法において、金属シリサイド膜を形成する領域以外の領域に加わる熱負荷を低減して、半導体装置の特性劣化を抑制できる技術を提供することにある。
【0017】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0019】
本発明における半導体装置の製造方法は、(a)半導体基板上に金属膜を形成する工程と、(b)前記金属膜上に選択的に絶縁膜からなる透過膜を形成する工程と、(c)前記(b)工程後、前記半導体基板の上方から前記半導体基板に対して紫外線レーザ光を照射することにより、選択的に形成された前記透過膜の下層において、前記半導体基板と前記金属膜を反応させて金属シリサイド膜を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明における半導体装置の製造方法は、(a)半導体基板上に金属膜を形成する工程と、(b)前記金属膜上に選択的に1μm以上の膜厚を有する導体膜からなる反射膜を形成する工程と、(c)前記(b)工程後、前記半導体基板の上方から前記半導体基板に対して赤外線レーザ光を照射することにより、選択的に前記半導体基板と前記金属膜を反応させて金属シリサイド膜を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0022】
レーザアニールによって金属シリサイド膜を形成する工程を含む半導体装置の製造方法において、金属シリサイド膜を形成する領域以外の領域に加わる熱負荷を低減して、半導体装置の特性劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態1における基本思想であるシリサイド膜の形成工程を示す断面図である。
【図2】図1に続くシリサイド膜の形成工程を示す断面図である。
【図3】図2に続くシリサイド膜の形成工程を示す断面図である。
【図4】図3に続くシリサイド膜の形成工程を示す断面図である。
【図5】図4に続くシリサイド膜の形成工程を示す断面図である。
【図6】透過膜の膜厚と、金属膜/基板界面温度との関係を示すグラフである。
【図7】実施の形態1における変形例を示す断面図である。
【図8】実施の形態1における他の変形例を示す断面図である。
【図9】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図10】図9に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図11】図10に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図12】図11に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図13】図12に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図14】図13に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図15】図14に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図16】図15に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図17】図16に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図18】図17に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図19】変形例1における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図20】図19に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図21】図20に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図22】図21に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図23】図22に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図24】変形例2における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図25】実施の形態2における基本思想であるシリサイド膜の形成工程を示す断面図である。
【図26】図25に続くシリサイド膜の形成工程を示す断面図である。
【図27】図26に続くシリサイド膜の形成工程を示す断面図である。
【図28】図27に続くシリサイド膜の形成工程を示す断面図である。
【図29】図28に続くシリサイド膜の形成工程を示す断面図である。
【図30】実施の形態2における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図31】図30に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0025】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0026】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0027】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0028】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0029】
(実施の形態1)
<実施の形態1における基本思想>
まず、本実施の形態1における基本思想について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、半導体基板1Sを用意し、この半導体基板1Sの表面(上面、主面)上に金属膜MFを形成する。この金属膜MFは、例えば、コバルト膜、ニッケル膜、あるいは、プラチナ膜などから構成されており、例えば、スパッタリング法を使用することにより形成することができる。ここで、半導体基板1S上の領域を領域AR1と領域AR2に分けることにする。具体的に、領域AR1は、金属シリサイド膜を形成する領域であり、領域AR2は、金属シリサイド膜を形成しない領域として定義される。金属膜MFは、領域AR1および領域AR2を含む半導体基板1Sの表面上を覆うように形成される。
【0030】
次に、図2に示すように、金属膜MF上に透過膜PFを形成する。この透過膜PFは、例えば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、あるいは、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層膜から構成することができ、例えば、CVD法(Chemical Vapor Deposition)により形成することができる。透過膜PFは、図2に示す段階では、領域AR1および領域AR2に形成される。
【0031】
続いて、図3に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、領域AR2に形成されている透過膜PFを除去する。これにより、領域AR1においては、金属膜MF上に透過膜PFが形成される一方、領域AR2においては、金属膜MF上に形成されている透過膜PFが除去される。つまり、本実施の形態1では、領域AR1にだけ選択的に透過膜PFを形成することができる。
【0032】
