説明

半導体記憶装置及びその製造方法

【課題】強誘電体膜と絶縁膜との良好な界面を有し、メモリ特性の優れた半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】基板11上にゲート電極12、絶縁膜13、ソース、ドレイン電極15、16が形成され、さらに、絶縁膜13上には強誘電体膜14が形成されている。絶縁膜13と強誘電体膜14との界面が、電界効果トランジスタのチャネルをなし、強誘電体膜14の表面にもゲート電極17が形成されている。ゲート電極12、17は、強誘電体膜14の分極状態を制御する電圧が印加され、ソース、ドレイン電極15、16は、分極状態に応じてチャネルを流れる界面電流の大きさを検出する。そして、チャネルを形成する絶縁膜13及び強誘電体膜14の積層膜は、同一の元素からなる膜で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強誘電体膜と絶縁膜との界面をチャネルとする電界効果トランジスタを備えた半導体記憶装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電体を用いた不揮発性メモリには、大きく分けてキャパシタ型と、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタのゲート絶縁膜を強誘電体膜に置き換えた構造を有するField Effect Transistor(FET)型との2種類がある。
【0003】
キャパシタ型の強誘電体メモリは、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)と類似した構造であり、強誘電体キャパシタに電荷を保持し、強誘電体の分極方向によって、情報の0、1を区別する。情報を読み出す際に、記憶された情報を破壊してしまうため、情報の再書き込み動作が必要となる。そのため、読み出すごとに分極反転させることになり、分極反転疲労が問題となる。また、キャパシタを微細化すると、保持できる電荷量が減少するため、センスアンプで0、1を判別することが困難になる。キャパシタを立体構造にして電荷量を稼ぐなどのアプローチもされているが、技術的に今日のCMOS(Complementary-Metal-Oxide-Semiconductor)の微細化のスピードには追随できておらず、現在はICカードやタグなどの小容量用途に限定されている。
【0004】
一方、FET型の強誘電体メモリは、強誘電体膜の分極の向きによって変化するチャネルの導通状態を検出することにより情報を読み出すため、非破壊での情報の読み出しが可能である。また、スケーリング則に準ずるため、キャパシタ型に比べて飛躍的に微細化が可能である。Metal-Ferroelectric-Semiconductor-FET(MFSFET)型では、シリコン基板の上に強誘電体膜を形成する必要があるが、強誘電体膜の形成温度が高いために良好な界面を得ることは困難である。これを回避するために、シリコン基板と強誘電体膜の間に絶縁膜を挟んだMetal-Ferroelectric-Insulator-Semiconductor-FET(MFISFET)型も考案されているが、空乏層と絶縁膜との間で生じる内部電界により、メモリ保持特性が劣化する問題があり、未だ実用化に至っていない。
【0005】
今後、微細CMOSに強誘電体メモリを混載する上で、フラッシュメモリなどの他の不揮発性メモリに対して優位性を得るためには、微細化とともに、FET型の強誘電体メモリの性能向上が必須である。
【0006】
FET型の強誘電体メモリが抱える問題を解決するものとして、特許文献1に、強誘電体膜と絶縁膜との界面をキャリアが伝導するチャネルとする新しいメモリ構造が提案されている。
【0007】
図14は、特許文献1に記載された強誘電体メモリ100の構成を示した断面図である。シリコン基板101上に導電膜102及び絶縁膜103が形成され、絶縁膜103上には、ソース、ドレイン電極105、106が形成されている。そして、ソース、ドレイン電極105、106間であって、絶縁膜103上に強誘電体膜104が形成され、さらにその上にゲート電極107が形成されている。
【0008】
