説明

半田フラックス除去用洗浄剤および半田フラックスの洗浄方法

【課題】鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等を洗浄する際であっても、優れた洗浄性を示すとともに、次工程におけるアルコール系溶剤を使用したリンスにおいても優れたリンス特性を示すことができる半田フラックス除去用洗浄剤および半田フラックスの洗浄方法を提供する。
【解決手段】 全体量に対して、グリコール化合物の含有量が1重量%未満の場合であって、ベンジルアルコールの含有量を70〜99.9重量%、およびアミノアルコールの含有量を0.1〜30重量%とした半田フラックス除去用洗浄剤を構成し、それを鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等の洗浄に使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田フラックス除去用洗浄剤および半田フラックスの洗浄方法に関し、特に、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等の洗浄に最適な半田用フラックスの洗浄剤および半田用フラックスの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子材料分野において、半田フラックス除去用洗浄剤や塗膜剥離用洗浄剤等として、グリコール化合物が主成分として多用されているが、モノアルコール系溶剤を主成分とした洗浄剤も知られている。
例えば、保護塗膜等の非水溶性高分子物質を洗浄することが可能な洗浄剤組成物が開示されている(例えば、特許文献1)。より具体的には、防錆材料としてのアクリル系高分子保護塗膜を、(A)特定のアミン類を5〜95重量部と、(B)ベンジルアルコール等を0.2〜50重量部と、(C)特定の界面活性剤を0.1〜80重量部と、から構成された洗浄剤組成物を用いて洗浄する方法が開示されている。
また、代替フロン洗浄剤として、引火点が比較的高いモノアルコール系溶剤を使用した半田付け後の電子部品の洗浄方法が開示されている(例えば、特許文献2)。より具体的には、ベンジルアルコールからなるフラックス洗浄剤に浸漬する前後のいずれかに、イソプロピルアルコール中に浸漬する半田付け電子部品の洗浄方法が開示されている(例えば、特許文献2)。
【0003】
また、取扱いが安全であって、フラックス等の各種固体汚染物質を洗浄することが可能で、かつ、水リンス可能な洗浄剤が開示されている(例えば、特許文献3)。より具体的には、(A)ベンジルアルコールを50〜70重量%、(B)特定の水溶性グリコールエーテルを20〜40重量%と、(C)特定の界面活性剤を1〜20重量%と、(D)水を5〜20重量%と、から構成された工業用洗浄剤が開示されている。
さらに、ロジン系フラックス等の除去性に優れ、劣化されにくく、かつ、廃水処理性に優れた洗浄剤が開示されている(例えば、特許文献4)。より具体的には、(A)ベンジルアルコールまたは2−フェニルエチルアルコールを70重量%以上と、(B)特定の界面活性剤を0.01〜30重量%と、からなる洗浄剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−69897号公報
【特許文献2】特開平4−34000号公報
【特許文献3】特開2000−8080号公報
【特許文献4】特開平3−140486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された洗浄剤組成物は、ベンジルアルコールの含有量が少なく、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等の洗浄剤としては、洗浄性が不十分であった。より具体的には、半田バンプが設けてあるポリイミド基板上に白色残渣が残りやすいという問題が見られた。一方で、比較的多量のアミン類を添加しているため、被洗浄物であるエポキシ基板等を侵しやすいという問題が見られた。さらには、所定量の界面活性剤を添加しなければならないために、アルコール系溶剤を使用した場合には、リンス工程において界面活性剤が基板表面に残りやすく、誘電特性が劣化するという問題も見られた。
また、特許文献2に開示された電子部品の洗浄方法は、ベンジルアルコール単体で用いているため、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等の洗浄剤としては、洗浄性が不十分であったり、アルコール系溶剤を使用したリンス工程におけるリンス特性が低かったりするという問題が見られた。
また、特許文献3に開示された洗浄剤は、ベンジルアルコールの含有量が比較的少ない一方、特定の水溶性グリコールエーテルや特定の界面活性剤、さらには所定量の水を添加しているため、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等の洗浄剤としては、洗浄性が同様に不十分であったり、アルコール系溶剤を使用した場合には、リンス工程におけるリンス特性が低かったりするという問題が見られた。
さらに、特許文献4に開示された洗浄剤は、特許文献2に開示された電子部品の洗浄方法と同様に、ベンジルアルコール単体を実質的に洗浄成分として使用しており、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックスのみならず、錫・鉛共晶半田用フラックスの洗浄剤としても洗浄性が不十分であるという問題が見られた。
【0006】
