説明

半導体装置の製造装置および半導体装置の製造方法

【課題】粘着テープからの剥離時における半導体チップの欠けや傷を低減することができる半導体装置の製造装置および半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】ピックアップ装置10は、粘着テープに貼り付けられた状態の半導体チップを保持する保持ステージ11を備える。保持ステージ11の半導体チップを保持する側の面には、第1溝21aおよび第2溝22aが設けられている。第1溝21aおよび第2溝22aには、少なくとも1つ以上の通気孔12が連結されている。第2溝22aの開口部の幅t2は、第1溝21aの開口部の幅t1よりも狭い。ピックアップ装置10は、第1,2溝21a,22aの頂点部に、粘着テープが貼り付けられた側を下にして半導体チップを保持し、減圧手段によって粘着テープ、第1溝21aおよび第2溝22aに囲まれた密閉空間を減圧した後、コレットによって保持ステージ11から半導体チップをピックアップする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置の製造装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)では、高性能化および低コスト化のために、半導体ウエハの薄化が進められている。例えば、半導体ウエハの厚さを50μm〜100μm程度、またはそれ以下の厚さになるまで薄くする技術が提案されている。
【0003】
デバイス厚の薄い半導体装置を製造するには、例えば、半導体ウエハのおもて面にデバイス構造を形成した後、所定の厚さになるまで、半導体ウエハ裏面のバックグラインドやシリコンエッチングを行う。そして、半導体ウエハのおもて面に形成されたデバイス構造ごとにダイシングを行い、半導体ウエハを個々の半導体チップに切断する。
【0004】
また、デバイス厚の薄い半導体装置を製造する別の方法として、次の方法が提案されている。半導体ウエハのおもて面にデバイス構造を形成した後、半導体ウエハのおもて面側からダイシングラインに沿って、半導体装置のデバイス厚よりも深い溝を形成する。その後、半導体ウエハ裏面のバックグラインドやシリコンエッチングを行い、半導体ウエハを所定の厚さになるまで薄くする。半導体ウエハに形成された溝によって、半導体ウエハは個々の半導体チップに切断される。
【0005】
デバイス厚の薄い半導体装置を製造する別の方法として、さらに、次の方法が提案されている。半導体ウエハのおもて面にデバイス構造を形成した後、半導体ウエハ裏面のバックグラインドやシリコンエッチングを行い、半導体ウエハの直径よりも狭い範囲で半導体ウエハの中央部のみを薄くする。その後、半導体ウエハの外周部(以下、リブ部とする)を残したまま、またはリブ部を除去した後にダイシングを行い、半導体ウエハを個々の半導体チップに切断する。
【0006】
ダイシングによって分離された半導体チップが飛び散るなどの問題を回避するために、例えば、半導体ウエハの裏面にダイシングテープなどの粘着テープを貼り付けてダイシングを行う方法が公知である。半導体ウエハの裏面に粘着テープを貼り付けてダイシングを行う場合、粘着テープに貼り付いた半導体チップを粘着テープからピックアップして個々の半導体チップに分離する。
【0007】
粘着テープから半導体チップをピックアップする方法として、次の方法が提案されている。粘着テープ側が貼り付けられた裏面側から半導体チップを例えばニードルなどによって上方に突き上げ、半導体チップと粘着テープとの接触面積を低減させる。そして、半導体チップを吸引して吸着する例えばコレットなどによって半導体チップを吸引し、粘着テープから半導体チップをピックアップする。しかしながら、このようなピックアップ方法を薄化された半導体チップに適用した場合、半導体チップをニードルで突き上げることによって、半導体チップの表面に傷がついたり、半導体チップが破損する虞がある。
【0008】
このような問題を解決する方法として、次の方法が提案されている。固定ジグは、片面に複数の突起物と側壁を有するジグ基台と、ジグ基台の突起物を有する面上に積層され側壁の上面に接着された密着層とからなる。ジグ基台の突起物を有する面には、密着層、突起物および側壁により区画空間が形成され、貫通孔によって真空源に接続されている。貫通孔を通して区画空間内の空気を吸引して密着層を変形させるとともに、チップの上面側から吸着コレットがチップを吸引して、チップを密着層からピックアップする(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0009】
また、別の方法として、次の方法が提案されている。載置台は、チップ状部品と対向する領域をカバーするように分布する複数の吸引溝と、これら吸引溝間であって各チップ状部品に対して少なくとも2箇所において部分的に対向するように位置する突起とを有する。載置台上に保持シートを載置し、吸引溝に負圧を付与することによって、保持シートを突起に沿うように変形させてチップ状部品から剥がす。このとき、まず、チップ状部品の周縁部に対向する吸引溝に付与される負圧をより強くし、チップ状部品の周縁部から保持シートが剥がれるようにする(例えば、下記特許文献2参照。)。
【0010】
さらに、別の方法として、次の方法が提案されている。吸着駒のダイシング用テープを介して半導体チップの裏面側を載置する面には、上に凹状かつ略半球形状で、同一の高さの複数の突起がそれぞれ垂直に立ち上がるように設けられた吸着面と、吸着面の外周部の全周囲にわたって幅が0.4mm以下、かつ高さが突起の高さと同じか突起の高さとの差が1mm未満である側壁と、が設けられている。そして、突起同士の間の谷もしくは突起の側面またはその両方の少なくとも一つ以上に設けられた吸着穴からダイシング用テープを吸着して、突起に吸い寄せ、半導体チップのおもて面側からコレットによって半導体チップをピックアップする。吸着穴からダイシング用テープを吸着する際には、ダイシング用テープの弾力性の範囲内で吸着駒の側壁と吸着面との間にダイシング用テープがわずかに沈み込むようにする(例えば、下記特許文献3参照。)。
【0011】
また、半導体チップに傷がつくことなどを回避するピックアップ装置として、次の装置が提案されている。ウエハ載置台は、頂部で粘着シートを介してICチップの下面を保持する複数の突起と、複数の突起の谷部に形成された吸引溝と、この吸引溝に接続管を介して接続され、吸引溝に吸引力を発生させることで、粘着シ−トをICチップから剥離して突起の谷部に吸着する真空装置を具備する(例えば、下記特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−103493号公報
【特許文献2】特開平11−54594号公報
【特許文献3】特開2010−123750号公報
【特許文献4】特開平5−335405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した各特許文献では、チップサイズや粘着テープの成分によっては、次のような問題が生じる。例えば、半導体チップと粘着テープとの密着力がコレットの吸引力よりも大きい場合、コレットの吸引力では、粘着テープによって突起部上面に接着された半導体チップをピックアップすることができない虞がある。コレットの吸引力によって半導体チップを確実にピックアップするために、コレットを半導体チップに押し付けた状態で半導体チップを吸引した場合、コレットを押し付けたことにより半導体チップの表面が傷つく虞がある。
