説明

半導体装置

【課題】バイポーラトランジスタのエミッタ窓における絶縁膜厚の変動をなくし、素子特性が安定した半導体装置を提供する。
【解決手段】バイポーラトランジスタを、コレクタ領域を含む基板1、基板1上にエピタキシャル成長で形成されたSiGe層126、SiGe層126上にポリシリコンによって形成されたエミッタ108を備え、エミッタ108とSiGe層126との界面において、ポリシリコン膜106とSiN膜127とでエミッタ窓120を形成し、SiN膜127がSiGe層126の直上に配置されるように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置にかかり、特に、バイポーラトランジスタを含む半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、本発明の従来技術となるバイポーラトランジスタの構成例を示す断面図である。図示したバイポーラトランジスタは、ベース116がシリコンゲルマニウム(SiGe)層からなるヘテロ接合バイポーラトランジスタ(以下、SiGe−HBTと記す)である。SiGe−HBTは、図示しない基板上のバイポーラトランジスタが形成されるバイポーラ領域に形成されている。バイポーラ領域と図示しないCMOS領域との間の基板には、STI(Shallow trench isolation)層とDTI(deep trench isolation)層が形成されている。
【0003】
SiGe−HBTのエミッタ108はN型の不純物を含むポリシリコンで構成されており、ベース116はP型の不純物を含む単結晶のSiGe層で構成されている。エミッタ窓120内のベース116上にはランプアニールによって1nm程度の極薄酸化膜(図示せず)が形成される。
また、SiGe−HBTのコレクタは、N型の不純物拡散層(SIC−2層、SIC−1層を含むN型不純物層115、Deep Nwell層102、BuriedN+層101、N-Sink(N-)層113及びN+層114)で構成されている。N-Sink層113はDeep Nwell層102よりもN型不純物の濃度が高く、N+層114からBuried N+層101に至る電流経路の抵抗を低減させる役割を持つ。
【0004】
ベース116上にはTEOS(Si(OC2H5)4)を用いたSiO2膜107、ポリシリコン膜106が形成されていて、SiO2膜107、ポリシリコン膜106にはエミッタ窓120が開口されている。
-Sink層113、N+層114はバイポーラトランジスタのコレクタ領域として機能する。コレクタ領域には電極109が形成される。ベース116には電極110が形成され、エミッタ108には電極111が形成される。このようなバイポーラトランジスタは、例えば、特許文献1、特許文献2に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−119818号公報
【特許文献2】特開2008−021747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来技術のように、ベース116上に極薄酸化膜を形成すると、以降のアニール工程やエミッタ108となるポリシリコンの堆積工程においてTEOSを用いたSiO2膜107の脱水が起こる。脱水によって発生した水分は、ベース116と極薄酸化膜との界面に付着し、極薄酸化膜の厚さを厚くする現象(以下、酸化膜厚変動と記す)が発生する。
【0007】
酸化膜厚変動が発生すると、ベース116からエミッタ108へのホール注入量が少なくなってベース電流IBが減少する。バイポーラトランジスタの電流増幅率hfeは、ベース電流IBとN-Sink層113、N+層114とエミッタ108との間を流れるコレクタ電流ICとの比(IC/IB)よって表される。したがって、酸化膜厚変動によってバイポーラトランジスタの電流増幅率hfeを変動させることになる。
【0008】
さらに、酸化膜厚変動によってエミッタの直列抵抗が高くなる。このため、酸化膜厚変動は、バイポーラトランジスタの遮断周波数及び最大周波数(ft/fmax)の低下も発生させる。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、バイポーラトランジスタのエミッタ窓における絶縁膜厚の変動をなくし、素子特性が安定した半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、本発明の半導体装置は、バイポーラトランジスタを含む半導体装置であって、前記バイポーラトランジスタは、コレクタ領域を含む基板(例えば図1に示した基板1)と、前記基板上にエピタキシャル成長で形成されたベース領域(例えば図1に示したSiGe層126)と、前記該ベース領域上にポリシリコンによって形成されたエミッタ領域(例えば図2に示したエミッタ108)と、を備え、前記エミッタ領域と前記ベース領域との界面において、ポリシリコン膜(例えば図1に示したポリシリコン膜106)とSiN膜(例えば図1に示したSiN膜127)とでエミッタ窓(例えば図1に示したエミッタ窓120)を形成し、前記SiN膜がベース領域の直上に配置されていることを特徴とする。
また、本発明の半導体装置は、上記した発明において、前記ベース領域はSiGe層であることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
