説明

半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法

【課題】半導体集積回路の製造工程における設計パターンの微細化や回路の高密度化に伴い製造ばらつきが増加するなかで、半導体素子の配置やその周辺の状況が所望の通りであることを短時間で効率的に検証する。
【解決手段】条件入力工程109では、回路特性を同一に合わせるべき特定のレイアウトパターンが複数含まれるようなレイアウトパターン分割条件108を入力する。データ分割工程103では、入力されたマスクレイアウト設計データを前記レイアウトパターン分割条件に従って複数のレイアウトパターン群に分割する。基準パターン選択工程105では、前記複数に分割されたレイアウトパターン群毎に、パターンマッチングの基準となる基準パターンを選択する。パターンマッチング工程106では、各レイアウトパターン群別に、そのレイアウトパターン群内の各レイアウトパターンと前記基準パターンとを比較する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法に関し、特に、微細パターンで構成される回路形成に適した検証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路(LSI)の高集積化を実現するために、最小加工寸法が微細化しているが、この微細化に伴い、LSIに作り込まれる微細な素子サイズと、半導体集積回路の製造工程における製造ばらつきとの相対比が大きくなって、回路特性のばらつきが問題になり始めている。
【0003】
例えば、差動アンプを構成する2つのトランジスタは、回路の対称性と共にシリコンウェハ上での形状や特性、ばらつきの対称性も重要になってくる。そのため、差動アンプを構成する2つのトランジスタは、マスクレイアウト設計の段階から、その両トランジスタの形状、配置、周囲のパターンとの関係を考慮しながら、マスクレイアウト設計が行われる。
【0004】
そのような形状、配置、周囲のパターンの関係を考慮して実際に差動アンプの両トランジスタがマスクレイアウトされたかどうかを検証するために、従来から用いられてきたDRC(Design Rule Check)では、これらの要件を満たしていることを確認するには不十分である。
【0005】
そこで、対称性やパターン一致を検証するために、従来では、同じ形状、同じ条件のものをマスクレイアウトから探し出す技術として、パターンマッチング技術が挙げられ、このパターンマッチング技術は、半導体検査装置の分野では従来から幅広く活用されている。
【0006】
従来のパターンマッチング技術としては、従来、特許文献1に記載の技術が知られている。このパターンマッチング技術は、探し出すべき対象としてのマッチングパターン(テンプレート又はリファレンスと称する)や、検索ステップを予め定め、その検索ステップで対象領域を少しずつずらして検索することを繰り返して、該当パターンを探し出す構成を採用している。
【特許文献1】特開2005−061837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、例えば差動アンプを構成する2つのトランジスタを例に採ると、差動アンプの動作特性を保障するためには、回路構成の対称性に加えて、マスクレイアウト形状、素子配置、素子周囲のマスクレイアウトパターンに関して対称であることが必要である。
【0008】
しかしながら、従来のパターンマッチング技術では、検索ステップの細かさ、即ち、検索時の繰り返し回数の多さがパターンマッチングの精度を決定することになり、検索ステップを細かく設定すると、パターンマッチング精度を高くできるものの、検索時間に長時間を要する欠点がある。特に、繰り返しパターンが多いメモリ製品のマスクデータなどでは、パターンマッチング効率が良く、得られる精度や処理時間の双方で良好であるものの、レイアウトパターンの繰り返しが少ない論理回路では、パターンマッチング効率が低くなり、また該当パターンを検出できなかったり、処理時間が膨大になってしまうという問題があった。
【0009】
更に、従来技術では、同じ形状のマスクパターン、例えばトランジスタ形状が同じであっても、接続される配線が異なるような回路構成の場合に、その接続される配線を除外してテンプレートを予め用意するときには、トランジスタ形状が同じであるため、全て同じとしてパターンマッチング動作する欠点があり、逆に、その接続される配線をも含めてテンプレートを予め用意するときには、配線形状が異なるため、全て異なるとしてパターンマッチング動作してしまう欠点がある。特に、回路特性のばらつきの影響を抑えるべき差動回路では、同じトランジスタをペアで使用するが、配線形状は異なる場合も多く、ペアであることの確認は容易ではない。
【0010】
また、従来では、テンプレートを事前に用意する必要があるが、複数のペアが存在する場合には、事前に何種類のペアが存在するかを把握しなければテンプレートを用意することができず、また、膨大な種類のテンプレートを用意することは困難である。
【0011】
