説明

印刷システム及び印刷装置

【課題】 利用者各人が保有する安価な外部記憶装置を利用して、印刷を実行するとともに、可能であればネットワークを介在させずに印刷を実行することができる印刷システムを提供する。
【解決手段】 ホスト装置20と印刷装置1が接続され、ホスト装置20で作成された印刷データを印刷装置1で用紙に出力する印刷システムにおいて、印刷装置1は、USBストレージクラスデバイス21に保存されたデータを印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスト装置と印刷装置(プリンタ、デジタル複写機など)が接続され、ホスト装置で作成された印刷データを印刷装置で用紙に出力する印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワーク対応プリンタの普及によって、PC(ホスト装置)から少し離れた場所にある共有プリンタに印刷するケースが増えてきた。ところが、プリンタがPCから離れた場所に設置されていることによって、印刷物を取りに行くまでに、第三者に内容を見られたり、印刷物を取られたりする可能性が増えてきた。
そういった状況を回避するために、現状では機密印刷という機能が多く採用されている。これは、受信した印刷データをすぐに印刷するのではなく、一旦装置内の記憶装置(主にHDD)に蓄積して、利用者がプリンタの操作パネルからパスワードを入力後に印刷を開始するという機能である。
従来から、USBストレージクラスのデジタルカメラのデータをプリンタ内に保存するプリント装置及びその制御方法、並びに、プリントシステムが提案されている(特許文献1参照)。
また、USBストレージクラスの外部記憶装置にデータのバックアップを作成する、外部記憶装置内のデータを直接読み込んで印刷することができるプリンタ及びそのプリンタの動作方法が提案されている(特許文献2参照)。
また、USBストレージクラスのデジタルカメラからプリンタを制御する、通信接続されたデータソース装置とデータ利用装置を備えたシステムが提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−009389公報
【特許文献2】特開2003−266880公報
【特許文献3】特開2003−259274公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように機密印刷機能は知られているものの、装置内の記憶装置は一般的に価格が高く、また、利用者全員で共有することから、容量の配分の問題や、偶然パスワードが一致してしまう恐れもあった。さらに、ネットワーク上を印刷データが流れることから、ネットワーク上でデータを盗み見られる可能性もあった。
本発明は、利用者各人が保有する安価な外部記憶装置を利用して、印刷を実行するとともに、可能であればネットワークを介在させずに印刷を実行することができる印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、ホスト装置と印刷装置が接続され、ホスト装置で作成された印刷データを印刷装置で用紙に出力する印刷システムにおいて、印刷装置は、USBストレージクラスデバイスに保存されたデータを印刷する印刷システムを最も主要な特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の印刷システムにおいて、USBストレージクラスデバイス内にパスワードデータを保有し、印刷時にパスワードを要求する印刷システムを主要な特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の印刷システムにおいて、電源オン中にUSBストレージクラスデバイスを装着した際にパスワード入力を要求する印刷システムを主要な特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項2記載の印刷システムにおいて、USBストレージクラスデバイス内のサブフォルダ毎にパスワードデータを保有し、そのサブフォルダ以下のデータを、印刷する際に使用するパスワードデータとする印刷システムを主要な特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項1記載の印刷システムにおいて、受信した印刷データをUSBストレージクラスデバイスに保存する印刷システムを主要な特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項5記載の印刷システムにおいて、受信した印刷データ内にパスワード情報が含まれない場合は通常に印刷処理を行い、受信した印刷データ内にパスワード情報が含まれる場合は受信した印刷データをUSBストレージクラスデバイスに保存する印刷システムを主要な特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項6記載の印刷システムにおいて、受信した印刷データ内にパスワード情報が含まれる場合に、受信したパスワード情報からUSBストレージクラスデバイス内のパスワードデータを作成する印刷システムを主要な特徴とする。
