説明

半導体装置の製造方法

【課題】 半導体装置の一部を構成する強誘電体や白金の微細加工を容易に実現できるようにする。
【解決手段】 半導体基板1の上にデバイス絶縁膜2を形成し、その上に下層白金膜3、強誘電体膜4、上層白金膜5及びチタン膜6を順次形成し、更にその上に所望のパターンのフォトレジストマスク7を形成する。この際、チタン膜6の厚さを、上層白金膜5と強誘電体膜4と下層白金膜3とからなる積層膜の厚さの合計の十分の一以上に設定する。次に、ドライエッチング法でチタン膜6をエッチングし、フォトレジストマスク7を灰化処理により除去する。このようにしてパターン化されたチタン膜6をマスクとし、かつ酸素ガスの体積濃度を40%に設定した塩素と酸素との混合ガスのプラズマを用いたドライエッチング法により、3層の積層膜3〜5をエッチングする。更に、塩素ガスのプラズマを用いたドライエッチング法でチタン膜6を除去する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に強誘電体、高誘電率材料及び白金のエッチング方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体基板の上に形成された強誘電体膜の自発分極を利用した不揮発性メモリが知られている。また、高誘電率材料からなるキャパシタを半導体基板上に備えたDRAM(ダイナミックRAM)が知られている。これらの種類のメモリの製造過程では、強誘電体及び高誘電率材料や、それらの電極として使用される白金(Pt)の微細加工が必要である。
【0003】従来、フォトレジストをマスクとし、かつ塩素(Cl2 )ガスのプラズマを用いたドライエッチング法で強誘電体や高誘電率材料を加工する方法が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、強誘電体や高誘電率材料は、高融点かつ高沸点の金属の複合酸化物であるためエッチング速度が遅い。つまり、上記従来のエッチング方法では十分な選択比が得られないので、フォトレジストマスクを無駄に厚くする必要があった。したがって、微細加工が困難であった。
【0005】本発明の目的は、強誘電体、高誘電率材料及び白金の微細加工を容易に実現できるようにすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明は、強誘電体、高誘電率材料及び白金のうちの少なくとも1つからなるエッチング対象膜の上に酸化しやすい金属膜をマスクとしてパターン形成し、ハロゲンガスと酸素ガスとの混合ガスのプラズマでエッチング対象膜を選択的にエッチングすることとしたものである。この方法によれば、マスクとして形成された金属膜はプラズマによって酸化される。この結果、マスクのエッチング速度は小さくなる。これとは対照的に、エッチング対象膜については、大きいエッチング速度が確保される。したがって、エッチングの高い選択比が実現し、エッチング対象膜の微細加工が容易になる。
【0007】また、本発明によれば、強誘電体及び高誘電率材料のうちの少なくとも1つからなるエッチング対象膜の上に絶縁物からなる下層マスクと酸化しやすい金属からなる上層マスクとをパターン形成し、ハロゲンガスと酸素ガスとの混合ガスのプラズマでエッチング対象膜を選択的にエッチングした後に、下層マスクを残存させながら上層マスクを除去する。この方法によれば、上層マスクとして形成された金属膜はプラズマによって酸化される。この結果、マスクのエッチング速度は小さくなる。これとは対照的に、エッチング対象膜については、大きいエッチング速度が確保される。したがって、エッチングの高い選択比が実現し、エッチング対象膜の微細加工が容易になる。しかも、上層マスクの除去の際には、エッチング対象膜が下層マスクで覆われているので、該エッチング対象膜がエッチングガスにさらされることがない。したがって、強誘電体特性や高誘電率特性のばらつきや劣化が抑制される。更に、上層マスクの残滓発生を防止するためには、還元性を有するガスのプラズマ、例えば三塩化ホウ素のガスプラズマを用いて上層マスクをエッチングする。
【0008】また、本発明によれば、強誘電体及び高誘電率材料のうちの少なくとも1つからなるエッチング対象膜の上に絶縁物をマスクとしてパターン形成し、ガスプラズマでエッチング対象膜を選択的にエッチングした後に、絶縁物からなるマスクのうちの上層部分のみを除去する。この方法によれば、絶縁物からなるマスクを用いたドライエッチング法の採用により、フォトレジストマスクを用いる場合に比べてエッチング対象膜の微細加工が容易になる。しかも、マスクを部分的に除去することとしたので、該マスク除去の際にエッチング対象膜が保護される結果、強誘電体特性や高誘電率特性のばらつきや劣化が抑制される。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る半導体装置の製造方法の具体例について、図面を参照しながら説明する。