そこで、本発明の発明者らは鋭意検討した結果、グリコール化合物の含有量を考慮しつつ、特定のアルコール同士(ベンジルアルコールおよびアミノアルコール)を所定割合で使用することにより、例えば、ロジンを主成分とした鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス、さらには無洗浄半田用フラックス等を洗浄する際であっても、優れた洗浄性を示すとともに、アルコール系溶剤を使用したリンス工程においても優れたリンス特性を示すことを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等の洗浄に最適であって、優れた洗浄性およびリンス特性を有する半田フラックス除去用洗浄剤および半田フラックスの洗浄方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半田フラックス除去用洗浄剤によれば、ベンジルアルコールと、アミノアルコールと、を含む半田フラックス除去用洗浄剤の全体量を100重量%としたときに、ベンジルアルコールの含有量を70〜99.9重量%の範囲内の値とし、アミノアルコールの含有量を0.1〜30重量%の範囲内の値とし、下記一般式(2)で表されるグリコールエーテル化合物を含有する場合であっても、その含有量を1重量%未満の値とし、さらに、界面活性剤を含む場合であっても、当該界面活性剤の含有量を、半田フラックス除去用洗浄剤の全体量に対して、0.1重量%未満の値とすることを特徴とする半田フラックス除去用洗浄剤が提供され、上述した問題点を解決することができる。
【0008】
【化1】

【0009】
(一般式(2)中、R2は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R3は、水素またはメチル基である。)
【0010】
すなわち、このように構成することにより、アミノアルコールのアルカリ作用によって、鹸化作用や浸透力が向上するとともに、電気的中和力についても向上するため、特定のフラックス成分や半田微粒子等の洗浄性が優れたものとなる。
また、アミノアルコールは、ロジン等の特定の極性に乏しいフラックス成分と反応して塩を形成しやすいために、アルコール系溶剤への溶解性が向上し、ひいてはリンス特性についても優れたものとなる。
さらに、グリコールエーテルを所定量に制限することにより、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等のみならず、錫・鉛共晶半田用フラックスに対しても優れた洗浄効果を発揮することができる。
【0011】
また、本発明の半田フラックス除去用洗浄剤を構成するにあたり、フェノール系酸化防止剤を、全体量に対して、0.01〜10重量%の範囲でさらに含むことが好ましい。
このように構成することにより、洗浄剤の酸化劣化を有効に防止し、当該半田フラックス除去用洗浄剤を用いて、半田フラックスが付着した被洗浄物を長時間にわたって、安定して洗浄することができる。
【0012】
また、本発明の半田フラックス除去用洗浄剤を構成するにあたり、溶解度パラメータを10〜15の範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等を、より短時間で洗浄することができる。
【0013】
また、本発明の半田フラックス除去用洗浄剤を構成するにあたり、電気伝導度を0.5〜20μS/cmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成することにより、半田フラックスの定量的管理が可能になって、安定した洗浄性を得ることができるとともに、劣化の度合いについても判断することができる。
【0014】
また、本発明の半田フラックス除去用洗浄剤を構成するにあたり、ロジンを主成分とした鉛フリー半田用フラックスまたは高融点半田用フラックスであって、それに有機酸塩、グリシジルエーテル化合物、オキシ酸、カルボン酸、アニリドおよび熱硬化性樹脂の少なくとも一つの化合物が添加してある半田フラックスを洗浄の際の対象物とすることが好ましい。
このように半田フラックスの対象物を特定することにより、鉛フリー半田用フラックスまたは高融点半田用フラックスとして所定の濡れ性等が得られる一方、容易に除去することができる。
【0015】
また、本発明の別の態様は、ベンジルアルコールと、アミノアルコールと、を含む半田フラックス除去用洗浄剤の全体量を100重量%としたときに、ベンジルアルコールの含有量を70〜99.9重量%の範囲内の値とし、アミノアルコールの含有量を0.1〜30重量%の範囲内の値とし、上述した一般式(2)で表されるグリコールエーテル化合物を含有する場合であっても、その含有量を1重量%未満の値とし、さらに、界面活性剤を含む場合であっても、当該界面活性剤の含有量を、半田フラックス除去用洗浄剤の全体量に対して、0.1重量%未満の値とした半田フラックス除去用洗浄剤を用いて、半田フラックスが付着した被洗浄物を洗浄する工程と、リンス液としてアルコール系溶剤を用いて、被洗浄物をリンスする工程と、を含むことを特徴とする半田フラックスの洗浄方法である。
すなわち、このように実施することにより、洗浄剤中におけるベンジルアルコールの含有量が比較的多い場合であっても、優れたリンス特性を得ることができる。
【0016】
また、本発明の半田フラックスの洗浄方法を実施するにあたり、リンス工程におけるリンス液中のベンジルアルコールの濃度を30重量%以下とすることが好ましい。
このように実施することにより、リンス工程における被洗浄物の表面に対するフラックスの再付着を有効に防止することができる。
【0017】
また、本発明の半田フラックスの洗浄方法を実施するにあたり、半田フラックスが、ロジンを主成分とした鉛フリー半田用フラックスまたは高融点半田用フラックスであることが好ましい。
このように実施することにより、鉛フリー半田用フラックスまたは高融点半田用フラックスとして所定の濡れ性等が得られる一方、容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】洗浄液中のベンジルアルコールの含有量と、各洗浄温度における洗浄時間との関係を説明するために供する図である。
