説明

印刷装置、印刷制御装置および印刷システム

【課題】ネットワークに接続され、同じ電源系統により電力が供給される複数の印刷装置が同時に印刷動作を行うと、ブレーカが落ちてホスト装置と印刷装置がすべて使用できなくなることがあった。
【解決手段】各印刷装置もしくは印刷制御装置に、同じ電源系統に接続される印刷装置の印刷動作時の使用電力を記憶する記憶手段を備え、各印刷装置との交信によって印刷動作の開始と終了とを把握し、ホスト装置から各印刷装置に対する印刷指示が送信されたとき、前記使用電力を参照して、同時に印刷動作中となる印刷装置の使用電力の合計が所定の許容値を超えることがないように、各印刷装置の印刷動作のタイミングを調整するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク接続された印刷装置(プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、複合機など)、印刷制御装置および印刷システムに関し、特に印刷装置の印刷動作時の使用電力を制限する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
LAN(Local Area Network)等のネットワークに、PC(Personal Computer)等の1以上のホスト装置と、1以上の印刷装置とが接続され、各印刷装置が独立して印刷を実行する印刷システムが知られている。この印刷システムでは、それぞれの印刷装置はホスト装置から印刷指示を受信すると直ちに印刷動作を開始する。
【0003】
また、特許文献1に開示されているように、ネットワーク上に複数配置される印刷装置のうち、ホスト装置から送信される印刷データに適した印刷装置を選択して印刷を実行させる印刷制御装置(プリントサーバ)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−146465号公報(段落「0006」、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ネットワーク接続された複数の印刷装置に同じ電源系統から電力が供給される場合、同時に印刷動作を行う印刷装置の数によってはその電源系統で許容される電力の上限を超え、ブレーカが落ちてその電源系統に接続されているホスト装置と印刷装置とがすべて使用できなくなって、作業中のデータが失われるのみならず、機器が故障することもあるという課題があった。
【0006】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたものであり、同じ電源系統から電力が供給される複数の印刷装置に対して同時に印刷指示が送信された場合においても、印刷装置の使用電力の総和を所定値以内に抑えて印刷動作を実行可能な印刷装置、印刷制御装置および印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明では、ネットワークに接続され、1以上のホスト装置からの印刷指示にしたがって印刷データを受信して印刷を実行する印刷装置において、自装置と同じ電源系統に接続される1以上の他の印刷装置の印刷動作時の使用電力を記憶する記憶手段と、前記他の印刷装置から印刷動作の開始と終了とを示すメッセージを受信することによって印刷動作中の印刷装置を把握し、前記ホスト装置から印刷指示を受信したとき、前記記憶手段に記憶されている前記使用電力を参照して印刷動作中の他の印刷装置の使用電力の合計を求め、その値と自装置の印刷動作時の使用電力との和として求められる予想電力が、所定の許容値を超える場合は自装置の印刷動作の実行を抑制し、前記所定の許容値以下の場合に自装置の印刷動作の実行を許可する印刷実行制御手段とを備えた。
【0008】
また、本発明では、ネットワークに接続され、1以上のホスト装置からの印刷指示にしたがって印刷データを受信して同じ電源系統に接続される1以上の印刷装置に印刷を実行させる印刷制御装置において、前記各印刷装置の印刷動作時の使用電力を記憶する記憶手段と、前記ホスト装置から受信した前記各印刷装置に対する印刷データを当該印刷装置に送信するタイミングを、前記記憶手段に記憶されている前記使用電力を参照して、同時に印刷動作中となる印刷装置の使用電力の合計が、所定の許容値を超えることがないように調整する印刷指示制御手段とを備えた。
【発明の効果】
【0009】
これにより、同じ電源系統から電力が供給される複数の印刷装置に対して同時に印刷指示が送信された場合においても、印刷装置の使用電力の総和を所定値以内に抑えて印刷動作を実行可能な印刷装置、印刷制御装置および印刷システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第一実施形態の印刷システムの例を示す接続構成図である。
【図2】電力制限機能を有するプリンタ(印刷装置)の構成例を示す機能ブロック図である。
【図3】印刷装置に備えられる操作パネルの一例を示す外観図である。
【図4】「プリントタイムシェアリング設定画面」の表示例を示す図である。
【図5】「規定枚数設定画面」の表示例を示す図である。。
【図6】「最大使用可能電力設定画面」の表示例を示す図である。
【図7】装置登録部に格納される装置情報テーブルのデータ構造例を示す図である。
【図8】印刷装置のデータ記憶部に格納される印刷待ちリストのデータ構造例を示す図である。
【図9】電力制限機能を有する印刷装置の基本動作を示すフローチャートである。
【図10】印刷処理サブルーチンの処理の詳細を示すフローチャートである。
【図11】メッセージ受信処理の詳細を示すフローチャートである。
【図12】3台のプリンタのうち同時に2台までしか印刷動作を実行できないときのプリントタイムシェアリング動作の様子を示したタイムチャートである。
【図13】第二実施形態の印刷システムの例を示す接続構成図である。
【図14】プリントサーバ(印刷制御装置)の構成例を示す機能ブロック図である。
【図15】電力制限機能をもたないプリンタ(印刷装置)の構成例を示す機能ブロック図である。
【図16】プリントサーバ(印刷制御装置)のデータ記憶部に格納される印刷待ちリストのデータ構造例を示す図である。
【図17】プリントサーバ(印刷制御装置)のプリントタイムシェアリング動作時の処理を示すフローチャートである。
【図18】印刷タスクの処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための2つの形態(第一実施形態、第二実施形態)につき詳細に説明する。
【0012】
[第一実施形態]
まず、第一実施形態では、それぞれが電力制限機能を有する本発明の印刷装置を備えた印刷システムについて説明する。
【0013】
