説明

原子レベルで尖ったイリジウムチップ

【課題】原子レベルで尖ったイリジウムチップを作成する方法を提供する。
【解決手段】本方法は、イリジウムワイヤを針形状にテーパ状にする工程と、酸素雰囲気中で、イリジウム針を加熱する工程とからなる。また、角錐構造を有するイリジウム針を提供し、角錐構造は少数の原子により形成される尖端を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丈夫で、かつ、原子レベルで尖ったイリジウムチップ、特に、単一の原子レベルで尖ったイリジウムチップを作成する、簡単で信頼性の高い方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非常に鋭い(ナノメーターの鋭い、原子レベルで尖った)チップの製造は、干渉性(coherent)の明るい粒子ビーム(電子またはイオンビーム)を生成し、走査ビーム/プローブ顕微鏡から貴重な情報を得るための最も重要な前提条件である。粒子ビームのスポットサイズは、チップの鋭さに基づき、顕微鏡の位置分解能(lateral resolution)を規定する。よって、理想的な粒子ビームは、最小のエネルギーの広がりと開口角度である、単一の原子チップ(single-atom tip:SAT)からもたらされるものである。
【0003】
原子レベルで尖ったチップ(単一原子または15原子以下からなるチップ)は、顕微鏡の解像度を大幅に改善するのに非常に望ましいが、作成が難しい。単一の原子チップを作成する公知の方法は、一般に、特殊な装置と複雑な工程を必要とする。例えば、電界イオン顕微鏡(FIM)または電界放射顕微鏡(FEM)は元の位置でチップを監視することが不可欠であり、チップが最も尖る状態(例えば、単一の原子レベルで尖った)に達する時、チップが再び鈍くなるのを防止する工程を停止する。さらに、作成されたチップは、通常、安定しないので、操作寿命が短い。タングステンは、単一の原子チップを作成する材料として頻繁に用いられる。しかし、高磁場で、タングステンチップは、O2+、N2+、H2+等の化学的活性イオンにより腐蝕し、寿命を極端に短縮する。さらに、公知の方法により作成される非常に鋭いチップのほとんどは再生できない。
【0004】
従来、鋭いチップは、様々な研磨方法により作成されてきた。例えば、特許文献1によると、マイクロメータの鋭いチップは、電気化学研磨により達成される。チップは、半径の範囲が0.05〜50μmの半球に近い形状で(平衡チップ形状)である。別の方法は、真空で、領域補助化学エッチングを用いて、チップの軸部を整え、ナノメートルの鋭いチップを形成する(非特許文献1)。
【0005】
原子レベルで尖ったチップは、特別な装置と複雑な工程により作成されてきた。例えば、非特許文献2および3によると、イオンバック照射を用い、原子を尖端に有する突起を生成する。非特許文献4および5によると、別の方法は、領域表面融解により金属チップを加熱し、領域形成効果と相まる。上述のチップは優れた電子源と走査プローブチップであるが、このような原子レベルで尖ったチップを形成するのは偶発的なもので、信頼性がない。
【0006】
これらの欠点は、非常に鋭いチップの商用アプリケーションを妨げ、今までのところ、研究施設のみにおいて使用されてきた。よって、安定的に生産でき、再生可能な原子レベルで尖ったチップ、特に、単一の原子チップにより、簡潔で、信頼性が高く、低コスト化を実現できる方法が必要とされている。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6249965号明細書
【非特許文献1】M. Rezeq, J. Pitters, R. Wolkow, J. Chem. Phys., 124、 204716 (2006)
【非特許文献2】A. P. Janssen and J. P. Jones: J. Phys. D 4, 118 (1971)
【非特許文献3】H. W. Fink: IBM. J. Res. Dev. 30, 460(1986)
【非特許文献4】P.C. Bettler and F. M. Charbonnier: Phys. Rev. 119, 85 (1960)