以上説明した本発明によれば、SiGeエピタキシャル層で形成されるベース領域とエミッタポリシリコンの界面に形成される極薄酸化膜が後に厚膜化することを防ぐことができる。このため、ウェハ面内の極薄酸化膜の厚さがばらつくことによってウェハ上に形成される複数のトランジスタ間の電気的な特性がばらつくことを防ぐことができる。
このような本発明によれば、バイポーラトランジスタのエミッタ窓における絶縁膜厚の変動をなくし、素子特性が安定した半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態のバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための断面図である。
【図2】本発明の一実施形態のバイポーラトランジスタを示した図である。
【図3】本発明の一実施形態のバイポーラトランジスタと従来のバイポーラトランジスタとで、そのコレクタ電流とベース電流とを比較して示した図である。
【図4】本発明の一実施形態のバイポーラトランジスタのSiGe層とエミッタとの界面Aと、従来のバイポーラトランジスタのSiGe層とエミッタとの界面A’のTEM写真である
【図5】極薄酸化膜が比較的厚い場合のバイポーラトランジスタのバンド図である。
【図6】極薄酸化膜の厚さが1nm程度である場合のバイポーラトランジスタのバンド図である。
【図7】従来のバイポーラトランジスタの構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態の半導体装置及びその製造方法について説明する。
[バイポーラトランジスタ及びその製造工程]
図1(a)、(b)、(c)は、本実施形態の半導体装置であるバイポーラトランジスタ(以下、単にバイポーラトランジスタと記す)の製造方法を説明するための断面図である。
【0013】
図1(a)は、エミッタ窓が形成される直前の本実施形態のバイポーラトランジスタの状態を示した断面図である。図示したように、本実施形態では、基板1のバイポーラトランジスタが形成される領域(バイポーラトランジスタ領域)に、図示しないBuriedN+層及びDeep Nwell層102が形成される。BuriedN+層及びDeep Nwell層102の形成によってバイポーラトランジスタ領域にコレクタ領域が形成される。
【0014】
次に、本実施形態では、周知の不純物注入工程によってN-Sink層113、N+層114が形成される。さらに、Deep Nwell層102上にSiO2膜118、ポリシリコン膜119がそれぞれ100nm形成される。SiO2膜118、ポリシリコン膜119は、周知の露光、エッチングによってパターニングされる。
SiO2膜118、ポリシリコン膜119のパターニング後、パターニングされたSiO2膜118、ポリシリコン膜119上からSiGe層126が84nmエピタキシャル成長される。
【0015】
次に、本実施形態では、SiGe層126上にTEOSを用いたSiO2膜ではなく、シリコン窒化(SiN)膜127が30nm形成される。さらに、本実施形態では、SiN膜127上にポリシリコン膜106が50nm堆積されて形成される。SiN膜127の堆積は、780度の環境下において、LPCVD(Low Pressure CVD)法によって形成するものとした。また、ポリシリコン膜106の堆積は、640度の環境下においてLPCVD(low pressure CVD)によって行われる。
【0016】
次に、本実施形態では、図1(b)に示すように、エミッタ窓を形成するため、ポリシリコン膜106の一部をエッチングする。ポリシリコン膜106のエッチングによって、一辺の長さがaの矩形のパターンがポリシリコン膜106から除去される。なお、本実施形態では、aの長さを0.24μmとした。続いて、図1(c)に示すように、SiN膜127から一辺の長さがaの矩形のパターンが除去される。ポリシリコン膜106、SiN膜127のエッチングにより、エミッタ窓120が開口される。
【0017】
なお、SiO2膜のエッチングはフッ酸によって行われていたが、SiN膜127のエッチングは熱燐酸によって行われる。エッチングはウェット、ドライのいずれによっても可能である。エミッタ窓120の開口後、SiGe層126の表面に図示されない1nm程度の極薄酸化膜がRTAによって形成される。RTAは、700度の環境下で60秒程度行われる。その後、エミッタを形成するためにポリシリコン膜180を250nm形成し、エッチングによってパターニングする。この時、エッチングのレジストマスク上に反射防止膜(TARC:Top Anti-Reflaction Coat)を適用することで、ポリシリコン膜180の形状の安定化を図っている。
【0018】
図2は、ポリシリコン膜180のエッチングによってエミッタ108が形成された状態の本実施形態のバイポーラトランジスタを示した図である。ポリシリコン膜180のエッチングにより、エミッタ108内にSiN膜127、ポリシリコン膜106が残る。
以上のように、従来技術におけるTEOSを用いたSiO2膜をSiN膜127に代えたことにより、SiGe層126表面の極薄酸化膜の膜厚変動が、ポリシリコン層106の成長や以降のアニール工程において起こらない。このため、本実施形態は、極薄酸化膜の膜厚変動による電流増幅率の変動やft/fmaxの低下を防ぐことができる。
【0019】
[効果]