【0010】図1(a)〜図1(e)は、本発明に係る半導体装置の製造方法の工程を示している。図1(a)〜図1(e)において、1はシリコン(Si)単結晶からなる半導体基板、2は酸化シリコン(SiO2 )からなるデバイス絶縁膜、3は下層白金(Pt)膜、4はSBTすなわちSrBi2 Ta3 9 からなる強誘電体膜、5は上層白金(Pt)膜、6はチタン(Ti)膜、7はフォトレジストマスクである。
【0011】順を追って説明すると、半導体基板1の上にデバイス絶縁膜2を形成し、その上に下層白金膜3、強誘電体膜4、上層白金膜5及びチタン膜6を順次形成し、更にその上にフォトリソグラフィを用いて所望のパターンのフォトレジストマスク7を形成する(図1(a))。デバイス絶縁膜2はCVD法により、下層白金膜3、上層白金膜5及びチタン膜6はスパッタ法により、強誘電体膜4はゾルゲル法(詳細には、スピン塗布法、ミスト法など)によりそれぞれ形成される。各々の膜厚は、例えばデバイス絶縁膜2が200nm、下層白金膜3が300nm、強誘電体膜4が200nm、上層白金膜5が200nm、チタン膜6が200nm、フォトレジストマスク7が1200nmである。この際、チタン膜6の厚さは、上層白金膜5と強誘電体膜4と下層白金膜3とからなる積層膜の厚さの合計の十分の一以上に設定される。
【0012】次に、塩素(Cl2 )ガスのプラズマを用いたドライエッチング法でチタン膜6をエッチングし(図1(b))、フォトレジストマスク7を酸素(O2 )プラズマによる灰化処理で除去する(図1(c))。
【0013】続いて、パターン化されたチタン膜6をマスクとし、かつ塩素(Cl2 )と酸素(O2 )との混合ガスのプラズマを用いたドライエッチング法により、上層白金膜5と強誘電体膜4と下層白金膜3とからなる積層膜をエッチングする(図1(d))。この際、ドライエッチングのためのチャンバーを用いて、例えば、塩素ガスの流量を12cc/分に、酸素ガスの流量を8cc/分にそれぞれ設定し、チャンバー内の圧力を2Paに保持し、かつ13.56MHzの高周波電力を5W/cm2 の密度で印加することにより、塩素と酸素との混合ガスのプラズマを発生させる。この場合の塩素と酸素との混合ガス中に占める酸素ガスの体積濃度は40%である。
【0014】更に、塩素ガスのプラズマを用いたドライエッチング法でチタン膜6をエッチングすることにより、該チタン膜6を除去する(図1(e))。この際、例えば、塩素ガスの流量を30cc/分に設定し、チャンバー内の圧力を20Paに保持し、かつ13.56MHzの高周波電力を0.7W/cm2 の密度で印加することにより、塩素ガスのプラズマを発生させる。以上の工程により、半導体基板1の上にデバイス絶縁膜2を介して強誘電体キャパシタが形成される。そして、図1(e)の工程の後に不図示の配線工程が実施される。
【0015】図2は、塩素と酸素との混合ガスのプラズマによるドライエッチングを実施した場合の、該混合ガス中の酸素ガスの体積濃度と、白金、強誘電体及びチタンの各々のエッチング速度との関係を示している。図2において、横軸は塩素と酸素との混合ガス中に占める酸素ガスの体積濃度を示し、縦軸は白金、強誘電体及びチタンの各々のエッチング速度の相対値を示している。この相対値は、酸素ガス0%(塩素ガス100%)の場合の白金のエッチング速度を1としたものである。エッチングのためのプラズマは、チャンバー内の圧力を2Paに保持し、かつ13.56MHzの高周波電力を5W/cm2 の密度で印加することにより生成した。
【0016】図2によれば、酸素ガスの体積濃度が27%以上になるとチタンのエッチング速度が急激に減少する。これは、チタンがプラズマによって酸化され、エッチングされにくくなったことを意味している。酸素ガスの体積濃度を30%以上に設定すると、チタンのエッチング速度は、白金や強誘電体のエッチング速度の十分の一以下になる。つまり、前記のようにチタン膜6の厚さを上層白金膜5と強誘電体膜4と下層白金膜3とからなる積層膜の厚さの合計の十分の一以上に設定しておけば、図1(d)に示すように、パターン化されたチタン膜6とその下に位置する積層膜3〜5の所要部分とを残しながら、該積層膜3〜5の不要部分をエッチングにより除去できる。