ゲート電極107と導電膜102との間に電圧を印加することによって、強誘電体膜104が分極された時(情報が入力された時)、絶縁膜103と強誘電体膜104との界面に、電子又は正孔の自由電荷が発生する。この自由電荷は、強誘電体膜104の分極の向きにより大きく変化する。分極が下を向いているときは、絶縁膜103と強誘電体膜104との界面には電子が少ないので、チャネルの電気伝導度は小さくなる。逆に、分極が上を向いているときは、絶縁膜103と強誘電体膜104との界面には電子が多いので、チャネルの電気伝導度は大きくなり、絶縁膜103と強誘電体膜104との界面に電流が流れる。このように、界面電流の有無を検出することにより、非破壊で情報を読み出すことができる。
【特許文献1】特開2003−332538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された強誘電体メモリ100は、情報の読み出しを強誘電体膜104と絶縁膜103との界面(チャネル)に流れる界面電流を利用するため、シリコン基板101と強誘電体膜104との間に絶縁膜103を挟んでも、空乏層と絶縁膜103との間で働く内部電界によるメモリ保持特性の劣化を回避できる点で有用である。
【0010】
しかしながら、チャネルを形成する絶縁膜103と強誘電体膜104との積層膜は、異なる元素からなる膜(例えば、絶縁膜103は酸化シリコン(SiO)、強誘電体膜104はジルコン酸チタン酸鉛(Pb(ZrTi1−x)O))からなるため、積層膜の成膜時や、その後の熱処理等の工程時に、界面で原子の拡散または反応が起こり、界面層(例えば、TiO、PbO、SiO等)が生成される。その結果、界面での伝導電流が減少し、メモリの読み出し特性が低下するという問題が生じる。
【0011】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたもので、その主な目的は、強誘電体膜と絶縁膜との良好な界面を有し、メモリ特性の優れた半導体記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明に係る半導体記憶装置において、チャネルを形成する強誘電体膜及び絶縁膜の積層膜を、同一の元素からなる膜を積層した構成を採用する。
【0013】
すなわち、本発明に係わる半導体記憶装置は、強誘電体膜と絶縁膜との界面をチャネルとする電界効果トランジスタを備えた半導体記憶装置であって、電界効果トランジスタは、チャネルを形成する強誘電体膜及び絶縁膜の積層膜と、強誘電体膜の分極状態を制御する電圧が印加されるゲート電極と、チャネルの両端に設けられ、分極状態に応じてチャネルを流れる電流を検出するソース、ドレイン電極とを備え、強誘電体膜及び絶縁膜が、同一の元素で構成されていることを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、強誘電体膜及び絶縁膜が同じ元素からなる膜で構成されているため、強誘電体膜と絶縁膜との界面(チャネル)において、原子の拡散または反応による界面層の生成を抑制することができ、良好な界面を維持することができる。これにより、界面での伝導電流を増加させることができ、メモリ特性の優れた半導体記憶装置を実現することが可能となる。
【0015】
ここで、上記積層膜は、元素の組成比の異なる強誘電体膜及び絶縁膜で構成されていることが好ましい。このようにすると、熱安定性の優れた積層膜が得られ、安定したメモリ特性の半導体記憶装置を得ることができる。
【0016】
また、上記積層膜は、結晶状態の異なる強誘電体膜及び絶縁膜で構成されていることが好ましい。このようにすると、緻密なアモルファス構造では結晶粒界がない、もしくは少ないため、結晶粒界を流れるリーク電流を低減でき、メモリ特性の優れた半導体記憶装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の半導体記憶装置によれば、チャネルを形成する強誘電体膜及び絶縁膜の積層膜を、同一の元素からなる膜で構成することによって、強誘電体膜と絶縁膜との界面(チャネル)において、原子の拡散または反応による界面層の生成を抑制することができるので、良好な界面を維持することができる。これにより、界面での伝導電流を増加させることができ、半導体記憶装置のメモリ特性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、説明の簡略化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における半導体記憶装置10の構成を模式的に示した断面図である。
【0020】
