説明

印刷コンテンツの暗号化印刷・復号印刷システム

【課題】 自社内以外に持ち出した紙媒体からの情報漏洩を防止するために、紙媒体の印刷コンテンツを暗号化し、暗号化した紙媒体から元の印刷コンテンツに復元するシステムを実現する。
【解決手段】 人間が判読可能な印刷コンテンツを暗号パスワードに従って人間が判読不可能な印刷コンテンツに変換する第1の装置と、変換された判読不可能な印刷コンテンツを印刷する第2の装置と、印刷された印刷コンテンツを読み取る第3の装置と、前記暗号パスワードに対応し復号パスワードに従い、前記読み取った印刷コンテンツを人間が判読可能な印刷コンテンツに復元する第4の装置と、復元された印刷コンテンツを印刷して出力する第5の装置とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙媒体に印刷する文字や図形、画像などの印刷コンテンツを暗号化して印刷し、必要に応じて、暗号化印刷したコンテンツを復号して印刷して判読可能にすることにより、機密のコンテンツを印刷した紙媒体から機密情報が漏洩するのを防止するのに好適な印刷コンテンツの暗号化印刷・復号印刷システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
個人情報保護法の施行により、個人情報を始めとする各種の機密情報の漏洩を防止するための対策を強化する企業が増加し、それに伴い、機密情報の漏洩を防止する製品の数が増加してきた。それらの製品では、パーソナルコンピュータハードディスクドライブ(HDD)などの記録媒体に保存されているデータをターゲットにして、データの暗号化や外部の記録媒体への保存を禁止する製品が主流となっている。その機能を利用すれば、ネットワーク上でやりとりするデータを暗号化することができ、当事者以外に情報が漏洩することがなくなる。
しかし、データのやりとりにネットワークが使用できない場合、データを送る相手先にデータを暗号化して送れないため、データを印刷し相手先まで持って行かなければならない。そのとき印刷物は暗号化されておらず、誰でも読める状態になっていることから、相手先に印刷物が着くまでの間に資料の盗難や紛失などによる機密情報の漏洩が発生することが考えられる。そのため、資料からの情報漏洩に対処するために資料を解読不可能な形に暗号化する方法が必要である。それに関連した方法として、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
下記特許文献1に記載のものは、紙媒体を暗号化・復号化できるファクシミリ装置(FAX装置)を使用する方法である。この方法は、送信側のFAX装置で紙媒体に描画されたコンテンツを暗号化してから送信し、受信側のFAX装置で暗号化したコンテンツを復号して再現するものである。
【0004】
【特許文献1】特開平10−164376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般にFAX装置での印刷処理は、送られてくる1ラインごとの画像データを受信し、数ラインごとに印刷を行う。そのため画像データの送信中に通信障害が発生すると、画像データの一部が送信されず、印刷物に不備が生じてしまう。また、上記特許文献1に記載の技術におけるFAX装置の復号化処理では暗号化した印刷物に不備があると、解読可能な印刷物に変換できなくなる。それゆえに不備のある暗号化した印刷物に復号化処理を実行しても、復号化できない恐れがある。
一方、FAX装置の他に画像データを印刷する装置としてコピー機がある。コピー機での印刷処理はFAX装置と異なり、コピーの元となる紙媒体を1つの面と捉えて画像データを取得し印刷する。そのため、取得した画像データの一部が欠落していても、欠落部分以外は印刷することができる。このことから、解読不可能な印刷物の復号化処理にFAX装置ではなくコピー機を使用すれば、暗号化した画像データの一部が欠落していたとしても欠落部分以外を復号化することができると考えられる。
【0006】
本発明の目的は、紙媒体の資料から情報漏洩を防止するために、PCとコピー機を使用して、紙媒体に印刷するコンテンツを暗号化し、必要に応じて、判読可能に復号化するシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、人間が判読可能な印刷コンテンツを暗号パスワードに従って人間が判読不可能な印刷コンテンツに変換する第1の装置と、変換された判読不可能な印刷コンテンツを印刷する第2の装置と、印刷された印刷コンテンツを読み取る第3の装置と、前記暗号パスワードに対応し復号パスワードに従い、前記読み取った印刷コンテンツを人間が判読可能な印刷コンテンツに復元する第4の装置と、復元された印刷コンテンツを印刷して出力する第5の装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、紙媒体に印刷するコンテンツは暗号化されて判読不可能になっているため、持ち運び途中で紛失した場合であっても、紙媒体の印刷内容から機密情報などの情報漏洩を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図を用いて本発明を実施する場合の一形態を具体的に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るシステム構成図である。