【0014】
図13は、従来の半導体装置の製造装置の保持ステージに保持された半導体チップを示す断面図である。一方、半導体チップと粘着テープとの密着力が弱い場合、図13に示すように、1つの半導体チップ101aの面内で粘着テープ102が剥離されるタイミングにばらつきが生じる。これにより、半導体チップ101aが保持ステージ111に対して傾いた状態となり、隣り合う半導体チップ101aに接触して欠けてしまう虞がある。また、半導体チップ101aのピックアップ時にコレット(不図示)にぶつかり、傷がつく虞がある。
【0015】
また、半導体チップ101a裏面の表面粗さや、裏面電極の有無によって、半導体チップ101aと粘着テープ102との密着力が異なる。さらに、粘着テープ102の剛性によって粘着テープ102の変形しやすさが異なる。このため、半導体チップ101aと粘着テープ102との密着力や、粘着テープ102の変形を一定に制御することは難しい。したがって、半導体チップ101aの素子構造や粘着テープ102の剛性によっては上述した問題が生じやすく、半導体チップ101aに割れや欠けを生じさせることなく、粘着テープ102から半導体チップ101aを剥離することが困難である。
【0016】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、粘着テープからの剥離時における半導体チップの欠けや傷を低減することができる半導体装置の製造装置および半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、ダイシングによって切断された半導体チップを粘着テープから取り上げる半導体装置の製造装置であって、前記半導体チップを保持する面に設けられた複数の溝、および前記溝に連結された少なくとも1つの通気孔を有する保持ステージと、前記溝のうち、前記保持ステージに保持される前記半導体チップの外周部に対応する位置に配置された第1溝と、前記溝のうち、前記第1溝よりも狭い幅を有し、前記保持ステージに保持される前記半導体チップの中央部に対応する位置に配置された第2溝と、前記溝の開口部側の端部によって形成され、前記保持ステージに保持される前記半導体チップに点接触する頂点部と、前記半導体チップの前記粘着テープが貼り付けられた側の面を前記保持ステージ側にして前記頂点部に前記半導体チップが保持された後に、前記通気孔を介して前記溝および前記粘着テープで囲まれた空間を減圧する減圧手段と、前記減圧手段によって前記空間が減圧された後に、前記頂点部に保持された前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引手段と、を備えることを特徴とする。
【0018】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、ダイシングによって切断された半導体チップを粘着テープから取り上げる半導体装置の製造装置であって、前記半導体チップを保持する側の面に設けられた複数の溝、および前記溝に連結された少なくとも1つの通気孔を有する保持ステージと、前記溝の開口部側の端部によって形成され、前記保持ステージに保持される前記半導体チップに点接触する頂点部と、前記半導体チップの前記粘着テープが貼り付けられた側の面を前記保持ステージ側にして前記頂点部に前記半導体チップが保持された後に、前記通気孔を介して前記溝および前記粘着テープで囲まれた空間を減圧する減圧手段と、前記頂点部に保持された前記半導体チップと予め定めた間隔をあけて配置され、前記減圧手段によって前記空間が減圧された後に、前記頂点部に保持された前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引手段と、を備えることを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、上述した発明において、前記減圧手段は、前記半導体チップに貼り付けられた前記粘着テープを前記溝の内壁に沿うように変形させることを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、上述した発明において、前記減圧手段は、前記半導体チップと前記粘着テープとの接触部分が前記頂点部に対応する部分のみになるまで前記空間を減圧することを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、上述した発明において、前記保持ステージの側面に接して前記保持ステージを囲う外壁部をさらに備え、前記外壁部の前記半導体チップが保持される側の面は、前記保持ステージの前記半導体チップが保持される側の面と同じ高さとなっていることを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、上述した発明において、前記頂点部は、隣り合う前記溝の側壁で構成される円錐状、四角錐状または四角柱状の突起部の頂点部からなることを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、上述した発明において、前記半導体チップの1つの頂点を共有する2辺の寸法比は、0.75以上1.25以下であることを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、上述した発明において、前記通気孔は、前記保持ステージの1つの前記半導体チップが保持される領域に、少なくとも4箇所設けられていることを特徴とする。
【0025】
また、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、上述した発明において、前記吸引手段は、前記頂点部に保持された前記半導体チップと0.05mm以上0.5mm以下の間隔をあけて配置されることを特徴とする。
【0026】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、ダイシングによって切断された半導体チップを粘着テープから取り上げる半導体装置の製造方法であって、保持ステージに設けられた溝の開口部側の端部によって形成され、かつ前記保持ステージに保持される前記半導体チップに点接触する頂点部に、前記粘着テープが貼り付けられた側の面を前記保持ステージ側にして前記半導体チップを保持する保持工程と、前記保持工程の後、前記半導体チップの外周部に対応する位置に配置された第1溝と、前記第1溝よりも狭い幅を有し、前記保持ステージの前記半導体チップの中央部に対応する位置に配置された第2溝とからなる前記溝、および前記粘着テープで囲まれた空間を減圧する減圧工程と、前記減圧工程の後、前記頂点部に保持された前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引工程と、を含むことを特徴とする。
