説明

半導体集積回路検査用プローバ

【課題】最新の半導体集積回路の検査においては、半導体ウェハの大型化と半導体集積回路の高密度化に伴い、プローバ基板の大型化、プローブの配列ピッチの短縮が要求される。ウェハレベルのバーンインテストを行う際に、プローブカードとシリコンウェハの熱膨張率の差が顕著になり、電極パッドに対するプローブの位置がずれるという問題があった。
【解決手段】プローブカードの基板材料として、最近開発された低熱膨張率のLTCCを用いることにした。高温環境で検査を行うバーンインテストにおいても、プローブの位置ずれが生じ難く、シリコンウェハの確実な検査を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路のウェハ検査に用いるプローバ、及び、プローブカードに関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2000-174078
【特許文献2】特開2001-127122
【特許文献3】特願2005-163556
【非特許文献1】JSR Technical Review No.108/2001, ウェハレベルバーンイン時の一括コンタクトを可能にするウェハレベルテスティングPCR, 筑波研究所
【非特許文献2】J.M.Heck, L.R.Arana, B.Read, and T.S.Dory, “Ceramic Via Wafer-Level Packaging for MEMS”, Proc. Of IPACK, San Francisco, CA, USA, pp.1-6 (July, 2005)
【0003】
半導体集積回路の製造工程において、ウェハ上に形成された個々のチップの良否をテストするウェハ検査工程がある。プローバは、ウェハ検査工程において、チップ上の電極パッドと検査装置との電気的接触を確立する装置である。プローバには、プローブカード又はプローバ基板と呼ばれる探針(プローブ)のついた基板が搭載され、プローブをウェハ上の電極パッドに接触させてウェハ検査を行う。
近年、集積回路の微細化に伴いパッドのサイズや間隔が縮小し、搭載される集積回路の複雑化に伴いパッド数が増加する傾向がある。近い将来、パッドサイズや間隔は100μmから30〜50μmになり、パッド数は、多いものでは数千個から数万個になると言われている。一方、生産効率向上のため半導体ウェハの大型化が進んでおり、既に直径30cmのウェハが量産ラインで使用されている。それに伴って、プローブカードの大型化とプローブの高密度化に対する要求が高くなっている。
また、従来、バーンインテスト(高温環境化での通電検査又は加速度検査)は、通常、実装されたチップに対し行われていたが、実装前のウェハ段階でのバーンインテスト、いわゆるウェハレベルバーンインに対するニーズが高まっている。例えば、集積回路の高機能化、小型化のために、複数のチップをひとつのパッケージに実装するMulti Chip Packageを製造する場合には、実装前にバーンインテストを行い、チップの信頼性を確保することが最終製品の歩留まり向上に大きく貢献する。
【0004】
このような状況の中で、プローブカードに対し、次のような問題が生じてきた。
1)バーンインテストの際に、大型化した半導体基板とプローブカードとの熱膨張の差によって電極パッドとプローブの間に無視できない大きさの位置ずれが生じる。
2)プローブカードに通常使用される単層厚板の基板では、ビア(貫通配線)の最小配線ピッチが0.2mm程度であり、より狭いピッチのプローブ配置を行うことができない。
3)プローブをウェハに接触させる時に、一本のプローブあたり10gの力が加わる場合、1000本のプローブを持つプローブカードには10kgの力が加わる。プローブカードを構成する基板には、十分な機械的強度が必要である。
4)プローブカードの大型化とプローブの高密度化により、プローブ数は膨大なものになるが、そのうち1個でも破損すると、プローブカード全体が使用できなくなる。
【0005】
熱膨張差によるプローブ位置ずれの問題を解決するために、いくつかの方法が提案されている。図6は、特許文献1による従来のプローブカードの断面図である。プローブカードは、絶縁基板101、弾性層102、金属配線103、プローブとして機能する金属バンプ104から構成される。特許文献1には、弾性層102の材料として、ガラスやシリコンのようなシリコンウェハに熱膨張率が近い材料を用いることでプローブの位置ずれを低減する技術が記載されている。また、特許文献2には、プローブカードの絶縁固定用部品の材料としてムライトセラミックという低熱膨張率の材料を用いる技術が記載されている。非特許文献1には、PCRという熱膨張率が数百ppmのシリコンゴムとシリコンとほぼ等しい熱膨張率を持つ金属枠とを一体成形したメンブレンタイプ(1枚のシート上にめっきなどで電極をつけるタイプ)のプローブカードが記載されている。
