半導体装置の製造方法
【課題】CMP工程において、生産性の向上、およびCMP特性の劣化の抑制を図る。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、半導体基板の表面上に、絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜内に、溝を形成する工程と、絶縁膜上に、下地膜を形成する工程と、下地膜上に、溝が埋まるように金属膜を形成する工程と、半導体基板の表面を回転する研磨パッドに当接させ、研磨パッド上に金属イオンを含む第1CMPスラリーを供給することで、溝外の金属膜を除去する第1研磨を行う工程と、半導体基板の表面を研磨パッドに当接させ、研磨パッド上に有機酸および純水を供給することで、研磨パッドおよび半導体基板の表面を洗浄する工程と、半導体基板の表面を研磨パッドに当接させ、研磨パッド上に第1CMPスラリーと異なる第2CMPスラリーを供給することで、溝外の下地膜を除去する第2研磨を行う工程と、を具備する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、半導体基板の表面上に、絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜内に、溝を形成する工程と、絶縁膜上に、下地膜を形成する工程と、下地膜上に、溝が埋まるように金属膜を形成する工程と、半導体基板の表面を回転する研磨パッドに当接させ、研磨パッド上に金属イオンを含む第1CMPスラリーを供給することで、溝外の金属膜を除去する第1研磨を行う工程と、半導体基板の表面を研磨パッドに当接させ、研磨パッド上に有機酸および純水を供給することで、研磨パッドおよび半導体基板の表面を洗浄する工程と、半導体基板の表面を研磨パッドに当接させ、研磨パッド上に第1CMPスラリーと異なる第2CMPスラリーを供給することで、溝外の下地膜を除去する第2研磨を行う工程と、を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置における多層配線や素子分離の形成工程において、表面を平坦化する工程として、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法が多用されている。特に、多層配線における平坦化プロセスにおいては、配線となる金属膜のCMP(メタルCMP)と、配線の表面に形成される下地膜のCMP(バリアメタルCMP)とがある。これら2つのCMP工程は、通常、非連続に処理される。すなわち、CMP装置内において、これらのCMPは、別チャンバー内(別研磨パッド上)で行われる。
【0003】
メタルCMPとバリアメタルCMPとを非連続で行う理由としては、メタルCMPとバリアメタルCMPとで使用されるスラリー構成が異なること、また連続処理による研磨時間増加によって研磨特性の安定性が低下すること等が挙げられる。
【0004】
例えば、金属膜としてWが用いられるメタルCMPにおいて、Wの研磨速度が配線間絶縁膜であるSiO2の研磨速度より大きくなるようなスラリーが用いられる。このとき、スラリーによるWとSiO2との研磨レート比は、W/SiO2が10以上であることが望ましい。このため、Wの研磨レートの促進のために、スラリーに酸化剤が添加されることが一般的である。また、酸化剤の酸化力を高めるために、触媒としてFeイオンが含有される場合もある。
【0005】
一方、バリアメタルCMPにおいて、WおよびSiO2に対して実用的な研磨速度を得るため、またこれらの研磨レートのバランスをとるために、スラリーのpHはアルカリ性であることが多い。また、Wの研磨レートを抑制するために、スラリーに酸化力を抑えた酸化剤、もしくは酸化抑制剤が添加されることが一般的である。
【0006】
これに対し、生産性の観点からメタルCMPおよびバリアメタルCMPを連続的に処理する(同一チャンバー内で処理する)ことが提案されている。しかし、メタルCMPおよびバリアメタルCMPを連続処理する際に各CMPにおけるスラリーの液性が逆の場合、有効成分を互いに相殺しあうことが多い。また、砥粒同士の凝集も発生し、所望の研磨特性を得ることができない。仮に、メタルCMPおよびバリアメタルCMPで液性が同じ、すなわち同極性かつ類似成分のスラリーを用いた場合であっても、メタルCMPにおけるスラリーに含有される高酸化力を有する酸化剤や触媒が、バリアメタルCMP中もパッド表面に残留し、研磨レートを変動させる。
【0007】
また、研磨条件、パッドコンディションによってスラリーの成分残留量も変動するため、研磨特性が安定しない。さらに、2種類のCMP工程を連続して行うため、連続する研磨時間の増加にともないパッド弾性率も変化する。このため、後工程であるバリアメタルCMPの研磨特性の変動も大きくなる。
【0008】
このように、2つのCMP工程を連続的に処理した場合、非連続で処理した場合に比べて、研磨特性が劣化する。CMP工程の連続処理に向けた対策として、メタルCMPのスラリーとバリアメタルCMPのスラリーとの成分をより類似性の高いものにして処理する方法が有力である。しかし、2つのCMP工程におけるスラリーの類似性を高めることには限界があり、連続処理における研磨特性を非連続処理における研磨特性と同程度にすることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3917593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
CMP工程において、生産性の向上を図りつつ、CMP特性の劣化の抑制を図る半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態による半導体装置の製造方法は、半導体基板の表面上に、絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜内に、溝を形成する工程と、前記絶縁膜上に、下地膜を形成する工程と、前記下地膜上に、前記溝が埋まるように金属膜を形成する工程と、前記半導体基板の表面を回転する研磨パッドに当接させ、前記研磨パッド上に金属イオンを含む第1CMPスラリーを供給することで、前記溝外の前記金属膜を除去する第1研磨を行う工程と、前記半導体基板の表面を前記研磨パッドに当接させ、前記研磨パッド上に有機酸および純水を供給することで、前記研磨パッドおよび前記半導体基板の表面を洗浄する工程と、前記半導体基板の表面を前記研磨パッドに当接させ、前記研磨パッド上に前記第1CMPスラリーと異なる第2CMPスラリーを供給することで、前記溝外の前記下地膜を除去する第2研磨を行う工程と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る半導体装置の配線構造の製造工程を示す断面図。
【図2】CMP後の配線構造を示す断面図。
【図3】本実施形態に係るCMP装置を示す平面図。
【図4】図3における第1研磨ユニットの構成を示す図。
【図5】図3における第1ロール洗浄ユニットの構成を示す図。
【図6】図3における第1ペンシル洗浄ユニットの構成を示す図。
【図7】本実施形態に係るCMP方法の比較例を示すフローチャート。
【図8】本実施形態に係るCMP方法を示すフローチャート。
【図9】本実施形態に係るCMP方法の薬液処理を模式的に示す図。
【図10】本実施形態に係るCMP方法の薬液処理の化学反応を示す図。
【図11】本実施形態に係るCMP方法による配線の平坦性とその比較例とを示すグラフ。
【図12】本実施形態に係るCMP方法による欠陥数とその比較例とを示すグラフ。
【図13】本実施形態に係るCMP方法における第1研磨において用いられるスラリーの研磨レートを示すグラフ。
【図14】本実施形態に係るCMP装置における研磨パッドの弾性率の温度依存性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態を以下に図面を参照して説明する。なお、図面において、同一部分には同一の参照符号を付す。また、重複する説明は、必要に応じて行う。
【0014】
<実施形態>
図1乃至図14を用いて、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、配線構造の製造工程におけるCMP工程に関するものであり、メタルCMPとバリアメタル(BM)CMPとを同一チャンバーで連続的に行う例である。これにより、生産性の向上を図ることができる。また、このとき、メタルCMPの後に、有機酸によって研磨パッドおよび半導体基板の表面を洗浄する。これにより、メタルCMPで用いたスラリーの成分で、かつその後のバリアメタルCMPの研磨レートを変動させる成分を除去することができ、連続処理による研磨特性の劣化を抑制することができる。以下に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について詳説する。
【0015】
[配線構造の製造方法]
図1および図2を用いて、本実施形態に係る半導体装置の配線構造の製造工程について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る半導体装置の配線構造の製造工程を示す断面図である。図2は、CMP後の配線構造を示す断面図である。
【0017】
まず、図1(a)に示すように、半導体素子(図示せず)が形成された半導体基板10上に、絶縁膜11が形成される。絶縁膜11は、例えばSiO2で構成される。この絶縁膜11にコンタクトホールが形成され、このコンタクトホール内にバリアメタル12を介してコンタクトプラグ13が形成される。バリアメタル12は例えばTiもしくはTaまたはこれらの窒化物で構成され、コンタクトプラグ13は例えばWで構成される。これにより、絶縁膜11、バリアメタル12およびコンタクトプラグ13を含むコンタクト層が形成される。
【0018】
次に、コンタクト層上に、絶縁膜14が形成される。絶縁膜14は、例えばSiO2で構成される。この絶縁膜14内に、凹部としての配線溝Aが形成される。配線溝Aは、例えば、被覆率が50%の配線となるように形成される。
【0019】
次に、全面に、常法(例えば、CVD法)により配線の下地膜となるバリアメタル15が形成される。すなわち、配線溝A内および配線溝A外の絶縁膜14上に、バリアメタル15が形成される。バリアメタル15は、例えば、TiもしくはTaまたはこれらの窒化物で構成される。
【0020】
次に、全面に、常法(例えば、CVD法)により配線溝A内が埋まるように配線となる金属膜16が形成される。すなわち、配線溝A内および配線溝A外のバリアメタル15上に、金属膜16が形成される。金属膜16は、例えばWまたはCuで構成される。
【0021】
次に、全面に、CMPが行われる。このCMP工程において、第1研磨(メタルCMP)および第2研磨(バリアメタルCMP)が行われる。なお、第2研磨はタッチアップとも称される。
