説明

原料再生機

【課題】残留廃棄材を用いた原料リサイクルによる再利用を行う際における粉塵汚染を簡易な構成よって良好に防止し、清浄性の高い原料を効率的に再生することを可能とする。
【解決手段】製品の成形後に発生した残留廃棄材の粗砕工程を従来のような破砕機ではなく原料再生機3そのものにおいて行い得るように、押出用メインスクリュー32bの搬送機能部32eに残留廃棄材と係合する係合引込部32fを設け、押出用メインスクリュー32bの回転に伴って残留廃棄物を押出用メインスクリュー32b側に引き込んで切断するように構成したことにより、製品成形後に発生する残留廃棄物の粗砕工程を、従来のような破砕機を通すことなく原料再生機3に残留廃棄物を直接的に供給することが可能となり、粉砕機を用いた粗砕工程を省略することができるとともに粉塵の発生を抑制して清浄性を向上させることができるように構成したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の成形後に発生した残留廃棄材を溶融押出するように構成された原料再生機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、合成樹脂の原材料を金型に射出成形するなどによって所望の樹脂製品を製造することが広く行われている。例えば射出成形を行う場合には、金型内に所望の樹脂製品が成形されるが、その金型の樹脂注入口と製品成形部との間に設けられた原材料の誘導流路などには、スプルー、ランナー、ゲート等と呼ばれる残留廃棄材が形成される。この残留廃棄材を再利用する場合には、成形された樹脂製品がゲート先端から切り離された直後、或いはある程度の量まで蓄えられてから粉砕機内に投入され、その粉砕機で粗砕が行われることによって所望の大きさの再生元素材になされる。その粉砕機における粗砕工程によって製造された再生元素材は、押出機からなる原料再生機に搬送されて供給され、当該原料再生機から線状をなすように溶融押出された長尺状の押出成形品が、所望の大きさにカットされることによって例えばペレット状の再生原料に再生され、これによって残留廃棄材のリサイクルによる再利用が行われるようになっている。
【0003】
このような樹脂製品の残留廃棄材をリサイクルして再利用するために用いられる原料再生機は、資源を有効利用する意味において極めて重要な装置であるが、上述したように残留廃棄材を粉砕機により予め粗砕する工程を必要としており、原料再生機を用いた原料リサイクル装置の全体が大型化する傾向があるとともに、粉砕機による残留廃棄材の粗砕工程が行われる分だけ、原料リサイクル工程全体の効率を低下させるおそれもある。
【0004】
また、上述した粉砕機からは、残留廃棄材の粗砕に伴う粉塵が飛散することから、その飛散した粉塵が汚染物質(コンタミ)として再生原料に混入してしまい、それによって樹脂製品に黒点等が発生するなど製品の清浄性に問題を生じることがある。このような原材料リサイクル工程における汚染の問題は、例えば下記の各特許文献に開示されているように、CDやDVDなどのように成形作業をクリーンルーム等の気密清浄空間内で行う必要がある場合には特に大きな問題となってしまう。なお、粉砕機をクリーンルームの外部に設置したとしても、飛散した粉塵が汚染物質(コンタミ)として再生原料に混入する点において同様な問題を生じることとなる。
【0005】
【特許文献1】特開平8−197582号公報
【特許文献2】特開2002−127184号公報
【特許文献3】特開2006−7735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、製品の成形後に生じる残留廃棄材を用いた原料リサイクル工程における粉塵汚染を簡易な構成よって良好に防止し、清浄性の高い再生原料を効率的に製造することができるようにした原料再生機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明では、製品の成形後に発生した残留廃棄材が供給される押出用シリンダー手段と、その押出用シリンダー手段の内部に供給された前記残留廃棄材を移送して押出を行う搬送機能部を有する押出用スクリュー手段と、を備えた原料再生機において、前記押出用スクリュー手段の搬送機能部には、前記残留廃棄物の少なくとも一部に係合して当該残留廃棄物を押出用スクリュー手段側に引き込んで粗砕を行う係合引込部が設けられた構成が採用されている。
【0008】