【図2】洗浄液中のベンジルアルコールの含有量と、各洗浄温度における基板の重量変化率との関係を説明するために供する図である。
【図3】洗浄装置を説明するために供する図である。
【図4】リンス液中のベンジルアルコールの濃度と、フラックスの再付着性との関係を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
第1の実施形態は、ベンジルアルコールと、アミノアルコールと、を含む半田フラックス除去用洗浄剤の全体量を100重量%としたときに、ベンジルアルコールの含有量を70〜99.9重量%の範囲内の値とし、アミノアルコールの含有量を0.1〜30重量%の範囲内の値とし、後述する一般式(2)で表されるグリコールエーテル化合物を含有する場合であっても、その含有量を1重量%未満の値とし、界面活性剤を含む場合であっても、当該界面活性剤の含有量を、半田フラックス除去用洗浄剤の全体量に対して、0.1重量%未満の値とすることを特徴とする半田フラックス除去用洗浄剤である。
すなわち、ベンジルアルコールを単独使用しても、ポリイミド基材等に付着した鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等を、短時間かつ十分に洗浄することは困難であるが、それに所定のアミノアルコールを添加することにより、リンス特性を低下させることなく、むしろ向上させことができるとともに、通常の半田フラックスはもちろんのこと、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等についても短時間かつ十分に洗浄して、除去することができる。
以下、半田フラックス除去用洗浄剤の構成成分等について具体的に説明する。
【0020】
1.ベンジルアルコール
ベンジルアルコールの種類には、上述したように、ベンゼン環に置換基を有するアルコール化合物、例えば、p−メチルベンジルアルコールやp−メトキシベンジルアルコールを含めることができるが、融点が室温以下、具体的に−15.3℃であって、取り扱いが容易であることから、ベンジルアルコールを単独使用することがより好ましい。
また、ベンジルアルコールの含有量は、グリコール化合物の含有量を考慮しつつ定めることが好ましいが、具体的に、ベンジルアルコールと、アミノアルコールと、グリコール化合物と、を含む半田フラックス除去用洗浄剤の全体量を100%としたときに、ベンジルアルコールの含有量を70〜99.9重量%の範囲内の値とする。
この理由は、グリコール化合物の含有量が1重量%未満の場合において、ベンジルアルコールの含有量が70重量%未満の値になると、洗浄温度を、例えば、50℃以上の高温にしなければ、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等を短時間かつ十分に洗浄することが困難になるためである。一方、かかるベンジルアルコールの含有量が99.9重量%を超えると、逆に、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等の洗浄性が低下したり、リンス特性が低下したり、さらには、半田処理された基板等の内部中に浸入して、重量変化をもたらしたりする場合があるためである。
したがって、グリコール化合物の含有量が1重量%未満の場合においては、ベンジルアルコールの含有量を、全体量に対して、75〜98重量%の範囲内の値にすることがより好ましく、80〜95重量%の範囲内の値にすることがさらに好ましい。
【0021】
ここで、図1を参照して、洗浄液中のグリコール化合物の含有量を0〜100重量%の範囲で変化させた場合における、ベンジルアルコールの含有量(濃度)と、各洗浄温度における洗浄時間との関係を詳細に説明する。
図1は、横軸に、洗浄液中のベンジルアルコールの含有量(重量%)を採って示してあり、縦軸に、各洗浄温度における鉛フリー半田用フラックスの洗浄時間(分)を採って示してある。また、図1中、記号Aで示されるラインが洗浄剤の温度が70℃の場合に相当し、同様に、記号B〜Eで示されるラインが、それぞれ洗浄剤の温度が60℃、50℃、40℃、および30℃の場合に相当する。そして、この図1から容易に理解できるように、ベンジルアルコールの含有量が多くなる程、また、洗浄温度が高くなる程、鉛フリー半田用フラックスの洗浄時間が短くなる傾向がある。
したがって、グリコール化合物の含有量が所定量以下の場合には、ベンジルアルコールの含有量を比較的多くし、例えば99.9重量%とすることにより、洗浄温度が40℃において、30分以内で鉛フリー半田用フラックスを洗浄することができる。また、グリコール化合物の含有量が所定量以上の場合には、ベンジルアルコールの含有量を比較的少なくした場合、例えば40重量%とした場合であっても、洗浄温度が50℃において、30分以内で鉛フリー半田用フラックスを洗浄することができる。
なお、洗浄温度にもよるが、洗浄時間が30分以内であれば、洗浄時におけるガラスエポキシ基板における重量変化率を0.5%以下の値に制御しやすくなる。そのため、リンス工程において適当条件でリンス操作を実施することにより、浸透したベンジルアルコール等が、ガラスエポキシ基板から効果的に脱離するため、重量変化率を0に近づけられることが判明している。
【0022】
また、図2を参照して、洗浄液中のグリコール化合物の含有量を0〜100重量%の範囲で変化させた場合における、ベンジルアルコールの含有量(濃度)と、ガラスエポキシ基板における重量変化率との関係を詳細に説明する。