【0027】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、ダイシングによって切断された半導体チップを粘着テープから取り上げる半導体装置の製造方法であって、保持ステージに設けられた溝の開口部側の端部によって形成され、かつ前記保持ステージに保持される前記半導体チップに点接触する頂点部に、前記粘着テープが貼り付けられた側の面を前記保持ステージ側にして前記半導体チップを保持する保持工程と、前記保持工程の後、前記溝および前記粘着テープで囲まれた空間を減圧する減圧工程と、前記減圧工程の後、前記頂点部に保持された前記半導体チップと予め定めた間隔をあけて配置された吸引手段によって、前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引工程と、を含むことを特徴とする。
【0028】
上述した発明によれば、粘着テープおよび溝で囲まれた密閉された空間(以下、密閉空間とする)を減圧したときに、粘着テープおよび第1溝で形成される空間での減圧損失が、粘着テープおよび第2溝で形成される空間での減圧損失よりも小さくなる。このため、粘着テープおよび溝で囲まれた密閉空間を減圧して半導体チップから粘着テープを剥離する際に、半導体チップの外周部側の粘着テープを、半導体チップの中央部側の粘着テープよりも早く剥離することができる。したがって、半導体チップの外周部側の粘着テープが剥離されるときに、半導体チップの中央部側を粘着テープに十分に密着させることができる。このため、半導体チップの外周部側から粘着テープが剥離されるタイミングにばらつきが生じたとしても、半導体チップが保持ステージに対して傾いた状態となることを回避することができる。
【0029】
さらに、その後、半導体チップの中央部側の粘着テープが剥離されるときには、すでに半導体チップの外周部側の粘着テープが剥離されている。このため、半導体チップを保持ステージに対して平行に保持した状態で、半導体チップの中央部側の粘着テープを剥離することができる。これにより、半導体チップ裏面の表面粗さや、裏面電極の有無、粘着テープの剛性によらず、半導体チップを保持ステージに対して平行に保持した状態で、半導体チップから粘着テープを確実に剥離することができる。
【0030】
また、粘着テープおよび溝で囲まれた密閉空間が減圧された後、半導体チップおよび粘着テープは、保持ステージの溝の開口部側の端部によって形成された頂点部に対応する部分で点接触した状態となり、半導体チップから粘着テープがほぼ剥離された状態となる。このため、半導体チップと粘着テープとの密着力をほぼゼロとすることができる。したがって、例えば、従来のようにニードルなどによって半導体チップを突き上げる処理を行うことなく、半導体チップから粘着テープを剥離することができる。
【0031】
さらに、半導体チップと粘着テープとの密着力をほぼゼロとすることができるので、吸引手段を半導体チップに押し付けることなく、吸引手段と半導体チップとの間を予め定めた間隔をあけた状態で、保持ステージから半導体チップをピックアップすることができる。また、半導体チップと粘着テープとの密着力をほぼゼロとすることができるので、半導体チップの一部が粘着テープに貼り付いたまま剥離されない状態となることはない。このため、吸引手段の吸引力によって半導体チップを確実に取り上げる(ピックアップする)ことができる。
【0032】
このように、吸引手段を半導体チップに押し付けずに、かつ半導体チップを保持ステージに対して傾かせることなく、保持ステージ上の半導体チップをピックアップすることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明にかかる半導体装置の製造装置および半導体装置の製造方法によれば、粘着テープからの剥離時における半導体チップの欠けや傷を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置で処理される半導体ウエハを示す平面図である。
【図2】図1に示す半導体ウエハのダイシング後の状態を示す平面図である。
【図3】実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す断面図である。
【図4】実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す平面図である。
【図5】実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す平面図である。
【図6】実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す平面図である。
【図7】実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す鳥瞰図である。
【図8】実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置に保持された状態の半導体チップを示す断面図である。
【図9】実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置の動作について順に示す断面図である。
【図10】実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置の動作について順に示す断面図である。
【図11】実施の形態2にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す断面図である。
【図12】実施の形態2にかかる半導体装置の製造装置に保持された状態の半導体チップを示す断面図である。
【図13】従来の半導体装置の製造装置の保持ステージに保持された半導体チップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の製造装置および半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0036】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置で処理される半導体ウエハを示す平面図である。図2は、図1に示す半導体ウエハのダイシング後の状態を示す平面図である。実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置で処理される前の半導体ウエハ1について説明する。図1,2に示すように、半導体ウエハ1は、粘着テープ(ダイシングテープ)2を貼り付けられた状態でダイシングされ、デバイスの表面構造(電子回路)が形成された個々の半導体チップ1aに切断される。
【0037】
具体的には、例えば、次のように半導体ウエハ1をダイシングして個々の半導体チップ1aに切断する。まず、図1に示すように、半導体チップの形成領域1bごとに、半導体ウエハ1のおもて面側にデバイスの表面構造を形成する。半導体チップの形成領域1bは、例えば等間隔に島状に配置されている。隣り合う半導体チップの形成領域1bの間には、ダイシングライン1c等の目印が形成されている。
【0038】
