説明

原料ウェブを横延伸するための方法および装置

本発明は、熱可塑性プラスチックから作製された配向していない、または、縦方向に配向したフィルムウェブを横延伸する方法に関する。前記方法によれば、延伸されていない、または、縦延伸されたフィルム(8)を横延伸フレームに導入し、ここで、ヒーター域(1)を横延伸の温度TQに加熱し、取り付けられた延伸域(2)において、クリップチェーンを末広がり(V型)のガイドによって横延伸し、固定域において温度TFが適用される(ここで、TQ>TF)。延伸域および/または加熱域(1)において、フィルム(8)の境界ゾーン(5)が横延伸および/または固定の際に該フィルムウェブの中央(6)よりも高い温度を有するように、フィルム(8)の境界ゾーン(5)は、加熱されるか、または、断熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料ウェブを横延伸する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸フィルムは当業界でよく知られており、多くの様々な用途で用いられている。具体的には、高温で程度の差はあるが一方向またはその他の方向に収縮する二軸延伸ポリプロピレンフィルムが近年開発されている。このような収縮特性は、個々の層の組成、および、フィルム製造中の条件に依存する。具体的には、延伸中の温度、延伸のファクター、および、後続の固定が重要である。これらの条件を変化させることによって、二軸延伸フィルムの収縮特性を広範囲で変化させることができる。
【0003】
いくつかの用途に関して、フィルムが一方向のみに高い収縮性を有し、同時に、他方向の収縮を可能な限り低くすることが具体的に望ましい。その他の用途に関して、両方向に収縮性を有するフィルムが好ましい。この種の収縮性フィルムは、多様な熱可塑性プラスチックポリマー、例えばポリプロピレンまたはポリエチレンのようなポリオレフィンから製造することもできるし、または、芳香族または脂肪族ポリエステルなどから製造することもできる。
【0004】
基本的には、このような収縮性フィルムのポリプロピレンからの製造が実施されており、目立つ難点はない。通常の製造方法(フラットフィルム法)に従って、まず個々の層のポリマーを押出機で融解させ、溶融物をフラットノズルを通過させて押出す。形成された溶融フィルムを引取ロール上で冷却し、凝固させ、その後二軸延伸する。一般的に、異なる速度で稼働するローラーによって、縦方向への延伸が最初に行われる。
【0005】
続いて、横方向への配向をいわゆる横延伸のためのフレーム(幅出機)で行い、最終的に固定する。このような二軸延伸は、機械的強度、硬直、透明性、均一な断面厚さなどの重要な使用上の特性を保証する。
【0006】
この製造工程において、予備フィルムを冷却する際、および、縦延伸する際、加えて横延伸し、固定する際に、所定の温度を維持することが必須である。この理由のために、システム毎に加熱装置および冷却装置が提供され、それによってフィルムをできる限り均一に適切な温度に加熱し冷却することができる。縦延伸の前に、例えば熱したローラーを用いてフィルムを加熱するが、この加熱は、フィルムを取り囲む熱風ボックスで行ってもよい。縦延伸した後、フィルムを一回より多く冷却する。この後、横延伸に必要な温度に再加熱する。続いて、この方法で加熱したフィルムをいわゆる延伸域に供給し、フィルムの走行方向に末広がりになったクリップチェーンからなるガイドによって幅を連続的に広げる。できる限りフィルムの均一な引き延ばしを達成するために、フィルムウェブの幅にわたって温度が一定に維持される。フィルムが延伸域を通過する際、フィルムの走行方向の温度は様々であってよく、一般的に、後半の延伸域は、フィルムを供給する(infeed)領域よりもいくらか低温である(負の温度勾配)。このような温度制御はフィルムの断面厚さにとって好都合である。このような温度を横延伸中に維持するために、フィルム製造システムのこの部分は断熱材で囲われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
原理的には、この方法を用いてポリプロピレンから要求される収縮特性を有するフィルムを製造することも可能であることが示されている。本願のための調査の枠組みの中で、横方向の収縮値はフィルムの幅にわたって一定ではなく、このような偏差により、所定の用途において問題が生じることがわかった。横方向の端部に向かって生じる収縮の程度は、フィルム中央の収縮の程度よりも高いことがよくある。それゆえに、このようにフィルムの幅にわたって収縮が不均一に分配されていること(横方向の収縮分布、または、バスタブ型の分布)を改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