図1に示すように、基板11上に第1の導電膜12及び絶縁膜13が形成され、絶縁膜13上には、ソース、ドレイン電極15、16が形成されている。絶縁膜13上には、ソース、ドレイン電極15、16を覆うように強誘電体膜14が形成され、ソース、ドレイン電極15、16上の強誘電体膜14の一部は、ソース、ドレイン電極15、16のコンタクトを取るための開口部が形成されている。そして、ソース、ドレイン電極15、16間で画された絶縁膜13と強誘電体膜14との界面が、電界効果トランジスタのチャネルをなし、チャネル上で位置する強誘電体膜14の表面に、第2の導電膜17が形成されている。
【0021】
ここで、第1及び第2の導電膜12、17は、強誘電体膜14の分極状態を制御する電圧が印加されるゲート電極を構成しており、また、チャネルの両端に形成されたソース、ドレイン電極15、16は、強誘電体膜14の分極状態に応じてチャネルを流れる界面電流の大きさを検出する。
【0022】
本実施形態において、チャネルを形成する絶縁膜13及び強誘電体膜14の積層膜は、同一の元素からなる膜で構成されている。このような同一の元素からなる積層膜は、例えば、元素の組成比の異なる膜を形成することによって、絶縁膜13と強誘電体膜14とを作り分けることができる。また、結晶状態の異なる膜を形成することによっても、絶縁膜13と強誘電体膜14とを作り分けることができる。ここで、結晶状態の異なる積層膜としては、結晶構造をなす強誘電体膜14と、アモルファス構造をなす絶縁膜13とが挙げられる。また、結晶構造が異なる積層膜ものとしては、ペロブスカイト構造の強誘電体膜14と、フルオライト構造またはパイロクロア構造の絶縁膜13などが挙げられる。積層膜の形成において、具体的には、次のような方法を適用することができる。
【0023】
ここで、「同一の元素からなる膜」とは、絶縁膜13及び強誘電体膜14を構成する主たる元素が同一であることを意味し、これら元素と異なる元素が添加物として含有した膜も、本発明の作用効果を奏する限り、「同一の元素からなる膜」に含まれる。
【0024】
なお、強誘電体膜14が、一般式A1−xで表されるペロブスカイト構造または層状ペロブスカイト構造をなす金属酸化物からなる場合には、絶縁膜13が、金属酸化物のAサイトまたはBサイトの少なくとも一方の元素を含む酸化物または窒化物からなるものであれば、積層膜が「同一の元素からなる膜」の場合と同様の効果を奏することができる。これは、同種の元素で構成されるため、強誘電体膜−絶縁膜界面で安定した結合が得られ、相互拡散や相互反応が起こらないためと考えられる。
【0025】
MOCVD法、スパッタリング法、レーザーアブレーション法で積層膜を形成する場合、反応ガスの圧力や流量、または基板温度などを変化させることによって、同じ反応ガスを用いて組成の異なる膜を作り分けることができる。また、同じ構成元素で組成の異なるターゲットを用いても、組成の異なる積層膜を形成することができる。
【0026】
また、上記と同様の成膜条件を変えることによって、同じ構成元素を用いて、結晶構造を有する強誘電体膜14及びアモルファス構造を有する絶縁膜13、あるいは、ペロブスカイト構造を有する強誘電体膜14及びフルオライト構造またはパイロクロア構造を有する絶縁膜13を、それぞれ作り分けることができる。
【0027】
例えば、MOCVD法を用いてSBT(SrBiTa)を形成する場合、低温のでは絶縁性のフルオライト構造の膜、高温では強誘電性のペロブスカイト構造の膜をそれぞれ形成することができる。また、MOCVD法を用いてBiT(BiTi)を形成する場合、低温ではアモルファス構造の膜、450℃程度ではペロブスカイト構造の膜、500℃程度ではパイロクロア構造の膜をそれぞれ形成することができる。また、レーザーアブレーション法を用いてPZT(Pb(Zr,Ti)O)する場合、成膜時の酸素分圧が低いとアモルファス構造の膜、酸素分圧が高いとペロブスカイト構造の膜を得ることができる。
【0028】
ここで、強誘電体膜14の材料としては、SBT、BiT、PZTの他、SBTN(SrBi(Ta,Nb))、BLT、(Bi,La)Ti12)、BiFeO、PbTiO、PLZT((Pb,La)(Zr,Ti)O)、BaTiO、LiNbO、SrTiO3、YMnO等が挙げられる。
【0029】
また、絶縁膜13の材料としては、上記強誘電体膜14の材料と同一の元素で構成された材料(添加物等の違いは問わない)を用いることができる。なお、絶縁膜13にはモット絶縁体も含む。
【0030】
