説明

反射度分布曲線のモデリング方法及びこれを利用した厚さ測定方法、ならびに厚さ測定反射計

【課題】本発明は、バンドパスされて一定の波長帯域内に入射される光の場合、波長帯域内で積分する方式を利用し、薄膜層により反射される光の反射度分布曲線をモデリングすることで、実際の測定により得られる反射度分布曲線に実質的に近接する反射度分布曲線を数学的にモデリングすることのできる反射度分布曲線のモデリング方法及びこれを利用する厚さ測定方法、ならびに厚さ測定反射計を提供する。
【解決手段】本発明は、反射度分布曲線のモデリング方法およびこれを利用する厚さ測定方法、ならびに厚さ測定反射系に関するものであって、本発明による反射度分布曲線のモデリング方法は、一定の厚さの薄膜層に対して光の波長の変化に伴う薄膜層の反射度分布をモデリングする反射度分布曲線のモデリング方法であって、光の波長の変化に伴う上記薄膜層の反射度分布を示す反射度分布曲線を用意する反射度分布曲線用意ステップと、白色光を特定波長に対してバンドパスし、上記の特定の波長を中心に一定の波長帯域で光の強度分布を示す強度分布曲線を用意し、上記の強度分布曲線を上記の波長帯域内で積分して上記特定波長の入力強度として設定する入力強度設定ステップと、上記反射度分布曲線と上記強度分布曲線を結合した複合強度分布曲線を上記波長帯域内で積分して上記特定波長の出力強度として設定する出力強度設定ステップと、上記特定波長の出力強度を上記特定波長の入力強度で割った値を、上記特定波長に対する上記薄膜層の積分反射度として設定する積分反射度設定ステップと、上記特定波長を変化させながら、上記入力強度の設定ステップ、上記出力強度の設定ステップ、および上記積分反射度の設定ステップを繰り返して、波長の変化に伴う上記積分反射度分布を示す積分反射度分布曲線を生成する積分反射度分布曲線の生成ステップと、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 反射度分布曲線のモデリング方法、及びこれを利用した厚さ測定方法、ならびに厚さ測定反射計に関するものであり、より詳しくは、一定の波長帯域内で積分する方式を利用し、バンドパス(bandpass)された光に対する薄膜層の反射度分布曲線をモデリングする方法を改善した、反射度分布曲線のモデリング方法及びこれを利用した厚さ測定方法、ならびに厚さ測定反射計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)、半導体分野でよく使われている透明薄膜層は、その特性上、厚さの分布度が後工程に大きい影響を及ぼす。従って、薄膜層の厚さをモニタリングするシステムが産業全般に要求される。薄膜層の厚さ測定には、非接触式の測定装置である干渉計(Interferometer)と反射計(Reflectometer)が幅広く利用される。
【0003】
従来の反射計は、白色光を薄膜層に照射し、薄膜層により反射された光を分光器(Spectrometer)を利用して分光させ、白色光に含まれた各々の個別波長に対する光の強度(intensity)を得るものである。この強度データは、薄膜層の反射度測定に活用され、最終的には、波長に対する反射度の変化を示す反射度分布曲線が得られる。
【0004】
薄膜層の厚さを決めるために、上記のように測定された反射度分布曲線及び数学式によりモデリングされた反射度分布曲線を比較する方法が提案されている。まず、互いに異なる厚さを有する様々な薄膜層を仮定し、各々の薄膜層に対して数学式を用い、反射度分布曲線を生成する。その後、モデリングされた多数の反射度分布曲線のうち、実際に測定された反射度分布曲線と最も一致するモデリングの反射度分布曲線を選択し、そのモデリングの反射度分布曲線に対応する厚さを薄膜層の厚さにとして決めていた。
【0005】