つぎに、半導体ウエハ1裏面のバックグラインドやシリコンエッチングを行い、半導体ウエハ1を所定の厚さになるまで薄化する。このとき、半導体ウエハ1は、裏面が平坦なウエハであってもよいし、裏面側の外周部(リブ部)を残したリブウエハとしてもよい。つぎに、薄化された半導体ウエハ1の裏面側に粘着テープ2を貼り付ける。つぎに、粘着テープ2の半導体ウエハ1側の面にダイシングフレーム3を貼り付けることで、ダイシングフレーム3に半導体ウエハ1を固定する。
【0039】
つぎに、半導体ウエハ1のおもて面側からダイシングライン1cに沿って半導体ウエハ1をダイシングする。このとき、ダイシングによる切れ込みが粘着テープ2を貫通しないようにダイシングを行う。これにより、図2に示すように、半導体ウエハ1は、個々の半導体チップ1aに切断される。半導体チップ1aは、粘着テープ2に貼り付いているため、実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置によって粘着テープ2からピックアップされ個々の半導体チップ1aに分離される。すなわち、実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置は、粘着テープ2に貼り付いた半導体チップ1aを粘着テープ2からピックアップするピックアップ装置である。
【0040】
つぎに、実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置でピックアップする半導体チップ1aの好適な条件について説明する。半導体チップ1aは、矩形状の平面形状を有する。半導体チップ1aは、例えば、ほぼ正方形状の平面形状を有するのが好ましい。具体的には、半導体チップ1aの1つの頂点を共有する2辺の寸法比は、例えば0.75以上1.25以下(チップサイズの縦横比1±0.25以内)であるのが好ましい。その理由は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置によって半導体チップ1aをピックアップする際の、半導体チップ1aの欠けや傷の発生率をもっとも低減することができるからである。
【0041】
粘着テープ2は、ポリ塩化ビニル(PVC:Polyvinyl Chloride)からなる基材と、紫外線(UV:Ultra Violet)を照射することによって軟化する例えばアクリル系UV硬化型樹脂からなる粘着層と、で構成されるのが好ましい。基材の硬さは、例えば、5Mpa以上15Mpa以下であってもよい。基材の弾性率は、例えば、100MPa以上300Mpa以下であってもよい。UV照射前の粘着層の粘着力は、例えば、3N/20mmであってもよい。UV照射後の粘着層の粘着力は、例えば、0.05N/20mm以上0.2N/20mm以下であってもよい。
【0042】
粘着テープ2をPVCからなる基材で構成することによって、例えば、リブウエハ裏面の中央部とリブ部とによって形成される段差部など、半導体ウエハ1の表面に生じた段差部分への粘着テープ2の貼り込み性を高くすることができる。さらに、粘着テープ2をPVCからなる基材で構成することによって、粘着テープ2を加熱して軟化させることができる。これにより、実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置によって、半導体チップ1aから粘着テープ2を容易に剥離することができる。実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置の動作については後述する。
【0043】
また、粘着テープ2をUV硬化型樹脂からなる粘着層で構成することによって、UVを照射して粘着層の粘着力を低下させることができる。このため、半導体チップ1aから粘着テープ2を剥離するときに、半導体チップ1aの一部が粘着テープ2に貼り付いたままの状態となることを回避することができる。これにより、コレット(吸引手段)によって保持ステージ11上の半導体チップ1aを吸引してピックアップする際に、半導体チップ1aが傾いた状態になることを回避することができる。さらに、粘着テープ2をUV硬化型樹脂からなる粘着層で構成することによって、UVを照射して粘着層の粘着力を低下させることができる。このため、半導体チップ1aをピックアップする際に、小さい吸引力で半導体チップ1aをピックアップすることができる。
【0044】
つぎに、実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置(以下、ピックアップ装置とする)の構成について説明する。図3は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す断面図である。図4〜6は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す平面図である。図7は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す鳥瞰図である。また、図8は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置に保持された状態の半導体チップを示す断面図である。図3には、ピックアップ装置10の保持ステージ11の断面図を示す。図4には、ピックアップ装置10の保持ステージ11の平面図を示す。図5には、図4に示す保持ステージ11の一部分11aの拡大図を示す。図6には、半導体チップ1aが保持されたときの、図4に示す保持ステージ11の一部分11aの拡大図を示す。図7には、保持ステージ11の半導体チップ1aを保持する側の表面(以下、上面とする)を模式的に示す。図8には、図3に示すピックアップ装置10に半導体チップ1aが保持された状態を示す。
【0045】
図3,8に示すように、ピックアップ装置10は、半導体チップ1aの粘着テープ2が貼り付けられた側の面を保持ステージ11側にして半導体チップ1aを保持する保持ステージ11と、保持ステージ11の上面に半導体チップ1aが保持されたときに粘着テープ2および保持ステージ11に囲まれた空間14を減圧する減圧手段(不図示)と、保持ステージ11上の半導体チップ1aを吸引して取り上げる(ピックアップする)コレット(吸引手段:不図示)と、を備える。
【0046】
保持ステージ11は、保持ステージ11の上面に設けられた複数の溝と、溝に連結された少なくとも1つ以上の通気孔12と、保持ステージ11の側面に接して保持ステージ11を囲う外壁部13と、を有する。具体的には、保持ステージ11の溝は、第1溝21aと、第1溝21aよりも狭い幅を有する第2溝22aと、からなる。また、通気孔12は、溝の底部に連結され、保持ステージ11を貫通して減圧手段に連結されている。
【0047】
通気孔12を多く設けるほど、保持ステージ11の上面に粘着テープ2(不図示)が保持されたときに形成される粘着テープ2、第1溝21a、第2溝22aおよび外壁部13で囲まれた空間(密閉空間)14の空気を減圧手段によって減圧する際の吸引力が増大する。したがって、通気孔12を多く設けるほど好ましいが、通気孔12を多く設けるほどコストが増大する。このため、通気孔12は、1つの半導体チップ1aが保持される領域20に、少なくとも4箇所設けられていればよい。例えば、半導体チップ1aの各頂点近傍に対応する部分に配置された第1溝21aに連結する通気孔12をそれぞれ設けてもよい。通気孔12の直径は、例えば0.4mmであってもよい。
