説明

半導体装置

【課題】金属板と一体化した絶縁層を有するタイプの半導体モジュールを備え、従来よりも製品の高信頼化を実現可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体モジュール101において露出する金属板5と冷却装置102とが接合材7にて接合され、金属板5は、接合される接合領域52と、接合しない非接合領域53とを有する。このような半導体装置110において、非接合領域、接合材の周囲領域54、及び冷却装置において接合された部分の周囲の接合周囲領域63に対してさらに樹脂剤9を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に電力用半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に半導体モジュールは、その放熱性を向上させるため、グリスを介して冷却装置に取り付けられている。例えば電力用半導体スイッチング素子等の発熱素子を搭載するパワーモジュールでは、放熱構造が重要となる。このため、一般的にパワーモジュールは、冷却器(ヒートシンク)に締結されて実装される。この際、パワーモジュールと冷却器との間に空隙が生じると熱伝導性が悪化するため、熱伝導性グリスを介してパワーモジュールを冷却器に取付ける実装構造が一般的に用いられている。
【0003】
一方、半導体モジュールを小型軽量化するためには、半導体モジュールそのものの小型化、又は半導体モジュールを有する半導体装置全体の放熱性を向上させることによる冷却器の小型化を図ることが重要である。例えば特許文献1は、パワーモジュール及び冷却器の実装構造を開示しており、その特徴的構成は、パワーモジュール及び冷却器の互いの対向面の少なくとも一方に熱伝導性グリスを浸入させるグリス浸入部を設けた点である。このグリス浸入部は、パワーモジュールと冷却器との締結力の反力であるグリス面圧によるパワーモジュールの変形量を抑制し、グリス浸入部以外の領域でのグリス膜厚を減少させるとともに均一化させる。これにより、パワーモジュール全体の放熱性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−196576号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、半導体モジュール内部の放熱性の向上に伴い、半導体モジュールと冷却装置とに介在させる熱伝導性グリスが半導体装置全体における放熱性の律速になってきている。よって、上述のようなグリス膜厚の薄肉化による方法では、放熱性向上は限界に来ている。
【0006】
そこで、半導体装置全体の放熱性をより向上させるために、半導体モジュールと冷却装置との間を、はんだ接合するという手法が知られている。この半田接合による構成では、半導体モジュールから生じるヒートサイクルに起因する、半導体モジュールと冷却装置とのはんだ接合部におけるクラック発生を防止して放熱性の劣化を防止すること、即ち、はんだ接合部の寿命を確保することが、製品の高信頼化を実現する上で重要となる。
【0007】
また、半導体モジュールにおいて金属板と絶縁層とを一体化した構造を有し、半導体モジュールの冷却装置に対向させる表面に金属板を露出させて、半導体モジュールと冷却装置とをはんだ付け可能としたタイプも上市されている。このタイプでは、はんだ接合により放熱性を向上させることができる。
【0008】
しかしながら、この金属板を有するタイプの半導体モジュールの場合、金属板と一体化された絶縁層が、ヒートサイクルによりはんだに生じる熱応力によって半導体モジュールから剥離し、放熱性や絶縁性が劣化することが問題となる。そのため、金属板を有するタイプの半導体モジュールの場合、半導体モジュールと冷却装置とのはんだ接合部における寿命確保に加えて絶縁層の寿命確保も、製品の高信頼化を実現する上で重要となる。