【非特許文献5】V. T. Binh and N. Garcia: Ultramicroscopy 42-44, 80 (1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、原子レベルで尖ったイリジウムチップを有する針、チップを作成する方法、電界放出源と走査型プローブ顕微鏡法におけるアプリケーションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の原子レベルで尖ったイリジウムチップを作成する方法は、イリジウム棒の少なくとも一方の端をテーパ状にする工程と、酸素を含有する真空チャンバ(総ガス圧力が13.3322パスカル以下のチャンバ)等のチャンバ内で棒を加熱する工程とからなり、原子レベルで尖ったイリジウムチップを有する錐体構造がテーパ状端上に形成される。
【0010】
錐体構造は、イリジウムの単一原子チップ(Ir−SAT)を有する。イリジウム棒は単結晶210棒、または、多結晶棒(例えば、ワイヤ)である。テーパ状端は、5nm〜200nm、好ましくは10nm〜100nm、さらに好ましくは20nm〜50nmの半径を有する。
【0011】
チャンバは、1.33322×10-3〜1.33322パスカルの酸素圧、好ましくは1.33322×10-2〜1.3332210-1パスカルの酸素圧を有する。この少量の酸素が、原子レベルで尖ったイリジウムチップの製造工程を助ける。加熱工程は、10秒以下で、500〜2000℃(例えば、1000℃、1500℃)の第一温度により急速加熱し、1〜30分間、第一温度以下の第二温度で加熱する。急速加熱方法(10秒以内)が実行されて、テーパ加工工程で、棒表面に付着した不純物や汚染物質を排除し、次に低温の第二温度(例えば、300℃〜600℃)の加熱工程が実行されて、イリジウム棒をアニールし、錐体構造をテーパ状端上に形成する。両工程は、直接加熱(抵抗性効果)または間接加熱(電子線衝撃)により実行される。
【0012】
イリジウム表面は、電界蒸発により洗浄される。例えば、3KV〜30KVの幅の正電圧がイリジウムワイヤのテーパ状端に印加された時、5V/nm〜53V/nmの強い電界がテーパ状端の先端近くに形成される。この電界は、汚染物質をイオン化および蒸発させることができる。
【0013】
テーパ工程は、電気化学エッチング、機械研削またはイオンミリングにより実行される。電気化学エッチングにおいて、イリジウム棒は電解液内に配置されて、端をテーパ状にし、0.5〜20V(例えば、1〜15V、または2〜10V)の電圧、1mA〜1Aの電流を有する。電圧または電流は、DC電源またはAC電源から供給される。電解液はKCN水溶液(例えば、10〜30重量%の濃度を有する)、または融解塩、すなわち、NaNO3、NaOH、KOH、KNO3、KCl3、あるいはそれらの混合物である。機械研削は、機械切断、スラリー研磨、および他の機械加工方法を含み、イリジウムワイヤーを研磨する。イオン研磨は、イオンまたはその他の充電した粒子ビームをイリジウムワイヤに衝突させる。
【0014】
さらに本発明は、イリジウム針を提供し、表面を有するテーパ状端と、表面上に配置された錐体構造とからなる。錐体構造は、表面から離れたチップを有し、チップは少量のイリジウム原子から形成される。
【0015】
チップは単一のイリジウム原子からなる。イリジウム針は、単結晶210イリジウム棒、または多結晶棒である。表面はイリジウム結晶210面である。テーパ状端は、5〜200nm、好ましくは10nm〜100nm、より好ましくは20nm〜50nmの半径を有する。
【0016】
原子レベルで尖ったイリジウムチップを作成する方法は簡潔で、例えば、イリジウム棒を電気化学エッチングし、少量の酸素を含むチャンバ内で軽いアニールを施すという工程を必要とするだけである。本方法は信頼性があり、原子レベルで尖ったチップを有する錐体構造が常にずっと形成され、酸素が存在する場所で棒をアニールした後、イリジウム棒のテーパ状端上で再生できる。原子レベルで尖っているにもかかわらず、錐体構造のイリジウムチップは非常に高い電界(53V/nmまで)を維持する。チップは非常に安定し、化学的に無害である。これらの独特な特質は、Ir−SATを電子およびイオンビームの理想的な点放射源にする。Ir−SATは、集束イオンビーム(FIB)、走査イオン顕微鏡(SIM)、二次イオン質量分析法(SIMS)、イオン注入機、イオンビームリソグラフィ、反応性イオンエッチング(RIE)等の大部分のイオンビームシステム中の主要な構成要素として使用される。Ir−SATは完璧な点電子源であり、干渉性(coherent)の、明るい電子ビームを放射させることができる。例えば、このIr−SATは、電界放出電子顕微鏡、電子線ホログラフィー、電子エネルギー分光法、電子線回線、電子干渉法、電子ビームリソグラフィ、低エネルギーの電子顕微鏡等に用いられる。さらに、Ir−SAT自身は、走査トンネル顕微鏡(STM)等の走査(型)プローブ顕微鏡の理想的な走査型プローブチップになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、極めて強い電界下でも、卓越した熱および化学的安定性を呈する、原子レベルで尖ったイリジウムチップ(Ir−SAT)を提供する。