【0048】
減圧手段は、保持ステージ11の上面に粘着テープ2を介して半導体チップ1aが保持されたときに形成される粘着テープ2、第1溝21a、第2溝22aおよび外壁部13で囲まれた密閉空間14を減圧する。1つの半導体チップ1aが保持される領域20においては、粘着テープ2および第1溝21aで形成される第1空間14aと、粘着テープ2および第2溝22aで形成される第2空間14bとで密閉空間14が構成される。
【0049】
外壁部13は、その上面が保持ステージ11の上面と同じ高さとなるように設けられている。すなわち、外壁部13は、外壁部13の上面から保持ステージ11の上面にわたって平坦になるように設けられている。外壁部13の上面には、第1溝21aおよび第2溝22aは設けられていない。これにより、保持ステージ11に粘着テープ2を介して半導体チップ1aが保持されたときに、粘着テープ2、第1溝21a、第2溝22aおよび外壁部13で囲まれた密閉空間14が形成される。
【0050】
外壁部13の幅は、例えば、0.3mm以上3mm以下であってもよい。外壁部13を設けずに、保持ステージ11の外周部に第1溝21aおよび第2溝22aを設けない構成としてもよい。この場合、保持ステージ11の外周部の第1溝21aおよび第2溝22aを設けていない部分が外壁部13として機能し、粘着テープ2、第1溝21aおよび第2溝22aで囲まれた空間が密閉空間14となる。
【0051】
第1溝21aは、保持ステージ11上面に保持される半導体チップ1aの外周部に対応する位置に配置されている。すなわち、第1溝21aは、保持ステージ11の、1つの半導体チップ1aが保持される領域20の外周部(以下、第1溝配置領域とする)21に配置されている。具体的には、図4に示すように、第1溝配置領域21は、粘着テープ2に貼り付けられたすべての半導体チップ1aの外周部に対応する位置に配置されるため、格子状に配置される(図4の斜線部分)。また、図5,6に示すように、第1溝配置領域21は、保持ステージ11の上面に半導体チップ1aが保持されたときに、各半導体チップ1aの外周端部4辺が第1溝21a上に位置するように配置される。図4〜6では、第1溝21aおよび第2溝22aの図示を省略する。
【0052】
第2溝22aは、保持ステージ11上面に保持される半導体チップ1aの中央部に対応する位置に配置されている。すなわち、第2溝22aは、保持ステージ11の、1つの半導体チップ1aが保持される領域20の中央部(以下、第2溝配置領域とする)22に配置されている。具体的には、図4に示すように、第2溝配置領域22は、粘着テープ2に貼り付けられたすべての半導体チップ1aの中央部に対応する位置に配置されるため、格子状に配置された第1溝配置領域21に囲まれ、島状に配置される(図4の斜線部分で囲まれた白地部分)。
【0053】
したがって、保持ステージ11に半導体チップ1aが保持されたときには、図6に示すように、各第2溝配置領域22は、それぞれ1つの半導体チップ1aに覆われた状態となる。また、第1溝配置領域21の、第2溝配置領域22側の一部は、半導体チップ1aの外周部に覆われた状態となる(図6には、第1溝配置領域21および第2溝配置領域22の境界線を点線で示す)。このように、第1溝21aおよび第2溝22aは、粘着テープ2に格子状に貼り付いた半導体チップ1aのチップサイズおよび個数に合わせて交互に繰り返し配置される。
【0054】
第1溝21aは、第1溝配置領域21に複数設けられていてもよい。第2溝22aは、第2溝配置領域22に複数設けられていてもよい。例えば、保持ステージ11は、第1溝配置領21に第1溝21aを4本配置し、その隣の第2溝配置領域22に第2溝22aを7本配置した領域を交互に繰り返し設けた構成としてもよい。第1溝配置領域21に設けられる第1溝21aの本数、および第2溝配置領域22に設けられる第2溝22aの本数は、それぞれ1つの半導体チップ1aのチップサイズに合わせて決定される。
【0055】
また、第1溝21aおよび第2溝22aは、保持ステージ11の深さ方向に向かって徐々に幅が狭くなる断面形状を有する。具体的には、第1溝21aおよび第2溝22aは、開口部の幅が底部よりも広い三角形状の断面形状を有する。第1溝21aの開口部の幅t1は、例えば0.5mm以上3mm以下であってもよい。第2溝22aの開口部の幅t2は、第1溝21aの開口部の幅t1よりも狭い。第2溝22aの開口部の幅t2は、例えば、第1溝21aの開口部の幅t1の1/3または1/2程度の幅を有する。
【0056】
このため、粘着テープ2および第2溝22aで形成される第2空間14bの断面積は、粘着テープ2および第1溝21aで形成される第1空間14aの断面積よりも小さくなっている。これにより、密閉空間14が減圧手段によって減圧されたときに、第1空間14aでの圧力損失は、第2空間14bでの圧力損失よりも小さくなる。このため、第1空間14aでの減圧力は、第2空間14bでの減圧力よりも大きくなる。したがって、粘着テープ2の第1空間14aを形成する部分は、粘着テープ2の第2空間14bを形成する部分よりも早く変形して半導体チップ1aから剥離される。
【0057】
粘着テープ2および第1溝21aで形成される第1空間14aの断面積とは、第1溝21aの開口部の幅t1を底面部分とし、第1溝21aの深さを高さ部分とする逆三角形状の断面形状を有する第1溝21aの断面積である。粘着テープ2および第2溝22aで形成される第2空間14bの断面積とは、第2溝22aの開口部の幅t2を底面部分とし、第2溝22aの深さを高さ部分とする逆三角形状の断面形状を有する第2溝22aの断面形状の面積である。
【0058】
図7に示すように、保持ステージ11に設けられた複数の溝(第1溝21aおよび第2溝22a)の開口部側の端部によって、保持ステージ11に保持される半導体チップ1aが貼りついた粘着テープ2の裏面に点接触する頂点部が形成される。すなわち、この頂点部は、隣り合う溝の側壁で構成される円錐状または四角錐状の突起部23の頂点部である。保持ステージ11に保持された半導体チップ1aは、突起部23の頂点部のみで保持される。
【0059】
第1溝21aの側壁で構成される突起部23の頂点部間の距離は、第1溝21aの開口部の幅t1となる。第1溝21aの側壁と第2溝22aの側壁とで構成される突起部23の頂点部間の距離、および第2溝22aの側壁で構成される突起部23の頂点部間の距離は、第2溝22aの開口部の幅t2となる。保持ステージ11に保持された複数の半導体チップ1aは、それぞれ少なくとも4つの突起部23の頂点部で保持される。第1溝配置領域21および第2溝配置領域22における突起部23の寸法はそれぞれ異なるが、図7では図示を省略する。
【0060】
また、突起部23の頂点部の高さは等しくなっている。これにより、半導体チップ1aの粘着テープ2が貼り付けられた側の面を下にして保持ステージ11の上面に半導体チップ1aが保持されたときに、粘着テープ2、第1溝21aおよび第2溝22aに囲まれる密閉空間14が形成される。また、第1溝21aおよび第2溝22aは、例えば、保持ステージ11の上面から、保持ステージ11の上面に対して反対側の面に達しない深さで設けられている。第1溝21aおよび第2溝22aの深さは、第2空間14bの断面積を第1空間14aの断面積よりも小さくすることができればよく、それぞれ異なっていてもよい。