図2は、横軸に、洗浄液中のベンジルアルコールの含有量(重量%)を採って示してあり、縦軸に、各洗浄温度におけるガラスエポキシ基板における重量変化率(%)を採って示してある。また、図2中、記号Aで示されるラインが洗浄剤の温度が70℃の場合に相当し、同様に、記号B〜Eで示されるラインが、それぞれ洗浄剤の温度が60℃、50℃、40℃、および30℃の場合に相当する。そして、この図2から容易に理解できるように、ベンジルアルコールの含有量が多くなる程、また、洗浄温度が高くなる程、ガラスエポキシ基板における重量変化率(%)が大きくなる傾向がある。
したがって、グリコール化合物の含有量が所定量以下であって、ベンジルアルコールの含有量を比較的多くした場合、例えば99.9重量%とするとともに、洗浄温度を40℃にすることによって、ガラスエポキシ基板における重量変化率を0.5%以下の値とすることができる。また、グリコール化合物の含有量が所定量以上であって、ベンジルアルコールの含有量を比較的少なくした場合、例えば40重量%とすることにより、洗浄温度を70℃にしても、ガラスエポキシ基板における重量変化率を0.5%以下の値とすることができる。
なお、洗浄時におけるガラスエポキシ基板における重量変化率が0.5%以下の値であれば、リンス工程において適当条件でリンス操作を実施することにより、浸透したベンジルアルコール等が、ガラスエポキシ基板から効果的に脱離するため、重量変化率を0に近づけられることが判明している。
【0023】
2.アミノアルコール
(1)種類
アミノアルコールの種類は特に制限されるものではないが、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルモノエタノールアミン、N−エチルモノエタノールアミン、N−ブチルモノエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−シクロヘキシルジエタノールアミン、N,N−ジメチルモノエタノールアミン、N,N−ジエチルモノエタノールアミン、N,N−ジブチルモノエタノールアミン等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
また、これらのアミノアルコールのうち、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、およびN−シクロヘキシルジエタノールアミンは、比較的安価であるとともに、比較的少量添加するだけで、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等を洗浄する際に優れた洗浄性を示すことより、より好ましいアミノアルコールである。
【0024】
(2)沸点
また、アミノアルコールの種類を、沸点から選択することも好ましい。すなわち、沸点が120〜400℃のアミノアルコールを選択することが好ましい。この理由は、かかるアミノアルコールの沸点が120℃未満になると、引火性が高くなって、得られる半田フラックス除去用洗浄剤の取り扱いが困難になったり、洗浄温度を過度に低下したりしなければならない場合があるためである。
一方、アミノアルコールの沸点が400℃を超えると、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等を短時間に、かつ十分に洗浄することが困難になる場合があるためである。
したがって、沸点が180〜370℃のアミノアルコールを選択することがより好ましい。
【0025】
(3)含有量
また、アミノアルコールの含有量を、全体量に対して、0.1〜30重量%の範囲内の値にすることを特徴とする。
この理由は、かかるアミノアルコールの含有量が、0.1重量%未満の値になると、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等に含まれる酸物質との反応性が低下し、結果として、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックスに対する洗浄効果が著しく低下したり、あるいは、次工程におけるアルコール系溶剤を使用したリンス工程でのリンス特性が低下したりする場合があるためである。一方、かかるアミノアルコールの含有量が、30重量%を超えると、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックスに対する洗浄効果が逆に低下したり、被洗浄物の被着物である電子部品の基板等を侵したりする場合があるためである。
したがって、アミノアルコールの含有量を、全体量に対して、1〜20重量%の範囲内の値にすることがより好ましく、3〜10重量%の範囲内の値にすることがさらに好ましい。
【0026】
3.グリコール化合物
(1)−1 種類
半田フラックス除去用洗浄剤中に、グリコール化合物を添加することが好ましい。この種類としては、下記一般式(2)で表されるグリコールエーテル化合物である。
この理由は、かかるグリコールエーテル化合物等を添加することにより、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックスのみならず、通常の半田フラックスについても、十分かつ短時間に除去できるためである。
【0027】
【化1】

【0028】
(一般式(2)中、R2は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R3は、水素またはメチル基である。)
【0029】
また、具体的には、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0030】
(1)−2 含有量
また、洗浄対象物を鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等とした場合、より具体的には、ベンジルアルコールの含有量を70〜99.9重量%の範囲およびアミノアルコールの含有量を0.1〜30重量%の範囲とした場合には、グリコール化合物の含有量を1重量%未満とすることが好ましい。
