説明

印刷版の表面処理方法

【課題】高品質な印刷版が得られる表面処理方法を提供する。
【解決手段】pH8以上のアルカリ性電解水で印刷版表面を処理する、印刷版の表面処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷版の表面処理方法および印刷版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷版として、レーザ彫刻版は、製造工程がシンプルであり、高精細レーザを用いた彫刻が可能であり、また、デジタル処理によって画像品質の安定性を高く保つことができるという利点を有している。
【0003】
また、印刷版として、近年においては、シート状印刷版に替わってスリーブ印刷版に代表される円筒状印刷版が用いられるようになってきているが、円筒状印刷版は印刷機への装着性が容易であること、印刷速度の高速化が可能で高生産性を図ることができること、高精度なレジストレーションが容易に得られること等の特徴を有している。
スリーブ印刷版に対応する印刷機が増加している現状や、薄いFRP(繊維強化プラスチック)スリーブの表面に印刷層を形成した構成の安価なブランクスリーブの普及に伴い、円筒状印刷版は、今後さらに比率を高めるものと予想されている。
【0004】
円筒状印刷版の印刷層材料としては、一般的に感光性樹脂組成物(光硬化性樹脂組成物)や熱硬化性樹脂組成物等の硬化性樹脂組成物の硬化物が用いられており、硬化性樹脂組成物、円筒状印刷版の製造方法、および円筒状印刷版の製造装置に関しては、従来から多くの技術提案がなされている。
しかし、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物層の表面の性状によっては、フィルムや紙等の被印刷体の異物が付着するために印刷再現が低下することがある。円筒状印刷版を用いた印刷において高品質な印刷を行うためには、異物を除去する必要がある。
また、高品質な印刷を行うための装置としては、樹脂硬化物層の後露光装置や、スチームジェットや高温高圧水で、レーザ彫刻後の樹脂硬化物層から彫刻残渣等を洗い出す装置等が知られている。
【0005】
特許文献1には、例えば、0.2MPa以上30MPa以下の圧力で、かつ40℃以上140℃以下の温度の洗浄液を、ウォータージェット態様またはスチーム態様で吹き付けることにより、レリーフ画像表面、ショルダー、底部等に残存するデブリー(彫刻残渣)を洗い落とす方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/005147号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、樹脂硬化物層の後露光装置では印刷版表面にクラックが生じるおそれがある。また、特許文献1に開示されている技術等の従来技術では、高温高圧の水または洗浄液を用いるため、円筒状印刷版表面の印刷層が破壊されたり、熱変形したり、最終的に得られる印刷版の品質劣化を招来するおそれがある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、高品質な印刷版が得られる表面処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討をした結果、pH8以上のアルカリ性電解水を印刷版の表面処理用の処理液として使用することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0010】
本発明は以下のとおりである。
[1]
pH8以上のアルカリ性電解水で印刷版表面を処理する、印刷版の表面処理方法。
[2]
前記印刷版が凸版である、[1]に記載の印刷版の表面処理方法。
[3]
前記印刷版がレーザ彫刻版または水現像版である、[1]または[2]に記載の印刷版の表面処理方法。
[4]
樹脂硬化物層をpH8以上のアルカリ性電解水で処理する表面処理工程を含む、印刷版の製造方法。
[5]
硬化性樹脂組成物を光および/または熱により硬化せしめて、シート状または円筒状の樹脂硬化物層を形成する硬化工程、
樹脂硬化物層をレーザ彫刻し、樹脂硬化物層表面にパターンを形成する彫刻工程、
樹脂硬化物層をpH8以上のアルカリ性電解水で処理する表面処理工程、
を含む印刷版の製造方法。
[6]
水現像性感光性樹脂組成物層を有する水現像版用感光性樹脂構成体に活性光線を照射し、所望の部分を硬化せしめる露光工程、
水現像版用感光性樹脂構成体を水系の現像液で現像し、水現像版用感光性樹脂構成体表面にパターンを形成する現像工程、
水現像版用感光性樹脂構成体をpH8以上のアルカリ性電解水で処理する表面処理工程、
を含む印刷版の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、品質の高い印刷版が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0013】
[表面処理方法]
本実施形態の印刷版の表面処理方法は、pH8以上のアルカリ性電解水により印刷版表面を処理する工程を含む。本実施形態は、樹脂硬化物層をpH8以上のアルカリ性電解水で処理する表面処理工程を含む印刷版の製造方法でもある。
本実施形態において、印刷版の表面処理とは、印刷版表面のべとつき除去やインキ絡み防止等の効果を発揮させるために、印刷版表面をアルカリ性電解水により処理することを意味し、表面処理を行うことにより、フィルムや紙等の被印刷体の異物が付着することを防止することができる等、高品質な印刷版を得ることができる。
表面処理の方法としては、印刷版の表面処理を行う公知の方法であれば特に限定されないが、例えば、浴槽浸漬処理法、スプレー処理法、ブラシ処理法等が挙げられる。
レーザ彫刻版の表面処理を行う場合には、表面処理と同時に彫刻残渣を除去してもよいし、表面処理と彫刻残渣の除去を別々に行ってもよい。別々に行う場合には、彫刻残渣を除去してから表面処理を行ってもよいし、表面処理を行った後に彫刻残渣の除去をしてもよい。
【0014】
浴槽浸漬処理法とは、処理槽を温調された処理液で満たし、印刷版を処理槽に浸漬した状態で処理を行う方法である。浴槽浸漬処理法においては、処理槽内の処理液を強制的に流動させることが好ましい。
【0015】
スプレー処理法とは、温調された処理液をポンプにより昇圧してスプレーノズルから印刷版に吹き付けて行う処理方法である。処理液の圧力は0.1MPa以上であることが好ましい。処理液の圧力は、10MP以下であることが好ましく、5.0MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることがさらに好ましい。
【0016】
ブラシ処理法とは、温調された処理液をブラシに供給し、ブラシで印刷版表面を擦ることにより行う処理方法である。ブラシの接触圧力を、印刷版の動作、例えば、円筒状印刷版の回転動作、および処理性を確保するのに十分な圧力として、ブラシ処理を行うことが好ましい。また、印刷版の全面に亘って均一に処理効果が得られるため、ブラシを左右に揺動させて処理を行うことが好ましい。
【0017】
処理工程における処理液の温調温度は、表面処理性の観点から30〜90℃が好ましく、30〜50℃がより好ましい。
【0018】
表面処理に用いる処理液であるpH8以上のアルカリ性電解水は、純水に電解助剤(炭酸カリウムや塩化ナトリウム等)を加えた溶液を電気分解することにより生成できる。
アルカリ性電解水の水素イオン濃度指数(pH)は、表面処理性能に大きく影響するため、pH値を管理しながら処理工程を行うことが好ましい。pH値を管理しながら表面処理を行うことにより、高品質で安定した表面処理効果を得ることができる。
アルカリ性電解水は、空気中の炭酸ガスを吸収してpH値が低下する。pH値の低下より、アルカリ性電解水の表面処理性能も低下する。また、加温やスプレー噴霧等によりpH値はさらに低下してしまうため、処理工程中は処理液のpHを管理し、適宜アルカリ性電解水を交換することが好ましい。
pH値は、市販のpHメータを用いることにより測定できる。
【0019】
アルカリ性電解水を製造する装置としては、公知の装置であれば特に限定されないが、例えば、「δ1500」(アマノ社製)や「A−3」(オーセンアライアンス社製)等の製造装置が挙げられる。
【0020】
本実施形態で用いられるアルカリ性電解水のpH値は8以上であり、10.5以上であることが好ましく、11.5以上であることがより好ましい。
該pH値が前記範囲内にあるアルカリ性電解水を用いることにより、印刷版の版カケやクラックを生成させることなく紙剥けの起こらない品質の高い印刷版を得ることが可能である。
【0021】
版面の性状によっては印刷時に「紙剥け」という現象が起こる。紙剥けとは、印刷機のがたつき、広幅の印刷機による印圧のばらつき、クッションテープや印刷版の下への空気の潜り込み等によって、印刷版の凸部分以外(印刷版のショルダーやバック面)が非印刷体に付着し、または、版面に非印刷体が付着する現象である。非印刷体が紙の場合は紙の一部が版面に残存し、印刷機を停止して印刷版を洗浄する必要があり印刷生産性の観点から好ましくない。また、重度の紙剥けが発生すると、版面に付着した紙によってロール紙等の断裁が起こり、印刷機の再調整が必要となるため印刷生産性に重大な影響を及ぼす。本実施形態の表面処理方法によれば、この紙剥けの現象の抑制にも大きな効果を有する。
【0022】
本実施形態の表面処理方法を行う対象である印刷版は、所定の凹凸パターンが形成される印刷層を有する印刷版であれば特に限定されないが、凸版であることが好ましい。印刷版としては、レーザ彫刻版や水現像版が好ましい。
【0023】
[レーザ彫刻版]
レーザ彫刻版は、樹脂硬化物層の表面に、レーザ彫刻方式によって所定の凹凸パターンが形成された印刷層を具備している印刷版である。
レーザ彫刻版の構成としては、特に限定されないが、例えば、樹脂硬化物層、支持体/樹脂硬化物層、支持体/接着剤層等/樹脂硬化物層、支持体/クッション層/樹脂硬化物層、支持体/接着剤層等/クッション層/樹脂硬化物層等の構成が挙げられる。樹脂硬化物層の表面に印刷層を有していることが好ましい。