【0061】
コレットは、減圧手段によって密閉空間14が減圧された後に、半導体チップ1aを吸引して吸着し、保持ステージ11から半導体チップ1aをピックアップする。具体的には、コレットは、半導体チップ1aと粘着テープ2との接触部分が突起部23の頂点部に対応する部分のみになる、すなわち、第1,2溝21a,22aに対応する部分の粘着テープ2が半導体チップ1aの裏面から剥離するまで粘着テープ2が変形された後に、半導体チップ1aを吸引してピックアップする。
【0062】
また、コレットは、保持ステージ11に保持された半導体チップ1aと予め定めた間隔をあけて配置される。具体的には、コレットの半導体チップ1aを吸着する面と、保持ステージ11に保持された半導体チップ1aとの間隔(以下、コレットと半導体チップ1aとの間隔とする)hは、0.05mm以上0.5mm以下であるのが好ましい。その理由は、つぎに示すとおりである。
【0063】
コレットと半導体チップ1aとの間隔hを0.05mm以上とすることによって、半導体チップ1aにコレットが押し付けえられることがないため、半導体チップ1aの表面に形成された素子構造などに傷がつくことを防止することができる。さらに、コレットと半導体チップ1aとの間隔hを0.05mm以上とすることによって、半導体チップ1aから粘着テープ2が剥離されたときに半導体チップ1aに反りが生じていたとしても、半導体チップ1aがコレットに接触することを回避することができる。また、コレットと半導体チップ1aとの間隔hを0.5mm以下とすることによって、コレットの吸引力を、半導体チップ1aを吸引し吸着することができる程度に維持することができる。
【0064】
ピックアップ装置10は、粘着テープ2を加熱する加熱手段(不図示)を備えていてもよい。加熱手段によって粘着テープ2を加熱することにより、粘着テープ2が変形しやすくなる。具体的には、加熱手段は、例えば、粘着テープ2、第1溝21a、第2溝22aおよび外壁部13で囲まれた密閉空間14を加熱するヒーターであってもよい。
【0065】
ピックアップ装置10を構成する減圧手段、コレットおよび加熱手段の制御は、例えば、ピックアップ装置10におけるROM、RAM、磁気ディスク、光ディスクなどに記録されたプログラムやデータを用いて、CPUが所定のプログラムを実行することによって行われる。
【0066】
つぎに、ピックアップ装置10による半導体チップ1aのピックアップ方法について説明する。図9,10は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置の動作について順に示す断面図である。まず、図8に示すように、保持ステージ11の上面に、ダイシングフレームに固定された半導体チップ1a(図1参照)を、粘着テープ2が貼り付けられた側の面を下にして載置する。各半導体チップ1aは、粘着テープ2を介してそれぞれ突起部23の頂点部に保持された状態となる。これにより、粘着テープ2と保持ステージ11との間には、粘着テープ2、第1溝21a、第2溝22aおよび外壁部13で囲まれた密閉空間14が形成される。
【0067】
つぎに、減圧手段(不図示)によって通気孔12を介して密閉空間14を減圧する。これにより、半導体チップ1aに貼り付けられた粘着テープ2に負圧が生じる。上述したように、第1空間14aの幅は第2空間14bの幅よりも広く、第1空間14aの断面積は第2空間14bの断面積よりも大きくなっている。これにより、第1空間14aでは第2空間14bよりも減圧力が大きくなるので、図9(a)に示すように平坦な状態にある粘着テープ2の第1空間14aを形成する部分のみが、図9(b)に示すように第1溝21aの内壁に沿って変形する。粘着テープ2の第2空間14bを形成する部分は、まだ変形していない。
【0068】
すなわち、半導体チップ1aの外周部側からのみ粘着テープ2が剥離される。一方、半導体チップ1aの中央部側は、粘着テープ2に貼り付いた状態となる。このため、半導体チップ1aは、半導体チップ1aの中央部側で粘着テープ2と十分に密着されて保持ステージ11の上面に保持される。そして、減圧手段による密閉空間14の減圧を続けることによって、図10(a)に示すように粘着テープ2の、第2空間14bを形成する部分が第2溝22aの内壁に沿って変形する。これにより、半導体チップ1aおよび粘着テープ2は、突起部23の頂点部に対応する部分のみで接触した状態となる。このため、半導体チップ1aから粘着テープ2がほぼ剥離された状態となり、半導体チップ1aと粘着テープ2との密着力はほぼゼロとなる。
【0069】
また、減圧手段によって密閉空間14を減圧しつづけることによって、粘着テープ2は、第1溝21aおよび第2溝22aの内壁に接した状態で維持される。これにより、コレットによって半導体チップ1aをピックアップしたときに、半導体チップ1aから剥離した粘着テープ2が、半導体チップ1aとともにコレットによってピックアップされることはない。
【0070】
つぎに、図10(b)に示すように、突起部23の頂点部に保持された半導体チップ1aから予め定めた間隔hをあけて半導体チップ1aの上方に配置されたコレット31によって、半導体チップ1aを吸引して吸着し、保持ステージ11から半導体チップ1aをピックアップする。コレット31と半導体チップ1aとの間隔hは、0.05mm以上0.5mm以下であるのが好ましい。その理由は、上述したとおりである。これにより、ピックアップ装置10による半導体チップ1aのピックアップが完了する。
【0071】
ピックアップ装置10が加熱手段を備えている場合、加熱手段によって粘着テープ2を加熱しながら、減圧手段によって密閉空間14を減圧してもよい。加熱手段によって粘着テープ2を加熱することで、粘着テープ2は変形しやすくなる。このため、粘着テープ2は、第1溝21aおよび第2溝22aの内壁に沿って容易に変形し、半導体チップ1aから剥離される。
【0072】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、保持ステージ11の半導体チップ1aを保持する側の面(上面)に、第1溝21aおよび第2溝22aを設ける。これにより、粘着テープ、第1溝21aおよび第2溝22aで囲まれた密閉空間14を減圧手段によって減圧したときに、粘着テープ2および第1溝21aで形成される第1空間14aでの減圧損失が、粘着テープ2および第2溝22aで形成される第2空間14bでの減圧損失よりも小さくなる。このため、密閉空間14を減圧して半導体チップ1aから粘着テープ2を剥離する際に、半導体チップ1aの外周部側の粘着テープ2を、半導体チップ1aの中央部側の粘着テープ2よりも早く剥離することができる。したがって、半導体チップ1aの外周部側の粘着テープ2を剥離するときに、半導体チップ1aの中央部側を粘着テープ2に十分に密着させることができる。このため、半導体チップ1aの外周部側から粘着テープ2が剥離されるタイミングにばらつきが生じたとしても、半導体チップ1aが保持ステージ11に対して傾いた状態となることを回避することができる。