この理由は、かかるグリコールエーテルの含有量が1重量%を超えた値になると、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等に対する洗浄効果が著しく低下する場合があるためである。
【0031】
4.酸化防止剤
また、半田フラックス除去用洗浄剤に、各種酸化防止剤を添加することが好ましいが、その種類としては、フェノール系酸化防止剤であることが好ましい。
この理由は、フェノール系酸化防止剤であれば、半田フラックス除去用洗浄剤を高温加熱して、長時間使用したとしても、所定の酸化防止効果が得られるとともに、分解による着色汚染性が少ないためである。
【0032】
なお、好適なフェノール系酸化防止剤の具体例としては、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔2−メチル4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)スルフィド〕、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス〔メチレン−3−(3´,5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0033】
また、酸化防止剤の含有量を、全体量に対して、0.01〜10重量%の範囲内の値にすることを特徴とする。
この理由は、かかる酸化防止剤の含有量が、0.01重量%未満の値になると、洗浄剤の酸化を防止できない場合があるためである。一方、かかる酸化防止剤の含有量が、10重量%を超えると、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等に対する洗浄効果が著しく低下する場合があるためである。
したがって、酸化防止剤の含有量を、全体量に対して、0.05〜3重量%の範囲内の値にすることがより好ましく、0.1〜1重量%の範囲内の値にすることがさらに好ましい。
【0034】
5.溶解度パラメータ
また、半田フラックス除去用洗浄剤の溶解度パラメータを10〜15の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる溶解度パラメータが、かかる範囲を超えると、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等に対する洗浄効果が著しく低下する場合があるためである。
したがって、半田フラックス除去用洗浄剤の溶解度パラメータを、全体量に対して、11〜14の範囲内の値にすることがより好ましい。
【0035】
6.電気伝導度
また、半田フラックス除去用洗浄剤の電気伝導度(室温)を0.5〜20μS/cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる電気伝導度が、0.5μS/cm未満の値になると、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等に対する洗浄効果が著しく低下する場合があるためである。一方、かかる電気伝導度が、20μS/cmを超えると、被洗浄物の被着物である電子部品の基板等を侵す場合があるためである。
したがって、半田フラックス除去用洗浄剤の電気伝導度を0.7〜10μS/cmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.9〜3μS/cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0036】
7.対象物
被洗浄物の種類は、半田処理された電子部品や製品はもちろんのこと、半田処理されていなくとも、フラックスの影響がある部品等も好適に使用することができる。したがって、被洗浄物の種類は、特に制限されるものではないが、例えば、プリント回路板、セラミック配線基板、半導体素子(BGA、CSP、PGA、LGA等の半導体部品を含む。)、半導体素子搭載基板、バンプ付きTABテープ、バンプ無しTABテープ、半導体素子搭載TABテープ、リードフレーム、コンデンサ、および抵抗等が具体的に挙げられる。
そして、これら半田処理された電子部品や製品において、使用される半田フラックスの種類は特に制限されるものではないが、例えば、鉛フリー半田用フラックスまたは高融点半田用フラックス、あるいは無洗浄半田用フラックスであることが好ましい、すなわち、これらの半田フラックスは、通常、ロジンを主成分としており、それに、有機酸塩、グリシジルエーテル化合物、オキシ酸、カルボン酸(ジカルボン酸含む。)、アニリドおよび熱硬化樹脂(例えば、エポキシ樹脂や熱硬化性アクリル樹脂)の少なくとも一つの化合物が添加してある場合が多いためである。したがって、本発明の半田フラックス除去用洗浄剤であれば、通常の半田フラックスはもちろんのこと、これらの半田フラックスに対しても、選択的に優れた洗浄性を示すことができる。
【0037】
また、ベンジルアルコールやアミノアルコールへの溶解性が良好なことから、ロジンの一部または全部が水添してある化合物を、半田フラックスを洗浄の際の直接的な対象物とすることも好ましい。
さらに、無洗浄半田フラックスであっても、さらに高い耐電気腐食性を得たいような場合には、洗浄の際の直接的な対象物とすることができる。
なお、直接的な対象物であるフラックスが添加される高融点半田や鉛フリー半田、さらには無洗浄半田の種類についても特に制限されるものではないが、例えば、Sn−Ag系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Cu系、Sn−Zn系、Sn−Bi系、Pb−Sn系等が代表的である。
