説明

半導体装置製造方法

【課題】融点の低い材料で形成された構造体を使用することを可能とし、またその構造体が封止された空間を高真空にすることができるとともに構造体に封止部材が成膜されない半導体装置製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板1上に形成された可動の構造体3を犠牲膜で覆い、その犠牲膜をシリコン酸化膜5で覆い、さらにそのシリコン酸化膜5に貫通孔を形成する。そして、その貫通孔を介して犠牲膜を除去して可動の構造体3とシリコン酸化膜5との間に空間を形成し、シリコン酸化膜5に流動性の高いアルミニウムまたはアルミニウム合金をスパッタ法により成膜して貫通孔を封止するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動子等の機械要素部品、センサ、アクチュエータ、電子回路等をひとつの基板上に集積したMEMS(Micro Electric Mechanical System:微小電気機械素子)デバイス等の半導体装置製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置製造方法は、基板上に配置された構造体(機械要素部品)である振動子の周囲に成膜された犠牲膜を除去した後、その振動子の上部をCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法)による酸化膜を成膜することにより封止しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】米国特許第5188983号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の技術においては、CVDで封止する場合、550℃以上といった高温を用いることになるため、この封止工程以前の構造は高温に耐えうるものにしなければならず、アルミニウム等の融点の低いものを用いることができないという問題がある。
また、封止された中空部分は高真空であることが望ましいところ、CVDを用いた場合は高真空を達成することが困難であるという問題がある。
【0004】
さらに、CVDで封止する場合、中空の内部の振動子の周囲にも成膜されてしまうため(特許文献1:Fig.14)、振動子の特性が変動してしまう可能性があるという問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため、本発明は、半導体基板上に形成された可動の構造体を犠牲膜で覆う工程と、前記犠牲膜を第1の封止部材で覆う工程と、前記第1の封止部材に貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔を介して前記犠牲膜を除去し、前記構造体と前記第1の封止部材との間に空間を形成する工程と、前記第1の封止部材に流動性の高い第2の封止部材をスパッタ法により成膜して前記貫通孔を封止する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
このようにした本発明は、封止される構造体に高温がかかることがなくなり、融点の低い材料で形成された構造体を使用することができるようになるという効果が得られる。
また、封止された空間を高真空にすることができるという効果が得られる。
さらに、構造体に封止部材が成膜されることがなくなり、構造体の特性を変動させることがなくなるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明による半導体装置製造方法の実施例を説明する。
【実施例】
【0008】
図1は実施例における構造体を封止した半導体装置の断面図である。
図1において、1は半導体基板であり、図示しないトランジスタや多層配線を有するものである。
2は電極であり、ポリシリコンやシリコンゲルマニウム(SiGe)等で半導体基板1上に形成されたものである。
【0009】
3は可動の構造体であり、片持ち梁構造または両持ち梁構造等で半導体基板1上に形成されたものである。この可動の構造体3は、例えば振動子であり、高さは1〜5μm程度のものである。
なお、本発明において、電極2および可動の構造体3の形状等は特に限定されるものでなく、どのような形状等であってもよい適宜選択可能なものとする。
【0010】