【0022】
より具体的には、図1(b)に示すように、第1研磨において、配線溝A外に形成された余分な金属膜16が除去される。これにより、配線溝A内に、金属膜16が埋め込まれる。また、配線溝A外において、バリアメタル15の表面が露出される。すなわち、第1研磨では、主に金属膜16(例えば、WまたはCu)が被研磨膜となる。
【0023】
その後、図1(c)に示すように、第2研磨において、配線溝A外に形成されたバリアメタル15が除去される。これにより、配線溝A外において、絶縁膜14の表面が露出される。このとき、金属膜16やバリアメタル15を完全に除去するために、絶縁膜14の表面の一部も除去される。すなわち、第2研磨では、主に金属膜16(例えば、WまたはCu)、バリアメタル15(例えば、TiもしくはTaまたはこれらの窒化物)、および絶縁膜14(例えば、SiO2)が被研磨膜となる。これにより、絶縁膜14、バリアメタル15および金属膜16を含む配線層が形成される。本実施形態に係るCMPの詳細については、後述する。
【0024】
図2に示すように、CMP工程後において、金属膜16に、ディッシング21、エロージョン22が生じる。また、絶縁膜14に、欠陥(defect)23が生じる。これらは、配線の特性を劣化させる要因となる。
【0025】
通常、第1研磨工程および第2研磨工程を同一のターンテーブルにて連続に行う場合、別のターンテーブルにて非連続に行う場合に比べて、研磨特性が劣化する。このため、連続処理の場合、ディッシング21、エロージョン22および欠陥23が増大する。
【0026】
これに対し、本実施形態は、第1研磨および第2研磨を連続処理しながらも、研磨特性の劣化を抑制するCMP方法の例である。
【0027】
[CMP装置]
図3乃至図6を用いて、本実施形態に係るCMP装置300について説明する。なお、ここでは、CMP装置300として荏原製作所製のFREX300Xを用いる例を示している。
【0028】
図3は、本実施形態に係るCMP装置300を示す平面図である。
【0029】
図3に示すように、CMP装置300は、第1CMPユニット310および第2CMPユニット320を備えている。
【0030】
第1CMPユニット310は、第1研磨ユニット311、第1ロール洗浄ユニット312、および第1ペンシル洗浄ユニット313を有している。半導体基板10(被研磨膜)は、図示せぬ輸送ユニットによって、第1研磨ユニット311、第1ロール洗浄ユニット312、および第1ペンシル洗浄ユニット313の順に輸送される。すなわち、半導体基板10は、第1研磨ユニット311において研磨された後、第1ロール洗浄ユニット312においてロール洗浄され、第1ペンシル洗浄ユニット313においてペンシル洗浄される。以下に、各ユニットについて詳説する。
【0031】
図4は、図3における第1研磨ユニット311の構成を示す図である。
【0032】
図4に示すように、第1研磨ユニット311には、表面に研磨パッド41が貼付されたターンテーブル40が設置されている。
【0033】
被研磨膜の研磨において、ターンテーブル40上に貼付された研磨パッド41に、半導体基板10(被研磨膜)が当接される。ターンテーブル40は1〜200rpmで回転可能であり、トップリング42は1〜200rpmで回転可能である。これらターンテーブル40およびトップリング42はそれぞれ、例えば反時計回りに回転する。また、研磨中、ターンテーブル40およびトップリング42は、一定方向に回転する。これらの研磨荷重は、通常50〜500hPa程度であるが、これに限らず適宜調整可能である。
【0034】
また、研磨パッド41上には、スラリー供給ノズル43が配置されている。このスラリー供給ノズル43からは、スラリーとして所定の薬液を50〜500cc/minの流量で供給することができる。
【0035】
また、研磨パッド41上には、圧縮空気、あるいは窒素ガスなどを研磨パッド41に向けて噴出する冷却ノズル45が配置されている。この冷却ノズル45は、0〜1000l/min程度の範囲で圧縮空気を研磨パッド41に噴出し、研磨中の研磨パッド41の表面の温度を制御する。
【0036】
さらに、図4において、研磨パッド41上には、ドレッサー46も併せて示してある。このドレッサー46は、被研磨膜の研磨終了後、1〜200rpmで回転させつつ、50〜500hPaの荷重で研磨パッド41に当接される。これにより、ドレッサー46は、研磨パッド41の表面のコンディショニングを行なう。
【0037】
図5は、図3における第1ロール洗浄ユニット312の構成を示す図である。
【0038】
図5に示すように、第1ロール洗浄ユニット312には、ロール洗浄を行うロールブラシ50が設置されている。
【0039】
被研磨膜のロール洗浄において、ロールブラシ50は、半導体基板10の表面(被研磨膜側)および裏面に各1つずつ設置される。このロールブラシ50は、半導体基板10の直径分の長さを有し、半導体基板10の直径上に設置される。また、ロールブラシ50は、円柱状であり、円柱の中心軸を回転軸として回転することで半導体基板10の両面を洗浄する。このとき、半導体基板10は、図示せぬ保持部に保持され、一定方向に回転している。ロール洗浄において、半導体基板10は、ロールブラシ50によって物理的に洗浄されるとともに、薬液が供給されることによって化学的にも洗浄される。ロール洗浄は、次工程のペンシル洗浄よりも粗い洗浄である。
【0040】
図6は、図3における第1ペンシル洗浄ユニット313の構成を示す図である。
【0041】
図6に示すように、第1ペンシル洗浄ユニット313には、ペンシル洗浄を行うペンシルブラシ60が設置されている。
【0042】
被研磨膜のペンシル洗浄において、ペンシルブラシ60は、半導体基板10(被研磨膜)の表面に設置される。このペンシルブラシ60は、半導体基板10上において左右に駆動しながら半導体基板10の表面を洗浄する。このとき、半導体基板10は、図示せぬ保持部に保持され、一定方向に回転している。ペンシル洗浄において、半導体基板10は、ペンシルブラシ60によって物理的に洗浄されるとともに、薬液が供給されることによって化学的にも洗浄される。ペンシル洗浄は、前工程のロール洗浄よりも細かい洗浄である。
【0043】
また、半導体基板10は、ペンシル洗浄後、第1ペンシル洗浄ユニット313においてドライアウト(乾燥)される。
【0044】
第2CMPユニット320は、第2研磨ユニット321、第2ロール洗浄ユニット322、および第2ペンシル洗浄ユニット323を有している。半導体基板10(被研磨膜)は、第1CMPユニット310において処理が終了した後、図示せぬ輸送ユニットによって、第2研磨ユニット321、第2ロール洗浄ユニット322、および第2ペンシル洗浄ユニット323の順に輸送される。
【0045】
第2CMPユニット320における第2研磨ユニット321、第2ロール洗浄ユニット322、および第2ペンシル洗浄ユニット323はそれぞれ、第1CMPユニット310における第1研磨ユニット311、第1ロール洗浄ユニット312、および第1ペンシル洗浄ユニット313と同様の構成を有している。
【0046】
しかし、図3に示すように、第2研磨ユニット321には、第1研磨ユニット311のターンテーブル40とは異なるターンテーブル40’が設置されている。このため、第2CMPユニット320では、被研磨膜に対して第1CMPユニット310と異なるCMP工程が行われ得る。また、これに限らず、第1CMPユニット310と第2CMPユニット320とで、別々の半導体基板10に対して同時にCMP工程を行うことも可能である。
【0047】
[CMP方法]
図7乃至図10を用いて、本実施形態に係るCMP方法およびその比較例について説明する。なお、ここでは、配線構造における金属膜16としてWが形成された場合におけるCMP方法について説明するが、金属膜16としてはこれに限らない。
【0048】
図7は、本実施形態に係るCMP方法の比較例を示すフローチャートである。
【0049】
図7に示すように、比較例によれば、まず、ステップS11において、被研磨膜に対して第1研磨が行われる。第1研磨は、半導体基板10が第1研磨ユニット311に輸送された後、その第1研磨ユニット311において行われる。このとき、被研磨膜として主に図1に示す金属膜16(W)が研磨される。このため、研磨パッド41に供給されるスラリーとしては、例えばCabot製のシリカスラリー(W7523B)が用いられる。この第1研磨におけるスラリー(第1CMPスラリー)は、酸化剤、添加剤、砥粒(シリカ)、および触媒としてのFeを含み、Wに対する研磨レートが大きいスラリーである。ここで、酸化剤としては、過硫酸アンモニウムまたは過酸化水素水が挙げられる。
【0050】
次に、ステップS12において、スラリーの供給がとめられ、純水を供給することで研磨パッド41および被研磨膜(半導体基板10)に対して純水研磨(純水洗浄)が行われる。純水研磨は、第1研磨と同様、第1研磨ユニット311において行われる。この純水研磨は、被研磨膜を研磨することなく、研磨パッド41や被研磨膜の表面の薬液等を除去する。
【0051】
次に、ステップS13において、被研磨膜(半導体基板10)に対してロール洗浄が行われる。第1研磨後のロール洗浄は、半導体基板10が第1研磨ユニット311から第1ロール洗浄ユニット312に輸送された後、その第1ロール洗浄ユニット312において行われる。このとき、半導体基板10は、ロールブラシ50によって物理的に洗浄されるとともに、薬液が供給されることによって化学的にも洗浄される。
【0052】
次に、ステップS14において、被研磨膜(半導体基板10)に対してペンシル洗浄が行われる。第1研磨後のペンシル洗浄は、半導体基板10が第1ロール洗浄ユニット312から第1ペンシル洗浄ユニット313に輸送された後、その第1ペンシル洗浄ユニット313において行われる。このとき、半導体基板10は、ペンシルブラシ60によって物理的に洗浄されるとともに、薬液が供給されることによって化学的にも洗浄される。ロール洗浄およびペンシル洗浄によって、第1研磨による半導体基板10の表面異物(スラリーの薬液等)が除去される。
【0053】
その後、半導体基板10に対してドライアウトが行われ、半導体基板10の表面の水分が除去される。ドライアウトは、ペンシル洗浄と同様、第1ペンシル洗浄ユニット313において行われる。
【0054】
このように、被研磨膜を金属膜16とした第1研磨工程、およびその後の洗浄工程(第1研磨後のロール洗浄およびペンシル洗浄)は、第1CMPユニット310において行われる。
【0055】