その後、図4に示すように、半導体基板1Sの領域AR1および領域AR2にわたって紫外線レーザ光UVを照射する。このとき、半導体基板1Sの領域AR1においては、紫外線レーザ光UVが透過膜PFを透過して、透過膜PFの下層に形成されている金属膜MFに紫外線レーザ光UVが照射される。すると、紫外線レーザ光UVの一部は、金属膜MFに吸収されるが、一部の紫外線レーザ光UVは、金属膜MFから反射される。ところが、領域AR1においては、金属膜MFで反射された紫外線レーザ光UVが、透過膜PFと外部空間との境界において反射され、再び、金属膜MFへ紫外線レーザ光UVが照射されることになる。つまり、本実施の形態1では、領域AR1に透過膜PFを形成することにより、紫外線レーザ光UVを透過させて金属膜MFへ紫外線レーザ光UVを照射することができるとともに、金属膜MFで反射した紫外線レーザ光UVも透過膜PFでの多重反射によって金属膜MFへ再び照射させることができる。この結果、透過膜PFを形成している領域AR1においては、紫外線レーザ光UVの金属膜MFへの吸収効率を向上させることができる。このことは、領域AR1においては、金属膜MFに吸収される紫外線レーザ光UVを増やすことができるため、金属膜MFおよび半導体基板1Sの温度を高くできることを意味する。
【0033】
一方、領域AR2においては、透過膜PFが形成されていないため、直接、金属膜MF上に紫外線レーザ光UVが照射される。このとき、金属膜MFによって大部分の紫外線レーザ光UVは反射される。このことから、領域AR2においては、金属膜MFに吸収される紫外線レーザ光UVが領域AR1よりも減少する。このことは、領域AR2における紫外線レーザ光UVの金属膜MFへの吸収効率が低下するため、金属膜MFおよび半導体基板1Sの温度を領域AR1に比べて低くすることができることを意味する。
【0034】
この結果、図5に示すように、例えば、領域AR1においては、半導体基板1Sの温度がシリサイド化するための共晶化温度よりも高くなり、半導体基板1Sと金属膜MFの間にシリサイド反応が生じる。したがって、領域AR1においては、半導体基板1Sと金属膜MFとの界面に金属シリサイド膜SLが形成される。一方、領域AR2においては、半導体基板1Sの温度がシリサイド化するための共晶化温度よりも低くなり、半導体基板1Sと金属膜MFの間にシリサイド反応が生じない。つまり、領域AR2においては、半導体基板1Sと金属膜MFとの界面に金属シリサイド膜SLが形成されないことになる。
【0035】
このように本実施の形態1の基本思想は、シリサイド化する領域(領域AR1)に透過膜PFを形成し、シリサイド化しない領域(領域AR2)に透過膜PFを形成しないことにより、紫外線レーザ光UVを照射した際、シリサイド化する領域の温度をシリサイド化するための共晶化温度よりも高くする一方、シリサイド化しない領域の温度をシリサイド化するための共晶化温度よりも低くすることができる。この結果、シリサイド化しない領域の温度を低く抑えることができ、シリサイド化反応を生じさせないとともに、シリサイド化しない領域に加わる熱負荷を抑制することができる。つまり、本実施の形態1の基本思想は、透過膜PFの形成の有無によって、紫外線レーザ光UVの金属膜MFへ吸収効率を変化させることにより、シリサイド化する領域(領域AR1)の温度とシリサイド化しない領域(領域AR2)の温度との間に差を設けることに特徴がある。そして、シリサイド化する領域(領域AR1)の温度が共晶化温度より高くなり、かつ、シリサイド化しない領域(領域AR2)の温度が共晶化温度よりも低くなるように温度差を設けることにより、シリサイド化する領域(領域AR1)にだけ選択的に金属シリサイド膜SLを形成することができるのである。
【0036】
特に、本実施の形態1における基本思想においては、シリサイド化しない領域(領域AR2)の金属膜MFが露出しており、金属膜MF上に透過膜PFが形成されていない。このため、少なくとも、シリサイド化しない領域(領域AR2)においては、金属膜MFと金属膜MF上に形成される膜との不所望な反応を抑制することができる。さらに、シリサイド化しない領域(領域AR2)においては、熱伝導率の良い金属膜MFが露出しているため、金属膜MFからの熱拡散が速やかに行なわれる。このことから、領域AR2においては、金属膜MFでの紫外線レーザ光UVの反射および熱伝導率の良好な金属膜MF自体からの速やかな熱拡散の相乗効果によって、領域AR2の温度を共晶化温度よりも低くすることができる。
【0037】
ここで、本実施の形態1における透過膜PFとは、紫外線レーザ光UVを透過する膜という意味で使用している。例えば、紫外線レーザ光UVは、波長が200nm〜600nmの範囲内にあるパルスレーザ光から構成されており、この紫外線レーザ光UVを透過する性質を有している膜を透過膜PFとして定義している。具体的に、透過膜PFは、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、あるいは、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層膜から構成することができる。
【0038】
次に、紫外線レーザ光UVを照射した場合、透過膜PFの有無、あるいは、透過膜PFの膜厚によって、半導体基板1Sと金属膜MFとの界面の温度がどのように変化するかについての実験結果を説明する。図6は、透過膜PFの膜厚と、半導体基板1Sと金属膜MFとの界面の温度(金属膜/基板界面温度)との関係を示すグラフである。図6において、横軸は、透過膜PFの膜厚を示しており、縦軸は、金属膜/基板界面温度を示している。図6に示す破線は、シリサイド反応が生じる共晶化温度を示しており、この共晶化温度よりも高くなるとシリサイド反応が生じる一方、共晶化温度よりも低くなるとシリサイド反応が生じなくなることを示している。
【0039】
まず、図6に示すグラフ中の●印は、紫外線レーザ光UVの照射エネルギー密度が500mJ/cmの場合を示しており、▲印は、紫外線レーザ光UVの照射エネルギー密度が600mJ/cmの場合を示している。図6に示すように、例えば、透過膜PFの膜厚が0、すなわち、透過膜PFを形成しない場合、紫外線レーザ光UVの照射エネルギー密度が500mJ/cmと600mJ/cmのいずれにおいても、金属膜/基板界面温度は、破線で示す共晶化温度よりも低くなっていることがわかる。つまり、透過膜PFを形成しないで、金属膜MFに紫外線レーザ光UVを照射する場合には、金属膜MFと半導体基板1Sの間でシリサイド反応が生じないことがわかる。一方、例えば、透過膜PFの膜厚が50nmである場合、紫外線レーザ光UVの照射エネルギー密度が500mJ/cmと600mJ/cmのいずれにおいても、金属膜/基板界面温度は、破線で示す共晶化温度よりも高くなっていることがわかる。つまり、50nm程度の膜厚の透過膜PFを金属膜MF上に形成した状態で紫外線レーザ光UVを照射する場合には、金属膜MFと半導体基板1Sの間でシリサイド反応が生じることがわかる。この実験結果からも、シリサイド化する領域(領域AR1)に透過膜PFを形成し、シリサイド化しない領域(領域AR2)に透過膜PFを形成しないことにより、紫外線レーザ光UVを照射した際、シリサイド化する領域の温度をシリサイド化するための共晶化温度よりも高くする一方、シリサイド化しない領域の温度をシリサイド化するための共晶化温度よりも低くするという本実施の形態1における基本思想が妥当であることが裏付けられていることがわかる。
【0040】