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、金属板と一体化した絶縁層を有するタイプの半導体モジュールを備え、従来よりも製品の高信頼化を実現可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の一態様における半導体装置は、半導体素子、及び、絶縁層と一体的に形成された金属板を樹脂にて封止した封止体を有しこの封止体の一面に上記金属板を露出させた半導体モジュールと、金属板の露出面に対向して配置され、接合材を介して上記露出面に接合される放熱部材とを備えた半導体装置であり、上記金属板の露出面は、接合材で接合される接合領域と、接合材が接触せず接合されない非接合領域とを有し、当該半導体装置は、さらに樹脂剤を備え、この樹脂剤は、上記非接合領域、上記半導体モジュールと上記放熱部材とを接合した接合材の周囲に対応する接合材周囲領域、及び上記金属板の露出面に対面する上記放熱部材の接合材接合面において上記金属板と接合された部分の周囲に対応する接合周囲領域に対して設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様における半導体装置によれば、まず、半導体モジュールでは、露出している金属板は、放熱部材と接合材で接合されている。よって、半導体モジュールと放熱部材とがグリスを介して接合される場合に比べて、両者間の熱伝導性が向上し、半導体モジュールの放熱性を向上できるという効果がある。したがって、製品の小型化、製品包装の小型化を図ることができ、また、高冷却能力を要しなくなるので省エネルギーにもつながる。
【0012】
また、金属板が接合材との接合領域及び非接合領域を有することで、金属板の全体を接合する場合と比較すると、接合面積を小さくすることができる。よって、接合材のクラックによる不良を抑制することができ、製品の信頼性の向上を図ることができる。
【0013】
さらに、金属板における非接合領域、接合する接合材の接合材周囲領域、及び放熱部材における接合周囲領域に樹脂剤を設けたことで、一体的に形成されている金属板及び絶縁層は、移動あるいは変位することが物理的に困難になる。よって、絶縁層が金属板及び封止体から剥離することを防止することができる。さらに移動又は変位が制限されることで、接合材に生じる熱応力を低減することができる。よって、接合材のクラックの進展を抑制することができるという効果もある。したがって、接合材接合部分及び絶縁層の劣化を防止し寿命を確保できることから、従来に比べて製品の高信頼化を実現することが可能となる。また、製品の長寿命化を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1による半導体装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示すA−A部における断面図である。
【図3】図1に示す半導体装置の変形例におけるA−A部における断面図である。
【図4】図1に示す半導体装置の別の変形例におけるA−A部における断面図である。
【図5】図1に示す半導体装置のさらに別の変形例におけるA−A部における断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2による半導体装置の構成を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態3による半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態である半導体装置について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。また、各図間の図示では、対応する各構成部分のサイズや縮尺はそれぞれ独立しており、例えば構成部分の一部を変更した断面図間において、変更していない同一構成部分のサイズや縮尺が相違する場合もある。また、該半導体装置の構成について、本発明の構成に必要のない部分は図示を省略している(例えば、モールド樹脂内のダイオード素子等)。
【0016】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1における半導体装置について、図を参照して説明する。
図1に示すように、実施の形態1における半導体装置110は、大きく分けて、半導体モジュール101と、放熱部材の一例に相当する冷却装置102とを備え、半導体モジュール101と冷却装置102とは、外接合材7にて接合されている。さらに、本実施形態の半導体装置110は、特徴的構成の一つとして、半導体モジュール101と冷却装置102との接合部分に樹脂剤9を備える。これらの構成部分について、以下に詳しく説明する。
【0017】
まず、半導体モジュール101について説明する。