次に、以上説明した本実施形態の効果について説明する。
図3は、本実施形態のバイポーラトランジスタと従来のバイポーラトランジスタとで、そのコレクタ電流とベース電流とを比較して示した図である。このような電気的特性は、ガンメル特性とよばれる特性である。図中、ICで示すのは本実施形態のバイポーラトランジスタのコレクタ電流であって、IC’で示すのは従来のバイポーラトランジスタのコレクタ電流である。
【0020】
また、図中、IBで示すのは本実施形態のバイポーラトランジスタのベース電流であって、IB’で示すのは従来のバイポーラトランジスタのベース電流である。図3の横軸はベース・エミッタ間に印加された電圧Vbeであり、縦軸は電流値である。
図3から明らかなように、本実施形態のバイポーラトランジスタによれば、コレクタ電流ICとコレクタ電流IC’との間に大きな差はみられないものの、ベース電流IBはベース電流IB’に比べて高いことが明らかである。図3によれば、極薄酸化膜が厚くなったことによってベース電流が制限されて電流増幅率hfeの増加(変動)を招いていることが分かる。
【0021】
図4(a)、(b)は、本実施形態のバイポーラトランジスタのSiGe層とエミッタとの界面Aと(図4(a))、従来のバイポーラトランジスタのSiGe層とエミッタとの界面A’のTEM(Transmission Electron Microscope)写真である(図4(b))。界面Aには視認できないほど薄い極薄酸化膜が形成されていて、極薄酸化膜には複数の「切れ目」が存在している。一方、界面A’の極薄酸化膜は、視認できる程度に厚くなっていて、「切れ目」が存在していない。図4(a)、(b)から、本実施形態のバイポーラトランジスタの界面Aの極薄酸化膜は、従来のバイポーラトランジスタの界面A’の極薄酸化膜よりも薄く、しかも「切れ目」が存在していることが分かる。
【0022】
次に、極薄酸化膜の厚膜化によってベース電流が制限される理由を、エネルギーバンドを使って説明する。
図5は、極薄酸化膜(図中には界面酸化膜と記す)が比較的厚い場合のバイポーラトランジスタのバンド図である。図5(a)は電子の振る舞いを示し、図5(b)はホールの振る舞いを示している。図5に示すように、エミッタとSiGe層界面に比較的厚い(1nmより厚い)極薄酸化膜があっても、エミッタからコレクタへトンネル現象によって流れる電子への影響はほとんどない。しかし、ホールからエミッタへのホールの流れが極薄酸化膜によって妨げられて、ベース電流が低下する。
【0023】
極薄酸化膜の厚膜化は、TEOSを用いたSiO2膜から脱水された水分によって極薄酸化膜の酸化が進むことによって起こるから、プロセス工程で制御することができず、極薄酸化膜の膜厚のばらつきが発生する。極薄酸化膜の膜厚がばらつくと、同一ウェハ上に形成された複数の素子間で電気特性のばらつきが生じることになる。
【0024】
図6は、本実施形態のバイポーラトランジスタ、すなわち極薄酸化膜の厚さが1nm程度である場合のバイポーラトランジスタのバンド図である。図6(a)は電子の振る舞いを示し、図6(b)はホールの振る舞いを示している。図示したように、本実施形態のバイポーラトランジスタによれば、電子、ホール共に極薄酸化膜の影響を受けずにエミッタ・ベース間を流れることができるので、ベース電流の低下が起こらない。このため、同一ウェハ上に形成された複数の素子間の電気特性のばらつきを抑えることができる。例えば、従来のhfeの平均値は300〜450程度、標準偏差は100〜200程度であったが、平均値が220程度で安定し、標準偏差は50程度へ低減する。ft/fmaxは従来構造に比べて、それぞれ3GHz/10GHz程度向上する。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上説明した本発明は、バイポーラトランジスタを含む半導体装置のうち、特にSiを含む層上にポリシリコンのエミッタを設けるものに好適である。
【符号の説明】
【0026】
1 基板
102 Deep Nwell層
106、119、180 ポリシリコン膜
108 エミッタ
113 N-Sink層
114 N+
118 SiN膜
120 エミッタ窓
126 SiGe層
127 SiN膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイポーラトランジスタを含む半導体装置であって、
前記バイポーラトランジスタは、
コレクタ領域を含む基板と、
前記基板上にエピタキシャル成長で形成されたベース領域と、
前記該ベース領域上にポリシリコンによって形成されたエミッタ領域と、を備え、
前記エミッタ領域と前記ベース領域との界面において、ポリシリコン膜とSiN膜とでエミッタ窓を形成し、
前記SiN膜がベース領域の直上に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置であって、
前記ベース領域はSiGe層であることを特徴とする半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−212699(P2012−212699A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76222(P2011−76222)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】