このような構成を有する本発明によれば、製品の成形後に発生した残留廃棄材の粗砕工程が、従来のような破砕機ではなく原料再生機そのものにおいて行われることとなり、原料再生機の押出用シリンダー手段に対して残留廃棄材が直接的に供給された場合であっても、その残留廃棄材が押出用スクリュー手段の搬送機能部に設けられた係合引込部に係合されることから、押出用スクリュー手段の回転に伴って残留廃棄物が押出用スクリュー手段側に引き込まれるようにして連れ回され、押出用スクリュー手段と押出用シリンダー手段との間の狭小隙間内に残留廃棄物が入り込もうとするときに、残留廃棄物の一部が折られるようにして粗砕が行われる。その折られるようにして粗砕された残留廃棄物は、従来の破砕機による粗砕工程後の状態とほぼ同一の状態となることから、以後の押出による再生工程が円滑に行われる。
【0009】
このように本発明によれば、製品成形後に発生する残留廃棄物の粗砕工程が、従来のような破砕機を通すことなく原料再生機において実行されることから、原料再生機に対して残留廃棄物が直接的に供給可能となり、粉砕機を用いた残留廃棄物の粗砕工程が省略されるとともに、それによる粉塵の発生が抑制されるようになっている。
【0010】
また本発明では、前記押出用スクリュー手段の搬送機能部として当該押出用スクリュー手段の軸方向に略螺旋状に延在するフライト部が設けられたものにおいては、前記係合引込部が前記フライト部の外周縁部の一部を切り欠くように形成された凹部からなるように構成することも可能である。
【0011】
このような構成を有する本発明によれば、押出用スクリュー手段のフライト部の外周縁部に凹部状をなすように設けられた係合引込部に対して、原料再生機の押出用シリンダー手段内に供給された残留廃棄材が良好に係合されることから、原料再生機における残留廃棄物の粗砕がより円滑に実行される。
【0012】
また本発明では、前記押出用シリンダー手段の材料投入穴には、当該材料投入穴の開口縁部分に前記供給用スクリュー手段の係合引込部と協働して前記残留廃棄材の粗砕を行う粗砕用段差部が設けられた構成とすることが可能である。
【0013】
このような構成を有する本発明によれば、係合引込部との係合によって押出用スクリュー手段側に引き込まれた残留廃棄物が、材料投入穴の粗砕用段差部の規制作用によって押出用シリンダー手段の外方に飛び出すことなく内部側に保持されるようになることから、上述した残留廃棄物の粗砕が一層良好に行われる。
【0014】
また本発明では、前記押出用シリンダー手段に残留廃棄材を供給する再生原料供給部が取り付けられたものであって、前記再生原料供給部に配置された供給用スクリュー手段の搬送機能部には、前記残留廃棄物の少なくとも一部に係合して当該残留廃棄物を供給用スクリュー手段側に引き込むことにより粗砕を行う係合引込部が設けられた構成を採用することも可能である。
【0015】
このような構成を有する本発明によれば、製品の成形後に発生した残留廃棄材に対する粗砕工程が原料再生機により行われるにあたって、まず最初に再生原料供給部に設けられた供給用スクリュー手段による粗砕が行われ、その再生原料供給部における第一段の粗砕工程が施された後に押出用スクリュー手段による第二段の粗砕工程が実行されることとなることから、比較的大きな寸法の残留廃棄材に対しても、原料再生機による粗砕工程が極めて良好に行われる。
【0016】
また本発明では、前記残留廃棄材を、当該残留廃棄材の自重を利用して前記材料投入穴まで搬送する搬送案内手段が設けられた構成とすることが可能である。
【0017】
このような構成を有する本発明によれば、射出成形機等において発生した残留廃棄材が原料再生機に対して清浄かつ迅速に供給される。
【発明の効果】
【0018】
以上述べたように本発明は、製品の成形後に発生した残留廃棄材の粗砕工程を従来のような破砕機ではなく原料再生機そのものにおいて行い得るように、押出用スクリュー手段の搬送機能部に残留廃棄材と係合する係合引込部を設け、押出用スクリュー手段の回転に伴って残留廃棄物を押出用スクリュー手段側に引き込んで切断し粗砕工程を行う構成としたことにより、製品成形後に発生する残留廃棄物の粗砕工程を従来のような破砕機を通すことなく原料再生機に残留廃棄物を直接的に供給することが可能となり、それによって粉砕機を用いた粗砕工程を省略することができるとともに、粉塵の発生を抑制して清浄性を向上させることができる。