次に、ステップS15において、被研磨膜に対して第2研磨(タッチアップ)が行われる。第2研磨は、半導体基板10が第2研磨ユニット321に輸送された後、その第2研磨ユニット321において行われる。このとき、被研磨膜として主に図1に示す金属膜16(W)、バリアメタル15、および絶縁膜14(SiO2)が研磨される。このため、研磨パッド41に供給されるスラリーとしては、例えばCabot製のシリカスラリー(W7203)が用いられる。この第2研磨におけるスラリー(第2CMPスラリー)は、酸化剤、および砥粒(シリカ)を含み、金属膜16(W)、バリアメタル15、および絶縁膜14(SiO2)に対する研磨レートが同程度のスラリーである。なお、金属膜16(W)に対する研磨レートは、バリアメタル15、および絶縁膜14(SiO2)に対する研磨レートより低いほうが望ましい。ここで、酸化剤としては、過硫酸アンモニウムまたは過酸化水素水が挙げられる。
【0056】
次に、ステップS16において、スラリーの供給がとめられ、純水を供給することで研磨パッド41および被研磨膜に対して純水研磨が行われる。純水研磨は、第2研磨と同様、第2研磨ユニット321において行われる。この純水研磨は、被研磨膜を研磨することなく、研磨パッド41や被研磨膜の表面の薬液等を除去する。
【0057】
次に、ステップS17において、被研磨膜(半導体基板10)に対してロール洗浄が行われる。第2研磨後のロール洗浄は、半導体基板10が第2研磨ユニット321から第2ロール洗浄ユニット322に輸送された後、その第2ロール洗浄ユニット322において行われる。このとき、半導体基板10は、ロールブラシ50によって物理的に洗浄されるとともに、薬液が供給されることによって化学的にも洗浄される。
【0058】
次に、ステップS18において、被研磨膜(半導体基板10)に対してペンシル洗浄が行われる。第2研磨後のペンシル洗浄は、半導体基板10が第2ロール洗浄ユニット322から第2ペンシル洗浄ユニット323に輸送された後、その第2ペンシル洗浄ユニット323において行われる。このとき、半導体基板10は、ペンシルブラシ60によって物理的に洗浄されるとともに、薬液が供給されることによって化学的にも洗浄される。ロール洗浄およびペンシル洗浄によって、第2研磨による半導体基板10の表面異物(スラリーの薬液等)が除去される。
【0059】
その後、半導体基板10に対してドライアウトが行われ、半導体基板10の表面の水分が除去される。ドライアウトは、ペンシル洗浄と同様、第2ペンシル洗浄ユニット323において行われる。
【0060】
このように、被研磨膜を金属膜16、バリアメタル15、および絶縁膜14とした第2研磨工程、およびその後の洗浄工程(第2研磨後のロール洗浄およびペンシル洗浄)は、第2CMPユニット320において行われる。
【0061】
上述したように、比較例によれば、第1研磨後に2段階の洗浄(ロール洗浄およびペンシル洗浄)を行うことで被研磨膜表面のスラリー成分を除去した後、第1研磨とは異なる研磨ユニット(ターンテーブル)にて第2研磨を行う。すなわち、第1研磨と第2研磨とを非連続に行う。しかし、このような非連続処理では、2段階の洗浄やユニット間の半導体基板10の搬送によって、CMP時間が増大してしまう。また、1つの半導体基板10に対するCMPのために、2つのCMPユニット(第1CMPユニット310および第2CMPユニット320)を用いる必要があるため、生産性に問題が生じてしまう。
【0062】
上記非連続処理に対し、第1研磨と第2研磨とを同一の研磨ユニットにて連続処理で行う場合、研磨特性が劣化してしまう。これは、連続処理の場合、第1研磨後にロール洗浄およびペンシル洗浄を行わず、洗浄が不十分であるため、第2研磨において第1研磨のスラリー成分が研磨パッド40上や被研磨膜の表面に残留することが原因であると考えられる。特に、第1研磨におけるスラリーに含まれるFeイオンは、金属膜16であるWの研磨レートを大きくする。このため、第2研磨においても金属膜16の研磨レートが大きくなり、結果として研磨特性の劣化が生じる。
【0063】
これに対し、本実施形態は、第1研磨と第2研磨とを連続処理で行いながら、研磨特性の劣化を抑制するCMP方法である。
【0064】
図8は、本実施形態に係るCMP方法を示すフローチャートである。
【0065】
図8に示すように、本実施形態によれば、まず、ステップS21において、被研磨膜に対して第1研磨が行われる。第1研磨は、半導体基板10が第1研磨ユニット311に輸送された後、その第1研磨ユニット311において行われる。このとき、被研磨膜として主に図1に示す金属膜16(W)が研磨される。このため、研磨パッド41に供給されるスラリーとしては、例えばCabot製のシリカスラリー(W7523B)が用いられる。この第1研磨におけるスラリー(第1CMPスラリー)は、酸化剤、添加剤、砥粒(シリカ)、および触媒としてのFeを含み、Wに対する研磨レートが大きいスラリーである。ここで、酸化剤としては、過硫酸アンモニウムまたは過酸化水素水が挙げられる。
【0066】
また、第1研磨は、冷却ノズル45や研磨パッド41と被研磨膜との研磨荷重を調整することにより、研磨パッド41の表面の温度を制御しながら行われる。より具体的には、第1研磨中、研磨パッド41の表面の温度は一定になるように制御され、その温度は30〜65℃程度である。これにより、研磨パッド41の特性(例えば、弾性率)を変移させることなく研磨することができる。また、被研磨膜の研磨レートが高くなるような所望の温度で行われてもよい。
【0067】
次に、ステップS22において、スラリーの供給がとめられ、有機酸および純水(有機酸溶液)を供給することで研磨パッド41および被研磨膜に対して有機酸および純水研磨(有機酸および純水洗浄)が行われる。有機酸および純水研磨は、第1研磨と同様、第1研磨ユニット311において行われる。これにより、第1研磨に用いられたスラリー成分を研磨パッド41および被研磨膜の表面から除去することができる。また、このとき、被研磨膜は研磨されない。この有機酸および純水研磨の詳細については、後述する。
【0068】
次に、ステップS23において、有機酸の供給がとめられ、純水のみを供給することで研磨パッド41および被研磨膜に対して純水研磨が行われる。純水研磨は、第1研磨と同様、第1研磨ユニット311において行われる。この純水研磨は、被研磨膜を研磨することなく、研磨パッド41や被研磨膜の表面の薬液(有機酸等)を除去する。これにより、次工程である第2研磨において、有機酸が残留することによって研磨レートに影響を与えることを抑制できる。
【0069】
次に、ステップS24において、被研磨膜に対して第2研磨(タッチアップ)が行われる。第2研磨は、第1研磨と同様、第1研磨ユニット311において行われる。このとき、被研磨膜として主に図1に示す金属膜16(W)、バリアメタル15、および絶縁膜14(SiO2)が研磨される。このため、研磨パッド41に供給されるスラリーとしては、例えばCabot製のシリカスラリー(W7203)が用いられる。この第2研磨におけるスラリー(第2CMPスラリー)は、酸化剤、および砥粒(シリカ)を含み、金属膜16(W)、バリアメタル15、および絶縁膜14(SiO2)に対する研磨レートが同程度のスラリーである。なお、金属膜16(W)に対する研磨レートは、バリアメタル15、および絶縁膜14(SiO2)に対する研磨レートより低いほうが望ましい。また、第2CMPスラリーは、第1CMPスラリーに比べて、バリアメタル15、および絶縁膜14に対して大きい研磨レートを有する。ここで、酸化剤としては、過硫酸アンモニウムまたは過酸化水素水が挙げられる。
【0070】
また、第1研磨と同様、有機酸および純水研磨、純水研磨、および第2研磨は、冷却ノズル45や研磨パッド41と被研磨膜との研磨荷重を調整することにより、研磨パッド41の表面の温度を制御しながら行われる。すなわち、第1研磨工程から第2研磨工程まで、研磨パッド41の表面の温度を一定にするように被研磨膜の研磨が行われる。これにより、研磨パッド41の特性を変移させることなく安定させてこれらの工程が行われる。
【0071】
次に、ステップS25において、スラリーの供給がとめられ、純水を供給することで研磨パッド41および被研磨膜に対して純水研磨が行われる。純水研磨は、第1研磨と同様、第1研磨ユニット311において行われる。この純水研磨は、被研磨膜を研磨することなく、研磨パッド41や被研磨膜の表面の薬液等を除去する。
【0072】
次に、ステップS26において、被研磨膜(半導体基板10)に対してロール洗浄が行われる。ロール洗浄は、半導体基板10が第1研磨ユニット311から第1ロール洗浄ユニット312に輸送された後、その第1ロール洗浄ユニット312において行われる。このとき、半導体基板10は、ロールブラシ50によって物理的に洗浄されるとともに、薬液が供給されることによって化学的にも洗浄される。
【0073】
次に、ステップS27において、被研磨膜(半導体基板10)に対してペンシル洗浄が行われる。ペンシル洗浄は、半導体基板10が第1ロール洗浄ユニット312から第1ペンシル洗浄ユニット313に輸送された後、その第1ペンシル洗浄ユニット313において行われる。このとき、半導体基板10は、ペンシルブラシ60によって物理的に洗浄されるとともに、薬液が供給されることによって化学的にも洗浄される。ロール洗浄およびペンシル洗浄によって、第2研磨による半導体基板10の表面異物(スラリーの薬液等)が除去される。
【0074】
その後、半導体基板10に対してドライアウトが行われ、半導体基板10の表面の水分が除去される。ドライアウトは、ペンシル洗浄と同様、第1ペンシル洗浄ユニット313において行われる。
【0075】
このように、本実施形態におけるCMPでは、第1研磨および第2研磨が第1CMPユニット310において連続的に行われる。この際、第1研磨後に、研磨パッド41および被研磨膜に対して有機酸による洗浄が行われる。有機酸による洗浄の原理について、以下に詳説する。
【0076】
図9は、本実施形態に係るCMP方法の薬液処理を模式的に示す図である。図10は、本実施形態に係るCMP方法の薬液処理の化学反応を示す図である。なお、ここでは、被研磨膜となる金属膜16としてWが用いられる場合について説明する。
【0077】
図9に示すように、第1研磨(ステップS21)において、スラリー供給ノズル43によって研磨パッド41上に金属膜16用スラリー(第1CMP用スラリー)が供給される。金属膜16用スラリーには、酸化剤、添加剤、砥粒(シリカ)、および触媒としてのFeが含まれている。第1研磨において被研磨膜は金属膜16であり、スラリー成分のうち触媒であるFeが金属膜16の研磨レートを大きくする。第1研磨の終了後、研磨パッド41や被研磨膜の表面に上記スラリー成分が残留する。
【0078】
次に、有機酸および純水研磨(ステップS22)において、スラリー供給ノズル43によって有機酸溶液(有機酸および純水)が研磨パッド41上に供給される。有機酸溶液には、有機酸として、例えばクエン酸が含まれている。クエン酸は、2つ以上の配位子を含んでいる。すなわち、図10に示すように、研磨パッド41上にクエン酸を供給することにより、研磨パッド41や被研磨膜の表面のFeイオンとクエン酸とが反応して錯体化合物(キレート化合物)を形成する。このキレート化合物は、水溶性であるため、純水に溶解されて除去される。すなわち、残留しているFeイオンは、クエン酸および純水が供給されることによって、クエン酸とキレート化合物を形成し、純水に溶解されて除去される。また、残留している添加剤や砥粒は、純水等によって除去される。