図1は、第一実施形態の印刷システムの例を示す接続構成図である。図1に示すように、印刷システムS1は、1以上のホスト装置2,3と、電力制限機能を有する本発明の印刷装置である1以上のプリンタ4,5,6とのいずれもが、同じネットワークであるLAN1と、同じ電源系統である電源供給ライン7との双方に接続されて構成されている。
【0014】
ホスト装置2,3は、例えば、文書作成用のソフトウェア、および、作成された文書の印刷を指示するプリンタドライバがインストールされたPCである。また、プリンタ4,5,6は、ホスト装置2,3のプリンタドライバからLAN1を介して送信される印刷指示にしたがって、作成された文書の印刷データを受信し、紙などの媒体に印刷する。なお、LAN1に接続されるホスト装置2,3や、プリンタ4,5,6の台数は、設置されるオフィスの規模などによって異なる。
【0015】
電源供給ライン7は、ブレーカ8を経由して大本の商用電源(不図示)に接続される。ブレーカ8は、電源供給ライン7に所定値を上回る電流が一定時間以上連続して流れた場合に、電源供給ライン7と商用電源との接続を遮断するための安全装置である。したがって、印刷システムS1は、ブレーカ8が落ちて電源供給ライン7への電力供給が停止することがないように、プリンタ4,5,6の総使用電力を制限しながら印刷動作を実行する必要がある。
【0016】
ところで、オフィスなどで広く利用されているレーザプリンタやLED(Light Emitting Diode)プリンタは、印刷動作時の消費電力が数百ワットから1キロワット程度と比較的大きい。しかるに、オフィスによっては、定格電流が15〜30アンペア程度のブレーカが設置された1つの電源系統に、何台ものPCと数台のプリンタとが接続されることも決して少なくない。そのような環境においては、同時に2〜3台のプリンタが印刷動作に入っただけでブレーカが落ちる危険性がある。印刷システムS1では、それぞれのプリンタ4,5,6に、LAN1を介して他のプリンタと交信することで他のプリンタの動作状況を把握し、互いに印刷動作のタイミングを調整する機能をもたせることによって、プリンタ全体としての総使用電力をブレーカ8が落ちない所定値以内に収める。
【0017】
図2は、電力制限機能を有する本発明の印刷装置であるプリンタ5の構成例を示す機能ブロック図である。以下、プリンタ5についてのみ説明するが、プリンタ4,6も同様な構成をもつ。
【0018】
図2に示すように、プリンタ5は、制御手段51と、記憶手段52と、ユーザインタフェース手段(以下、UI(User Interface)手段と略記。)53とを備えて構成されている。
【0019】
制御手段51は、ネットワーク通信部511、情報取得部512、印刷データ解析展開部513、印刷エンジン部514、印刷ジョブ管理部515の各機能を備える。これら各機能は、プリンタ5に内蔵される不図示のCPU(Central Processing Unit)が、不図示のROM(Read Only Memory)やハードディスク装置などに記憶されている所定のプログラムを、不図示のRAM(Random Access Memory)にロードして実行することによって実現される。
【0020】
ネットワーク通信部511は、LAN1を介してホスト装置2,3および他のプリンタ4,6との通信を行う機能を有する。ネットワーク通信部511は、ホスト装置2,3から送信される印刷データを受信してデータ記憶部523に格納し、また、情報取得部512や印刷ジョブ管理部515からの指示にしたがって、他のプリンタ4,6との間で各種メッセージの送受信を行う。これらのメッセージやデータの送受信には、例えば、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)が使用される。
【0021】
情報取得手段としての情報取得部512は、UI手段53を通じ、また、ネットワーク通信部511を介して他のプリンタ4,6から、電力制限動作に必要な各種情報を取得して設定情報記憶部521、装置登録部522またはデータ記憶部523に格納する機能を有する。
【0022】
印刷データ解析展開部513は、印刷ジョブ管理部515の指示にしたがってデータ記憶部523に格納された印刷データを解析して、印刷枚数をカウントし、また、指定された枚数分の印刷データを印刷エンジン部514に引き渡す機能を有する。
【0023】
印刷エンジン部514は、印刷データ解析展開部513から引き渡された印刷データを印刷可能な最小単位であるドット単位のデータに展開し、この展開したドットデータを用紙等の印刷媒体に印刷する機能を有する。
【0024】
また、印刷実行制御手段としての印刷ジョブ管理部515は、ホスト装置2,3から印刷指示を受信したときに、他のプリンタ4,6の使用電力と、自プリンタ5の印刷動作に必要な使用電力との合計を予測し、その予測値がブレーカ8の定格電流に基づいて設定される許容値である最大使用可能電力を超えないように、自プリンタ5の印刷動作のタイミングを制御する機能を有する。以後、この印刷タイミング制御機能のことを、その動作形態から便宜上「プリントタイムシェアリング」と呼ぶことにする。
【0025】
記憶手段52は、例えば、不揮発性および揮発性の半導体メモリによって構成される。不揮発性の半導体メモリ内には、設定情報記憶部521と装置登録部522とが備えられ、設定情報記憶部521には、ユーザにより設定入力された、プリントタイムシェアリング動作の要否、規定枚数、最大使用可能電力などのデータが、また、装置登録部522には、情報取得部512によって取得された、他のプリンタ4,6のプリンタ名、IP(Internet Protocol)アドレスおよび(印刷動作時の)使用電力の各データが格納される。また、揮発性の半導体メモリ内に備えられるデータ記憶部523には、ネットワーク通信部511が受信した印刷データや、プリントタイムシェアリング動作の制御に必要な印刷待ちリストなどの情報が格納される。なお、装置登録部522に格納されるデータのデータ構造の一例については図7を用いて後記する。また、データ記憶部523に格納される印刷待ちリストのデータ構造の一例については図8を用いて後記する。
【0026】
UI手段53は、例えば、プリンタ5の筐体上部に備えられる操作パネル上に実装されるキースイッチ等からなる入力部530と、LCD(Liquid Crystal Display Device)等の表示部540とを備えて構成される。
【0027】
UI手段53は、プリントタイムシェアリング動作の要否を示す第1の設定情報を入力するためのユーザインタフェース手段として機能し、情報取得部512は、ユーザによって設定入力された第1の設定情報を設定情報記憶部521に格納する。また、印刷ジョブ管理部515は、この第1の設定情報がオン、つまり、プリントタイムシェアリング動作要に設定された場合、他のプリンタ4,6の使用電力と自プリンタ5の印刷動作に必要な使用電力との合計が、設定情報記憶部521に登録されている最大使用可能電力を超えないように、自プリンタ5の印刷動作の実行タイミングの制御を行う。