半導体モジュール101の概略構成は、半導体素子1、及び、絶縁シート2と一体的に形成された金属板5を備え、これらをモールド樹脂8にて封止して封止体1011を形成する。このとき、封止体1011の一面には、金属板5を露出させている。また、半導体素子1は、ヒートスプレッダ3の実装面3aに実装されている。これらの構成部分については、以下でさらに詳しく説明する。尚、半導体モジュール101に含まれるが、本発明の構成とは直接に関係しない構成部分、例えば、半導体素子1に電気信号を供給するAlワイヤ15等については、説明を省略する。
【0018】
半導体素子1は、本実施形態ではインバータやコンバータ等を構成する電力用素子であり、動作に伴い発熱する素子である。尚、半導体素子1は、電力用素子に限定するものではない。また、その個数は、1個以上であればよい。半導体素子1の構成材料として、SiやSiC等が用いられる。
【0019】
絶縁シート2は、絶縁層の機能を果たす一例に相当し、電気的絶縁材料にてなり、放熱性向上のため熱伝導率の大きい材料が好ましい。本実施の形態1では、絶縁シート2は、高い熱伝導率を有するセラミックのフィラーをエポキシ樹脂に混合した樹脂材であるが、これに限定されない。
【0020】
ヒートスプレッダ3は、金属部材の機能を果たす一例に相当し、当該ヒートスプレッダ3の実装面3aに実装される半導体素子1の電極としての役割と、熱拡散部材としての役割とを果たす部材である。即ち、半導体素子1で発生した熱がヒートスプレッダ3の実装面3aに対向する対向面3bに対して広がることで、ヒートスプレッダ3は、半導体素子1の放熱性を向上させる。対向面3bが絶縁シート2に接触した状態で、ヒートスプレッダ3は配置される。また、このヒートスプレッダ3にリードフレーム10、11を電気的に接続することによって、半導体素子1に通電が行われる。尚、リードフレーム10、11は、本実施形態では、一方端が半導体素子1の主電極に電気的に接続された厚さ1mmのCu板である。
【0021】
このため、ヒートスプレッダ3は、熱伝導率、電気伝導性が良い材料が好ましく、例えばCuや、はんだ付け可能なNiメッキをしたAl等が使用可能である。尚、ヒートスプレッダ3は、これらの材料に限定するものではなく、熱及び電気伝導性が良い材料であればよい。本実施形態では、ヒートスプレッダ3は、一例として、厚さ3mmのCu板である。また、ヒートスプレッダ3の形状は、図1に示すようなブロック形に限らず、目的に応じて様々な形状を取ることができる。金属フレーム等でもよく、この場合には、リードフレーム10等と一体的に形成可能になるなどの利点がある。
【0022】
また、ヒートスプレッダ3の実装面3aには、内接合材4を用いて半導体素子1が接合される。この内接合材4及び下記外接合材7は、融点の比較的低い金属材料であることが望ましい。内接合材4としては、例えばSn−Ag−Cu系のはんだや、Sn−Sb系のはんだ等が用いられる。また、後述する外接合材7による接合工程において内接合材4が溶融すると、溶融による体積膨張により、封止体1011を内部から破壊してしまう等の不具合が考えられる。このような不具合を防止するため、内接合材4は、外接合材7に使用する材料よりも融点が高い材料が好ましい。例えば、内接合材4としてSn−3.0Ag−0.5Cuはんだを用いた場合には、外接合材7としては、Sn−58Biはんだを用いるのが好ましく、また、内接合材4としてSn−10Sbはんだを用いた場合には、外接合材7として、Sn−3.0Ag−0.5Cuはんだ等を用いるのが好ましい。本実施形態では、内接合材4は、一例として、厚さ150μmのSn−10Sbはんだである。ここで、内接合材4としては、融点の比較的低い金属材料以外の、例えば銀ペーストや銅ナノパウダー等の導電性接着剤を用いても良い。
【0023】
金属板5は、絶縁シート2と一体的に形成され、絶縁シート2の一側面の全面を覆う金属材であり、絶縁シート2と同形状である。本実施の形態1では、方形状で厚さ0.1mmの銅箔である。尚、金属板5の材料及び形状は、本実施の形態1のものに限られず、絶縁シート2と一体的に形成されている金属板であればよい。また、半導体素子1を実装したヒートスプレッダ3の対向面3bに絶縁シート2を接触させた状態で、これらはモールド樹脂8にて封止され封止体1011が形成されるが、金属板5は、封止体1011の一面に露出する。このように露出面51を有する金属板5は、半導体モジュール101と冷却装置102との、外接合材7による、接合領域52での接合を可能にするための部材であり、例えば、露出面51をNiめっき処理することで、金属板5そのものはAl箔等でもよい。また、半導体モジュール101の放熱性を向上させるために、金属板5は熱伝導率の大きい材料を用いるのが好ましい。ここで、金属板5の厚さは、0.1mm〜1mm程度が好ましい。
