説明

半導体製造装置および半導体製造方法

【課題】スループットを低下することなく塗布膜からの昇華物の発生を抑制し、ダストの発生による半導体装置の歩留りの低下を抑えることが可能な半導体製造装置および半導体製造方法を提供する。
【解決手段】塗布膜の形成された基板1を所定の温度でベーク処理するためのベークチャンバー2と、ベーク処理された基板1を冷却するための冷却チャンバー3と、ベーク処理された基板1を、ベークチャンバー2から冷却チャンバー3に搬送するための第1の搬送機構31を備え、冷却チャンバー3は、冷却チャンバー3に搬送された基板1を、冷却チャンバー3内で搬送するための第2の搬送機構35と、基板を、搬送方向に室温まで降温するための温度制御機構34a、34b、34c、34d、34e、34fを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ARC(Anti−Reflective−Coating)膜などの塗布膜の形成された基板をベーク処理するための半導体製造装置および半導体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体ウェハやLCD基板など(以下基板と記す)の表面にパターンを形成する工程において、リソグラフィー技術が用いられている。通常、このようなパターン形成工程は、基板表面にレジストを塗布してレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、形成されたレジスト膜にパターンを露光する露光工程と、露光後のレジスト膜を現像処理する現像工程から構成されている。
【0003】
近年、素子の微細化に伴い、より高度な微細加工が要求されており、例えばレジスト膜形成前に、ARC膜を形成する技術が適用されている。これにより、露光時のウェハなどからの反射によるレジスト膜の裾引きを抑制するとともに、現像液に含まれる有機アミンによる基板へのコンタミネーションを防止することが可能である。
【0004】
このようなARC膜は、基板表面にスピンコートなどにより塗布膜を形成した後、レジストとのミキシング防止とウェハなどとの密着性の向上のために、加熱処理を行なうことにより形成されている。
【0005】
この加熱処理において、例えば、特許文献1[0005]などに記載されているように、ARC昇華物が発生する。加熱処理後、基板は、同[0026]に記載されているように、冷却アームにおいて冷却された後に搬出されるが、このとき、基板が急激に冷却されることにより、ARC昇華物が発生する。そして、このARC昇華物が、基板表面や、処理チャンバー内でダストの要因となり、歩留り低下を引き起こすという問題がある。
【0006】
また、同図3に示すような装置構造においては、基板は、開口部45より搬入、搬出され、装置内を行き来する構造になっているため、ARC昇華物が発生しないように冷却速度を遅くすると、そのままスループットに影響してしまうという問題がある。
【特許文献1】特開2003−347198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、スループットを低下させることなく塗布膜からの昇華物の発生を抑制し、ダストの発生による半導体装置の歩留りの低下を抑えることが可能な半導体製造装置および半導体製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、塗布膜の形成された基板を所定の温度でベーク処理するためのベークチャンバーと、ベーク処理された前記基板を冷却するための冷却チャンバーと、ベーク処理された前記基板を、前記ベークチャンバーから前記冷却チャンバーに搬送するための第1の搬送機構を備え、前記冷却チャンバーは、前記冷却チャンバーに搬送された前記基板を、前記冷却チャンバー内で搬送するための第2の搬送機構と、前記基板を、搬送方向に室温まで降温するための温度制御機構を備えることを特徴とする半導体製造装置が提供される。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、塗布膜の形成された基板を、所定の温度でベーク処理し、ベーク処理された前記基板を冷却チャンバーに搬送し、前記冷却チャンバーに搬送された前記基板を、前記冷却チャンバーにおいて、搬送しながら室温まで冷却した後、前記冷却チャンバーから搬出することを特徴とする半導体製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施態様によれば、半導体製造装置および半導体製造方法において、スループットを低下させることなく塗布膜からの昇華物の発生を抑制し、ダストの発生による半導体装置の歩留りの低下を抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明の実施形態について、図を参照して説明する。