【0017】以上のとおり、本方法によれば、白金と強誘電体との積層膜3〜5の上にチタン膜6をマスクとしてパターン形成し、塩素と酸素との混合ガスのプラズマで積層膜3〜5を選択的にエッチングすることとしたので、該積層膜3〜5の加工精度が向上する。また、チタン膜6のパターン化のためにのみフォトレジストマスク7を用いることとしたので、フォトレジストマスク7の厚さを低減できる結果、フォトリソグラフィの解像度や光学系の焦点深度余裕の向上に寄与できる。これらの利点を活かすと、従来加工性が悪いために採用が見送られてきた種々の強誘電体材料が使用可能となり、半導体装置の特性や、信頼性、歩留まりを向上させることができる。デバイス絶縁膜2と下層白金膜3との間に、接着層としてチタン層、窒化チタン層、酸化チタン層のいずれかを介在させてもよい。また、上層白金膜5とチタン膜6との間に同様の接着層を介在させておき、チタン膜6の除去後に残る該接着層を、上層白金膜5と図1(e)の工程後に形成される酸化シリコン膜との密着性の確保に利用することとしてもよい。
【0018】なお、図2から明らかなように、上記PtとSBTとの積層膜に限らず、Ptの単層膜や、SBTの単層膜でも高い選択比が得られる。ゾルゲル法又はスパッタ法により形成された、強誘電体膜の一種であるPZT膜すなわちPbTiO3−PbZrO3 膜や、高誘電率膜の一種であるBST膜すなわちBaTiO3 −SrTiO3 膜のエッチングに本方法を適用することも可能である。上記の例ではマスクとしてチタン(Ti)膜を採用したが、チタン化合物、あるいはチタンを含む合金からなるマスクを採用してもよい。あるいは、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)などの酸化しやすい他の金属からなるマスクを採用してもよい。エッチングガスとして、Cl2 とO2 との混合ガスに代えて、HBr、SF6 、HClなどの他のハロゲンガスとO2 との混合ガスを選定してもよい。ただし、白金(Pt)の塩化物はそのフッ化物に比べて蒸気圧が高いので、Ptのエッチングにはフッ素系ガスよりも塩素系ガスが好ましい。
【0019】さて、上記のとおり、強誘電体キャパシタは、強誘電体膜を上層白金膜と下層白金膜とで挟んだ構造を持っている。半導体装置の使用時における強誘電体膜の側面での表層リークを防ぐため、上層白金膜の面積を強誘電体膜の面積より小さくすることが好ましい。以下、上層白金膜とは別に強誘電体膜と下層白金膜とをエッチングする方法について説明する。
【0020】図3(a)〜図3(d)は、本発明に係る半導体装置の製造方法の他の工程を示している。図3(a)〜図3(d)において、11はシリコン(Si)単結晶からなる半導体基板、12は酸化シリコン(SiO2 )からなるデバイス絶縁膜、13は下層白金(Pt)膜、14はSBTすなわちSrBi2 Ta3 9 からなる強誘電体膜、15は上層白金(Pt)膜、16は酸化シリコンの一種であるNSG(non-doped silicate glass)からなるマスク絶縁膜、17はチタン(Ti)膜である。
【0021】順を追って説明すると、半導体基板11の上にデバイス絶縁膜12を形成し、その上に下層白金膜13、強誘電体膜14及び上層白金膜15を順次形成した後、上層白金膜15を所望のパターンにエッチングする(図3(a))。デバイス絶縁膜12はCVD法により、下層白金膜13及び上層白金膜15はスパッタ法により、強誘電体膜14はゾルゲル法(詳細には、スピン塗布法、ミスト法など)によりそれぞれ形成される。各々の膜厚は、例えばデバイス絶縁膜12が100nm、下層白金膜13が200nm、強誘電体膜14が200nm、上層白金膜15が200nmである。ここでは上層白金膜15のみをエッチングするので、そのエッチングにはフォトレジストマスクを用いたドライエッチング法を適用できる。エッチングガスは、例えば塩素(Cl2 )ガスである。フォトレジストマスクは、酸素(O2 )プラズマによる灰化処理で除去される。
【0022】次に、パターン化された上層白金膜15を覆うようにマスク絶縁膜16をCVD法により形成し、その上にチタン膜17をスパッタ法により形成した後、チタン膜17及びマスク絶縁膜16を上層白金膜15より大きいパターンにエッチングする(図3(b))。各々の膜厚は、例えばマスク絶縁膜16が100nm、チタン膜17が200nmである。このエッチングにも、フォトレジストマスクを用いたドライエッチング法を適用できる。エッチングガスは、例えばチタン膜17に対しCl2 ガス、マスク絶縁膜16に対しCF4 ガスである。フォトレジストマスクは、酸素(O2 )プラズマによる灰化処理で除去される。