【0038】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、ベンジルアルコールと、アミノアルコールと、を含む半田フラックス除去用洗浄剤の全体量を100重量%としたときに、ベンジルアルコールの含有量を70〜99.9重量%の範囲内の値とし、アミノアルコールの含有量を0.1〜30重量%の範囲内の値とし、一般式(2)で表されるグリコールエーテル化合物を含有する場合であっても、その含有量を1重量%未満の値とし、界面活性剤を含む場合であっても、当該界面活性剤の含有量を、半田フラックス除去用洗浄剤の全体量に対して、0.1重量%未満の値とすることを特徴とする半田フラックス除去用洗浄剤を用いて、半田フラックスが付着した被洗浄物を洗浄する工程と、リンス液としてアルコール系溶剤を用いて、被洗浄物をリンスする工程と、を含む半田フラックスの洗浄方法である。
【0039】
1.調整工程
被洗浄物を洗浄するに先立ち、容器内に、配合材料としてのベンジルアルコールやアミノアルコール、あるいは第三成分等をそれぞれ秤量しながら添加し、それらを均一に混合して、半田フラックス除去用洗浄剤を調整する工程を設けることが好ましい。
なお、半田フラックス除去用洗浄剤の内容は、第1の実施の形態と同様であるが、この段階で、半田フラックス除去用洗浄剤の粘度、誘電損失、酸価、電気伝導度等の少なくとも一つを測定し、それぞれ所定範囲に制限することにより、均一な特性を有することを確認することが好ましい。
【0040】
2.洗浄工程
調整した半田フラックス除去用洗浄剤を用いて、半田処理された電子部品や製品を洗浄し、それらに付着している鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等を除去する工程である。
ここで、図3に示すような、超音波洗浄するための超音波振動子29を備えた洗浄槽12と、循環路22と、送液ポンプ24と、リンス槽14と、乾燥槽16と、を備えた洗浄装置10であることが好ましい。
より具体的には、洗浄槽12は、被洗浄物23の収容部20と、超音波振動子29と、洗浄液の攪拌装置(図示せず)と、サーモスタット付きのヒーター19と、洗浄液21を循環させるための循環路22と、から構成し、攪拌および循環している洗浄液21に対して超音波振動を付与し、被洗浄物23を効率的に洗浄することが好ましい。次いで、リンス槽14において、被洗浄物23から鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等をさらに除去するとともに、洗浄液21を除去し、さらに乾燥槽16においては、リンス液15等を蒸発させて、完全に除去することが好ましい。
また、半田フラックスが付着した被洗浄物を洗浄するにあたり、10〜90℃、0.5〜30分の条件で洗浄することが好ましい。
この理由は、このような条件で所定の洗浄効果が得られるならば、半田フラックス除去用洗浄剤の劣化を有効に防止できるためである。
【0041】
3.リンス工程
洗浄した電子部品や製品を、さらにリンス操作する工程である。ここで、リンス液として、アルコール系溶剤を使用することが好ましい。この理由は、水と比較して、早期乾燥ができるとともに、ベンジルアルコールやアミノアルコールについても、十分除去できるためである。
また、より具体的には、アルコール系溶剤として、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、アミルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール等の一種単独または二種以上のアルコール系溶剤を使用することが好ましい。
また、これらのアルコールに対して、所定量の水を添加したアルコール系溶剤を使用することが好ましく、より具体的には、全体量に対して40〜70重量%になるように水を添加したアルコール系溶剤を使用することが好ましい。
【0042】
また、リンス条件としては、10〜40℃、1〜30分の範囲内とし、さらに、二段階でリンス操作を実施することがより好ましい。この理由は、ベンジルアルコールやアミノアルコールの残渣についても、より少なくするためである。
なお、リンス工程後、例えば、40〜100℃、1〜30分の条件で、熱風乾燥することがより好ましい。
【0043】
また、リンス工程における、工業用エタノールを主成分としたリンス液全体を100重量%としたときに、当該リンス液中の洗浄液に起因したベンジルアルコールの濃度を30重量%以下とすることが好ましい。
この理由は、図4に示すように、かかるベンジルアルコールの濃度が30重量%を超えると、リンス工程におけるリンス液の濃度にも影響されるものの、リンス工程でのフラックスの再付着性現象が顕著に生じる場合があるためである。
したがって、リンス工程におけるリンス液中の工業用エタノール濃度が50重量%程度に低下した場合であっても、フラックスの再付着性現象を効果的に防止できることからリンス液中の洗浄液に起因したベンジルアルコールの濃度を22重量%以下とすることがより好ましい。また、リンス工程におけるリンス液中の工業用エタノール濃度が40%程度に低下した場合であっても、フラックスの再付着性現象を効果的に防止できることからリンス液中の洗浄液に起因したベンジルアルコールの濃度を14重量%以下とすることがさらに好ましい。
なお、図4は、横軸にリンス液中のベンジルアルコール濃度(重量%)を採って示してあり、縦軸に、リンス工程におけるフラックスの再付着性評価(相対値)を採って示してある。また、図4中のラインA〜Cは、それぞれリンス液中の工業用エタノール濃度が40重量%、50重量%、および60重量%に対応したものである。そして、ラインA〜Cに示されるフラックスの再付着性評価は、実施例1に準じて10分間リンス操作を2回行い、再付着性が全く認められない場合を5点とし、再付着性がほとんど認められない場合を3点とし、再付着性が少々認められた場合を1点とし、再付着性が顕著に認められた場合を0点として相対評価したものである。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げて、本発明を詳細に説明する。ただし、言うまでもなく、本発明の範囲は、以下の記載に何ら制限されるものではない。
