説明

半導体装置

【課題】ダイシング時の衝撃を逃がして、半導体装置の歩留まりを向上させる。
【解決手段】半導体装置100は、シリコン層4上に形成された多層配線構造3内で、平面視において素子形成領域50の外周に形成されたシールリング6と、シールリング6のさらに外周に形成されたダミーメタル構造30a〜ダミーメタル構造30iを含む。ダミーメタル配線24は、内周側に形成されたものほど上層に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高性能化に伴い、半導体ウェハ拡散プロセスにおいて、比誘電率がSiOより低い、いわゆる「low-k膜(低誘電率絶縁膜)」と呼ばれる絶縁膜形成技術が導入されている。この「low-k膜」には様々な種類があるが、一般的に密着性や機械強度が弱い。そのため、ウェハをダイシングした時に発生するクラックが回路形成領域に達して回路形成領域に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0003】
特許文献1(特開2006−5288号公報)には、ダイシング領域側の各層にダミービアを形成する技術が記載されている。これにより、ダイシング時にクラックが発生しても、ダミービアによってクラックがシールリングにまで伝播するのを抑制することができるとされている。
【0004】
特許文献2(特開平6−5701号公報)には、スクライブラインの両側に複数の溝を形成し、スクライブラインに一致させてカッティング溝を形成してウェハを分割する手順が記載されている。また、特許文献3(特開平9−306872号公報)には、半導体ウェハ上の複数の半導体チップ領域間に形成されたスクライブライン領域に第1の溝および第2の溝の二重溝からなるチッピング防止部を設けた構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−5288号公報
【特許文献2】特開平6−5701号公報
【特許文献3】特開平9−306872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、low-k膜の密着強度が低下すると、チッピング片のサイズが増大してしまう。チッピング片のサイズが大きくなると、特許文献2や特許文献3に記載されたように溝を設けていても、ダイシング時の研削水によってチッピング片がチップ内側に押し出され、溝を越えて、溝の内側の膜への接触が起こる。このとき、チッピング片はダイシング時における高圧の研削水とSi破片を含みながら接触する為、チップ内部の膜にダメージが入ってしまう。チップ内部の膜にクラックが残ったままになると、組立時に不良となり、組立歩留が低下する。
【0007】
また、特許文献1に記載されたように、ダミービアが全層にわたって形成された構成とすると、クラック伝播が逃げにくいという問題が生じる。以下、この問題のメカニズムを図14から図17を参照して説明する。
【0008】
図14において、半導体装置200は、ストッパ絶縁膜202、低誘電率絶縁膜204および保護絶縁膜206がこの順で積層された絶縁層が複数積層された多層構造を有する。半導体装置200において、多層構造の全層にわたってダミービア208が形成されている。ダイシング時の衝撃、クラックはスクライブラインからチップ内部に向かって伝わるが、一般には、図14に示すように、密着強度の弱い低誘電率絶縁膜204とその下層のストッパ絶縁膜202との界面剥離210となって伝わる。この界面剥離210がダミービア208まで伝播されると、図15に示すように、ダミービア208と低誘電率絶縁膜204との界面剥離210´およびダミービア208内部への衝撃伝播212へと変換される。
【0009】
この時、ダミービア208が長過ぎると、衝撃の逃げ場がなくなり、界面剥離210´よりもダミービア208内部への衝撃伝播212が優勢に進行する。その結果、図16に示すように、メタル破断214が発生する。そして、図17に示すように、ダミービア208よりもチップ内部側において、低誘電率絶縁膜204とその下層のストッパ絶縁膜202との界面剥離216が進行する。界面剥離216が途中で止まると、応力が残ったままになり、この状態で組立を行うと、熱ストレスによって剥離がさらに進行して、組立不良となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成され、配線および絶縁膜により構成された配線層が複数積層された多層配線構造と、
前記多層配線構造内で、平面視において素子形成領域の外周に形成されたシールリングと、