それゆえに、本発明の目的は、高温で、フィルムの幅にわたってできる限り均一な横方向の収縮を有する二軸延伸フィルムを製造することができる方法を提供することである。本方法を、容易に、経済面で効率的に、かつ様々なフィルム材料で、具体的には二軸延伸したポリプロピレンフィルムで使用することが可能でなければならない。さらに本方法は、その他の出発原料、および、様々な運転速度に柔軟に適応するものでなければならない。必要なあらゆる備品は、メンテナンスの必要がほとんどなく、修理の頻度を低くしなければならない。
【0009】
驚くべきことに、この目的は、熱可塑性プラスチックから作製された配向していないフィルムウェブまたは縦方向に配向したフィルムウェブ(8)を横延伸する方法によって達成され、本方法において、延伸されていないフィルムまたは縦延伸されたフィルム(8)を横延伸のためのフレームに導入し(ここで、該横延伸のためのフレームは、ヒーター域(1)、延伸域(2)、および、固定域(3)を含む)、続いて、第一のヒーター域の開始部において、フィルム(8)の両方の端部(4)をクリップチェーンのクリップ(7)で挟み、ヒーター域(1)において横延伸の温度TQに加熱し、続いて、後続の延伸域(2)においてフィルム(8)をクリップチェーンの末広がりの(V型の)ガイドによって横延伸し、固定域(3)において温度TFに晒し(ここで、TQ>TF)、ここで、フィルムの境界ゾーン(5)が横延伸および/または固定の際にフィルムウェブの中央(6)よりも高い温度を有するように、フィルムの境界ゾーン(5)を、延伸域(2)および/または固定域(3)中で加熱するか、または、断熱する。
【0010】
本発明の意図において、縦方向とは、製造中に原料ウェブが流れる方向であり、この方向は、機械の流れ方向とも称される。本発明の意図において、横方向とは、90°の角度で、すなわち機械の流れ方向に直角に流れる方向である。
【0011】
図1は、横延伸のためのフレームにおけるフィルムの延伸の略平面図を示す。横延伸のためのフレームは、3つのゾーン、すなわちヒーター域1、延伸域2および固定域3を含む。専門家の集団のなかでは、ヒーター域、延伸域および固定域という用語は、いくつかの領域またはゾーンを含む特定のヒーター、延伸および固定域を示す際にも使用される。フィルム端部4がヒーター域1に入ると、フィルム端部はクリップ7によって挟まれて誘導される。フィルムの境界ゾーン5は、フィルム端部4に直接隣接する。領域6は、フィルムの中央である。フィルム8がヒーター域1を通過すると、フィルムは温度TQに加熱される。後続の延伸域2において、フィルム8は、クリップチェーンからなる末広がりのガイドによって横延伸される。横延伸の後、フィルム8は延伸域2を離れて、固定ゾーン3に入り、ここで、フィルム8は、符号9に従って一定の幅で輸送されるか、または、符号10に従ってわずかに収束しながら、すなわち幅を減少させながら輸送される。
【0012】
図2は、最新の方法に従って横延伸する場合の好ましい温度分布(負の温度勾配)を示す。領域が暗く表示されてるほど、優勢な温度、または、その時点でのフィルム8の温度がより高いということである。ヒーター域1において、フィルム8は温度TQに加熱され、フィルム8はその温度で延伸域2に入る。延伸域2を通過する際に、フィルム温度が継続的に減少するように調節される。しかしながら、フィルム8は、延伸域2中のあらゆる位置において、フィルムウェブの幅にわたり同じ温度を有する。フィルムが固定域3を通過する際に、フィルムは冷却され、その結果として、このゾーン3において温度も走行方向に向かって下がり続ける。
【0013】
図3は、延伸域2における代替の温度制御を示す(等温の温度制御)。ここで、フィルム8が延伸域2を通過する際に、全ての延伸域においてフィルム8がほぼ同じ温度を有するようにフィルム8に調節が施される。続いてフィルム8は通常通り固定ゾーン3で冷却される。
【0014】
図4は、最新の方法に従ってフィルムが製造される場合に生じるフィルムの幅にわたる横方向の収縮Qs(バスタブ型の分布)を模式的に示す。横方向の収縮は、フィルムの中央6の領域において最小であり、境界ゾーン5に向かって大きくなる。この図において、延伸されていない端部4はすでにトリミングされている。
【0015】
図5および5aは、本発明に係る横延伸の改変法を示す。固定域3内の境界ゾーン5は、例えばカバープレート11のような適切な手段または装置によって保護されており、その結果として、固定領域3における境界ゾーン5の冷却が予防される。その結果、フィルム8が固定域3を通過する際にフィルム8が冷却されたとしても、境界ゾーン5は固定の際により高い温度を保持する(図5a)。