【0079】
その後、第2研磨(ステップS24)において、スラリー供給ノズル43によって研磨パッド41上にバリアメタル15用スラリー(第2CMP用スラリー)が供給される。バリアメタル15用スラリーには、酸化剤、および砥粒(シリカ)が含まれている。第2研磨において被研磨膜は金属膜16、バリアメタル15、および絶縁膜14であり、バリアメタル15用スラリーは金属膜16、バリアメタル15、および絶縁膜14に対する研磨レートが同程度のスラリーである。このとき、研磨パッド41や被研磨膜の表面には、Feが残留していないため、第2研磨において研磨レートの変移を抑制することができる。
【0080】
なお、本実施形態において、有機酸としてクエン酸を例に説明したがこれに限らない。有機酸としては、第1CMPスラリーに含まれる触媒である金属イオンと反応してキレート化合物を形成するものであればよく、例えばリンゴ酸でもよい。また、第1CMPスラリーの触媒としてはFeに限らず、Cuであってもよい。また、被研磨膜である金属膜16としてはWに限らず、Cuであっても本実施形態は適用可能である。
【0081】
[効果]
上記本実施形態によれば、CMP工程における第1研磨(メタルCMP)と第2研磨(バリアメタルCMP)とをCMP装置300内の同一チャンバー(同一CMPユニット、例えば第1CMPユニット310)において連続的に行う。これにより、CMP装置300内のユニット間の搬送回数を減らすことができ、CMP時間を短縮することができる。
【0082】
また、1つの半導体ウェハ(半導体基板10)に対するCMP工程を一方のCMPユニット(例えば、第1CMPユニット310)で行うことができる。このため、同時に他方のCMPユニット(例えば、第2CMPユニット320)を用いて、別の半導体ウェハに対してCMP工程を行うことができる。したがって、生産性の向上を図ることができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、第1研磨後に、研磨パッド41および被研磨膜の表面を有機酸によって洗浄することで、第1研磨のスラリー成分を除去している。これにより、第2研磨において第1研磨のスラリー成分が残留することによる研磨特性の劣化の抑制を図ることができる。言い換えると、第1研磨および第2研磨を同一チャンバーにて連続的に行うことによって生じる研磨特性の劣化を抑制することができる。以下に、本実施形態に係るCMP方法による研磨特性について説明する。なお、以下に示す検証結果等は、下記条件により実施されたものである。
【0084】
CMP装置:荏原製作所製 FREX300X
研磨パッド:ニッタハース製 発泡性パッド(IC1000)
第1研磨スラリー:Cabot製 シリカスラリー(W7573B)
第2研磨スラリー:Cabot性 シリカスラリー(W7203)
有機酸:和光純薬製 有機酸水溶液(CLEAN−100)
研磨パッド冷却方法:高圧空気噴射
図11は、本実施形態に係るCMP方法による配線の平坦性(金属膜16のディッシング21およびエロージョン22の平坦性)とその比較例とを示すグラフである。図12は、本実施形態に係るCMP方法による欠陥数(絶縁膜14の欠陥23の数)とその比較例とを示すグラフである。より具体的には、図11および図12は、第1研磨と第2研磨とを同一チャンバーにて連続的に行い、かつ第1研磨後に有機酸による洗浄を行った例(本実施形態)と、第1研磨と第2研磨とを別のチャンバーにて非連続で行った例(比較例)とを示している。
【0085】
図11に示すように、連続処理(本実施形態)の配線の平坦性と非連続処理(比較例)の配線の平坦性とは、ほぼ同等である。これは、第1研磨後の有機酸洗浄によりFeイオンを除去することで、第2研磨における金属膜16の研磨レートが小さくなったためであると考えられる。すなわち、第2研磨において、金属膜16と、バリアメタル15および絶縁膜14との研磨レートを同程度にすることで、金属膜16のディッシング21およびエロージョン22を小さくすることができる。このように、本実施形態では、連続的にCMPを行っても平坦性の劣化を抑制することができ、非連続にCMPを行う場合に比べても同等の平坦性を有することができる。
【0086】
一方、図12に示すように、連続処理(本実施形態)の欠陥数は、非連続処理(比較例)の欠陥数に比べて減少している。欠陥23は、第1研磨後および第2研磨後のそれぞれにおいて生じる。欠陥23が生じた後に乾燥工程(ドライアウト)が行われると、その後、その欠陥23の除去は困難になる。
【0087】
非連続処理のCMP方法において、第1研磨後および第2研磨後にそれぞれ乾燥工程(ドライアウト)が行われる。すなわち、第1研磨において生じた欠陥23と第2研磨において生じた欠陥23とは、その後除去することが困難になるため、ともに残留することになる。
【0088】
一方、連続処理のCMP方法において、第1研磨後、ウェット状態で有機酸および純水研磨、および純水研磨が行われた後、ドライアウトが行われずに第2研磨が行われる。すなわち、第1研磨において生じた欠陥23に対して、ウェット状態で第2研磨が行われる。このため、第2研磨によって、第1研磨において生じた欠陥23が除去され得る。すなわち、連続処理における欠陥23は、主に第2研磨によって生じたもののみである。このため、連続処理の欠陥数は、非連続処理の欠陥数に比べて減少したと考えられる。
【0089】
図13は、本実施形態に係るCMP方法における第1研磨において用いられるスラリーの研磨レートを示すグラフである。より具体的には、図13は、第1研磨において用いられるスラリー(W7523B)に有機酸を加えた場合(本実施形態)のWおよびSiO2の研磨レートと、純水を加えた場合(比較例)のWおよびSiO2の研磨レートとを示している。
【0090】
図13に示すように、第1研磨において用いられるスラリー(W7523B)に純水を加えて研磨を行う場合、Wの研磨レートはSiO2の研磨レートよりも高い。これは、スラリー中に存在する触媒成分(例えば、Fe)がWの研磨レートを大きくしているためである。
【0091】
これに対し、第1研磨において用いられるスラリー(W7523B)に有機酸を加えて研磨を行う場合、Wの研磨レートは小さくなる。これは、スラリー中に存在する触媒成分と有機酸が反応し、Wの酸化力を減少させたものと考えられる。すなわち、有機酸を加えることにより、Wの研磨レートを大きくする触媒の効果を抑制できる。
【0092】
また、第1研磨において用いられるスラリー(W7523B)に有機酸を加えて研磨を行う場合、SiO2の研磨レートは大きくなる。また、図示はしないが、バリアメタルの研磨レートは変わらない。
【0093】
ところで、図14に示すように、研磨パッド41の弾性率は温度に依存する。より具体的には、研磨パッド41の弾性率は、その温度が上昇すると低下する。研磨パッド41の弾性率が変移することで、研磨特性も変移する。すなわち、研磨パッド41の表面温度が変動することで、研磨特性も変移する。その結果、研磨特性が劣化する。
【0094】
これに対し、本実施形態によれば、冷却ノズル45や研磨パッド41と被研磨膜との研磨荷重を調整することにより、第1研磨工程から第2研磨工程まで研磨パッド41の表面の温度を一定に制御しながら行われる。これは、第1研磨工程から第2研磨工程までを同一テーブルにて連続的に行うことで可能になる。すなわち、第1研磨工程と第2研磨工程とを連続処理することにより、その間に研磨パッド41表面のドレッサー工程を行わない。このため、第1研磨工程から第2研磨工程まで研磨パッド41表面のコンディション(温度)を変えずに処理することができる。したがって、第1研磨工程から第2研磨工程まで研磨特性を安定させたまま処理を行うことができる。
【0095】
その他、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で、種々に変形することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0096】
10…半導体基板、14…絶縁膜、15…バリアメタル、16…金属膜、41…研磨パッド、A…配線溝。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置における多層配線や素子分離の形成工程において、表面を平坦化する工程として、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法が多用されている。特に、多層配線における平坦化プロセスにおいては、配線となる金属膜のCMP(メタルCMP)と、配線の表面に形成される下地膜のCMP(バリアメタルCMP)とがある。これら2つのCMP工程は、通常、非連続に処理される。すなわち、CMP装置内において、これらのCMPは、別チャンバー内(別研磨パッド上)で行われる。
【0003】
メタルCMPとバリアメタルCMPとを非連続で行う理由としては、メタルCMPとバリアメタルCMPとで使用されるスラリー構成が異なること、また連続処理による研磨時間増加によって研磨特性の安定性が低下すること等が挙げられる。
【0004】
例えば、金属膜としてWが用いられるメタルCMPにおいて、Wの研磨速度が配線間絶縁膜であるSiO2の研磨速度より大きくなるようなスラリーが用いられる。このとき、スラリーによるWとSiO2との研磨レート比は、W/SiO2が10以上であることが望ましい。このため、Wの研磨レートの促進のために、スラリーに酸化剤が添加されることが一般的である。また、酸化剤の酸化力を高めるために、触媒としてFeイオンが含有される場合もある。
【0005】
一方、バリアメタルCMPにおいて、WおよびSiO2に対して実用的な研磨速度を得るため、またこれらの研磨レートのバランスをとるために、スラリーのpHはアルカリ性であることが多い。また、Wの研磨レートを抑制するために、スラリーに酸化力を抑えた酸化剤、もしくは酸化抑制剤が添加されることが一般的である。
【0006】
これに対し、生産性の観点からメタルCMPおよびバリアメタルCMPを連続的に処理する(同一チャンバー内で処理する)ことが提案されている。しかし、メタルCMPおよびバリアメタルCMPを連続処理する際に各CMPにおけるスラリーの液性が逆の場合、有効成分を互いに相殺しあうことが多い。また、砥粒同士の凝集も発生し、所望の研磨特性を得ることができない。仮に、メタルCMPおよびバリアメタルCMPで液性が同じ、すなわち同極性かつ類似成分のスラリーを用いた場合であっても、メタルCMPにおけるスラリーに含有される高酸化力を有する酸化剤や触媒が、バリアメタルCMP中もパッド表面に残留し、研磨レートを変動させる。