前記シールリングの外周に形成され、ダミー配線を含む第1のダミーメタル構造と、
前記第1のダミーメタル構造と前記シールリングとの間に形成され、ダミー配線を含む第2のダミーメタル構造と、
を含み、
前記第2のダミーメタル構造の前記ダミー配線の下面は前記第1のダミーメタル構造の前記ダミー配線の下面よりも上方に配置され、
前記第2のダミーメタル構造の前記ダミー配線の上面は前記第1のダミーメタル構造の前記ダミー配線の上面よりも上方に配置された半導体装置が提供される。
本発明によれば、
半導体基板と、
前記半導体基板上に、それぞれ配線が形成された第1の絶縁層および第2の絶縁層の順で形成された構成を含む多層配線構造と、
前記多層配線構造内で、平面視において素子形成領域の外周に形成されたシールリングと、
前記第1の絶縁層中に形成されるとともに、前記シールリングの外周に形成された第1のダミーメタル構造と、
前記第2の絶縁層中に形成されるとともに前記第1のダミーメタル構造と前記シールリングとの間に形成された第2のダミーメタル構造と、
を有し、
前記第1のダミーメタル構造と前記第2のダミーメタル構造とは、平面視において隣接するとともに重ならず、
前記第1のダミーメタル構造の上面は第2のダミーメタル構造の下面と同じ、または前記下面より上方に設けられている半導体装置が提供される。
【0011】
素子形成領域は、略四辺形を有する構成とすることができ、シールリングは、素子形成領域の四方を囲む構成とすることができる。また、第1のダミーメタル構造および第2のダミーメタル構造は、さらにシールリングの外周で素子形成領域の四方を囲む構成とすることができる。本発明において、第1のダミーメタル構造および第2のダミーメタル構造のダミー配線は、それぞれ、素子形成領域の四方を囲む構成とすることができる。第1のダミーメタル構造および第2のダミーメタル構造は、半導体基板上の、シールリングよりも外周に形成されたスクライブライン領域に形成することができる。
【0012】
本発明において、ダミー配線は、ダイシング時の衝撃で生じた水平方向の応力がダミー配線まで伝搬されると、その応力がそのまま水平方向に伝搬するのではなく、垂直方向の応力に変換されてダミー配線の側面に沿って上方に移動した後、ダミー配線の上面でダミー配線の角変形を生じさせ、上層の絶縁膜の破断や界面剥離が生じるように配置することができる。たとえば、ダミー配線の上面が、多層配線構造を構成する絶縁膜間の界面と略同水準に配置されるようにすることにより、ダミー配線の側面に沿って垂直方向に移動した応力が絶縁膜間の剥離等により水平方向の応力に変換されやすくすることができる。なお、ダミー配線は、スリットビアも含む。ここで、ダミー配線は、上面がたとえば比誘電率が3.3以下の低誘電率膜と接するように配置することができる。また、ダミー配線は、上面が、当該ダミー配線を構成する材料との密着性が悪い膜や機械強度が弱い膜と接するようにすることができる。これにより、ダミー配線と膜との剥離を生じやすくすることができ、水平方向の応力に変換しやすくすることができる。ダミー配線を構成する材料は、たとえばAl、Cu、W等とすることができる。
【0013】
通常、多層配線構造は、半導体基板上に形成されたローカル多層配線層、その上に形成されたセミグローバル配線層、さらにその上に形成されたグローバル配線層を含む。たとえば、ローカル多層配線層が5層である場合、ダミー配線がローカル多層配線層全体にわたって連続的に垂直方向に形成されると、水平方向の応力が垂直方向に変換されず、クラック伝播の逃げ場所がなくなってしまう。そのため、ダミー配線の断線が生じたり、組立時に剥離が生じて組立不良が生じることになる。
【0014】
本発明によれば、外側のダミー配線の上面が内側のダミー配線の上面と下面の間、または内側のダミー配線の下面以上の高さに配置された構成とされるので、ダイシングによるストレスやダイシング時におけるチッピング片による接触を起因とする衝撃が多層配線構造の水平方向に生じても、その衝撃がダミー配線の角変形によって上層側に垂直方向に変換されるようにすることができる。さらに、その衝撃が再度水平方向に変換されるようにすることもできる。
【0015】
本発明において、応力が水平方向、垂直方向、再度水平方向と順に変換され、最終的に応力が多層配線構造の最上層から上方に抜けるように、ダミー配線を配置することができる。これにより、衝撃によって配線層に生じたクラックを、チッピングとして開放し、クラックが残らないようにすることができる。
【0016】
