説明

双極型二次電池

【課題】双極型二次電池の劣化を抑制する手段を提供する。
【解決手段】導電性を有する樹脂層を含む集電体の一方の面に正極活物質層が形成され、他方の面に負極活物質層が形成される双極型電極が電解質層を介して積層された発電要素と、前記発電要素の前記双極型電極の積層方向の両端に配置される集電板と、前記発電要素の両端に配置される少なくとも一方の集電体と前記集電板との間に配置される前記集電体よりも面方向の導電率が高い導電層と、を有し、前記発電要素の両端に配置される少なくとも一方の集電体と前記集電板との間の接触抵抗が20Ω・cm未満である、双極型二次電池である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双極型二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護のため二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用電池の開発が鋭意行われている。自動車用途の電池としては、双極型電池に注目が集まっている。双極型電池は、集電体を介して縦方向(電極の積層方向)に電流が流れるため、電子の伝導パスを短くでき、高出力になる。これにより、電池電圧の高い電池が構成できる。
【0003】
双極型電池は、正極活物質層および負極活物質層が各面に形成される集電体を構成部材として含む。この集電体の軽量化を目的として、特許文献1では、導電性を有する樹脂層を含む集電体を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−190649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているような導電性を有する樹脂層を含む集電体(以下、単に樹脂集電体とも称する)は、面方向の体積抵抗率が高く、金属集電体のように集電体の面内で電流が流れにくい。したがって、発電要素の両端に配置される集電板と発電要素の最外層に配置される集電体との接触面積が小さい、すなわち接触抵抗が大きいと、電池の鉛直方向に流れる充放電電流は、集電板と集電体とが接触している鉛直方向の部分でしか流れない。
【0006】
よって、電池内部において電流分布が生じるため、すなわち、電流の流れる部位で充放電による負荷が高くなるため、双極型二次電池の劣化が進む可能性がある。
【0007】
そこで本発明は、双極型二次電池の劣化を抑制する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意研究を積み重ねた。その結果、双極型二次電池の発電要素の両端に配置される少なくとも一方の集電体(以下、単に最外層集電体とも称する)と集電板との間に配置され、かつ前記最外層集電体よりも面方向の導電率が高い導電層を設けることによって、上記目的が達成されることを見出した。
【発明の効果】
【0009】
導電層を有する双極型二次電池の電流は、樹脂集電体よりも導電率が高い導電層において面方向に流れうる。また、導電層を有する双極型二次電池においては、集電体と集電板との接触抵抗が低減されるため、導電層において面方向に均一化された電流分布を維持することができる。したがって、発電要素内での面方向の電流分布が抑制され、双極型二次電池の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】双極型リチウムイオン二次電池の全体構造を表した断面概略図である。
【図2】第1実施形態の双極型リチウムイオン二次電池の発電要素の一部を模式的に表した断面概略図である。
【図3】第2実施形態の双極型リチウムイオン二次電池の発電要素の一部を模式的に表した断面概略図である。
【図4】導電層および集電層の平面形状の例を模式的に表した概略図である。
【図5】導電層および集電層の断面形状の例を模式的に表した概略図である。
【図6】双極型リチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【図7】組電池の外観図である。
【図8】組電池を搭載した車両の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、好ましい実施形態である双極型リチウムイオン二次電池について説明するが、以下の実施形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
双極型電池の構造・形態で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など特に制限されず、従来公知のいずれの構造にも適用されうる。
【0013】
同様に双極型電池の電解質の形態で区別した場合にも、特に制限はない。例えば、非水電解液をセパレータに含浸させた液体電解質型電池、ポリマー電池とも称される高分子ゲル電解質型電池および固体高分子電解質(全固体電解質)型電池のいずれにも適用されうる。高分子ゲル電解質および固体高分子電解質に関しては、これらを単独で使用することもできるし、これら高分子ゲル電解質や固体高分子電解質をセパレータに含浸させて使用することもできる。
【0014】
また、電池の電極材料または電極間を移動する金属イオンで見た場合にも、特に制限されず、公知のいずれの電極材料等にも適用されうる。例えば、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、カリウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、ニッケルカドミウム二次電池、ニッケル水素電池などが挙げられ、好ましくは、リチウムイオン二次電池である。これは、リチウムイオン二次電池では、セル(単電池層)の電圧が大きく、高エネルギー密度、高出力密度が達成でき、車両の駆動電源用や補助電源用として優れているためである。
【0015】
図1は、双極型リチウムイオン二次電池10の全体構造を模式的に表した断面概略図である。図1に示す双極型リチウムイオン二次電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装材であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
【0016】
図1に示すように、双極型リチウムイオン二次電池10の発電要素21は、集電体11の一方の面に電気的に結合した正極活物質層13が形成され、集電体11の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層15が形成された複数の双極型電極23を有する。各双極型電極23は、電解質層17を介して積層されて発電要素21を形成する。なお、電解質層17は、基材としてのセパレータの面方向中央部に電解質が保持されてなる構成を有する。この際、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各双極型電極23および電解質層17が交互に積層されている。すなわち、一の双極型電極23の正極活物質層13と前記一の双極型電極23に隣接する他の双極型電極23の負極活物質層15との間に電解質層17が挟まれて配置されている。
【0017】
隣接する正極活物質層13、電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層19を構成する。したがって、双極型リチウムイオン二次電池10は、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、電解質層17からの電解液の漏れによる液絡を防止する目的で、単電池層19の外周部にはシール部(絶縁層)31が配置されている。なお、発電要素21の最外層に位置する正極側の最外層集電体11aには、片面のみに正極活物質層13が形成されている。また、発電要素21の最外層に位置する負極側の最外層集電体11bには、片面のみに負極活物質層15が形成されている。ただし、正極側の最外層集電体11aの両面に正極活物質層13が形成されてもよい。同様に、負極側の最外層集電体11bの両面に負極活物質層15が形成されてもよい。
【0018】