なお、図6では、紫外線レーザ光UVの照射エネルギー密度が500mJ/cmの場合と600mJ/cmの場合について説明したが、例えば、紫外線レーザ光UVの照射エネルギー密度が、400mJ/cm以上800mJ/cm以下である場合にも同様の効果を得ることができる。すなわち、紫外線レーザ光UVの照射エネルギー密度が、400mJ/cm以上800mJ/cm以下である場合においても、シリサイド化する領域(領域AR1)に透過膜PFを形成し、シリサイド化しない領域(領域AR2)に透過膜PFを形成しないことにより、紫外線レーザ光UVを照射した際、シリサイド化する領域の温度をシリサイド化するための共晶化温度よりも高くする一方、シリサイド化しない領域の温度をシリサイド化するための共晶化温度よりも低くすることができる。
【0041】
続いて、本実施の形態1における基本思想の変形例について説明する。図7は、本変形例1における金属シリサイド膜SLの製造方法の一工程を示す図である。図7は、領域AR1に透過膜PFを形成し、かつ、領域AR2の透過膜PFを形成しない状態で、領域AR1および領域AR2に紫外線レーザ光UVを照射することにより、領域AR1にだけ金属シリサイド膜SLを形成する工程を示している。ここで、本変形例1の特徴点は、紫外線レーザ光UVの波長をλ、自然数をm、透過膜PFの屈折率をnとした場合、領域AR1に形成されている透過膜PFの膜厚dが、(2m+1)/4×λ/n−λ/4≦d≦(2m+1)/4×λ/n+λ/4の関係を満たす点にある。具体的には、領域AR1に形成されている透過膜PFの膜厚dが、d=(2m+1)/4×λ/nを満たしていることに本質がある。この場合、領域AR1に照射された紫外線レーザ光UVの一部は反射するが、この反射する紫外線レーザ光UVには、主に、透過膜PFを透過して、透過膜PFの下層に形成されている金属膜MFの表面で反射する紫外線レーザ光UV(第1紫外線レーザ光と呼ぶ)と、透過膜PFの表面で反射する紫外線レーザ光UV(第2紫外線レーザ光と呼ぶ)がある。この第1紫外線レーザ光と第2紫外線レーザ光が重ねあわされて反射光となるが、透過膜PFの膜厚dによって、第1紫外線レーザ光と第2紫外線レーザ光との間に光路長差が生じる。したがって、第1紫外線レーザ光と第2紫外線レーザ光とは、上述した光路長差に起因する位相差が生じ、位相差によって、重ね合わされる第1紫外線レーザ光の光強度と第2紫外線レーザ光の光強度が強め合ったり、弱め合ったりする。
【0042】
そこで、本変形例1では、領域AR1に形成されている透過膜PFの膜厚dが、d=(2m+1)/4×λ/nの関係を満たすようにしている。これにより、第1紫外線レーザ光と第2紫外線レーザ光が弱め合う関係となる結果、領域AR1で反射される紫外線レーザ光UVの光強度を低減することができる。このことは、領域AR1に照射された紫外線レーザ光UVの反射を少なくして、金属膜MFでの吸収効率を向上できることを意味している。したがって、本変形例1によれば、紫外線レーザ光UVの金属膜MFでの吸収効率を向上できることから、効率良く金属膜MFと半導体基板1Sの界面温度を上昇させることができる。つまり、本変形例1によれば、透過膜PFを形成している領域AR1における紫外線レーザ光UVの金属膜MFへ吸収効率を向上できるため、シリサイド化する領域(領域AR1)の温度とシリサイド化しない領域(領域AR2)の温度との間に温度差を設けやすくなることになる。このことは、領域AR1および領域AR2に照射される紫外線レーザ光UVのエネルギー密度を比較的小さくする場合においても、領域AR1では、効率良く金属膜MFと半導体基板1Sの界面温度をシリサイド反応が生じる共晶化温度以上にすることができること意味する。このことは、裏を返せば、紫外線レーザ光UVのエネルギー密度を比較的小さくできるので、シリサイド化しない領域(領域AR2)の温度上昇を抑制できることも意味している。すなわち、本変形例1によれば、シリサイド化しない領域(領域AR2)に加わる熱負荷を効果的に抑制しながら、シリサイド化する領域(領域AR1)の温度を共晶化温度以上にすることができる効果が得られる。したがって、本変形例1によれば、シリサイド化しない領域(領域AR2)に加わる熱負荷を低減して、半導体装置の特性劣化を抑制しながら、シリサイド化する領域(領域AR1)に金属シリサイド膜SLを形成することができる。例えば、波長λ=355nmのパルスレーザを使用し、透過膜PFとして、屈折率n=1.46の酸化シリコン膜を使用し、かつ、m=1とする場合、透過膜PFの膜厚dはd=180nmとなる。
【0043】
なお、領域AR1で反射される紫外線レーザ光UVの光強度を低減する観点から、領域AR1に形成される透過膜PFの膜厚dは、d=(2m+1)/4×λ/nの関係を満たすことが望ましいが、例えば、透過膜PFの膜厚dが、(2m+1)/4×λ/n−λ/4≦d≦(2m+1)/4×λ/n+λ/4の範囲に入る場合であれば、領域AR1で反射される紫外線レーザ光UVの光強度を効果的に低減することができる。
【0044】
次に、本実施の形態1における基本思想のさらなる変形例について説明する。図8は、本変形例2における金属シリサイド膜SLの製造方法の一工程を示す図である。図8は、領域AR1に透過膜PFを形成し、かつ、領域AR2の透過膜PFを形成しない状態で、領域AR1および領域AR2に紫外線レーザ光UVを照射することにより、領域AR1にだけ金属シリサイド膜SLを形成する工程を示している。ここで、本変形例2の特徴点は、シリサイド化しない領域である領域AR2において、半導体基板1S上に直接金属膜MFを形成するのではなく、半導体基板1S上に窒化チタン膜TF1、金属膜MFおよび窒化チタン膜TF2を順次積層する点にある。例えば、シリサイド化しない領域(領域AR2)は、共晶化温度に達しないため、半導体基板1Sと金属膜MFが直接接触していても、半導体基板1Sと金属膜MFとのシリサイド反応は生じないものと考えられるが、領域AR2の温度が共晶化温度付近に達する場合には、半導体基板1Sと金属膜MFとの間でシリサイド反応が生じる可能性も考えられる。
【0045】
そこで、本変形例2に示すように、半導体基板1S上に窒化チタン膜TF1、金属膜MFおよび窒化チタン膜TF2を順次積層して形成することにより、例えば、領域AR2の温度が共晶化温度付近に達する場合であっても、半導体基板1Sと金属膜MFとの間に窒化チタン膜TF1が介在するため、半導体基板1Sと金属膜MFとの間でシリサイド反応が生じることを確実に防止することができる。
【0046】
以上では、本実施の形態1における基本思想について説明したが、以下に、本実施の形態1における基本思想が有効に作用する例について説明する。具体的に、本実施の形態1における基本思想を、炭化珪素膜(SiC膜)を使用したパワーMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)に適用する例について説明する。
【0047】
<炭化珪素を使用したパワーMISFETの利点>
数ワット以上の電力を扱える大電力用途のトランジスタをパワーMISFETといい、種々の構造のものが検討されている。パワーMISFETにおいて、オン抵抗の低減と耐圧の向上とは基板材料のバンドギャップで規定されるトレードオフの関係にある。このとき、絶縁破壊電圧強度は基板材料のバンドギャップの大きさに依存するため、基板材料としてバンドギャップの大きな材料を使用することにより耐圧の確保が容易となる。したがって、パワーMISFETとして広く用いられているシリコン素子の性能を超えるためには、シリコンよりもバンドギャップが大きな基板材料を用いることが有効である。特に、炭化珪素(炭化シリコン、SiC)は、シリコンに比べバンドギャップが約3倍と十分に大きいこと、p型およびn型の導電型を容易に形成できること、熱酸化により酸化膜を形成できることなどの特徴を有することから、高性能のパワーMISFETを実現できる可能性があり大きな注目を集めている。つまり、炭化珪素は、シリコンよりもバンドギャップが大きいことから、絶縁破壊耐圧を確保しやすく、炭化珪素を使用したパワーMISFETにおいて、シリコンを使用したパワーMISFETと同等の絶縁破壊耐圧を得る場合、耐圧を確保するためのエピタキシャル層の厚さを薄くすることができる。この結果、炭化珪素を使用したパワーMISFETでは、シリコンを使用したパワーMISFETよりもオン抵抗を低くすることができる。すなわち、炭化珪素を使用したパワーMISFETでは、絶縁破壊耐圧の向上とオン抵抗の低減を両立することができることから、高性能のパワーMISFETを実現できる可能性があり大きな注目を集めている。