【0007】
また、研磨条件、パッドコンディションによってスラリーの成分残留量も変動するため、研磨特性が安定しない。さらに、2種類のCMP工程を連続して行うため、連続する研磨時間の増加にともないパッド弾性率も変化する。このため、後工程であるバリアメタルCMPの研磨特性の変動も大きくなる。
【0008】
このように、2つのCMP工程を連続的に処理した場合、非連続で処理した場合に比べて、研磨特性が劣化する。CMP工程の連続処理に向けた対策として、メタルCMPのスラリーとバリアメタルCMPのスラリーとの成分をより類似性の高いものにして処理する方法が有力である。しかし、2つのCMP工程におけるスラリーの類似性を高めることには限界があり、連続処理における研磨特性を非連続処理における研磨特性と同程度にすることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3917593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
CMP工程において、生産性の向上を図りつつ、CMP特性の劣化の抑制を図る半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態による半導体装置の製造方法は、半導体基板の表面上に、絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜内に、溝を形成する工程と、前記絶縁膜上に、下地膜を形成する工程と、前記下地膜上に、前記溝が埋まるように金属膜を形成する工程と、前記半導体基板の表面を回転する研磨パッドに当接させ、前記研磨パッド上に金属イオンを含む第1CMPスラリーを供給することで、前記溝外の前記金属膜を除去する第1研磨を行う工程と、前記半導体基板の表面を前記研磨パッドに当接させ、前記研磨パッド上に有機酸および純水を供給することで、前記研磨パッドおよび前記半導体基板の表面を洗浄する工程と、前記半導体基板の表面を前記研磨パッドに当接させ、前記研磨パッド上に前記第1CMPスラリーと異なる第2CMPスラリーを供給することで、前記溝外の前記下地膜を除去する第2研磨を行う工程と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る半導体装置の配線構造の製造工程を示す断面図。
【図2】CMP後の配線構造を示す断面図。
【図3】本実施形態に係るCMP装置を示す平面図。
【図4】図3における第1研磨ユニットの構成を示す図。
【図5】図3における第1ロール洗浄ユニットの構成を示す図。
【図6】図3における第1ペンシル洗浄ユニットの構成を示す図。
【図7】本実施形態に係るCMP方法の比較例を示すフローチャート。
【図8】本実施形態に係るCMP方法を示すフローチャート。
【図9】本実施形態に係るCMP方法の薬液処理を模式的に示す図。
【図10】本実施形態に係るCMP方法の薬液処理の化学反応を示す図。
【図11】本実施形態に係るCMP方法による配線の平坦性とその比較例とを示すグラフ。
【図12】本実施形態に係るCMP方法による欠陥数とその比較例とを示すグラフ。
【図13】本実施形態に係るCMP方法における第1研磨において用いられるスラリーの研磨レートを示すグラフ。
【図14】本実施形態に係るCMP装置における研磨パッドの弾性率の温度依存性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態を以下に図面を参照して説明する。なお、図面において、同一部分には同一の参照符号を付す。また、重複する説明は、必要に応じて行う。
【0014】
<実施形態>
図1乃至図14を用いて、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、配線構造の製造工程におけるCMP工程に関するものであり、メタルCMPとバリアメタル(BM)CMPとを同一チャンバーで連続的に行う例である。これにより、生産性の向上を図ることができる。また、このとき、メタルCMPの後に、有機酸によって研磨パッドおよび半導体基板の表面を洗浄する。これにより、メタルCMPで用いたスラリーの成分で、かつその後のバリアメタルCMPの研磨レートを変動させる成分を除去することができ、連続処理による研磨特性の劣化を抑制することができる。以下に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について詳説する。
【0015】
[配線構造の製造方法]
図1および図2を用いて、本実施形態に係る半導体装置の配線構造の製造工程について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る半導体装置の配線構造の製造工程を示す断面図である。図2は、CMP後の配線構造を示す断面図である。
【0017】
まず、図1(a)に示すように、半導体素子(図示せず)が形成された半導体基板10上に、絶縁膜11が形成される。絶縁膜11は、例えばSiO2で構成される。この絶縁膜11にコンタクトホールが形成され、このコンタクトホール内にバリアメタル12を介してコンタクトプラグ13が形成される。バリアメタル12は例えばTiもしくはTaまたはこれらの窒化物で構成され、コンタクトプラグ13は例えばWで構成される。これにより、絶縁膜11、バリアメタル12およびコンタクトプラグ13を含むコンタクト層が形成される。
【0018】
次に、コンタクト層上に、絶縁膜14が形成される。絶縁膜14は、例えばSiO2で構成される。この絶縁膜14内に、凹部としての配線溝Aが形成される。配線溝Aは、例えば、被覆率が50%の配線となるように形成される。
【0019】
次に、全面に、常法(例えば、CVD法)により配線の下地膜となるバリアメタル15が形成される。すなわち、配線溝A内および配線溝A外の絶縁膜14上に、バリアメタル15が形成される。バリアメタル15は、例えば、TiもしくはTaまたはこれらの窒化物で構成される。
【0020】
次に、全面に、常法(例えば、CVD法)により配線溝A内が埋まるように配線となる金属膜16が形成される。すなわち、配線溝A内および配線溝A外のバリアメタル15上に、金属膜16が形成される。金属膜16は、例えばWまたはCuで構成される。
【0021】
次に、全面に、CMPが行われる。このCMP工程において、第1研磨(メタルCMP)および第2研磨(バリアメタルCMP)が行われる。なお、第2研磨はタッチアップとも称される。
【0022】
より具体的には、図1(b)に示すように、第1研磨において、配線溝A外に形成された余分な金属膜16が除去される。これにより、配線溝A内に、金属膜16が埋め込まれる。また、配線溝A外において、バリアメタル15の表面が露出される。すなわち、第1研磨では、主に金属膜16(例えば、WまたはCu)が被研磨膜となる。
【0023】
その後、図1(c)に示すように、第2研磨において、配線溝A外に形成されたバリアメタル15が除去される。これにより、配線溝A外において、絶縁膜14の表面が露出される。このとき、金属膜16やバリアメタル15を完全に除去するために、絶縁膜14の表面の一部も除去される。すなわち、第2研磨では、主に金属膜16(例えば、WまたはCu)、バリアメタル15(例えば、TiもしくはTaまたはこれらの窒化物)、および絶縁膜14(例えば、SiO2)が被研磨膜となる。これにより、絶縁膜14、バリアメタル15および金属膜16を含む配線層が形成される。本実施形態に係るCMPの詳細については、後述する。
【0024】
図2に示すように、CMP工程後において、金属膜16に、ディッシング21、エロージョン22が生じる。また、絶縁膜14に、欠陥(defect)23が生じる。これらは、配線の特性を劣化させる要因となる。
【0025】
通常、第1研磨工程および第2研磨工程を同一のターンテーブルにて連続に行う場合、別のターンテーブルにて非連続に行う場合に比べて、研磨特性が劣化する。このため、連続処理の場合、ディッシング21、エロージョン22および欠陥23が増大する。
【0026】
これに対し、本実施形態は、第1研磨および第2研磨を連続処理しながらも、研磨特性の劣化を抑制するCMP方法の例である。
【0027】
[CMP装置]
図3乃至図6を用いて、本実施形態に係るCMP装置300について説明する。なお、ここでは、CMP装置300として荏原製作所製のFREX300Xを用いる例を示している。
【0028】
図3は、本実施形態に係るCMP装置300を示す平面図である。
【0029】
図3に示すように、CMP装置300は、第1CMPユニット310および第2CMPユニット320を備えている。
【0030】
第1CMPユニット310は、第1研磨ユニット311、第1ロール洗浄ユニット312、および第1ペンシル洗浄ユニット313を有している。半導体基板10(被研磨膜)は、図示せぬ輸送ユニットによって、第1研磨ユニット311、第1ロール洗浄ユニット312、および第1ペンシル洗浄ユニット313の順に輸送される。すなわち、半導体基板10は、第1研磨ユニット311において研磨された後、第1ロール洗浄ユニット312においてロール洗浄され、第1ペンシル洗浄ユニット313においてペンシル洗浄される。以下に、各ユニットについて詳説する。
【0031】
図4は、図3における第1研磨ユニット311の構成を示す図である。
【0032】
図4に示すように、第1研磨ユニット311には、表面に研磨パッド41が貼付されたターンテーブル40が設置されている。
【0033】
被研磨膜の研磨において、ターンテーブル40上に貼付された研磨パッド41に、半導体基板10(被研磨膜)が当接される。ターンテーブル40は1〜200rpmで回転可能であり、トップリング42は1〜200rpmで回転可能である。これらターンテーブル40およびトップリング42はそれぞれ、例えば反時計回りに回転する。また、研磨中、ターンテーブル40およびトップリング42は、一定方向に回転する。これらの研磨荷重は、通常50〜500hPa程度であるが、これに限らず適宜調整可能である。
【0034】
また、研磨パッド41上には、スラリー供給ノズル43が配置されている。このスラリー供給ノズル43からは、スラリーとして所定の薬液を50〜500cc/minの流量で供給することができる。
【0035】
また、研磨パッド41上には、圧縮空気、あるいは窒素ガスなどを研磨パッド41に向けて噴出する冷却ノズル45が配置されている。この冷却ノズル45は、0〜1000l/min程度の範囲で圧縮空気を研磨パッド41に噴出し、研磨中の研磨パッド41の表面の温度を制御する。
【0036】
さらに、図4において、研磨パッド41上には、ドレッサー46も併せて示してある。このドレッサー46は、被研磨膜の研磨終了後、1〜200rpmで回転させつつ、50〜500hPaの荷重で研磨パッド41に当接される。これにより、ドレッサー46は、研磨パッド41の表面のコンディショニングを行なう。
【0037】