【0016】
図6および6aは、延伸域2の領域における温度分布がフィルムの幅にわたって確立された、本方法の代替の改変法を示す。延伸域2内の境界ゾーン5は、カバープレート12によって保護され、その結果として、延伸域2の領域における境界ゾーン5の冷却が予防される。その結果、延伸域2が冷却によって縦方向に低くなる温度分布を有する場合でも、境界ゾーン5は、横延伸の際にフィルムの中央6よりも高い温度を保持する。この温度分布を、図6aに理想化した形態で示す。
【0017】
図7および7aは、本発明に係る方法のさらなる改変法を示す。ここで、横延伸および固定領域の両方において、境界ゾーン5がフィルムの中央の領域6よりも高温になるように、温度は、延伸域2および固定域3においてカバープレート12によって制御される。
【0018】
図8および8aは、延伸域2において正の温度勾配が確立された、本発明に係る方法の改変法を示す。ここで、境界ゾーン5が、横延伸の際にフィルムの中央の領域6よりも高温になるように、フィルムの中央の領域6はカバープレート13によって断熱される。
【0019】
本発明に係る方法は、様々なシート状の原料ウェブに適しており、例えば横方向の収縮分布のような不均一な特性の分布が原料ウェブの幅にわたって見出されるようなあらゆる場合において有利に使用することができる。具体的には、本方法は、一つの層または複数の層が、熱可塑性プラスチック、例えば脂肪族または芳香族ポリエステル、ポリオレフィン、例えばポリエチレンまたはポリプロピレン、シクロオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミドなどで構成されているフィルムにおいて、その価値が認められている。この種のフィルムは、単層でもよいし、または多層でもよく、層中に同一なポリマーを含んでいてもよいし、または異るポリマーを含んでいてもよい。本方法は、具体的には、縦延伸した後、厚さ2〜2000μm、好ましくは10〜1000μmを有する原料ウェブに適している。
【0020】
一般的に、本発明に係る横延伸は、縦延伸の後に行われる。必要な状況が生じれば、本発明の利点は、本発明に従って延伸されていないフィルムを横方向のみに延伸する場合にも適用することができる。ここで、延伸されていない原料ウェブも同様に、本発明に従って横延伸する前に厚さ2〜2000μm、好ましくは10〜1000μmを有する。
【0021】
本発明に係る方法において、縦延伸された、または、延伸されていないフィルムウェブは、適切な手段によって必要な横延伸の温度TQに加熱される。この領域は、ヒーター域またはヒーター域(1)とも称される。加熱は、例えば熱風によって行われ、この場合、熱風は、原料ウェブの上下にマウントされたいわゆるノズルボックスから送られる。一般的に、フィルムが幅にわたって均一な温度を得るか、または均一な温度示すように、フィルムウェブ(8)はヒーター域(1)で加熱される。フィルム(8)がヒーター域(1)に入ると、フィルム(8)の両方の端部(4)は、循環するクリップチェーンのクリップ(7)で挟まれる。この端部(4)は、通常、ウェブの全幅に比べて狭くなっている。言うまでもないが、あらゆるエンドレスの原料ウェブは2つの端部(4)を有し、それゆえにフィルムは、クリップ(7)によって両側で挟まれる。クリップ(7)は、横延伸のためのフレーム(1+2+3)全体にわたってフィルム(8)を誘導する。ポリプロピレンフィルムは、通常、ヒーター域中で、180℃以下の温度、好ましくは140〜170℃の温度に加熱される。
【0022】
ヒーター域(1)を通過した後、フィルム(8)は、延伸域(2)に入る。クリップチェーンからなる末広がりのガイドによって、フィルム(8)は、延伸域(2)を通り抜けながら、最終的に目的とする幅になるまで幅が連続的に延伸される。延伸域(2)の領域において、走行方向に向かって温度を変更してもよく、このような場合、温度を低くすること(負の温度勾配)が好ましいが、温度を高くすること(正の温度勾配)も可能である。その代わりに、延伸域(2)中の温度は、できる限り一定に維持することもできる(等温の温度制御)。ポリプロピレンフィルムの場合、延伸域における温度は、140〜165℃の範囲内である。
【0023】
延伸域(2)中での延伸後、フィルムは、固定ゾーン(3)を通過する。この領域において、フィルム(8)の幅はクリップ(7)によって一定に保持され、ここで、温度は一定でもよいし、または、横延伸によって達成された配向を固定するために走行方向に向かって低くしてもよい。必要な収縮特性に応じて、配向によって加えられた応力を部分的に散逸させるために、固定ゾーンを収束するように稼働させてもよい。固定域(3)から離れると、クリップ(7)が開き、フィルムは、回転ローラーによって前方に輸送され、同時に室温に冷却され、その後巻き取られる。