さらに、図1に示す双極型二次電池10では、正極側の最外層集電体11aに隣接するように正極集電板25が配置され、これが延長されて電池外装材であるラミネートフィルム29から導出している。一方、負極側の最外層集電体11bに隣接するように負極集電板27が配置され、同様にこれが延長されて電池の外装であるラミネートフィルム29から導出している。
【0019】
図1に示す双極型リチウムイオン二次電池10においては、通常、各単電池層19の周囲に絶縁部31が設けられる。この絶縁部31は、電池内で隣り合う集電体11どうしが接触したり、発電要素21における単電池層19の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止する目的で設けられる。かような絶縁部31の設置により、長期間の信頼性および安全性が確保され、高品質の双極型リチウムイオン二次電池10が提供されうる。
【0020】
なお、単電池層19の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、双極型二次電池10では、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できれば、単電池層19の積層回数を少なくしてもよい。双極型リチウムイオン二次電池10でも、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、発電要素21を電池外装材であるラミネートフィルム29に減圧封入し、正極集電板25および負極集電板27をラミネートフィルム29の外部に取り出した構造とするのがよい。
【0021】
図2は、図1に示す双極型リチウムイオン電池10の発電要素21の一部を模式的に表した断面概略図である。図2に示すように、正極側の集電板25と正極側の最外層集電体11aとの間に導電層12aが設けられている。
【0022】
一般に、樹脂集電体は、面方向の体積抵抗率が1〜10Ω・cm程度と高い値であり、面方向の体積抵抗率が5×10−5Ω・cm程度である金属集電体と比べて、集電体の面内で電流が流れにくい。したがって、発電要素の両端に配置される集電板と発電要素の最外層に配置される集電体との接触面積が小さい、すなわち接触抵抗が大きいと、電池の鉛直方向に流れる充放電電流は、集電板と最外層集電体とが接触している鉛直方向の部分でしか流れない。よって、双極型二次電池の内部において電流のばらつき(電流分布)が生じるため、電流の流れる部位で充放電による負荷が高くなり、双極型二次電池の劣化が進む可能性がある。
【0023】
本実施形態の双極型二次電池においては、最外層に配置されている集電体と集電板との間に、樹脂集電体よりも導電率が高い導電層が設けられている。集電体の高分子材料は、面方向の抵抗が大きいために面方向の電流が流れないが、導電層を設けることにより面方向の電流が一定になり、集電体の面内の電流のばらつき(電流分布)が低減される。よって、最外層に配置される集電体と集電板との接触抵抗を低減させることができ、双極型二次電池の内部抵抗を低減させ、双極型電池の劣化を抑制することができる。
【0024】
以下、本実施形態の双極型二次電池について、詳細に説明する。
【0025】
(集電体)
集電体は導電性を有する樹脂層を含む。好適には、集電体は、導電性を有する樹脂層からなる。樹脂層は、導電性を有し、必須に樹脂を含み、集電体の役割を果たす。樹脂層が導電性を有するには、具体的な形態として、1)樹脂を構成する高分子材料が導電性高分子である形態、2)樹脂層が樹脂および導電性フィラー(導電材)を含む形態が挙げられる。
【0026】
導電性高分子は、導電性を有し、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料から選択される。これらの導電性高分子は、共役したポリエン系がエネルギー帯を形成し伝導性を示すと考えられている。代表的な例としては電解コンデンサなどで実用化が進んでいるポリエン系導電性高分子を用いることができる。具体的には、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、ポリオキサジアゾール、またはこれらの混合物などが好ましい。電子伝導性および電池内で安定に使用できるという観点から、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、がより好ましい。
【0027】
上記2)の形態に用いられる導電性フィラー(導電材)は、導電性を有する材料から選択される。好ましくは、導電性を有する樹脂層内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが望ましい。
【0028】
具体的には、アルミニウム材、ステンレス(SUS)材、グラファイトやカーボンブラックなどのカーボン材、銀材、金材、銅材、チタン材などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金材が用いられてもよい。好ましくは銀材、金材、アルミニウム材、ステンレス材、カーボン材、さらに好ましくはカーボン材である。またこれらの導電性フィラー(導電材)は、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記導電材)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0029】
また、導電性フィラー(導電材)の形状(形態)は、粒子形態で用いればよいが、粒子形態に限られず、カーボンナノチューブなど、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されている粒子形態以外の形態であってもよい。
【0030】
カーボン粒子としては、カーボンブラックやグラファイトなどが挙げられる。カーボンブラックやグラファイトなどのカーボン粒子は電位窓が非常に広く、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、さらに導電性に優れている。また、カーボン粒子は非常に軽量なため、質量の増加が最小限になる。さらに、カーボン粒子は、電極の導電助剤として用いられることが多いため、これらの導電助剤と接触しても、同材料であるがゆえに接触抵抗が非常に低くなる。なお、カーボン粒子を導電性粒子として用いる場合には、カーボンの表面に疎水性処理を施すことにより電解質のなじみ性を下げ、集電体の空孔に電解質が染み込みにくい状況を作ることも可能である。
【0031】
導電性フィラーの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、0.01〜10μm程度であることが望ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電性フィラーの輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。後述する活物質粒子などの粒子径や平均粒子径も同様に定義することができる。
【0032】
また、樹脂層が導電性フィラーを含む形態の場合、樹脂層を形成する樹脂は、上記導電性フィラーに加えて、当該導電性フィラーを結着させる導電性のない高分子材料を含んでいてもよい。樹脂層の構成材料として高分子材料を用いることで、導電性フィラーの結着性を高め、電池の信頼性を高めることができる。高分子材料は、印加される正極電位および負極電位に耐えうる材料から選択される。
【0033】
高分子材料の例としては、好ましくは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはこれらの混合物が挙げられる。これらの材料は電位窓が非常に広く正極電位、負極電位のいずれに対しても安定である。また軽量であるため、電池の高出力密度化が可能となる。
【0034】
樹脂層における、導電性フィラーの比率は、特に限定されないが、好ましくは、高分子材料および導電性フィラーの合計に対して、1〜30質量%の導電性フィラーが存在する。十分な量の導電性フィラーを存在させることにより、樹脂層における導電性を十分に確保できる。
【0035】