【0006】
プローブカードを構成する基板に高い機械的強度を持たせるには十分な厚さの基板を用いる必要があるが、加工性が低くなる、すなわち、狭いピッチで穴を開け垂直配線を行うのが困難になるという問題がある。これに対し、薄い基板に穴を開けて基板上に配線を形成してから、複数の薄い基板を積層させて厚くする方法をとることができる。しかし、特許文献1に記載されたガラスを用いて積層配線基板を作製する場合には問題がある。ガラスは表面が硬いので、配線用に厚い金属膜を形成し、表面の凹凸が大きくなると積層した時に基板同士をしっかり固着させることができない。従って、ガラス積層基板では、厚さがせいぜい1μmの金属膜が限度であった。この程度の厚さの金属膜の場合、圧着時の高温処理(パイレックスガラスで軟化点が約850℃)で金属膜が酸化する影響が大きく、配線抵抗が高くなるという問題がある。
一方、特許文献1に記載されたもう一つの材料であるシリコンは絶縁性が高くないので、表面に配線を形成する時に酸化膜などの絶縁膜を形成する必要がある。そのため、寄生容量が大きくなり、高周波測定ができないという問題がある。また、製造コストがガラスに比べて高くなるという問題がある。
一方、特許文献2に記載されたムライトセラミックは、焼結温度が1600〜1800℃であるため、配線材料として低抵抗のAg、Cuを用いることができないという問題がある。
非特許文献1に記載されたメンブレンタイプのプローブカードは、有機物であるメンブレンの耐久性が低いという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ウェハレベルバーンイン検査が可能で、プローブカードの大型化、プローブの高密度化に対応できる半導体集積回路検査用プローバ、及び、プローブカードとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(1)は、シリコンウェハの検査に使用するプローブカードであり、表層、及び/又は、内部に配線を配置した基板を備え、前記基板の材料が、測定温度150℃における熱膨張率が2ppm/℃以上、4ppm/℃以下のLTCCであることを特徴とするプローブカードである。
【0009】
本発明(2)は、前記基板が、プローブピッチを変換するピッチ変換基板、複数のプローブを支持するプローブ支持基板、又は、プローブピッチを変換し、同時に、複数のプローブを支持するピッチ変換・プローブ支持の兼用基板であることを特徴とする前記発明(1)のプローブカードである。
【0010】
本発明(3)は、前記基板が、プローブピッチを変換するピッチ変換基板であり、前記ピッチ変換基板にガラス貫通配線基板からなるプローブ支持基板が取り付けられていることを特徴とする前記発明(1)のプローブカードである。
【0011】
本発明(4)は、前記基板が、プローブピッチを変換するピッチ変換基板であり、前記ピッチ変換基板にポリマーからなるプローブ接続層が取り付けられていることを特徴とする前記発明(1)のプローブカードである。
【0012】
本発明(5)は、前記配線の材料が、Ag又はCuであることを特徴とする前記発明(1)乃至前記発明(4)のプローブカードである。
【0013】
本発明(6)は、前記発明(1)乃至前記発明(5)のプローブカードを備えた半導体集積回路検査用プローバである。
【0014】
本発明(7)は、MEMS技術を用いて半導体基板上に作製したプローブを、プローブ支持基板に取り付けてプローバを作製する製造方法であり、前記プローブ支持基板上の接触端子と前記プローブを、高温半田を用いた半田バンプにより接着することを特徴とするプローバの製造方法である。
【0015】
本発明(8)は、前記半導体基板がシリコンからなり、前記プローブがNi又はNi合金からなり、前記半導体基板と前記プローブ支持基板との接合を行った後に、前記半導体基板をウェットエッチング又はドライエッチングにより除去することを特徴とする請求項7記載のプローバの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
1.ピッチ変換基板又はプローブ支持基板の材料に、シリコンの熱膨張率に近い低熱膨張率のLTCC、及び/又は、ガラスを用いているため、高温環境で検査を行うバーンインテストにおいても、プローブの位置ずれが生じ難く、シリコンウェハの確実な検査を行うことができる。
2.LTCCは、焼成前のグリーンシートの段階では柔軟性があり、厚い金属膜をつけて焼成し積層基板を作製することが可能である。そのため、配線抵抗を低抵抗にできると同時に、金属膜表面の酸化による配線抵抗の増加は小さく、ガラス積層基板のような配線抵抗増加の問題は生じない。