【0028】
また、UI手段53は、印刷動作の処理単位となる規定枚数を示す第2の設定情報を入力するためのユーザインタフェース手段としても機能する。ユーザによって設定入力された第2の設定情報は、情報取得部512によって設定情報記憶部521に格納される。また、印刷ジョブ管理部515は、プリントタイムシェアリング動作時において、例えば、複数の印刷指示が複数のプリンタ4,5,6に送信されたものの、使用電力の制限によって、これらのプリンタ4,5,6での印刷動作をすべて同時には実行できない場合、この規定枚数を単位として最大使用可能電力の制限の範囲内で順番に印刷動作を行う。このとき、例えばプリンタ5は、規定枚数分の印刷が終了したら自身は印刷を一時中断して印刷待ち状態に入り、印刷待ち状態にある別のプリンタ(プリンタ4または6)に印刷を実行させる。このように、印刷指示を受信したプリンタ4,5,6は、それぞれの印刷データを規定枚数を単位として分割し、分割した印刷データを順番に印刷していくことで、ブレーカ8を落とすことなくプリントタイムシェアリング動作を実行する。
【0029】
また、UI手段53は、最大使用可能電力を示す第3の設定情報をを入力するためのユーザインタフェース手段としても機能する。ユーザによって設定入力された第3の設定情報は、情報取得部512によって設定情報記憶部521に格納される。また、印刷ジョブ管理部515は、プリントタイムシェアリング動作時には、この最大使用可能電力を基準として自プリンタ5の印刷動作の抑制もしくは許可を行う。なお、プリンタ4,5,6と同じ電源供給ライン7から電力の供給を受けている他の装置がある場合には、ブレーカ8の定格電流とそれら他の装置の総使用電力とを勘案して、この最大使用可能電力を決定するのが好ましい。
【0030】
図3は、UI手段53としてプリンタ5に備えられる操作パネルの一例を示す外観図である。図3に示すように、操作パネル53aは、入力部530として、メニューの操作に用いる「+」キー531、戻るキー532、選択キー533および「−」キー534の4つのキーに加え、オンラインキー535とキャンセルキー536とを備え、また、表示部540として、電源ランプ541、点検ランプ542およびLCD543を備えている。
【0031】
電源ランプ541は、プリンタ5が電源ONの状態であれば点灯し、電源OFFの状態であれば消灯する。点検ランプ542は、プリンタ5に何らかの障害が発生した場合に点灯する。ここで、障害とは、例えば、用紙無し、トナー無し、カバーが開いている状態、用紙ジャム発生等、印刷動作に支障が生じるものをいう。LCD543は、プリンタ5に対する入力情報、各種設定値、装置の状態などを文字列や図形などで表示する液晶表示装置である。
【0032】
プリンタ5が電源ONの状態で、ユーザが「+」キー531を押下すると、LCD543にはメニューの先頭の項目が表示される。メニュー表示後、更に「+」キー531を押下すると、LCD543には順番に次の項目が表示される。すなわち、「+」キー531が押下されるごとに更に先の項目へと進み、選択キー533を押下するとその項目が選択されてLCD543にはその項目の詳細または1つ下位のメニュー項目が表示される。
【0033】
LCD543に項目の詳細が表示されているときには、「+」キー531または「−」キー534を押下することによって設定値を選択したり増減することができ、選択キー533を押下すると設定値が取り込まれる。
【0034】
戻るキー532は、メニュー中の1つ上位のカテゴリに戻る際に押下するキースイッチである。連続して押下すると最終的には待機画面に戻る。電源ON時に「−」キー534押下すると、「+」キー531の場合と同様に、LCD543はメニュー表示に遷移し、メニューの先頭の項目が表示されるが、更に「−」キー534を押下したときには、「+」キー531の場合とは逆の順でメニュー表示が進行する。
これらのメニューや設定画面の表示制御は、情報取得部512によって行われる。
【0035】
また、オンラインキー535は、プリンタ5をオンライン状態からオフライン状態に切り替え、あるいはオフライン状態からオンライン状態に切り替えるためのキースイッチである。キャンセルキー536は、印刷をキャンセルするためのキースイッチである。印刷データを受信中にキャンセルキー536が押下されると、その印刷データを受信し終わったところで印刷データが削除される。印刷中にキャンセルキー536が押下された場合は、印刷中のページ以降のページの文書は印刷されない。
【0036】
図4は、操作パネル53aのLCD543に表示される「プリントタイムシェアリング設定画面」の表示例を示す図である。ユーザは、前記のメニュー操作によって図4に示すようなプリントタイムシェアリング設定画面543aをLCD543に表示させたのち、「+」キー531または「−」キー534を押下することでプリントタイムシェアリング設定をオンまたはオフに切り換え、選択キー533を押下することによってその設定を確定する。それにより、ユーザが設定したプリントタイムシェアリング設定の値(第1の設定情報)が情報取得部512へ引き渡され、設定情報記憶部521に格納される。
【0037】
図5は、操作パネル53aのLCD543に表示される「規定枚数設定画面」の表示例を示す図である。ユーザは、前記のメニュー操作によって図5に示すような規定枚数設定画面543bをLCD543に表示させたのち、「+」キー531または「−」キー534を押下することで規定枚数の数値を増減させて任意の値に設定し、選択キー533を押下することによってその値を確定する。それにより、ユーザが設定した規定枚数の数値(第2の設定情報)が情報取得部512へ引き渡され、設定情報記憶部521に格納される。
【0038】
図6は、操作パネル53aのLCD543に表示される「最大使用可能電力設定画面」の表示例を示す図である。ユーザは、前記のメニュー操作によって図6に示すような最大使用可能電力設定画面543cをLCD543に表示させたのち、「+」キー531と「−」キー534とによって最大使用可能電力の数値(ワット数)を設定し、選択キー533によってその値を確定する。それにより、ユーザが設定した最大使用可能電力の数値(第3の設定情報)は、同様にして設定情報記憶部521に格納される。
【0039】