さらに、チップは、誤って、または意図的に損傷した場合、何百回となく再生することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態では、イリジウムワイヤはエッチングされて、鋭端(テーパ状端)を有するイリジウム針を形成する。イリジウムの鋭端の表面は酸素雰囲気に暴露されてアニールされ、鋭端の表面上に、原子レベルで尖ったイリジウムチップの形成を促す。イリジウムチップは非常に少数の原子(原子数 15以下)を有し、通常は、一原子だけである。
【0019】
イリジウムワイヤは、純イリジウム(Ir容量≧90重量%)またはイリジウム合金からなる。ワイヤは多結晶または単結晶である。本発明の実施の形態では、単結晶210Irワイヤが用いられる。図1に示されるように、テーパ状の単結晶210イリジウム棒10が本発明の方法により処理された後、しっかりと画定されたナノサイズの錐体14がテーパ状端の頂部に自然に形成される。ナノ錐体の頂点は、イリジウム棒の方向に自己調整(self-aligned)される。イリジウム棒のテーパ端12は、一般に、5〜1000nmの幅の半径(屈曲半径)を有する半球形(または楔形)に近い曲面を有する。本発明の好ましい実施の形態では、半径は200nm以下、好ましくは50〜100nmに制御される。半径は、テーパ状端の頂部上に生成された錐体の数量と大きさに関係する。本発明の実施の形態の中には、三つの別の錐体があり、それぞれ、平面210で大きくなり、縦軸から38度(二平面210の二面角)で位置決めできるものがある。さらに本発明の実施の形態の中には、平面210は、テーパ工程の後、イリジウムワイヤ(多結晶または単結晶のIrワイヤ)の横表面で暴露し、それぞれ、加熱工程後に増大した一錐体を有する。
【0020】
イリジウムワイヤは機械研磨、電気化学エッチングまたはイオンミリングによりテーパ加工され、鋭端を得る。電気化学エッチングにおいて、イリジウムをエッチングするのに適する電解液は、例えば、融解塩の混合物が用いられる。適当な塩には、例えば、NaNO3、NaOH、KOH、KNO3、KClがあり、特にこれらに制限されるものではない。
【0021】
エッチング工程の後、かつ、アニール工程の前において、Ir表面は、300〜2000℃に繰り返し加熱されるか、またはチャンバ内で高い正電界を印加することにより洗浄される。洗浄中、酸素ガスがチャンバに入れられて、表面洗浄を助ける。酸素分圧は、1.33322×10-3〜1.33322パスカルに制御される。このような低圧の酸素を加える前、チャンバは残留ガスのバックグラウンド圧力が酸素ガスの圧力以下になるまで真空にする。注入ガスは、窒素またはアルゴンで、ポンプ時間を短縮するのに用いられる。本発明の実施の形態では、1500℃までの引火温度(持続時間約2秒)により、エッチング工程後に残された汚染物質をIr表面から除去し、鋭端の鈍化の可能性を減少させる。
【0022】
洗浄後、鋭い端を有するイリジウムワイヤはアニールされて、原子レベルで尖ったチップを形成する。一般に、アニール温度は引火温度より低い。本発明の実施の形態では、Irワイヤは酸素を含むチャンバ内で、300〜600℃で加熱される。酸素は1.33322×10-3〜1.33322パスカルの分圧を有する。本発明の他の実施の形態では、テーパ状イリジウムワイヤはまず、酸素雰囲気に暴露され、その後、酸素がないチャンバでアニールされる。上述の錐体構造がテーパ状端表面上に形成されれば、アニール工程期間は特に制限されないが、一般に、1〜20分である。温度範囲は、実際の応用によって調節される。原子レベルで尖ったIrチップの形成は、Ermanoskiら、Surface Science, 549, 1 (2004)およびErmanoskiら、Surface Science, 596, 89 (2006)に記述されるように、Ir表面上の酸素の吸収に起因すると考えられる。チップ(Ir−SAT)または錐体構造が破壊される場合、チップまたは錐体は、上述のように、再度、酸素雰囲気でIrワイヤをアニールすることにより正常な状態に戻すことができる。
【0023】