3.LTCCは、多層セラミック基板であるため、パンチングで容易に狭ピッチの穴を開けることができる。配線を形成したグリーンシートを積層することにより、積層基板の表層、内層に配線パターンを形成し、各層の配線間をビアで接続することができる。LTCCを用いることにより高密度プローブに対応したピッチ変換基板を作製することができる。
4.LTCCは、900±100℃と低温で焼成を行うため、Ag、Cuなどの低抵抗配線材料を用いることができ、測定精度の向上に効果がある。
5.LTCCは、セラミックであるため、機械的強度が高く、薄板を積層することにより基板の厚さを十分厚くすることも可能である。従って、プローブピンの高密度化、プローブカードの大型化が進み、検査時にプローブカードに加わる力が大きくなっても、基板が破損しにくい。
6.LTCCからなるピッチ変換基板と切り離しが可能なように、プローブ支持基板として機能する積層貫通配線ガラス基板を取り付けた場合は、消耗の早いプローブ支持基板をピッチ変換基板から切り離して交換できるので、部品交換コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の最良形態について説明する。
本発明の半導体集積回路検査用プローバは、MEMSタイプのプローブカードを用いる。MEMS (Micro Electro Mechanical Systems)は、微細な機械部品や電子部品を基板上に集積したデバイスであり、デポジション、フォトリソグラフィー、エッチングなどの微細加工技術を用いて作製される。プローブカードは、従来、プローブを1本ずつ基板に取り付けて作製されていたが、従来の方法では100μm以下のピッチの高密度プローブを作製することはできなかった。MEMSタイプのプローブカードは、数十μmピッチのプローブも作製可能で、さらに、十分な機械的強度を持ち、メンブレンタイプのプローブカードに比べ、耐久性の点でも優れている。
【0018】
本発明に係るプローブカードは、基板材料として低熱膨張率のLTCCを用いる。LTCC(Low Temperature Co-Fired Ceramics、低温同時焼成セラミック)は、アルミナやチタン酸バリウムなどのセラミック材料にホウ酸系やケイ素酸系ガラスを添加し、900℃程度の低温で焼成した積層基板である。従来のアルミナを主成分としたセラミック多層基板では1500℃の高温で焼成する必要があった。これに対してアルミナにガラス系材料を添加することで900℃程度の低温で焼成を行うことが可能になった。低温で焼成を行うため、Wのような高抵抗、高融点金属を用いる必要がなく、Ag, Cu, Auなどの低融点、低抵抗の材料を用いて配線を形成できるので、高精度の電気測定が可能である。また、セラミックであるため、耐熱性、耐湿性に優れる他、誘電率が低いので高周波特性に優れている。このような特性を生かし、LTCCはこれまでパッケージ基板やマルチチップモジュール、通信モジュールの回路基板として広く使用されてきた。最近開発された低熱膨張率のLTCCは、パッケージのふたに用いた例が報告されている(非特許文献2)が、これをプローブカードの基板として用いた例はない。
【0019】
本明細書では、プローブカードを構成する基板の名称として、電源や電気測定装置と接続し、回路素子を搭載又は配線パターンを形成した基板を「プリント回路基板」、プリント回路基板上にはせいぜい小さくても数mm程度のピッチのコネクターしか配置できないため、プリント回路基板と電気的に接続し、配線ピッチ又はプローブピッチをより高密度にする基板を「ピッチ変換基板」、ウェハ上の電極パッドに接触するプローブを搭載する基板を「プローブ支持基板」と呼ぶことにする。プローブ支持基板がピッチ変換機能を持つこともあり得る。
【0020】
(プローブカードの第一の具体例)
図1(a)及び(b)は、本発明に係るプローブカードの第一の具体例の断面図である。図1(a)において、プローブカード1は、プリント回路基板2、プローブ支持基板3から構成される。プローブ支持基板3には、複数のプローブ5が取り付けられており、プローブ支持基板内に形成された配線4によりプリント回路基板2上の配線と電気的に接続している。プローブ支持基板3は、低熱膨張率のLTCCにより作製する。熱膨張率がシリコンに近い基板にプローブを取り付けているため、バーンインテストにおけるプローブとウェハ上の電極パッドとの位置ずれを小さくすることができる。
【0021】
LTCCは以下に示す工程により製造する。
1.セラミック粉末とガラスを一定比率で配合し、混合する。