ダミーメタル配線は、配線およびスリットビアとの組合せにより形成することができる。ダミーメタル配線は、多層配線構造の配線およびビアを作成するのと同時に、シングルダマシンプロセスまたはデュアルダマシンプロセスで製造することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ダイシング時の衝撃を逃がして、半導体装置の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における半導体装置の上面図である。
【図3】本発明の実施の形態における半導体装置において、ダイシング時の応力が変換されるメカニズムを示すための図である。
【図4】本発明の実施の形態における半導体装置において、ダイシング時の応力が変換されるメカニズムを示すための図である。
【図5】本発明の実施の形態における半導体装置において、ダイシング時の応力が変換されるメカニズムを示すための図である。
【図6】本発明の実施の形態における半導体装置において、ダイシング時の応力が変換されるメカニズムを示すための図である。
【図7】本発明の実施の形態における半導体装置において、ダイシング時の応力が変換されるメカニズムを示すための図である。
【図8】本発明の実施の形態における半導体装置において、ダイシング時の応力が変換されるメカニズムを示すための図である。
【図9】本発明の実施の形態における半導体装置において、ダイシング時の応力が変換されるメカニズムを示すための図である。
【図10】本発明の実施の形態における半導体装置の他の例を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態における半導体装置の他の例を示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態における半導体装置の他の例を示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図14】従来の半導体装置の問題点を説明するための断面図である。
【図15】従来の半導体装置の問題点を説明するための断面図である。
【図16】従来の半導体装置の問題点を説明するための断面図である。
【図17】従来の半導体装置の問題点を説明するための断面図である。
【図18】本発明の実施の形態における半導体装置の構成を示す平面図である。
【図19】本発明の実施の形態における半導体装置の構成を示す平面図である。
【図20】本発明の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図21】本発明の実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、以下の実施の形態において、積層方向の同位置に配置されたダミーメタル配線をあわせて一つの「ダミーメタル構造」という。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態における半導体装置の構成を示す断面図である。図2は、半導体装置100の上面図である。
本実施の形態において、半導体装置100は、たとえばシリコン基板であるシリコン層4(半導体基板)と、シリコン層4上に形成され、配線(不図示)および絶縁膜により構成された配線層が複数積層された多層配線構造3と、素子形成領域50において多層配線構造3中に形成されたシールリング6と、スクライブライン領域52において多層配線構造3中に形成された第1のダミーメタル構造30a、第2のダミーメタル構造30b、第3のダミーメタル構造30c、第4のダミーメタル構造30d、第5のダミーメタル構造30e、第6のダミーメタル構造30f、第7のダミーメタル構造30g、第8のダミーメタル構造30h、および第9のダミーメタル構造30iと、素子形成領域50において多層配線構造3上に形成されたポリイミド層1とを含む。第1のダミーメタル構造30a〜第9のダミーメタル構造30iは、外周側からこの順に配置される。すなわち、素子形成領域50側から、第9のダミーメタル構造30i、第8のダミーメタル構造30h、・・・第2のダミーメタル構造30b、および第1のダミーメタル構造30aの順で配置される。なお、本実施の形態において、配線は、シングルダマシンプロセスにより形成することができる。
【0021】
ここで、第1のダミーメタル構造30a〜第9のダミーメタル構造30iは、それぞれダミーメタル配線24(ダミー配線)を含む。本実施の形態において、第1のダミーメタル構造30a〜第9のダミーメタル構造30iは、それぞれ、1つのダミーメタル配線24を含む。各ダミーメタル構造のダミーメタル配線24は、多層配線構造3の所定数以上の配線層に連続して配置されない。本実施の形態において、各ダミーメタル構造において、ダミーメタル配線24は、多層配線構造3の一つの配線層を貫通するとともに二層以上の配線層には連続して配置されない。