上記樹脂層には、導電性フィラーおよび樹脂の他、他の添加剤を含んでいてもよいが、好ましくは、導電性フィラーおよび樹脂からなる。
【0036】
樹脂層は、従来公知の手法により製造できる。例えば、スプレー法またはコーティング法を用いることにより製造可能である。具体的には、高分子材料を含むスラリーを調製し、これを塗布し硬化させる手法が挙げられる。スラリーの調製に用いられる高分子材料の具体的な形態については上述した通りであるため、ここでは説明を省略する。前記スラリーに含まれる他の成分としては、導電性フィラーが挙げられる。導電性粒子の具体例については上述の通りであるために、ここでは説明を省略する。あるいは、高分子材料および導電性粒子、その他の添加剤を従来公知の混合方法にて混合し、得られた混合物をフィルム状に成形することで得られる。また、例えば、特開2006−190649号公報に記載の方法のように、インクジェット方式により樹脂層を作製してもよい。
【0037】
集電体の厚さは、特に限定されるものではないが、電池の出力密度を高める上では、薄いほど好ましい。双極型電池においては、正極および負極の間に存在する樹脂集電体は、積層方向に水平な方向の電気抵抗が高くてもよいため、集電体の厚さを薄くすることが可能である。具体的には、集電体の厚さは、0.1〜150μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。
【0038】
(活物質層)
[正極(正極活物質層)および負極(負極活物質層)]
活物質層13または15は活物質を含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
【0039】
正極活物質層13は、正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば、LiMn、LiCoO、LiNiO、Li(Ni−Co−Mn)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム−遷移金属複合酸化物、リチウム−遷移金属リン酸化合物、リチウム−遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。なお、上記以外の正極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0040】
負極活物質層15は、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム−遷移金属複合酸化物(例えば、LiTi12)、金属材料、リチウム合金系負極材料などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料またはリチウム−遷移金属複合酸化物が、負極活物質として用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
【0041】
各活物質層13、15に含まれるそれぞれの活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高出力化の観点からは、好ましくは1〜20μmである。
【0042】
正極活物質層13および負極活物質層15は、バインダを含む。
【0043】
活物質層に用いられるバインダとしては、特に限定されないが、例えば、以下の材料が挙げられる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、スチレン・ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミドであることがより好ましい。これらの好適なバインダは、耐熱性に優れ、さらに電位窓が非常に広く正極電位、負極電位双方に安定であり活物質層に使用が可能となる。これらのバインダは、1種単独で用いてもよいし、2種併用してもよい。
【0044】
活物質層中に含まれるバインダ量は、活物質を結着することができる量であれば特に限定されるものではないが、好ましくは活物質層に対して、0.5〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
【0045】
活物質層に含まれうるその他の添加剤としては、例えば、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が挙げられる。
【0046】
導電助剤とは、正極活物質層または負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
【0047】
電解質塩(リチウム塩)としては、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。
【0048】
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
【0049】
正極活物質層および負極活物質層中に含まれる成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、非水溶媒二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。各活物質層の厚さについても特に制限はなく、電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、各活物質層の厚さは、2〜100μm程度である。
【0050】
なお、本項目で説明した正極活物質層および負極活物質層の形成材料は、前記導電層の形成材料として用いられうる。
【0051】
(電解質層)
電解質層13を構成する電解質としては、液体電解質またはポリマー電解質が用いられうる。
【0052】
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられうる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)等のカーボネート類が例示される。また、支持塩(リチウム塩)としては、LiBETI等の電極の活物質層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。
【0053】
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲル電解質と、電解液を含まない真性ポリマー電解質に分類される。
【0054】
ゲル電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。マトリックスポリマーとして用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系ポリマーには、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
【0055】
なお、電解質層が液体電解質やゲル電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
【0056】
真性ポリマー電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。したがって、電解質層が真性ポリマー電解質から構成される場合には電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
【0057】
ゲル電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
【0058】
(集電板)
集電板の材質としては、例えば、金属や導電性高分子が採用されうる。電気の取り出しやすさの観点からは、好適には金属材料が用いられる。具体的には、例えば、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、銅などの金属材料が挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性、電池作動電位という観点からは、アルミニウム、銅が好ましい。
【0059】
(導電層)
導電層は、発電要素の両端に配置される少なくとも一方の集電体(最外層集電体)と集電板との間に配置されていればよい。もちろん、発電要素の両端に配置される両方の集電体と集電板との間に配置されていてもよい。