【0045】
[実施例1]
1.洗浄剤の調整および評価
(1)電気伝導度
表1に示す実施例1の組成の洗浄剤を調整し、電気伝導度計MODEL SC82(横河電機(株)製)を用いて、25℃の条件にて測定した。
【0046】
(2)洗浄性評価
まず、ガラスエポキシ基板の所定箇所に、メタルマスクを用いて、ソルダーペーストLFソルダーTLF−204−85(タムラ化研(株)製)を所定パターンに印刷し、250℃のカバー付きホットプレ−トの中で、リフローさせて、テストピースとした。それを、温度70℃に保持された200gの洗浄剤入りの300mlのビ−カ内に浸漬し、マグネットスターラーを用いて攪拌状態としながら、洗浄を行った。所定時間洗浄した後、ビ−カからテストピースを取り出し、リンス液として、200gの工業用エタノール55重量%の水溶液が入った別のビーカに浸漬し、マグネットスターラーを用いて攪拌状態としながら、10分間のリンス操作を行った。このリンス操作を合計2回行った後、80℃に保持されたオーブンを用いて、テストピースを10分間乾燥させた。次いで、乾燥させたテストピースを、実体顕微鏡(倍率20)を用いて観察し、下記基準に照らして洗浄性を評価した。なお、表1に示す洗浄剤には、すべて、全体量に対して0.1重量%のフェノ−ル系酸化防止剤SumilizerBHT(住友化学工業(株)製)を添加した。
◎:3分間の洗浄で、残渣が無い。
○:5分間の洗浄で、残渣が無い。
△:5分間の洗浄で、残渣が少々残る。
×:5分間の洗浄で、多量の残渣が残る。
【0047】
(3)誘電損失(tanδ)
JIS2型くし型電極付き基板の所定箇所に、ソルダーペースト(LFソルダーTLF−204−85、タムラ化研(株)製)を印刷し、250℃のカバー付きホットプレ−トの中で、リフローさせて、テストピースとした。それを、200gの洗浄剤が入れられ、温度70℃に保持された300mlのビ−カ内に浸漬し、マグネットスターラーを用いて攪拌状態としながら、5分間の洗浄を行った。次いで、ビ−カからテストピースを取り出し、リンス液として、200gの工業用エタノール55重量%の水溶液が入った別のビーカに浸漬し、マグネットスターラーを用いて攪拌状態としながら、10分間のリンスを行った。このリンス操作を合計2回行った後、80℃に保持されたオーブンを用いて、テストピースを10分間乾燥させた。次いで、乾燥させたテストピースについて、プレシジョンLCRメータ(横河・ヒューレットパッカード(株)製)を用いて、相対湿度97%RHの雰囲気下で誘電損失(tanδ97%RH)を測定するとともに、相対湿度54%RHの雰囲気下で誘電損失(tanδ54%RH)をさらに測定し、その差(tanδ97%RH−tanδ54%RH)を算出した。表1中に、tanδとして、その差を示す。
【0048】
(4)リンス特性評価
300mlのビ−カ内の洗浄液に、フラックス濃度が5重量%になるようにフラックスを添加し、その中にプレパラートガラスを浸漬させた。次いで、リンス液として、200gの工業用エタノール55重量%の水溶液が入った別のビーカに浸漬し、マグネットスターラーを用いて攪拌状態としながら、10分間のリンスを行った。このリンス操作を合計2回行った後、80℃に保持されたオーブンを用いて、プレパラートガラスを10分間乾燥させた。次いで、乾燥させたプレパラートガラスを、実体顕微鏡(倍率20)を用いて観察するとともに、リンス液の状態を観察して、下記基準に照らしてリンス特性を評価した。
◎:プレパラートガラスにフラックスの付着が観察されず、リンス液も初期状態と同様
に、透明なままであった。
○:プレパラートガラスにフラックスの付着は観察されないが、リンス液に少々濁りが発
生した。
△:プレパラートガラスに、少々のフラックスの再付着が観察された。
×:プレパラートガラスに、多量のフラックスの再付着が観察された。
【0049】
[実施例2、5〜6、参考例3〜4]
実施例2、5〜6、参考例3〜4では、ベンジルアルコールおよびアミノアルコールの配合比率やアミノアルコールの種類を変えたり、グリコールエーテルを添加したりして、表1に示すような組成の洗浄剤をそれぞれ準備し、実施例1と同様に、電気伝導度、洗浄性、誘電損失(tanδ)、およびリンス特性をそれぞれ測定し、評価した。
【0050】
[比較例1〜7]
比較例1〜7では、ベンジルアルコールと、アミノアルコールとの配合比率を本発明の範囲外に変え、あるいは、アミノアルコールを使用せずに、表1に示すような組成の洗浄剤をそれぞれ準備し、実施例1と同様に、電気伝導度、洗浄性、誘電損失(tanδ)、およびリンス特性をそれぞれ測定し、評価した。
その結果、比較例1では、ベンジルアルコール単体を使用し、所定量のアミノアルコールを添加していないことから、電気伝導度の値が低く、それにつれて、洗浄性やリンス特性が不良であったり、不十分であったりするという問題が見られた。
また、比較例2では、ベンジルアルコールと、アミノアルコールを併用しているが、ベンジルアルコールの使用量が少なすぎることから、電気伝導度の値は比較的高いものの、洗浄性が不良であるという問題が見られた。
また、比較例3では、アミノアルコールのかわりに、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを併用していることから、電気伝導度の値が低く、それにつれて、洗浄性が不良であるという問題が見られた。
また、比較例4では、アミノアルコールのかわりに、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート(HLB=10)を併用していることから、電気伝導度の値が低く、それにつれて、洗浄性が不良であるという問題が見られた。