5は第1の封止部材、7はTiN(窒化チタニウム)層、また、8は第2の封止部材であり、半導体基板1上に形成された電極2および可動の構造体3を覆うように形成され、半導体基板1との間に形成される空間に電極2および可動の構造体3を封止するものである。
第1の封止部材5は半導体基板1との間に空間を形成するために貫通孔が設けられ、第2の封止部材8はその貫通孔を塞いで半導体基板1との間に形成された空間に電極2および可動の構造体3を封止する。
【0011】
この第1の封止部材5は、例えばシリコン酸化膜、第2の封止部材8は、フロー性(流動性)の高い材料、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成するものとする。
9はシリコン窒化膜であり、半導体基板1と間で空間を形成する第1の封止部材5および第2の封止部材8を覆うように成膜するものである。
このように本発明による半導体装置は、半導体基板1上に形成された電極2および可動の構造体3を覆うように形成された第1の封止部材5および第2の封止部材8と半導体基板1との間に空間、すなわち中空領域を形成している。
【0012】
次に、図2の実施例における半導体装置製造方法の工程毎の断面図(a)〜(i)に基づいて半導体装置製造方法を説明する。
まず、図2(a)に示すように、半導体基板1上に電極2および片持ち梁構造もしくは両持ち梁構造で可動の構造体3が形成されているものとする。
ここで、梁構造の可動の構造体3を形成するために犠牲層4として、例えばゲルマニウム(Ge)層を用いるものとする。
【0013】
次に、図2(b)に示すように、半導体基板1上に形成された電極2および可動の構造体3を覆うようにゲルマニウム(Ge)層等の犠牲膜4をLP−CVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法等により成膜する。この犠牲膜4は、例えば1.0μm程度に成膜するものとする。
犠牲膜4を成膜すると図2(c)に示すように、その犠牲膜4の一部をフォトリソグラフィーおよびエッチングにより加工して真空で封止すべき領域を残し、その他の領域の犠牲膜4を除去する。
【0014】
真空で封止すべき領域の犠牲膜4を残すように形成すると図2(d)に示すように、その犠牲膜4を覆うようにシリコン酸化膜等の第1の封止部材5をプラズマCVD法等で成膜する。この第1の封止部材5は、例えば0.7μm程度の厚さに成膜するものとする。
第1の封止部材5を成膜すると図2(e)に示すように、その第1の封止部材5を貫通する孔であり、犠牲層4を除去するための貫通孔6をフォトリソグラフィーおよびエッチングにより形成する。この貫通孔6の直径は、例えば0.5μm程度になるように形成するものとする。
【0015】
ここで、貫通孔6の配置例を図3の実施例における半導体装置の平面図に基づいて説明する。
図3(a)は電極2および可動の構造体3の配置例を示している。図3(a)が示すように半導体基板1上に配置された可動の構造体3の両側にそれぞれ電極2が配置され、さらに櫛の歯状に延びた可動の構造体3を挟むように電極2が突出して配置されている。このように配置された櫛の歯状に延びた可動の構造体3とその可動の構造体3を挟むように突出した電極2との隙間にはスリット部21が形成される。
【0016】
図3(b)は成膜された第1の封止部材5に形成された貫通孔6の配置例を示し、貫通孔6は真空で封止する空間である中空領域23(図2(c)における犠牲層4を残した領域)の上方であり、可動の構造体3およびスリット部21の直上を避けた第1の封止部材5、すなわち可動の構造体3が配置された領域以外の領域に近接した第1の封止部材5に配置する。
【0017】
図2の説明に戻り、第1の封止部材5に貫通孔6を形成すると図2(f)に示すように、貫通孔6を介して犠牲膜4を除去し、可動の構造体3と第1の封止部材5との間に中空領域23を形成する。例えば、半導体基板1を過酸化水素水(H)に浸漬し、犠牲膜4であるGe膜を溶解し、除去する。その後、十分に洗浄し、乾燥させて中空領域23を形成する。
【0018】
犠牲膜4を除去すると図2(g)に示すように、スパッタ法により第1の封止部材5上にTiN膜7、またはTi膜もしくはこれらの積層膜を成膜する。このTiN膜7は、例えば100nm程度の厚さに成膜するものとする。
TiN膜7を成膜するとさらにそのTiN膜7上に第2の封止部材8(アルミニウム(Al)またはアルミニウム(Al)合金(以下、「アルミニウム等」という。))をスパッタ法により成膜する。この第2の封止部材8は、例えば700nm程度の厚さに成膜するものとする。