【0060】
導電層の導電率は、前記集電体の導電率よりも大きい。集電体の高分子材料は、面方向の抵抗が大きいために面方向の電流が流れないが、導電層を設けることにより面方向の電流が一定になり、集電体の面内の電流のばらつき(電流分布)が低減される。よって、最外層に配置される集電体と集電板との接触抵抗を低減させることができ、双極型電池の内部抵抗を低減させ、双極型電池の劣化を抑制することができる。
【0061】
前記導電層の形成材料は、導電性を有するものであれば特に制限されない。形成材料の具体的な例としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレスなどの金属材料、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化チタン(TiO)などの無機酸化物、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの導電性高分子などが挙げられる。
【0062】
また、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボン材料が分散している高分子材料も導電層として用いることができる。この高分子材料の例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミドなどが挙げられる。
【0063】
さらに、電極活物質を含む電極材料も、前記導電層の形成材料として好適に用いられる。電極材料としては、例えば、上述の「正極(正極活物質層)および負極(負極活物質層)」の項で説明する材料が挙げられる。具体的には、上述の「正極(正極活物質層)および負極(負極活物質層)」の項で説明したとおりであるため、ここでは説明を省略する。
【0064】
導電層の平面形状は特に制限されず、例えば、図4のAに示すような箔状、図4のBに示すようなメッシュ状、図4のCに示すような多孔質状などが挙げられる。特に、図4のBに示すようなメッシュ状、図4のCに示すような多孔質状であれば、導電層の弾性率がより低下し、集電板の凹凸により追従しやすくなる。メッシュ状または多孔質状の集電層として用いられる材料の例としては、例えば、カーボンまたは金属粒子で被服した導電性を持たせたアラミドなどの不織布、カーボンナノファイバーからなる多孔質フィルム、カーボンなどの導電性ペーストからなる空孔を有する多孔質フィルムなどが挙げられる。
【0065】
また、導電層の断面形状も特に制限されず、例えば、図5のAに示すような平状、図5のBに示すような波型状などが挙げられる。
【0066】
前記導電層の厚さは、前記集電板の厚さ以下であることが好ましい。かような厚さであれば、上述の効果がより一層発揮されうる。前記導電層が、上記の電極材料から形成される場合、その厚さは、発電要素に含まれる双極型電極を構成する電極活物質層(正極活物質層または負極活物質層)の厚さ以下であることが好ましい。前記導電層は、集電板と集電体との電気的な接触を保つ厚さがあれば良く、双極型電極を構成する電極活物質層の厚さよりも薄くすることが可能となるため、これにより、双極型電池の出力特性をも向上させることができる。
【0067】
さらに、前記導電層の弾性率は、前記集電板の弾性率以下であることが好ましい。かような範囲であれば、集電体と集電板との接触抵抗をより低減させることができ、電池内部の電流のばらつき(電流分布)をより抑制することができる。
【0068】
前記導電層は単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。多層構造であれば、集電板および集電体の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有する導電層を使用することができ、熱膨張によるクラックの発生等を抑制することができ、双極型電池の出力特性を向上させうる。
【0069】
前記導電層の製造方法は特に制限されず、例えば、導電層の形成材料を含む溶液または分散液を、スプレーコーティング、キャストコーティング、ディップコーティング、ダイコーティングなどの方法により、最外層集電体上に塗布・乾燥する方法;真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの物理気相成長法により最外層集電体上に導電層を形成する方法などが挙げられる。また、金属箔や導電性を有する高分子フィルムを、集電体と集電板との間に配置させるようにして積層し、双極型電池を形成することによっても、導電層は形成されうる。
【0070】
かような導電層を有する本実施形態の双極型電池において、発電要素の両端に配置される少なくとも一方の集電体(最外層集電体)と集電板との間の接触抵抗は、20Ω・cm未満である。好ましくは10Ω・cm以下であり、より好ましくは6Ω・cm以下である。この範囲であれば、双極型電池の内部抵抗を低減させ、双極型電池の劣化を抑制することができる。なお、接触抵抗は、集電板−導電層−最外層の集電体間の1kHz 交流インピーダンスを測定することにより測定することができる。
【0071】
集電体と集電板との接触抵抗を低減させるために、発電要素の両端に配置される少なくとも一方の集電体と導電層とは熱融着により融着させることが好ましい。この際、熱融着の温度は、樹脂集電体の融点から50℃低い温度を下限値とし樹脂集電体の融点を上限値とする温度範囲であることが好ましい。
【0072】
また、導電層の反対側の双極側電極を同時に熱融着させる際は、電極活物質層内のバインダが溶解すると、電極内の活物質または導電助剤の接触が悪くなり、電極の抵抗が増大して、電池の性能が劣化する場合がある。このため、導電層と最外層に配置されている集電体とを熱融着させる温度T”は、樹脂集電体の融点Tbより高く、電極活物質層中のバインダの融点Taより低くする(すなわち、Tb<T”<Ta)ことが好ましい。
【0073】
以上説明した第1実施形態は、以下の効果を有する。
【0074】
第1実施形態は、発電要素の両端に配置される少なくとも一方の集電体と集電板との間に、導電層が配置され、導電層の導電率は、樹脂集電体の導電率よりも大きい。集電体の高分子材料は、面方向の抵抗が大きいために面方向の電流が流れないが、導電層を設けることにより面方向の電流が一定になり、電流の集電体の面内ばらつきが低減される。よって、最外層に配置される集電体と集電板との接触抵抗を低減させることができ、双極型二次電池の内部抵抗を低減させ、双極型二次電池の劣化を抑制することができる。
【0075】
(集電層)
図3は、双極型リチウムイオン電池の他の実施形態(第2実施形態)の発電要素の一部を模式的に表した断面概略図である。図3に示すように、正極側の集電板25と最外層集電体11aとの間に導電層12aが設けられ、前記導電層12aの上部に集電層12bが設けられている。
【0076】
この集電層12bは、導電層12aよりも導電率が高い、すなわち、導電層12aよりも低抵抗である材料から形成されている。このような構成とすることにより、集電層12bの面方向での電流が一定になりばらつきがなくなり、樹脂集電体の面内での電圧および電流のばらつきをさらに抑制することができる。したがって、双極型電池の内部抵抗を低減させて、双極型電池の劣化をさらに抑制することができる。
【0077】
前記集電層は、発電要素の両端のうち少なくとも一方に設けられる導電層と集電板との間に配置されていればよく、導電層が発電要素の両端に設けられた場合は、その両端の導電層と集電板との間に配置されていてもよい。
【0078】
前記集電層は、前記集電層の90%以上の面積で前記集電板と電気的な接触を形成していることが好ましい。このような構成とすることにより、上述の効果がより一層発揮されうる。
【0079】
前記集電層の弾性率は、前記導電層の弾性率よりも低いことが好ましい。このような構成とすることにより、集電層が集電板の数十ミクロン単位の凹凸や電池全体の凹凸に対して追従できるようになり、集電板と集電層との接触面積が増加する。したがって、最外層に配置される集電体と集電板との接触抵抗をさらに低減させることができ、双極型二次電池の集電体面内の電流のばらつき(電流分布)を抑制することができ、双極型二次電池の劣化を抑制することができる。