なお、同じ元素からなる絶縁膜13及び強誘電体膜14の積層膜を形成する方法は、上記方法に限定されず、種々の方法を適用することができる。例えば、上記方法以外に、MOD(Metalorganic Deposition)法や、ゾルゲル法などを用いて形成してもよい。
【0031】
このように構成された半導体記憶装置10は、チャネルを形成する絶縁膜13及び強誘電体膜14の積層膜を、同一の元素からなる膜で構成することによって、絶縁膜13と強誘電体膜14との界面(チャネル)において、原子の拡散または反応による界面層の生成を抑制することができるので、良好な界面を維持することができる。これにより、界面での伝導電流を増加させることができ、半導体記憶装置10のメモリ特性を向上させることができる。
【0032】
なお、本実施形態の半導体記憶装置10における情報の書き込み/読み出し動作は、従来の方法と基本的に同じである。すなわち、ゲート電極17と導電膜12との間に印加される電圧の方向を変えることによって、強誘電体膜14の分極状態を制御して、0また1の情報の書き込みが行われる。また、ソース、ドレイン電極15、16間に電位勾配を与えて、ソース電極15からドレイン電極16に流れる電流の大きさを検出することによって、書き込まれた情報の読み出しが行われる。
【0033】
次に、本実施形態における半導体記憶装置10の製造方法を、図2(a)〜(c)に示した工程断面図を参照しながら説明する。
【0034】
まず、図2(a)に示すように、基板11上に、導電膜12、及びPZTからなる絶縁膜13(厚みが約100nm)を形成する。絶縁膜13は、PLD法で形成し、成長条件は、基板温度700℃、酸素分圧1mTorrが好ましい。その後、絶縁膜13上に、ソース、ドレイン電極15、16を形成する。
【0035】
ここで、基板11は、例えば、シリコン、二酸化シリコン、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)等を用いることができる。また、第1の導電膜(バックゲート電極)12は、絶縁膜13との間でショットキ−障壁が高くなる材料、例えば、プラチナ、イリジウム、酸化イリジウム(IrOx)、金、酸化ルテニウム(RuO)、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO)、ITO(Sn添加In)等を用いることができる。
【0036】
次に、図2(b)に示すように、絶縁膜13上に、ソース、ドレイン電極15、16を覆うように、PZTからなる強誘電体膜14(厚みが約200nm)を形成する。強誘電体膜14は、PLD法で形成し、成長条件は、基板温度700℃、酸素分圧100mTorrが好ましい。
【0037】
次に、図2(c)に示すように、ソース、ドレイン電極15、16上の強誘電体膜14の一部に開口部を形成した後、チャネルの上方に位置する強誘電体膜14の表面に、第2の導電膜(トップゲート電極)17を形成し、半導体記憶装置10を完成する。なお、ゲート電極17は、バックゲート電極12と同様の材料を用いることができる。
【0038】
なお、図1に示した絶縁膜13と強誘電体膜14との積層膜は、強誘電体膜14を絶縁膜13の上に積層した構成にしているが、図3に示すように、絶縁膜13と強誘電体膜14との配置を交換し、強誘電体膜14上に絶縁膜13を積層した構成にしてもよい。この場合、半導体記憶装置としての、書き込み/読み出しの動作は、図1に示した構成の半導体記憶装置と同様の方法により行うことができる。
【0039】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態における半導体記憶装置の構成を模式的に示した断面図である。第1の実施形態においては、図1に示したように、ソース、ドレイン電極15、16が、絶縁膜13と強誘電体膜14との積層膜の界面内に設けられていたのに対し、本実施形態においては、図4に示すように、ソース、ドレイン電極15、16が、積層膜の界面端に接して設けられている点が異なる。
【0040】
すなわち、本実施形態おいては、絶縁膜13と強誘電体膜14との積層膜は連続して形成され、その後にソース、ドレイン電極15、16が、積層膜の界面端に接するように形成されている。
【0041】
次に、本実施形態における半導体記憶装置の製造方法について、図5(a)〜(d)に示した工程断面図を参照しながら説明する。なお、図1及び図2(a)〜(c)と同一符号で表した各構成要素は、同じ機能を有するため、材料等の説明は省略する。
【0042】