【0012】
図1に本実施形態の半導体製造装置の構成を示す。図に示すように、ARC塗布膜が形成されたウェハ1がベーク処理されるベークチャンバー2と、冷却チャンバー3と、ベークチャンバーと冷却チャンバーを接続する接続部4から構成されている。
【0013】
ベークチャンバー2には、ウェハ1をベークチャンバー2に搬入するためのウェハロード部21と、ウェハ1を搬送するための搬送アーム22と、ウェハ1をベーク処理するためのヒータを備えたベークユニット23が設置されている。そして、ベークユニット23に載置されるウェハ1の温度雰囲気を一定に制御するためのチャンバーカバー24が設けられている。
【0014】
ベークチャンバー2には、接続部4が接続されており、ベークユニット2により加熱されたウェハ1を急冷しないために、ヒータ41が設けられている。
【0015】
接続部4には、冷却チャンバー3が接続されており、ウェハ1を搬送するための搬送アーム31が設置され、その上部には排気口32が設けられている。そして、冷却チャンバー3内を加熱するために並列に配置された複数のヒータ33a、33b、33c、33d、33eと、これらを所定の温度勾配となるように夫々制御するための温度制御機構34a、34b、34c、34d、34e、34fが設置されている。そして、冷却チャンバー3内をウェハ載置して搬送するための駆動機構を備えた冷却搬送プレート35と、冷却搬送プレート35の温度を制御するための温度制御機構36、および冷却搬送プレート35の搬送速度を制御するための速度制御機構37が設置されている。さらに、ウェハ1を搬出するためのウェハロード部38が設けられている。
【0016】
このような半導体製造装置を用いて、以下のようにしてウェハ上のARC膜がベーク処理され、冷却される。先ず、ARC塗布膜が形成されたウェハ1は、ウェハロード部21よりベークチャンバー2に搬入される。そして、ベークチャンバー2内を搬送アーム22によりベークユニット23に搬送される。
【0017】
ベークユニット23に搬送されたウェハ1は、チャンバーカバー24で覆われた後、例えば215℃でベーク処理される。そして、ベークユニット23内でベーク処理されたウェハ1は、搬送アーム31を用いて、ヒータ41によりベーク温度(例えば215℃)に加熱された接続部4を介して、冷却チャンバー3に搬送される。
【0018】
冷却チャンバー3に搬送されたウェハ1は、冷却搬送プレート35上に載置され、冷却チャンバー3内を搬送される。このとき、上方に設置された排気口32より、ARC塗布膜の昇華物が排出される。そして、予めヒータ33aおよび温度制御機構34aによりベーク温度(例えば215℃)となるように制御された領域aから、ヒータ33bおよび温度制御機構34bにより例えば200℃となるように制御された領域b、ヒータ33cおよび温度制御機構34cにより例えば150℃となるように制御された領域c、ヒータ33dおよび温度制御機構34dにより例えば100℃となるように制御された領域d、ヒータ33eおよび温度制御機構34eにより例えば50℃となるように制御された領域e、温度制御機構34fにより例えば室温25℃となるように制御された領域fを、ゆっくり移動させる。このとき、同時に冷却搬送プレート35を、温度制御機構36によりの温度徐々に降下させながら、速度制御機構37により例えば0.1cm/s〜30cm/sの速度となるように制御する。そして、室温25℃まで降温されたウェハ1は、ウェハロード部38より搬出される。
【0019】
このようにして、ARC塗布膜が形成されたウェハ1を、ベークチャンバー2においてベーク処理した後、冷却チャンバー3において徐々に降温し、室温となった後に搬出することにより、急激な温度低下による昇華物の発生を抑制することができる。また、ベーク処理されたウェハ1は、順次冷却チャンバー3に搬送されるため、スループットを低下させることなく、昇華物に起因するダストの発生による半導体装置の歩留りの低下を抑えることが可能となる。
【0020】
尚、本実施形態において、冷却チャンバー3は1つであるが、ベークユニット2と接続する接続部4において分岐させて、複数設けることにより、さらにスループットを向上させることが可能となる。
【0021】
また、冷却チャンバー3においては、徐々に降温させることができればよく、その手段は特に限定されるものではない。本実施形態においては、ウェハ1を搬送、冷却する冷却搬送プレート35と、冷却チャンバー3内の搬送される領域の双方を温度制御しているが、必ずしも双方の温度制御が可能でなくてもよい。但し、冷却搬送プレート35の温度制御を行わない場合は、熱伝導性の良い材料を用いることが好ましく、ヒータによる温度制御をより精密に行うことが好ましい。また、冷却搬送プレート35の温度制御を行う場合、途中少なくとも1か所以上にベーク温度より低く、室温より高い温度に加熱可能なヒータを設けることが好ましい。