【0080】
集電層の形成材料は、導電層に用いられている材料よりも導電率が高い材料を選択すればよく、その種類は特に制限されない。具体的な例としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレスなどの金属材料、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの導電性高分子などが挙げられる。
【0081】
また、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブなどのカーボン材料(カーボン粒子)を含む層も、集電層として好適に用いることができる。これらカーボン粒子は粒径が小さいため、集電板との接触面積が増え、樹脂集電体の面内での電圧および電流のばらつきを抑制することができる。具体的には、前記集電層は、前記カーボン材料のみからなる層であってもよいし、カーボン材料が分散している高分子材料からなる層であってもよい。
【0082】
カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブなどのカーボン材料が分散している高分子材料の例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド、ポリアミドなどが挙げられる。かようなカーボン粒子が分散している高分子材料も、導電率が高く、集電層として好適に用いることができる。
【0083】
集電層の平面形状も特に制限されず、導電層と同様に、例えば、図4のAに示すような箔状、図4のBに示すようなメッシュ状、図4のCに示すような多孔質状などが挙げられる。特に、図4のBに示すようなメッシュ状、図4のCに示すような多孔質状であれば、集電層の弾性率がより低下し、集電板の凹凸により追従しやすくなる。メッシュ状または多孔質状の集電層として用いられる材料の例としては、例えば、カーボンまたは金属粒子で被服した導電性を持たせたアラミドなどの不織布、カーボンナノファイバーからなる多孔質フィルム、カーボンなどの導電性ペーストからなる空孔を有する多孔質フィルムなどが挙げられる。
【0084】
また、集電層の断面形状も、導電層と同様に特に制限されず、例えば、図5のAに示すような平状、図5のBに示すような波型状などが挙げられる。
【0085】
集電層の形成方法は特に制限されず、例えば、集電層の形成材料を含む溶液または分散液を、スプレーコーティング、キャストコーティング、ディップコーティング、ダイコーティングなどの方法により、集電板上または導電層上に塗布・乾燥する方法;真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの物理気相成長法により、集電板上または導電層上に集電層を形成する方法などが挙げられる。また、金属箔や導電性を有する高分子フィルムを、集電板と導電層との間に配置させるようにして積層して、双極型電池を形成することによっても、集電層は形成されうる。
【0086】
以上説明した第2実施形態は、以下の効果を有する。
【0087】
第2実施形態は、集電板と導電層との間に、導電層よりも導電率が高い、すなわち、低抵抗である集電層が設けられている。このような構成とすることにより、集電層の面方向での電流が一定になりばらつきがなくなり、樹脂集電体の面内での電圧および電流のばらつきを抑制することができる。したがって、双極型電池の内部抵抗を低減させて、双極型電池の出力特性および容量特性を向上させることができる。
【0088】
上記で説明した双極型電池は、最外層の集電体と集電板との間の層構成に特徴を有する。以下、その他の主要な構成部材について説明する。
【0089】
(タブおよびリード)
電池外部に電流を取り出す目的で、タブを用いてもよい。タブは集電板に電気的に接続され、電池外装材であるラミネートシートの外部に取り出される。
【0090】
タブを構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用のタブとして従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。タブの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましく、より好ましくは軽量、耐食性、高導電性の観点からアルミニウム、銅などが好ましい。なお、正極タブと負極タブとでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。
【0091】
正極端子リードおよび負極端子リードに関しても、必要に応じて使用する。正極端子リードおよび負極端子リードの材料は、公知のリチウムイオン二次電池で用いられる端子リードを用いることができる。なお、電池外装材29から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆するのが好ましい。
【0092】
(電池外装材)
電池外装材29としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、発電要素(電池要素)を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。
【0093】
(絶縁部)
絶縁部31は、電解質層17からの電解液の漏れによる液絡を防止する。また、絶縁部31は、電池内で隣り合う集電体どうしが接触したり、発電要素21における単電池層19の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止する目的で設けられる。
【0094】
絶縁部31を構成する材料としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよい。例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴムなどが用いられうる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点から、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が、絶縁部31の構成材料として好ましく用いられる。
【0095】
なお、上記の双極型二次電池は、従来公知の製造方法により製造することができる。
【0096】
<双極型二次電池の外観構成>
図6は、双極型二次電池の代表的な実施形態である積層型の扁平な双極型のリチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
【0097】
図6に示すように、積層型の扁平なリチウムイオン二次電池50では、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための正極タブ58、負極タブ59が引き出されている。発電要素(電池要素)57は、リチウムイオン二次電池50の電池外装材52によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素(電池要素)57は、正極タブ58および負極タブ59を外部に引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素(電池要素)57は、先に説明した図1に示す双極型のリチウムイオン二次電池10の発電要素(電池要素)21に相当するものであり、正極(正極活物質層)13、電解質層17および負極(負極活物質層)15で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
【0098】
なお、上記リチウムイオン電池は、積層型の扁平な形状のものに制限されるものではなく、巻回型のリチウムイオン電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよいなど、特に制限されるものではない。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートフィルムを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよいなど、特に制限されるものではない。好ましくは、発電要素(電池要素)がアルミニウムラミネートフィルムで外装される。当該形態により、軽量化が達成されうる。