【0022】
また、本実施の形態において、素子形成領域50に近い側に配置されたダミーメタル構造のダミーメタル配線24ほど、多層配線構造3の上層側に配置される。たとえば、第1のダミーメタル構造30aと第2のダミーメタル構造30bとの関係では、第2のダミーメタル構造30bのダミーメタル配線24の下面および上面は、それぞれ、第1のダミーメタル構造30aのダミーメタル配線24の下面および上面よりも上方に配置される。
【0023】
また、たとえば、素子形成領域50から最も遠い最外周の第1のダミーメタル構造30aのダミーメタル配線24は、多層配線構造3の最下層に形成される。第1のダミーメタル構造30aのダミーメタル配線24下面は、シリコン層4に接して設けられる。次いで、第2のダミーメタル構造30bのダミーメタル配線24は、第1のダミーメタル構造30aのダミーメタル配線24よりも上層に形成される。このように、本実施の形態において、ダミーメタル配線24は、素子形成領域50に近づくにつれて最下層から上層に形成された階段状に配置される。最も素子形成領域50に近い内周側の第9のダミーメタル構造30iにおいて、ダミーメタル配線24の上面は多層配線構造3の上面に露出する。これにより、ダイシング時の衝撃を多層配線構造3上方に逃がすことができる。
【0024】
図2に示すように、素子形成領域50は略四辺形を有する。シールリング6は、多層配線構造3内で、平面視において素子形成領域50の外周に形成される。また、第1のダミーメタル構造30a〜第9のダミーメタル構造30iは、多層配線構造3内で、平面視においてシールリング6の外周に外側からこの順に形成される。すなわち、第8のダミーメタル構造30hは第9のダミーメタル構造30iの外周に形成され、第7のダミーメタル構造30gはさらにその外周に形成され、第6のダミーメタル構造30f〜第1のダミーメタル構造30aも同様に形成される。ただし、図2では、ダミーメタル構造30a〜30iを省略して4列分しか記載していない。このように、ダミーメタル構造が素子形成領域50の四方を覆う配置とすることにより、クラックの進行漏れを防止することができる。また、各素子形成領域50の間には、アライメントマーク40が配置されている。
【0025】
次に、図3から図9を参照して、本実施の形態における半導体装置100において、ダイシング時の応力が変換されるメカニズムを説明する。
図3では、一つのダミーメタル配線24のみを示している。多層配線構造3は、第1絶縁層21、およびその上に形成された第2絶縁層22を含む。第1絶縁層21は、シリコン酸化膜17、ストッパ絶縁膜18、低誘電率絶縁膜19、および保護絶縁膜20がこの順で積層された構成を有する。低誘電率絶縁膜19は、たとえば比誘電率膜が3.3以下、好ましくは2.9以下の絶縁膜とすることができる。
【0026】
第1絶縁層21において、ストッパ絶縁膜18、低誘電率絶縁膜19および保護絶縁膜20中には、ダミーメタル配線24が形成される。本実施の形態において、ダミーメタル配線24は、ストッパ絶縁膜18、低誘電率絶縁膜19および保護絶縁膜20を貫通するように形成される。ダミーメタル配線24の上面は保護絶縁膜20上面に至り、下面はストッパ絶縁膜18下面に至っている。図示していないが、第2絶縁層22は、第1絶縁層21と同様に複数の膜が積層された構成とすることができる。この場合、第1絶縁層21に設けられたダミーメタル配線24は、その上面が第2絶縁層22中の低誘電率膜の下面と接するように、第2絶縁層22の途中まで形成された構成とすることができる。なお、第1絶縁層21および第2絶縁層22は、ローカル多層配線層を構成する。
【0027】
このような構成の半導体装置100において、スクライブラインに沿ってダイシングを行う場合を想定する。このとき、ダイシングによる衝撃によって、ローカル多層配線層の最下部で不具合が生じやすい。すなわち、図4に示したように、低誘電率絶縁膜19とストッパ絶縁膜18の界面で、剥離23が生じ、それが素子形成領域50側に向かって進行しやすい。
【0028】
本実施の形態において、第1絶縁層21中に、上面が保護絶縁膜20上面に至り、下面がストッパ絶縁膜18下面に至るようなダミーメタル配線24が配置されている。そのため、剥離23が、ダミーメタル配線24まで到達すると、低誘電率絶縁膜19とストッパ絶縁膜18との間の剥離23がダミーメタル配線24で止められ、ダイシングによる衝撃が垂直方向に変わる。具体的には、図5に示すように、ダミーメタル配線24と低誘電率絶縁膜19との剥離23’、ダミーメタル配線24内部への応力伝播31、およびダミーメタル配線24の角変形32が生じる。ここで、垂直方向の界面の剥離23’および角変形32の両方の効果により、上層の第2絶縁層22に強い応力伝播33が生じる。その結果、第2絶縁層22が破断または剥離する。