まず、図5(a)に示すように、基板11上に第1の導電膜(バックゲート電極)12、絶縁膜13、及び強誘電体膜14を形成する。このとき、絶縁膜13、及び強誘電体膜14は連続して形成することが好ましい。
【0043】
次に、図5(b)に示すように、強誘電体膜14上にレジスト20を塗布して、チャネルを画定するレジストパターンを形成する。その後、レジスト20をマスクに、強誘電体膜14を、少なくとも絶縁膜13と強誘電体膜14との界面が露出するまでエッチングして開口部21を形成する。このとき、絶縁膜13の表面も一部エッチングされるため、絶縁膜13と強誘電体膜14との界面端は露出した状態になっている。
【0044】
次に、図5(c)に示すように、レジスト20を残したまま、基板11上に、EB蒸着法等により第2の導電膜22を堆積する。このとき、第2の導電膜22は、開口部21内及びレジスト20上に形成される。
【0045】
次に、図5(d)に示すように、レジスト20を除去することによって、開口部21内に、第2の導電膜22を自己整合的に残し(リフトオフ法)、第2の導電膜22からなるソース、ドレイン電極15、16を形成する。このとき、ソース、ドレイン電極15、16は、エッチングにより露出した絶縁膜13及び強誘電体膜14の界面端に接して形成される。その後、強誘電体膜14上に、トップゲート電極17(不図示)を形成して、図4に示した半導体記憶装置を完成する。
【0046】
このようにして形成された本実施形態における半導体記憶装置は、チャネルを形成する絶縁膜13及び強誘電体膜14の積層膜を連続して形成することによって、強誘電体膜14と絶縁膜13との界面、すなわち、伝導に寄与する界面が清浄な状態のまま、ソース、ドレイン電極15、16が形成されるため、良好な界面(チャネル)を備えた半導体記憶装置を実現することができる。これにより、オン時の界面のコンダクタンスが増加することによって、変調比が増加し、メモリ保持特性の向上を図ることができる。
【0047】
なお、本実施形態における半導体記憶装置の書き込み/読み出しの動作は、第1の実施形態における半導体記憶装置と同様の方法により行うことができる。また、図6に示すように、図4に示した絶縁膜13と強誘電体膜14との配置を交換し、強誘電体膜14上に絶縁膜13を積層した構成にしてもよい。
【0048】
(第3の実施形態)
第1の実施形態において、ゲート電極は、チャネルの下方であって、絶縁膜13の下面に形成されたバックゲート電極12と、チャネルの上方であって、強誘電体膜14の上面に形成されたトップゲート電極17とで構成されていた。すなわち、バックゲート電極12とトップゲート電極17とはチャネルを挟んで電極対をなしており、この電極対間に電圧を印加することによって、強誘電体膜14の分極の向きを定めていた。
【0049】
本実施形態は、ゲート電極を、図7に示すように、バックゲート電極12を省略した3端子構造(トップゲート電極17、ソース、ドレイン電極15、16)とするものである。この場合、ソース、ドレイン電極15、16が、バックゲート電極を兼ねることになる。すなわち、トップゲート電極17と、ソース/ドレイン電極15、16との間に電圧を印加することによって、チャネル直上の強誘電体膜14内にフリンジ電界を発生させ、これにより、強誘電体膜14の分極反転に有効な電界を与える。
【0050】
なお、図8に示すように、絶縁膜13と強誘電体膜14との配置を交換し、強誘電体膜14上に絶縁膜13を積層した構成にした場合には、強誘電体膜14の下面にバックゲート電極12を残し、絶縁膜13の上面に形成されるトップゲート電極17を省略した構成となる。この場合、バックゲート電極12と、ソース/ドレイン電極15、16との間に電圧を印加することによって、チャネル直下の強誘電体膜14内にフリンジ電界を発生させ、これにより、強誘電体膜14の分極反転に有効な電界を与える。
【0051】
なお、3端子構造は、図9、図10に示すように、第2の実施形態における半導体記憶装置においても勿論適用することができる。
【0052】
また、図11に示すように、図8に示した3端子構造において、ソース、ドレイン電極15、16を、絶縁膜13上に形成してもよい。このとき、絶縁膜13は膜厚数nm〜数10nm程度とする。このようにすると、絶縁膜の厚さ方向の抵抗が低くなり、図12に示すようにソースドレインからの電流が、絶縁膜と強誘電体界面近傍の前記絶縁膜の領域を通過し、界面伝導電流を検出することができる。
【0053】
(第4の実施形態)