【0024】
本発明に係る横延伸方法によれば、フィルム走行方向における温度制御に加えて、延伸域(2)の領域および/または固定域(3)の領域において、フィルム(8)の両方のボーダーゾーン(5)がフィルムの中央(6)よりも高い温度を有するようなフィルム(8)の幅にわたる温度分布が確立される。驚くべきことに、このような温度分布を幅にわたって確立することによって、極めて均一な、すなわち一定の横方向の収縮がフィルムの幅にわたって達成できる。
【0025】
本発明の意図において、クリップ(7)で挟まれる「端部」(4)は、トリミングされたフィルムのフィルム端部(5)(本発明の意図において「境界ゾーン」(5)と称される)と区別しなければならない。クリップ(7)で挟まれる端部(4)は延伸されないままであり、製造後にトリミングされ、再利用された粒状物としてフィルム製造工程にフィードバックされる。クリップ(7)の設計に応じて、両側におけるこれら端部の幅は、端部の外側から測定した場合、約5〜15cm、好ましくは7〜10cmである。
【0026】
フィルムの幅に応じて、延伸されたフィルムの両側における境界ゾーン(5)の幅(最新の方法に従って、フィルムの中央の領域(6)よりも高い横方向の収縮値を有する)は、ウェブ幅の約5〜25%、好ましくは8〜20%である。例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおいて、トリミングされた最終的な二軸延伸フィルムの通常のウェブ幅が5〜10mである場合、境界ゾーンはそれぞれ、幅が約50〜200cmである。本発明に係る追加の加熱または断熱は、これらの境界ゾーン(5)の幅にわたって起こる。
【0027】
フィルムまたは製造機械のタイプに応じて、上述の端部(4)、および、境界ゾーン(5)のサイズが、程度の差はあるがこれらの値から外れる可能性がある。一般的に、境界ゾーン(5)では、横方向の収縮が大きい領域が全体的になくなり、フィルムが幅全体にわたりほぼ等しい横方向の収縮値を有するような、すなわちフィルムの中央の領域(6)における横方向の収縮の変化量ができる限り小さくなるような程度に、全幅にわたって広範囲に加熱されると予想される。
【0028】
達成された作用の根拠は科学的に完全には理解されていないが、それによって本発明に係る教示の妥当性はまったく制限されない。ポリマーとは、溶融中に、加えて配向させずに冷却した後に存在する一緒にからまった状態の長鎖分子である。延伸の力の作用によって、これらの分子鎖それ自身が力が作用する方向に配列し、すなわち分子鎖が所定の方向に配向する。一方で、このように配列することは、分子鎖が移動することができるある種の能力、および、ポリマー鎖に作用する外部からの力によるものと考えられる。横延伸の際、ポリマー鎖が移動する能力は、高い温度によって、すでに縦方向に配列されたポリマー鎖を横方向に再配向させるのに十分に大きくなければならない。
【0029】
外部からの延伸の力の作用は、この時点における分子鎖が移動する能力と、延伸の力によって配列された後にポリマー鎖が受ける温度の経験との両方に依存する。配向が完了した際に固定域の温度を低くすることによって、配向した状態は所定の程度に固定され、一方、固定の際に高温を維持することによって、ポリマー鎖が移動する能力は、規則的に配向した状態の部分的なゆるみを引き起こす。上記のコメントから明らかなように、基本的に、二軸延伸の結果は、延伸の前に、延伸の際に、および延伸後にフィルムが経験する温度に実質的に依存する。
【0030】
横延伸の場合、配向は、フィルムの中央から始まり、延伸域(2)を通過するフィルムの走行が進むにつれてさらに外側に移動し、ボーダーゾーン(5)に到達するまで移動する。タイミングの観点で言えば、フィルム(8)のボーダーゾーン(5)は、フィルム(8)の中央の領域(6)よりも後の時間に(空間的な観点で言えば、延伸域の終点に到達してから)延伸を経る。延伸域(2)における通常の温度分布の結果として、すなわち最新の方法に従ってフィルム(8)の走行方向に向かって温度を減少させることによって、境界ゾーン(5)の延伸は、中央の領域の延伸温度(〜TQ)よりも低い温度で(<TQ)起こる。これに、ウェブの中央におけるポリマー鎖が、延伸後に異なる温度−時間を経るということが追加される。すでに延伸されたフィルム(8)の中央(6)は、延伸域(2)の領域全体を通過するが、それに対して境界ゾーン(5)は、延伸直後は延伸域(2)の終点にのみに到達し、それより低温の固定域(3)に入る。
【0031】
