説明

半導体装置

【課題】トランジスタのターンオフ時間を短くするため、トランジスタが組み込まれる外部回路で抵抗とダイオードを組み込むと、その抵抗やダイオードを組み込むスペースやその配線が回路基板などに確保される必要があり、電子機器の小形化の妨げになると共に、部品増および組立工数増などによるコストアップの原因になっている。
【解決手段】半導体基板に形成されるトランジスタのベース領域2と同時に形成されるダイオードのアノード領域4と、トランジスタのエミッタ領域3と同時に形成されるダイオードのカソード領域5とでダイオードを形成すると共に、導電体層6の一端とダイオードのアノード領域5が接続され、他の一端とダイオードのカソード領域4とが接続されている。トランジスタのベース領域2とカソード電極9との間に抵抗とダイオードを並列に接続することで、トランジスタのターンオフ時間を早くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランジスタのオンからオフさせるときのターンオフ時間を短くした半導体装置に関するものである。さらに詳しくは、トランジスタのベース側にダイオードと抵抗の並列回路を内蔵して、ターンオフ時間を短くする半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トランジスタを実質的にオンからオフさせる時間、すなわち蓄積時間tstgと上昇時間tfとの和で表されるターンオフ時間は、トランジスタの構造上避けることができず、高速のスイッチング速度を必要とする場合には、図6に示されるように、トランジスタQ1が組み込まれる回路に外付けでベース側に抵抗R1とダイオードD1を並列に接続することにより、ベース電流の立下り(オフ時)に電流を流してターンオフ時間の短縮化が図られている。スイッチング時間はトランジスタと回路構成により異なり、この抵抗R1とダイオードD1はトランジスタが組み込まれる回路に応じて、適正な組み合わせになるようにそれぞれ設定される。なお、Cはコレクタ、Eはエミッタをそれぞれ示す(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−87523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の構成では、トランジスタのターンオフ時間を短くするため、トランジスタが組み込まれる外部回路に抵抗とダイオードを組み込むと、その抵抗やダイオードを組み込むスペースやその配線を回路基板などに確保する必要があり、電子機器の小形化の妨げになると共に、部品の増加や組立工数の増加によるコストアップの原因となる。
【0004】
一方、トランジスタのターンオフ時間が問題となるのは、とくにスイッチング時間が高速を必要とする特殊な使用の場合であり、しかもそのトランジスタが組み込まれる回路にも依存するため、またトランジスタに抵抗およびダイオードを内蔵するとその抵抗やダイオードを製造するプロセスが新たに必要となり、トランジスタの製造プロセスも複雑になりコストアップになるため、抵抗とダイオードが内蔵されたトランジスタは作られていない。
【0005】
しかし、同じ製造工程で製造されるトランジスタはその特性も均一になり、そのトランジスタが組み込まれる回路も一定であれば、その回路に適用するように、抵抗値およびダイオードを設定することにより、その回路でほぼ一定のスイッチング速度のトランジスタが得られる。
【0006】
本発明は、前記問題に鑑み、一定の回路に適したターンオフ時間の短い特性を有しながら、従来の製造工程を利用して製造工程を複雑にすることなく、抵抗とダイオードを内蔵する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明による半導体装置は、第1導電型の半導体層からなるコレクタ領域と、前記コレクタ領域内に表面から形成される第2導電型のベース領域と、前記ベース領域内に表面から形成される第1導電型のエミッタ領域と、前記コレクタ領域内に表面から形成される第2導電型のアノード領域と、前記アノード領域内に表面から形成される第1導電型のカソード領域でなりえるダイオードと、絶縁膜を介して堆積して設けられる導電体層により形成される抵抗部とから構成される。
【0008】
かかる構成によれば、従来と同様の製造工程で、ターンオフ時間の短縮が図れる半導体装置が得られる。
【0009】
また、前記第1導電型および前記第2導電型の領域により形成される前記ダイオードと、前記導電体層により形成される前記抵抗部は、並列に接続されている。
【0010】
かかる構成によれば、ターンオフ時間の短縮が図れる半導体装置が得られる。
【0011】
また、前記導電体層は、ポリシリコン膜から形成される。
【0012】
かかる構成によれば、導電体層がポリシリコン膜で形成されることにより、抵抗値の制御を容易にすることができる。
【0013】
また、前記絶縁膜は、窒化ケイ素または酸化ケイ素から形成される。
【0014】
かかる構成によれば、効率よく、また安定して絶縁膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上詳述したように、本発明は組み込みスペース、回路基板、組立工数の増大もなく、トランジスタのベース側に抵抗とダイオードを並列接続することにより、ターンオフ時間の短縮を図ることができる優れた半導体装置を実現するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図3に示されるものは、本発明の等価回路図である。トランジスタQ2に抵抗R2、ダイオードD2を並列にベース側に接続し、内蔵したものである。
【0018】
図1は本発明の実施形態における半導体装置の断面を示した図である。また、図2は本発明の実施形態における半導体装置の平面を示した図である。
【0019】