【0024】
図2に示すように、さらに金属板5は、露出面51において、外接合材7で接合される接合領域52と、外接合材7が接触せず接合されない非接合領域53とを有する。ここで外接合材7は、例えば上述したようなSn−Ag−Cu系はんだや、より融点の低いSn−Bi系はんだ等を用いるのが好ましい。本実施形態では、外接合材7は、Sn−3.0Ag−0.5Cuはんだを用いており、厚さ300μmである。ここで、外接合材7としては、内接合材4と同様に、融点の比較的低い金属材料以外の、例えば銀ペーストや銅ナノパウダー等の接着剤を用いても良い。
【0025】
また、図2では、一例として、露出面51において、金属板5の外周から1.5mmの幅のAlメッキにて、接合領域52の全周囲を取り囲んで、非接合領域53が配置される形態を示している。しかしながらこれに限定されず、非接合領域53は、金属板5の露出面51の、少なくとも四隅51a及びその周辺の領域に設けられればよい。よって、接合領域52及び非接合領域53は、例えば図3、図4、及び図5に示すような形態であってもよい。
【0026】
また金属板5がはんだ接合可能な材料である場合、非接合領域53は、金属板5と同一材料でなくてもよく、金属板5の露出面51に、予めはんだ非接合処理を施すことで形成することができる。はんだ非接合処理としては、例えば、有機材料によって金属板5の露出面51を処理することや、外接合材7に濡れない金属を露出面51に存在させること等がある。
逆に、金属板5がはんだ接合できない材料(例えばAl等)である場合には、金属板5の露出面51に、予めはんだ接合処理を施すことで、接合領域52を形成することができる。はんだ接合処理としては、上述のように、露出面51にNiメッキ等を施すこと等がある。
【0027】
モールド樹脂8は、半導体素子1と、ヒートスプレッダ3と、リードフレーム10、11と、絶縁シート2及び金属板5とを、これらの構成部分が上述したように構成された状態にて、樹脂封止する熱硬化性の樹脂材であり、封止により封止体1011を構成している。本実施形態ではモールド樹脂8はエポキシ樹脂である。尚、リードフレーム10、11の他端、及び、金属板5の一部である露出面51は、封止体1011の外表面より外部に露出している。モールド樹脂8の材料は、半導体モジュールの信頼性を向上できるものであればよいが、本実施の形態1のように、トランスファーモールド法にて半導体モジュール101を形成するものが好ましい。
このようにして、半導体モジュール101が形成される。
【0028】
次に、冷却装置102について説明する。
冷却装置102は、半導体素子1で発生した熱を放熱して半導体装置110全体を冷却するための装置であり、放熱部材の機能を果たす一例に相当する。本実施の形態1では、冷却装置102は、図1に示すように、Alで形成された筒状の枠体6と、枠体6内に冷媒の一例としての冷却水を供給する冷却水供給部65とを有する。枠体6は、半導体モジュール101における金属板5の露出面51に対面して位置する接合材接合面61を有する。接合材接合面61は、外接合材7によって金属板5と接合可能な形状及び材料にて構成されればよい。本実施形態の場合、Al材の枠体6であることから、接合材接合面61には、Niメッキを施している。
【0029】
また、枠体6内には、枠体6と冷却水との熱交換効率を向上させるフィン66が設けられている。尚、冷却装置102を構成する材料、形状は、本実施の形態1の例に限定するものではなく、外接合材7によって金属板5と接合可能で、半導体素子1で発生した熱を放熱できるものであればよい。例えば、水冷に比べ放熱性は劣るが、例えば、図1の紙面に直角方向に延在する複数の羽部材を設けた形状で、表面積の増加により放熱性を向上させた空冷フィン等でも良い。
【0030】