本発明に係る方法は、このような最新の方法に従ってフィルム(8)の異なる領域が受ける異なる温度−時間の経験に適合する。加えて、後半で延伸されるボーダーゾーン(5)も、延伸後により高い温度に所定時間晒され、それゆえにフィルム(8)の中央の領域(6)に類似した温度−時間を経るような場合に、延伸域および/または固定域(3)におけるボーダーゾーン(5)の加熱または断熱が寄与する。
【0032】
本方法の好ましい実施態様において、固定域(3)中のフィルム(8)、すなわち延伸域(2)を離れた後のフィルム(8)は、固定(3)の際にフィルムウェブ(8)の中央(6)がボーダーゾーン(5)の領域よりも低い温度を有し、ボーダーゾーン(5)が高い温度を有するように、ボーダーゾーン(5)上の追加の加熱または断熱のための要素によって、またはその他の適切な手段によって調節される。温度分布は、熱可塑性プラスチックポリマーのタイプに応じて、ボーダーゾーン(5)の温度がウェブの中央(6)の温度よりも約1〜20ケルビン、好ましくは3〜15ケルビン高くなるのに十分なものと予想される。
【0033】
この温度分布は、様々な手段によって実現できる。一般的に、フィルムウェブの温度が、境界ゾーン(5)に向かってウェブの中央(6)よりもより高くなるように、ボーダーゾーン(5)で断熱することが好ましい。最も簡単なケースでは、断熱カバープレート(11)を境界ゾーン(5)の上、および/または、その下に装着させてもよい。これらは、固定域(3)を通過して流れ、フィルム(8)を必要な温度に冷却する気流が、フィルム(8)の冷却が回避されるようにカバープレート(11)の上に誘導されるような位置に配置される。その代わりに、またはそれに加えて、熱を放出し、境界ゾーン(5)の上および/またはその下に配置した加熱のための要素が存在していてもよい。適切な加熱のための要素の例は、IRラジエーター、および、ガスヒーターである。
【0034】
個々のケースにおいて、当業者であれば当然ながら、固定域およびシステムの構造的な環境に従って、加えて、製造しようとするフィルムのタイプに応じて行動し、追加のヒーターまたは断熱を、どのように、且つどこに装着するかを正確に決定できると思われる。具体的な実施態様において、様々な形態を取ることができる。しかしながら、主要な要素は、全ての実施態様に共通である:走行方向に向かって温度が下がるフレームにおいて、固定域(3)中の境界ゾーン(5)は、追加の加熱を経なければならず、または、逆に言えば、断熱手段によってあまりにも重度の冷却を防ぐことができる。この結果として、延伸された境界ゾーン(5)は、(中央(6)と比較して)高温で固定域(3)に供給され、延伸された領域が全て(延伸直後に延伸フレーム(2)の終点で固定域(3)に入る領域も含む)、延伸直後に高い温度に晒される。これにより、全ての延伸されたゾーンが、できる限り類似した温度−時間を経ることが可能になる。
【0035】
驚くべきことに、固定域(3)中で、フィルム(8)の境界ゾーン(5)を加熱したり、または、中央の領域(6)より低温に冷却したすることによって、望ましくない不均一な収縮分布を顕著に改善することができる。
【0036】
縦方向および横方向における特定の温度または温度分布は、フィルムのタイプおよびフィルム厚さ、加えて、フィルム製造システムおよび固定域の設計に依存する。
それ以外の方法の条件は、フィルムが必要な収縮特性を示すように選択される。これらの関係は、基本的には既知である。本発明に係る方法によれば、横方向の収縮が1〜25%、好ましくは3〜20%を示すフィルムを製造することができ、このようにすることによって、これらのフィルムの幅にわたる収縮値の偏差が、中央の領域(6)における収縮の±5%よりも大きくならず、好ましくは±0.5〜±3%よりも大きくならない。
【0037】
本発明のさらなる実施態様において、収縮分布を均等にするために、延伸域(2)中で特殊な温度制御を行うことができ、このような特殊な温度制御は、必要に応じて固定域(3)に上述の手段によって補足することができる。本方法のこのような改変法によれば、延伸域(2)中のフィルム(8)は、延伸域(2)中で、温度分布が、フィルムウェブの幅にわたってすでに確立されている、すなわちフィルムウェブが延伸域(2)を通過して走行する際に、フィルムウェブが中央(6)においてボーダーゾーン(5)の領域の温度よりも低い温度を有するように、ボーダーゾーン(5)上の追加の加熱または断熱要素(12)によって調節される。ここでも、正確な温度分布は、熱可塑性プラスチックポリマーのタイプに依存する;約1〜20ケルビン、3〜15ケルビンの温度勾配が好ましく、すなわち境界ゾーン(5)の温度は、ウェブの中央(6)の温度よりこの規模で低い。延伸の力が境界ゾーン(5)で作用する際に、温度は、フィルム(8)がフレームに入る時に有する温度(TQ)とほぼ同じであることが理想的である。驚くべきことに、延伸域(2)中でこのような温度分布を確立することによって、極めて均一な、すなわち一定の横方向の収縮も、フィルム(8)の幅にわたって達成できる。