【0029】
図6は、第2絶縁層22に破断25が生じた例を示す図である。破断25が半導体装置100の表面側まで到達すると、チッピングが生じる。
【0030】
図7は、ダミーメタル配線24の上面を伝って、第2絶縁層22と第1絶縁層21との界面に剥離26が生じた例を示す図である。この場合、剥離26がさらに水平に進行することがある。図8に示すように、第2絶縁層22中にもダミーメタル配線27を設けておくことにより、第1絶縁層21に設けられたダミーメタル配線24について上述したのと同様に、第1絶縁層21と第2絶縁層22との間の剥離26が第2絶縁層22中のダミーメタル配線27で止められ、応力を垂直方向に向けることができる。これにより、第2絶縁層22とダミーメタル配線27とが剥離し、図9に示したように剥離28が生じる。
なお、第1絶縁層21および第2絶縁層22は、それぞれ、単層構造であっても積層構造であってもよい。たとえば、第2絶縁層22も第1絶縁層21と同様、ストッパ絶縁膜18や保護絶縁膜20を含んでいてもよい。さらに、図3等には第1絶縁膜21がシリコン酸化膜17を含む構成を示しているが、第1絶縁層21は、シリコン酸化膜17を含まない構成とすることもできる。
【0031】
図1に戻り、多層配線構造3の最下層から上面まで、ダミーメタル配線24を外周側から素子形成領域50の方向に、素子形成領域50に近づくにつれて上層となるようにダミーメタル配線24を繰り返し階段状に配置することにより、ダイシング時にいずれの配線層で剥離が生じても、クラック進行を防止することができる。また、第9のダミーメタル構造30iのダミーメタル配線24の上面が、多層配線構造3の最上層の上面と同水準以上に配置されることにより、クラックを多層配線構造3の外部に逃がすことができる。また、これにより、ダイシングの衝撃を最終的にはチッピングとして、上に逃がすことができる。
【0032】
さらに、隣接するダミー配線構造のダミーメタル配線24は、高さ方向の位置が互いに重複するように配置することができる。すなわち、たとえば第9のダミーメタル構造30iのダミーメタル配線24下面は、第8のダミーメタル構造30hのダミーメタル配線24の上面の水準下方に配置することができる。このように隣接する列のダミーメタル配線24にオーバーラップ領域を設けることにより、ダミーメタル配線24を境に、水平方向の応力を垂直方向に変換しやすくすることができる。
【0033】
また、本実施の形態における半導体装置100において、たとえば特許文献2や特許文献3に記載されたのと同様に、スクライブライン領域52にチッピング防止用の溝を設けた構成を併用して用いることができる。この構成において、ダミーメタル構造群をチッピング防止用の溝の外周、内周、またはその両方に配置することができる。以下、具体例を説明する。
【0034】
図10は、スクライブライン領域52において、ダミー配線構造群(第1のダミーメタル構造30a〜第9のダミーメタル構造30i)とシールリング6との間に溝5が設けられた構成を示す。図11は、スクライブライン領域52において、ダミー配線構造群(第1のダミーメタル構造30a〜第9のダミーメタル構造30i)のさらに外周に溝5が設けられた構成を示す。
【0035】
また、本実施の形態において、半導体装置100は、階段状のダミー配線構造群(第1のダミーメタル構造30a〜第9のダミーメタル構造30i)を複数含む構成とすることもできる。図12は、複数のダミーメタル構造群の間に溝5が設けられた構成を示す。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態における半導体装置100によれば、機械強度が弱く、かつ密着性の弱い低誘電率膜を含む先端プロセス世代のウェハを、膜剥離不良なく個片化できる。また、個片化時に残った微小なクラックを回路内へ進行させない構造になっているので、パッケージング後の信頼性を確保できる。
【0037】
(第2の実施の形態)
図13は、本実施の形態における半導体装置100の構成を示す断面図である。
本実施の形態において、半導体装置100は、第1のダミーメタル構造30a、第2のダミーメタル構造30b、第3のダミーメタル構造30c、第4のダミーメタル構造30d、および第5のダミーメタル構造30eを含む。本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様、さらに多数のダミーメタル構造を含んでもよい。