図7は、記憶手段52の装置登録部522に格納される装置情報テーブルのデータ構造例を示す図である。図7に示すように、装置情報テーブル522aには、LAN1に接続され、かつプリンタ5と同じ電源供給ライン7から電力が供給される他のすべてのプリンタ4,6,…のそれぞれについて、プリンタ名と、IPアドレスと、(印刷動作時の)使用電力との各データが格納される。これらのデータは、プリンタ5の起動時に、情報取得部512によって各プリンタ4,6,…からLAN1を介して取得される。
【0040】
図8は、記憶手段52のデータ記憶部523に格納される印刷待ちリストのデータ構造例を示す図である。図8に示すように、印刷待ちリスト523aには、LAN1に接続され、かつプリンタ5と同じ電源供給ライン7から電力が供給されているプリンタ5を含むすべてのプリンタ4,5,6,…の中で、印刷が未完了のデータ(未印刷データ)を保有していて印刷待ち状態となっているプリンタ(この例ではプリンタ4,5)のプリンタ名と、IPアドレスと、優先順位とが格納されている。なお、印刷は、優先順位が「1」となっているプリンタ(この例では印刷装置4)から順に行われ、そのプリンタの印刷が開始されるとそのプリンタは印刷待ちリスト523aから削除され、残りのプリンタの優先順位が1ずつ繰り上げられる。また、新たに印刷指示を受信したプリンタは、印刷待ちリスト523aの最後尾に、最後のプリンタの次の優先順位が付されて追加される。
【0041】
次に、図9〜図11に示すフローチャートを参照しながら第一実施形態の印刷システムS1を構成する印刷装置の動作について、プリンタ5を例に詳細に説明する。なお、設定情報記憶部521には、UI手段53を用いて設定入力された前記第1から第3の設定情報がすでに格納されているものとする。
【0042】
図9は、第一実施形態の印刷システムS1を構成する印刷装置の基本動作を示すフローチャートである。図9において、ステップS101からステップS109までの各処理は、印刷装置の電源投入時に実行される。例えば、ユーザによりプリンタ5の電源が投入されると(ステップS101)、情報取得部512は、まず、設定情報記憶部521に格納されているプリントタイムシェアリング設定(以下、「タイムシェアリング設定」と略記。)の値を読み出し、その値がオンか否かを判定する(ステップS102)。ここで、タイムシェアリング設定がオンでなかった場合(ステップS102“No”)、情報取得部512は、後記するステップS110へ処理を進める。
【0043】
また、タイムシェアリング設定がオンであった場合(ステップS102“Yes”)、情報取得部512は、ステップS103からステップS106までの各処理を実行することによって、LAN1に接続されている他のプリンタの情報を入手する。
【0044】
すなわち、情報取得部512は、LAN1上にブロードキャスト信号を送出するブロードキャスト送信をネットワーク通信部511に実行させ(ステップS103)、他のプリンタから応答されるIPアドレスを受信させる(ステップS104)。続いて、情報取得部512は、ネットワーク通信部511に、IPアドレスを応答したプリンタ4,6に対して装置情報を問い合わせるメッセージを送信させ、プリンタ4,6から応答される装置情報を受信させる(ステップS105)。続いて、情報取得部512は、ネットワーク通信部511から引き渡された装置情報からなる装置情報テーブル522a(図7参照)を作成して、装置登録部522に格納する(ステップS106)。
【0045】
これによって、LAN1に接続されていて電源ONとなっているすべての他のプリンタの装置情報が装置情報テーブル522aに登録されるが、プリンタ4,5,6とは異なる電源系統に接続されているプリンタや電力制限機能をもたないプリンタがあった場合には、ユーザは、操作パネル53aを操作することによって装置情報テーブル522aに登録されたプリンタの一覧をLCD543に表示させ、それらのプリンタを装置情報テーブル522aから削除しておく。また、電力制限機能を有するプリンタ4,6であってもタイムシェアリング設定がオフとなっている場合には、同様に装置情報テーブル522aから削除して、その使用電力を最大使用可能電力から差し引いておく。
【0046】
続いて、情報取得部512は、ネットワーク通信部511に、プリンタ4,6の双方が同一のデータを保持している印刷待ちリスト(図8参照)、および、印刷動作中のプリンタの使用電力の総和を表す使用中電力のデータを、いずれか一方のプリンタ、例えばプリンタ4、から受信させ(ステップS107)、受信させた印刷待ちリストおよび使用中電力のデータをデータ記憶部523に格納する(ステップS108)。次に、情報取得部512は、印刷ジョブ管理部515に制御を移し、印刷ジョブ管理部515がメッセージ受信処理を起動する(ステップS109)。このメッセージ受信処理の詳細については図11のフローチャートを参照して後記する。
【0047】
次に、印刷ジョブ管理部515が実行する図9のステップS110からS114までの各処理について説明する。
プリンタ5の電源がOFFされた場合(ステップS110“Yes”)、印刷ジョブ管理部515は、メッセージ受信処理を停止し(ステップS114)、処理を終了する。また、電源がOFFされていなければ(ステップS110“No”)、印刷ジョブ管理部515は、ネットワーク通信部511がホスト装置2,3から印刷指示を受信したか否かを判定する(ステップS111)。
【0048】
ホスト装置2,3から印刷指示を受信した場合(ステップS111“Yes”)、印刷ジョブ管理部515は、ネットワーク通信部511にホスト装置2,3から印刷データを受信させ(ステップS112)、受信した印刷データをデータ記憶部523に格納させたのち、図10に詳細を示す印刷処理サブルーチンを実行する(ステップS113)。なお、印刷指示を受信していない場合(ステップS111“No”)、印刷ジョブ管理部515は、ステップS110に処理を戻し、印刷指示が受信されるまでステップS110とS111とを繰り返す。
【0049】
次に、印刷ジョブ管理部515が実行する印刷処理サブルーチンの処理の詳細を図10に示したフローチャートに沿って説明する。
図10に示すように、印刷ジョブ管理部515は、まず始めに、設定情報記憶部521に格納されているタイムシェアリング設定の値がオンか否かを判定し(ステップS121)、値がオンでなければ(ステップS121“No”)、通常印刷を実行したのち(ステップS134)メインルーチンに処理を戻す。
【0050】
一方、タイムシェアリング設定の値がオンであれば(ステップS121“Yes”)、印刷ジョブ管理部515は、不揮発性メモリなどから読み出した自機の印刷動作時の使用電力が、設定情報記憶部521に格納されている最大使用可能電力(以下、「許容値」と略記。)以下か否かを判定し(ステップS122)、許容値以下でなければ(ステップS122“No”)、ネットワーク通信部511に印刷指示元のホスト装置(ホスト装置2または3)へ電力不足エラー通知メッセージを送信させたのち(ステップS133)メインルーチンに処理を戻す。