本発明は、前記課題を解決するため、その目的は、事前にテンプレートを用意することなく、パターンマッチングを検索時間少なく且つマッチング効率良く行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明では、半導体集積回路のマスクレイアウト設計データの全てを1つのレイアウトパターンのマッチング検索対象とするのではなく、例えば、ある特定の差動回路でペアとなる2個のトランジスタのレイアウトパターン、即ち、回路特性を同一に合わせるべき特定のレイアウトパターンが複数含まれるように、前記マスクレイアウト設計データを多数のレイアウトパターン群に分割し、この各レイアウトパターン群を個別の検索対象としてパターンマッチングを行うと共に、その各レイアウトパターン群別に、パターンマッチングの基準パターン(テンプレート)を所定の基準に基づいて自動で生成することとする。
【0013】
具体的に、請求項1記載の発明の半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法は、計算機を使用した半導体集積回路のレイアウト設計において、マスクレイアウト設計データを前記計算機に読み込むデータ入力工程と、回路特性を同一に合わせるべき特定のレイアウトパターンが複数含まれるように、レイアウトパターン分割条件を入力する条件入力工程と、前記条件入力工程で入力したレイアウトパターン分割条件に従って、前記データ入力工程で読み込んだマスクレイアウト設計データを複数のレイアウトパターン群に分割するデータ分割工程と、前記データ分割工程で分割したレイアウトパターン群毎に、パターンマッチングの基準となる基準パターンを選択する基準パターン選択工程と、前記データ分割工程で分割したレイアウトパターン群毎に、このレイアウトパターン群に含まれる複数のレイアウトパターンを前記基準パターン選択工程で選択した基準パターンと比較するパターンマッチング工程とを有することを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記請求項1記載の半導体集積回路の設計において、前記条件入力工程では、入力されるレイアウトパターン分割条件は、前記データ入力工程で読み込んだマスクレイアウト設計データのマスク形状であることを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記請求項1記載の半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法において、前記条件入力工程では、入力されるレイアウトパターン分割条件は、前記データ入力工程で読み込んだマスクレイアウト設計データで示される半導体集積回路素子の接続情報であることを特徴とする。
【0016】
請求項4記載の発明は、前記請求項2記載の半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法において、前記データ分割工程では、前記条件入力工程で入力されたマスクレイアウト設計データのマスク形状で分割されたレイアウトパターン群を出力することを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明は、前記請求項3記載の半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法において、前記データ分割工程では、前記条件入力工程で入力されたマスクレイアウト設計データで示される半導体集積回路素子間の接続情報で分割されたレイアウトパターン群を出力することを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明は、前記請求項1〜5の何れか1項に記載の半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法において、前記基準パターン選択工程では、前記データ分割工程で分割されたレイアウトパターン群毎に、そのレイアウトパターン群の中から、予め定めた選択基準に基づいて、基準パターンを選択することを特徴とする。
【0019】
請求項7記載の発明は、前記請求項1〜6の何れか1項に記載の半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法において、前記パターンマッチング工程では、前記基準パターン選択工程で選択した基準パターンを、回転、縦反転、横反転、縦横反転したパターンを含めて比較処理を行うことを特徴とする。
【0020】
請求項8記載の発明は、前記請求項1〜7の何れか1項に記載の半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法において、前記パターンマッチング工程では、レイアウトパターン群に含まれる複数のレイアウトパターンを前記基準パターン選択工程で選択した基準パターンと比較すると共に、そのレイアウトパターン群を前記基準パターンの予め定めた周囲内に存在するパターンとも比較することを特徴とする。
【0021】
請求項9記載の発明は、前記請求項6記載の半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法において、前記基準パターン選択工程では、前記予め定めた選択基準は、レイアウトパターン群についてのデータ座標系における原点(0、0)に最も近いレイアウトパターンを基準パターンとして選択する基準であることを特徴とする。