【0024】
レーザ彫刻版の構成は、適用する印刷方式に応じて構成を選択することが好ましい。例えば、フレキソ印刷等においては、支持体と樹脂硬化物層との間に所定のクッション層を介在させた構成(支持体/クッション層/樹脂硬化物層)が好ましく、ドライオフセット印刷においては、支持体/樹脂硬化物層の構成とすることが好ましい。
支持体とクッション層との間、支持体と樹脂硬化物層との間、クッション層と樹脂硬化物層との間には、接着剤層や粘着剤層等の接着剤層等を設けてもよい。
また、支持体上に両面粘着テープやクッションテープを用いて、凹凸パターン形成前状態である樹脂硬化物層または凹凸パターン形成後の樹脂硬化物層(印刷パターンが形成された印刷層を表面に有する)を貼り付けた構成としてもよい。
【0025】
レーザ彫刻版が円筒状である場合、予め円筒状支持体上に円筒状に形成させた樹脂硬化物層表面に対しレーザ彫刻を行ってもよいし、シート状の樹脂硬化物層を円筒状支持体に配置した後にレーザ彫刻を行ってもよいし、樹脂硬化物層をレーザ彫刻した後に円筒状支持体上に貼り付けてもよい。
【0026】
[樹脂硬化物層]
樹脂硬化物層は、硬化性樹脂組成物を光および/または熱により硬化させて得られるものである。
本実施形態において、印刷層を形成する前の、支持体上に樹脂硬化物層を配置した積層体を印刷原版と称することがある。印刷原版の構成としては、レーザ彫刻版同様の構成が挙げられるが特に限定されるものではない。
樹脂硬化物層の形態は、特に限定されないが、例えば、シート状、円筒状等が挙げられる。
【0027】
レーザ彫刻版において用いられる樹脂硬化物層は、レーザ彫刻方式により凹凸パターンが形成される印刷層を表面に形成させる層である。樹脂硬化物層は、印刷層を表面に有している場合も印刷層を形成する前であっても、両者を包含する意味で用いられる。
レーザ彫刻版の製造効率の観点からは、樹脂硬化物層は、円筒状支持体の外周面に配置した、レーザ彫刻により凹凸パターンを形成可能な円筒状樹脂硬化物層であることが好ましい。
樹脂硬化物層は、感光性樹脂組成物または熱硬化性樹脂組成物の硬化物層であることが好ましく、具体的には、円筒状に形成された感光性樹脂組成物を光硬化して得られた樹脂硬化物層または円筒状に形成された熱硬化性樹脂組成物を熱硬化して得られた樹脂硬化物層であることが好ましい。
【0028】
硬化性樹脂組成物は、樹脂(a)、有機化合物(b)、および重合開始剤を含有するものであることが好ましく、感光性樹脂組成物(光硬化性樹脂組成物)は、樹脂(a)、有機化合物(b)、および光重合開始剤(c)を含有するものであることが好ましく、熱硬化性樹脂組成物は、樹脂(a)、有機化合物(b)、および熱重合開始剤(d)を含有するものであることが好ましい。
【0029】
硬化前の硬化性樹脂組成物は、20℃の温度条件下で固体状または液状のいずれであってもよいが、成形性の容易さを確保する観点から、液状であることが好ましい。
液状の硬化性樹脂組成物とは、容易に流動変形し、かつ冷却することにより変形された形状に固化可能な性質を有する組成物を意味し、外力を加えたときに、その外力に応じて瞬時に変形し、かつ外力を除いたときには、短時間に元の形状を回復する性質を有する。
【0030】
液状の硬化性樹脂組成物を、シート状、円筒状等、所望の形状に成形する際、良好な厚み精度および寸法精度を得るためには、硬化性樹脂組成物の20℃における粘度は、10Pa・s以上10kPa・s以下であることが好ましく、50Pa・s以上5kPa・s以下であることがより好ましい。
硬化性樹脂組成物の20℃における粘度が10Pa・s以上であれば、該硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物層は機械的強度が十分に高く、円筒状に成形する場合においても形状を保持し易く、加工し易い。
硬化性樹脂組成物の20℃における粘度が10kPa・s以下であれば、常温でも変形し易く、所望の形状に加工が容易であり、シート状または円筒状等に成形し易く、成形工程も簡便なものとなる。
中でも、良好な厚み精度を有する円筒状樹脂硬化物層を得るためには、円筒状支持体上に硬化性樹脂組成物層を形成する際に、液状の硬化性樹脂組成物の液ダレ等を防止するために、20℃における粘度を100Pa・s以上とすることが好ましく、200Pa・s以上とすることがより好ましく、500Pa・s以上とすることがさらに好ましい。
粘度は、市販の粘度計を用いることにより測定できる。例えば、B型粘度計(東京計器株式会社製、商品名「B8H型」)を用いて20℃で測定できる。
【0031】
[樹脂(a)]
硬化性樹脂組成物を構成する成分として、樹脂(a)が挙げられる。
硬化性樹脂組成物を20℃の温度条件下で液状であるものとするためには、樹脂(a)も20℃で液状であるものを選択することが好ましい。
樹脂(a)は、数平均分子量が1000以上30万以下であることが好ましく、2000以上15万以下であることがより好ましく、5000以上5万以下であることがさらに好ましい。
樹脂(a)の数平均分子量が1000以上であれば、樹脂硬化物層において十分な強度が得られ、印刷層として用いる場合、繰り返しの使用にも耐えられるようになるため好ましい。
樹脂(a)の数平均分子量が30万以下であれば、硬化性樹脂組成物の粘度の過度の上昇を抑制でき、シート状、円筒状に加工する際に、簡易な加工方法を選択できるため好ましい。
【0032】
本実施形態において、数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定し、分子量既知のポリスチレンで検量し換算した値を意味する。
【0033】
樹脂(a)としては、下記ポリマーを骨格とする化合物(樹脂)が挙げられる。
骨格となるポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類;ポリブタジエン、ポリイソプレン等のポリジエン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリハロオレフィン類;ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ(メタ)アクリルアミド;ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリイミド、シリコーン等の主鎖にヘテロ原子を有する高分子化合物;等が挙げられる。
樹脂(a)として、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。複数の化合物を用いる場合、樹脂(a)として共重合体であってもよく、ブレンド体であってもよい。
【0034】
中でも、フレキソ印刷版用途のように、柔軟なレリーフ画像を必要とする場合には、樹脂(a)として、さらに、ガラス転移温度が20℃以下の液状樹脂を含有することが好ましく、ガラス転移温度0℃以下の液状樹脂を含有することがより好ましい。
本実施形態において、ガラス転移温度は、粘弾性測定の方法により測定できる。例えば、動的粘弾性測定装置(レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー株式会社製、商品名「AR−550」)を用いて測定できる。
【0035】
液状樹脂としては、例えば、ポリエチレン;ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポイソプレン等のポリジエン類;アジペート、ポリカプロラクトン等のポリエステル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル類;脂肪族ポリカーボネート等のポリカーボネート;ポリジメチルシロキサン等のシリコーン類;(メタ)アクリル酸および/またはその誘導体の重合体、およびこれらの混合物やコポリマー類が挙げられる。
【0036】
液状樹脂の樹脂(a)中の添加量は、特に限定されないが、樹脂(a)全体に対して30質量%以上100質量%以下とすることが好ましい。液状樹脂が100質量%であるとは、樹脂(a)として、液状樹脂を用いることを意味する。
【0037】
樹脂(a)は、分子内に重合性不飽和基を有していてもよく、1分子あたり平均で0.7以上の重合性不飽和基を有していることが好ましい。該樹脂(a)を用いることにより、樹脂硬化物層は優れた機械的強度を有し、耐久性が良好となり、最終的に得られる印刷版が繰り返しの使用にも耐えられるものとなるため好ましい。
本実施形態において、分子内とは高分子主鎖の末端、高分子側鎖の末端や高分子主鎖中や側鎖中に直接、重合性不飽和基が付いている場合等も含まれる。
【0038】
樹脂(a)の重合性不飽和基は、1分子あたり1を越える量とすることがより好ましい。
1分子あたりの重合性不飽和基数は、特に限定されないが、20以下であることが好ましい。1分子あたりの重合性不飽和基数が20以下であれば、硬化性樹脂組成物を硬化させる際の収縮を抑制でき、表面近傍でのクラック等の発生も防止できる。
【0039】
樹脂(a)を構成する化合物に重合性不飽和基を導入する方法としては、例えば、直接、重合性不飽和基を該化合物の分子末端または分子鎖中に導入する方法、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、エステル基等の反応性基を複数有する化合物に、該反応性基と結合しうる官能基を複数有する結合剤(例えば水酸基やアミノ基の場合のポリイソシアネート等)を反応させ、分子量の調節、および末端の結合性基への変換を行った後に、反応によって得られた化合物と、この化合物の末端結合性基と反応する官能基および重合性不飽和基を有する化合物とを反応させることにより、末端に重合性不飽和基を導入する方法等が挙げられる。
【0040】
樹脂硬化物層に対する良好なレーザ彫刻を確保する観点から、樹脂(a)としては、熱分解性の高い化合物を用いることが好ましく、例えば、α−メチルスチレン、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、カーボネート結合、カーバメート結合等を分子内に有する化合物が挙げられる。