従って、残留廃棄材を用いた原材料リサイクルによる再利用を行う際に従来発生していた粉塵汚染を簡易な構成よって良好に防止することができ、清浄性の高い原料を効率的に再生して原料再生機の信頼性及び生産性を低廉かつ大幅に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に示されている本発明の一実施形態においては、気密清浄空間を形成しているクリーンルーム1の内部に、射出成形機2及び原料再生機(ペレット再生装置)3が横方向に並べて設置されており、これら射出成形機2及び原料再生機3が同一の気密清浄空間内に配置されている。なお図1においては、構成を解り易くするために射出成形機2の前方側(図1の左方側)に原料再生機3をずらした状態が表されているが、実際には原料再生機3が射出成形機2に隠れた状態となる。
【0020】
上記クリーンルーム1は、枠体フレーム1aにより支持された天井板1bに、外気を清浄化しつつ取り入れるファインフィルター1cを備えているとともに、上記枠体フレーム1aの側面部には透明の帯電防止シート1dが掛け渡された構成になされている。この気密清浄空間を画成しているクリーンルーム1の枠体フレーム1aには、前記射出成形機2に対して、流動性熱可塑性を有する固形の原材料(以下、単に原材料という。)を供給するための貫通孔1eが適宜の位置に設けられていて、その貫通孔1eを略水平に通過するように配置された吸引管(図示省略)を通して、清浄な状態で袋詰めされた原材料が吸引されるようにして上記射出成形機2のクッションホッパー2a内に送り込まれるようになっている。このような吸引管を通してクリーンルーム1内に送り込まれた原材料は、清浄性を維持した状態で射出成形機2に供給されることとなる。
【0021】
このとき、上述した原材料としては、ペレット状、錠剤、顆粒のいずれかの形態をなすように形成されたものが採用されているが、それらいずれの形態であっても清浄性を有する状態で成形されている。一方、原材料を袋詰めして搬送するなどの段階において原料袋の外表面には塵埃などの汚染物質(コンタミ)が付着するおそれがあり、その原袋内から原材料を取り出して射出成形機2に供給する際に、原袋の外表面に付着していた汚染物質が飛散することなどによって原材料内に混入するおそれがある。従って、上述したように吸引管を通して原材料の供給を行うようにすれば、原料袋から飛散する汚染物質によりクリーンルーム1内が汚染されることが良好に防止される。
【0022】
一方、上述した射出成形機2は、射出用メインスクリューの回転によって溶融原材料を移送して射出を行うよう設けられた可塑化部2bに対して、前記クッションホッパー2aから適宜の量の原材料が定量的に供給される構成になされており、上記可塑化部2bに連接された金型装置2cに対して溶融原材料の射出が適宜のタイミングで行われるようになっている。この射出成形機2としては、いわゆるハングリー成形法(飢餓的成形法)、すなわち上述した可塑化部2bに対して射出樹脂製品に対応した定量の原材料を間欠的に供給して可塑化部2bの供給部にガス抜き空間を形成する構成としたものを採用することができる。
【0023】
また、上記可塑化部2bの後端部分(図示)には、可変速可能の減速機構付きの動力駆動源2dが取り付けられており、その動力駆動源2dに対して片持ち状に連結されたフィードスクリュー(図示省略)が可塑化シリンダ内において回転駆動される構成になされている。そして、上述したクッションホッパー2aから可塑化部2bの可塑化シリンダ内に落下するようにして供給された原材料は、図示を省略したフィードスクリューが回転操作されることによって閉鎖的に移送される構成となっている。前記可塑化部2bのフィードゾーンに対する原材料供給は、操作盤ボックス2eに設けられた各種スイッチ類の操作によって微調整可能となっており、前記可塑化部2bにおける1ショットにて成形される樹脂製品に対応した定量の原材料を間欠的に供給することによって、いわゆるハングリー成形法(飢餓的成形法)が行われるようになっている。
【0024】
このハングリー成形法(飢餓的成形法)においては、上述した可塑化部2bの可塑化シリンダーにおけるフィードゾーンに適宜のガス抜き空隙を常時形成するように維持しつつメインスクリューに対して原材料供給を行う構成になされていることから、加熱された原材料から可塑化シリンダー内に発生した水分やガスをガス抜き空隙から原材料供給口を通して機外に排出することが可能となる。その結果、水分やガスによる樹脂製品質によるボイド、焼け、ヒケ、シンクマーク、曇り、シルバーなどの悪影響が解消され、極めて高品質な射出成形工程が実現される。なお、上述した可塑化シリンダーから排出された水分やガスは、クリーンルーム1内に配置されたダクト等からなる排気経路を通してクリーンルーム1の室外側に排気される構成になされており、それによってクリーンルーム1内の清浄性が維持されるようになっている。
