説明

半導体装置

【課題】
FLR構造を有する半導体装置において、特性変動のばらつきの小さい半導体装置を提供する。
【解決手段】
半導体基板7に形成されたNベース領域9と、半導体基板7の第1主面側において、半導体基板7に形成されたPウェル領域P(0)と、半導体基板7の第1主面側において、Pウェル領域を囲むように形成された複数のPリング領域P(1)〜P(n)と、半導体基板7の第1主面側において、Pリング領域を囲むように形成されたNストッパ領域SRと、半導体基板の第1主面の上において、隣り合うPリング領域の間に設けられた(酸化膜2と、酸化膜2の上に配置されたポリシリコン3と、Pリング領域及びポリシリコン3に電気的接続されるように配置されたアルミニウム4と、半導体基板7の第1主面とは反対側の第2主面に設けられた電極11、とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に係り、特に、IGBT等の高耐圧半導体装置の接合終端構造の一つであるFLR構造を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高耐圧半導体装置には、高耐圧接合終端構造が設けられている。高耐圧接合終端構造の一つであるFLR(Field Limiting Ring) 構造の従来構造の一例として、図4にnチャネルMOSFETを示す。この構造は、Nベース領域9とNベース領域の第1主面の表面領域に形成されたNソース領域8,Nソース領域と主電極M(0)によって電気的に接続されたPウェルR(0)と、Pウェルを囲むようにNベース領域の第1主面の表面領域に形成された複数(n本)のPリングR(1)〜R(n)と、各Pリング上にコンタクトされたリング電極M(1)〜M(n)と、Pリング領域を囲むように形成されたNストッパ領域SRと、Nストッパ領域SRにコンタクトされた電極MSと、各リング間のNベース表面の酸化膜2とからなる。
【0003】
複数のPリングR(1)〜R(n)は、空乏層を広げることにより電界集中を緩和させるために、チップ端部にリング状に設けられる。また、Nストッパ領域SRは、チップ端にまで空乏層が延びると、リーク電流の要因となるため、チップ端に空乏層が到達するのを防止するために設けられている。
【0004】
nチャネルMOSFETの実使用時には、主電極M(0)に金属ワイヤがボンディングされて電気回路が構成され、ゲルやトランスファモールドレジン等に樹脂封止されて実装される。
【0005】
【特許文献1】特開2001−15770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来構造では、Pリングを適切に配置することで所望の耐圧を得ていたが、高耐圧になるとリング本数が増加する。半導体基板の表面に形成された酸化膜2には、実装まで含めた製造プロセスにおける汚染により、可動イオンが存在している。このため、使用中、特に、高温高電圧印加時における最適設計からのずれが大きくなる。
【0007】
また、従来構造では、各リング電極M(n)は、MOSFET等、主素子のプロセスの中で形成され、通常、主電極M(0)や電極MSと同時に、アルミニウム4で数マイクロメートルの厚さに形成される。厚く形成されたアルミニウム4は加工精度が低く、各リング電極間寸法X(n)は、ばらつきが大きい。このため、最適設計からのずれのばらつきも大きいものとなる。
【0008】
最近では、パワーモジュールがトランスファモールド実装される等、パッケージの薄型化の流れがある。それに伴い、ワイヤ高さが低くなると、ワイヤの電位がチップからワイヤまで含めた系における電界分布に影響を及ぼすことになる。最終的な電界分布によって可動イオンや分極の配置が決められるため、最適設計からの特性のずれはさらに大きくなる。
【0009】
以上のように、従来の構造では、接合終端構造における電極の加工精度が低いため、印加される高電圧を分担する部分の構造ばらつきは大きくなり、特性変動のばらつきが大きいという問題があった。
【0010】
一方、従来構造において加工精度を求めれば、図4におけるリング電極M(n)を全てポリシリコンで形成する手段が考えられる。しかし、ポリシリコンは抵抗率が高く平面的に不均一な動作となるおそれがある。このため、本実施例と比較して、特性が劣る上、製造工程も増大する。この結果、製品信頼性が低下することになる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の代表的な半導体装置の一つは、半導体基板に形成された第1導電型ベース領域(Nベース領域)と、前記半導体基板の第1主面側において、前記半導体基板に形成された第2導電型ウェル領域(P(0))と、前記半導体基板の前記第1主面側において、前記第2導電型ウェル領域を囲むように形成された複数の第2導電型リング領域(P(1)〜P(n))と、前記半導体基板の前記第1主面側において、前記第2導電型リング領域を囲むように形成された第1導電型ストッパ領域(Nストッパ領域)と、前記半導体基板の前記第1主面の上において、隣り合う前記第2導電型リング領域の間に設けられた絶縁層(酸化膜)と、前記絶縁層の上に配置された第1導電材料
(ポリシリコン)と、前記第2導電型リング領域及び前記第1導電材料に電気的接続されるように配置された第2導電材料(アルミニウム)と、前記半導体基板の前記第1主面とは反対側の第2主面に設けられた電極、とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特性の固体ばらつきを低減した半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1における半導体装置1の構造図を図1に示す。図1には、半導体装置1のチップ端を示している。