【0023】続いて、パターン化されたチタン膜17及び絶縁膜16をマスクとし、かつ塩素(Cl2 )と酸素(O2 )との混合ガスのプラズマを用いたドライエッチング法により、強誘電体膜14をエッチングする(図3(c))。この際、チタン膜17は、部分的に酸化チタン(TiO2 )に変化する。
【0024】更に、還元性を有する三塩化ホウ素(BCl3 )ガスのプラズマを用いたドライエッチング法でチタン膜17をエッチングすることにより、絶縁膜16を残しながらチタン膜17を除去する(図3(d))。この際、例えば、三塩化ホウ素ガスの流量を80cc/分に設定し、チャンバー内の圧力を13.3Pa(=100mTorr)に保持し、かつ115Wの高周波電力を印加することにより、三塩化ホウ素ガスのプラズマを発生させる。そして、図3(d)の工程の後に、絶縁膜16の穿孔を含む不図示の配線工程が実施される。
【0025】以上のとおり、本方法によれば、強誘電体膜14の上にチタン膜17をマスクとしてパターン形成し、塩素と酸素との混合ガスのプラズマで強誘電体膜14を選択的にエッチングすることとしたので、該強誘電体膜14の加工精度が向上する。しかも、マスクとして使用されたチタン膜17は完全に除去され得る。
【0026】図4は、三塩化ホウ素ガスのプラズマによるドライエッチングを実施した場合の、チャンバー内の圧力と、チタン及び酸化チタンの各々のエッチング速度との関係を示している。圧力13.3Paのときにチタンと酸化チタンとのエッチング速度がほぼ等しくなることが分る。つまり、上記条件でチタン膜17をエッチングすると、チタン及び酸化チタンの残滓の発生がない。したがって、配線工程に支障が生じることはない。しかも、チタン膜17の除去の際に強誘電体膜14がマスク絶縁膜16で覆われているので、該強誘電体膜14がエッチングガスにさらされることがない。したがって、強誘電体特性のばらつきや劣化が抑制される。実験によれば、強誘電体膜14の残留分極として15μC/cm2 が、その耐圧として30Vがそれぞれ得られた。デバイス絶縁膜12と下層白金膜13との間及び上層白金膜15とマスク絶縁膜16との間に、それぞれ接着層としてチタン層、窒化チタン層、酸化チタン層のいずれかを介在させてもよい。
【0027】なお、強誘電体膜の一種であるPZT膜や、高誘電率膜の一種であるBST膜のエッチングに本方法を適用することも可能である。マスク絶縁膜16は、窒化シリコン(Si3 4 )膜でもよい。ただし、窒化シリコンの成膜時にアンモニア(NH3 )ガス等の水素を含むガスを用いると強誘電体膜14に劣化が生じるので、成膜方法の選定が重要である。チタン膜17に代えて、チタン化合物、あるいはチタンを含む合金からなるマスクを採用してもよい。あるいは、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)などの酸化しやすい他の金属からなるマスクを採用してもよい。チタン膜17のエッチングガスとして、Cl2 、CHCl3 、HClなどの塩素系ガスを使用してもよい。ただし、残滓の発生防止の観点から三塩化ホウ素(BCl3 )ガスが最適である。上層白金膜15のエッチングの際にも、NSGとチタンとの積層膜をマスクとしたドライエッチング法が適用可能である。チタン膜のみ又はNSG膜のみをマスクとして上層白金膜15をエッチングしてもよい。ただし、選択比は、チタン、NSG、フォトレジストの順に低くなる。つまり、単層マスクを使用する場合には、チタン膜からなるマスクを採用することによって、この中では最大の選択比が得られる。また、強誘電体膜14と下層白金膜13とを同時にエッチングしてもよい。
【0028】図5(a)〜図5(d)は、本発明に係る半導体装置の製造方法の更に他の工程を示している。図5R>5(a)〜図5(d)において、21はシリコン(Si)単結晶からなる半導体基板、22は酸化シリコン(SiO2 )からなるデバイス絶縁膜、23は下層白金(Pt)膜、24はSBTすなわちSrBi2 Ta3 9からなる強誘電体膜、25は上層白金(Pt)膜、26はNSGからなるマスク絶縁膜である。
【0029】順を追って説明すると、半導体基板21の上にデバイス絶縁膜22を形成し、その上に下層白金膜23、強誘電体膜24及び上層白金膜25を順次形成した後、上層白金膜25を所望のパターンにエッチングする(図5(a))。この工程は、図3(a)の工程と同様である。