【0022】
以上により、請求項1〜9記載の発明では、読み込まれたマスクレイアウト設計データが条件入力工程で入力されたレイアウトパターン分割条件に基づいて複数のレイアウトパターン群に分割される。このレイアウトパターン分割条件は、例えば、トランジスタの拡散層を示すマスク形状であったり、トランジスタのゲートやソース、ドレインに接続される特定の信号配線や電源配線、接地配線などの回路素子の接続情報である。例えば差動回路でペアとなる2個のトランジスタ間では、同一の拡散層に形成され、また、接続される信号配線等は同一の信号配線等の場合がある。このため、前記複数に分割された各々のレイアウトパターン群は、回路特性を同一に合わせるべき特定のレイアウトパターンが複数含まれる可能性が高い。従って、分割された各レイアウトパターン群別に、そのレイアウトパターン群内を1つの検索対象としてパターンマッチングすれば、検索時間が大幅に短縮されると共に、パターンマッチング効率が高くなる。
【0023】
しかも、基準パターン選択工程では、前記複数に分割されたレイアウトパターン群毎に、各々、そのレイアウトパターン群に含まれる複数のレイアウトパターンのうち1つをパターンマッチングの基準パターンとして選択するので、事前にテンプレート(リファレンス)を準備する必要がなくなる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、請求項1〜9記載の発明の半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法によれば、パターンマッチングで検出するべき対象物(半導体素子)やその組み合わせを含むレイアウトパターンを、事前に与えた条件に基づいて、1つのレイアウトパターン群内にグルーピングしたので、回路特性を同一にすべき2以上のレイアウトパターンがそのようにレイアウトされるいるかどうかを、検索時間少なく且つパターンマッチング効率高く確認することが可能である。この効果は、半導体素子やネットリストを抽出するLVS(Layout VS Shcmatic)やLPE(Layout Parastric Extraction)のように、物理的な配置情報であるレイアウトパターンを削除して回路情報のみを抽出する方法では得られない効果である。
【0025】
しかも、従来のようにテンプレートやリファレンスを事前に準備する必要がないので、例えば何種類の形状等のトランジスタペアが存在するか等を事前に把握する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法のフローチャートを示す。
【0028】
同図においては、先ず、マスクレイアウト設計データ101をデータ入力工程102へ読み込む。次に、レイアウトパターン分割条件108を条件入力工程109へ読み込む。
【0029】
その後、データ分割工程103において、前記データ入力工程102で読み込んだマスクレイアウト設計データ101を前記条件入力工程109で読み込んだレイアウトパターン分割条件108に基づいて複数のレイアウトパターン群に分割し、それ等のレイアウトパターン群104を出力する。
【0030】
続いて、基準パターン選択工程105では、前記分割された複数のレイアウトパターン群104について、個別に、そのレイアウトパターン群に含まれる複数のレイアウトパターンのパターンマッチングの基準となる基準パターンをそのレイアウトパターン群の中から選択する。
【0031】
そして、パターンマッチング工程106において、前記複数のレイアウトパターン群104について、個別に、そのレイアウトパターン群に含まれる複数のレイアウトパターンと、そのレイアウトパター群の中から選択した基準パターンとを比較(パターンマッチング)し、その比較結果107を得る。
【0032】
前記条件入力工程109のレイアウトパターン分割条件108の具体例を示す。この条件入力工程109で読み込んだレイアウト分割条件108は、例えばトランジスタ形状に応じた分割条件であり、例えば、そのトランジスタの拡散層(マスク形状)を指定する。具体的に説明すると、図2(a)に示すように、読み込んだマスクレイアウト設計データ101の一部に5個のトランジスタ301〜305が存在する場合に、拡散層306と拡散層307とをレイアウト分割条件108として指定した場合を考える。この場合には、データ分割工程103では、同一の拡散層306に属する2個のトランジスタ301、302を図2(b)に示すように1つのレイアウトパターン群308として分割し、他の同一の拡散層307に属する3個のトランジスタ303〜305を図2(c)に示すように1つのレイアウトパターン群309として分割する。これらのレイアウトパターン群308、309では、それ等に属する複数のレイアウトパターン(301、302)、(303、304、305)は、同一の回路特性を持たせるように同一の拡散層を用いて形成されている場合が多いので、このように分割されたレイアウトパターン群308、309別でのパターンマッチングを効率良く行うことが可能になる。
【0033】