【0048】
<炭化珪素を使用したパワーMISFETの問題点>
しかし、炭化珪素は、化学的に不活性という性質があり、化学的処理を使用した加工が難しいという問題点がある。具体的に、炭化珪素を使用した半導体デバイスでは、ドライエッチング工程、ウェットエッチング工程、酸化工程、不純物拡散工程、あるいは、シリサイド工程の難易度が高くなるのである。例えば、シリコンを使用した半導体デバイスでは、ゲート絶縁膜の形成温度は1000℃程度である一方、金属シリサイド膜の形成温度は、400℃〜500℃程度である。通常、金属シリサイド膜の形成工程は、ゲート絶縁膜の形成工程よりも後の工程で行なわれるが、シリコンを使用した半導体デバイスでは、金属シリサイド膜の形成温度が400℃〜500℃程度であることから、金属シリサイド膜の形成工程で実施される熱処理がゲート絶縁膜に与える影響は少ない。
【0049】
これに対し、炭化珪素を使用した半導体デバイスでは、ゲート絶縁膜の形成温度は1700℃程度にもなり、かつ、金属シリサイド膜の形成温度も、1000℃程度と高温になる。このことから、炭化珪素を使用した半導体デバイスにおいて、半導体基板全体を1000℃程度に加熱した状態で金属シリサイド膜を形成すると、金属シリサイド膜を形成する領域以外に形成されているゲート絶縁膜にも1000℃程度の熱負荷が加わることになり、ゲート絶縁膜にダメージが加わってしまう。このように、炭化珪素を使用した半導体デバイスでは、金属シリサイド膜の形成温度が1000℃程度と高温になることから、金属シリサイド膜を形成工程が他の領域に形成されている構成要素にダメージを与えやすくなり、半導体装置の特性劣化が起き易い。
【0050】
この点に関し、金属シリサイド膜を形成する工程として、半導体基板全体を加熱するのではなく、例えば、半導体基板上に金属膜を形成した後、半導体基板の所定領域にレーザ光を照射することにより行なう方法がある。この方法によれば、レーザ光を照射した所定領域の温度が上昇し、所定領域において、半導体基板と金属膜が反応して金属シリサイド膜が形成される。したがって、上述したレーザアニールは、レーザ光を照射した局所領域だけを加熱することができるため、金属シリサイド膜を形成しない他の領域は加熱されずに済む。この結果、レーザアニールによれば、シリサイド化しない領域に加わる熱負荷を低減できるので、シリサイド化しない他の領域に形成されているデバイスの構成要素にダメージを与えにくくすることができると考えられる。
【0051】
ところが、ソース領域やドレイン領域に代表されるシリサイド化したい領域の大きさは、数μm×数μm程度であるが、レーザ光の照射径(スポット径)(直径)は、数100μmにもなる。つまり、レーザ光の照射領域は、シリサイド化領域よりもかなり大きくなっている。このことは、シリサイド化したい領域以外のシリサイド化したくない領域にも、レーザ光が照射されてしまうことを意味する。レーザ光が照射された領域は加熱されるため、シリサイド化したくない領域もレーザ光の照射によって加熱されることになる。しかし、シリサイド化したくない領域には、例えば、MOSFETのゲート絶縁膜のように、デバイス特性に大きな影響を与える薄膜が成膜されていることが多い。上述したゲート絶縁膜は、熱負荷に対して敏感であるため、所望の条件で成膜した後のプロセスにおいては、ゲート絶縁膜に加わる熱負荷を抑制する必要がある。つまり、レーザ光を使用したレーザアニールでは、いかにして、シリサイド化したくない領域に加わる熱負荷を充分に低減することができるかが重要となってくる。特に、炭化珪素を使用した半導体デバイスでは、金属シリサイド膜の形成温度が1000℃程度の高温となるため、シリサイド化したくない領域に加わる熱負荷を充分に低減することが重要となる。
【0052】
そこで、特に、高温の熱処理が必要とされる炭化珪素を使用した半導体デバイスに、本実施の形態1における基本思想を適用することが有用であることがわかる。以下では、炭化珪素を使用した半導体デバイスの一例として、炭化珪素を使用した縦型のパワーMISFETを取り上げ、この半導体装置の製造方法に本実施の形態1における基本思想を適用する例について図面を参照しながら説明する。
【0053】
<半導体装置の製造方法>
まず、図9に示すように、例えば、n型の単結晶の炭化珪素(SiC)からなる半導体基板1S(ドレイン領域となる)の表面(主面)に、10μm〜100μm程度の厚さを有し、かつ、10×1016/cm程度のドナー密度を有する炭化珪素からなるエピタキシャル層EPIを形成する。次に、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、エピタキシャル層EPIの表面にp型ウェルPWLを形成する。p型ウェルPWLは、例えば、アルミニウム(Al)などのp型不純物をエピタキシャル層EPI内に導入することにより形成される。その後、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、p型ウェルPWLに内包されるようにソース領域SRを形成する。ソース領域SRは、n型半導体領域からなり、例えば、窒素(N)などのn型不純物をp型ウェルPWL内に導入することにより形成される。
【0054】
続いて、図10に示すように、半導体基板1Sの表面に層間絶縁膜ILを形成する。層間絶縁膜ILは、例えば、酸化シリコン膜からなり、例えば、CVD法を使用することにより形成することができる。そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜ILに開口部OPを形成し、開口部OPから露出する半導体基板1Sの表面にゲート絶縁膜GOXを形成する。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、薄い酸化シリコン膜から形成されており、例えば、熱酸化法を使用することにより形成することができる。なお、酸化シリコン膜の表面にNOガス(一酸化窒素ガス)を導入して窒化処理を施し、酸化シリコン膜と半導体基板1Sの界面に窒素を導入することもできる。
【0055】
次に、図11に示すように、開口部OPの底部に形成されているゲート絶縁膜GOX上から開口部OPの内壁を覆って層間絶縁膜ILに乗り上げるようにゲート電極Gを形成する。ゲート電極Gは、例えば、開口部OP内を含む層間絶縁膜IL上に、例えば、CVD法を使用してポリシリコン膜を形成し、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して、ポリシリコン膜をパターニングすることにより形成することができる。
【0056】
続いて、図12に示すように、ゲート電極Gを覆う層間絶縁膜IL上に保護膜PRFを形成する。この保護膜PRFは、例えば、CVD法を使用して形成することができ、この後の工程で成膜する金属膜とゲート電極Gが直接接触することを防止する機能を有している。つまり、保護膜PRFは、紫外線レーザ光を照射した際の熱によって、金属膜とゲート電極Gが反応することを防止するために設けられる膜である。
【0057】