しかしながら、バンドパス(bandpass)されて一定の波長帯域内に入射される光の場合は、実際の測定により得られた反射度分布曲線と従来のモデリング方法により得られた反射度分布曲線との間に大きい誤差を表して不一致してしまう。よって、従来のモデリング方法では、薄膜層の厚さを決められない問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、このような従来の問題点を解決するためのものであって、バンドパスされて一定の波長帯域内に入射される光の場合、波長帯域内で積分する方式を利用し、薄膜層により反射される光の反射度分布曲線をモデリングすることで、実際の測定により得られる反射度分布曲線に実質的に近接する反射度分布曲線を数学的にモデリングすることのできる反射度分布曲線のモデリング方法及びこれを利用する厚さ測定方法、ならびに厚さ測定反射計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような目的を達成するために、本発明における反射度分布曲線のモデリング方法は、一定の厚さの薄膜層に対し、光の波長の変化に伴う薄膜層の反射度分布をモデリングする反射度分布曲線のモデリングする方法であって、光の波長の変化に伴う薄膜層の反射度(reflectance)分布を示す反射度分布曲線を用意する反射度分布曲線用意ステップと、白色光を特定波長に対しバンドパスし、上記特定波長を中心に一定の波長帯域で光の強度分布を示す強度分布曲線を用意し、上記強度分布曲線を上記波長帯域内で積分して特定波長の入力強度として設定する 入力強度設定ステップと、上記反射度分布曲線と上記強度分布曲線を結合した複合強度分布曲線を上記波長帯域内で積分して上記特定波長の出力強度として設定する 出力強度設定ステップと、上記特定波長の出力強度を上記特定波長の入力強度で割る値を上記特定波長に対する上記薄膜層の積分反射度として設定する積分反射度設定ステップと、上記特定波長を変化させながら、上記入力強度を設定するステップ、上記出力強度を設定するステップ、および上記積分反射度を設定するステップを繰り返し、波長の変化に伴う上記積分反射度の分布を示す積分反射度分布曲線を生成する積分反射度分布曲線生成ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、上記のような目的を達成するための本発明の厚さ測定方法は、白色光反射計を用いて行う、基底層の上に積層された薄膜層の厚さ測定方法であって、互いに異なる厚さを有する複数のサンプル薄膜層を仮定し、上記反射度分布曲線のモデリング方法を用い、各々のサンプル薄膜層に対応する積分反射度分布曲線を備えるモデリングステップと、上記薄膜層側に白色光を照射して光の波長の変化に伴う上記薄膜層の測定反射度分布曲線を取得する取得ステップと、複数の積分反射度分布曲線と上記測定反射度分布曲線とが実質的に一致するか否かを夫々比較する比較ステップと、上記測定反射度分布曲線と実質的に一致する積分反射度分布曲線を選択し、上記積分反射度分布曲線に対応する厚さを上記薄膜層の厚さとして決定する決定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、上記の目的を達成するための本発明の厚さ測定反射計は、白色光を出射する光源と、入射される白色光を特定波長に対してバンドパスして上記特定波長を中心に一定の波長帯域を通過させ、長さ方向に沿って通過可能な特定波長が変更される線形可変フィルタと、上記線形可変フィルタを上記長さ方向に沿って往復移動させるフィルタ移送部と、上記線形可変フィルタを通過した光を薄膜層側に照射し、上記薄膜層により、または上記薄膜層を支持する基底層により反射された光が入射される光学系と、上記光学系を通過した反射光が照射されイメージとして結像されるカメラ部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の反射度分布曲線のモデリング方法及び厚さ測定方法によると、バンドパスされた光を波長帯域内で積分する方式を利用して薄膜層により反射される光の反射度分布曲線をモデリングすることで、実際の測定によって得られた反射度分布曲線に実質的に近接な反射度分布曲線を数学的にモデリングすることができる。
【0011】
また、本発明の厚さ測定反射計によると、望ましくない周辺波長を有する光等のようなノイズのない、測定しようとする特定の波長中心の波長帯域を有する光だけを通過させ、薄膜層の厚さをより精度高く測定することができる。
【0012】