熱分解性の指標として、不活性ガス雰囲気中で、サンプルを加熱した際の重量減少を測定した熱重量分析法のデータが適用できる。具体的には、重量が半減する時点の温度が150℃以上450℃以下であることが好ましく、250℃以上400℃以下であることがより好ましく、250℃以上380℃以下であることがさらに好ましい。
また、熱分解が狭い温度範囲で起こる化合物であることが好ましい。その指標として、熱重量分析において、重量が初期重量の80%に減少する温度と、重量が初期重量の20%に減少する温度との差が100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることがさらに好ましい。
【0041】
[有機化合物(b)]
硬化性樹脂組成物を構成する成分として、有機化合物(b)が挙げられる。
有機化合物(b)は、ラジカル重合反応または開環重合反応に関与する不飽和結合を有している化合物であり、樹脂(a)との希釈のし易さを確保するため、数平均分子量は1000以下であることが好ましい。
【0042】
有機化合物(b)としては、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン等のオレフィン類;アセチレン類;(メタ)アクリル酸およびその誘導体;ハロオレフィン類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体;アリルアルコール、アリルイソシアネート等のアリル化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸およびそれらの誘導体;酢酸ビニル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、シアネートエステル類等が挙げられる。中でも、種類の豊富さ、価格等の観点から(メタ)アクリル酸およびその誘導体が好ましい。
(メタ)アクリル酸の誘導体としては、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられ、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、シクロアルケン基、ビシクロアルケン基等の官能基を有する脂環族化合物、ベンジル基、フェニル基、フェノキシ基、メチルスチリル基、スチリル基等の官能基を有する芳香族化合物、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、テトラヒドロフルフリル基、グリシジル基等の官能基を有する化合物、アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、(アルキル/アリルオキシ)ポリアルキレングリコールやトリメチロールプロパン等の多価アルコールのエステル化合物等が挙げられる。
【0043】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2−フェノキシエチルメタクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソデシルメタクリレート、イソデシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールアクリレート、EO変性ノニルフェノールアクリレート、EO変性ノニルフェノールメタクリレート、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソミリスチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート等が挙げられる。
【0044】
有機化合物(b)は、目的に応じて、適宜選択することができるが、例えば、印刷インキの溶剤であるアルコールやエステル等の有機溶剤に対する膨潤を抑制するためには、長鎖脂肪族、脂環族または芳香族の構造を分子内に有する化合物を、少なくとも1種類以上用いることが好ましい。
また、樹脂硬化物層および印刷版の機械強度を高めるためには、脂環族または芳香族の構造を分子内に有する化合物を、少なくとも1種類用いることが好ましい。
【0045】
有機化合物(b)として、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機化合物(b)の硬化性樹脂組成物中の添加量は、特に限定されないが、樹脂(a)100質量部に対して、5質量部以上200質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
【0046】
[光重合開始剤(c)]
硬化性樹脂組成物を構成する成分として、光重合開始剤(c)が挙げられる。
硬化性樹脂組成物として感光性樹脂組成物を光硬化させて樹脂硬化物層を形成する場合、紫外線、可視光線、電子線およびX線等の高エネルギー線が適用できる。
中でも、紫外線および/または可視光線を用いて光硬化を行う場合には、硬化性樹脂組成物に光重合開始剤(c)を添加することが好ましい。
光重合開始剤(c)として、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
光重合開始剤(c)としては、一般的に用いられる光重合開始剤が使用可能であるが、例えば、水素引き抜き型光重合開始剤(c−1)および崩壊型光重合開始剤(c−2)が挙げられる。
【0048】
水素引き抜き型光重合開始剤(c−1)とは、光励起により励起三重項状態を経て、活性なラジカルを生成する化合物であり、特に限定されないが、例えば、芳香族ケトンが挙げられる。
芳香族ケトンは、光励起により励起三重項状態になる。励起三重項状態となった芳香族ケトンは、周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化学反応機構が知られている。
該反応機構により生成したラジカルが光架橋反応に関与する。
【0049】
芳香族ケトンとしては、励起三重項状態を経て周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン類、キサンテン類、チオキサントン類、アントラキノン類等が挙げられる。
芳香族ケトンとして、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
ベンゾフェノン類とは、ベンゾフェノンまたはその誘導体であり、例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラメトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
ミヒラーケトン類とは、ミヒラーケトンまたはその誘導体である。
キサンテン類とは、キサンテンまたはキサンテンがアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体である。
チオキサントン類とは、チオキサントンまたはチオキサントンがアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体であり、例えば、エチルチオキサントン、メチルチオキサントン、クロロチオキサントン等が挙げられる。
アントラキノン類とは、アントラキノンまたはアントラキノンがアルキル基、フェニル基、ハロゲン基等で置換された誘導体である。
【0051】
水素引き抜き型光重合開始剤(c−1)の硬化性樹脂組成物中の添加量は、特に限定されないが、樹脂(a)100質量部に対して0.3質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
該添加量を前記範囲内とすることにより、硬化性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、樹脂硬化物層表面の硬化性は充分に確保でき、また、長期保存時に表面にクラック等が発生せず、良好な耐候性が確保できる。
【0052】
崩壊型光重合開始剤(c−2)とは、光吸収後に分子内で開裂反応が発生し、活性なラジカルが生成する化合物であり、特に限定されるものではない。
崩壊型光重合開始剤(c−2)としては、例えば、ベンゾインアルキルエーテル類、2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類、アセトフェノン類、アシルオキシムエステル類、アゾ化合物類、有機イオウ化合物類、アシルホスフィンオキシド類等が挙げられる。
崩壊型光重合開始剤(c−2)として、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
ベンゾインアルキルエーテル類としては、例えば、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類としては、例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン等が挙げられる。
アセトフェノン類としては、例えば、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン等が挙げられる。
アシルオキシムエステル類としては、例えば、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム等が挙げられる。
アゾ化合物類としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾニウム化合物、テトラゼン化合物等が挙げられる。
有機イオウ化合物類としては、チオキサントン、チオキサンテン−9−オン等が挙げられる。
アシルホスフィンオキシド類としては、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸メチルエステル、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0054】
崩壊型光重合開始剤(c−2)の硬化性樹脂組成物中の添加量は、特に限定されないが、樹脂(a)100質量部に対して0.3質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