請求項8記載の発明は、請求項6記載の印刷システムにおいて、受信した印刷データ内にパスワード情報が含まれる場合に、受信したパスワード情報とUSBストレージクラスデバイス内のパスワードデータが一致しないときは受信した印刷データを破棄する印刷システムを主要な特徴とする。
請求項9記載の発明は、請求項1記載の印刷システムを構成する印刷装置を最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の印刷システムにおいては、ネットワークを経由せずに印刷データを送信するので、ネットワーク上で印刷データを盗み見られる心配がなく、セキュリティを高めることができる。
請求項2の印刷システムにおいては、パスワードデータを保有することによって、印刷時にパスワードを要求するので、セキュリティを高めることができる。
請求項3の印刷システムにおいては、電源オン中にUSBストレージクラスデバイスを装着した際に自動的にパスワード入力を要求するので、利用者がメニューを選択する手間を軽減することができる。
請求項4の印刷システムにおいては、USBストレージクラスデバイス内のサブフォルダ毎にパスワードデータを保有し、そのサブフォルダ以下のデータを、印刷する際に使用するパスワードデータとすることによって、印刷時に複数のパスワードを切り替えるので、セキュリティを高めることができる。
請求項5の印刷システムにおいては、受信した印刷データをUSBストレージクラスデバイスに保存するので、USB機能を持たないホスト環境でも使用することができる。
請求項6の印刷システムにおいては、受信した印刷データをUSBストレージクラスデバイスに保存するので、高価な装置内の記憶装置(主にHDD)を用意しないでも蓄積印刷機能を実現することができる。
請求項7の印刷システムにおいては、受信した印刷データ内にパスワード情報が含まれない場合は通常に印刷処理を行い、受信した印刷データ内にパスワード情報が含まれる場合は、受信した印刷データをUSBストレージクラスデバイスに保存するので、利用者が処理を選択する手間を軽減することができる。
請求項8の印刷システムにおいては、受信した印刷データ内のパスワード情報から自動的にUSBストレージクラスデバイス内のパスワードデータを作成するので、USBストレージクラスデバイス内のパスワードデータを作成する手間を軽減することができる。
請求項9の印刷システムにおいては、受信した印刷データ内のパスワード情報とUSBストレージクラスデバイス内のパスワードデータが一致しない場合に受信した印刷データを破棄するので、セキュリティを高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明の印刷システムにおいてプリンタを詳細に示すブロック図である。印刷システムは、プリンタ1とその上位装置であるホスト装置20とによって構成されている。
プリンタ1は、コントローラ2とプリンタエンジン3と表示操作部とによって構成されている。そのコントローラ2は、設定されている制御モード及びホスト装置20からの制御コードに従って、ホスト装置20からの画像データをビットマップデータ(描画データ)に変換してプリンタエンジン3へ出力する制御装置であり、次の各部によって構成されている。
すなわち、ホストインタフェース(以下「インタフェース」を「I/F」と略称する)11、エンジンI/F12、パネルI/F13、CPU14、プログラムROM15、フォントROM16、RAM17、NV−RAM18、USBホストI/F19を備えている。
ホストI/F11は、パーソナルコンピュータ等のホスト装置20から送られてくる制御コード及び画像データを受信したり、プリンタ1の状態を示すステータス信号をホスト装置20へ送信するためのものであり、接続するホスト装置20に合わせて各種のパラレルI/FまたはシリアルI/Fを選択する。このホストI/F11が、画像データ受信手段である。
【0007】
エンジンI/F12は、コマンド及び描画データをプリンタエンジン3へ送出したり、プリンタエンジン3からのステータス信号を受信したりする。
パネルI/F13は、表示操作部4との間で表示制御データの送信と各キー情報の受信を行っている。