【0038】
本実施の形態において、第1のダミーメタル構造30a〜第5のダミーメタル構造30eは、それぞれ、複数のダミーメタル配線24を含む。各ダミーメタル構造は、多層配線構造3の積層方向においてダミーメタル配線24が形成された領域と形成されていない領域とが交互に設けられた配置を有する。また、一のダミーメタル構造において、隣接する他のダミーメタル構造においてダミーメタル配線24が形成されていない領域と同水準の領域にはダミーメタル配線24が形成される。たとえば、第1のダミーメタル構造30aと第2のダミーメタル構造30bとの関係では以下のようになる。第2のダミーメタル構造30bにおいて、第1のダミーメタル構造30aにおいてダミーメタル配線24が形成されていない領域と同水準の領域にはダミーメタル配線24が形成される。また、第1のダミーメタル構造30aにおいて、第2のダミーメタル構造30bにおいてダミーメタル配線24が形成されていない領域と同水準の領域にはダミーメタル配線24が形成される。すなわち、半導体装置100は、多層配線構造3の断面図において、ダミーメタル配線24が千鳥格子状等の斜格子状に形成された構造とすることができる。また、第1の実施の形態で説明したのと同様に、隣接する列のダミーメタル配線24にオーバーラップ領域を設けることができる。これにより、ダミーメタル配線24を境に、水平方向の応力を垂直方向に変換しやすくすることができる。
【0039】
本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様のメリットが得られる。さらに、半導体装置100のスクライブライン幅が狭い場合でも、ダミーメタル配線24を効率よく配置することができる。とくに、剥離が生じやすい絶縁膜が多層配線構造3の上層にある場合や、ダミーメタル配線24の高さが2層分程度でも衝撃方向が変わる場合は、本実施の形態における構成を用いることができる。
【0040】
(第3の実施の形態)
図18は、本実施の形態における半導体装置100の構造を示す平面図である。
本実施の形において、ダミー配線構造群60(ダミーメタル群)を素子形成領域50の角部近傍のみに配置している点で他の実施の形態と異なる。
図18に示すように、ダミー配線構造群60は、たとえば、素子形成領域の角部にL字型に形成することができる。形状は角部を覆っていればよく、L字型に限定されるものではない。たとえば、図19に示したように直線状であってもよく、半円状であってもよい。ダミー配線構造群60は、少なくとも第1のダミーメタル構造と第2のダミーメタル構造を含む。なお、ここでいうダミー配線構造群60には、本明細書に記載されているいずれの構成を用いてもよい。
【0041】
ダイシング時の応力は特に素子形成領域の角部に集中するため、本構成では、角部からの応力伝搬を垂直方向に逃がすことができる。よって、素子形成領域における剥離等を防止することができる。
【0042】
さらに、一般に、スクライブライン領域にはアライメントマークや重ね合わせマーク等のアクセサリパターンが配置される(不図示)。本構成ではダミー配線構造群60が素子形成領域50の角部近傍にのみに配置されているため、アクセサリパターン配置の自由度が向上する。
【0043】
また、応力は素子形成領域の角部に集中するために、この領域には素子は形成せず、したがって図19に示すように、シールリング6は素子形成領域50の角部の内側に形成する場合がある。この場合には、ダミー配線構造群60は、シールリング6の外側であって、たとえば、素子形成領域50の辺に対して斜め方向に、直線状に形成することができる。図ではダミー配線構造群60の一部は、素子形成領域50の内部を横切って形成されているが、素子形成領域50の外側に形成してもよい。
【0044】
(第4の実施の形態)
図20は、本実施の形態における半導体装置100の構造を示す断面図である。
本実施の形態において、最上層のダミーメタル61上に該ダミーメタルよりも硬度または弾性率が低いメタル材料により構成された構造62が形成されている点で、他の実施の形態とは異なる。図中において、表面保護膜(ポリイミド膜等)の記載は省略している。
【0045】
ダミーメタル61等のダミーメタルを構成する材料がCuであれば、その上に形成される構造62は、たとえばAlにより構成することができる。構造62は、素子形成領域50のパッド電極(不図示)と同じ材料のものにより構成することができ、構造62は当該パッド電極と同時に形成することができる。なお、図20に示すダミーメタルの構造は例示であり、本明細書に記載されているいずれの構成を用いてもよい。