作成された錐体構造のIrチップは高電場を維持することができる。チップは非常に安定し、化学的に無害である。これらの独特な特質は、Ir−SATを2つの主要な利点を有する優れたガス田イオンソース(GFIS)にする。まず、FIBシステムの解像度と輝度が大幅に改善される。例えば、最小のソースサイズ、つまり、Ir−SATのサイズは、液体金属イオン源(LMISs)より二桁小さい。イオンビームの開口角度(<1°)はLMISsより少なくとも一桁小さい。正常動作条件下(気体の圧力が13.3322パスカル以下)で、単一原子から放射する光線は、半球状のマイクロメータの鋭いチップから分岐するイオンビームより約100倍の輝度を有する。全気体の分子がイオン化され、同じ電界強度の同じ原子点で加速される時、イオンエネルギーの拡散は小さい。さらに、総放出電流は、LMISsより桁違いに小さい。よって、クローン相互作用効果はごく僅かである。その結果、Ir−SATから放射されるイオンビームは、LMISsと比較してかなり低い放出電流下で、はるかに少ない色収差において同一輝度と発光安定性を達成する。要するに、Ir−SATは、好ましい解像度、高い輝度と少ない収差を有するイオンビームを生成することができる。次に、異なるアプリケーションに対しイオンの幅広い選択がある。背景ガスを変化させ、様々な化学種のイオンを放出することができる。
【0024】
同様の理由から、Ir−SATは、理想的な電界電子源または走査プローブチップとなる。また、単一原子チップから放射される電子ビームは干渉性(coherent)があるので、ビームは、電子線ホログラフィーまたは電子線回折に用いられて、サンプルの三次元イメージを得る。
【0025】
本発明の実施の形態のいくつかは、それぞれIr−SATを有する複数の錐体がIr針の曲面上に形成され、低い引き出し電圧が針に印加されて、一つのIr−SATだけが荷電粒子を放射させ、その他は放射させることができない。その結果、単一の点放射源が達成される。
【実施例】
【0026】
エッチング
Ir多結晶ワイヤ(Irワイヤは直径0.1mmで、約5mmの長さ)が電気化学エッチングされて、鋭い端を形成した。その手順は以下のとおりである。重量比が1:1のNaNO3とKOHは白金るつぼで混合されて、加熱され、融解塩混合物を形成した。イリジウムワイヤは、ワイヤと対極に供給される7−9V(rms)のAC電圧を有する融解塩混合物に沈積された。周波数は60〜300Hzに設定した。エッチング後、Irワイヤは水とアセトンで洗浄された。SEM(走査型電子顕微鏡)測定により、エッチングされたIrワイヤは半径が約200nmの鋭い端を有した。
【0027】
表面洗浄
Irワイヤがチャンバに配置された後、酸素雰囲気で、500℃、その後、1500℃で2秒以下で加熱された。酸素圧は約2.66644×10-2パスカルである。
【0028】
SAT形成
上記の(PO2=2.66644×10-2パスカル)の酸素圧で、ワイヤは400〜600℃で5分間アニールされた。
【0029】
チップの特性化
Irチップも錐体の原子構造もFIMにより特性化された。錐体の最上層から生成されるFIMピクチャは、イリジウム原子だけが検出され、上述の処理の後、イリジウムの単一の原子チップの形成が確認された。最上部の原子はその後、電界蒸発により除去されて、第二層を露出した。三つのIr原子は、錐体の第二層から検出された。第二層も電界蒸発により除去された。三つの原子頂上部が検出され、三角錐がIrワイヤの鋭い端上に形成されたことが確認された。単一の原子チップを有する錐体の原子硬球モデルは、FIM結果にうまく適合し、さらに、錐体の境界が明瞭な原子構造であることが実証された。
【0030】
損傷した錐体は、SAT工程を再度繰り返すだけで再生できる。再生された錐体は同じ原子積層構造を有する。さらに、一つの錐体はIrワイヤの鋭い端上に形成される。イリジウムワイヤの鋭い端上の領域210は非常に小さいので、一つのナノ錐体だけを生成する。鋭い端が200nm以上の半径を有する時、複数の錐体または平面面取り錐体が形成される。
【0031】
Ir−SATの応用:酸素イオン放出
チャンバで、Ir−SATは上述のように作成された。圧力が6.6661パスカルに達するまで、酸素ガスがチャンバに入れられた。正の高圧がチップに印加されて、3mAの酸素イオンビームを電界放出した。一つの明るい酸素イオンビームだけが、半延長角〜0.6度の単一原子チップ頂端から発射された。輝度が7x1010A/(m2・Sr)に達するビームは、酸素プラズマ(輝度〜106A/(m2・Sr))より四桁大きく、電流ガリウム集中イオンビーム(輝度〜109A/m2/Sr)よりも大きかった。放出電流は、全テストを安定してパスした。Ir−SATは、様々なイオンビームを150時間以上に渡り発光するガス田イオンとして用いられ、活性O2+イオン、H+、He+、Ne+およびAr+を含んだ。損傷または劣化がないことが観測された。それゆえに、Ir−SATは実用的なイオン源として用いるのに適する。
【0032】