【0099】
また、図6に示すタブ58、59の取り出しに関しても、特に制限されるものではなく、正極タブ58と負極タブ59とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし、正極タブ58と負極タブ59をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出しようにしてもよいなど、図6に示すものに制限されるものではない。また、巻回型のリチウムイオン電池では、タブに変えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
【0100】
上記リチウムイオン電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
【0101】
<組電池>
組電池は、上記双極型二次電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
【0102】
図7は、組電池の代表的な実施形態の外観図であって、図7Aは組電池の平面図であり、図7Bは組電池の正面図であり、図7Cは組電池の側面図である。
【0103】
図7に示すように、本実施形態の組電池300は、双極型二次電池が複数、直列に又は並列に接続して装脱着可能な小型の組電池250を形成し、この装脱着可能な小型の組電池250をさらに複数、直列に又は並列に接続して、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池300を形成することもできる。図7Aは、組電池の平面図、図7Bは正面図、図7Cは側面図を示しているが、作成した装脱着可能な小型の組電池250は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続し、この組電池250は接続治具310を用いて複数段積層される。何個の双極型電池を接続して組電池250を作製するか、また、何段の組電池250を積層して組電池300を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。
【0104】
<車両>
本実施形態の車両は、上記双極型二次電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を搭載したことを特徴とするものである。長期信頼性および出力特性に優れた高寿命の電池を構成できることから、こうした電池を搭載するとEV走行距離の長いプラグインハイブリッド電気自動車や、一充電走行距離の長い電気自動車を構成できる。言い換えれば、双極型二次電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池は、車両の駆動用電源として用いられうる。双極型二次電池またはこれらを複数個組み合わせてなる組電池を、例えば、自動車ならばハイブリット車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いることにより高寿命で信頼性の高い自動車となるからである。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両、例えば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
【0105】
図8は、組電池を搭載した車両の概念図である。
【0106】
図8に示したように、組電池300を電気自動車400のような車両に搭載するには、電気自動車400の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池300を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームでも良い。以上のような組電池300を用いた電気自動車400は高い耐久性を有し、長期間使用しても十分な出力を提供しうる。さらに、燃費、走行性能に優れた電気自動車、ハイブリッド自動車を提供できる。
【実施例】
【0107】
以下、本発明を実施例および比較例を通して説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0108】
(実施例1)
1.集電体の用意
ケッチェンブラックを導電性フィラーとして含む、厚み50μmのポリプロピレン(融点:155℃、厚み方向の体積抵抗率:1×10−1Ω・cm)を用意した。
【0109】
2.正極スラリーの作製
正極活物質として、LiMn(平均粒子径:10μm)85質量%、導電助剤としてアセチレンブラック 5質量%、およびバインダとしてPVdF(融点:169℃) 10質量%からなる固形分を用意した。この固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して、正極スラリーを作製した。
【0110】
3.負極スラリーの作製
負極活物質として、ハードカーボン(平均粒子径:10μm)90質量%およびバインダとしてPVdF(融点:169℃) 10質量%からなる固形分に対し、スラリー粘度調整溶媒であるNMPを適量添加して、負極スラリーを作製した。
【0111】
4.電解液の用意
電解液として、1.0M LiPFを含有するプロピレンカーボネート(PC)−エチレンカーボネート(EC)(1:1(体積比))を用意した。
【0112】
5.双極型電極の作製
金属箔に正極スラリーを塗布し、乾燥・プレスを行い、金属箔に正極層(厚さ:100μm)が形成されたものを得た。別途、金属箔に負極スラリーを塗布し、乾燥・プレスを行い、金属箔に負極層(厚さ:100μm)が形成されたものを得た。
【0113】
この正極層および負極層で集電体を挟むように積層し、160℃での熱転写を行うことにより、集電体の一方の面に正極層が積層され、他方の面に負極層が積層された双極型電極を得た。
【0114】
6.最外層電極の作製
正極側の最外層に配置される電極は、集電体の一方の面に正極層のみを熱転写して作製した。同様に負極側の最外層に配置される電極は、集電体の一方の面に負極層のみを熱転写して作製した。
【0115】
7.導電層の形成
厚さ100μmのカーボン板(導電率:1×10−2Ω・cm、ヤング率:100GPa)を用意した。6.で作製した正極側の最外層に配置される電極の正極層が形成されていない面に、上記カーボン板を160℃で熱融着させ、導電層とした。また、同様に、6.で作製した負極側の最外層に配置される電極の負極層が形成されていない面に、上記カーボン板を160℃で熱融着させ、導電層とした。
【0116】
8.積層工程
上記で得られた双極型電極の周りに、幅30mmのPE(ポリエチレン)製フィルムをおきシール材とした。双極型電極を3層積層した後、これを挟み込むようにして、上記7.で作製した導電層が形成されている最外層に配置される正極と、7.で作製した導電層が形成されている最外層に配置される負極とを配置した。シール材を、上下からプレス(プレス条件:0.2MPa、160℃、5s)をかけ融着させ、各層をシールしてシール部を形成し、電池要素とした。
【0117】
各層に電解液を10ccずつ注液し、シール部を真空にしながら融着した。
【0118】
得られた電池要素の投影面全体を覆うことのできる、200μm厚さのAl板(電極集電板、ヤング率:200GPa)の一部が、電池要素の投影面外部まで伸びている部分(電極タブ:幅20mm)がある電極集電板(強電端子)を作製した。この集電板で電池要素を挟み込みこれらを覆うように、電池外装材としてアルミニウムを含むラミネートフィルムで真空密封し、これにより電池要素全体が、大気圧で両面が押され加圧された。そして、電極集電板−電池要素間の接触が高められた5直構造(5セルが直列に接続された構成)の双極型二次電池が完成した。
【0119】
(実施例2)