さらに、枠体6は、接合材接合面61に、樹脂剤9が注入あるいは充填される凹部62を有する。この凹部62は、枠体6において金属板5と接合された部分の周囲に相当する接合周囲領域63に形成される。凹部62の形状は、図1に示すような形状に限定するものではなく、樹脂剤9との密着性を向上可能な形状であれば良い。この観点から特に、凹部62は、例えば蟻溝型や蛸壺型のように、表面の開口部よりも内側収容部が大きい、アンカー効果の高い形状が好ましい。尚、樹脂剤9の密着性が比較的高い場合には、凹部62は設けなくても良いが、この場合でも、設けた方がさらに樹脂剤9の密着性を高めるので好ましい。
【0031】
次に、本実施形態における特徴的構成の一つである樹脂剤9について説明する。
樹脂剤9は、金属板5の露出面51を含む封止体1011の接続面1011cと冷却装置102の枠体6との隙間103において、金属板5における非接合領域53、外接合材7の接合材周囲領域54、及び枠体6の接合周囲領域63に設けられる。ここで接合材周囲領域54は、半導体モジュール101と冷却装置102とを接合している外接合材7の周縁の領域に相当する。また、接合周囲領域63には上述のように凹部62が形成されていることから、樹脂剤9が特に凹部62に入り込むことが重要となる。
【0032】
このような樹脂剤9として本実施形態ではエポキシ樹脂が用いられる。しかしながら、これに限定されない。つまり、後述するように、半導体素子1の発熱により引き起こされる可能性がある、絶縁シート2に対する金属板5の剥離を防止でき、かつ外接合材7の信頼性を向上可能とし、かつ外接合材7の融点以下で硬化可能であるような樹脂剤であればよい。また、樹脂剤9は、必要部位への充填性を考慮すると粘度は低い方が好ましく、また、非接合領域53と冷却装置102の材料との密着性が高い方が好ましい。
【0033】
次に、上述したような構成を有する本実施の形態1による半導体装置110の製造方法について、図1を参照して説明する。半導体装置110の製造では、以下に示す1〜6の工程を含む。即ち、
1.半導体素子1とヒートスプレッダ3とを内接合材4を用いて接合するダイボンド工程。
2.半導体素子1が接合されたヒートスプレッダ3にリードフレーム10を内接合材41を用いて接合するフレーム接合工程。ここで、内接合材41は、内接合材4と同じ材料を用いてもよい。
3.リードフレーム11と半導体素子1とをワイヤボンドで接合するワイヤボンド工程。
4.リードフレーム10、11が接合されたヒートスプレッダ3、及び、金属板5と一体的に形成された絶縁シート2を、金型内で一体的にモールドすることで半導体モジュール101とするモールド工程。
5.モールドが完了した半導体モジュール101における露出面51の接合領域52と、冷却装置102の接合材接合面61とを外接合材7を用いて接合する接合工程。
6.樹脂剤9を、非接合領域53、枠体6の接合周囲領域63、特に凹部62、及び外接合材7の接合材周囲領域54に充填し、熱硬化させる樹脂充填工程。
【0034】
以上説明した、本実施の形態1による半導体装置110によれば、以下のような効果が得られる。
まず、半導体モジュール101の金属板5と冷却装置102とを外接合材7を用いて接合することによって、グリスを用いた場合と比較して、接合材はグリスより熱伝導率が大きいため、半導体装置110の放熱性を向上することができる。
【0035】
また、金属板5における露出面51の全体と、冷却装置102とを外接合材7にて接合した場合、半導体素子1の発熱による温度変化によって金属板5及び冷却装置102がそれぞれ熱膨張するが、金属板5と冷却装置102との各熱膨張率の違いにより、外接合材7には熱応力が発生する。この熱応力は、金属板5の端部で最大となる。また、この熱応力は、外接合材7に接合材のクラックを発生させ、該クラックが進展することで、半導体装置110全体の放熱性を劣化させる可能性がある。
さらに、上述のように金属板5の端部で外接合材7に生じる熱応力が最大となることで、金属板5と一体的に形成されている絶縁シート2が半導体モジュール101の封止体1011から剥離し、半導体モジュール101の放熱性や絶縁性を劣化させることが考えられる。そのため、半導体装置110の信頼性をより向上させるためには、金属板5及び絶縁シート2の剥離や、外接合材7に生じる接合材のクラックを抑制することが重要となる。
【0036】
本実施形態の半導体装置110では、上述したように、外接合材7の接合材周囲領域54に樹脂剤9を設けたことによって、封止体1011の厚み方向に直交する直交方向1011dにおいて、一体形成されている金属板5及び絶縁シート2の熱膨張差による移動あるいは変位が物理的に抑えられるため、外接合材7に生じる熱応力を低減することができる。よって、外接合材7に生じる接合材のクラックを抑制することが可能となる。その結果、半導体装置110全体の放熱性を劣化が抑制され、製品の信頼性を従来に比べて向上させることができる。