【0073】
さらに、その後、半導体チップ1aの中央部側の粘着テープ2が剥離されるときには、すでに半導体チップ1aの外周部側の粘着テープ2が剥離されている。このため、半導体チップ1aを保持ステージ11に対して平行に保持した状態で、半導体チップ1aの中央部側の粘着テープ2を剥離することができる。これにより、半導体チップ1a裏面の表面粗さや、裏面電極の有無、粘着テープの剛性によらず、半導体チップ1aを保持ステージ11に対して平行に保持した状態で、半導体チップ1aから粘着テープ2を確実に剥離することができる。
【0074】
また、粘着テープ2、第1溝21aおよび第2溝22aで囲まれた密閉空間14が減圧手段によって減圧された後、半導体チップ1aおよび粘着テープ2は、突起部23の頂点部に対応する部分で点接触した状態となり、半導体チップから粘着テープがほぼ剥離された状態となる。このため、半導体チップ1aと粘着テープ2との密着力をほぼゼロとすることができる。したがって、例えば、従来のようにニードルなどによって半導体チップ1aを突き上げる処理を行うことなく、半導体チップ1aから粘着テープ2を剥離することができる。
【0075】
さらに、半導体チップ1aと粘着テープ2との密着力をほぼゼロとすることができるので、コレット31を半導体チップ1aに押し付けることなく、コレット31と半導体チップ1aとの間を予め定めた間隔hをあけた状態で、保持ステージ11から半導体チップ1aをピックアップすることができる。また、半導体チップ1aと粘着テープ2との密着力をほぼゼロとすることができるので、半導体チップ1aの一部が粘着テープ2に貼り付いたままの状態となることはない。これにより、コレット31の吸引力によって半導体チップ1aを確実にピックアップすることができる。
【0076】
このように、コレット31を半導体チップ1aに押し付けずに、かつ半導体チップ1aを保持ステージ11に対して傾かせることなく、保持ステージ11上の半導体チップ1aをピックアップすることができる。このため、粘着テープ2からの剥離時における半導体チップ1aの欠けや傷を低減することができる。また、ピックアップ装置10によって、薄化された半導体チップ1aをピックアップすることが可能であり、薄化された半導体チップ1aを安全に搬送することができる。
【0077】
(実施の形態2)
図11は、実施の形態2にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す断面図である。また、図12は、実施の形態2にかかる半導体装置の製造装置に保持された状態の半導体チップを示す断面図である。実施の形態2にかかる半導体装置の製造装置(ピックアップ装置)40において、実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置と異なる点は、第1溝51aおよび第2溝52aの断面形状を矩形状とした点である。
【0078】
図11に示すように、ピックアップ装置40の保持ステージ11は、保持ステージ11の上面に設けられた第1溝51aおよび第2溝52aと、第1溝51aおよび第2溝52aに連結された少なくとも1つ以上の通気孔12と、保持ステージ11の側面に接して保持ステージ11を囲う外壁部13と、を有する。通気孔12は、例えば第1溝51aまたは第2溝52aの底部に連結されている。また、通気孔12は、保持ステージ11を貫通し、減圧手段に連結されている。
【0079】
第1溝51aおよび第2溝52aは、実施の形態1にかかるピックアップ装置の保持ステージに配置された第1溝および第2溝と同様に、第1溝配置領域51および第2溝配置領域52に配置されている。第1溝51aおよび第2溝52aは、略矩形状の断面形状を有する。第1溝51aの幅t3は、実施の形態1の第1溝の開口部の幅と同様である。第2溝52aの幅t4は、実施の形態1の第2溝の開口部の幅と同様である。
【0080】
このため、図12に示すように、粘着テープ2および第2溝52aで形成される第2空間44bの断面積は、粘着テープ2および第1溝51aで形成される第1空間44aの断面積よりも小さい。したがって、減圧手段によって粘着テープ2、第1溝51a、第2溝52aおよび外壁部13で囲まれた密閉空間44が減圧されたときに、第1空間44aでは、第2空間44bよりも減圧力が大きくなる。
【0081】
このため、実施の形態1と同様に、半導体チップ1aの外周部側の粘着テープ2は、半導体チップ1aの中央部側の粘着テープ2よりも早く剥離される。その後、減圧手段による密閉空間44の減圧が続けられることにより、半導体チップ1aの中央部側の粘着テープ2も剥離され、粘着テープ2は、第1溝51aおよび第2溝52aの内壁(側壁および底面)に沿って変形し、保持ステージ11の上面に保持される。
【0082】
保持ステージ11に設けられた複数の溝(第1溝51aおよび第2溝52a)の開口部側の端部によって、保持ステージ11に保持される半導体チップ1aが貼り付いた粘着テープ2の裏面に点接触する頂点部が形成される。すなわち、この頂点部は、隣り合う溝の側壁で構成される四角柱状の突起部53の頂点部である。保持ステージ11に保持された半導体チップ1aは、突起部53の頂点部のみで保持される。突起部53は、突起部53の頂点部と半導体チップ1aとの接触面積が少なくなるように形成される。
【0083】
第1溝51aの側壁で構成される突起部53の頂点部間の距離は、第5溝51aの開口部の幅t3となる。第1溝51aの側壁と第2溝52aの側壁とで構成される突起部53の頂点部間の距離、および第2溝52aの側壁で構成される突起部53の頂点部間の距離は、第2溝52aの開口部の幅t4となる。
【0084】
保持ステージ11に保持された複数の半導体チップ1aは、それぞれ少なくとも4つの突起部53の頂点部で保持される。ピックアップ装置40の第1溝51aおよび第2溝52a以外の構成は、実施の形態1にかかるピックアップ装置の構成と同様である。また、ピックアップ装置40による半導体チップ1aのピックアップ方法は、実施の形態1にかかるピックアップ装置と同様である。
【0085】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1にかかる半導体装置の製造装置(ピックアップ装置)および半導体装置の製造方法(ピックアップ方法)と同様の効果を得ることができる。
【0086】
以上において本発明では、保持ステージに第1,2溝を設けた構成を例に説明しているが、上述した実施の形態に限らず、保持ステージに第1,2溝と異なる幅を有する溝をさらに増やした構成としてもよい。具体的には、例えば、上述した実施の形態と同様に保持ステージに第1,2溝を設け、さらに、保持ステージに保持される半導体チップの中央部に対応する位置の、第2溝よりも半導体チップの中心側に、第2溝よりも狭い幅を有する第3溝を配置してもよい。すなわち、保持ステージに保持される半導体チップの外周部に対応する位置に最も幅の広い溝を設け、保持ステージに保持される半導体チップの外周部に対応する位置から半導体チップの中心に対応する位置にかけて、溝の幅が狭くなるように異なる幅を有する複数の溝を配置してもよい。また、本発明は、薄化された半導体ウエハの裏面に粘着テープを貼り付ける前に、半導体ウエハの裏面側に裏面電極などを形成した場合においても同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明にかかる半導体装置の製造装置および半導体装置の製造方法は、ダイシングカットされた半導体チップを粘着テープからピックアップして個々の半導体チップに分離する際に有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 半導体ウエハ