【0025】
このようなハングリー成形方法(飢餓的出成形方法)を採用した射出成形機2によって成形されたCDやDVDなどのような清浄性を要求する樹脂製品は、上述した金型装置2cの開放によって下方に落下するようにして取り出されるが、それと同時に、その金型装置2cにおける樹脂注入口と製品成形部との間の原材料誘導流路に沿って形成されたスプルー、ランナー、ゲートなどの残留廃棄材が、ゲート部分の先端から樹脂製品を切り離された後に周知構造の取出機2fによる把持・引き上げ操作によって上記金型装置2cから取り出されて下方に落下される構成になされている。
【0026】
また、上述した取出機2fの直下位置には、搬送案内手段として傾斜状に設置されたダストシュート4の上端部分が配置されており、金型装置2cから取り出されて落下されたスプルー、ランナー、ゲートなどの残留廃棄材がダストシュート4に受け止められるようになっている。このダストシュート4は、前記射出成形機2の金型装置2cと、その横に並ぶように配置された原料再生機(ペレット再生装置)3のクッションホッパー31との間を掛け渡すように配置された板状部材からなるものであって、前記射出成形機2の金型装置2cから取り出されたスプルー、ランナー、ゲートなどの残留廃棄材を原料再生機3のクッションホッパー31まで搬送可能する機能を有している。
【0027】
本実施形態における上記ダストシュート4は、射出成形機2側から原料再生機(ペレット再生装置)3側に向かって適宜の角度で下降する方向に傾斜した配置関係になされている。すなわち、上述した射出成形機2の金型装置2cから取り出されたスプルー、ランナー、ゲートなどの残留廃棄材は、当該ダストシュート4における高い位置に配置された一端部分で受け止められた後に、低い位置に配置された当該ダストシュート4の他端部分、つまり原料再生機3のクッションホッパー31の上端開口部側に向かって、当該残留廃棄材の自重により下降するようにして搬送される構成になされている。
【0028】
また、本実施形態における原料再生機(ペレット再生装置)3としては、図3,図4及び図5に示されているような小型化された特殊スクリュー型の押出機が採用されている。この原料再生機3に設けられたクッションホッパー31には、上述したように射出成形機2において製品成形後に発生したスプルー、ランナー、ゲートなどの残留廃棄材Aが、ダストシュート4を通して直接的に投入される構成になされており、そのクッションホッパー31を通して自重落下される残留廃棄材Aが、略水平に延在するように配置された押出用メインシリンダー32の材料投入穴32aから当該押出用メインシリンダー32の内部空間に向かって供給される構成になされている。
【0029】
上記押出用メインシリンダー32は、略中空円筒状をなす長尺状部材から形成されており、その押出用メインシリンダー32の内部には、同じく長尺状部材からなる押出用メインスクリュー32bが略水平方向に延在するように配置されている。この押出用メインスクリュー32bは、装置全体の図示右端部分に配置された駆動モータ32cに対して、ジャーナル及びスラスト用の軸受部32dを介して片持ち支持状態をなすように連結されており、当該押出用メインスクリュー32bの外周部には、螺旋螺子状をなすようにして延在するフライト部32eが設けられている。このフライト部32eは、上記押出用メインスクリュー32bの搬送機能部を構成するものであって、押出用メインスクリュー32bが駆動モータ32cにより回転駆動されたときに当該フライト部32eの螺旋状壁面に沿って残留廃棄材の移送が行われるようになっている。
【0030】
この搬送機能部としてのフライト部32eは、特に図6に示されているように、正面形状が略円形状をなすように形成されており、当該フライト部32eにおける前記残留廃棄材の供給領域、すなわち上述した材料投入穴32aの直下位置に相当する部位には、このフライト部32eの外周縁部の一部を略円弧状に切り欠いた形状の凹部からなる係合引込部32fが複数箇所にわたって設けられている。これらの各係合引込部32fは、上述した押出用メインシリンダー32の材料投入穴32aを通して供給された残留廃棄材の少なくとも一部に引っ掛かるように係合される形状を有するものであり、上述した残留廃棄材の供給領域からその前後の領域にかけて、上記フライト部32eの外周縁部の螺旋方向に沿って適宜の間隔をなして配置されている。