本発明では好ましい実施例を前述の通り開示したが、本発明は決してこれらに限定されるものではなく、当該技術を熟知する者なら誰でも、本発明の精神と領域を脱しない範囲内で各種の変動や潤色を加えることができ、従って本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】イリジウム針の縦方向の断面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 イリジウム棒
12 テーパ端
14 錐体
210 イリジウム結晶(錐体の平面、イリジウムワイヤの鋭端上の領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子レベルで尖ったイリジウムチップの作成方法であって、
イリジウム棒の少なくとも一方の端をテーパ状にするテーパ工程と、
酸素を含むチャンバ内で、前記棒を加熱し、錐体構造を前記テーパ状端上に形成する加熱工程とからなり、
前記錐体構造は原子レベルで尖ったイリジウムチップを含むことを特徴とする原子レベルで尖ったイリジウムチップの作成方法。
【請求項2】
前記イリジウム棒は単結晶棒であることを特徴とする請求項1記載の原子レベルで尖ったイリジウムチップの作成方法。
【請求項3】
前記加熱工程は、10秒以下で、500〜2000℃の第一温度により急速加熱し、1〜15分間、第一温度以下の第二温度で加熱することを特徴とする請求項1または2記載の原子レベルで尖ったイリジウムチップの作成方法。
【請求項4】
前記チャンバは、1.33322×10-3〜1.33322パスカルの酸素圧を有することを特徴とする請求項1、2または3記載の原子レベルで尖ったイリジウムチップの作成方法。
【請求項5】
前記錐体構造は単一原子のイリジウムチップを有することを特徴とする請求項1、2、3または4記載の原子レベルで尖ったイリジウムチップの作成方法。
【請求項6】
前記テーパ工程は、電気化学エッチング、機械研削またはイオンミリングにより実行され、前記テーパ状端は5〜200nmの半径を有することを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の原子レベルで尖ったイリジウムチップの作成方法。
【請求項7】
前記テーパ工程は、0.5〜20Vの電圧、1mA〜1Aの電流を有する電解液中で、前記イリジウム棒を電気化学エッチングすることにより実行されることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の原子レベルで尖ったイリジウムチップの作成方法。
【請求項8】
前記電解液は、KCN水溶液、またはNaNO3、NaOH、KOH、KNO3あるいはKCl3からなる群から選択される二つ以上の融解塩の混合物であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7記載の原子レベルで尖ったイリジウムチップの作成方法。
【請求項9】
前記イリジウム棒は多結晶であることを特徴とする請求項1、3、4、5、6、7または8記載の原子レベルで尖ったイリジウムチップの作成方法。
【請求項10】
イリジウム針であって、
表面を有するテーパ状端と、
前記表面に配置される錐体構造と、
からなり、前記錐体構造は、前記表面から離れたチップを有し、前記チップは少量のイリジウム原子により形成されることを特徴とするイリジウム針。
【請求項11】
前記表面は、イリジウム結晶面であることを特徴とする請求項10記載のイリジウム針。
【請求項12】
前記イリジウム針は、単結晶のイリジウム棒により形成されることを特徴とする請求項10または11記載のイリジウム針。
【請求項13】
前記テーパ状端は、半径が5nm〜200nmであることを特徴とする請求項10、11または12記載のイリジウム針。
【請求項14】
前記チップは単一のイリジウム原子からなることを特徴とする請求項10、11、12または13記載のイリジウム針。

【図1】
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【公開番号】特開2009−107105(P2009−107105A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47646(P2008−47646)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(596118493)アカデミア シニカ (33)
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【Fターム(参考)】