図13は、本発明の第4の実施形態における半導体記憶装置の構成を示した断面図で、図1に示した半導体記憶装置とは、チャネルを形成する絶縁膜及び強誘電体膜の積層膜において、絶縁膜の代わりに強誘電体膜を用いた点が異なる。
【0054】
すなわち、図13に示すように、本実施形態における積層膜は、第1の強誘電体膜14a及び第2の強誘電体膜14bで構成されている。なお、第1の強誘電体膜14a及び第2の強誘電体膜14bは、第1の実施形態において示した材料を用いることができる。
【0055】
本実施形態における半導体記憶装置の書き込み及び読み出し動作は、次のとおりである。
【0056】
第1の強誘電体膜14a、及び第2の強誘電体膜14bに正又は負の電圧を印加して、第1の強誘電体膜14a及び第2の強誘電体膜14bの分極方向を定めることによって、書き込みを行うことができる。また、読み出しは、第1の強誘電体膜14a及び第2の強誘電体膜14bの分極の向きによってチャネルの導通状態が変わるので、これを検出することにより非破壊で情報を読み出すことができる。
【0057】
すなわち、第1の強誘電体膜14a及び第2の強誘電体膜14bが分極した時、第1の強誘電体膜14aと第2の強誘電体膜14bとの界面には、第1の自発分極31と第2の自発分極32の差に相当する電子又は正孔が発生する。これらのキャリア30は、第1の強誘電体膜14a及び第2の強誘電体膜14bの分極の向きにより大きく変化する。分極が上を向いているときは、第1の強誘電体膜14aと第2の強誘電体膜14bとの界面には電子は少なく、チャネルの電気伝導度は小さくなる。逆に、分極が下を向いているときは、第1の強誘電体膜14aと第2の強誘電体膜14bとの界面には電子は多いので、チャネルの電気伝導度は大きくなり、第1の強誘電体膜14aと第2の強誘電体膜14bとの界面に流れる。このように、この界面電流の有無を検出することにより情報を読み出すことができる。
【0058】
本実施形態において、第1の残留分極は、第2の残留分極があることで残留分極を保ち易くなり、長時間、信号電荷となる誘起されたキャリア30を保持することができる。これにより、メモリ保持特性の優れた半導体記憶装置を実現することができる。
【0059】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、強誘電体膜と絶縁膜との界面をチャネルとする電界効果トランジスタを備えた半導体記憶装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施形態における半導体記憶装置の構成を示した断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、第1の実施形態における半導体記憶装置の製造方法を示した工程断面図である。
【0062】
第1の実施形態に係る半導体記憶装置の断面構成図。
【図3】第1の実施形態における半導体記憶装置の変形例を示した断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における半導体記憶装置の構成を示した断面図である。
【図5】(a)〜(d)は、第2の実施形態における半導体記憶装置の製造方法を示した工程断面図である。
【図6】第2の実施形態における半導体記憶装置の変形例を示した断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態における半導体記憶装置の構成を示した断面図である。
【図8】第3の実施形態における半導体記憶装置の変形例を示した断面図である。
【図9】第3の実施形態における半導体記憶装置の変形例を示した断面図である。
【図10】第3の実施形態における半導体記憶装置の変形例を示した断面図である。
【図11】第3の実施形態における半導体記憶装置の変形例を示した断面図である。
【図12】第3の実施形態における半導体記憶装置の変形例を示した断面図である。
【図13】本発明の第4の実施形態における半導体記憶装置の構成を示した断面図である。
【図14】従来の半導体記憶装置の構成を示した断面図である。
【符号の説明】
【0063】
10 半導体記憶装置
11 基板
12 ゲート電極(バックゲート電極)
13 絶縁膜
14 強誘電体膜
14a 第1の強誘電体膜
14b 第2の強誘電体膜
15 ソース電極
16 ドレイン電極
17 ゲート電極(トップゲート電極)
20 レジスト
21 開口部
22 第2の導電膜
30 キャリア
31 第1の自発分極