CPU14は、中央処理装置であり、プログラムROM15に記憶されている制御プログラムによって動作することにより、ホスト装置20からの制御コードや画像データを処理するなど、コントローラ2全体の統括制御を行う。このCPU14が画像データを描画データに変換して画像メモリ上に描画する(この処理を以下「描画処理」という)画像データ処理手段である。
プログラムROM15は、CPU14によるコントローラ2内でのデータの処理及び管理や周辺のモジュールの制御に用いる制御プログラムを、フォントROM16は印刷に使用される種々のフォントをそれぞれ格納している。
RAM17は、CPU14がデータ処理を行う際に使用するワークメモリ、ホスト装置20からの画像データをスプールする受信バッファ、CPU14が画像データを処理して作成した描画データを格納する画像メモリ等に使用される。
NV−RAM18は、電源が切れても内部のデータを保持する不揮発性メモリであり、表示操作部4からのモード指示の内容などを記憶する。
【0008】
USBホストI/F19は、USBデバイスを接続するためのI/Fであり、本実施形態ではUSBストレージクラスデバイスを接続するために使用しているが、その他のUSBデバイス(スキャナ、プリンタなど)を接続することも可能である。
プリンタエンジン3は印刷手段であり、内部の図示しない感光体上を描画信号に応じて変調されるレーザ光によって光学的に走査するレーザ書き込みユニット、感光体とその周囲の各プロセス機器によって構成される画像形成ユニット、並びにレジストローラ対等の各ローラ等からなる用紙搬送部を含む機構部と、その制御部であるエンジンドライバとからなる。
そして、コントローラ2からのコマンド及び描画信号によって、エンジンドライバが、画像形成ユニット及び用紙搬送部のシーケンス動作とレーザ書き込みユニットへの描画信号の変調を制御して印刷処理を行う。
表示操作部4は、プリンタ1の動作モードを設定するための操作部と、プリンタの動作状態を表示する表示部を備えている。
USBストレージクラスデバイス21は、印刷データ及びパスワードデータを保持するための外部記憶装置である。その形態は様々であり、一般的には安価な不揮発性のフラッシュRAMが使用されるが、大容量のHDDでも差し支えないし、USB接続のデジタルカメラでも差し支えない。
【0009】
次に、本実施形態の印刷システムの処理内容を説明する。まず最初に、ホスト装置20にUSBストレージクラスデバイス21を接続する。近年市販されているPC(パーソナルコンピュータ)及びオペレーティングシステム(以下OS)であれば、特にハードウェア/ソフトウェアを追加することなく、USBストレージクラスデバイス21が外部記憶装置(リムーバブルディスク)として認識されるはずである(図2参照)。
次にパスワードデータを作成する。エディタでパスワード文字列を入力後、USBストレージクラスデバイス21内にファイルとして保存する。本実施形態ではパスワードデータを単純にテキストファイルとして作成したが、DESを使用して暗号化するなど、セキュリティを高めるほうがより望ましい。
次に印刷データを作成する。手段はアプリケーションによって様々だが、例えば、あるワープロソフトの場合は、印刷ダイアログの画面で「ファイルに出力」をチェックすることで印刷データをファイルに保存することができる。そのファイルをUSBストレージクラスデバイス21内に保存すればよい(図3参照)。
次にパスワードデータと印刷データの入ったUSBストレージクラスデバイス21をプリンタ1に装着する。するとプラグアンドプレイ機能が働いて自動的にパスワード入力画面が表示される(図4参照)。
この画面は、メニューから起動することも可能である。例えば、「メニュー」→「蓄積印刷」→「USB」と選択していくことによって図4の画面となる。
また、上記画面のあとの印刷データ選択画面でサブフォルダを選択すると、カレントフォルダがサブフォルダに移行するが、そのサブフォルダ内にパスワードデータが存在する場合は、そこでもパスワード入力画面となり、正しいパスワードを入力しないとサブフォルダに移行できない。
印刷データを選択したら、次にその印刷データを「印刷」するのか「削除」するのかを選択する。「印刷」を選択した場合は、印刷部数など簡単な印刷条件を設定後、印刷動作が実行される。「削除」を選択した場合は、その印刷データを削除する。
【0010】
以上はネットワークを利用せずに、ホスト装置20で印刷データを作成する例であるが、ホスト装置20で必ずしもUSBストレージクラスデバイス21が使用できるわけではないので、そういう場合でも、通常のホストI/F11経由で印刷データとパスワードデータを作成する例を図5により以下に説明する。