導電層として、カーボン板の代わりに、厚さ110μmのポリピロール層(導電率:1×10−1Ω・cm、ヤング率:0.8GPa)を用いたことを除いては、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
【0120】
なお、ポリピロール層は、6.で作製した負極側の最外層に配置される電極の、負極層が形成されていない面に、ポリピロールの溶液を塗布し、160℃で乾燥することにより形成した。
【0121】
(実施例3)
導電層として、カーボン板の代わりに、チタン製のメタルウール(繊維状金属)(導電率:1×10−4Ω・cm、ヤング率:20GPa)を用いたことを除いては、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
【0122】
(実施例4)
導電層として、カーボン板の代わりに、厚さ5μmのアルミニウム箔(導電率:1×10−4Ω・cm、ヤング率:70GPa)を用いたことを除いては、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
【0123】
(実施例5)
導電層として、カーボン板の代わりに、厚さ10μmのアセチレンブラックが分散しているPVdFフィルム(導電率:1×10−1Ω・cm、ヤング率:0.8GPa)を用いたことを除いては、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
【0124】
(実施例6)
導電層として、カーボン板の代わりに、厚さ100μmの正極活物質層(導電率:15Ω・cm、ヤング率:7GPa)を用いたことを除いては、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
【0125】
なお、厚さ100μmの正極活物質層は、実施例1の6.で作製した負極側の最外層に配置される電極の、負極層が形成されていない面に、実施例1の2.で作製した正極スラリーを塗布し、160℃で乾燥することにより形成した。
【0126】
(実施例7)
導電層として、カーボン板の代わりに、厚さ100μmの負極活物質層(導電率:8Ω・cm、ヤング率:7GPa)を用いたことを除いては、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
【0127】
なお、厚さ100μmの負極活物質層は、実施例1の6.で作製した負極側の最外層に配置される電極の、負極層が形成されていない面に、実施例1の3.で作製した負極スラリーを塗布し、160℃で乾燥することにより形成した。
【0128】
(実施例8)
導電層として、カーボン板の代わりに、厚さ10μmの正極活物質層(導電率:10Ω・cm、ヤング率:6GPa)を用いたことを除いては、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
【0129】
なお、厚さ10μmの正極活物質層は、実施例1の6.で作製した負極側の最外層に配置される電極の、負極層が形成されていない面に、実施例1の2.で作製した正極スラリーを塗布し、160℃で乾燥することにより形成した。
【0130】
(実施例9)
導電層として、カーボン板の代わりに、厚さ10μmの負極活物質層(導電率:5Ω・cm、ヤング率:6GPa)を用いたことを除いては、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
【0131】
なお、厚さ100μmの負極活物質層は、実施例1の6.で作製した負極側の最外層に配置される電極の、負極層が形成されていない面に、実施例1の3.で作製した負極スラリーを塗布し、160℃で乾燥することにより形成した。
【0132】
(実施例10)
導電層として、カーボン板の代わりに、多層構造のフィルムを用いたことを除いては、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
【0133】
なお、多層構造のフィルムは、集電板に近い層から順に、厚さ5μmのカーボンブラックが分散しているポリアミドイミド層(熱膨張係数:31×10−6/℃)、厚さ5μmのカーボンブラックが分散しているポリイミド層(熱膨張係数:54×10−6/℃)(多層構造のフィルム全体の導電率:1×10−1Ω・cm、多層構造のフィルム全体のヤング率:1GPa)であった。
【0134】
(比較例1)
導電層を用いなかったことを除いては、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
【0135】
(比較例2)
導電層として、カーボン板の代わりに、厚さ150μmの、ケッチェンブラックを3質量%含むポリエチレンフィルム層(導電率:19Ω・cm、ヤング率:1GPa)を用いたことを除いては、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
【0136】
(評価1:集電板と最外層の集電体との間の接触抵抗)
1kHz交流インピーダンスにより評価した。
【0137】
(評価2:充放電評価)
実施例1〜12、および比較例1〜2の双極型二次電池で充放電試験を行った。試験は50mAの電流で4.2Vまで定電流充電(CC)し、その後定電圧で充電(CV)し、あわせて10時間充電した。その後、100mAで10秒間放電を行った。その際の電圧から、電池の内部抵抗を測定し、比較例1を100%とした時の値を算出した。
【0138】
厚さは、比較例2の電池の厚さを100%とした時の厚さを示す。
【0139】
また、容量維持率は、初期の容量を100%として、55℃で12.5V〜21Vで100サイクルの耐久評価した後の容量を、比較例1、実施例4、6、8、10において評価した。
【0140】
これらの評価結果を、下記表1に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
上記表1から明らかなように、導電層が存在することにより、集電板との接触抵抗および内部抵抗が大幅に小さくなっていることがわかる。
【0143】
また、実施例4のような金属材料を導電層として用いるよりも、実施例5〜9のようなカーボン材料や電極活物質を導電層として用いたほうが、内部抵抗が低下していることがわかる。この理由は明らかではないが、金属材料は集電体への接触面積が少ないためと考えられる。また、導電層は電極活物質層に比べて薄くできることがわかり、これにより高出力密度化が可能になる。
【0144】
さらに、導電層を設けることにより、耐久試験後も容量が維持されていることがわかる。これは、集電体の面内の電流および電圧のばらつきが抑制されているためであると考えられる。加えて、実施例10のように導電層を多層構造にすることにより、電流を流すことによる集電板と集電体の応力の緩和をすることができる。
【0145】
(実施例11)
実施例1の6.で作製した正極側の最外層に配置される電極の、正極層が形成されていない面に、直接負極スラリーを塗布後、乾燥、プレスをして(導電層の厚み:100μm、弾性率:7GPa)、導電層を作製した。また、実施例1の6.で作製した負極側の最外層に配置される電極の、負極層が形成されていない面に、直接正極スラリーを塗布後、乾燥、プレスをして(導電層の厚み:100μm、弾性率:7GPa)、導電層を作製した。
【0146】
実施例1の5.で作製した双極型電極、および上記で作製した最外層に配置される電極の周りに、幅30mmのPE(ポリエチレン)製フィルムをおきシール材とした。双極型電極を3層積層した後、これを挟み込むようにして、上記で作製した導電層が形成されている正極と、導電層が形成されている負極とを配置した。
【0147】
シール材を、上下からプレス(プレス条件:0.2MPa、160℃、5s)をかけ融着させ、各層をシールしてシール部を形成し、電池要素とした。
【0148】
集電層として、厚さ20μmのアルミニウム箔(厚み方向の体積抵抗率:1×10−4Ω・cm、引張強度:70MPa、弾性率:6GPa)を準備し、上記で作製した電池要素の外側に、集電層を上下1層ずつ配置させた。
【0149】
このようにして積層体を形成したことを除いては、実施例1と同様にして、双極型二次電池を作製した。
【0150】
(実施例12)