【0019】
なお、このTiN膜7および第2の封止部材8の成膜は、例えばマルチチャンバ装置等を使用し、真空チャンバ内でTiN膜7を成膜した後、その真空状態を保ったまま、さらに他の真空チャンバへ搬送し、連続して第2の封止部材8の成膜を行うものとする。
また、第2の封止部材8のスパッタはアルゴン(Ar)圧2mTorr前後、温度は300〜500℃程度で行うものとする。
【0020】
さらに、図2(g)に示す22は、貫通孔6を通過して中空領域内23に成膜されたTiN膜7および第2の封止部材8であるが、その貫通孔6を可動の構造体3の可動部分およびスリット部21の直上を避けて配置したことにより可動の構造体3上には成膜されない。
ここで、第2の封止部材8を成膜するときの貫通孔6の形状の変化を図4の実施例における封止される貫通孔の断面図に基づいて説明する。
【0021】
まず、図4(a)に示すように、スパッタ法によりTiN膜7が第1の封止部材5に成膜されると第1の封止部材5の上側および貫通孔6の内側にTiN膜7が形成される。第1の封止部材5の上側に成膜されたTiN膜7は略一様の厚さに成膜され、一方貫通孔6の内側に成膜されたTiN膜7は貫通孔6の中空領域23側から開口部31側に向けて徐々に厚く成膜される。これはスパッタ法によるTiN膜7の堆積が貫通孔6の開口部31側で多くなるためである。
【0022】
次に、スパッタ法により第2の封止部材8を成膜すると図4(b)に示すように、第2の封止部材8は第1の封止部材5の上側に成膜されたTiN膜7および貫通孔6に成膜されたTiN膜7の外側に成膜される。このとき、貫通孔6の開口部31の近傍は第2の封止部材8が開口部31の中心に向かって成長するため、その開口部31は徐々に小さくなっていく。
【0023】
さらに、スパッタリングを継続して第2の封止部材8を成膜すると図4(c)に示すように、貫通孔6の開口部31に成長する第2の封止部材8により貫通孔6は閉口する。このようにアルミニウム等の第2の封止部材8が成長し、貫通孔6を閉口させると300〜500℃の範囲で行うアルミニウム等のスパッタでは、そのアルミニウム等はフロー性を有し、かつ自らの表面張力により凝集するため、貫通孔6が閉口したときに貫通孔6の内側に成膜されているアルミニウム等を吸い上げて貫通孔6を封止することが可能になる。
【0024】
貫通孔6を封止すると図4(d)に示すように、さらに貫通孔6の内側に成膜されているアルミニウム等を吸い上げるとともに中空領域23の反対側の表面は平坦になる。
図2の説明に戻り、TiN膜7上に第2の封止部材8を成膜すると図2(h)に示すように、第2の封止部材8の不要な部分をフォトリソグラフィーおよびエッチングにより除去する。
【0025】
ここで、第2の封止部材8をアルミニウム等とした場合、その熱膨張係数が高く温度の変化等で応力が発生することがあるため、封止する領域が数十μm以上と広い場合は、図2(h)に示すように貫通孔6およびその外周部の上方のアルミニウム等だけを残すようにし、金属膜による応力の影響を最小限に抑えることが望ましい。
第2の封止部材8の不要な部分を除去すると図2(i)に示すようにプラズマCVD法等によりシリコン窒化膜9を第2の封止部材8上に成膜して封止を完了する。第1の封止部材のシリコン酸化膜に吸湿性があるため、シリコン窒化膜9を形成することにより真空の維持をより確実にするためである。
【0026】
このように真空封止された中空領域23はスパッタ中のAr分圧である2mTorr以下にすることが可能になる。例えば、400℃でアルミニウム等のスパッタを行い室温に冷却した際、中空領域23の真空度は0.9mTorrにすることが可能になる。
また、スパッタ法によりTiN膜7および第2の封止部材8を成膜するとき、そのTiN膜7等の一部が貫通孔6を通過して半導体基板1上に成膜されるが、可動の構造体3およびスリット部21の上方には貫通孔6を形成しないようにしているため、可動の構造体3にTiN膜7等は付着することがなく、可動の構造体3の動作に影響を与えることはない。
【0027】
なお、本実施例では、犠牲膜4をゲルマニウムとして説明したが、タングステンとしてもよい。犠牲膜4をタングステンとした場合、本実施例と同様に過酸化水素水で除去することができる。
また、犠牲膜4をシリコン酸化膜にすることも可能であり、その場合は第1の封止部材5にシリコン窒化膜、ポリシリコン膜、シリコンゲルマニウム膜等を用い、さらに弗酸でシリコン酸化膜を除去するようにしてもよい。
【0028】