次に、図13に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、保護膜PRFおよび層間絶縁膜ILを貫通して、ソース領域SRを露出するコンタクトホールCNTを形成する。そして、図14に示すように、コンタクトホールCNT内を含む保護膜PRF上に金属膜MFを形成する。金属膜MFは、例えば、コバルト膜、ニッケル膜、あるいは、プラチナ膜などから構成されており、例えば、スパッタリング法を使用することにより形成することができる。このとき、コンタクトホールCNTの底部においては、金属膜MFとソース領域SRが直接接触することになる。
【0058】
続いて、図15に示すように、金属膜MF上に透過膜PFを形成する。透過膜PFは、例えば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、あるいは、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層膜から形成され、例えば、CVD法により形成することができる。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、透過膜PFをパターニングする。透過膜PFのパターニングは、平面視において、コンタクトホールCNTを覆うように行なわれ、それ以外の領域に形成されている透過膜PFを除去するように行なわれる。
【0059】
その後、図16に示すように、半導体基板1Sの上方から紫外線レーザ光UVを照射する。このとき、半導体基板1Sの透過膜形成領域においては、紫外線レーザ光UVが透過膜PFを透過して、透過膜PFの下層に形成されている金属膜MFに紫外線レーザ光UVが照射される。すると、紫外線レーザ光UVの一部は、金属膜MFに吸収されるが、一部の紫外線レーザ光UVは、金属膜MFから反射される。ところが、透過膜形成領域においては、金属膜MFで反射された紫外線レーザ光UVが、透過膜PFと外部空間との境界において反射され、再び、金属膜MFへ紫外線レーザ光UVが照射されることになる。つまり、本実施の形態1では、透過膜形成領域に透過膜PFを形成することにより、紫外線レーザ光UVを透過させて金属膜MFへ紫外線レーザ光UVを照射することができるとともに、金属膜MFで反射した紫外線レーザ光UVも透過膜PFでの多重反射によって金属膜MFへ再び照射させることができる。この結果、透過膜PFを形成している透過膜形成領域においては、紫外線レーザ光UVの金属膜MFへの吸収効率を向上させることができる。このことは、透過膜形成領域においては、金属膜MFに吸収される紫外線レーザ光UVを増やすことができるため、金属膜MFおよび半導体基板1Sの温度を高くできることを意味する。
【0060】
一方、金属膜露出領域においては、透過膜PFが形成されていないため、直接、金属膜MF上に紫外線レーザ光UVが照射される。このとき、金属膜MFによって大部分の紫外線レーザ光UVは反射される。このことから、金属膜露出領域においては、金属膜MFに吸収される紫外線レーザ光UVが透過膜形成領域よりも減少する。このことは、金属膜露出領域における紫外線レーザ光UVの金属膜MFへの吸収効率が低下するため、金属膜MFおよび半導体基板1Sの温度を透過膜形成領域に比べて低くすることができることを意味する。
【0061】
この結果、図16に示すように、例えば、透過膜形成領域においては、半導体基板1Sの温度がシリサイド化するための共晶化温度よりも高くなり、半導体基板1S(ソース領域SR)と金属膜MFの間にシリサイド反応が生じる。したがって、透過膜形成領域においては、半導体基板1S(ソース領域SR)と金属膜MFとの界面に金属シリサイド膜SLが形成される。一方、金属膜露出領域においては、半導体基板1Sの温度がシリサイド化するための共晶化温度よりも低くなる。このとき、金属膜露出領域に形成されているゲート電極Gと金属膜MFの間に保護膜PRFが介在しているため、ゲート電極Gと金属膜MFとのシリサイド反応を防止することができる。つまり、ゲート電極Gは、ポリシリコン膜から形成されているため、金属膜MFと直接接触すると、シリサイド反応が生じる可能性がある。この点に関し、本実施の形態1では、金属露出領域の温度が、シリサイド化するための共晶化温度よりも低いため、ゲート電極Gと金属膜MFが直接接触してもシリサイド反応が起こらないと考えられるが、金属膜露出領域の温度が共晶化温度付近に達する場合を想定すると、ゲート電極Gと金属膜MFとの間でシリサイド反応が生じる可能性も考えられる。しかし、本実施の形態1では、ゲート電極Gと金属膜MFとの間に保護膜PRFを介在させているので、例えば、金属膜露出領域の温度が共晶化温度付近に達する場合であっても、ゲート電極Gと金属膜MFとの間でシリサイド反応が生じることを確実に防止することができる。さらに、本実施の形態1では、少なくとも、透過膜形成領域の温度よりも金属膜露出領域の温度を低くすることができるので、ゲート絶縁膜に加わるダメージも低減することができる。このことから、本実施の形態1によれば、半導体装置の特性劣化を抑制しつつ、金属シリサイド膜SLを形成することができる。
【0062】
なお、金属膜MFがニッケル膜の場合、金属シリサイド膜SLはニッケルシリサイド膜となり、金属膜MFがコバルト膜の場合、金属シリサイド膜SLはコバルトシリサイド膜となる。また、金属膜MFがプラチナ膜の場合、金属シリサイド膜SLはプラチナシリサイド膜となり、金属膜MFがチタン膜の場合、金属シリサイド膜SLはチタンシリサイド膜となる。
【0063】
次に、図17に示すように、エッチング技術を使用することにより、パターニングした透過膜PFおよびシリサイド化しなかった金属膜MFを除去する。ここで、金属膜MFと金属シリサイド膜SLは、化学的反応性が異なるため、ドライエッチングやウェットエッチングのいずれにおいても、金属シリサイド膜SLに影響を与えることなく、金属膜MFだけを除去することができる。
【0064】
続いて、図18に示すように、コンタクトホールCNT内を含む保護膜PRF上に、例えば、スパッタリング法を使用することにより、例えば、アルミニウム膜からなる導体膜を形成する。そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、アルミニウム膜からなる導体膜をパターニングする。これにより、ソースコンタクトSCNTおよびゲートコンタクトGCNTを形成することができる。ソースコンタクトSCNTは、金属シリサイド膜SLとの電気的接続を確保する機能を有し、ゲートコンタクトGCNTは、ゲート電極Gとの電気的接続を確保する機能を有している。なお、ソースコンタクトSCNTとゲートコンタクトGCNTは電気的に絶縁されている。以上のようにして、本実施の形態1における半導体装置を製造することができる。
【0065】
さらに、本実施の形態1における半導体装置の製造方法の変形例について説明する。まず、図9〜図12までは、前記実施の形態1と同様である。続いて、図19に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、保護膜PRFをパターニングする。保護膜PRFのパターニングは、開口部OPの内部に形成されているゲート電極Gを露出するように行なわれる。その後、図20に示すように、露出しているゲート電極G上を含む保護膜PRF上にバリア膜BF1を形成する。このバリア膜BF1は、例えば、窒化チタン膜からなり、例えば、スパッタリング法を使用することにより形成することができる。
【0066】
次に、図21に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、バリア膜BF1、保護膜PRFおよび層間絶縁膜ILを貫通して、ソース領域SRを露出するコンタクトホールCNTを形成する。そして、コンタクトホールCNT内を含むバリア膜BF1上に金属膜MFを形成する。金属膜MFは、例えば、コバルト膜、ニッケル膜、あるいは、プラチナ膜などから構成されており、例えば、スパッタリング法を使用することにより形成することができる。このとき、コンタクトホールCNTの底部においては、金属膜MFとソース領域SRが直接接触することになる。