【0038】
境界ゾーン(5)の追加の加熱は、例えば、熱を放出し、加熱しようとする境界ゾーン(5)の上に位置する追加の加熱のための要素によって行うことができる。適切な加熱のための要素の例は、IRラジエーター、および、ガスヒーターである。走行方向に向かって負の温度勾配を有する延伸域(2)における温度制御の場合、境界ゾーン(5)の上に、および/または、その下に断熱カバープレートを装着することができる。これらは、延伸域を調節するための空気とフィルムとが、空気の変換による境界ゾーンの冷却が回避されるようにカバープレートの上を流れるような位置に配置される。延伸域において逆の温度制御をするケースにおいて、すなわち正の温度勾配のために、フィルム(8)の中央の領域(6)にカバープレート(13)を装着することができ、そうすることによって、境界ゾーン(5)においてより高い温度を同様に達成することができる。
【0039】
個々のケースにおいて、当業者であれば、延伸域(2)およびシステムの構造的な環境に従って、加えて製造しようとするフィルムのタイプに応じて行動し、追加のヒーターまたは断熱を、どのように、且つどこに装着するかを正確に決定できると思われる。具体的な実施態様において、様々な形態を取ることができる。しかしながら、主要な要素は、全ての実施態様に共通である:境界ゾーン(5)がフィルム(8)の幅全体にわたって各領域ができる限り類似したフィルム温度で延伸されるように、追加の加熱または冷却に対する予防によってウェブの中央(6)よりも高い温度を有していなければならず、さらに、後半で延伸される境界ゾーン(5)も、フィルム(8)の全ての領域(フィルムの幅全体とみなして)ができる限り類似した延伸および温度経験を受けるように、延伸後に高い温度に晒される。
【0040】
必要に応じて、本方法の両方の改変法を組み合わせることによって、さらに均一な収縮の発生を改善することができる。延伸域(2)における負の温度勾配の場合、延伸域(2)の領域と固定領域(3)の両方における境界ゾーン(5)は、境界ゾーン(5)が延伸域(2)と固定域の両方で中央よりも高い温度を有するように、上述の手段によって加熱または断熱される。
【0041】
本発明に係る方法を用いてポリプロピレンフィルムを横延伸すると、優れた横方向の収縮分布が達成される。従って、本方法は、ポリプロピレンフィルムの横延伸に特に適している。以下の表に、一例として、主にアイソタクチックポリプロピレンから作製されるフィルムの延伸条件を要約する:
【0042】
【表1】

【0043】
原材料とフィルムを特徴付けるために以下の測定方法を用いた。
収縮
縦方向および横方向の収縮値は、収縮工程前における各フィルムの伸長(縦方向L0、および、横方向Q0)に関する。縦方向は流れ方向であるため、機械の流れ方向に直角な方向が横方向と定義される。熱風循環式オーブン中で、10cm×10cmのフィルムサンプルを、130℃で5分間の持続時間で収縮させた。次に、縦方向および横方向におけるサンプルの残存伸長を一回より多く決定した(L1およびQ1)。続いて、決定された長さの差の元の長さL0およびQ0に対する比率から、収縮(%)を得た。
【0044】
【数1】

【0045】
このような縦方向および横方向の収縮の決定方法は、DIN40634に従った。
【実施例】
【0046】
以下の典型的な実施態様を参照しながら、本発明を説明する:
実施例1
対称的な構造を有し総厚さが20μmの透明な三層のフィルムを、共押出し、それに続いて縦方向および横方向の段階的な配向によって製造した。表面層はそれぞれ、厚さ0.8μmを有していた。
【0047】
【表2】

【0048】
個々の方法工程の製造条件は以下の通り:
【0049】
【表3】

【0050】
横延伸の倍率9は、有効値である。この有効値は、最終的なフィルム幅Bから、トリミングされたストリップ幅b(端部4)を2回引いて、それを、同様にトリミングされたストリップ幅b(端部4)を2回引いた縦延伸されたフィルムの幅で割って計算される。
【0051】
本発明によれば、固定領域における境界ゾーンは、カバープレートによって温度を下げる気流から保護され、そこでの温度が、ウェブの中央の温度よりも約25℃高くなった。カバープレートの幅は、約1mであった。トリミングされた最終的なフィルムは、700cmの幅を有していた。中央の領域と境界ゾーンにおけるフィルムの横方向の収縮を測定した。中央では、横方向の収縮は平均13±0.5%であり、2つの境界ゾーンでは、平均15.5±0.9%であった(Δ1.5%)。
【0052】