【0051】
また、自機の使用電力が許容値以下であれば(ステップS122“Yes”)、印刷ジョブ管理部515は、ネットワーク通信部511に他のプリンタ4,6へ印刷待ち通知メッセージを送信させるとともに(ステップS123)、印刷待ちリスト523aの最後に自機(プリンタ5)のデータを追加登録し(ステップS124)、自機の印刷順番が来るのを待つ(ステップS125“No”)。
【0052】
後記するように、この間に、印刷待ちリスト523aに登録されている他のプリンタ(プリンタ4または6)の印刷が開始されると、そのプリンタが印刷待ちリスト523aから順次削除され優先順位の更新が行われる。その結果、自機の優先順位が「1」となって自機の印刷順番が来たら(ステップS125“Yes”)、印刷ジョブ管理部515は、次に、自機が印刷を開始したときの予想電力を計算する(ステップS126)。この予想電力は、データ記憶部523に格納されている使用中電力と不揮発性メモリなどから読み出した自機の使用電力とを合計することによって求められる。そして、印刷ジョブ管理部515は、計算した予想電力は許容値以下か否かを判定し(ステップS127)、許容値以下でなければ(ステップS127“No”)、ステップS126に処理を戻し、印刷中の他のプリンタ(プリンタ4または6)の印刷が終了して使用中電力が減り、予想電力が許容値以下になるまでステップ126とS127とを繰り返す。
【0053】
一方、予想電力が許容値以下の場合(ステップS127“Yes”)、印刷ジョブ管理部515は、ネットワーク通信部511に他のプリンタ4,6へ印刷開始通知メッセージを送信させるとともに(ステップS128)、印刷待ちリスト523aから自機のデータを削除し(ステップS129)、印刷データ解析展開部513に規定枚数分の印刷を行う分割印刷を実行するよう指示し、印刷データ解析展開部513は、データ記憶部523に格納されている未印刷データの先頭から規定枚数分の印刷データを印刷エンジン部514に引き渡して分割印刷を実行させる(ステップS130)。
【0054】
分割印刷の実行が完了すると、印刷ジョブ管理部515は、ネットワーク通信部511に、他のプリンタ4,6へ印刷完了通知メッセージを送信させ(ステップS131)、まだ残ページがあれば(ステップS132“Yes”)、ステップS123に処理を戻して前記の処理を繰り返す。そして、残ページがなくなったら(ステップS132“No”)メインルーチンに処理を戻す。
【0055】
続いて、図11を参照しながらメッセージ受信処理の詳細について説明する。図11において、印刷ジョブ管理部515は、ネットワーク通信部511がLAN1を介してメッセージを受信するのを待ち(ステップS141“No”)、メッセージを受信すると(ステップS141“Yes”)、受信したメッセージの種類を判定する(ステップS142)。
【0056】
受信したメッセージの種類が印刷待ち通知の場合(ステップS142“印刷待ち通知”)、印刷ジョブ管理部515は、そのメッセージの送信元のプリンタ(プリンタ4または6)を印刷待ちリスト523aに追加登録したのち(ステッブS143)、ステップS141に処理を戻して次のメッセージを受信するのを待つ。また、受信したメッセージの種類が印刷開始通知の場合(ステップS142“印刷開始通知”)、印刷ジョブ管理部515は、そのメッセージの送信元のプリンタ(プリンタ4または6)を印刷待ちリスト523aから削除するとともに(ステッブS144)、装置情報テーブル522aから読み出した送信元のプリンタ(プリンタ4または6)の使用電力を、データ記憶部523に格納されている使用中電力に加算した結果の値を新たな使用中電力として上書きして格納し(ステップS145)、ステップS141に処理を戻す。また、受信したメッセージの種類が印刷完了通知の場合(ステップS142“印刷完了通知”)、印刷ジョブ管理部515は、同様にして送信元のプリンタ(プリンタ4または6)の使用電力を使用中電力から減算した結果を新たな使用中電力として上書きして格納し(ステップS146)、ステップS141に処理を戻す。
【0057】
このような、メッセージ受信処理を実行することによって、各プリンタ4,5,6は、それぞれ同一内容の印刷待ちリストを保持するとともに、印刷動作中の他のプリンタの使用電力の合計値である使用中電力を把握することができる。
【0058】
続いて、第一実施形態の印刷システムS1におけるプリントタイムシェアリングの動作例について説明する。図12は、それぞれが電力制限機能を有する3台のプリンタ4,5,6が同一のネットワークと同一の電源系統に接続されており、その電源系統の使用電力の制限によってプリンタは同時に2台までしか印刷動作を実行できないと仮定した場合の、プリントタイムシェアリング動作の様子を示したタイムチャートである。
【0059】
図12において、横軸は時刻の経過を表しており、それぞれのプリンタの状態の推移が帯状のグラフによって示されている。また、グラフ中の、破線部はアイドル状態を、斜線を施した部分は分割印刷を実行している状態を、中間の空白部分は印刷待ちの状態をそれぞれ表している。さらに、斜線部内に記されている記号「Pxy」は、それがプリンタxにおけるy番目の分割印刷の実行であることを示すものである。
【0060】
この例では、3台のプリンタ4,5,6がそれぞれ時刻t1,t2,t5に印刷指示を受信している。時刻t1から時刻t4までの間は、同時に印刷指示を受信しているプリンタが2台以下であるので、プリンタ4,5とも印刷待ち状態に入ることなく分割印刷の動作を開始している(P41,P51,P42,P52)。次に、時刻t5においてプリンタ6が印刷指示を受信したときには、印刷待ち状態のプリンタが存在しないので、プリンタ6は、自機が印刷を開始したときの予想電力を計算し、その値が許容値を超えるため、自機を印刷待ちリストに登録して印刷待ち状態に入り、他のプリンタの印刷動作が完了して使用中電力が減るのを待つ。時刻t6においてプリンタ4の分割印刷P42が完了すると、プリンタ4は、印刷待ちリストにプリンタ6が登録されているので、自機を印刷待ちリストに登録して印刷待ち状態に入り、その結果、プリンタ4の分だけ使用中電力が減るので、プリンタ6の印刷待ち状態が解除され、プリンタ6が分割印刷の動作を開始する(P61)。
【0061】
次に、時刻t7においてプリンタ5の分割印刷が完了すると、今度はプリンタ5が待ち状態に入ってプリンタ4が分割印刷を開始し(P43)、以後同様にして、3台のプリンタ4,5,6が交互に印刷待ち状態と分割印刷の状態を繰り返しながら印刷が進行していく(P53,P62,P44,P54)。そして、時刻t12においてプリンタ4の印刷がすべて完了すると、以後は、プリンタ5とプリンタ6との2台は印刷待ち状態に入ることなく分割印刷を連続して開始し(P63,P55,P64)、時刻t16においてすべての印刷を完了する。