【0067】
続いて、図22に示すように、金属膜MF上に透過膜PFを形成する。透過膜PFは、例えば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、あるいは、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層膜から形成され、例えば、CVD法により形成することができる。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、透過膜PFをパターニングする。透過膜PFのパターニングは、平面視において、コンタクトホールCNTを覆うように行なわれ、それ以外の領域に形成されている透過膜PFを除去するように行なわれる。
【0068】
その後、図23に示すように、半導体基板1Sの上方から紫外線レーザ光UVを照射する。このとき、半導体基板1Sの透過膜形成領域においては、紫外線レーザ光UVが透過膜PFを透過して、透過膜PFの下層に形成されている金属膜MFに紫外線レーザ光UVが照射される。すると、紫外線レーザ光UVの一部は、金属膜MFに吸収されるが、一部の紫外線レーザ光UVは、金属膜MFから反射される。ところが、透過膜形成領域においては、金属膜MFで反射された紫外線レーザ光UVが、透過膜PFと外部空間との境界において反射され、再び、金属膜MFへ紫外線レーザ光UVが照射されることになる。つまり、本変形例でも、透過膜形成領域に透過膜PFを形成することにより、紫外線レーザ光UVを透過させて金属膜MFへ紫外線レーザ光UVを照射することができるとともに、金属膜MFで反射した紫外線レーザ光UVも透過膜PFでの多重反射によって金属膜MFへ再び照射させることができる。この結果、透過膜PFを形成している透過膜形成領域においては、紫外線レーザ光UVの金属膜MFへの吸収効率を向上させることができる。このことは、透過膜形成領域においては、金属膜MFに吸収される紫外線レーザ光UVを増やすことができるため、金属膜MFおよび半導体基板1Sの温度を高くできることを意味する。
【0069】
一方、金属膜露出領域においては、透過膜PFが形成されていないため、直接、金属膜MF上に紫外線レーザ光UVが照射される。このとき、金属膜MFによって大部分の紫外線レーザ光UVは反射される。このことから、金属膜露出領域においては、金属膜MFに吸収される紫外線レーザ光UVが透過膜形成領域よりも減少する。このことは、金属膜露出領域における紫外線レーザ光UVの金属膜MFへの吸収効率が低下するため、金属膜MFおよび半導体基板1Sの温度を透過膜形成領域に比べて低くすることができることを意味する。
【0070】
この結果、図23に示すように、例えば、透過膜形成領域においては、半導体基板1Sの温度がシリサイド化するための共晶化温度よりも高くなり、半導体基板1S(ソース領域SR)と金属膜MFの間にシリサイド反応が生じる。したがって、透過膜形成領域においては、半導体基板1S(ソース領域SR)と金属膜MFとの界面に金属シリサイド膜SLが形成される。一方、金属膜露出領域においては、半導体基板1Sの温度がシリサイド化するための共晶化温度よりも低くなる。そして、本変形例においては、保護膜PRFと金属膜MFとの間にバリア膜BF1を介在させている。このため、紫外線レーザ光UVを照射することにより加熱された金属膜MFと保護膜PRFが反応して導電性反応物が生成されることを抑制できる。その後の工程は、前記実施の形態1と同様である。
【0071】
なお、図24に示すように、バリア膜BF1上に金属膜MFを形成した後、この金属膜MF上に、例えば、窒化チタン膜からなるバリア膜BF2を形成し、このバリア膜BF2上に選択的に透過膜PFを形成するようにしてもよい。この場合、紫外線レーザ光UVを照射することによる熱で、透過膜PFと金属膜MFが反応することを抑制することができる。すなわち、図24に示す例では、透過膜PFと金属膜MFの間にバリア膜BF2を介在させているので、透過膜PFと金属膜MFとの不所望な反応を抑制することができる。
【0072】
(実施の形態2)
<実施の形態2における基本思想>
まず、本実施の形態2における基本思想について図面を参照しながら説明する。図25に示すように、半導体基板1Sを用意し、この半導体基板1Sの表面(上面、主面)上に金属膜MFを形成する。この金属膜MFは、例えば、コバルト膜、ニッケル膜、チタン膜あるいは、プラチナ膜などから構成されており、例えば、スパッタリング法を使用することにより形成することができる。ここで、半導体基板1S上の領域を領域AR1と領域AR2に分けることにする。具体的に、領域AR1は、金属シリサイド膜を形成する領域であり、領域AR2は、金属シリサイド膜を形成しない領域として定義される。金属膜MFは、領域AR1および領域AR2を含む半導体基板1Sの表面上を覆うように形成される。
【0073】
次に、図26に示すように、金属膜MF上に反射膜REFを形成する。この反射膜REFは、例えば、タングステン膜、アルミニウム膜、あるいは、炭化シリコン膜などから構成することができ、例えば、スパッタリング法やCVD法により形成することができる。反射膜REFは、図26に示す段階では、領域AR1および領域AR2に形成される。
【0074】
続いて、図27に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、領域AR1に形成されている反射膜REFを除去する。これにより、領域AR2においては、金属膜MF上に反射膜REFが形成される一方、領域AR1においては、金属膜MF上に形成されている反射膜REFが除去される。つまり、本実施の形態2では、領域AR2にだけ選択的に反射膜REFを形成することができる。
【0075】
その後、図28に示すように、半導体基板1Sの領域AR1および領域AR2にわたって赤外線レーザ光IFを照射する。このとき、半導体基板1Sの領域AR1においては、赤外線レーザ光IFを反射する反射膜REFが形成されていないので、直接、赤外線レーザ光IFが金属膜MFに照射される。この結果、反射膜REFを形成していない領域AR1においては、赤外線レーザ光IFが効率良く金属膜MFへ吸収される。このことは、領域AR1においては、金属膜MFに吸収される赤外線レーザ光IFを増やすことができるため、金属膜MFおよび半導体基板1Sの温度を高くできることを意味する。
【0076】
一方、領域AR2においては、反射膜REFが形成されているため、この反射膜REFに対して赤外線レーザ光IFが照射される。このとき、反射膜REFによって大部分の赤外線レーザ光IFは反射される。このことから、領域AR2においては、反射膜REFの下層に形成されている金属膜MFに吸収される赤外線レーザ光IFが領域AR1よりも減少する。このことは、領域AR2における赤外線レーザ光IFの金属膜MFへの吸収効率が低下するため、金属膜MFおよび半導体基板1Sの温度を領域AR1に比べて低くすることができることを意味する。
【0077】
この結果、図29に示すように、例えば、領域AR1においては、半導体基板1Sの温度がシリサイド化するための共晶化温度よりも高くなり、半導体基板1Sと金属膜MFの間にシリサイド反応が生じる。したがって、領域AR1においては、半導体基板1Sと金属膜MFとの界面に金属シリサイド膜SLが形成される。一方、領域AR2においては、半導体基板1Sの温度がシリサイド化するための共晶化温度よりも低くなり、半導体基板1Sと金属膜MFの間にシリサイド反応が生じない。つまり、領域AR2においては、半導体基板1Sと金属膜MFとの界面に金属シリサイド膜SLが形成されないことになる。