該添加量を前記範囲内とすることにより、硬化性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、樹脂硬化物層内部の硬化性を充分に確保できる。
【0055】
光重合開始剤(c)としては、水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位とを同一分子内に有する化合物(c−3)を用いてもよい。
該化合物(c−3)としては、例えば、α−アミノアセトフェノン類が挙げられ、具体的には、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等が挙げられる。
該光重合開始剤(c−3)として、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位とを同一分子内に有する化合物(c−3)の硬化性樹脂組成物中の添加量は、特に限定されないが、樹脂(a)100質量部に対して0.3質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。
該添加量を前記範囲内とすることにより、硬化性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、樹脂硬化物層の機械的物性が実用上良好な値に確保できる。
【0057】
[熱重合開始剤(d)]
硬化性樹脂組成物を構成する成分として、熱重合開始剤(d)が挙げられる。
熱重合開始剤(d)としては、ラジカル重合反応系の場合には、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物、チオール化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂等が挙げられる。
また、開環重合反応系の場合には、例えば、マイクロカプセル中に塩基性化合物や酸性化合物を含有する潜在性熱重合開始剤が挙げられる。
熱重合開始剤(d)として、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
熱重合開始剤(d)の硬化性樹脂組成物中の添加量は、特に限定されないが、樹脂(a)100質量部に対して0.3質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。
該添加量を前記範囲内とすることにより、実用上十分に良好な機械的物性が確保可能な温度の範囲内での硬化性樹脂組成物の熱硬化が可能となる。
【0059】
[微粒子]
硬化性樹脂組成物には、微粒子を添加してもよい。
硬化性樹脂組成物に微粒子を添加することにより、樹脂硬化物層および印刷版の機械的物性の向上効果が得られ、樹脂硬化物層および印刷版表面の濡れ性が改善する。
また、硬化性樹脂組成物の粘度を調整でき、樹脂硬化物層および印刷版の粘弾性特性の調整等が容易になる。
【0060】
微粒子としては、例えば、無機系微粒子、有機系微粒子、および有機無機複合微粒子等が挙げられる。
微粒子は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機系微粒子および有機系微粒子の材質は、特に限定されないが、公知の材料を用いることができる。
有機無機複合微粒子としては、無機系微粒子の表面に有機物層または有機系微粒子を付着させた微粒子や、有機系微粒子表面に無機物層または無機微粒子を付着させた微粒子等が挙げられる。
【0061】
微粒子に関して、樹脂硬化物層および印刷版の機械的物性の向上を図るためには、窒化珪素、窒化ホウ素、炭化珪素等の剛性の高い無機系微粒子、ポリイミド等の有機系微粒子が好ましい。
また、樹脂硬化物層および印刷版の耐溶剤特性の向上を図るためには、無機系微粒子や、使用する溶剤への膨潤特性の良好な材質の有機系微粒子が好ましい。
【0062】
さらに、樹脂硬化物層に対するレーザ彫刻によりパターン形成を行う際に発生する粘稠性液状残渣に対する高い吸着除去特性を得るためには、表面に気孔が連続的または非連続的に存在する粒子(多孔質)を有する、無機多孔質微粒子が好ましい。例えば、多孔質シリカ、メソポーラスシリカ、シリカ−ジルコニア多孔質ゲル、ポーラスアルミナ、多孔質ガラス等が挙げられる。
【0063】
微粒子は、数平均粒子径が0.01μm以上100μm以下であることが好ましく、0.1μm以上20μm以下であることがより好ましく、1μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
前記範囲内にある数平均粒子径の微粒子を用いた場合、樹脂(a)および有機化合物(b)との混合を行う際に、粘度の上昇、気泡の巻き込み、粉塵の大量発生等の不都合の発生を回避でき、樹脂硬化物層および印刷版の表面の凹凸の発生を防止できる。
微粒子の数平均粒子径は、レーザ散乱式粒子径分布測定装置を用いることにより測定できる。
【0064】
微粒子の形状は、特に限定されないが、球状、扁平状、針状、無定形、表面に突起のある形状等が挙げられる。中でも、耐磨耗性の観点からは、球状であることが好ましい。
【0065】
微粒子は、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等の有機化合物により被覆することにより表面改質処理を施してもよい。表面改質処理を行うことにより、親水性化または疎水性化した微粒子が得られる。
表面改質処理を施した微粒子は、単独で用いてもよく、2種以上のものを用いてもよい。
微粒子の硬化性樹脂組成物中の添加量は、特に限定されないが、樹脂(a)100質量部に対して1質量部以上100質量部以下であることが好ましく、2質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、2質量部以上20質量部以下であることがさらに好ましい。
【0066】
[支持体]
支持体は、樹脂硬化物層や、クッション層を安定保持する層である。
支持体としては、例えば、シート状支持体、円筒状支持体等が挙げられる。
【0067】
円筒状支持体とは、中空の円筒形状の支持体(以下、スリーブと称することがある)であり、肉厚や弾性率によって、外力に応じて容易に形状が変化するもの(フレキシブル型)や、変化し難いもの(剛体型)がある。
スリーブの材質が、ニッケル、鉄等の金属である場合、フレキシブル性を確保するため、0.2mm以下の厚みとすることが好ましい。
スリーブの材質が、ガラス繊維、炭素繊維、プラスチック繊維等で強化された繊維強化樹脂である場合、スリーブの厚みは0.2mm以上であることが好ましい。
【0068】
支持体がスリーブである場合、最終的に得られた印刷版を用いて印刷工程を行う際、エアーシリンダに装着した状態で行うことができる。
エアーシリンダとは、通常エアーマンドレルと称される、中空の金属芯棒に圧気を供給して外周面から圧気を吹き出す構成を有しており、これによりスリーブを膨張させて、エアーマンドレル外周面とスリーブ内周面との間に空気層を介在させ、摩擦抵抗を減らしながらスリーブの装脱着が可能となるシステムである。
【0069】
また、支持体がスリーブである場合、再利用を容易にするため、樹脂硬化物層をスリーブ上に所定のベースフィルムを介して形成してもよい。ベースフィルムの材料としては特に限定されないが、例えばPETフィルムが挙げられる。
【0070】
シート状支持体とは、樹脂硬化物層を固定するためのシート状のベースフィルムであり、シート状支持体の材料としては、特に限定されないが、例えばPETフィルム等が挙げられる。
【0071】
[クッション層]
クッション層は、印刷版に弾力を与え、印刷機能を向上させる層であり、樹脂硬化物層の下部層として任意に形成する層である。
クッション層は、例えば0.05〜50mm程度の厚さに形成する。
【0072】
[レーザ彫刻版の製造方法]
本実施形態の印刷版の製造方法は、硬化性樹脂組成物を光および/または熱により硬化せしめて、シート状または円筒状の樹脂硬化物層を形成する硬化工程、樹脂硬化物層をレーザ彫刻し、樹脂硬化物層表面にパターンを形成する彫刻工程、および樹脂硬化物層をpH8以上のアルカリ性電解水で処理する表面処理工程、を含む印刷版の製造方法であることが好ましい。
本実施形態の表面処理方法に適用する印刷版の製造方法としては、下記の方法が挙げられる。
なお、下記においては、円筒状印刷版の製造方法を例に挙げて説明する。
【0073】
樹脂硬化物層を形成する樹脂が感光性樹脂組成物である場合には、例えば、以下の方法により円筒状印刷版を得ることができる。
感光性樹脂組成物をシート状に成形し、かつ光硬化させることにより得られたシート状の樹脂硬化物層を、円筒状支持体上に積層し、さらにこの樹脂硬化物層の表面にレーザ彫刻法により所定の印刷パターンを形成することにより、円筒状印刷版が得られる。
感光性樹脂組成物をシート状に成形し、光硬化させることにより得られたシート状の樹脂硬化物層に対し、レーザ彫刻法により所定の印刷パターンを形成し、これを円筒状支持体上に積層することにより、円筒状印刷版が得られる。
感光性樹脂組成物を円筒状支持体上に積層して、感光性樹脂組成物層を形成し、光硬化させ、樹脂硬化物層とした後、表面に後述するレーザ彫刻法により所定の印刷パターンを形成することにより、円筒状印刷版が得られる。
【0074】
樹脂硬化物層を形成する樹脂が、室温で液状の感光性樹脂組成物である場合は、円筒状支持体を回転させながら樹脂塗布平滑化ユニットを用いて、円筒状支持体の外周面に液状の感光性樹脂組成物を塗布し、均一厚とし、続いて、円筒状支持体を回転させながら高強度な紫外線で露光し光硬化させ樹脂硬化物層とした後、表面にレーザ彫刻により所定の印刷パターンを形成することにより、円筒状印刷版が得られる。
【0075】
樹脂硬化物層を形成する樹脂が熱硬化性樹脂組成物である場合には、例えば、以下の方法により円筒状印刷版を得ることができる。
熱硬化性樹脂組成物をシート状に成形し、かつ熱硬化させることにより得られたシート状の樹脂硬化物層を円筒状支持体上に積層し、さらにこの樹脂硬化物層の表面にレーザ彫刻により所定の印刷パターンを形成することにより円筒状印刷版が得られる。