図5は、図3における第1ロール洗浄ユニット312の構成を示す図である。
【0038】
図5に示すように、第1ロール洗浄ユニット312には、ロール洗浄を行うロールブラシ50が設置されている。
【0039】
被研磨膜のロール洗浄において、ロールブラシ50は、半導体基板10の表面(被研磨膜側)および裏面に各1つずつ設置される。このロールブラシ50は、半導体基板10の直径分の長さを有し、半導体基板10の直径上に設置される。また、ロールブラシ50は、円柱状であり、円柱の中心軸を回転軸として回転することで半導体基板10の両面を洗浄する。このとき、半導体基板10は、図示せぬ保持部に保持され、一定方向に回転している。ロール洗浄において、半導体基板10は、ロールブラシ50によって物理的に洗浄されるとともに、薬液が供給されることによって化学的にも洗浄される。ロール洗浄は、次工程のペンシル洗浄よりも粗い洗浄である。
【0040】
図6は、図3における第1ペンシル洗浄ユニット313の構成を示す図である。
【0041】
図6に示すように、第1ペンシル洗浄ユニット313には、ペンシル洗浄を行うペンシルブラシ60が設置されている。
【0042】
被研磨膜のペンシル洗浄において、ペンシルブラシ60は、半導体基板10(被研磨膜)の表面に設置される。このペンシルブラシ60は、半導体基板10上において左右に駆動しながら半導体基板10の表面を洗浄する。このとき、半導体基板10は、図示せぬ保持部に保持され、一定方向に回転している。ペンシル洗浄において、半導体基板10は、ペンシルブラシ60によって物理的に洗浄されるとともに、薬液が供給されることによって化学的にも洗浄される。ペンシル洗浄は、前工程のロール洗浄よりも細かい洗浄である。
【0043】
また、半導体基板10は、ペンシル洗浄後、第1ペンシル洗浄ユニット313においてドライアウト(乾燥)される。
【0044】
第2CMPユニット320は、第2研磨ユニット321、第2ロール洗浄ユニット322、および第2ペンシル洗浄ユニット323を有している。半導体基板10(被研磨膜)は、第1CMPユニット310において処理が終了した後、図示せぬ輸送ユニットによって、第2研磨ユニット321、第2ロール洗浄ユニット322、および第2ペンシル洗浄ユニット323の順に輸送される。
【0045】
第2CMPユニット320における第2研磨ユニット321、第2ロール洗浄ユニット322、および第2ペンシル洗浄ユニット323はそれぞれ、第1CMPユニット310における第1研磨ユニット311、第1ロール洗浄ユニット312、および第1ペンシル洗浄ユニット313と同様の構成を有している。
【0046】
しかし、図3に示すように、第2研磨ユニット321には、第1研磨ユニット311のターンテーブル40とは異なるターンテーブル40’が設置されている。このため、第2CMPユニット320では、被研磨膜に対して第1CMPユニット310と異なるCMP工程が行われ得る。また、これに限らず、第1CMPユニット310と第2CMPユニット320とで、別々の半導体基板10に対して同時にCMP工程を行うことも可能である。
【0047】
[CMP方法]
図7乃至図10を用いて、本実施形態に係るCMP方法およびその比較例について説明する。なお、ここでは、配線構造における金属膜16としてWが形成された場合におけるCMP方法について説明するが、金属膜16としてはこれに限らない。
【0048】
図7は、本実施形態に係るCMP方法の比較例を示すフローチャートである。
【0049】
図7に示すように、比較例によれば、まず、ステップS11において、被研磨膜に対して第1研磨が行われる。第1研磨は、半導体基板10が第1研磨ユニット311に輸送された後、その第1研磨ユニット311において行われる。このとき、被研磨膜として主に図1に示す金属膜16(W)が研磨される。このため、研磨パッド41に供給されるスラリーとしては、例えばCabot製のシリカスラリー(W7523B)が用いられる。この第1研磨におけるスラリー(第1CMPスラリー)は、酸化剤、添加剤、砥粒(シリカ)、および触媒としてのFeを含み、Wに対する研磨レートが大きいスラリーである。ここで、酸化剤としては、過硫酸アンモニウムまたは過酸化水素水が挙げられる。
【0050】
次に、ステップS12において、スラリーの供給がとめられ、純水を供給することで研磨パッド41および被研磨膜(半導体基板10)に対して純水研磨(純水洗浄)が行われる。純水研磨は、第1研磨と同様、第1研磨ユニット311において行われる。この純水研磨は、被研磨膜を研磨することなく、研磨パッド41や被研磨膜の表面の薬液等を除去する。
【0051】
次に、ステップS13において、被研磨膜(半導体基板10)に対してロール洗浄が行われる。第1研磨後のロール洗浄は、半導体基板10が第1研磨ユニット311から第1ロール洗浄ユニット312に輸送された後、その第1ロール洗浄ユニット312において行われる。このとき、半導体基板10は、ロールブラシ50によって物理的に洗浄されるとともに、薬液が供給されることによって化学的にも洗浄される。
【0052】
次に、ステップS14において、被研磨膜(半導体基板10)に対してペンシル洗浄が行われる。第1研磨後のペンシル洗浄は、半導体基板10が第1ロール洗浄ユニット312から第1ペンシル洗浄ユニット313に輸送された後、その第1ペンシル洗浄ユニット313において行われる。このとき、半導体基板10は、ペンシルブラシ60によって物理的に洗浄されるとともに、薬液が供給されることによって化学的にも洗浄される。ロール洗浄およびペンシル洗浄によって、第1研磨による半導体基板10の表面異物(スラリーの薬液等)が除去される。
【0053】
その後、半導体基板10に対してドライアウトが行われ、半導体基板10の表面の水分が除去される。ドライアウトは、ペンシル洗浄と同様、第1ペンシル洗浄ユニット313において行われる。
【0054】
このように、被研磨膜を金属膜16とした第1研磨工程、およびその後の洗浄工程(第1研磨後のロール洗浄およびペンシル洗浄)は、第1CMPユニット310において行われる。
【0055】
次に、ステップS15において、被研磨膜に対して第2研磨(タッチアップ)が行われる。第2研磨は、半導体基板10が第2研磨ユニット321に輸送された後、その第2研磨ユニット321において行われる。このとき、被研磨膜として主に図1に示す金属膜16(W)、バリアメタル15、および絶縁膜14(SiO2)が研磨される。このため、研磨パッド41に供給されるスラリーとしては、例えばCabot製のシリカスラリー(W7203)が用いられる。この第2研磨におけるスラリー(第2CMPスラリー)は、酸化剤、および砥粒(シリカ)を含み、金属膜16(W)、バリアメタル15、および絶縁膜14(SiO2)に対する研磨レートが同程度のスラリーである。なお、金属膜16(W)に対する研磨レートは、バリアメタル15、および絶縁膜14(SiO2)に対する研磨レートより低いほうが望ましい。ここで、酸化剤としては、過硫酸アンモニウムまたは過酸化水素水が挙げられる。
【0056】
次に、ステップS16において、スラリーの供給がとめられ、純水を供給することで研磨パッド41および被研磨膜に対して純水研磨が行われる。純水研磨は、第2研磨と同様、第2研磨ユニット321において行われる。この純水研磨は、被研磨膜を研磨することなく、研磨パッド41や被研磨膜の表面の薬液等を除去する。
【0057】
次に、ステップS17において、被研磨膜(半導体基板10)に対してロール洗浄が行われる。第2研磨後のロール洗浄は、半導体基板10が第2研磨ユニット321から第2ロール洗浄ユニット322に輸送された後、その第2ロール洗浄ユニット322において行われる。このとき、半導体基板10は、ロールブラシ50によって物理的に洗浄されるとともに、薬液が供給されることによって化学的にも洗浄される。
【0058】
次に、ステップS18において、被研磨膜(半導体基板10)に対してペンシル洗浄が行われる。第2研磨後のペンシル洗浄は、半導体基板10が第2ロール洗浄ユニット322から第2ペンシル洗浄ユニット323に輸送された後、その第2ペンシル洗浄ユニット323において行われる。このとき、半導体基板10は、ペンシルブラシ60によって物理的に洗浄されるとともに、薬液が供給されることによって化学的にも洗浄される。ロール洗浄およびペンシル洗浄によって、第2研磨による半導体基板10の表面異物(スラリーの薬液等)が除去される。
【0059】
その後、半導体基板10に対してドライアウトが行われ、半導体基板10の表面の水分が除去される。ドライアウトは、ペンシル洗浄と同様、第2ペンシル洗浄ユニット323において行われる。
【0060】
このように、被研磨膜を金属膜16、バリアメタル15、および絶縁膜14とした第2研磨工程、およびその後の洗浄工程(第2研磨後のロール洗浄およびペンシル洗浄)は、第2CMPユニット320において行われる。
【0061】
上述したように、比較例によれば、第1研磨後に2段階の洗浄(ロール洗浄およびペンシル洗浄)を行うことで被研磨膜表面のスラリー成分を除去した後、第1研磨とは異なる研磨ユニット(ターンテーブル)にて第2研磨を行う。すなわち、第1研磨と第2研磨とを非連続に行う。しかし、このような非連続処理では、2段階の洗浄やユニット間の半導体基板10の搬送によって、CMP時間が増大してしまう。また、1つの半導体基板10に対するCMPのために、2つのCMPユニット(第1CMPユニット310および第2CMPユニット320)を用いる必要があるため、生産性に問題が生じてしまう。
【0062】
上記非連続処理に対し、第1研磨と第2研磨とを同一の研磨ユニットにて連続処理で行う場合、研磨特性が劣化してしまう。これは、連続処理の場合、第1研磨後にロール洗浄およびペンシル洗浄を行わず、洗浄が不十分であるため、第2研磨において第1研磨のスラリー成分が研磨パッド40上や被研磨膜の表面に残留することが原因であると考えられる。特に、第1研磨におけるスラリーに含まれるFeイオンは、金属膜16であるWの研磨レートを大きくする。このため、第2研磨においても金属膜16の研磨レートが大きくなり、結果として研磨特性の劣化が生じる。
【0063】
これに対し、本実施形態は、第1研磨と第2研磨とを連続処理で行いながら、研磨特性の劣化を抑制するCMP方法である。
【0064】
図8は、本実施形態に係るCMP方法を示すフローチャートである。
【0065】
図8に示すように、本実施形態によれば、まず、ステップS21において、被研磨膜に対して第1研磨が行われる。第1研磨は、半導体基板10が第1研磨ユニット311に輸送された後、その第1研磨ユニット311において行われる。このとき、被研磨膜として主に図1に示す金属膜16(W)が研磨される。このため、研磨パッド41に供給されるスラリーとしては、例えばCabot製のシリカスラリー(W7523B)が用いられる。この第1研磨におけるスラリー(第1CMPスラリー)は、酸化剤、添加剤、砥粒(シリカ)、および触媒としてのFeを含み、Wに対する研磨レートが大きいスラリーである。ここで、酸化剤としては、過硫酸アンモニウムまたは過酸化水素水が挙げられる。