まず最初に、印刷データを作成する。手段はアプリケーションによって様々だが、例えば、あるプリンタドライバを使用する場合は、プロパティダイアログの画面の「印刷方法」で「機密印刷」を選択後、「印刷方法の詳細」ダイアログでパスワードを設定する。
そこで印刷を実行すると、印刷データの中にパスワード情報が埋め込まれて、本実施形態の印刷システムに送られる。本実施形態の印刷システムは、受信した印刷データ内にパスワード情報が含まれていなければ、通常通りの印刷を実行する。
受信した印刷データ内にパスワード情報が含まれている場合は、USBストレージクラスデバイス21が装着されているかどうかを確認して、装着されていなければ装置内の記憶装置(主にHDD)に蓄積するが、それもない場合は、印刷データを破棄する。
USBストレージクラスデバイス21が装着されている場合は、USBストレージクラスデバイス21内のパスワードデータを確認して、パスワードデータが存在しない場合は印刷データ内のパスワード情報から自動的にUSBストレージクラスデバイス内21のパスワードデータを作成して保存する。
また、USBストレージクラスデバイス21が装着されていて、USBストレージクラスデバイス21内にパスワードデータが存在する場合は、印刷データ内のパスワード情報と比較して一致すれば、印刷データをUSBストレージクラスデバイス21に保存するが、一致しなければ印刷データを破棄する。印刷データを保存したあとの処理は前述のホスト装置20側で印刷データを作成した場合と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の印刷システムにおいてプリンタを詳細に示すブロック図。
【図2】本発明の印刷システムにおけるディスプレイ表示内容を示す図(その1)。
【図3】本発明の印刷システムにおけるディスプレイ表示内容を示す図(その2)。
【図4】本発明の印刷システムにおけるディスプレイ表示内容を示す図(その3)。
【図5】本発明の印刷システムにおけるディスプレイ表示内容を示す図(その4)。
【符号の説明】
【0012】
1 プリンタ(印刷装置)
20 ホスト装置
21 USBストレージクラスデバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト装置と印刷装置が接続され、ホスト装置で作成された印刷データを印刷装置で用紙に出力する印刷システムにおいて、前記印刷装置は、USBストレージクラスデバイスに保存されたデータを印刷することを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
請求項1記載の印刷システムにおいて、前記USBストレージクラスデバイス内にパスワードデータを保有し、印刷時にパスワードを要求することを特徴とする印刷システム。
【請求項3】
請求項2記載の印刷システムにおいて、電源オン中に前記USBストレージクラスデバイスを装着した際にパスワード入力を要求することを特徴とする印刷システム。
【請求項4】
請求項2記載の印刷システムにおいて、前記USBストレージクラスデバイス内のサブフォルダ毎にパスワードデータを保有し、前記サブフォルダ以下のデータを、印刷する際に使用するパスワードデータとすることを特徴とする印刷システム。
【請求項5】
請求項1記載の印刷システムにおいて、受信した印刷データを前記USBストレージクラスデバイスに保存することを特徴とする印刷システム。
【請求項6】
請求項5記載の印刷システムにおいて、受信した印刷データ内にパスワード情報が含まれない場合は通常に印刷処理を行い、受信した印刷データ内にパスワード情報が含まれる場合は受信した印刷データをUSBストレージクラスデバイスに保存することを特徴とする印刷システム。
【請求項7】
請求項6記載の印刷システムにおいて、受信した印刷データ内にパスワード情報が含まれる場合に、受信したパスワード情報からUSBストレージクラスデバイス内のパスワードデータを作成することを特徴とする印刷システム。
【請求項8】
請求項6記載の印刷システムにおいて、受信した印刷データ内にパスワード情報が含まれる場合に、受信したパスワード情報とUSBストレージクラスデバイス内のパスワードデータが一致しないときは受信した印刷データを破棄することを特徴とする印刷システム。
【請求項9】
請求項1記載の印刷システムを構成する印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−79473(P2006−79473A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264660(P2004−264660)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】