熱硬化性樹脂組成物をシート状に成形し、熱硬化させることにより得られたシート状の樹脂硬化物層に対し、レーザ彫刻により所定の印刷パターンを形成し、これを円筒状支持体上に積層することにより円筒状印刷版が得られる。
熱硬化性樹脂組成物を円筒状支持体上に積層して、熱硬化性樹脂組成物層を形成し、熱硬化させ、樹脂硬化物層とした後に、表面にレーザ彫刻により所定の印刷パターンを形成することにより円筒状印刷版が得られる。
【0076】
樹脂硬化物層を形成する樹脂が、室温で液状の熱硬化性樹脂組成物である場合は、円筒状支持体を回転させながら樹脂塗布平滑化ユニットを用いて、円筒状支持体の外周面に液状の熱硬化性樹脂組成物を塗布し、均一厚とし、続いて、円筒状支持体を回転させながら熱硬化させ樹脂硬化物層とした後、表面にレーザ彫刻により所定の印刷パターンを形成することにより、円筒状印刷版が得られる。
【0077】
成形した硬化性樹脂組成物の硬化工程として、光で硬化せしめることを含む方法において、光とは高エネルギー活性線を意味し、例えば、紫外線、電子線、γ線、X線、分子線等の波長の短い光が挙げられる。
光源は特に限定されないが、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、殺菌灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。
照射される光は、200nmから400nmの波長を有することが好ましい。光源は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。波長の異なる2種類以上の光源を併用することにより、樹脂硬化物層の硬化性が向上することがある。
熱で硬化せしめることを含む方法として、例えば、硬化性樹脂組成物に熱線を照射する方法、熱風を吹き付ける方法、熱風が対流する雰囲気に硬化性樹脂組成物を曝す方法、加熱したロールと接触させる方法等が挙げられる。
熱による硬化工程によって印刷原版を得ることで光硬化工程と比較して印刷原版の厚膜化が容易となる。また、作業性の容易さの観点から熱線を照射する方法、加熱したロールと接触させる方法が好ましい。熱線としては、近赤外線、赤外線が挙げられる。
【0078】
レーザ彫刻法により樹脂硬化物層にレーザ彫刻を行う方法は、下記の方法が挙げられる。
レーザ彫刻を行う方法においては、所望の形成画像をデジタル型のデータとし、コンピューターを利用してレーザ装置を操作し、レリーフ画像を形成する。
レーザ彫刻用のレーザは、樹脂硬化物層が吸収を有する波長の光を発振するものであればよいが、高速で彫刻を行うためには、出力の高いものが好ましい。
レーザとしては、例えば、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザ等の赤外線または赤外線放出固体レーザが挙げられる。
【0079】
レーザとしては、可視光線領域に発振波長を有するYAGレーザの第2高調波、銅蒸気レーザ、紫外線領域に発振波長を有するエキシマレーザ等の紫外線レーザ、第3または第4高調波へ波長変換したYAGレーザは、有機分子の結合を切断するアブレーション加工が可能であり、微細加工に好適である。
【0080】
レーザは、連続照射、パルス照射のいずれでもよい。
印刷層のレリーフ深度を、0.1mm以上とする場合には、レーザ彫刻による印刷版の生産性の観点から、炭酸ガスレーザを用いることが好ましい。
レーザ彫刻は、酸素含有ガス下、一般には空気存在下または気流下に実施するが、炭酸ガス、窒素ガス下でも実施できる。
【0081】
[水現像版]
水現像版とは、水現像性感光性樹脂組成物から形成される水現像版用感光性樹脂構成体を露光・現像して表面にパターンが形成されて得られる印刷版である。
水現像性感光性樹脂組成物を得るための水現像版用感光性樹脂としては、公知の物を使用することができ、例えば、特許第3508788号公報、特公昭58−33884号公報、特許第2940006号公報や特許第2985655号公報等に提案されている樹脂が挙げられる。また、水現像性感光性樹脂組成物としては、好ましくは樹脂(a)、有機化合物(b)、光重合開始剤(c)を含有する、感光性樹脂組成物を用いることもできる。以下、感光性樹脂組成物の好適な例として、水現像性感光性樹脂組成物を例示して説明する。
【0082】
水現像性感光性樹脂組成物は、一般に、水現像版用感光性樹脂と重合性モノマー成分からなり、目的や用途に応じてさらに光重合開始剤や安定剤を含む。
【0083】
[水現像版用感光性樹脂]
水現像版用感光性樹脂を構成する成分として、オリゴマーおよび/またはポリマー成分が挙げられる。水現像版用感光性樹脂として、樹脂(a)として記載の成分を用いることもできる。
印刷版の物性に最も大きな影響を与えるものであるが、オリゴマーおよびポリマー成分として、用いられる材料は多岐にわたり、ウレタン系、ビニルアルコール系、エステル樹脂系、およびナイロン系樹脂系等が挙げられる。
水現像版用感光性樹脂を構成する成分としては、極性基含有ポリマーと疎水性ポリマーを混合・分散させた樹脂系(バインダーポリマー)等も挙げられる。極性基含有ポリマーと疎水性ポリマーは、それぞれ、極性基含有オリゴマーや疎水性オリゴマー等のオリゴマー成分であってもよい。
【0084】
以下、ポリマー成分として例示するが、ポリマー成分として記載している成分をオリゴマー成分に置き換えて用いてもよい。
中でも、ポリマー成分を用いることが好ましく、極性基含有ポリマーと疎水性ポリマーを混合・分散させた樹脂系を用いる場合は、該樹脂系は、版の耐久性や高精細な版面形成性に優れており、印刷における汎用性が高く有用な樹脂系である。
【0085】
極性基含有ポリマーとしては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、リン酸基、スルホン酸基等の親水性基またはそれらの塩を含有する水溶性共重合体または水分散性共重合体が挙げられる。
極性基含有ポリマーとしては、例えば、特許第2128098号公報に記載されているカルボキシル基含有NBR、カルボキシル基含有SBR、特公平5−7705号、特開昭61−128243号、特開平6−194837号および特開平7−134411号の各公報等に記載されたカルボキシル基を含有する脂肪族共役ジエンの重合体、特開平9−15860号公報に記載されたリン酸基、またはカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物の乳化重合体、特開平3−206456号公報記載されているスルホン酸基含有のポリウレタン、特開2002−162731号公報に記載されたカルボキシル基含有ブタジエンラテックス等が挙げられる。
極性基含有ポリマーとして、単独で用いてもよいし、2つ以上を併用してもよい。
【0086】
疎水性ポリマーとしては、例えば、共役ジエン系炭化水素を重合して得られる重合体、または共役ジエン系炭化水素とモノオレフィン系不飽和化合物を重合して得られる共重合体が挙げられる。
疎水性ポリマーとしては、例えば、ブタジエン重合体、イソプレン重合体、クロロプレン重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−クロロプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン−スチレン共重合体等が挙げられる。
疎水性ポリマーとして、単独で用いてもよいし、2つ以上を併用してもよい。
【0087】
[重合性モノマー]
水現像性感光性樹脂組成物を構成する成分として、重合性モノマーが挙げられる。
重合性モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、エチレン性不飽和酸とアルコール類のエステル化合物等があり、文献「光硬化技術データブック(テクノネット社発行)」等に記載された化合物が利用できる。重合性モノマーとして、有機化合物(b)として記載の成分を用いることもできる。
重合性モノマーとしては、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、ノナン(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ECH変性アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の直鎖、分岐、環状の単官能モノマー;およびヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル、2−ブチルプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO(PO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の直鎖、分岐、環状の多官能モノマー等が挙げられる。
重合性モノマーとしては、例えば、ジオクチルフマレート等のアルコールとフマル酸エステル、ラウリルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等N置換マレイミド誘導体等が挙げられる。
【0088】
[光重合開始剤(e)]
水現像性感光性樹脂組成物を構成する成分として、光重合開始剤(e)が挙げられる。
光重合開始剤(e)としては光重合開始剤(c)として記載の光重合開始剤を用いることができる。
光重合開始剤(e)の水現像性感光性樹脂組成物中の添加量は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物全体量の0.3質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。
該添加量を前記範囲内とすることにより、実用上十分に良好な機械的物性が確保可能な温度の範囲内での水現像性感光性樹脂組成物の光硬化が可能となる。
【0089】
水現像版用感光性樹脂構成体に赤外線アブレーション膜および/または保護膜を設けてもよい。
【0090】