【0066】
また、第1研磨は、冷却ノズル45や研磨パッド41と被研磨膜との研磨荷重を調整することにより、研磨パッド41の表面の温度を制御しながら行われる。より具体的には、第1研磨中、研磨パッド41の表面の温度は一定になるように制御され、その温度は30〜65℃程度である。これにより、研磨パッド41の特性(例えば、弾性率)を変移させることなく研磨することができる。また、被研磨膜の研磨レートが高くなるような所望の温度で行われてもよい。
【0067】
次に、ステップS22において、スラリーの供給がとめられ、有機酸および純水(有機酸溶液)を供給することで研磨パッド41および被研磨膜に対して有機酸および純水研磨(有機酸および純水洗浄)が行われる。有機酸および純水研磨は、第1研磨と同様、第1研磨ユニット311において行われる。これにより、第1研磨に用いられたスラリー成分を研磨パッド41および被研磨膜の表面から除去することができる。また、このとき、被研磨膜は研磨されない。この有機酸および純水研磨の詳細については、後述する。
【0068】
次に、ステップS23において、有機酸の供給がとめられ、純水のみを供給することで研磨パッド41および被研磨膜に対して純水研磨が行われる。純水研磨は、第1研磨と同様、第1研磨ユニット311において行われる。この純水研磨は、被研磨膜を研磨することなく、研磨パッド41や被研磨膜の表面の薬液(有機酸等)を除去する。これにより、次工程である第2研磨において、有機酸が残留することによって研磨レートに影響を与えることを抑制できる。
【0069】
次に、ステップS24において、被研磨膜に対して第2研磨(タッチアップ)が行われる。第2研磨は、第1研磨と同様、第1研磨ユニット311において行われる。このとき、被研磨膜として主に図1に示す金属膜16(W)、バリアメタル15、および絶縁膜14(SiO2)が研磨される。このため、研磨パッド41に供給されるスラリーとしては、例えばCabot製のシリカスラリー(W7203)が用いられる。この第2研磨におけるスラリー(第2CMPスラリー)は、酸化剤、および砥粒(シリカ)を含み、金属膜16(W)、バリアメタル15、および絶縁膜14(SiO2)に対する研磨レートが同程度のスラリーである。なお、金属膜16(W)に対する研磨レートは、バリアメタル15、および絶縁膜14(SiO2)に対する研磨レートより低いほうが望ましい。また、第2CMPスラリーは、第1CMPスラリーに比べて、バリアメタル15、および絶縁膜14に対して大きい研磨レートを有する。ここで、酸化剤としては、過硫酸アンモニウムまたは過酸化水素水が挙げられる。
【0070】
また、第1研磨と同様、有機酸および純水研磨、純水研磨、および第2研磨は、冷却ノズル45や研磨パッド41と被研磨膜との研磨荷重を調整することにより、研磨パッド41の表面の温度を制御しながら行われる。すなわち、第1研磨工程から第2研磨工程まで、研磨パッド41の表面の温度を一定にするように被研磨膜の研磨が行われる。これにより、研磨パッド41の特性を変移させることなく安定させてこれらの工程が行われる。
【0071】
次に、ステップS25において、スラリーの供給がとめられ、純水を供給することで研磨パッド41および被研磨膜に対して純水研磨が行われる。純水研磨は、第1研磨と同様、第1研磨ユニット311において行われる。この純水研磨は、被研磨膜を研磨することなく、研磨パッド41や被研磨膜の表面の薬液等を除去する。
【0072】
次に、ステップS26において、被研磨膜(半導体基板10)に対してロール洗浄が行われる。ロール洗浄は、半導体基板10が第1研磨ユニット311から第1ロール洗浄ユニット312に輸送された後、その第1ロール洗浄ユニット312において行われる。このとき、半導体基板10は、ロールブラシ50によって物理的に洗浄されるとともに、薬液が供給されることによって化学的にも洗浄される。
【0073】
次に、ステップS27において、被研磨膜(半導体基板10)に対してペンシル洗浄が行われる。ペンシル洗浄は、半導体基板10が第1ロール洗浄ユニット312から第1ペンシル洗浄ユニット313に輸送された後、その第1ペンシル洗浄ユニット313において行われる。このとき、半導体基板10は、ペンシルブラシ60によって物理的に洗浄されるとともに、薬液が供給されることによって化学的にも洗浄される。ロール洗浄およびペンシル洗浄によって、第2研磨による半導体基板10の表面異物(スラリーの薬液等)が除去される。
【0074】
その後、半導体基板10に対してドライアウトが行われ、半導体基板10の表面の水分が除去される。ドライアウトは、ペンシル洗浄と同様、第1ペンシル洗浄ユニット313において行われる。
【0075】
このように、本実施形態におけるCMPでは、第1研磨および第2研磨が第1CMPユニット310において連続的に行われる。この際、第1研磨後に、研磨パッド41および被研磨膜に対して有機酸による洗浄が行われる。有機酸による洗浄の原理について、以下に詳説する。
【0076】
図9は、本実施形態に係るCMP方法の薬液処理を模式的に示す図である。図10は、本実施形態に係るCMP方法の薬液処理の化学反応を示す図である。なお、ここでは、被研磨膜となる金属膜16としてWが用いられる場合について説明する。
【0077】
図9に示すように、第1研磨(ステップS21)において、スラリー供給ノズル43によって研磨パッド41上に金属膜16用スラリー(第1CMP用スラリー)が供給される。金属膜16用スラリーには、酸化剤、添加剤、砥粒(シリカ)、および触媒としてのFeが含まれている。第1研磨において被研磨膜は金属膜16であり、スラリー成分のうち触媒であるFeが金属膜16の研磨レートを大きくする。第1研磨の終了後、研磨パッド41や被研磨膜の表面に上記スラリー成分が残留する。
【0078】
次に、有機酸および純水研磨(ステップS22)において、スラリー供給ノズル43によって有機酸溶液(有機酸および純水)が研磨パッド41上に供給される。有機酸溶液には、有機酸として、例えばクエン酸が含まれている。クエン酸は、2つ以上の配位子を含んでいる。すなわち、図10に示すように、研磨パッド41上にクエン酸を供給することにより、研磨パッド41や被研磨膜の表面のFeイオンとクエン酸とが反応して錯体化合物(キレート化合物)を形成する。このキレート化合物は、水溶性であるため、純水に溶解されて除去される。すなわち、残留しているFeイオンは、クエン酸および純水が供給されることによって、クエン酸とキレート化合物を形成し、純水に溶解されて除去される。また、残留している添加剤や砥粒は、純水等によって除去される。
【0079】
その後、第2研磨(ステップS24)において、スラリー供給ノズル43によって研磨パッド41上にバリアメタル15用スラリー(第2CMP用スラリー)が供給される。バリアメタル15用スラリーには、酸化剤、および砥粒(シリカ)が含まれている。第2研磨において被研磨膜は金属膜16、バリアメタル15、および絶縁膜14であり、バリアメタル15用スラリーは金属膜16、バリアメタル15、および絶縁膜14に対する研磨レートが同程度のスラリーである。このとき、研磨パッド41や被研磨膜の表面には、Feが残留していないため、第2研磨において研磨レートの変移を抑制することができる。
【0080】
なお、本実施形態において、有機酸としてクエン酸を例に説明したがこれに限らない。有機酸としては、第1CMPスラリーに含まれる触媒である金属イオンと反応してキレート化合物を形成するものであればよく、例えばリンゴ酸でもよい。また、第1CMPスラリーの触媒としてはFeに限らず、Cuであってもよい。また、被研磨膜である金属膜16としてはWに限らず、Cuであっても本実施形態は適用可能である。
【0081】
[効果]
上記本実施形態によれば、CMP工程における第1研磨(メタルCMP)と第2研磨(バリアメタルCMP)とをCMP装置300内の同一チャンバー(同一CMPユニット、例えば第1CMPユニット310)において連続的に行う。これにより、CMP装置300内のユニット間の搬送回数を減らすことができ、CMP時間を短縮することができる。
【0082】
また、1つの半導体ウェハ(半導体基板10)に対するCMP工程を一方のCMPユニット(例えば、第1CMPユニット310)で行うことができる。このため、同時に他方のCMPユニット(例えば、第2CMPユニット320)を用いて、別の半導体ウェハに対してCMP工程を行うことができる。したがって、生産性の向上を図ることができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、第1研磨後に、研磨パッド41および被研磨膜の表面を有機酸によって洗浄することで、第1研磨のスラリー成分を除去している。これにより、第2研磨において第1研磨のスラリー成分が残留することによる研磨特性の劣化の抑制を図ることができる。言い換えると、第1研磨および第2研磨を同一チャンバーにて連続的に行うことによって生じる研磨特性の劣化を抑制することができる。以下に、本実施形態に係るCMP方法による研磨特性について説明する。なお、以下に示す検証結果等は、下記条件により実施されたものである。
【0084】
CMP装置:荏原製作所製 FREX300X
研磨パッド:ニッタハース製 発泡性パッド(IC1000)
第1研磨スラリー:Cabot製 シリカスラリー(W7573B)
第2研磨スラリー:Cabot性 シリカスラリー(W7203)
有機酸:和光純薬製 有機酸水溶液(CLEAN−100)
研磨パッド冷却方法:高圧空気噴射
図11は、本実施形態に係るCMP方法による配線の平坦性(金属膜16のディッシング21およびエロージョン22の平坦性)とその比較例とを示すグラフである。図12は、本実施形態に係るCMP方法による欠陥数(絶縁膜14の欠陥23の数)とその比較例とを示すグラフである。より具体的には、図11および図12は、第1研磨と第2研磨とを同一チャンバーにて連続的に行い、かつ第1研磨後に有機酸による洗浄を行った例(本実施形態)と、第1研磨と第2研磨とを別のチャンバーにて非連続で行った例(比較例)とを示している。
【0085】
図11に示すように、連続処理(本実施形態)の配線の平坦性と非連続処理(比較例)の配線の平坦性とは、ほぼ同等である。これは、第1研磨後の有機酸洗浄によりFeイオンを除去することで、第2研磨における金属膜16の研磨レートが小さくなったためであると考えられる。すなわち、第2研磨において、金属膜16と、バリアメタル15および絶縁膜14との研磨レートを同程度にすることで、金属膜16のディッシング21およびエロージョン22を小さくすることができる。このように、本実施形態では、連続的にCMPを行っても平坦性の劣化を抑制することができ、非連続にCMPを行う場合に比べても同等の平坦性を有することができる。