2.混合された原料に有機系のバインダーと溶剤を加え、均一になるまで分散させる。スラリーと呼ばれるグリーンシートのもとになる材料ができる。
3.スラリーは成膜装置でPETフィルム上に一定の厚さで塗布され、乾燥工程を経て巻き取られる。出来上がったシート状の材料はグリーンシートと呼ばれる。
4.グリーンシートを所定の大きさに切断する。
5.上下層の導通を確保するため、ビアとなる穴あけ加工を行う。
6.ビアとなる穴への導体充填と配線パターンの印刷を行い、1層の板ができる。
7.異なる配線パターンを数層作製し、積層工程で位置合わせを行う。
8.位置合わせを行った積層体に圧力を加え、焼成工程を経てLTCCの積層配線基板を完成する。
【0022】
図1(a)に示すプローブ支持基板3は、積層前のグリーンシートにおいて横方向の配線を形成していない。従って、プリント回路基板2に接続する配線ピッチとプローブ5のピッチが等しい場合の断面図である。一方、図1(b)は、グリーンシートにおいて横方向の配線パターンを形成することにより、プリント回路基板7に接続する配線ピッチに対し、プローブ10のピッチをより狭くした場合の断面図である。LTCCは、ガラス基板と異なり、グリーンシートの段階では柔軟性があり、厚い金属膜(例えば金属ペーストで20μm)をつけても、積層したグリーンシート同士を共焼成により強固に圧着させることが可能である。金属膜を厚く形成できるので、表面酸化による配線抵抗上昇の問題は生じない。また、グリーンシートはパンチングにより簡単に狭ピッチの穴を開けることができる。厚さ40〜120μmのグリーンシートで100μmピッチの穴を開けることが可能である。LTCCはグリーンシートを積層することにより、厚さ3mm程度の厚い積層基板を作製することができ、図1(b)に示す構造のプローブカードでは、大きなプローブ圧力に十分耐えられる強度を持ち、100μmレベルの高密度プローブを取り付けたプローブカードを作成することができる。
【0023】
(低熱膨張率のLTCC)
本発明のプローブカードのピッチ変換基板、及び/又は、プローブ支持基板の基板材料としては、一般的なバーンイン温度である150℃における熱膨張率が、2ppm/℃以上、4ppm/℃以下のLTCCを用いることが好ましい。検査対象となるシリコンウェハの熱膨張率は、293K(20℃)で2.6ppm/℃、500K(227℃)で3.5ppm/℃であり、シリコンに熱膨張率の近い材料をプローブカードの基板材料に用いることにより、バーンインテストにおけるプローブ位置ずれを低減可能である。
従来、パッケージ基板などに広く用いられていたLTCCの熱膨張率は、7ppm/℃とシリコンの熱膨張率に比べ2〜3倍と大きかった。今回、発明者らはニッコー電子セラミック(株)から、熱膨張率が3.6ppm/℃のLTCCを入手してプローブカードを作成した。非特許文献2にも、パッケージのふたとして用いた例ではあるが、ニッコーから3.4ppm/℃から5.5ppm/℃までと低い熱膨張率のLTCCを入手したとの記載がある。
【0024】
(プローブ支持基板の製造プロセス)
図2(a)乃至(m)は、本発明に係るプローブ支持基板の製造工程を説明する工程順断面図である。図2に示す製造プロセスの具体例では、MEMS技術を用いて4インチの(100)シリコンウェハ上にプローブ支持基板を製造した。図2(a)に示すシリコンウェハに対し熱酸化により酸化膜を形成して、TMAHエッチングによりウェハ表面に深さ100μmのトレンチを形成する(図2(b))。その後、熱酸化により再び酸化膜を形成する(図2(c))。先に形成したトレンチの底に、ピラミッド形状の接触部の型枠を形成するために、TMAHエッチングを再び行う(図2(d))。次に、BHF(緩衝フッ酸溶液)により熱酸化膜を除去する(図2(e))。その後、シリコン基板の上に厚さ100nmのCrと厚さ3μmのCuをスパッターにより堆積する(図2(f))。形成されたCr/Cu膜は、後工程である電気めっき工程におけるシード層として使用される。次に、シリコン基板上に厚膜のフォトレジストTHB-151NやSU-8を塗布する(図2(g))。このレジスト層は深さ100μmのトレンチ全体を充填するように堆積される。スピン工程において、レジスト層中に気泡が発生しないように注意する必要がある。次に、露光現像工程により、レジスト層の一部を除去する(図2(h))。次に、レジスト層を型枠として使用し、厚さ10μmのNiプローブを電気めっきにより形成する(図2(i))。