【0078】
このように本実施の形態2の基本思想は、シリサイド化する領域(領域AR1)に反射膜REFを形成せず、シリサイド化しない領域(領域AR2)に反射膜REFを形成することにより、赤外線レーザ光IFを照射した際、シリサイド化する領域の温度をシリサイド化するための共晶化温度よりも高くする一方、シリサイド化しない領域の温度をシリサイド化するための共晶化温度よりも低くすることができる。この結果、シリサイド化しない領域の温度を低く抑えることができ、シリサイド化反応を生じさせないとともに、シリサイド化しない領域に加わる熱負荷を抑制することができる。つまり、本実施の形態2の基本思想は、反射膜REFの形成の有無によって、赤外線レーザ光IFの金属膜MFへ吸収効率を変化させることにより、シリサイド化する領域(領域AR1)の温度とシリサイド化しない領域(領域AR2)の温度との間に差を設けることに特徴がある。そして、シリサイド化する領域(領域AR1)の温度が共晶化温度より高くなり、かつ、シリサイド化しない領域(領域AR2)の温度が共晶化温度よりも低くなるように温度差を設けることにより、シリサイド化する領域(領域AR1)にだけ選択的に金属シリサイド膜SLを形成することができるのである。
【0079】
特に、本実施の形態2における基本思想においては、シリサイド化する領域(領域AR1)の金属膜MFが露出しており、金属膜MF上に反射膜REFが形成されていない。このため、少なくとも、シリサイド化する領域(領域AR1)においては、金属膜MFと金属膜MF上に形成される膜との不所望な反応を抑制することができる。また、シリサイド化しない領域(領域AR2)には、金属膜MF上に反射膜REFが形成されているが、シリサイド化しない領域(領域AR2)では、照射された赤外線レーザ光IFの大部分が反射膜REFで反射されてしまうため、反射膜REFの下層に形成されている金属膜MFおよび半導体基板1Sの温度上昇を抑制することができる。このため、シリサイド化しない領域(領域AR2)の温度は比較的低くすることができるので、金属膜MFと反射膜REFとの反応を抑制することができる。
【0080】
さらに、シリサイド化しない領域(領域AR2)においては、熱伝導率の良い反射膜REFが形成されているため、反射膜REFからの熱拡散が速やかに行なわれる。このことから、領域AR2においては、反射膜REFでの赤外線レーザ光IFの反射および熱伝導率の良好な反射膜REF自体からの速やかな熱拡散の相乗効果によって、領域AR2の温度を共晶化温度よりも低くすることができる。つまり、本実施の形態2で設けている反射膜REFの主要な機能は、照射された赤外線レーザ光IFを充分に反射させることにあるが、反射膜REF自体は、例えば、熱伝導性の良い金属膜から構成されるので、反射膜REF自体からの熱拡散も効率良く行なうことができるのである。すなわち、本実施の形態2における反射膜REFは、赤外線レーザ光IFを充分に反射させる機能と、熱を効率良く拡散させる機能を有しており、これらの2つの機能の相乗効果によって、シリサイド化しない領域(領域AR2)の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0081】
ここで、本実施の形態2における反射膜REFとは、赤外線レーザ光IFを反射する膜という意味で使用している。例えば、赤外線レーザ光IFは、波長が2.8μm〜10.6μmの範囲内にある連続発振レーザ光から構成されており、この赤外線レーザ光IFを透過する性質を有している膜を反射膜REFとして定義している。具体的に、反射膜REFは、タングステン膜、アルミニウム膜、あるいは、炭化シリコン膜などから構成することができから構成することができる。特に、タングステン膜およびアルミニウム膜は、赤外線レーザ光IFの反射率が高いとともに、加工性が良好である利点を有しているので、反射膜REFとして使用することが望ましい。
【0082】
そして、本実施の形態2における反射膜REFの膜厚は、1μm以上であることが望ましい。なぜなら、反射膜REFの膜厚が、対象となっている赤外線レーザ光IFの波長と同程度にすると反射効率が向上するからである。すなわち、反射膜REFでの赤外線レーザ光IFの反射を充分に行なって、シリサイド化しない領域(領域AR2)の温度上昇を抑制する観点からは、反射膜REFの膜厚が1μm以上であることが望ましいのである。
【0083】
なお、反射膜REFの材料を下層に形成されている金属膜MFと同じ材料から構成することもできる。この場合、例えば、プロセスを簡素化することができる。ここで、反射膜REFを金属膜MFと同じ材料から構成する場合、赤外線レーザ光IFを充分に反射させることができるかが疑問になる。例えば、シリサイド化する領域(領域AR1)では、金属膜MFが露出しているが、この金属膜MFでの反射は少なく、大部分は金属膜MFに吸収されることを前提としている。したがって、シリサイド化しない領域(領域AR2)においても、金属膜MF上に形成される反射膜REFを金属膜MFと同じ材料から構成する場合、シリサイド化する領域(領域AR1)の類推から、赤外線レーザ光IFの吸収が充分に行なわれないのではないかという疑問が生じる。しかし、反射膜REFの膜厚が、対象となっている赤外線レーザ光IFの波長と同程度にすると反射効率が向上するため、反射膜REFを金属膜MFと同じ材料から構成する場合であっても、反射膜REFの膜厚を赤外線レーザ光IFの波長と同程度の膜厚にすることにより、反射効率を向上させることができるのである。つまり、本実施の形態2では、同じ材料の反射膜REFであっても、膜厚を調整することにより、反射効率が変化するという性質をうまく利用しているのである。これにより、反射膜REFを金属膜MFと同じ材料から構成することもできる。
【0084】
<半導体装置の製造方法>
以下では、炭化珪素を使用した半導体デバイスの一例として、炭化珪素を使用した縦型のパワーMISFETを取り上げ、この半導体装置の製造方法に本実施の形態2における基本思想を適用する例について図面を参照しながら説明する。
【0085】
図9〜図14までは、前記実施の形態1と同様である。そして、図30に示すように、金属膜MF上に反射膜REFを形成する。反射膜REFは、例えば、タングステン膜、アルミニウム膜、あるいは、炭化シリコン膜などの導体膜から形成され、例えば、スパッタリング法やCVD法により形成することができる。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、反射膜REFをパターニングする。反射膜REFのパターニングは、平面視において、コンタクトホールCNTの形成領域を開口し、かつ、その他の領域を覆うように行なわれる。
【0086】
その後、図31に示すように、半導体基板1Sの金属膜露出領域および反射膜形成領域にわたって赤外線レーザ光IFを照射する。このとき、半導体基板1Sの金属膜露出領域においては、赤外線レーザ光IFを反射する反射膜REFが形成されていないので、直接、赤外線レーザ光IFが金属膜MFに照射される。この結果、反射膜REFを形成していない金属膜露出領域においては、赤外線レーザ光IFが効率良く金属膜MFへ吸収される。このことは、金属膜露出領域においては、金属膜MFに吸収される赤外線レーザ光IFを増やすことができるため、金属膜MFおよび半導体基板1Sの温度を高くできることを意味する。
【0087】