集電層として、厚さ20μmのアルミニウム箔の代わりに、厚さ50μmのアルミニウム箔(厚み方向の体積抵抗率:2×10−4Ω・cm、引張強度:90MPa、弾性率:6.5GPa)を用いたことを除いては、実施例11と同様にして、双極型二次電池を作製した。
【0151】
(実施例13)
集電層として、厚さ20μmのアルミニウム箔の代わりに、厚さ20μmの銅箔(厚み方向の体積抵抗率:2×10−4Ω・cm、引張強度:70MPa、弾性率:4GPa)を用いたことを除いては、実施例11と同様にして、双極型二次電池を作製した。
【0152】
(実施例14)
集電層として、厚さ20μmのアルミニウム箔の代わりに、厚さ25μmの導電性を有するアラミド不織布(厚み方向の体積抵抗率:2×10−1Ω・cm、引張強度:8MPa、弾性率:0.7GPa)を用いたことを除いては、実施例11と同様にして、双極型二次電池を作製した。
【0153】
(実施例15)
集電層として、厚さ20μmのアルミニウム箔の代わりに、厚さ20μmのケッチェンブラック粒子層(厚み方向の体積抵抗率:1×10−1Ω・cm、引張強度:20MPa、弾性率:0.3GPa)を用いたことを除いては、実施例11と同様にして、双極型二次電池を作製した。
【0154】
なお、ケッチェンブラック粒子層は、導電層上にスプレーコーティングを行うことにより形成した。
【0155】
(実施例16)
集電層として、厚さ20μmのアルミニウム箔の代わりに、厚さ20μmのケッチェンブラック粒子を含むポリエチレン層(厚み方向の体積抵抗率:2×10−1Ω・cm、引張強度:5MPa、弾性率:0.4GPa)を用いた。このことを除いては、実施例11と同様にして、双極型二次電池を作製した。
【0156】
なお、ケッチェンブラックを含むポリエチレン層は、ケッチェンブラックを含むポリエチレンスラリーを、導電層上にスプレーコーティングを行うことにより形成した。
【0157】
(実施例17)
集電層として、厚さ20μmのアルミニウム箔の代わりに、厚さ5μmのアルミニウム層(厚み方向の体積抵抗率:1×10−4Ω・cm、引張強度:60MPa、弾性率:2GPa)を用いたことを除いては、実施例11と同様にして、双極型二次電池を作製した。
【0158】
なお、アルミニウム層は、導電層上にスパッタリングを行うことにより形成した。
【0159】
(実施例18)
集電層として、厚さ20μmのアルミニウム箔の代わりに、厚さ10μmのカーボン粒子層(厚み方向の体積抵抗率:1×10−2Ω・cm、引張強度:10MPa、弾性率:0・1GPa)を用いたことを除いては、実施例11と同様にして、双極型二次電池を作製した。
【0160】
なお、カーボン粒子層は、導電層上にスパッタリングを行うことにより形成した。
【0161】
(評価1:1kHz交流インピーダンスを測定した)
実施例11〜18および比較例1の双極型二次電池について、1kHz交流インピーダンスを測定した。
【0162】
(評価2:充放電評価)
実施例11〜18、および比較例1の双極型二次電池で充放電試験を行った。試験は0.5mAの電流で12.5Vまで定電流充電(CC)し、その後定電圧で充電(CV)し、あわせて10時間充電した。その後、1mAで5秒間放電を行った。その際の電圧から、電池の内部抵抗を測定し、比較例1を100%とした時の値を算出した。
【0163】
また、比較例1の双極型二次電池の集電体の面内10点での電圧を測定したときの、最大電圧と最小電圧の差の値を100%とし、実施例11〜18の双極型二次電池の集電体の面内10点での最大電圧と最小電圧の差の値を計測した。
【0164】
さらに、集電板−導電層−最外層集電体間の1kHz 交流インピーダンスを測定し、接触抵抗を求めた。
【0165】
これらの評価結果を、下記表2に示す。
【0166】
【表2】

【0167】
上記表2から明らかなように、集電層を設置することにより1kHz交流インピーダンスが低減しており、集電板と最外層集電体との間の接触抵抗が低減していることがわかる。特に、集電層がスパッタリングにより形成された金属層である場合(実施例17)に、その傾向が顕著になっている。
【0168】
また、電池の内部抵抗が、集電層を設置することにより低減していることがわかる。電池の内部抵抗の低下率が、1kHz交流インピーダンスの低下率よりも全体的に大きいのは、インピーダンス測定時よりも大きな電流を流して内部抵抗を測定しているためであると言える。これらの結果から、実施例11〜18の双極型二次電池は、全体的に出力特性が向上していることがわかる。
【0169】
さらに、実施例11〜18の双極型二次電池は、電流の面内ばらつきが抑制されていることがわかる。最も抑制されているのは、集電層がスパッタリングにより形成された金属層である場合(実施例17)である。加えて、実施例11〜18の双極型二次電池は、集電板−導電層−最外層集電体間の接触抵抗が低減していることがわかる。
【符号の説明】
【0170】
10、50 双極型リチウムイオン二次電池、
11a 正極側の最外層集電体、
11b 負極側の最外層集電体、
12a 導電層、
12b 集電層、
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21、57 発電要素、
23 双極型電極、
25 正極集電板、
27 負極集電板、
29 ラミネートフィルム、
31 シール部、
52 電池外装材、
58 正極タブ、
59 負極タブ、
250 小型の組電池、
300 組電池、
310 接続治具、
400 電気自動車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する樹脂層を含む集電体の一方の面に正極活物質層が形成され、他方の面に負極活物質層が形成される双極型電極が電解質層を介して積層された発電要素と、
前記発電要素の前記双極型電極の積層方向の両端に配置される集電板と、
前記発電要素の両端に配置される少なくとも一方の集電体と前記集電板との間に配置される前記集電体よりも面方向の導電率が高い導電層と、
を有し、
前記発電要素の両端に配置される少なくとも一方の集電体と前記集電板との間の接触抵抗が20Ω・cm未満である、双極型二次電池。
【請求項2】
前記発電要素の両端に配置される少なくとも一方の集電体と前記導電層とが熱融着されている、請求項1に記載の双極型二次電池。
【請求項3】
前記導電層が電極材料から形成されている、請求項1または2に記載の双極型二次電池。
【請求項4】
前記導電層の厚さが、前記発電要素に含まれる双極型電極を構成する電極活物質層の厚さ以下である、請求項3に記載の双極型二次電池。
【請求項5】
前記導電層の弾性率が、前記集電板の弾性率以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の双極型二次電池。
【請求項6】
前記集電板と前記導電層との間に、前記導電層よりも導電率が高い集電層をさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の双極型二次電池。
【請求項7】
前記集電層は、前記集電層の90%以上の面積で前記集電板と電気的な接触を形成している、請求項6に記載の双極型二次電池。
【請求項8】
前記集電層の弾性率が、前記導電層の弾性率よりも低い、請求項6または7に記載の双極型二次電池。
【請求項9】
前記集電層がカーボン材料を含む、請求項6〜8のいずれか1項に記載の双極型二次電池。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の双極型二次電池が複数個接続された組電池。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の双極型二次電池、または請求項10に記載の組電池をモータ駆動用電源として搭載する車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−251159(P2010−251159A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100266(P2009−100266)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】