プローブの材料としては、Niの他に、NiPやNiWなどのNi合金を用いることができる。レジスト層を除去し、UBM層(バンプ接触端子の下側層)をNiプローブの上に形成する(図2(j))。UBM層は、Cr(100nm)/Pt(100nm)/Au(100nm)の3層構造である。ここで、Crは接着層として、Ptは拡散バリア層として、Auは酸化防止層として機能する。UBMのパターニングは、リフトオフ技術により行う。この工程において、(111)面上でのレジストのスプレーコートを再び使用する。配線と接触端子を形成したLTCCからなるプローブ支持基板の接触端子とUMB層の接触端子の接着には、高温半田を用いる(図2(k))。高温半田として、例えば、AuSn、SnBi、SnAg、SnAgCu、SnPb、SnAgBiCu、SnCu、Sn、Inを用いることができる。高温半田を用いた半田バンプは、特に高温環境での機械的強度に優れている。半田バンプによりLTCC基板とNiプローブの接触端子の位置合わせをして接着する(図2(l))。半田バンプ工程は、真空中で500Nの圧力を加え、500℃で1時間の加熱を行う。その後、KOHの40wt%溶液を用いてエッチングを行い、シリコン基板を溶解して除去する。(図2(m))。KOHは、シリコンは溶解するが、NiやAu/Sn合金は溶解しない。従って、LTCC基板やプローブを損傷することなく、プローブ支持基板の完成後に不要となるシリコン基板を容易に除去することが可能である。エッチング方法は、ウェットエッチングでも、ドライエッチングでもシリコンを選択的に除去できるエッチング方法であれば適宜用いることが可能である。ウェットエッチングを行う際のエッチング溶液としては、KOHの他に、EPW(エチレンジアミン、ピロカテコール、水の混合溶液)、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)などの溶液を用いることができる。また、ドライエッチングを行う際のエッチャントガスとしては、XeF2、SF6、CHF3、CF4、CBr4、CCl4、F2などのガスを用いることができる。
【0025】
(プローブカードの第二の具体例)
図3は、本発明に係るプローブカードの第二の具体例の断面図である。図3に示すプローブカードは、プリント回路基板12、ピッチ変換基板14、プローブ支持基板16により構成されている。ピッチ変換基板14は、表層、内層に配線パターンを形成した低熱膨張率のLTCC基板である。プローブ支持基板16は、特許文献3に記載したガラス貫通配線基板である。ピッチ変換基板14とプローブ支持基板16は、半田バンプなどによって固定及び電気的接続がなされている。ガラス貫通配線基板は、配線を施したガラス基板を積層・接合したものを積層方向と垂直方向にスライスして製作したもので、その表面と内部の配線によって再配線機能を提供する。また、スライス厚を十分に取ることで、プローバ基板として必要な強度を提供するものである。また、ガラス貫通配線基板の材料として、シリコンと熱膨張率を等しくするガラスを用いることにより、シリコンでできたプローブ17とプローブ支持基板16の陽極接合が可能となり、さらに、ピッチ変換基板14との熱膨張差を最小にすることも可能である。基板材料となるガラスとしては、パイレックス#7740等のシリコンに熱膨張率の近いパイレックスガラスを用いるのが好ましい。なお、ピッチ変換基板14とプリント回路基板12とは、ピッチ幅もそれほど微細なものではなく、ポゴピンなど柔軟な部材により電気的に接続しており、両者の熱膨張差を吸収する構造になっている。
ピッチ変換基板だけでなく、ガラス貫通配線基板においても、ピッチを小さく変換することが可能であり、ピッチ変換基板において100μmまで小さくしたピッチをさらに狭くすることができ、30〜50μmのピッチのプローブ配列が可能になる。
また、プローブ支持基板は通常プローブカードにおける他の部材に比べ、プローブの破損など消耗が早い。図3に示す構造にすることにより、プローブが破損した場合に、プローブ支持基板をピッチ変換基板と分離して部品交換することができる。
【0026】
(ガラス積層配線基板の製造プロセス)
ガラス積層配線基板の構造、特徴、製造プロセスについては、特許文献3に詳細に記載されている。ここで、図4に示す製造工程の説明図を用いて、簡単にガラス積層配線基板の製造プロセスについて説明する。
初めに図4(a)に示すように、ガラス基板21に複数の凹溝を形成し、そこに導線22を埋め込む。このとき、例えば点線のようにスライス位置を示す目印を入れておいた方が好ましい。
次に図4(b)に示すように、導線22の埋め込まれたガラス基板21を接着する。
これを点線に沿ってスライスしてから、スライス面を研磨する。このとき、図4(c)に示すガラス貫通配線基板21が得られる。ガラス貫通配線基板21の下面では接触端子23が密になっており、上面では接触端子23の間隔が横方向に広がっている。
最後に図4(d)に示すように、ガラス貫通配線基板21の上面に、間隔が縦方向にも広がった接触端子24を新たに追加する。そして対応する接触端子23と導線25で接続することにより、再配線する。