第1導電形、たとえばN形の半導体基板からなるコレクタ領域1と、コレクタ領域1内に表面から形成される第2導電形、たとえばP形のベース領域2と、ベース領域2内に表面から形成される第1導電形、たとえばN形のエミッタ領域3とからトランジスタの各半導体領域が形成される。
【0020】
また、第2導電形、たとえばP形のアノード領域4とアノード領域内に表面から形成される第1導電形、たとえばN形のカソード領域5から、ダイオードの各半導体領域が形成される。その表面にたとえばチッ化ケイ素や酸化ケイ素からなる絶縁膜11が設けられ、ポリシリコン膜などからなる導電体層6が積層される。
【0021】
エミッタ領域3およびベース領域2とアノード領域4およびカソード領域5の表面の絶縁膜の一部が除去され電気的に接続してベース電極7およびエミッタ電極8とカソード電極9が設けられる。アノード領域4とベース領域2との電極は分離されず電気的に接続されている。
【0022】
また、ポリシリコン膜などからなる導電体層6の一端はベース電極7に、他の一端はカソード電極9に接続されており、コレクタ領域1となる半導体基板の裏面にコレクタ電極10が形成される。
【0023】
具体的な構造について図4の製造工程図を参照しながら説明する。
【0024】
まず、図4(a)に示されるように、たとえばN形半導体基板からなるコレクタ領域1の表面からP形不純物を拡散してP形拡散領域からなるベース領域2およびダイオードのアノード領域4を同時に形成する。
【0025】
次に、図4(b)に示されるように、半導体基板の表面にレジストマスク(図示しない)を形成してN形不純物を拡散してN形領域からなるエミッタ領域3およびダイオードのカソード領域5を同時に形成する。
【0026】
次に、図4(c)に示されるように、全面にCVD法などによりSiO2 、Si34 などの絶縁膜11を形成する。
【0027】
次に、図4(d)に示されるように、その表面にポリシリコン膜をCVD法などにより成膜し、レジストマスク(図示しない)により覆われずに露出しているポリシリコン膜をエッチングすることによりパターニングし、導電体層6を形成する。ポリシリコン膜は、0.1〜1μm程度の厚さで、比抵抗がたとえば10〜50Ω・cmになるように成膜する。このポリシリコン膜は、その導入される不純物濃度および堆積される厚さによりその抵抗値を任意に設定することができる。
【0028】
次に、図4(e)に示されるように、レジストマスク12によりエミッタ領域3、ベース領域2、アノード領域4、カソード領域5の表面の絶縁膜をエッチングする。
【0029】
次に、図4(f)に示されるように、レジストマスク12を除去すると、コンタクト領域が露出される。
【0030】
次に、図5(g)に示されるように、全面にたとえばAlを蒸着する。
【0031】
次に、図5(h)に示されるように、レジストマスク13により覆われずに露出しているAlをエッチングする。
【0032】
次に、図5(i)に示されるように、ベース電極7、エミッタ電極8、カソード電極9を形成する。ベース電極7はダイオードのアノード領域4とも接続されている。このとき、ポリシリコンにより形成された抵抗体6の一端はアノード電極と接合し、他の一端をカソード電極と接合させる。
【0033】
次に、図5(j)に示されるように、半導体基板(コレクタ領域1)の裏面にたとえばAuの金属膜をコレクタ電極10として形成する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の半導体装置は、高速のスイッチング速度を必要とする電子回路に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の半導体装置の実施形態における断面図
【図2】本発明の半導体装置の実施形態における平面図
【図3】本発明の半導体装置の等価回路図
【図4】本発明の半導体装置の製造工程を示す図
【図5】本発明の半導体装置の製造工程を示す図
【図6】従来の半導体装置の等価回路図
【符号の説明】
【0036】
1 コレクタ領域
2 ベース領域
3 エミッタ領域
4 アノード領域
5 カソード領域
6 導電体層
7 ベース電極
8 エミッタ電極
9 カソード電極
10 コレクタ電極
11 絶縁膜
12、13 レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体層からなるコレクタ領域と、前記コレクタ領域内に表面から形成される第2導電型のベース領域と、前記ベース領域内に表面から形成される第1導電型のエミッタ領域と、前記コレクタ領域内に表面から形成される第2導電型のアノード領域と、前記アノード領域内に表面から形成される第1導電型のカソード領域でなりえるダイオードと、絶縁膜を介して堆積して設けられる導電体層により形成される抵抗部とから構成されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1導電型および前記第2導電型の領域により形成される前記ダイオードと、前記導電体層により形成される前記抵抗部は、並列に接続されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記導電体層は、ポリシリコン膜からなることを特徴とする請求項1乃至2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記絶縁膜は、窒化ケイ素または酸化ケイ素からなることを特徴とする請求項1乃至3記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−108543(P2006−108543A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295947(P2004−295947)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】