【0015】
半導体装置1は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やパワーMOSFET
(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor) を構成する。半導体装置1のゲート電極5は、酸化膜6を介して半導体基板7の第1主面上に形成されている。本図では、半導体装置1のチップ端のみを示しているため具体的には明示されていないが、実際には、ゲート電極5は、本図で示す構造の左側に複数個並んで配置されている。
【0016】
また、半導体基板7の第1主面とは反対側の第2主面には、電極11が配置されている。この電極11は、IGBTの場合にはコレクタ電極となり、パワーMOSFETの場合には、ドレイン電極となる。
【0017】
半導体基板7はN型基板を用いており、半導体基板7の内部には、Nベース領域9,Pウェル領域R(0),Nソース領域8,複数のPリング領域R(1)〜R(n)、及び、Nストッパ領域SRが形成されている。
【0018】
複数のPリング領域R(1)〜R(n)は、FLR(Field Limiting Ring) を構成し、半導体基板7のチップ端に設けられている。FLR構造の各Pリング領域R(1)〜R(n)は、半導体基板7とのコンタクト抵抗が小さい金属等の低抵抗材料とコンタクトされる。本実施例では、低抵抗材料として、アルミニウム4を採用しているが、アルミニウム4に代えて、他の金属等を採用することもできる。
【0019】
アルミニウム4のパターン端部には、薄膜形成が可能で加工精度の高い、高加工精度材料が設けられる。本実施例では、この材料として、ポリシリコン3を採用している。ポリシリコン3は、絶縁層である酸化膜2を介して配置されている。なお、酸化膜2に代えて、窒化膜等の他の絶縁層を用いてもよい。
【0020】
リング電極M(1)〜M(n)は、低抵抗材料であるアルミニウム4と、高加工精度材料であるポリシリコン3の2段構造として構成されている。また、図1の酸化膜2とポリシリコン3は、ポリシリコン3の片側端部と酸化膜2の端部とが揃えられた、同時エッチングで形成されたものである。
【0021】
ただし、ポリシリコン3の外側の端部位置が、アルミニウム4の端部位置より外側にあって、リング電極M(1)〜M(n)の寸法が、ポリシリコン3により決まる構成となっていれば、他の構造を採用することもできる。例えば、図2に示すように、ポリシリコン3のアルミニウム4側の端部位置が、酸化膜2上の一部の領域に位置している構成でもよいし、また、図3に示すように、ポリシリコン3のアルミニウム4側の端部が、酸化膜2の開口領域にかかるような構成、すなわち酸化膜2の外側に位置する構成でもよい。
【0022】
通常、半導体装置1の製造プロセスにおいて、リング電極M(1)〜M(n)は、主電極M(0)と同時に形成される。このとき、ボンディング等の実装信頼性の観点より、リング電極M(1)〜M(n)は、数マイクロメートルの厚さで、厚く形成される。このため、リング電極M(1)〜M(n)のパターン形成のエッチングには、ウェット方式が用いられることが多い。従って、エッチングによる加工精度が落ち、ウェハ面内の加工ばらつきは大きくなる。この結果、リング電極M(1)〜M(n)間距離X(1)〜X(n+1)のばらつきも大きくなる。
【0023】
一方、本実施例では、リング電極M(1)〜M(n)の端部に加工精度の高いポリシリコン3を配置するため、リング電極M(1)〜M(n)間寸法X(1)〜X(n+1)のばらつきを小さくすることが可能になる。
【0024】
パワーMOSFETやIGBT等では、ゲート電極5として、ポリシリコンが用いられている。ゲート電極5として形成されるポリシリコンは、薄厚で形成され、ドライエッチングにて形成される。このため、加工精度が高い。このため、ゲート電極としてポリシリコンを形成する際に、高加工精度材料としてのポリシリコン3を同時に形成することにより、現状の製造プロセスと同一の製造プロセスにて形成することができる。従って、従来の半導体装置と比較して、信頼性が低下することはない。
【0025】
半導体装置1の主電極間に印加される電圧は、FLR構造にも印加される。このとき、Nベース領域9の第1主面においては、各Pリング領域R(0) 〜R(n) 間領域XR(1)〜XR(n+1)にて分担され、素子表面においては、各リング電極M(n)間領域X(1)〜X(n+1)にて分担される。
【0026】
以上のように、本実施例では、アルミニウム4とポリシリコン3の2段構造を採用するため、アルミニウム4等の低抵抗材料による面内均一動作を維持しつつ、ポリシリコン3等の高加工精度材料により電極寸法精度を確保できる。この結果、特性の固体ばらつきを低減した半導体装置を提供することができる。
【実施例2】
【0027】
本発明の実施例2における半導体装置10の断面構造を図5に示す。基本的な構造は実施例1と同様である。本実施例では、高加工精度材料としてのポリシリコン3が、全てのリングR(0)〜R(n)ではなく、ストッパ領域側の一部のリングR(2)〜R(n)にのみ適用されている点で、実施例1とは異なる。
【0028】
一般的に、FLR構造のリング間寸法XR(1)〜XR(n+1)は、その場所により変えて構成されている。すなわち、主接合に近い領域(チップ中央側)では、印加電圧が小さい段階で空乏化が進むように、リング間寸法XR(1)〜XR(n+1)は小さく設計される。一方、Nストッパ領域SRに近い領域(チップ端側)では、リング間寸法XR(1)〜XR(n+1)は大きく設計される。Nストッパ領域SRに近い領域では、リング間寸法XR(1)〜XR(n+1)が大きいため、酸化膜2等の絶縁層中の可動イオンや分極の影響をより強く受ける。このため、その領域に配置される電極に対して、特に、ポリシリコン3とアルミニウム4の2段構造の電極を採用する必要性がある。