また、第1の封止部材5をシリコン酸化膜(下)/シリコン窒化膜(上)の積層構造にすることにより真空維持を確実にし、かつTiまたはTiN膜7との密着性も十分確保することが可能になる。
以上説明したように、本実施例では、アルミニウム等の封止部材をスパッタ法により成膜して貫通孔を塞いで封止するようにしたため、封止される構造体に高温がかかることがなくなり、融点の低い材料で形成された構造体を使用することができるようになるという効果が得られる。
【0029】
また、アルミニウム等の封止部材をスパッタ法により成膜するようにしたため、封止された中空領域を高真空にすることができるとともにその高真空の状態を長期間にわたり維持することができ、構造体の特性を変動させることがなくなるという効果が得られる。
さらに、スパッタ法により成膜するようにしたこと、および構造体の直上に貫通孔を形成しないようにしたため、構造体に封止部材が成膜されることがなくなり、構造体の特性を変動させることがなくなるという効果が得られる。
【0030】
さらに、TiやAlのような金属材料は酸素や水分などをゲッタリングする働きがあるため、ゲッター材等を封入しなくても良好な真空を維持することが可能になるという更なる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例における構造体を封止した半導体装置の断面図
【図2】実施例における半導体装置製造方法の工程毎の断面図
【図3】実施例における半導体装置の平面図
【図4】実施例における封止される貫通孔の断面図
【符号の説明】
【0032】
1 半導体基板
2 電極
3 可動の構造体
4 犠牲膜
5 第1の封止部材
6 貫通孔
7 TiN膜
8 第2の封止部材
9 シリコン窒化膜
21 スリット部
23 中空領域
31 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に形成された可動の構造体を犠牲膜で覆う工程と、
前記犠牲膜を第1の封止部材で覆う工程と、
前記第1の封止部材に貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔を介して前記犠牲膜を除去し、前記構造体と前記第1の封止部材との間に空間を形成する工程と、
前記第1の封止部材に流動性の高い第2の封止部材をスパッタ法により成膜して前記貫通孔を封止する工程とを有することを特徴とする半導体装置製造方法。
【請求項2】
請求項1の半導体装置製造方法において、
前記貫通孔を、前記可動の構造体が配置された領域以外の領域に近接した第1の封止部材に配置したことを特徴とする半導体装置製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2の半導体装置製造方法において、
前記貫通孔を、前記可動の構造体に隣接して配置された電極の上方に配置したことを特徴とする半導体装置製造方法。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3の半導体装置製造方法において、
前記貫通孔は、前記可動の構造体の上方に配置されないことを特徴とする半導体装置製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3または請求項4の半導体装置製造方法において、
前記第1の封止部材を、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、またはそれらの積層膜としたことを特徴とする半導体装置製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項4または請求項5の半導体装置製造方法において、
前記第2の封止部材を、アルミニウムまたはアルミニウム合金としたことを特徴とする半導体装置製造方法。
【請求項7】
請求項6の半導体装置製造方法において、
前記スパッタ法によるアルミニウムまたはアルミニウム合金の成膜は、300〜500℃の範囲で行うことを特徴とする半導体装置製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−188711(P2008−188711A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26045(P2007−26045)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】