【0030】次に、パターン化された上層白金膜25を覆うようにマスク絶縁膜26をCVD法により形成した後、該マスク絶縁膜26を上層白金膜25より大きいパターンにエッチングする(図5(b))。マスク絶縁膜26の厚さは、例えば500nmである。このエッチングには、フォトレジストマスクを用いたドライエッチング法を適用できる。エッチングガスは、例えばCF4 、CHF3 などのフッ素系ガスである。フォトレジストマスクは、酸素(O2 )プラズマによる灰化処理で除去される。
【0031】続いて、パターン化された絶縁膜26をマスクとし、かつ塩素(Cl2 )と酸素(O2 )との混合ガスのプラズマを用いたドライエッチング法により、強誘電体膜24をエッチングする(図5(c))。
【0032】更に、CF4 、CHF3 などのフッ素系ガスのプラズマを用いたドライエッチング法でマスク絶縁膜26をエッチングすることにより、該マスク絶縁膜26を一部除去する(図5(d))。この際、例えば、マスク絶縁膜26の厚さが100nmになるようにエッチング時間を調整する。そして、図5(d)の工程の後に、絶縁膜26の穿孔を含む不図示の配線工程が実施される。
【0033】本方法によれば、NSGからなるマスク絶縁膜26を用いたドライエッチング法の採用により強誘電体膜24の微細加工が容易になる。しかも、図5(d)の工程において強誘電体膜24がマスク絶縁膜26で覆われているので、該強誘電体膜24がエッチングガスにさらされることがない。したがって、強誘電体特性のばらつきや劣化が抑制される。実験によれば、強誘電体膜24の残留分極として13〜15μC/cm2 が、その耐圧として25〜30Vがそれぞれ得られた。デバイス絶縁膜22と下層白金膜23との間及び上層白金膜25とマスク絶縁膜26との間に、それぞれ接着層としてチタン層、窒化チタン層、酸化チタン層のいずれかを介在させてもよい。
【0034】なお、強誘電体膜の一種であるPZT膜や、高誘電率膜の一種であるBST膜のエッチングに本方法を適用することも可能である。マスク絶縁膜26は、窒化シリコン(Si3 4 )膜でもよい。また、強誘電体膜24と下層白金膜23とを同時にエッチングしてもよい。
【0035】
【発明の効果】以上説明してきたとおり、本発明によれば、強誘電体、高誘電率材料及び白金のうちの少なくとも1つからなるエッチング対象膜の上に酸化しやすい金属膜をマスクとしてパターン形成し、ハロゲンガスと酸素ガスとの混合ガスのプラズマでエッチング対象膜を選択的にエッチングすることとしたので、半導体装置の一部を構成する強誘電体、高誘電率材料及び白金の微細加工を容易に実現できる効果が得られる。
【0036】また、本発明によれば、強誘電体及び高誘電率材料のうちの少なくとも1つからなるエッチング対象膜の上に絶縁物からなる下層マスクと酸化しやすい金属からなる上層マスクとをパターン形成し、ハロゲンガスと酸素ガスとの混合ガスのプラズマでエッチング対象膜を選択的にエッチングした後に、下層マスクを残存させながら上層マスクを除去することとしたので、強誘電体及び高誘電率材料の微細加工を容易に実現できるだけでなく、強誘電体特性や高誘電率特性のばらつきや劣化が抑制される。更に、還元性を有するガスのプラズマ、例えば三塩化ホウ素のガスプラズマを用いて上層マスクをエッチングすることとすれば、上層マスクの残滓発生を防止できる。
【0037】また、本発明によれば、強誘電体及び高誘電率材料のうちの少なくとも1つからなるエッチング対象膜の上に絶縁物をマスクとしてパターン形成し、ガスプラズマでエッチング対象膜を選択的にエッチングした後に、絶縁物からなるマスクのうちの上層部分のみを除去することとしたので、フォトレジストマスクを用いる場合に比べてエッチング対象膜の微細加工が容易になるだけでなく、強誘電体特性や高誘電率特性のばらつきや劣化が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(e)は、本発明に係る半導体装置の製造方法の工程を示す断面図である。
【図2】塩素と酸素との混合ガスのプラズマによるドライエッチングを実施した場合の、混合ガス中の酸素ガスの体積濃度と、白金、強誘電体及びチタンの各々のエッチング速度との関係を示す図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明に係る半導体装置の製造方法の他の工程を示す断面図である。
【図4】三塩化ホウ素ガスのプラズマによるドライエッチングを実施した場合の、チャンバー内の圧力と、チタン及び酸化チタンの各々のエッチング速度との関係を示す図である。
【図5】(a)〜(d)は、本発明に係る半導体装置の製造方法の更に他の工程を示す断面図である。
【符号の説明】
1 半導体基板
2 デバイス絶縁膜
3 下層白金膜
4 強誘電体膜
5 上層白金膜
6 チタン膜
7 フォトレジストマスク