【0029】
ただし、他の原因により、可動イオンや分極の影響を強く受けている部分が、ストッパ領域側(チップ端側)ではなく、主接合側(チップ中央側)にある半導体装置の場合には、本実施例のようにチップ端側にのみ2段構造の電極を採用するのではなく、主接合側の一部のリングに2段構造の電極を採用すればよい。
【0030】
以上にように、上記実施例によれば、アルミニウム4等の低抵抗材料による面内均一動作を維持しつつ、ポリシリコン3等の高加工精度材料により電極寸法精度を確保できる。このため、FRL構造において、特性の固体ばらつきを低減することができる。
【0031】
また、ソース−ドレイン間に直流高圧を数時間印加させるDCブロッキング後における特性ばらつきの増大を抑制することができる。
【0032】
また、IGBTやパワーMOSFET等のFLR構造では、従来構造と比較して、製造工程の追加なしで実現することが可能になる。すなわち、特性のばらつき低減を、現状の製造安定性を維持したままで実現することができる。
【0033】
以上のとおり、本発明の実施例を詳細に説明したが、本発明は上記実施例の内容に限定されるものではなく、本発明の技術思想から逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。例えば、本実施例では、Nベース領域,Pウェル領域,Nソース領域の関係を有する半導体装置について説明したが、これとは反対に、Pベース領域,Nウェル領域,Pソース領域の関係を有する半導体装置についても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例1における半導体装置の断面図である。
【図2】本発明の実施例1における電極の他の断面図である。
【図3】本発明の実施例1における電極の他の断面図である。
【図4】従来の半導体装置の断面図である。
【図5】本発明の実施例2における半導体装置の断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1,10 半導体装置
2 酸化膜
3 ポリシリコン
4 アルミニウム
5 ゲート電極
6 ゲート酸化膜
7 半導体基板
8 Nソース領域
9 Nベース領域
11 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に形成された第1導電型ベース領域と、
前記半導体基板の第1主面側において、前記半導体基板に形成された第2導電型ウェル領域と、
前記半導体基板の前記第1主面側において、前記第2導電型ウェル領域を囲むように形成された複数の第2導電型リング領域と、
前記半導体基板の前記第1主面側において、前記第2導電型リング領域を囲むように形成された第1導電型ストッパ領域と、
前記半導体基板の前記第1主面の上において、隣り合う前記第2導電型リング領域の間に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の上に配置された第1導電材料と、
前記第2導電型リング領域及び前記第1導電材料に電気的接続されるように配置された第2導電材料と、
前記半導体基板の前記第1主面とは反対側の第2主面に設けられた電極、とを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第2導電材料は、前記第1導電材料より導電率が高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置において、
前記第1導電材料は、前記第2導電材料より加工精度が良いことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項3記載の半導体装置において、
前記第1導電材料はポリシリコンであり、前記第2導電材料はアルミニウムであることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第1導電材料及び前記第2導電材料により2段構造リング電極が構成され、
隣り合う前記2段構造リング電極間の寸法は、前記第1導電材料の位置により決定されることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項5記載の半導体装置において、
複数の前記第2導電型リング領域に接続される電極は、全て、前記2段構造を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項5記載の半導体装置において、
複数の前記第2導電型リング領域に接続される電極のうち、その一部のみが、前記2段構造を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置において、
前記第1導電型ストッパ領域により近い側の前記第2導電型リング領域に接続される電極は、前記2段構造を有していることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−181988(P2008−181988A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13250(P2007−13250)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】