【0037】
また、上述のように、金属板5の露出面51の少なくとも四隅51a、さらには露出面51の外周部に非接合領域53を設けている。これにより、金属板5全体を接合した場合と比較して、金属板5端部での熱応力は低減される。さらに樹脂剤9を充填することで、直交方向1011dにおいて金属板5が物理的に移動できるスペースがなくなるため、金属板5及び絶縁シート2が封止体1011から剥離するのを防ぐことができる。
【0038】
一方、充填した樹脂剤9が温度変化で生じた熱応力によって、冷却装置102との界面から剥離することも考えられる。樹脂剤9が冷却装置102から剥離した場合、樹脂剤9の充填によって得られる上述の応力低減の効果は小さくなってしまう。そこで、樹脂剤9が冷却装置102より剥離しにくくなるよう、既に説明したように、樹脂剤9として、冷却装置102との密着性が高い材料を用いることが好ましい。さらに、既に説明したように、上記密着性を向上させるため、冷却装置102に凹部62を形成している。よって、本実施形態の半導体装置110は、樹脂剤9が冷却装置102から剥離するのを抑制し、上述の応力低減の効果を維持することができる。
【0039】
また、冷却装置102を構成する枠体6の材料における線膨張係数に近い線膨張係数を有する樹脂剤9を用いることが好ましい。例えば、枠体6との線膨張係数差が±10ppm/℃程度以下の樹脂剤9を用いることで、樹脂剤9が枠体6から剥離するのを防ぐことができることを実験的に検証している。
【0040】
また、半導体素子1にSiCを用いた場合、その特徴を生かすべく、Siの場合と比較してより高温で動作させることになる。よって、半導体装置として、より高い信頼性が求められることになる。このようなSiCデバイスを搭載する半導体装置において、本実施形態の構成を採ることは、高信頼性を有する半導体装置を実現することが可能となり、その効果が特に大きい。
【0041】
実施の形態2.
次に、本実施の形態2における半導体装置について、図6を参照して以下に説明する。
本実施の形態2における半導体装置120と、図1を参照して上述した半導体装置110との相違点は、リードフレーム11が内接合材42を用いて半導体素子1と接合されている点、及び、樹脂剤9を隙間103から封止体1011の側面1011aまで延在させて設けた点である。このような構成を有する実施形態2における半導体モジュールについて、101−2の符号を付す。
尚、半導体装置120におけるその他の構成については、上述した半導体装置110と同じであり、ここでの説明を省略する。同様に、製造工程についても上述の半導体装置110と同じであるため、説明を省略する。
【0042】
上述の相違点により、本実施の形態2における半導体装置120は、以下の効果を得ることができる。勿論、半導体装置120においても、半導体装置110が有する上述した効果を奏することは言うまでもない。
リードフレーム11をワイヤボンドではなく内接合材42を用いて半導体素子1と接合することにより、半導体素子1とリードフレーム11との接合面積及び接合強度が増す。よって、ワイヤボンドで接合したときと比較して、熱的信頼性が向上する。ここで、内接合材42は、内接合材4や内接合材41と同じ材料を用いてもよい。
【0043】
また、接合することにより、上述の第2工程のフレーム接合工程において、リードフレーム10と共に接合が可能となることから、上述の第3工程のワイヤボンド工程を削除することができる。また、半導体素子1とリードフレーム11との位置関係が固定されるため、上述の第4工程のモールド工程での金型投入時における部材の位置決めが容易になる。
【0044】
また、樹脂剤9を封止体1011の側面1011aまで延在させて充填することで、半導体モジュール101−2全体を固定することができ半導体モジュール101−2全体の変形が抑制され、外接合材7に生じる熱応力がさらに低減される。よって、外接合材7における接合材のクラックの発生可能性をさらに抑制することができる。その結果、さらに製品の信頼性を向上されることができる。
尚、本実施の形態2における構成を、実施の形態1における半導体装置に適用することも勿論可能である。
【0045】
実施の形態3.