1a 半導体チップ
2 粘着テープ
3 ダイシングフレーム
10 ピックアップ装置
11 保持ステージ
12 通気孔
13 外壁部
14 密閉空間
14a,14b 空間(第1,2)
20 1つの半導体チップが保持される領域
21a,22a 溝(第1,2)
23 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングによって切断された半導体チップを粘着テープから取り上げる半導体装置の製造装置であって、
前記半導体チップを保持する面に設けられた複数の溝、および前記溝に連結された少なくとも1つの通気孔を有する保持ステージと、
前記溝のうち、前記保持ステージに保持される前記半導体チップの外周部に対応する位置に配置された第1溝と、
前記溝のうち、前記第1溝よりも狭い幅を有し、前記保持ステージに保持される前記半導体チップの中央部に対応する位置に配置された第2溝と、
前記溝の開口部側の端部によって形成され、前記保持ステージに保持される前記半導体チップに点接触する頂点部と、
前記半導体チップの前記粘着テープが貼り付けられた側の面を前記保持ステージ側にして前記頂点部に前記半導体チップが保持された後に、前記通気孔を介して前記溝および前記粘着テープで囲まれた空間を減圧する減圧手段と、
前記減圧手段によって前記空間が減圧された後に、前記頂点部に保持された前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引手段と、
を備えることを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項2】
ダイシングによって切断された半導体チップを粘着テープから取り上げる半導体装置の製造装置であって、
前記半導体チップを保持する側の面に設けられた複数の溝、および前記溝に連結された少なくとも1つの通気孔を有する保持ステージと、
前記溝の開口部側の端部によって形成され、前記保持ステージに保持される前記半導体チップに点接触する頂点部と、
前記半導体チップの前記粘着テープが貼り付けられた側の面を前記保持ステージ側にして前記頂点部に前記半導体チップが保持された後に、前記通気孔を介して前記溝および前記粘着テープで囲まれた空間を減圧する減圧手段と、
前記頂点部に保持された前記半導体チップと予め定めた間隔をあけて配置され、前記減圧手段によって前記空間が減圧された後に、前記頂点部に保持された前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引手段と、
を備えることを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項3】
前記減圧手段は、前記半導体チップに貼り付けられた前記粘着テープを前記溝の内壁に沿うように変形させることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項4】
前記減圧手段は、前記半導体チップと前記粘着テープとの接触部分が前記頂点部に対応する部分のみになるまで前記空間を減圧することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体装置の製造装置。
【請求項5】
前記保持ステージの側面に接して前記保持ステージを囲う外壁部をさらに備え、
前記外壁部の前記半導体チップが保持される側の面は、前記保持ステージの前記半導体チップが保持される側の面と同じ高さとなっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の半導体装置の製造装置。
【請求項6】
前記頂点部は、隣り合う前記溝の側壁で構成される円錐状、四角錐状または四角柱状の突起部の頂点部からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の半導体装置の製造装置。
【請求項7】
前記半導体チップの1つの頂点を共有する2辺の寸法比は、0.75以上1.25以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の半導体装置の製造装置。
【請求項8】
前記通気孔は、前記保持ステージの1つの前記半導体チップが保持される領域に、少なくとも4箇所設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の半導体装置の製造装置。
【請求項9】
前記吸引手段は、前記頂点部に保持された前記半導体チップと0.05mm以上0.5mm以下の間隔をあけて配置されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の半導体装置の製造装置。
【請求項10】
ダイシングによって切断された半導体チップを粘着テープから取り上げる半導体装置の製造方法であって、
保持ステージに設けられた溝の開口部側の端部によって形成され、かつ前記保持ステージに保持される前記半導体チップに点接触する頂点部に、前記粘着テープが貼り付けられた側の面を前記保持ステージ側にして前記半導体チップを保持する保持工程と、
前記保持工程の後、前記半導体チップの外周部に対応する位置に配置された第1溝と、前記第1溝よりも狭い幅を有し、前記保持ステージの前記半導体チップの中央部に対応する位置に配置された第2溝とからなる前記溝、および前記粘着テープで囲まれた空間を減圧する減圧工程と、
前記減圧工程の後、前記頂点部に保持された前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
ダイシングによって切断された半導体チップを粘着テープから取り上げる半導体装置の製造方法であって、
保持ステージに設けられた溝の開口部側の端部によって形成され、かつ前記保持ステージに保持される前記半導体チップに点接触する頂点部に、前記粘着テープが貼り付けられた側の面を前記保持ステージ側にして前記半導体チップを保持する保持工程と、
前記保持工程の後、前記溝および前記粘着テープで囲まれた空間を減圧する減圧工程と、
前記減圧工程の後、前記頂点部に保持された前記半導体チップと予め定めた間隔をあけて配置された吸引手段によって、前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−4697(P2013−4697A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133710(P2011−133710)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】