赤外線アブレーション膜の組成として、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ユリヤ系樹脂、メラミン系樹脂、グアナミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、セルロース系樹脂等のバインダーポリマーが挙げられる。
【0091】
赤外線アブレーション膜の組成として、通常750nm以上2000nm以下の範囲で強い吸収を持つ化合物である赤外線吸収物質が挙げられる。
赤外線吸収物質としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、亜クロム酸銅、酸化クロム等の無機顔料や、ポリフタロシアニン化合物、シアニン色素、金属チオレート色素等の色素類が挙げられる。中でも、カーボンブラックは、粒径が13nm以上85nm以下の広い範囲で使用可能であり、粒径が小さいほど赤外線に対する感度が高くなるため好ましい。
使用するレーザ光線に十分な感度を有し、かつ除去可能な感度を有する範囲として、例えば、赤外線吸収物質は、赤外線アブレーション膜の全成分中、10質量%以上80質量%以下で添加することが好ましい。
赤外線アブレーション膜の組成として、非赤外線の遮蔽物質が挙げられる。
該遮蔽物質としては、紫外光線を反射または吸収する物質が挙げられ、例えば、紫外線吸収剤やカーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。
一般的に、該遮蔽物質の添加量は、光学濃度として、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。
赤外線アブレーション膜の組成として、カーボンブラックのように赤外線吸収物質と非赤外線の遮蔽物質の双方の特性を兼ね備えた化合物が好ましい。
【0092】
保護層の形成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ユリヤ系樹脂、メラミン系樹脂、グアナミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられるが、洗浄カスの残存を防止する観点から、現像液に溶解、分散するものが好ましい。
【0093】
[水現像版用感光性樹脂構成体の製造方法]
本実施形態の印刷版の製造方法は、水現像性感光性樹脂組成物層を有する水現像版用感光性樹脂構成体に活性光線を照射し、所望の部分を硬化せしめる露光工程、水現像版用感光性樹脂構成体を水系の現像液で現像し、水現像版用感光性樹脂構成体表面にパターンを形成する現像工程、水現像版用感光性樹脂構成体をpH8以上のアルカリ性電解水で処理する表面処理工程、を含む印刷版の製造方法であることが好ましい。
水現像版用感光性樹脂構成体は、例えば、支持体/水現像性感光性樹脂組成物層/カバーフィルムからなる構成体が挙げられ、例えば、カバーフィルム内の赤外線アブレーション膜や保護膜等の薄膜面を、感光性樹脂版に密着させる方法、具体的には、該薄膜面を感光性樹脂版の表面に形成される水現像性感光性樹脂層表面に密着させる方法等により製造することができる。該製造方法により得られる水現像版用感光性樹脂構成体は、支持体/水現像性感光性樹脂組成物層/赤外線アブレーション膜、支持体/水現像性感光性樹脂組成物層/保護膜との構成を有する。水現像版用感光性樹脂構成体は、保護膜を、赤外線アブレーション膜の上下にそれぞれまたはどちらか一方に有していてもよい。所望の画像が形成されたネガフィルムを保護膜上に設置し、前記露光工程および現像工程を行うことが出来る。
【0094】
水現像性感光性樹脂組成物が固体状の場合、ポリエチレンテレフタレート(PET)支持体(必要に応じてアンチハレーション効果を付与されたものを使用)と粘着防止層を有するカバーフィルムを用いて板状に成形する。該カバーフィルムは、PET支持体/粘着防止層/赤外線アブレーション膜やPET支持体/粘着防止層/保護膜といった構成を有することが好ましい。
フレキソCTPといわれるデジタル版の場合には、ポリエチレンテレフタレート支持体と前記赤外線アブレーション膜とを有するカバーフィルムを用いて板状に成形される。該カバーフィルムは、PET支持体/赤外線アブレーション膜といった構成を有することが好ましい。該赤外線アブレーション膜にレーザ光を照射することにより、所望の画像に相当する赤外線アブレーション膜を除去した後に、前記露光工程および現像工程を行うことが出来る。
【0095】
水現像性感光性樹脂組成物が液状の場合、市販の液状感光性樹脂用の製版機上で支持体とカバーフィルムの間に水現像性感光性樹脂組成物を投入して成形露光される。
【0096】
印刷版は露光工程(活性光線露光工程)、現像工程(未露光部の洗浄除去工程)を行った後、必要に応じて後露光工程を経て製造される。露光工程後の水現像版用感光性樹脂構成体は、水現像性感光性樹脂組成物が硬化した樹脂硬化物層を備える。なお、露光工程前の、すなわち、水現像性感光性樹脂組成物が硬化する前においても水現像版用感光性樹脂構成体という。印刷版の製造方法において、後露光は行わないことが好ましく、後露光を行う場合には、露光工程、現像工程、及び表面処理工程の後に後露光を行うことが好ましい。露光工程以後の水現像版用感光性樹脂構成体を、印刷版という場合もある。
国際公開第2005/064413号パンフレットのように、露光工程以降にシリコーン化合物および/またはフッ素化合物を含有する液と印刷版(樹脂硬化物層を備える)を接触させてもよい。
シリコーン化合物とは、メチル基を代表とするアルキル基を有するアルキルシロキサンを主たる骨格とするオリゴマーおよびポリマーをいい、一般的にシリコーンオイル等と称される場合もある物質である。
フッ素化合物とは、炭化水素化合物の水素基の一部または全部をフッ素で置換した化合物をいう。
【0097】
現像方式は公知の方法であれば特に限定されないが、例えば、印刷版を洗浄液に浸漬させた状態でブラシを用いて未露光部分を溶解または掻き落とす現像方式、スプレー等で版面に洗浄液を振りかけながらブラシで未露光部を溶解または掻き落とす現像方式等が挙げられる。
【0098】
水現像版用感光性樹脂構成体の現像液は公知のものを使用することができる。現像液は、例えば、有効成分として界面活性剤を含有している水溶液が挙げられる。
界面活性剤とはアニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤としては、単独で用いてもよいし、2つ以上を併用してもよい。
【0099】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩、高級アルコール硫酸エステル、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化オレフィン、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル塩、ジチオリン酸エステル塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型界面活性剤;グリセロール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエステル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等の多価アルコール型界面活性剤等が挙げられる。
【0100】
界面活性剤に加え、印刷版の洗浄性の向上、およびシリコーン系化合物の印刷版内への浸透性を向上させるためにアルキルグリコールエーテルのような水と混合可能な有機溶剤を浸透剤として現像液に添加することは有用な方法である。
浸透剤は洗浄する樹脂の組成により選択することができるが、例えば、ジブチルジグリコールエーテル等のモノまたはポリエチレングリコールエーテル型非イオン浸透剤等が挙げられる。
【0101】
現像液には、その他の成分として、アルカリビルダーと称されるpH調整剤を含有させてもよい。
アルカリビルダーとしては、有機材料、無機材料のどちらも使用でき、pHを9以上に調整できるものが好ましく、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、琥珀酸ナトリウム等が挙げられる。
【0102】
現像液中の界面活性剤や浸透剤、アルカリビルダーの添加量には特に限定されない。
現像液中の界面活性剤の添加量は、現像液全体量の1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、3質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
浸透剤の添加量は、現像液全体量の0.2質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
アルカリビルダーの添加量は、現像液全体量の0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
これらの成分の添加量が前記範囲より少ない場合には現像にかかる時間が長すぎる等の不都合が起き、前記範囲より大きい場合にはコストの観点で好ましくない。
【0103】
[その他添加剤]
硬化性樹脂組成物には、その他必要に応じて重合禁止剤、可塑剤、染料、紫外線吸収剤、耐オゾン剤等の添加剤を配合することができる。
可塑剤としては、液状1,2(または1,4)−ポリブタジエン、1,2(または1,4)−ポリイソプレン、またはこれらの末端変性品、ナフテン油、パラフィン油等の炭化水素油等が挙げられる。
重合禁止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、2,4−ジ−t−ブチルクレゾール、カテコール、t−ブチルカテコール等のフェノール類等が挙げられる。
【実施例】
【0104】
本実施形態をさらに詳細に説明するために、以下に、実施例および比較例を示すが、これらの実施例および比較例は、本実施形態を何ら制限するものではない。
【0105】
[表面処理性評価方法]