32 第2の自発分極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強誘電体膜と絶縁膜との界面をチャネルとする電界効果トランジスタを備えた半導体記憶装置であって、
前記電界効果トランジスタは、
前記チャネルを形成する前記強誘電体膜及び前記絶縁膜の積層膜と、
前記強誘電体膜の分極状態を制御する電圧が印加されるゲート電極と、
前記チャネルの両端に設けられ、前記分極状態に応じて前記チャネルを流れる電流を検出するソース、ドレイン電極と
を備え、
前記強誘電体膜及び前記絶縁膜が、同一の元素で構成されていることを特徴とする、半導体記憶装置。
【請求項2】
前記積層膜は、元素の組成比の異なる強誘電体膜及び絶縁膜で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記積層膜は、結晶状態の異なる強誘電体膜及び絶縁膜で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記強誘電体膜は結晶構造をなし、前記絶縁膜はアモルファス構造をなしていることを特徴とする、請求項3に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記強誘電体膜はペロブスカイト構造をなし、前記絶縁膜はフルオライト構造またはパイロクロア構造をなしていることを特徴とする、請求項3に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記ソース、ドレイン電極は、前記積層膜の界面内に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記ソース、ドレイン電極は、前記積層膜の界面端に接して設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項8】
前記ソース、ドレイン電極間で画された前記強誘電体膜と前記絶縁膜との界面が、前記電界効果トランジスタのチャネルをなしていることを特徴とする、請求項6または7に記載の半導体記憶装置。
【請求項9】
前記ゲート電極は、前記チャネルの下方であって、前記積層膜の下面に形成された第1のゲート電極、及び前記チャネルの上方であって、前記積層膜の上面に形成された第2のゲート電極で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項10】
前記ゲート電極は、前記チャネルの下方または上方であって、前記強誘電体膜の下面または上面に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項11】
前記積層膜において、前記絶縁膜の代わりに強誘電体膜が形成されていることを特徴とする、請求項1〜11の何れかに記載の半導体記憶装置。
【請求項12】
前記チャネルは、前記強誘電体膜と前記絶縁膜との界面に加え、該界面近傍の前記絶縁膜の領域も含むことを特徴とする、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項13】
強誘電体膜と絶縁膜との界面をチャネルとする電界効果トランジスタを備えた半導体記憶装置であって、
前記電界効果トランジスタは、
前記チャネルを形成する前記強誘電体膜及び前記絶縁膜の積層膜と、
前記強誘電体膜の分極状態を制御する電圧が印加されるゲート電極と、
前記チャネルの両端に設けられ、前記分極状態に応じて前記チャネルを流れる電流を検出するソース、ドレイン電極と
を備え、
前記強誘電体膜は、一般式A1−xで表されるペロブスカイト構造または層状ペロブスカイト構造をなす金属酸化物からなり、
前記絶縁膜は、前記金属酸化物のAサイトまたはBサイトの少なくとも一方の元素を含む酸化物または窒化物からなることを特徴とする、半導体記憶装置。
【請求項14】
請求項1〜5の何れかに記載の半導体記憶装置の製造方法であって、
前記積層膜は、該積層膜の成膜条件において、成膜時の温度、ガス圧力、及びガス流量のいずれかを変えることによって、前記強誘電体膜及び前記絶縁膜を作り分けることを特徴とする、半導体記憶装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−172133(P2008−172133A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5669(P2007−5669)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】