図1において、ユーザ1は、本発明のシステムを操作する操作者である。
PC2は、ハードディスク2cに資料データ(印刷コンテンツ)2dを記憶し、暗号化プログラム2aと表示装置3と入力装置であるキーボード4とマウス5を備えているコンピュータである。
暗号化プログラム2aは、暗号パスワード2bをもとに資料データ2dを暗号化するプログラムである。
暗号パスワード2bは、資料データ2dを暗号化するために使用するパスワードである。
資料データ2dは暗号化プログラム2aを実行するデータである。
暗号データ2eは資料データ2dが暗号化プログラム2aによって暗号化されたデータを表す。
線2fはPC2とプリンタ6を接続するLANである。線2fを使用して暗号データ2eをPC2からプリンタ6に転送する。
【0010】
プリンタ6は暗号データ2eを印刷するプリンタである。
資料7は暗号データ2eが印刷された紙媒体である。
コピー機8は、外出先にあり、スキャナ部8aを備えたコピー機である。
スキャナ部8aはユーザ1が持ち込んだ資料7を復号化するために、資料7を画像データ8bとして取り込む機能である。
画像データ8bは資料7の画像データを表す。
線8cは、コピー機8とPC9を接続しているLANである。線8cは画像データ8bや復号データ9cの転送に使用する。
PC9は、復号化プログラム9aと表示装置10と入力装置であるキーボード11とマウス12を備えたコンピュータである。
復号化プログラム9aは、コピー機8から転送された画像データ8bを復号化するプログラムである。
復号パスワード9bは、画像データ8bを復号するために使用するパスワードである。
復号データ9cは、復号化プログラム9aが画像データ8bを復号したデータであり、資料データ2dと同一のデータである。PC9は、復号化プログラムの実行終了後、復号データ9cをコピー機8に転送する。
資料13は、復号データ9cが印刷されたものである。
【0011】
図2は、暗号化プログラム2aの設定画面と入力例を示す図である。
暗号化プログラム設定画面21は、プリンタの選択とパスワードと暗号化するページを設定する画面である。
プルダウン22は暗号化したデータを印刷するプリンタを選択するものである。
欄23は、暗号パスワード2bを入力する欄である。
ボタン24は、資料データ2dを印刷する場合に押すボタンである。
ボタン25は、設定画面21内の設定内容を無効にする場合に押すボタンである。
【0012】
図3は、復号化プログラム9aの設定画面と入力例を示す図である。
復号化プログラム設定画面31は復号パスワード9bを設定する画面である。
欄32は、復号パスワード9bを入力する欄である。
ボタン33は復号化プログラム9aを実行するボタンである。
【0013】
図4は、パスワードをASCIIコードの数値に変換するために使用するASCIIコードテーブル41と、パスワードをASCIIコードの数値に変換したASCIIコード変換テーブル44を示す図である。
ASCIIコードテーブル41は列42と列43で構成され、暗号化プログラム2cと復号化プログラム9aがそれぞれ保持する。
列42は、数字と大小の英字が並べられている列である。
列43は、列42の各文字に対応したASCIIコードの10進数の数値が並べられている。
ASCIIコード変換テーブル44は、行45と行46で構成され、暗号化プログラム2cと復号化プログラム9aがそれぞれ保持する。
行45は、欄23または欄32で入力したパスワードを表す。
行46は、ASCIIテーブル41を元に行45の各文字をASCIIコードに変換した数値を表す。
【0014】
図5は、資料データ2dの暗号化の流れを示す説明図である。
画像51は資料データ2dの一部の画像を表す。
枠52は、資料データ2dの画像の1画素を表す。画像51は24個の枠52で構成されている。
番号53は、画像51を横方向に1画素ごとに区切った行番号を表す。
数値54は、各画素の濃度の数値を表す。
テーブル55は、画像51を濃度の数値に変換したテーブルである。ただし、画像51の本来のデータ構造はテーブル55のような二次元的な構造ではなく、一次元の構造になっている。画像51の濃度を二次元的な構造で表しているのは本実施例の説明のためである。
枠56は、画像51の各行の画素数を表す数値である。
テーブル57aは、暗号パスワード2bを構成する文字「PassWordPass」を表す。
テーブル57bは、暗号パスワード2bに対応するASCIIコードの数値の並びを表す。