【0031】
一方、上述した押出用メインシリンダー32の材料投入穴32aは、前記押出用メインシリンダー32の円筒状肉厚部を半径方向に貫通するようにして設けられているが、その材料投入穴32aが、前記押出用メインスクリュー32b側に向かって開口している内端部を形成している開口縁部分には、断面階段状をなすように形成された粗砕用段差部32gが設けられている。この粗砕用段差部32gは、上述した材料投入穴32aの開口縁部であって前記残留廃棄材の移送方向における最下流位置に、軸方向の凹凸形状をなすように配置されており、前記押出用メインスクリュー32bに設けられた係合引込部32fに対して、当該粗砕用段差部32gの凸部が凹部を介して上方側から被さるように軸方向に張り出して半径方向に対面する形状になされている。そして、上述したようにして係合引込部32fに嵌合されることによって押出用メインスクリュー32b側に引き込まれた残留廃棄材の一部が、上述した粗砕用段差部32gの凹部内に引き込まれる構成になされている。
【0032】
一方、上述した押出用メインシリンダー32の内周面と押出用メインスクリュー32bのフライト部32eとの間には、半径方向における狭小隙間が形成されていて、その狭小空間の内部に、上述したようにして係合引込部32fに係合された残留廃棄材が引き込まれた際に、当該残留廃棄材が上記狭小隙間の内部で折り曲げられるようにして切断され、それによって残留廃棄材の粗砕が行われるようになっている。
【0033】
そして、その残留廃棄物の粗砕が行われる際には、上述した粗砕用段差部32gの規制作用によって残留廃棄物が押出用メインシリンダー32の外方に飛び出すことなく内部側に保持されることから、残留廃棄物の粗砕は極めて良好に行われる。このように本実施形態では、押出用メインスクリュー32b側の係合引込部32fと、押出用メインシリンダー32側の粗砕用段差部32gとの協働によって残留廃棄材の粗砕が行われるようになっている。
【0034】
さらに、上述した押出用メインシリンダー32の外周表面には、複数個の環状加熱器32hが軸方向沿って適宜の間隔をなして配置されており、それらの各環状加熱器32hからの発熱作用によって、上記押出用メインシリンダー32内に供給された残留廃棄材が溶融状態になされるようになっている。その溶融状態になされた残留廃棄材は、上述した押出用メインスクリュー32bに設けられたフライト部32eの回転移送作用によって図示左方向に順次搬送されていくこととなるが、その移送過程で分離された空気成分は、上記押出用メインシリンダー32の中間位置に開口するように設けられた複数のベント口(図示省略)から、前記クリーンルーム1内に配置されたダクト等からなる排気経路を通してクリーンルーム1の室外側に向かって排気される構成になされている。
【0035】
また、上述した押出用メインシリンダー32の軸方向先端部分には、適宜の形状の吐出開口部を有するダイス32iが取り付けられており、そのダイス32iの吐出開口部から上述した残留廃棄材の溶融物が連続的に押し出されることによって細線状の再生原料が成形される構成になされている。
【0036】
さらにまた、上記ダイス32iの吐出開口部には、いわゆるホットカット方式のカッタ機構を構成する回転切断刃32jが近接して設けられている。この回転切断刃32jは、上述した押出用メインシリンダー32の中心軸に対して偏心配置された駆動モータ32kにより回転駆動される固定円盤32mの外周部分に取り付けられていて、その固定円盤32mの回転に伴って上記回転切断刃32jが上下方向に移動するときに、上述したダイス32iの吐出開口部から押し出された細線状の再生原料が所定の長さに切断され、それにより形成されたペレット状の再生原料が下方に落下する構成になされている。
【0037】
このようにして成形されたペレット状の再生原料は、装置下部に配置された収納容器32n内に適宜の量だけ集められた後に、上述したクリーンルーム1の内部空間において前記射出成形機2側に戻され、前述した射出成形機2のクッションホッパー2aから成形機内に再投入される。
【0038】