一方、反射膜形成領域においては、反射膜REFが形成されているため、この反射膜REFに対して赤外線レーザ光IFが照射される。このとき、反射膜REFによって大部分の赤外線レーザ光IFは反射される。このことから、反射膜形成領域においては、反射膜REFの下層に形成されている金属膜MFに吸収される赤外線レーザ光IFが金属膜露出領域よりも減少する。このことは、反射膜形成領域における赤外線レーザ光IFの金属膜MFへの吸収効率が低下するため、金属膜MFおよび半導体基板1Sの温度を金属膜露出領域に比べて低くすることができることを意味する。
【0088】
この結果、図31に示すように、例えば、金属膜露出領域においては、半導体基板1Sの温度がシリサイド化するための共晶化温度よりも高くなり、半導体基板1Sと金属膜MFの間にシリサイド反応が生じる。したがって、金属膜露出領域においては、半導体基板1Sと金属膜MFとの界面に金属シリサイド膜SLが形成される。一方、反射膜形成領域においては、半導体基板1Sの温度がシリサイド化するための共晶化温度よりも低くなり、半導体基板1Sと金属膜MFの間にシリサイド反応が生じない。つまり、反射膜形成領域においては、半導体基板1Sと金属膜MFとの界面に金属シリサイド膜SLが形成されないことになる。
【0089】
なお、金属膜MFがニッケル膜の場合、金属シリサイド膜SLはニッケルシリサイド膜となり、金属膜MFがコバルト膜の場合、金属シリサイド膜SLはコバルトシリサイド膜となる。また、金属膜MFがプラチナ膜の場合、金属シリサイド膜SLはプラチナシリサイド膜となり、金属膜MFがチタン膜の場合、金属シリサイド膜SLはチタンシリサイド膜となる。その後の工程は、前記実施の形態1と同様である。以上のようにして、本実施の形態2における半導体装置を製造することができる。
【0090】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1S 半導体基板
AR1 領域
AR2 領域
BF1 バリア膜
BF2 バリア膜
CNT コンタクトホール
EPI エピタキシャル層
G ゲート電極
GCNT ゲートコンタクト
GOX ゲート絶縁膜
IF 赤外線レーザ光
IL 層間絶縁膜
MF 金属膜
OP 開口部
PF 透過膜
PRF 保護膜
PWL p型ウェル
REF 反射膜
SCNT ソースコンタクト
SL 金属シリサイド膜
SR ソース領域
TF1 窒化チタン膜
TF2 窒化チタン膜
UV 紫外線レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)半導体基板上に金属膜を形成する工程と、
(b)前記金属膜の上方に選択的に絶縁膜からなる透過膜を形成する工程と、
(c)前記(b)工程後、前記半導体基板の上方から前記半導体基板に対して紫外線レーザ光を照射することにより、選択的に形成された前記透過膜の下層において、前記半導体基板と前記金属膜を反応させて金属シリサイド膜を形成する工程と、を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記透過膜の形成されていない領域においては、前記金属シリサイド膜が形成されないことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(c)工程において、前記透過膜が形成されている領域の温度は、前記金属シリサイド膜が形成される温度以上になる一方、前記透過膜が形成されていない領域の温度は、前記金属シリサイド膜が形成される温度よりも低くなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記紫外線レーザ光は、波長が200nm〜600nmの範囲内にあるパルスレーザ光であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記半導体基板は、炭化シリコンから構成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記半導体基板は、炭化シリコンから構成され、
前記透過膜が形成されている領域の前記金属膜は、ニッケル膜から形成され、
前記透過膜が形成されていない領域の前記金属膜は、第1窒化チタン膜と、前記第1窒化チタン膜上に形成された前記ニッケル膜と、前記ニッケル膜上に形成された第2窒化チタン膜よりなる積層膜から形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記透過膜は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、あるいは、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層膜から形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記紫外線レーザ光の波長をλ、自然数をm、前記透過膜の屈折率をnとした場合、
前記透過膜の膜厚dは、(2m+1)/4×λ/n−λ/4≦d≦(2m+1)/4×λ/n+λ/4の関係を満たすことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記紫外線レーザ光のエネルギー密度は、400mJ/cm以上800mJ/cm以下であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
(a)半導体基板上に金属膜を形成する工程と、
(b)前記金属膜の上方に選択的に1μm以上の膜厚を有する導体膜からなる反射膜を形成する工程と、
(c)前記(b)工程後、前記半導体基板の上方から前記半導体基板に対して赤外線レーザ光を照射することにより、選択的に前記半導体基板と前記金属膜を反応させて金属シリサイド膜を形成する工程と、を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記反射膜が形成されていない領域において、前記半導体基板と前記金属膜が反応して前記金属シリサイド膜が形成される一方、前記反射膜が形成されている領域においては、前記金属シリサイド膜が形成されないことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(c)工程において、前記反射膜が形成されていない領域の温度は、前記金属シリサイド膜が形成される温度以上になる一方、前記反射膜が形成されている領域の温度は、前記金属シリサイド膜が形成される温度よりも低くなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項10に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記赤外線レーザ光は、波長が2.8μm〜10.6μmの範囲内にある連続発振レーザ光であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項10に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記反射膜は、タングステン膜、アルミニウム膜、炭化シリコン膜のいずれかの膜から形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項10に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記反射膜は、前記金属膜と同じ膜から形成されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2013−16707(P2013−16707A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149448(P2011−149448)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】