【0086】
一方、図12に示すように、連続処理(本実施形態)の欠陥数は、非連続処理(比較例)の欠陥数に比べて減少している。欠陥23は、第1研磨後および第2研磨後のそれぞれにおいて生じる。欠陥23が生じた後に乾燥工程(ドライアウト)が行われると、その後、その欠陥23の除去は困難になる。
【0087】
非連続処理のCMP方法において、第1研磨後および第2研磨後にそれぞれ乾燥工程(ドライアウト)が行われる。すなわち、第1研磨において生じた欠陥23と第2研磨において生じた欠陥23とは、その後除去することが困難になるため、ともに残留することになる。
【0088】
一方、連続処理のCMP方法において、第1研磨後、ウェット状態で有機酸および純水研磨、および純水研磨が行われた後、ドライアウトが行われずに第2研磨が行われる。すなわち、第1研磨において生じた欠陥23に対して、ウェット状態で第2研磨が行われる。このため、第2研磨によって、第1研磨において生じた欠陥23が除去され得る。すなわち、連続処理における欠陥23は、主に第2研磨によって生じたもののみである。このため、連続処理の欠陥数は、非連続処理の欠陥数に比べて減少したと考えられる。
【0089】
図13は、本実施形態に係るCMP方法における第1研磨において用いられるスラリーの研磨レートを示すグラフである。より具体的には、図13は、第1研磨において用いられるスラリー(W7523B)に有機酸を加えた場合(本実施形態)のWおよびSiO2の研磨レートと、純水を加えた場合(比較例)のWおよびSiO2の研磨レートとを示している。
【0090】
図13に示すように、第1研磨において用いられるスラリー(W7523B)に純水を加えて研磨を行う場合、Wの研磨レートはSiO2の研磨レートよりも高い。これは、スラリー中に存在する触媒成分(例えば、Fe)がWの研磨レートを大きくしているためである。
【0091】
これに対し、第1研磨において用いられるスラリー(W7523B)に有機酸を加えて研磨を行う場合、Wの研磨レートは小さくなる。これは、スラリー中に存在する触媒成分と有機酸が反応し、Wの酸化力を減少させたものと考えられる。すなわち、有機酸を加えることにより、Wの研磨レートを大きくする触媒の効果を抑制できる。
【0092】
また、第1研磨において用いられるスラリー(W7523B)に有機酸を加えて研磨を行う場合、SiO2の研磨レートは大きくなる。また、図示はしないが、バリアメタルの研磨レートは変わらない。
【0093】
ところで、図14に示すように、研磨パッド41の弾性率は温度に依存する。より具体的には、研磨パッド41の弾性率は、その温度が上昇すると低下する。研磨パッド41の弾性率が変移することで、研磨特性も変移する。すなわち、研磨パッド41の表面温度が変動することで、研磨特性も変移する。その結果、研磨特性が劣化する。
【0094】
これに対し、本実施形態によれば、冷却ノズル45や研磨パッド41と被研磨膜との研磨荷重を調整することにより、第1研磨工程から第2研磨工程まで研磨パッド41の表面の温度を一定に制御しながら行われる。これは、第1研磨工程から第2研磨工程までを同一テーブルにて連続的に行うことで可能になる。すなわち、第1研磨工程と第2研磨工程とを連続処理することにより、その間に研磨パッド41表面のドレッサー工程を行わない。このため、第1研磨工程から第2研磨工程まで研磨パッド41表面のコンディション(温度)を変えずに処理することができる。したがって、第1研磨工程から第2研磨工程まで研磨特性を安定させたまま処理を行うことができる。
【0095】
その他、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で、種々に変形することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0096】
10…半導体基板、14…絶縁膜、15…バリアメタル、16…金属膜、41…研磨パッド、A…配線溝。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面上に、絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜内に、溝を形成する工程と、
前記絶縁膜上に、下地膜を形成する工程と、
前記下地膜上に、前記溝が埋まるように金属膜を形成する工程と、
前記半導体基板の表面を回転する研磨パッドに当接させ、前記研磨パッド上に金属イオンを含む第1CMPスラリーを供給することで、前記溝外の前記金属膜を除去する第1研磨を行う工程と、
前記半導体基板の表面を前記研磨パッドに当接させ、前記研磨パッド上に有機酸および純水を供給することで、前記研磨パッドおよび前記半導体基板の表面を洗浄する工程と、
前記半導体基板の表面を前記研磨パッドに当接させ、前記研磨パッド上に前記第1CMPスラリーと異なる第2CMPスラリーを供給することで、前記溝外の前記下地膜を除去する第2研磨を行う工程と、
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1研磨を行う工程から前記第2研磨を行う工程まで前記研磨パッドの温度を制御することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記研磨パッドの温度を一定にするように制御することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記研磨パッドの温度は、30〜65℃であることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記有機酸は、前記金属イオンとキレート化合物を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記有機酸は、クエン酸またはリンゴ酸を含むことを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記金属イオンは、FeイオンまたはCuイオンを含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2CMPスラリーの前記下地膜に対する研磨レートは、前記第1CMPスラリーの前記下地膜に対する研磨レートよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
半導体基板の表面上に、絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜内に、溝を形成する工程と、
前記絶縁膜上に、下地膜を形成する工程と、
前記下地膜上に、前記溝が埋まるように金属膜を形成する工程と、
前記半導体基板の表面を回転する研磨パッドに当接させ、前記研磨パッド上に金属イオンを含む第1CMPスラリーを供給することで、前記溝外の前記金属膜を除去する第1研磨を行う工程と、
前記半導体基板の表面を前記研磨パッドに当接させ、前記研磨パッド上に有機酸溶液を供給することで、前記研磨パッドおよび前記半導体基板の表面を洗浄する工程と、
を具備し、
前記第1研磨を行う工程において前記研磨パッドの温度を制御することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項1】
半導体基板の表面上に、絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜内に、溝を形成する工程と、
前記絶縁膜上に、下地膜を形成する工程と、
前記下地膜上に、前記溝が埋まるように金属膜を形成する工程と、
前記半導体基板の表面を回転する研磨パッドに当接させ、前記研磨パッド上に金属イオンを含む第1CMPスラリーを供給することで、前記溝外の前記金属膜を除去する第1研磨を行う工程と、
前記半導体基板の表面を前記研磨パッドに当接させ、前記研磨パッド上に有機酸および純水を供給することで、前記研磨パッドおよび前記半導体基板の表面を洗浄する工程と、
前記半導体基板の表面を前記研磨パッドに当接させ、前記研磨パッド上に前記第1CMPスラリーと異なる第2CMPスラリーを供給することで、前記溝外の前記下地膜を除去する第2研磨を行う工程と、
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1研磨を行う工程から前記第2研磨を行う工程まで前記研磨パッドの温度を制御することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記研磨パッドの温度を一定にするように制御することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記研磨パッドの温度は、30〜65℃であることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記有機酸は、前記金属イオンとキレート化合物を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記有機酸は、クエン酸またはリンゴ酸を含むことを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記金属イオンは、FeイオンまたはCuイオンを含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2CMPスラリーの前記下地膜に対する研磨レートは、前記第1CMPスラリーの前記下地膜に対する研磨レートよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
半導体基板の表面上に、絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜内に、溝を形成する工程と、
前記絶縁膜上に、下地膜を形成する工程と、
前記下地膜上に、前記溝が埋まるように金属膜を形成する工程と、
前記半導体基板の表面を回転する研磨パッドに当接させ、前記研磨パッド上に金属イオンを含む第1CMPスラリーを供給することで、前記溝外の前記金属膜を除去する第1研磨を行う工程と、
前記半導体基板の表面を前記研磨パッドに当接させ、前記研磨パッド上に有機酸溶液を供給することで、前記研磨パッドおよび前記半導体基板の表面を洗浄する工程と、
を具備し、
前記第1研磨を行う工程において前記研磨パッドの温度を制御することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−41943(P2013−41943A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177208(P2011−177208)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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