テーブル57cはテーブル55の1行目と2行目の濃度の数値を1次元で表したテーブルである。
テーブル57dはテーブル57cの各数値とテーブル57bの各数値の計算によって変更された濃度の数値を表す。
テーブル58は、暗号パスワード2bによって変更された濃度の数値のテーブルを表す。
画像59は、テーブル58の各数値に対応した濃度で表した画像である。
【0015】
図6は、資料データ2dを暗号化して印刷するまでの過程を示すフローチャートである。
資料データ2dは既に作成済みであるものとする。
まず、図2の暗号化プログラム設定画面21を起動する(ステップ601)。
次に、暗号化プログラム設定画面21のプルダウン22で、資料データ2dを印刷するプリンタを設定する(ステップ602)。
次に、欄23に暗号パスワード2bを入力する(ステップ603)。パスワードは数字と大小の英字を組み合わせて設定する。
暗号化プログラム2aの設定が終了したらボタン24を押す(クリック604)。
ボタン24を押すと、暗号化プログラム2aが起動する(ステップ605、図7参照)。
暗号化プログラム2aにより暗号データが印刷される(ステップ606)。
【0016】
図7は、暗号化プログラム2aのアルゴリズムを示すフローチャートである。
暗号化プログラム2aは暗号化に必要な暗号パスワード2bを読み込む(ステップ701)。
暗号化プログラム2aはASCIIコードテーブル41を使用して暗号パスワード2bの各文字をASCIIコードの数値に変換する(ステップ702)。
例えば暗号パスワード2bが「PassWord」である場合、「PassWord」の各文字のASCIIコードの数値は図4のASCIIコード変換テーブル44のように算出される。
暗号化プログラム2aは資料データ2dで最も小さいページ番号のページを読み込む(ステップ703)。
暗号化プログラム2aは読み込んだページの各画素の濃度を算出する(ステップ704)。例えば暗号化プログラム2aが画像51を読み込んだ場合、算出される各画素の濃度はテーブル55のようになる。
暗号化プログラム2aは、テーブル55の各画素の数値1つ1つに対して暗号パスワード2bを先頭から1文字ずつ対応させる(ステップ705)。パスワードが画素数よりも短い場合は、パスワードの先頭の文字に戻り繰り返し対応させる。例えばテーブル55の1行目と2行目に対してパスワード「PassWord」を対応させると、テーブル57a、テーブル57b、テーブル57cとなる。
【0017】
対応させた後、暗号化プログラム2aで各画素の濃度の数値に暗号パスワード2bに対応する数値を加算する(ステップ706)。
加算後、その結果が255より大きい場合はステップ708へ、255以下だった場合はステップ709へ進む(ステップ707)。
ステップ707の計算結果が大きい場合、その計算結果と256との差をとる(ステップ708)。
ステップ708の処理を実行後、ステップ708の計算結果を新たな濃度の数値として変更する(ステップ709)。例えばテーブル57aでの最も左側にある「P」の列において計算すると、255+80=335となる。この結果は255よりも大きいため、355と256との差をとる。その差が79となるのでテーブル57dの「P」の列の濃度の数値が「79」に変更される。また、ステップ707の処理での計算結果が255以下だった場合は、その計算結果をそのまま新たな濃度の数値として変更する。
【0018】
計算した画素がページ最後の画素かどうか調べ、最後の画素である場合はステップ711へ、最後の画素でない場合はステップ712へ進む(ステップ710)。
最後の画素である場合は、資料データ2dに暗号化するページがないかどうか調べ、ない場合は暗号化プログラム2aを終了し、存在する場合はステップ713へ進む(ステップ711)。
最後の画素でない場合は、計算対象の画素を次の画素に変更する(ステップ712)。
資料データ2dに暗号化するページがある場合は、資料データ2dから暗号化を行ったページの次のページを読み込む(ステップ713)。
【0019】
図8は、暗号化印刷した資料データを復号して印刷するまでの過程を示すフローチャート図である。
まず、ユーザ1が自社内で暗号化印刷し、外出先に持参した資料7を外出先のコピー機8の上に置く(ステップ801)。
復号化プログラム設定画面31を起動する(ステップ802)。
復号化プログラム設定画面31内にある欄32に復号パスワード9bを入力する(ステップ803)。
入力後、ボタン33を押す(ステップ804)。
ボタン33を押すと、復号化プログラム9aが起動する(ステップ805、図9参照)。
復号化プログラム9aが終了すると、コピー機8から復号された資料13が印刷される(ステップ806)。
【0020】
図9は復号化プログラム9aの内部動作を示すフローチャートである。
復号化プログラム9aの内部動作の流れは図5に示した暗号化プログラム2aの流れを逆の順序で行われる。