次に、本実施の形態3における半導体装置について、図7を参照して以下に説明する。
本実施の形態3における半導体装置130と、図6を参照して上述した実施形態2の半導体装置120との相違点は、金属板5の露出面51を含む、封止体1011の接続面1011cは、露出面51に対向する表面1011bに比べて面積を小さくした点である。つまり、半導体装置130は、図7に示すように、封止体1011の側面1011aにおいて、一体的に形成された金属板5及び絶縁シート2に対応する側面部分を、封止体1011の内側方向へ凹ませた構成を有する。このような構成を有する実施形態3における半導体モジュールについて、101−3の符号を付す。
尚、半導体装置130におけるその他の構成については、上述した半導体装置120と同じであり、ここでの説明を省略する。同様に、製造工程についても上述の半導体装置110の場合と同じであるため、説明を省略する。
【0046】
上述の相違点により、本実施の形態3における半導体装置130は、以下の効果を得ることができる。勿論、半導体装置130においても、半導体装置110、120が有する上述した効果を奏することは言うまでもない。
上述したように絶縁シート2及び金属板5の周囲に対応した部分のモールド樹脂8の厚みを薄くすることで、つまり封止体1011の幅を小さくすることで、実施の形態2の場合に比べると、封止体1011の側面1011cまで延在する樹脂剤9が、一体的に形成された金属板5及び絶縁シート2により近づいて配置される。よって、モールド樹脂8の厚みが薄い分、一体的に形成された金属板5及び絶縁シート2の、熱膨張に起因する直交方向1011dにおける移動や変位がより効果的に抑制される。したがって、実施の形態2の半導体装置120に比して、外接合材7に生じる熱応力がさらに低減され、外接合材7の接合材のクラックをさらに抑制することが可能となる。その結果、さらに製品の信頼性を向上されることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 半導体素子、2 絶縁シート、3 ヒートスプレッダ、5 金属板、6 枠体、
52 接合領域、53 非接合領域、54 接合材周囲領域、
62 凹部、63 接合周囲領域、
101、101−2、101−3 半導体モジュール、
110,120,130 半導体装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子、及び、絶縁層と一体的に形成された金属板を樹脂にて封止した封止体を有しこの封止体の一面に上記金属板を露出させた半導体モジュールと、金属板の露出面に対向して配置され、接合材を介して上記露出面に接合される放熱部材とを備えた半導体装置において、
上記金属板の露出面は、接合材で接合される接合領域と、接合材が接触せず接合されない非接合領域とを有し、
当該半導体装置は、さらに樹脂剤を備え、この樹脂剤は、上記非接合領域、上記半導体モジュールと上記放熱部材とを接合した接合材の周囲に対応する接合材周囲領域、及び上記金属板の露出面に対面する上記放熱部材の接合材接合面において上記金属板と接合された部分の周囲に対応する接合周囲領域に対して設けられる、
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
上記半導体モジュールは、上記半導体素子を実装する金属部材をさらに有し、この金属部材は、半導体素子を実装した実装面に対向する対向面を上記絶縁層に接して配置され実装された半導体素子とともに樹脂封止される、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
上記金属板の露出面は方形状の平面形状であり、上記非接合領域は、露出面の四隅に配置される、請求項1又は2記載の半導体装置。
【請求項4】
上記非接合領域は、上記接合材周囲領域で上記露出面の四隅以外に配置される、請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
上記接合領域は、上記金属板の露出面に予め接合材接合処理が施された領域であり、上記非接合領域は、上記露出面に予め接合材非接合処理が施された領域である、請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
上記放熱部材は、上記接合材接合面における上記接合周囲領域に、上記樹脂剤が注入される凹部を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
上記樹脂剤は、上記半導体モジュールと上記放熱部材との隙間から上記半導体モジュールにおける上記封止体の側面まで設けられる、請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
上記半導体モジュールの封止体は、上記金属板の露出面を含む接続面に対向する封止体表面を有し、上記接続面は封止体表面に比べて小さい面積を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
上記樹脂剤は、上記非接合領域、上記接合材周囲領域、及び上記放熱部材における接合周囲領域において、上記半導体モジュール及び上記放熱部材に固着している、請求項1から8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
上記接合材は、融点の比較的低い金属材料である、請求項1から9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
上記金属板は、厚さ100μm程度の金属箔からなる、請求項1から10のいずれか1項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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