データ分割工程103で得られたレイアウトパターン群104は、前記具体例では、2つのレイアウトパターン群308、309から構成されるデータとなる。このように、マスクレイアウト設計データのマスク形状をレイアウト分割条件108として指定する場合には、図形的なパターン検索が行われる。
【0034】
次に、前記基準パターン選択工程105の具体例を説明する。この基準パターン選択工程105では、例えば、前記データ分割工程103で分割されたレイアウトパターン群の座標系における原点(0、0)に最も距離が近いレイアウトパターンを基準パターンとして選択する。具体的に、図3を用いて説明する。同図(a)及び(b)は前記データ分割工程103で分割されたレイアウトパターン群308、309を示す。同図(a)のレイアウトパターン群308では、2つのトランジスタのレイアウトパターン301、302が含まれるが、そのレイアウトパターン群308の座標系における原点(0、0)に最も距離が近いトランジスタのレイアウトパターン301を同図(c)に示すように基準パターンとして選択し、同図(b)のレイアウトパターン群309では、3つのトランジスタのレイアウトパターン303〜305が含まれるが、そのレイアウトパターン群309の座標系における原点(0、0)に最も距離が近いトランジスタのレイアウトパターン303を同図(d)に示すように基準パターンとして選択する。
【0035】
図1に示したパターンマッチング工程106では、得られたレイアウトパターン群104毎に、1つのレイアウトパターン群に属する複数のレイアウトパターンをそのレイアウトパターン群から選択した基準パターンと比較して、パターンマッチングを行う。例えば、図3(a)のレイアウトパターン群308では、トランジスタのレイアウトパターン302が基準パターン301と一致すると判断し、同図(b)のレイアウトパターン群309では、トランジスタのレイアウトパターン304、305が基準パターン303と一致すると判断する。
【0036】
ここで、前記パターンマッチング工程106では、選択した基準パターンそのもの形状だけでなく、種々のバリエーションを含めて、パターンマッチングを行う。例えば、図4(a)に示すように英文字の「F」の形状の基準パターン501が選択された場合には、その基準パターンのバリエーションとして、同図(b)〜(d)のように形状「F」を順次時計方向に90°回転した形状も基準パターンに含めると共に、同図(e)に示すように英文字「F」を左右反転した形状や、同図(f)〜(h)のようにこの「F」の左右反転形状を順次時計方向に90°回転した形状も基準パターンに含めて、パターンマッチングを行う。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。
【0038】
前記第1の実施形態では、データ分割工程103においてマスク形状に依存したデータ分割の場合を例示したが、本実施形態では、回路接続情報によってマスクレイアウト設計データを分割するものである。
【0039】
図5は本実施形態でのマスクレイアウト設計データを示す。この設計データでは、信号配線207に接続される3つのトランジスタのレイアウトパターン210、212、214と、信号配線208に接続される2つのトランジスタのレイアウトパターン211、213とが存在している。
【0040】
本実施形態では、条件入力工程109のレイアウトパターン分割条件108は、回路接続情報である。例えば、図5のマスクレイアウト設計データでは、回路接続情報として信号配線207又は信号配線208を指定する。
【0041】
前記条件入力工程109のレイアウトパターン分割条件108が信号配線207である場合には、データ分割工程103で得られるレイアウトパターン群104は、図6(a)に示すように、この信号配線207と、この信号配線207に接続された3つのトランジスタのレイアウトパターン210、212、214とを含むレイアウトパターン群220となる。また、前記条件入力工程109のレイアウトパターン分割条件108が信号配線208である場合には、データ分割工程103で得られるレイアウトパターン群104は、図6(b)に示すように、この信号配線208と、この信号配線208に接続された2つのトランジスタのレイアウトパターン211、213とを含むレイアウトパターン群221となる。図6(a)及び(b)では、レイアウトパターン群220、221の座標系における原点(0、0)に最も距離が近いトランジスタのレイアウトパターン210、211を基準パターンとして選択しており、この基準パターンを同図(a)及び(b)において太実線で示す。
【0042】
このように、回路接続情報によってマスクレイアウト設計データを分割する場合には、回路構成とマスクレイアウトの双方に依存したパターン検索が行われる。
【0043】
また、前記第1の実施形態と同様に、図7に示すように、得られたレイアウトパターン群300の中から基準パターン305を選択したとき、この基準パターン305を時計方向に90°、180°、270°回転した形状や、左右反転した形状、この左右反転形状を90°、180°、270°回転した形状、上下反転した形状なども基準パターンに含めてパターンマッチングを行う。このパターンマッチングでは、基準パターン305の上下反転パターン310、時計方向に90°回転したパターン311、時計方向に270°回転したパターン312も同一パターンと判別することが可能である。