実施例2
実施例1で説明した組成と同じ組成を有するフィルムを製造した。同様に方法の条件も実施例1の条件とと同じにした。実施例1とは異なり、境界ゾーンの領域における延伸域にIRラジエーターを装着して、フィルムを延伸する際に境界ゾーンがフィルムの中央と比較して高い温度を有するようにした。温度は、それより約6℃高かった。中央の領域と境界ゾーンにおけるフィルムの横方向の収縮を同様に測定した。中央では、横方向の収縮は平均13±0.5%であり、2つの境界ゾーンでは、平均13.5±0.5%であった(Δ0.5%)。
【0053】
比較例
実施例1で説明した組成と同じ組成を有するフィルムを製造した。方法の条件は、変化させなかった。実施例1とは異なり、フィルムの幅にわたって温度分布を確立するための特殊な手段は取り入れなかった。延伸域、または、固定域いずれの領域においても、カバープレートやIRラジエーターを装着させなかった。中央の領域と境界ゾーンにおけるフィルムの横方向の収縮を測定した。中央では、横方向の収縮は、平均13±0.5%であり、2つの境界ゾーンでは、平均18±1.5%であった(Δ5%)。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】横延伸のためのフレームにおけるフィルムの延伸の略平面図を示す。
【図2】最新の方法に従って横延伸する場合の好ましい温度分布(負の温度勾配)を示す。
【図3】延伸域2における代替の温度制御を示す(等温の温度制御)。
【図4】最新の方法に従ってフィルムが製造される場合に生じるフィルムの幅にわたる横方向の収縮Qs(バスタブ型の分布)を模式的に示す。
【図5】本発明に係る横延伸の改変法を示す。
【図6】延伸域2の領域における温度分布がフィルムの幅にわたって確立される本方法の代替の改変法を示す。
【図7】本発明に係る方法のさらなる改変法を示す。
【図8】延伸域2において正の温度勾配が確立された、本発明に係る方法の改変法を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性プラスチックから作製された配向していないフィルムウェブまたは縦方向に配向したフィルムウェブを横延伸する方法であって、該方法は、延伸されていないフィルムまたは縦延伸されたフィルム(6)を、横延伸のためのフレームに導入し(ここで、該横延伸のためのフレームは、ヒーター域(1)、延伸域(2)、および、固定域(3)を含む)、続いて、第一のヒーター域の開始部において、フィルム(8)の両方の端部(4)をクリップチェーンのクリップ(7)で挟み、ヒーター域(1)において横延伸の温度TQに加熱し、続いて、後続の延伸域(2)においてフィルム(8)をクリップチェーンの末広がりの(V型の)ガイドによって横延伸し、固定域(3)において温度TFに晒す(ここで、TQ>TF)方法であり、該方法は、フィルム(8)の境界ゾーン(5)が横延伸および/または固定の際に該フィルムウェブの中央(6)よりも高い温度を有するように、フィルム(8)の境界ゾーン(5)を、延伸域(2)および/または固定域(3)中で加熱するか、または、断熱することを特徴とする、上記方法。
【請求項2】
前記熱可塑性プラスチックが、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミド、または、シクロオレフィンポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
延伸域(2)における境界ゾーン(5)が、フィルムウェブの中央よりも高い温度を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
固定域(3)における境界ゾーン(5)が、フィルムウェブの中央(6)よりも高い温度を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
延伸域(2)および固定域(3)における境界ゾーン(5)が、フィルムウェブの中央(6)よりも高い温度を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
延伸域(2)の領域において、境界ゾーン(5)の温度が、フィルムウェブの中央の領域(6)の温度より1〜20ケルビン高いことを特徴とする、請求項1〜3または5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
固定域(3)の領域において、境界ゾーン(5)の温度が、フィルムウェブの中央の領域(6)の温度より1〜20ケルビン高いことを特徴とする、請求項1、2、4または5に記載の方法。
【請求項8】