表面処理性評価試験としてフレキソ印刷機(英国、KR社製、商品名「FLEXIPROOF100」)を用いた。レーザ彫刻版の評価においては、版シリンダー上に圧気により下記実施例で製造したレーザ彫刻版をセットし、水現像版の評価においては、版シリンダー上に印刷用クッションテープ(独国、Lohmann社製、商品名「Duploflex5.3」)/下記実施例で製造した水現像版の順で取り付け、印刷評価を行った。
印刷速度は60m/分、アニロックスロールは800lpiとした。被印刷体として重量86.5g/m2の片面コート紙を使用した。インキはZahnカップ#4で15秒相当の粘度に純水で希釈したシアン色の水性インキ(東洋インキ株式会社製、商品名「HW571AQPプロセスシアン」)を用いて印刷を行った。印刷後のコート紙に、目視でベタ部にインキが前面に付着した印圧を「適正印圧」とした。
該評価では、実際の印刷機の印圧を考慮して、前記適正印圧よりも50μm増加させて、コート紙を10部印刷を行ったときに、紙剥けが観察されなかったものを「◎」、使用したコート紙の表面が剥がれたもの、すなわち軽度の紙剥けを「○」、紙剥けが起こり使用したコート紙の裏側まで剥離したものを「×」とした。
【0106】
樹脂(a)の数平均分子量は、GPC法を用いて求めた多分散度(Mw/Mn)が1.1より大きいものであったため、GPC法で求めた数平均分子量Mnを採用した。具体的には、樹脂(a)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)を用いて、分子量既知のポリスチレンで換算して求めた。
高速GPC装置(東ソー株式会社製、商品名「HLC−8020」)とポリスチレン充填カラム(東ソー株式会社製、商品名「TSKgel GMHXL」)を用い、テトラヒドロフラン(THF)で展開して測定した。カラムの温度は40℃に設定した。高速GPC装置に注入する試料としては、樹脂(a)の濃度が1質量%のTHF溶液を調製し、注入量10μLとした。また、検出器としては、樹脂紫外吸収検出器を使用し、モニター光として254nmの光を用いた。
【0107】
[製造例1]レーザ彫刻版用の硬化性樹脂組成物の作製
温度計、攪拌機、還流器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ株式会社製、登録商標「PCDL T4672」、数平均分子量2025、OH価55.4)402.60gと、トリレンジイソシアネート24.01gとを加え、40℃加温下で約1時間、80rpmにて攪拌した後、触媒としてジブチルチンジラウレートを0.2g添加し、3時間反応させた。
次に、2−メタクリロイルオキシイソシアネート11.53gを添加し、さらに約3時間反応させて、末端がメタアクリル基(分子内の重合性不飽和基が1分子あたり平均約2.0個)である樹脂(a)を調製した。樹脂(a)の数平均分子量は、約7500であった。
樹脂(a)は、20℃では水飴状であり、外力を加えると流動し、かつ外力を除いても元の形状を回復しなかった。
樹脂(a)100質量部に対し、下記の有機化合物(b)、光重合開始剤(c)、重合禁止剤、微粒子等を混合し、20℃で液状の印刷原版形成用の硬化性樹脂組成物Aを調製した。
【0108】
有機化合物(b)として、フェノキシエチルメタクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルPO」)を37.3質量部、およびジエチレングリコールモノブチルエーテルモノメタクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステルBC」)を11.9質量部用いた。
光重合開始剤(c)として、崩壊型光重合開始剤である2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンを3.0質量部、水素引き抜き型光重合開始剤であるベンゾフェノンを0.8質量部用いた。
重合禁止剤として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.9質量部、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートを1.5質量部用いた。
シリコーンオイル(信越化学工業株式会社、商品名「KF−410」)を1.5質量部、微粒子として、無機多孔質体(富士シリシア化学株式会社製、登録商標「サイロスフェアC−1504」、数平均粒子径4.5μm、比表面積520m2/g、平均細孔径12nm、細孔容積1.5mL/g、灼熱減量2.5質量%、吸油量290mL/100g、添加した多孔質球状シリカであるサイロスフェアC−1504の真球度は、走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、ほぼ全ての粒子が0.9以上であった)を7.7質量部用いた。
【0109】
[製造例2]水現像性感光性樹脂構成体の作製
[(1)水現像性感光性樹脂組成物の作製]
攪拌装置と温度調整用ジャケットを取り付けた耐圧反応容器に水125質量部、および乳化剤(α−スルホ(1−(ノニルフェノキシ)メチル−2−(2プロペニルオキシ)エトキシ−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)のアンモニウム塩(旭電化工業株式会社製、商品名「アデカリアソープ」)3質量部を初期仕込みとし,内温を80℃まで昇温後、それぞれ、アクリル酸2質量部、メタクリル酸5質量部、ブタジエン60質量部、スチレン10質量部、ブチルアクリレート23質量部、t−ドデシルメルカプタン2質量部からなる混合液を一定流速で5時間かけて、水28質量部,ペルオキソ二硫酸ナトリウム1.2質量部、乳化剤(旭電化工業株式会社製、商品名「アデカリアソープ」)1質量部からなる水溶液を一定流速で6時間かけて、添加した。その後反応温度(内温)を80℃に1時間保って重合を完了した後冷却した生成したラテックスを水酸化ナトリウムでpH7に調整した後、スチームストリッピングで未反応物を除去し最終的に固形分濃度40%の親水性重合体水溶液を得た。該水溶液を60℃で乾燥し、水現像版用感光性樹脂として親水性共重合体を得た。該重合体のトルエンによるゲル分率測定結果は85%であった。
ここで、ゲル分率は以下のようにして測定した。
親水性共重合体の乳化重合後の濃度が約30質量%の分散液を、テフロンシートの上に適当量垂らし、130℃で30分間乾燥させた該重合体を含む乾燥品を0.5g取った。25℃のトルエン30mLに浸漬させ、振とう器を用いて3時間振とうさせた後に、320SUSメッシュで濾過し、不通過分を130℃1時間乾燥させた後の重量を0.5(g)で割った重量分率(%)から求めた。
極性基含有ポリマーとして、得られた親水性共重合体30質量部、疎水性ポリマーとして、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(シェル化学株式会社製、登録商標「クレイトンKX405」)15質量部、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(旭化成株式会社製、登録商標「タフプレン315」)15質量部、可塑剤として、液状ポリブタジエン(クラレ株式会社製 商品名「LIR305」)20質量部、液状ポリブタジエン(日曹株式会社製、商品名「B3000」)10質量部、重合性モノマーとして、ヘキサメチレンジメタクリレート2.5質量部、2−ブチル−2−エチルプロパンジオールジアクリレート8質量部、光重合性開始剤(e)として、ベンジルメチルケタール1質量部、t−ブチルクレゾール0.3質量部を130℃のニーダーを用いて均一に混練して水現像性感光性樹脂組成物を得た。
【0110】
[(2)水現像性感光性樹脂構成体の作製]
得られた樹脂組成物を120℃の熱プレス機を使用し、ハレーション防止剤を含む接着剤層を有する、ポリエチレンテレフタレートフィルム支持体(東レ株式会社製、登録商標「ルミラーU25」)とシリコーン処理をしたフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム株式会社社製、商品名「MRV100」)を用いて、1.14mmの厚みに成形した。
一方、赤外線アブレーション膜はバインダーポリマーとして、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合ポリマー(旭化成株式会社製 登録商標「タフプレンA」、スチレン含量40質量%のスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)50質量部、カーボンブラック(三井化学株式会社製 商品名「#30」 粒子径30nm)50質量部をニーダーで混練し、トルエン/酢酸エチル=1/9の混合溶剤に溶解、分散させて5質量%の均一な塗工液を調合し、該塗工液をナイフコーターを用いて塗布量が5〜6g/m2になるように100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名「メリネックスM630」)に塗工を行い、乾燥温度80℃で2分乾燥することで赤外線アブレーション膜を得た。
先にプレス成形した1.14mmの厚みのポリエチレンテレフタレートフィルム支持体と水現像性感光性樹脂組成物Bとシリコーン処理したフィルムからなる構成体からシリコーン処理フィルムを剥離し、剥離することで露出した水現像性感光性樹脂組成物Bに前記赤外線アブレーション膜をラミネートし転写させて赤外線アブレーション層を有する水現像版用感光性樹脂構成体Bとした。
【0111】
[実施例1]
繊維強化プラスチック製スリーブ(内径152.905mm、外径155.880mm、幅1000mmのFRP製スリーブ(独国、POLYWEST社製、商品名「Polyflex RUBIN」))上に印刷用クッションテープ(独国、Lohmann社製、商品名「Duploflex5.3」)を貼り付け、その上にドクターブレードを用いて製造例1で得られた硬化性樹脂組成物Aを塗工し硬化性樹脂組成物層を得た。