このように本実施形態においては、製品の射出成形後に発生した残留廃棄材の粗砕工程が、従来のような破砕機ではなく原料再生機3そのものにおいて行われる。すなわち、原料再生機3の押出用メインシリンダー32に対して残留廃棄材が直接的に供給された場合であっても、その残留廃棄材の少なくとも一部が押出用メインスクリュー32bのフライト部32eに設けられた係合引込部32fに係合され、押出用メインスクリュー32bの回転に伴って残留廃棄物が押出用メインスクリュー32b側に引き込まれるようにして連れ回される。そして、押出用メインスクリュー32bと押出用メインシリンダー32との間の狭小隙間内に残留廃棄物が入り込もうとするときに、その残留廃棄物の一部が折られるようにして粗砕が行われる。
【0039】
このとき特に本実施形態では、押出用メインスクリュー32b側に引き込まれた残留廃棄物が、押出用メインスクリュー32b側の係合引込部32fと押出用メインシリンダー32側の粗砕用段差部32gとの協働によって残留廃棄材の粗砕が行われる構成になされていることから、上述した残留廃棄物の粗砕は非常に良好に行われる。
【0040】
このようにして粗砕された残留廃棄物は、従来の破砕機による粗砕工程後の状態とほぼ同一の状態となることから、以後の押出による再生工程が円滑に行われることとなる。
【0041】
上述したように本実施形態によれば、製品成形後に発生する残留廃棄物の粗砕工程が、従来のような破砕機を通すことなく原料再生機3において実行されることから、原料再生機3に対して残留廃棄物が直接的に供給可能となり、粉砕機を用いた残留廃棄物の粗砕工程が省略されるとともに、それによる粉塵の発生が抑制されるようになっている。
【0042】
このとき特に本実施形態においては、原料再生機3の押出用メインスクリュー32bのフライト部32eの外周縁部に凹状をなして設けられた係合引込部32fに、原料再生機の押出用メインシリンダー32内に供給された残留廃棄材の一部が良好に係合されることから、原料再生機における残留廃棄物の粗砕がより円滑に実行される。
【0043】
さらに特に本実施形態においては、射出成形機2による製品の成形後に発生した残留廃棄材に対して、原料再生機3による粗砕工程が気密清浄空間としてのクリーンルーム1内の清浄な環境下で実行されることから、クリーンルーム1における原材料リサイクルが効率的かつ清浄に行われるようになっている。すなわち、射出成形工程と原料再生工程とが同一の気密清浄空間内において行われるため、空気中に浮遊する塵埃や、他の機器から発生するオイルミスト・摩耗粉などの汚染物質(コンタミ)の付着・混入が防止され、当初の原材料として清浄性の高いものが使用されていれば、再生原料の清浄性が良好に維持されるようになっている。
【0044】
さらに上述した実施形態においては、射出成形機2において発生した残留廃棄材を、当該残留廃棄材の自重を利用して前記原料再生機(ペレット再生装置)3まで搬送する搬送案内手段を構成するダストシュート4が配置されていることから、射出成形機2において発生した残留廃棄材が清浄性を維持しつつ原料再生機3に対して迅速に供給されるようになっている。
【0045】
ことのき本実施形態では、原料再生工程により再生した原材料を射出成形機2に再供給する再生原料供給工程を、射出成形工程及び原料再生工程を行う気密清浄空間内において行うようにしていることから、射出から再生原料の再供給までの全工程における清浄性が良好に維持されるようになっている。
【0046】
一方、射出成形機2等から発生した残留廃棄材が大きい場合には、例えば図7に示されているような再生原料供給部13が、前述した実施形態における原料再生機(ペレット再生装置)3に用いられているクッションホッパー31に替えて採用され、クッションホッパー31が取り外された状態になされた前記原料再生機3の押出用メインシリンダー32に対して上部側から再生原料供給部13が取り付けられる。
【0047】
その再生原料供給部13に設けられたクッションホッパー131には、射出成形機2の製品成形により発生したスプルー、ランナー、ゲートなどの残留廃棄材が直接的に投入される構成になされており、そのクッションホッパー131を通して自重落下される残留廃棄材が、略水平に延在するように配置された供給用シリンダー132の材料投入穴132aから当該供給用シリンダー132の内部空間に向かって供給される構成になされている。
【0048】