【0062】
以上説明したように、第一実施形態の印刷システムによれば、それを構成するそれぞれの印刷装置が電力制限機能を有し、それらが互いに交信しながら協調して印刷動作のタイミングを制御することによって、総使用電力が許容値を超えないように動作するので、同時に複数の印刷装置に印刷指示が送信された場合においても、ブレーカを落とすことなしに印刷を実行することができる。
【0063】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態では、本発明の印刷制御装置(プリントサーバ)によって電力制限機能を実現する印刷システムについて説明する。
図13は、第二実施形態の印刷システムの例を示す接続構成図である。図13に示すように、印刷システムS2には、1以上のホスト装置20,30と、印刷装置としての1以上のプリンタ40,50,60と、ホスト装置20,30から送信された印刷指示を受信してプリンタ40,50,60に印刷データを中継する本発明の印刷制御装置であるプリントサーバ90とが備えられる。前記の第一実施形態と同様に、ホスト装置20,30およびプリンタ40,50,60は、いずれも、同じLAN10と、ブレーカ80経由で電力が供給される同じ電源供給ライン70との双方に接続されている。
【0064】
ホスト装置20,30は、第一実施形態のホスト装置2,3と同様の構成を有するが、文書の印刷指示は、ホスト装置20,30から各プリンタ40,50,60に直接送信されるのではなく、すべてプリントサーバ90に送信され、各プリンタ40,50,60は、プリントサーバ90から送信される印刷データを受信して印刷動作を実行する。本システムでは、プリントサーバ90がシステム全体の総使用電力を制限する機能をもつので、プリンタ40,50,60には、電力制限機能をもたない従来の印刷装置を利用することができる。
【0065】
図14は、プリントサーバ90の構成例を示す機能ブロック図である。図14に示すように、プリントサーバ90は、制御手段91と、記憶手段92と、UI手段93とを備えて構成されている。
【0066】
制御手段91は、ネットワーク通信部911、情報取得部912、印刷データ解析部913、印刷データ生成部914、印刷ジョブ管理部915の各機能を備える。これら各機能は、プリントサーバ90に内蔵される不図示のCPUが、不図示のROMやハードディスク装置などに記憶されている所定のプログラムを、不図示のRAMにロードして実行することによって実現される。
【0067】
ネットワーク通信部911は、LAN10を介してホスト装置20,30およびプリンタ40,50,60との通信を行う機能を有する。ネットワーク通信部911は、ホスト装置20,30から送信される印刷データを受信してデータ記憶部923に格納し、また、情報取得部912や印刷ジョブ管理部915からの指示にしたがって、プリンタ40,50,60へ印刷データを送信し、また各種メッセージの送受信を行う。
【0068】
情報取得手段としての情報取得部912は、UI手段93を通じ、また、ネットワーク通信部911を介してプリンタ40,50,60から情報を取得して設定情報記憶部921、装置登録部922またはデータ記憶部923に格納する機能を有する。
【0069】
印刷データ解析部913は、印刷ジョブ管理部915の指示にしたがってデータ記憶部923に格納された印刷データを解析して、印刷枚数をカウントする機能を有する。また、印刷データ生成部914は、印刷ジョブ管理部915の指示にしたがって、データ記憶部923に格納された印刷データから指定された枚数分の分割印刷データを生成して、ネットワーク通信部911にプリンタ40,50,60へ送信させる機能を有する。
【0070】
また、印刷指示制御手段としての印刷ジョブ管理部915は、ホスト装置20,30から印刷指示を受信したときに、印刷先のプリンタに印刷動作を開始させた場合のプリンタ40,50,60の使用電力の合計を予測し、その予測値がブレーカ80の定格電流に基づいて設定される許容値である最大使用可能電力を超えないように、プリンタ40,50,60への印刷データの送信タイミングを制御する機能を有する。
【0071】
記憶手段92とUI手段93とは、それぞれ第一実施形態のプリンタ5の記憶手段52とUI手段53とに対応し(図2参照)、これらと同様の構成および機能を有するため、以下、重複する部分の説明を省略し、第一実施形態との違いについて説明する。
【0072】
第一実施形態においては、プリンタ5の装置登録部522には、他のプリンタ4,6から取得された使用電力が格納されていたが、第二実施形態においては、プリンタ40,50,60は電力制限機能をもたないため、装置登録部922に格納される各プリンタの使用電力は、UI手段93などを用いて別途設定入力しておく必要がある。
【0073】
また、第一実施形態においては、プリンタ5の装置登録部522には、他のプリンタ4,6の情報だけが登録されていたが、第二実施形態においては、稼動中のすべてのプリンタ40,50,60の情報が装置登録部922に登録される。
【0074】
また、第一実施形態においては、プリンタ5のデータ記憶部523に格納される印刷データは、プリンタ5で印刷すべきもののみであったが、第二実施形態のデータ記憶部923には、プリンタ40,50,60で印刷すべき印刷データが混在した形で格納される。
【0075】
図15は、印刷システムS2に使用される電力制限機能をもたないプリンタ50の内部構成例を示すブロック図である。以下、プリンタ50についてのみ説明するが、プリンタ40,60も同様な構成をもつ。図15に示すように、プリンタ50は、入力部501と、表示部502と、設定情報記憶部503と、データ記憶部504と、ネットワーク通信部505と、印刷データ解析展開部506と、印刷エンジン部507とを備えて構成される。
【0076】
図15に示したプリンタ50は、図2に示した第一実施形態のプリンタ5から情報取得部512と印刷ジョブ管理部515と装置登録部522とを取り除いた構成となっている。また、設定情報記憶部503には、前記の第1から第3の設定情報は格納されない。その他の構成要素はプリンタ5と同様であるので、重複する部分については説明を省略する。
プリンタ50は、プリントサーバ90から印刷データを受信すると直ちに印刷動作を実行し、印刷が完了したらその旨をプリントサーバ90に報告する機能を有する。
【0077】
図16は、記憶手段92のデータ記憶部923に格納される印刷待ちリストのデータ構造例を示す図である。