その後、該硬化性樹脂組成物層にメタルハライドランプ(アイ・グラフィックス株式会社製、商品名「M056−L21」)の紫外線を12000mJ/cm2(UVメータとUV−35−APRフィルターを用いて積算したエネルギー量)を照射し、硬化させ、レーザ彫刻版用印刷原版(支持体と樹脂硬化物層の積層体)を得た。
硬化後の印刷周長が500mmとなるように、レーザ彫刻版用印刷原版の最外面を研削、研磨して調整した。
【0112】
レーザ彫刻機(i)(オーストリア国、STORK社製、商品名「AGRIOS5212M」、ガス流通式レーザ発信器を搭載))を用いて、レーザ彫刻版用印刷原版の表面の樹脂硬化物層にレーザ彫刻を行って、レーザ彫刻印刷版とした。レリーフ深度(印刷版のレリーフ面と非印刷面の高低差)は0.5mmであった。
彫刻画像、および、レーザ彫刻機(i)の彫刻条件は以下の通りとした。
【0113】
<彫刻画像>
(1)網点:網点として、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、12%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%のパターンを作製した。
(2)グラデーションパターン:0%から100%までのグラデーションのパターンを作製した。
(3)細線:細線として、30μm幅、60μm幅、100μm幅、150μm幅、200μm幅、250μm幅、500μm幅のパターンを作製した。
(4)白抜き線:白抜き線として、30μm幅、60μm幅、100μm幅、150μm幅、200μm幅、250μm幅、500μm幅のパターンを作製した。
(5)細字:細字として、2point、3point、4point、6point、8pointを明朝体、ゴシック体で作製した。
(6)白抜き細字:白抜き細字として、2point、3point、4point、6point、8pointを明朝体、ゴシック体で作製した。
なおデータの解像度は2540dpiとした。
【0114】
<レーザ彫刻機(i)の彫刻条件>
Speed:適宜変更(cm/sec)
Angle0%:65°
Angle99%:85°
First Step:0.2mm
First Step:0.6mm
線数:120(lpi)
Power limit:100(%)
スクリーン角度:82.5°
【0115】
上述の方法によって得られたレーザ彫刻により作製した印刷版をアルカリ性電解水生成装置(株式会社Eプラン製、商品名「UNICORN」)により作製したアルカリ性電解水(pH初期値=12)に20分間浸漬し、版面に残った水滴を拭き取り、前記表面処理性評価試験を行った結果、紙剥けは全く観察されなかった。
【0116】
[実施例2]
アルカリ性電解水のpH初期値が13であること以外は実施例1と同様に表面処理性評価試験を実施した。紙剥けは観察されなかった。
【0117】
[実施例3]
レーザ彫刻機をレーザ彫刻機(ii)(英国、ZED社製、商品名「ZED−mini−1000」、炭酸ガスレーザ(米国、コヒーレント社製、最大出力250W)を搭載)とした以外は実施例1と同様に表面処理性評価試験を実施した。紙剥けは観察されなかった。
レーザ彫刻機(ii)のレーザ彫刻条件は以下の通りとした。
【0118】
<レーザ彫刻機(ii)の彫刻条件>
Top Power:25%
Bottom Power:100(%)
Width:0.5mm
Speed:600(cm/sec)
Dot Shape Factor:20
線数:120(lpi)
1ピクセル当たりのレーザ本数:10本
ピッチ:15.0μm
スクリーン角度:82.5°
シームレスモード:OFF
【0119】
[実施例4]
アルカリ性電解水のpH初期値が13であること以外は実施例3と同様に表面処理性評価試験を実施した。紙剥けは観察されなかった。
【0120】
[実施例5]
製造例2で得られた水現像版用感光性樹脂構成体Bから赤外線アブレーション層に接したポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離して赤外線アブレーション層を露出させ、該露出した赤外線アブレーション層にYAGレーザを装備した描画装置(ESKO GRAPHIC社製、製品名「CDI CLASSIC」)を使用して実施例1に記載された彫刻画像と同様のパターンを得るためのマスクパターンを描画した。
マスクパターンが描画された水現像用感光性樹脂構成体を露光機(旭化成株式会社製 商品名「AFP−1216」)に設置した。まず支持体側か600mJ/cm2で全面バック露光を行った後、赤外線アブレーション層側から9000mJ/cm2で画像露光を行った。
次にノニオン系界面活性剤を主成分とする現像液を用い平型ブラシ式洗浄機(ロボ電子製)により未露光部の洗い出しを行って、現像工程を経たシート状の水現像版用感光性樹脂構成体(水現像版)を得た。該水現像版の表面にはべとつきが残っていた。
該水現像版を、実施例1と同様にアルカリ性電解水生成装置(株式会社Eプラン製、商品名「UNICORN」)により作製したアルカリ性電解水(pH初期値=12)に20分間浸漬し、版面に残った水滴を拭き取り、前記表面処理性評価試験を行った結果、紙剥けは全く観察されなかった。
【0121】
[実施例6]
アルカリ性電解水のpH初期値が13であること以外は実施例5と同様に表面処理性評価試験を実施した。紙剥けは観察されなかった。
【0122】
[実施例7]
アルカリ性電解水のpH初期値が9であること以外は実施例1と同様に表面処理性評価試験を実施した。軽度の紙剥けが観察された。
【0123】
[実施例8]
アルカリ性電解水のpH初期値が10であること以外は実施例1と同様に表面処理性評価試験を実施した。軽度の紙剥けが観察された。
【0124】
[実施例9]
アルカリ性電解水のpH初期値が9であること以外は実施例3と同様に表面処理性評価試験を実施した。軽度の紙剥けが観察された。
【0125】
[実施例10]
アルカリ性電解水のpH初期値が10であること以外は実施例3と同様に表面処理性評価試験を実施した。軽度の紙剥けが観察された。
【0126】
[実施例11]
アルカリ性電解水のpH初期値が9であること以外は実施例5と同様に表面処理性評価試験を実施した。軽度の紙剥けが観察された。
【0127】
[実施例12]
アルカリ性電解水のpH初期値が10であること以外は実施例5と同様に表面処理性評価試験を実施した。軽度の紙剥けが観察された。
【0128】
[比較例1]
アルカリ性電解水の代わりに純水を使用した以外は実施例1と同様に表面処理性評価試験を実施した。紙剥けが起こり使用したコート紙の裏側まで剥離した。
【0129】
[比較例2]
アルカリ性電解水の代わりに純水を使用した以外は実施例3と同様に表面処理性評価試験を実施した。紙剥けが起こり使用したコート紙の裏側まで剥離した。
【0130】
[比較例3]
アルカリ性電解水の代わりに純水を使用した以外は実施例5と同様に表面処理性評価試験を実施した。紙剥けが起こり使用したコート紙の裏側まで剥離した。
【0131】
[参考例4]
アルカリ性電解水の代わりにpH13に調整した水酸化ナトリウム水溶液を使用した以外は実施例1と同様に表面処理性評価試験を実施した。紙剥けが起こり使用したコート紙の裏側まで剥離した。
【0132】
[参考例5]
アルカリ性電解水の代わりにpH13に調整した水酸化ナトリウム水溶液を使用した以外は実施例3と同様に表面処理性評価試験を実施した。紙剥けが起こり使用したコート紙の裏側まで剥離した。
【0133】
[参考例6]
アルカリ性電解水の代わりにpH13に調整した水酸化ナトリウム水溶液を使用した以外は実施例5と同様に表面処理性評価試験を実施した。紙剥けが起こり使用したコート紙の裏側まで剥離した。
【0134】
実施例1〜12および比較例1〜3、参考例4〜6の条件および結果を、表1に示す。
【0135】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、フレキソ印刷、グラビア印刷、ドライオフセット印刷を行う印刷版の製造方法として好適であり、エンボス加工等の表面パターンの形成、タイル等の印刷用レリーフ画像形成、電子部品の導体、半導体、絶縁体、パターン形成、光学部品の反射防止膜、カラーフィルター、(近)赤外線カットフィルター等の機能性材料のパターン形成、更には液晶ディスプレイあるいは有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の表示素子の製造における配向膜、下地層、発光層、電子輸送層、封止材層の塗膜・パターン形成技術として産業上の利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH8以上のアルカリ性電解水で印刷版表面を処理する、印刷版の表面処理方法。
【請求項2】
前記印刷版が凸版である、請求項1に記載の印刷版の表面処理方法。
【請求項3】
前記印刷版がレーザ彫刻版または水現像版である、請求項1または2に記載の印刷版の表面処理方法。
【請求項4】
樹脂硬化物層をpH8以上のアルカリ性電解水で処理する表面処理工程を含む、印刷版の製造方法。
【請求項5】
硬化性樹脂組成物を光および/または熱により硬化せしめて、シート状または円筒状の樹脂硬化物層を形成する硬化工程、
樹脂硬化物層をレーザ彫刻し、樹脂硬化物層表面にパターンを形成する彫刻工程、
樹脂硬化物層をpH8以上のアルカリ性電解水で処理する表面処理工程、
を含む印刷版の製造方法。
【請求項6】
水現像性感光性樹脂組成物層を有する水現像版用感光性樹脂構成体に活性光線を照射し、所望の部分を硬化せしめる露光工程、
水現像版用感光性樹脂構成体を水系の現像液で現像し、水現像版用感光性樹脂構成体表面にパターンを形成する現像工程、
水現像版用感光性樹脂構成体をpH8以上のアルカリ性電解水で処理する表面処理工程、
を含む印刷版の製造方法。

【公開番号】特開2011−102021(P2011−102021A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258664(P2009−258664)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】