【0046】
本実施の形態における半導体装置100によれば、最上層のダミーメタル61上に硬度または弾性率が低いメタル材料、すなわち変形し易いメタル材料により構成された構造が形成されているため、ダイシング時に発生する応力がより有効に垂直方向に伝搬することになる。
【0047】
(第5の実施の形態)
図21は、本実施の形態における半導体装置100の構造を示す断面図である。図中において、表面保護膜(ポリイミド等)の記載は省略している。図21(b)および図21(c)は、それぞれ、図21(a)のA、B面の断面図である。
【0048】
本実施の形態では、図21(a)から図21(c)に示すように、ダミーメタル構造30a〜30fは配線層63に形成されたダミー配線65とビア層64に形成されたダミービア66からなる。ダミー配線65はライン状に形成されているのに対し、ダミービア66はライン状ではなく通常のビアと同様にプラグ状(円筒状)に形成されている。ビア層にライン状のダミーメタルを形成することは、たとえばフォトリソグラフィー等の製造プロセス上の問題により困難な場合があるため、ダミービアのみ、通常のプラグ状(円筒状)のビアを形成することができる。
【0049】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0050】
ダミーメタル配線24は、衝撃方向が効果的に変更される程度に高さ(積層方向の長さ)を短くする必要があるが、シングルダマシンプロセスでもデュアルダマシンプロセスでもいずれで形成してもよい。ダミーメタル配線がデュアルダマシンプロセスで形成される場合、ダミーメタル配線は、配線層とビア層とに連続して形成されることになる。各ダミーメタル配線24は、一つの低誘電率膜を貫通するように配置されるとともに、上面が上層の低誘電率膜と接するように配置することができる。ただし、製造プロセスまたは配線膜構成の都合上、上層の低誘電率膜と接する構成が困難な場合は、ダミーメタル配線24と密着性が悪い膜または機械強度が弱い他の膜と接するようにしても同様の効果が得られる。
なお、ダミーメタル配線は、全配線層に適用されないようにしてもよい。たとえば、低誘電率膜が用いられないようなグローバル配線層においては、ダミーメタル配線の形成を省略することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 ポリイミド層
3 多層配線構造
4 シリコン層
5 溝
6 シールリング
17 シリコン酸化膜
18 ストッパ絶縁膜
19 低誘電率絶縁膜
20 保護絶縁膜
21 第1絶縁層
22 第2絶縁層
23 剥離
24 ダミーメタル配線
25 破断
26 剥離
28 剥離
30a 第1のダミーメタル構造
30b 第2のダミーメタル構造
30c 第3のダミーメタル構造
30d 第4のダミーメタル構造
30e 第5のダミーメタル構造
30f 第6のダミーメタル構造
30g 第7のダミーメタル構造
30h 第8のダミーメタル構造
30i 第9のダミーメタル構造
31 応力伝播
32 角変形
33 応力伝播
40 アライメントマーク
50 素子形成領域
52 スクライブライン領域
60 ダミーメタル群
61 最上層のダミーメタル
62 メタル材料により構成された構造
63 配線層
64 ビア層
65 ダミー配線
66 ダミービア
100 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成され、配線および絶縁膜により構成された配線層が複数積層された多層配線構造と、
前記多層配線構造内で、平面視において素子形成領域の外周に形成されたシールリングと、
前記シールリングの外周に形成され、ダミー配線を含む第1のダミーメタル構造と、
前記第1のダミーメタル構造と前記シールリングとの間に形成され、ダミー配線を含む第2のダミーメタル構造と、
を含み、
前記第2のダミーメタル構造の前記ダミー配線の下面は前記第1のダミーメタル構造の前記ダミー配線の下面よりも上方に配置され、
前記第2のダミーメタル構造の前記ダミー配線の上面は前記第1のダミーメタル構造の前記ダミー配線の上面よりも上方に配置された半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1のダミーメタル構造および前記第2のダミーメタル構造は、隣接する列に配置された半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記第2のダミーメタル構造の前記ダミー配線の前記下面は、前記第1のダミーメタル構造の前記ダミー配線の前記上面と同水準または下方に配置された半導体装置。