11,21 半導体基板
12,22 デバイス絶縁膜
13,23 下層白金膜
14,24 強誘電体膜
15,25 上層白金膜
16,26 マスク絶縁膜
17 チタン膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体基板の上に、強誘電体、高誘電率材料及び白金のうちの少なくとも1つからなるエッチング対象膜を形成する工程と、前記エッチング対象膜の上に、酸化しやすい金属からなるパターン化されたマスクを形成する工程と、酸化性とハロゲン化性とを有するガスプラズマで前記エッチング対象膜を選択的にエッチングする工程とを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】 請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記マスクを形成する工程は、チタンとチタン化合物とチタンを含む合金とのうちの少なくとも1つからなる膜を形成する工程を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】 請求項1記載の半導体装置の製造方法において、前記エッチング対象膜を選択的にエッチングする工程は、塩素と酸素との混合ガスのプラズマを選定する工程を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】 請求項3記載の半導体装置の製造方法において、前記塩素と酸素との混合ガスのプラズマを選定する工程は、該混合ガス中の酸素ガスの体積濃度を30%以上に設定する工程を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】 半導体基板の上に、強誘電体及び高誘電率材料のうちの少なくとも1つからなるエッチング対象膜を形成する工程と、前記エッチング対象膜の上に、絶縁物からなる下層マスクと、該下層マスクの上の酸化しやすい金属からなる上層マスクとを備えかつパターン化された積層マスクを形成する工程と、酸化性とハロゲン化性とを有するガスプラズマで前記エッチング対象膜を選択的にエッチングする工程と、前記下層マスクを残存させながら前記上層マスクを除去する工程とを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】 請求項5記載の半導体装置の製造方法において、前記下層マスクを形成する工程は、酸化シリコンからなる膜を形成する工程を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】 請求項5記載の半導体装置の製造方法において、前記上層マスクを形成する工程は、チタンとチタン化合物とチタンを含む合金とのうちの少なくとも1つからなる膜を形成する工程を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】 請求項7記載の半導体装置の製造方法において、前記上層マスクを除去する工程は、還元性を有するガスプラズマを用い、かつチタンと酸化チタンとのエッチング速度が等しくなる条件で前記上層マスクをエッチングする工程を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】 請求項8記載の半導体装置の製造方法において、前記上層マスクを除去する工程は、還元性を有する三塩化ホウ素のガスプラズマを選定する工程を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】 半導体基板の上に、強誘電体及び高誘電率材料のうちの少なくとも1つからなるエッチング対象膜を形成する工程と、前記エッチング対象膜の上に、絶縁物からなるパターン化されたマスクを形成する工程と、ガスプラズマで前記エッチング対象膜を選択的にエッチングする工程と、前記マスクのうちの上層部分のみを除去する工程とを備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】 請求項10記載の半導体装置の製造方法において、前記マスクを形成する工程は、酸化シリコンからなる膜を形成する工程を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平9−266200
【公開日】平成9年(1997)10月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−2835
【出願日】平成9年(1997)1月10日
【出願人】(000005843)松下電子工業株式会社 (43)