図16に示すように、印刷待ちリスト923aには、LAN10に接続され、電源供給ライン70から電力が供給されているすべてのプリンタ40,50,60,…の中で、プリントサーバ90が未印刷データを保有しており、かつ、印刷待ち状態となっているプリンタ(この例ではプリンタ40,50)のプリンタ名と、IPアドレスと、優先順位とが格納されている。なお、印刷は、優先順位が「1」のプリンタから順に行われ、そのプリンタの印刷が開始されるとそのプリンタは印刷待ちリスト923aから削除され、残りのプリンタの優先順位が1ずつ繰り上げられる。また、新たにプリントサーバ90が印刷指示を受信したプリンタは、印刷待ちリスト923aの最後尾に、最後のプリンタの次の優先順位が付されて追加される。
この印刷待ちリスト923aは、プリントサーバ90の印刷ジョブ管理部915が印刷データの送信順序を決定するために利用される。
【0078】
次に、図17および図18に示すフローチャートを参照しながら第二実施形態の印刷システムS2における印刷の動作について詳細に説明する。なお、プリントサーバ90の設定情報記憶部921には、UI手段93を用いて入力された前記第1から第3の設定情報がすでに格納されており、タイムシェアリング設定はオンに設定されているものとする。
【0079】
図17は、第二実施形態の印刷システムS2を構成するプリントサーバ90のプリントタイムシェアリング動作時の処理を示すフローチャートである。図17において、ステップS201からステップS205までの各処理は、プリントサーバ90の電源投入時に実行される。
【0080】
プリントサーバ90の電源が投入されると、まず始めに、情報取得部912は、ステップS201からステップS203までの各処理を実行することによって、LAN10に接続されているプリンタの情報を入手する。
【0081】
すなわち、情報取得部912は、LAN10上にブロードキャスト信号を送出するブロードキャスト送信をネットワーク通信部911に実行させ(ステップS201)、プリンタ40,50,60,…から応答されるIPアドレスを受信させる(ステップS202)。続いて、情報取得部912は、ネットワーク通信部911に、IPアドレスを応答したプリンタ40,50,60,…に対して装置情報を問い合わせるメッセージを送信させ、プリンタ40,50,60から応答される装置情報を受信させる(ステップS203)。続いて、情報取得部912は、ネットワーク通信部911から引き渡された装置情報と、UI手段93などを用いて別途設定入力された各プリンタの使用電力とから、装置情報テーブル(図7の522aと同等の内容)を作成して、装置登録部922に格納する(ステップS204)。
【0082】
これによって、LAN10に接続されていて電源ONとなっているすべてのプリンタの装置情報が装置登録部922に格納されるが、第一実施形態の場合と同様に、プリンタ40,50,60とは異なる電源系統に接続されているプリンタは装置情報テーブルから削除しておく。
【0083】
次に、情報取得部912は、印刷ジョブ管理部915に制御を移し、印刷ジョブ管理部915は、データ記憶部923に格納されている印刷待ちリスト923aと使用中電力とを初期化する(ステップS205)。
【0084】
次に、印刷ジョブ管理部915が実行する図17のステップS206からS209までの各処理について説明する。
プリントサーバ90の電源がOFFされた場合(ステップS206“Yes”)、印刷ジョブ管理部915は処理を終了する。また、電源がOFFされていなければ(ステップS206“No”)、印刷ジョブ管理部915は、ネットワーク通信部911がホスト装置20,30から印刷指示を受信したか否かを判定する(ステップS207)。
【0085】
ホスト装置20,30から印刷指示を受信した場合(ステップS207“Yes”)、印刷ジョブ管理部915は、ネットワーク通信部911にホスト装置20,30から印刷データを受信させ(ステップS208)、受信した印刷データをデータ記憶部923に格納させたのち、図18に詳細を示す印刷タスクを起動して(ステップS209)、ステップS206に処理を戻す。なお、印刷指示を受信していない場合(ステップS207“No”)、印刷ジョブ管理部915は、ステップS206に処理を戻し、印刷指示が受信されるまでステップS206とS207とを繰り返す。それによって、プリントサーバ90が印刷指示を受信する都度、指示された印刷先のプリンタに対応した印刷タスクが起動される。なお、続けて印刷指示を受信した場合には、同時に複数の印刷タスクが生成されることになるが、1台のプリンタについて同時に複数の印刷タスクが生成された場合には、最も先に生成されたタスクだけを実行するように制御する必要がある。
【0086】
次に、図17のステップS209で起動される印刷タスクの処理の詳細を図18に示したフローチャートに沿って説明する。
図18に示す印刷タスクにおいては、印刷ジョブ管理部915は、まず始めに、装置登録部922から読み出した印刷先装置(プリンタ40〜60のいずれか)の使用電力が、設定情報記憶部921に格納されている許容値以下か否かを判定し(ステップS221)、許容値以下でなければ(ステップS221“No”)、ネットワーク通信部911に印刷指示元のホスト装置(ホスト装置20または30)へ電力不足エラー通知メッセージを送信させたのち(ステップS232)、処理を終了する。
【0087】
また、印刷先装置の使用電力が許容値以下であれば(ステップS221“Yes”)、印刷ジョブ管理部915は、印刷待ちリスト923aの最後に当該印刷先装置のデータを追加登録し(ステップS222)、自分の印刷順番が来るのを待つ(ステップS223“No”)。
【0088】
この間に、印刷待ちリスト923aに登録されている他のプリンタの印刷が開始されると、その印刷タスクによってそのプリンタが印刷待ちリスト923aから順次削除される。その結果、自分の優先順位が「1」となって自分の印刷順番が来たら(ステップS223“Yes”)、印刷ジョブ管理部915は、次に、自分の印刷先装置が印刷を開始したときの予想電力を計算する(ステップS224)。この予想電力は、データ記憶部523に格納されている使用中電力と、装置登録部922から読み出した自分の印刷先装置の使用電力とを合計することによって求められる。そして、印刷ジョブ管理部915は、計算した予想電力は許容値以下か否かを判定し(ステップS225)、許容値以下でなければ(ステップS225“No”)、ステップS224に処理を戻し、印刷中の他のプリンタの印刷が終了して使用中電力が減り、予想電力が許容値以下になるまでステップS224とS225とを繰り返す。
【0089】