【請求項4】
請求項1から3いずれかに記載の半導体装置において、
前記第2のダミーメタル構造の前記ダミー配線および前記第1のダミーメタル構造の前記ダミー配線は、それぞれ前記多層配線構造の一つの前記配線層を貫通するとともに、二層以上の前記配線層に連続して配置されない半導体装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれかに記載の半導体装置において、
前記第1のダミーメタル構造および前記第2のダミーメタル構造は、それぞれ、複数の前記ダミー配線を含み、
前記第1のダミーメタル構造および前記第2のダミーメタル構造は、前記多層配線構造の積層方向において前記ダミー配線が形成された領域と形成されていない領域とが交互に設けられた配置を有する半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置において、
前記第2のダミーメタル構造において前記ダミー配線が形成されていない領域と同水準の領域には前記第1のダミーメタル構造の前記ダミー配線が形成されるとともに、前記第1のダミーメタル構造において前記ダミー配線が形成されていない領域と同水準の領域には前記第2のダミーメタル構造の前記ダミー配線が形成された半導体装置。
【請求項7】
請求項1から6いずれかに記載の半導体装置において、
各前記配線層は、積層された複数の絶縁膜を含み、
前記ダミー配線の上面が、異なる絶縁膜間の界面と略同水準に形成された半導体装置。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置において、
各前記配線層の前記複数の絶縁膜は、比誘電率が3.3以下の低誘電率膜を含み、
前記ダミー配線が、一の前記配線層中の前記低誘電率膜を貫通するとともにその上面が前記一の配線層の上層の他の前記配線層の前記低誘電率膜の下面と接する半導体装置。
【請求項9】
請求項1から8いずれかに記載の半導体装置において、
前記第2のダミーメタル構造の前記ダミー配線の前記上面は、前記多層配線構造の最上層の上面と同水準以上に配置された半導体装置。
【請求項10】
半導体基板と、
前記半導体基板上に、それぞれ配線が形成された第1の絶縁層および第2の絶縁層の順で形成された構成を含む多層配線構造と、
前記多層配線構造内で、平面視において素子形成領域の外周に形成されたシールリングと、
前記第1の絶縁層中に形成されるとともに、前記シールリングの外周に形成された第1のダミーメタル構造と、
前記第2の絶縁層中に形成されるとともに前記第1のダミーメタル構造と前記シールリングとの間に形成された第2のダミーメタル構造と、
を有し、
前記第1のダミーメタル構造と前記第2のダミーメタル構造とは、平面視において隣接するとともに重ならず、
前記第1のダミーメタル構造の上面は前記第2のダミーメタル構造の下面と同じ、または前記下面より上方に設けられている半導体装置。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体装置において、
前記第1のダミーメタル構造と前記第2のダミーメタル構造が、平面視において素子形成領域の角部近傍に形成されている半導体装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載の半導体装置において、
前記第2のダミーメタル構造の上に前記ダミーメタルを構成する材料よりも硬度または弾性率が低いメタル材料により構成された構造が形成されている半導体装置。
【請求項13】
請求項10から12いずれかに記載の半導体装置において、
前記第1のダミーメタル構造と前記第2のダミーメタル構造とが、それぞれダミー配線とダミービアからなり、
前記ダミービアがプラグ状に形成されている半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−12788(P2013−12788A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−231330(P2012−231330)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【分割の表示】特願2007−190873(P2007−190873)の分割
【原出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】