【0044】
(第3の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態を説明する。
【0045】
前記第1の実施形態では、基準パターン選択工程105において、分割された各レイアウトパターン群の座標系における原点(0、0)に最も距離が近いレイアウトパターンを基準パターンとして選択したが、本実施形態は、図8(a)及び(b)に示すように、基準パターン401、402の周辺に位置するレイアウトパターンを含めた領域全体405、406を基準パターンとして選択を行う。
【0046】
図8(a)及び(b)では、2つのトランジスタのレイアウトパターン401、402を比較すると、同一の形状であるが、それ等の周辺を含めた領域405と領域406との形状は異なる。レイアウトパターン401、402がトランジスタ(半導体素子)で構成されている場合には、半導体素子の形状だけでなく、その周辺レイアウトパターンの影響も依存して素子特性が変動する場合があり、周辺を含めた領域405、406での形状の同一の確認が必要となる。周辺を含めた領域405、406を大きくとれば、より厳密な形状の一致の確認を行うことができるが、その一方で、形状が一致するレイアウトパターンを検索する時間は非常に長くなる。そこで、トランジスタのレイアウトパターン401、402(狭義の基準パターン)401、402をレイアウトパターン検索の初期値として検索を行うことにより、検索範囲や検索処理量を削減することが可能である。
【0047】
尚、以上の説明では、マスク形状や回路接続情報によってマスクレイアウト設計データを分割する場合を説明したが、半導体集積回路素子の種類、大きさ、抵抗値、トランジスタのゲート長やゲート幅、流せる電流量等の属性を基準としてデータ分割を行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明は、半導体集積回路の製造工程における設計パターンの微細化や回路の高密度化に伴い製造ばらつきが増加し、また設計マージンが減少するなかで、検証精度の向上と検証時間の短縮を可能としつつ、半導体集積回路のマスクレイアウト設計が所望の通りであることを検証することができる。特に、CADデータとして管理された半導体パターンのマスクレイアウト設計データ及び回路図、その他のマスクレイアウトパターン設計に用いる複数データを総合的に活用する方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施形態の半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法を示すフローチャート図である。
【図2】(a)は読み込まれたマスクレイアウト設計データの一部を表現したレイアウト図、同図(b)及び(c)はデータ分割工程で分割されたレイアウトパターン群を示す図である。
【図3】(a)及び(b)はデータ分割工程で分割されたレイアウトパターン群を示す図、同図(c)及び(d)はそれ等のレイアウトパターン群から基準パターンを選択する所定の選択基準を示す図である。
【図4】(a)〜(h)はパターンマッチング基準パターンのバリエーションを示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態において、読み込まれたマスクレイアウト設計データの一例を表現したレイアウト図である。
【図6】(a)及び(b)は図5のマスクレイアウト設計データをデータ分割工程で回路接続情報という分割条件で分割したレイアウトパターン群を示す図である。
【図7】基準パターンを回転、縦反転、横反転、縦横反転したパターンをも基準パターンに含めてレイアウトパターン群と基準パターンとを比較する場合のレイアウトの一例を示す図である。
【図8】(a)及び(b)は基準パターンの所定周囲内を含めて比較処理する場合の例を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
101 マスクレイアウト設計データ
102 データ入力工程
103 データ分割工程
104 レイアウトパターン群
105 基準パターン選択工程
106 パターンマッチング工程
107 比較結果
108 レイアウトデータ分割条件
109 条件入力工程
207、208 信号配線
210〜214、
301〜305 レイアウトパターン
220、221、
308、309 レイアウトパターン群
306、307 拡散層
305、501〜508 基準パターン
310〜312、
401、402 レイアウトパターン
405、406 周辺を含めた領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機を使用した半導体集積回路のレイアウト設計において、
マスクレイアウト設計データを前記計算機に読み込むデータ入力工程と、
回路特性を同一に合わせるべき特定のレイアウトパターンが複数含まれるように、レイアウトパターン分割条件を入力する条件入力工程と、