復号化プログラム9a起動後、コピー機8のスキャナ部が動作し、資料7の画像データ8bを取得する(ステップ901)。
コピー機8は画像データ8bをLAN経由で復号化プログラム9aに転送する(ステップ902)。
復号化プログラム9aは転送された画像データ8bの各画素の濃度を算出する(ステップ903)。
さらにASCIIコードテーブル41を使用して入力された復号パスワード9bをASCIIコードの数値に変換する(ステップ904)。
画像データ8bの各画素に復号パスワード9bの各文字を対応させる(ステップ905)。
【0021】
画像データの各画素の濃度の数値と復号パスワード9bの各文字のASCIIコードの数値との差をとる(ステップ906)。
その差の結果が0より小さい場合はステップ908へ、0以上の場合はステップ909へ進む(ステップ907)。
0より小さい場合、式:「255+(計算結果)+1」を実行する(ステップ908)。
ステップ908の処理を実行後、ステップ908の計算結果を新たな濃度の数値として変更する(ステップ909)。例えば暗号化された画像を画像59、画像59の各画素の濃度を表したテーブルをテーブル58、テーブル58の1行目と2行目を一次元で表したテーブルをテーブル57dとし、最も左側にある「P」の列において計算すると、「79−80=−1」となり、0より小さい計算結果となる。その結果から、式:「255+(計算結果)+1」を実行すると、「255+(−1)+1=255」となり、「P」の列の濃度の数値を「255」に変更する。また、ステップ907の処理の計算結果が0以上だった場合は、その計算結果を新たな濃度の数値として変更する。
【0022】
計算した画素がページ最後の画素かどうか調べ、最後の画素である場合はステップ911へ、最後の画素でない場合はステップ912へ進む(ステップ910)。
最後の画素であった場合、復号化したデータ9cをコピー機8に転送する(ステップ911)。
最後の画素でない場合、復号化対象の画素を次の画素に変更する(ステップ912)。
【0023】
以上のように、本実施形態においては、判読可能な状態の資料データの各画素の濃度を暗号化プログラムで変更することによって判読不可能に暗号化して印刷し、その印刷物を外出先で判読可能にする必要が生じた場合には、暗号化印刷物の画像をコピー機に読み取ってパーソナルコンピュータの復号化プログラムに転送して判読可能に復号し、コピー機から印刷するように構成したため、紙媒体に印刷したコンテンツが機密情報であったとしても、暗号化して判読不可能に印刷されているため、資料の紛失、盗難によって機密情報が漏洩することがなくなる。
なお、上記実施形態においては、暗号化された資料データはコピー機のスキャナ部で読み取るようにしているが、スキャナ専用機で読み取るように構成するなど、機能単位で独立した装置構成にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態例を示すシステム構成図である。
【図2】暗号化プログラムの設定画面を示す図である。
【図3】復号化プログラムの設定画面を示す図である。
【図4】ASCIIコードテーブルとASCIIコード変換テーブルを示した図である。
【図5】資料データの暗号化過程を示す説明図である。
【図6】資料データの画像が暗号化されて印刷されるまでの過程を示すフローチャートである。
【図7】暗号化プログラムの内部動作を示すフローチャートである。
【図8】暗号化された資料を復号して印刷するまでの過程を示すフローチャートである。
【図9】復号化プログラムの内部動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0025】
1 ユーザ
2 PC(パーソナルコンピュータ)
2a 暗号化プログラム
2d 資料データ(印刷コンテンツ)
6 プリンタ
8 コピー機
9 PC
9a 暗号化プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間が判読可能な印刷コンテンツを暗号パスワードに従って人間が判読不可能な印刷コンテンツに変換する第1の装置と、
変換された判読不可能な印刷コンテンツを印刷する第2の装置と、
印刷された印刷コンテンツを読み取る第3の装置と、
前記暗号パスワードに対応し復号パスワードに従い、前記読み取った印刷コンテンツを人間が判読可能な印刷コンテンツに復元する第4の装置と、
復元された印刷コンテンツを印刷して出力する第5の装置と
を備えることを特徴とする印刷コンテンツの暗号化・復号化印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−131334(P2008−131334A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313970(P2006−313970)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】