上記供給用シリンダー132の内部には、比較的短い長さの供給用スクリュー132bが略水平方向に延在するように配置されている。この供給用スクリュー132bは、装置全体の図示右端部分に配置された駆動モータ132cに対して、ジャーナル及びスラスト用の一対の軸受部132d,132dを介して両持ちの支持状態をなすように連結されており、当該供給用スクリュー132bの外周部には、螺旋螺子状をなすようにして延在するフライト部132eが搬送機能部を構成するように設けられている。
【0049】
このフライト部132eにおける前記残留廃棄材の供給領域、すなわち上述した材料投入穴132aの直下位置に相当する部位には、当該フライト部132eの外周縁部の一部を略円弧状に切り欠くようにして形成された凹部からなる係合引込部132fが設けられている。この係合引込部132fは、上述した第1の実施形態と同様な構成を有するもの(図6中の符号32f参照)であって、供給用シリンダー132の材料投入穴132aを通して供給された残留廃棄材の少なくとも一部に引っ掛かるようにして係合されるように形成されており、上述した残留廃棄材の供給領域からその前後の領域にかけて、上記フライト部132eの外周縁部の螺旋方向に沿って適宜の間隔をなして配置されている。
【0050】
一方、上述した押出用メインシリンダー132の材料投入穴132aは、前記供給用シリンダー132の円筒状肉厚部を半径方向に貫通するようにして設けられているが、その材料投入穴132aが、前記供給用シリンダー132側に向かって開口している内端部を構成している開口縁部分には、断面階段状の凹凸形状をなすようにして粗砕用段差部132gが設けられている。この粗砕用段差部132gの凸部は、凹部を介して、上述した供給用スクリュー132bに設けられた係合引込部132fに対して上方側から被さるように軸方向に張り出して半径方向に対面する形状になされている。
【0051】
一方、上述した押出用メインシリンダー32の内周面と供給用スクリュー132bのフライト部132eとの間には、半径方向の狭小隙間が形成されていて、上述したようにして係合引込部132fに係合された残留廃棄材が上記狭小隙間内に引き込まれた際に、当該残留廃棄材が上記狭小隙間の内部で折れ曲がるようにして切断され、それによって残留廃棄材の粗砕が行われるようになっている。
【0052】
このように供給用シリンダー132内に供給された残留廃棄材は、供給用スクリュー132bに設けられたフライト部132eの回転移送作用によって図示右方向に順次搬送されていくこととなるが、その供給用スクリュー132bのフライト部132eの先端(図示左端)に位置する部分の直下位置には、下方に向かって延在する材料供給通路132hが設けられており、その材料供給通路42iを通して、上述した残留廃棄材の粗砕物が定量ずつ前述した押出用メインシリンダー32の内方に向かって送り出されるように構成されている。
【0053】
このように本実施形態では、製品を射出成形した後の残留廃棄材に対する粗砕工程を原料再生機3により行うにあたって、まず最初に再生原料供給部13に残留廃棄材が投入されて供給用スクリュー132bにより第一段階の粗砕工程が行われ、その後に前述した押出用メインスクリュー32bによる第二段の粗砕工程が実行されるように構成されていることから、比較的大きな寸法の残留廃棄材が発生する場合であっても、原料再生機3における残留廃棄材の粗砕工程が極めて良好に行われる。
【0054】
以上、本発明者によってなされた発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0055】
例えば、上述した実施形態は、射出成形工程においてCDやDVDを成形するものであるが、本発明はそれに限定されることなく、射出成形以外の他の成形方式によって多種多様な樹脂製品を成形する場合に対して適用することが可能である。
【0056】
また、上述した各実施形態においては、スクリューのフライト部に係合引込部を設ける構成を採用しているが、スクリューの搬送機能部であればいずれの部位であっても係合引込部を設けることが可能である。
【0057】
さらに、上述した各実施形態における係合引込部は、凹部形状を有する用に形成されているが、凸部形状をなすように形成することも可能である。
【0058】
また、上述した実施形態は、原料再生機をクリーンルーム内に配置したものであるが、クリーンルームを用いない場合であっても当然に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上述べたように本発明は、射出成形等により樹脂製品を成形する場合に発生する多種多様な残留廃棄材の再生利用に対して広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態にかかる原料再生機を、射出成形機とともにクリーンルーム内に設置された状態を模式的に表した縦断面説明図である。