また、比較例5では、ベンジルアルコールと、アミノアルコールと、界面活性剤とを併用しているが、ベンジルアルコールの使用量が少なすぎることから、電気伝導度の値は比較的高いものの、洗浄性が不良であるという問題が見られた。
また、比較例6では、ベンジルアルコールと、グリコールエーテルと、ポリオキシエチレンオレイルエステル(HLB=14)と、水と、を併用しているが、ベンジルアルコールの使用量が少なすぎる一方、所定量のアミノアルコールを添加していないことから洗浄性が不良であるという問題が見られた。
さらに、比較例7では、グリコールエーテルと、トリエタノールアミンと、を併用しているが、ベンジルアルコールを使用していないために、洗浄性が不十分であるという問題が見られた。
【0051】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の半田フラックス除去用洗浄剤およびそれを用いた洗浄方法によれば、グリコール化合物の含有量に対応させて、所定量のベンジルアルコールと、アミノアルコールを含むことにより、鉛フリー半田用フラックスや高融点半田用フラックス等を洗浄する際であっても、優れた洗浄性を示すとともに、次工程におけるアルコール系溶剤を使用したリンスにおいても優れたリンス特性を示すことができるようになった。したがって、高信頼性を要求される車載基板等の電装部品や、高回路特性を要求される高周波回路基板等の洗浄が必要な基板の半田付けに、特殊なフラックスを含むため、今まで洗浄が事実上困難であった鉛フリー半田や高融点半田を容易に使用できるようになった。
【符号の説明】
【0053】
10:洗浄装置
12:洗浄槽
14:リンス槽
15:リンス液
16:乾燥槽
21:洗浄液
22:循環路
28:フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンジルアルコールと、アミノアルコールと、を含む半田フラックス除去用洗浄剤の全体量を100重量%としたときに、
ベンジルアルコールの含有量を70〜99.9重量%の範囲内の値とし、
アミノアルコールの含有量を0.1〜30重量%の範囲内の値とし、
下記一般式(2)で表されるグリコールエーテル化合物を含有する場合であっても、その含有量を1重量%未満の値とし、
界面活性剤を含む場合であっても、当該界面活性剤の含有量を、半田フラックス除去用洗浄剤の全体量に対して、0.1重量%未満の値とすることを特徴とする半田フラックス除去用洗浄剤。
【化1】


(一般式(2)中、R2は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R3は、水素またはメチル基である。)
【請求項2】
フェノール系酸化防止剤を、全体量に対して、0.01〜10重量%の範囲でさらに含むことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の半田フラックス除去用洗浄剤。
【請求項3】
溶解度パラメータを10〜15の範囲内の値とすることを特徴とする請求の範囲第1項および第2項に記載の半田フラックス除去用洗浄剤。
【請求項4】
電気伝導度を0.5〜20μS/cmの範囲内の値とすることを特徴とする請求の範囲第1項〜第3項のいずれか一項に記載の半田フラックス除去用洗浄剤。
【請求項5】
ロジンを主成分とした鉛フリー半田用フラックスまたは高融点半田用フラックスであって、それに有機酸塩、グリシジルエーテル化合物、オキシ酸、カルボン酸、アニリドおよび熱硬化性樹脂の少なくとも一つが添加してある半田フラックスを洗浄の際の対象物とすることを特徴とする請求の範囲第1項〜第4項のいずれか一項に記載の半田フラックス除去用洗浄剤。
【請求項6】
ベンジルアルコールと、アミノアルコールとを含む半田フラックス除去用洗浄剤の全体量を100重量%としたときに、ベンジルアルコールの含有量を70〜99.9重量%の範囲内の値とし、アミノアルコールの含有量を0.1〜30重量%の範囲内の値とし、下記一般式(2)で表されるグリコールエーテル化合物を含有する場合であっても、その含有量を1重量%未満の値とし、界面活性剤を含む場合であっても、当該界面活性剤の含有量を、0.1重量%未満の値とした半田フラックス除去用洗浄剤を用いて、半田フラックスが付着した被洗浄物を洗浄する工程と、
リンス液としてアルコール系溶剤を用いて、被洗浄物をリンスする工程と、を含むことを特徴とする半田フラックスの洗浄方法。
【化1】


(一般式(2)中、R2は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R3は、水素またはメチル基である。)
【請求項7】
前記リンス工程におけるリンス液中のベンジルアルコールの濃度を30重量%以下の値とすることを特徴とする請求の範囲第6項に記載の半田フラックスの洗浄方法。
【請求項8】
前記半田フラックスが、ロジンを主成分とした鉛フリー半田用フラックスまたは高融点半田用フラックスであることを特徴とする請求の範囲第6項または第7項に記載の半田フラックスの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−190089(P2009−190089A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125927(P2009−125927)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【分割の表示】特願2005−513416(P2005−513416)の分割
【原出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000123491)化研テック株式会社 (15)
【Fターム(参考)】