一方、予想電力が許容値以下の場合(ステップS225“Yes”)、印刷ジョブ管理部915は、自分の印刷先装置の使用電力を使用中電力に加算して(ステップS226)、印刷待ちリスト923aから自分の印刷先装置のデータを削除し(ステップS227)、印刷データ生成部914に規定枚数分の印刷データを生成して送信するよう指示し(ステップS228)、印刷が完了するのを待つ(ステップS229“No”)。そして、印刷データ生成部914は、データ記憶部923に格納されている当該印刷先装置の未印刷データの先頭から規定枚数分の印刷データを抽出して生成した分割印刷データをネットワーク通信部911に引き渡して当該印刷先装置へ送信させる。
【0090】
印刷先装置(プリンタ40〜60のいずれか)は、この分割印刷データを受信すると直ちに印刷を開始し、印刷が終了すると印刷完了通知メッセージを送信してくるので、印刷ジョブ管理部915は、ネットワーク通信部911から印刷完了通知メッセージを受信した旨の連絡を受けると(ステップS229“Yes”)、当該印刷先装置の使用電力を使用中電力から減算し(ステップS230)、当該印刷先装置にて印刷すべき残ページがあれば(ステップS231“Yes”)、ステップS222に処理を戻して前記の処理を繰り返す。そして、残ページがなくなったら(ステップS231“No”)、処理を終了する。
【0091】
以上説明したように、第二実施形態の印刷システムにおいては、印刷制御装置(プリントサーバ)が、すべての印刷装置の印刷動作のタイミングを一括して管理するので、電力制限機能をもたない印刷装置を利用する場合であっても、第一実施形態の印刷システムと同様なプリントタイムシェアリング動作を実現することができる。
【符号の説明】
【0092】
1,10 LAN(ネットワーク)
2,3,20,30 ホスト装置
4,5,6,40,50,60 プリンタ(印刷装置)
7,70 電源供給ライン
8,80 ブレーカ
51,91 制御手段
52,92 記憶手段
53,93 UI手段(ユーザインタフェース手段)
53a 操作パネル
90 プリントサーバ(印刷制御装置)
511,911 ネットワーク通信部
512,912 情報取得部(情報取得手段)
513 印刷データ解析展開部
514 印刷エンジン部
515 印刷ジョブ管理部(印刷実行制御手段)
521,921 設定情報記憶部
522,922 装置登録部
522a 装置情報テーブル
523,923 データ記憶部
523a,923a 印刷待ちリスト
530,930 入力部
540,940 表示部
913 印刷データ解析部
914 印刷データ生成部
915 印刷ジョブ管理部(印刷指示制御手段)
S1,S2 印刷システム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続され、1以上のホスト装置からの印刷指示にしたがって印刷データを受信して印刷を実行する印刷装置であって、
自装置と同じ電源系統に接続される1以上の他の印刷装置の印刷動作時の使用電力を記憶する記憶手段と、
前記他の印刷装置から印刷動作の開始と終了とを示すメッセージを受信することによって印刷動作中の印刷装置を把握し、前記ホスト装置から印刷指示を受信したとき、前記記憶手段に記憶されている前記使用電力を参照して印刷動作中の他の印刷装置の使用電力の合計を求め、その値と自装置の印刷動作時の使用電力との和として求められる予想電力が、所定の許容値を超える場合は自装置の印刷動作の実行を抑制し、前記所定の許容値以下の場合に自装置の印刷動作の実行を許可する印刷実行制御手段と
を備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
自装置の起動時に前記ネットワークを介して前記他の印刷装置から前記印刷動作時の使用電力を取得する情報取得手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記所定の許容値は、
前記電源系統に設置されているブレーカの定格電流に基づいて設定される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷実行制御手段は、
受信した前記印刷データを印刷したときの枚数が所定の印刷枚数を超える場合は、前記予想電力に基づく自装置の印刷動作の実行の抑制または許可を前記所定の印刷枚数を単位として行う
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記所定の許容値および前記所定の印刷枚数のうちの少なくとも1つをユーザが設定入力するためのユーザインタフェース手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
単一の電源系統に接続される請求項1ないし5のいずれかに記載の1以上の印刷装置と、
前記印刷装置に対して印刷指示を送信する1以上のホスト装置とが、
ネットワーク経由で接続されることを特徴とする印刷システム。
【請求項7】
ネットワークに接続され、1以上のホスト装置からの印刷指示にしたがって印刷データを受信し、同じ電源系統に接続される1以上の印刷装置に前記印刷データを送信して印刷を実行させる印刷制御装置であって、
前記各印刷装置の印刷動作時の使用電力を記憶する記憶手段と、
前記ホスト装置から前記各印刷装置に対する印刷指示を受信したとき、前記記憶手段に記憶されている前記使用電力を参照して、同時に印刷動作中となる印刷装置の使用電力の合計が所定の許容値を超えることがないように、前記各印刷装置への印刷データの送信タイミングを調整する印刷指示制御手段と
を備えたことを特徴とする印刷制御装置。
【請求項8】
前記印刷指示制御手段は、
受信した前記印刷データを印刷したときの枚数が所定の印刷枚数を超える場合は、前記送信タイミングの調整を前記所定の印刷枚数を単位として行う
ことを特徴とする請求項7に記載の印刷制御装置。
【請求項9】
前記所定の許容値は、
前記電源系統に設置されているブレーカの定格電流に基づいて設定される
ことを特徴とする請求項7または8に記載の印刷制御装置。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれかに記載の印刷制御装置と、
単一の電源系統に接続され、前記印刷制御装置から送信される印刷データを受信して印刷を実行する1以上の印刷装置と、
前記印刷制御装置に対して前記印刷装置への印刷指示を行う1以上のホスト装置とが、
ネットワーク経由で接続されることを特徴とする印刷システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−25536(P2011−25536A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173802(P2009−173802)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(594202361)株式会社沖データシステムズ (259)
【Fターム(参考)】