前記条件入力工程で入力したレイアウトパターン分割条件に従って、前記データ入力工程で読み込んだマスクレイアウト設計データを複数のレイアウトパターン群に分割するデータ分割工程と、
前記データ分割工程で分割したレイアウトパターン群毎に、パターンマッチングの基準となる基準パターンを選択する基準パターン選択工程と、
前記データ分割工程で分割したレイアウトパターン群毎に、このレイアウトパターン群に含まれる複数のレイアウトパターンを前記基準パターン選択工程で選択した基準パターンと比較するパターンマッチング工程とを有する
ことを特徴とする半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法。
【請求項2】
前記請求項1記載の半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法において、
前記条件入力工程では、
入力されるレイアウトパターン分割条件は、前記データ入力工程で読み込んだマスクレイアウト設計データのマスク形状である
ことを特徴とする半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法。
【請求項3】
前記請求項1記載の半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法において、
前記条件入力工程では、
入力されるレイアウトパターン分割条件は、前記データ入力工程で読み込んだマスクレイアウト設計データで示される半導体集積回路素子の接続情報である
ことを特徴とする半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法。
【請求項4】
前記請求項2記載の半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法において、
前記データ分割工程では、
前記条件入力工程で入力されたマスクレイアウト設計データのマスク形状で分割されたレイアウトパターン群を出力する
ことを特徴とする半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法。
【請求項5】
前記請求項3記載の半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法において、
前記データ分割工程では、
前記条件入力工程で入力されたマスクレイアウト設計データで示される半導体集積回路素子間の接続情報で分割されたレイアウトパターン群を出力する
ことを特徴とする半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法。
【請求項6】
前記請求項1〜5の何れか1項に記載の半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法において、
前記基準パターン選択工程では、
前記データ分割工程で分割されたレイアウトパターン群毎に、そのレイアウトパターン群の中から、予め定めた選択基準に基づいて、基準パターンを選択する
ことを特徴とする半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法。
【請求項7】
前記請求項1〜6の何れか1項に記載の半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法において、
前記パターンマッチング工程では、
前記基準パターン選択工程で選択した基準パターンを、回転、縦反転、横反転、縦横反転したパターンを含めて比較処理を行う
ことを特徴とする半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法。
【請求項8】
前記請求項1〜7の何れか1項に記載の半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法において、
前記パターンマッチング工程では、
レイアウトパターン群に含まれる複数のレイアウトパターンを前記基準パターン選択工程で選択した基準パターンと比較すると共に、そのレイアウトパターン群を前記基準パターンの予め定めた周囲内に存在するパターンとも比較する
ことを特徴とする半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法。
【請求項9】
前記請求項6記載の半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法において、
前記基準パターン選択工程では、
前記予め定めた選択基準は、レイアウトパターン群についてのデータ座標系における原点(0、0)に最も近いレイアウトパターンを基準パターンとして選択する基準である
ことを特徴とする半導体集積回路のマスクレイアウト検証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−20553(P2010−20553A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180581(P2008−180581)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】