【図2】図1に示されたクリーンルームの内部状態を表した横断面説明図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる原料再生機全体の概略構造を表した側面説明図である。
【図4】図3に表された原料再生機における内部構造の概略を表した縦断面説明図である。
【図5】図3及び図4に表された原料再生機の概略を表した平面説明図である。
【図6】図1乃至図5に表された原料再生機に用いられているメインスクリューのフライト部を表した横断面説明図である。
【図7】図1乃至図5に表された原料再生機に取り付けられる原料供給装置の概略構造を表した縦断面説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 クリーンルーム(気密清浄空間)
2 射出成形機
2a クッションホッパー
2b 可塑化部
2c 金型装置
2d 動力駆動源
2e 操作盤ボックス
2f 取出機
3 原料再生機(ペレット再生装置)
31 クッションホッパー
32 押出用メインシリンダー
32a 材料投入穴
32b 押出用メインスクリュー
32c 駆動モータ
32d 軸受部
32e フライト部(搬送機能部)
32f 係合引込部
32g 粗砕用段差部
32h 環状加熱器
32i ダイス
32j 回転切断刃
32n 収納容器
4 ダストシュート(搬送案内手段)
A 残留廃棄材
13 再生原料供給部
131 クッションホッパー
132 供給用シリンダー
132a 材料投入穴
132b 供給用スクリュー
132c 駆動モータ
132e フライト部(搬送機能部)
132f 係合引込部
132g 粗砕用段差部
132h 材料供給通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の成形後に発生した残留廃棄材が材料投入穴を通して供給される押出用シリンダー手段と、その押出用シリンダー手段の内部に供給された前記残留廃棄材を移送して押出を行う搬送機能部を有する押出用スクリュー手段と、を備えた原料再生機において、
前記押出用スクリュー手段の搬送機能部には、前記残留廃棄物の少なくとも一部に係合して当該残留廃棄物を押出用スクリュー手段側に引き込んで粗砕を行う係合引込部が設けられていることを特徴とする原料再生機。
【請求項2】
前記押出用スクリュー手段の搬送機能部として、当該押出用スクリュー手段の軸方向に沿って略螺旋状に延在するフライト部が設けられ、
そのフライト部の外周縁部の一部を凹状に切り欠くようにして前記係合引込部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の原料再生機。
【請求項3】
前記押出用シリンダー手段の材料投入穴には、当該材料投入穴の開口縁部分に前記供給用スクリュー手段の係合引込部と協働して前記残留廃棄材の粗砕を行う粗砕用段差部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の原料再生機。
【請求項4】
前記押出用シリンダー手段に残留廃棄材を供給する再生原料供給部が取り付けられたものであって、
前記再生原料供給部に配置された供給用スクリュー手段の搬送機能部には、前記残留廃棄物の少なくとも一部に係合して当該残留廃棄物を供給用スクリュー手段側に引き込んで粗砕を行う係合引込部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の原料再生機。
【請求項5】
前記残留廃棄材を、当該残留廃棄材の自重を利用して前記材料投入穴まで搬送する搬送案内手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載の原料再生機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−39871(P2009−39871A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204046(P2007−204046)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(504159682)
【Fターム(参考)】