延伸されていないフィルムまたは縦延伸されたフィルムウェブ(8)が、2〜2000μmの厚さを有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
各境界ゾーン(5)が、トリミングされた二軸延伸フィルムウェブ(8)のウェブ幅の5〜25%を構成することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
フィルムウェブ(8)が、縦延伸されたポリプロピレンフィルムであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
横延伸後、且つ延伸されていない端部をトリミングした後、前記ポリプロピレンフィルムが5〜10mのウェブ幅を有し、各境界ゾーン(5)が50〜200cmの幅を有することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
延伸域(2)および/または固定域(3)における2つの境界ゾーン(5)の上に、追加の加熱のための要素が装着されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
固定域(3)の領域における2つの境界ゾーン(5)の上に、追加の断熱カバープレート(11)が装着されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
延伸域(2)の領域において、フィルム(8)の走行方向に向かって温度が低くなること、および、2つの境界ゾーン(5)の上に断熱カバープレート(12)が装着されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
延伸域(2)の領域において、フィルム(8)の走行方向に向かって温度が高くなること、および、フィルムウェブの中央の領域(6)の上に断熱カバープレートが装着されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
フィルム(8)が、2〜12倍に横延伸されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
フィルム(8)がポリプロピレンフィルムであり、5〜12倍に横延伸されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記フィルムが、3〜25%の横方向の収縮を有することを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記フィルムが、3〜25%の横方向の収縮を有すること、および、フィルムウェブの幅にわたる収縮値の偏差が、フィルムの中央の領域の収縮値の±5%より大きくならないことを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法を用いてフィルムを横延伸することを特徴とする、3〜25%の横方向の収縮を有するフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5a】
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【図6】
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【図6a】
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【図7】
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【図7a】
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【図8】
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【図8a】
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【公表番号】特表2008−540177(P2008−540177A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510480(P2008−510480)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004313
【国際公開番号】WO2006/119959
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(504422379)トレオファン・ジャーマニー・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・カーゲー (17)
【Fターム(参考)】