【0022】
尚、搬出時に室温まで冷却しておくことが好ましいが、搬出時に昇華物が発生しない程度であれば、室温との温度差を有していてもよい。
【0023】
また、冷却搬送プレート35の搬送速度は、各領域温度にウェハ1の実温度が追従する速度であればよく、適宜設定、変動させることができるが、例えば30cm/s以下と比較的低速であることが好ましい。一方、スループットの向上の観点から、0.1cm/s以上であることが好ましい。
【0024】
本実施形態において、ベークチャンバー2においては、特に温度制御していないが、ベークチャンバー2内でベークユニット23に至る搬送領域を、予め例えば215℃に加熱しておくことにより、ウェハ1のベークチャンバー2内への搬入時に、外気(室温)流入によるベークチャンバー2内の急激な温度低下を抑制し、ARC昇華物の固化を抑えることが可能となる。さらに、ウェハロード部21側上部に排気口を設けてガスを排出することにより、外気の流入によるARC昇華物のベークチャンバー2内の拡散を抑制することが可能となる。
【0025】
また、ヒータ33a、33b、33c、33d、33eは、50〜215℃程度に加熱可能なものであれば、特に限定されるものではなく、例えば通常の抵抗加熱ヒータなどを用いることができる。そして、設置位置は特に限定されないが、冷却チャンバー3内部に設けられることが好ましく、その形状は、例えば図2に斜視図を示すように、格子状のヒータ33’の内側をウェハ1が搬送される構造となっていても良いし、上方および下方に、夫々リング状のヒータや渦巻状のヒータを設置しても良い。
【0026】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。その他要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一態様の半導体製造装置の構造を示す図。
【図2】本発明の一態様におけるヒータの形状を示す斜視図。
【符号の説明】
【0028】
1…ウェハ、2…ベークチャンバー、3…冷却チャンバー、4…接続部、21、38…ウェハロード部、22、31…搬送アーム、23…ベークユニット、24…チャンバーカバー、32…排気口、33a、33b、33c、33d、33e、33’、41…ヒータ、34a、34b、34c、34d、34e、34f…温度制御機構、35…冷却搬送プレート、36…温度制御機構、37…速度制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布膜の形成された基板を所定の温度でベーク処理するためのベークチャンバーと、
ベーク処理された前記基板を冷却するための冷却チャンバーと、
ベーク処理された前記基板を、前記ベークチャンバーから前記冷却チャンバーに搬送するための第1の搬送機構を備え、
前記冷却チャンバーは、
前記冷却チャンバーに搬送された前記基板を、前記冷却チャンバー内で搬送するための第2の搬送機構と、
前記基板を、搬送方向に室温まで降温するための温度制御機構を備えることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項2】
前記温度制御機構は、前記冷却チャンバー内を前記所定の温度より低く、室温より高くなるように加熱するためのヒータを備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記冷却チャンバーは複数であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
塗布膜の形成された基板を、所定の温度でベーク処理し、
ベーク処理された前記基板を冷却チャンバーに搬送し、
前記冷却チャンバーに搬送された前記基板を、前記冷却チャンバーにおいて、搬送しながら室温まで冷却した後、前記冷却チャンバーから搬出することを特徴とする半導体製造方法。
【請求項5】
前記冷却チャンバー内を、搬送方向に前記所定の温度から室温までの温度勾配を有するように温度制御することを特徴とする請求項4に記載の半導体製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−135440(P2008−135440A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318385(P2006−318385)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】