【0027】
(プローブカードの第三の具体例)
図5は、本発明に係るプローブカードの第三の具体例の断面図である。図5に示すプローブカードは、プリント配線基板32、ピッチ変換基板34、プローブ接続層35により構成される。図5に示すプローブカードは、図3に示すプローブカードにおけるガラス貫通配線基板からなるプローブ支持基板がポリイミド層からなるプローブ接続層35に置き換わったものである。このプローブ接続層の材料は、ポリイミドに限らず、耐熱性、柔軟性のあるポリマーを用いることが可能である。一般的に、ポリマーは、シリコンとは熱膨張率が異なる材料であるが、柔軟性があり、LTCCの変形に応じて変形するので、バーンインテストにおいて、大きなプローブの位置ずれを生じないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)及び(b)は、本発明に係るプローブカードの第一の具体例の断面図である。
【図2】(a)乃至(m)は、本発明に係るプローブ支持基板の製造工程を説明する工程順断面図である。
【図3】本発明に係るプローブカードの第二の具体例の断面図である。
【図4】(a)乃至(d)は、図3に示すプローブカードにおいて用いられる積層貫通配線ガラス基板の製造工程を説明する図である。
【図5】本発明に係るプローブカードの第三の具体例の断面図である。
【図6】従来のプローブカードの断面図である。
【符号の説明】
【0029】
6、11、31 プローブカード
7、12、32 プリント回路基板
8 プローブ支持基板
4、9 配線
5、10、17、36 プローブ
13、33 ポゴピン
14、34 ピッチ変換基板
15 半田バンプ
16 積層貫通配線ガラス基板
35 プローブ接続層
21 ガラス基板
22、25 導線
23、24 接触端子
101 絶縁基板
102 弾性層
103 金属配線
104 金属バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェハの検査に使用するプローブカードであり、表層、及び/又は、内部に配線を配置した基板を備え、前記基板の材料が、測定温度150℃における熱膨張率が2ppm/℃以上、4ppm/℃以下のLTCCであることを特徴とするプローブカード。
【請求項2】
前記基板が、プローブピッチを変換するピッチ変換基板、複数のプローブを支持するプローブ支持基板、又は、プローブピッチを変換し、同時に、複数のプローブを支持するピッチ変換・プローブ支持の兼用基板であることを特徴とする請求項1記載のプローブカード。
【請求項3】
前記基板が、プローブピッチを変換するピッチ変換基板であり、前記ピッチ変換基板にガラス貫通配線基板からなるプローブ支持基板が取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のプローブカード。
【請求項4】
前記基板が、プローブピッチを変換するピッチ変換基板であり、前記ピッチ変換基板にポリマーからなるプローブ接続層が取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のプローブカード。
【請求項5】
前記配線の材料が、Ag又はCuであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のプローブカード。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載のプローブカードを備えた半導体集積回路検査用プローバ。
【請求項7】
MEMS技術を用いて半導体基板上に作製したプローブを、プローブ支持基板に取り付けてプローバを作製する製造方法であり、前記プローブ支持基板上の接触端子と前記プローブを、高温半田を用いた半田バンプにより接着することを特徴とするプローバの製造方法。
【請求項8】
前記半導体基板がシリコンからなり、前記プローブがNi又はNi合金からなり、前記半導体基板と前記プローブ支持基板との接合を行った後に、前記半導体基板をウェットエッチング又はドライエッチングにより除去することを特徴とする請求項7記載のプローバの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−89461(P2008−89461A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271943(P2006−271943)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(302000081)株式会社メムス・コア (19)
【Fターム(参考)】