また、本発明の厚さ測定反射計によると、薄膜層の厚さだけでなく、薄膜層の相対的な厚さの差を意味する表面形状を同時に求めることができ、薄膜層に関する包括的な情報を算出および可視化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一つの実施形態による厚さ測定反射計の概略図である。
【図2】図1の厚さ測定反射計の線形可変フィルタによりバンドパスされた光の強度分布曲線を示した図面である。
【図3】本発明の一つの実施形態による厚さ測定方法を概略的に説明した図面である。
【図4】薄膜層に入射された光の反射経路を概略的に図示した図面である。
【図5】本発明の一つの実施形態による反射度分布曲線のモデリング方法を概略的に説明した図面である。
【図6】測定反射度分布曲線、積分反射度分布曲線、及び従来のモデリング方法による反射度分布曲線を比較する図面である。
【図7】測定された薄膜層の表面形状の一例を図示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による反射度分布曲線のモデリング方法、及びこれを利用する厚さ測定方法、ならびに厚さ測定反射計の実施形態を、添付した図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一つの実施形態による厚さ測定反射計の概略図であり、図2は、図1の厚さ測定反射計の線形可変フィルタによってバンドパスされた光の強度分布曲線を図示した図面であり、図7は、測定された薄膜層の表面形状の一例を図示した図面である。
【0016】
図1、図2、及び図7を参照すると、本実施形態の厚さ測定反射計100は、光源110、線形可変フィルタ120、フィルタ移送部130、集光レンズ160、光学系140、及びカメラ部150を含む。
【0017】
光源110は、白色光を出射し、本実施形態ではハロゲンランプが用いられる。
【0018】
光源110から380nm〜800nmの可視光波長帯域の光Lが出力される。
【0019】
光源110として、ハロゲンランプの他に、多様なソースのランプを用いることができる。
【0020】
線形可変フィルタ120は、ハイパスフィルタ(high−pass filter)とローパスフィルタ(low−pass filter)を組み合わせて作られたものであり、白色光が入射されると特定波長31を中心に一定の波長帯域32の光だけを通過させる。線形可変フィルタ120を長さ方向に沿って移送して線形可変フィルタ120から光Lが照射される領域を変更させると、通過可能な特定波長31も同様に変更する。例えば、図2に示されているように、線形可変フィルタ120の最も左側の領域に光が照射されると、500nmの特定波長31を中心に一定の波長帯域32を有する光だけが通過し、図示のような強度分布曲線30を示す。光Lが照射される領域が右側に変更されると、各々550nm、600nm、650nm、700nmの特定波長31を中心に一定の波長帯域32を有する光だけが通過する。
【0021】
フィルタ移送部130は、線形可変フィルタ120を長さ方法に沿って往復移動させるものであって、線形可変フィルタ120の光が照射される領域を変更させる。
【0022】
フィルタ移送部130は、回転モータ、ボールスクリュー、直線運動ガイドの組み合わせユニット、またはリニアモータユニット等から構成され得るが、これは当業者に自明なものであり、詳しい説明は省略する。
【0023】
集光レンズ160は、光源110と線形可変フィルタ120との間に配置され、光源110から入射される光Lを集光し、線形可変フィルタ120側に出射する。
【0024】
集光レンズ160によって、線形可変フィルタ120を通過する光の直径が小さくなる。
【0025】
本実施形態の厚さ測定反射計100では、光源110と光学系140との間に線形可変フィルタ120を配置させて光Lをバンドパスさせる。また、線形可変フィルタ120を光学系140とカメラ部150との間に配置させ、薄膜層11により反射された光Lをバンドパスさせると、線形可変フィルタ120を通過する光Lの直径が大きくなるため、望ましい特定波長31中心の波長帯域32だけでなく周辺波長のノイズまで信号として検出されてしまう問題がある。本発明では、光の直径が小さい段階で光Lが線形可変フィルタ120を通過することによって、ノイズのない、望ましい特定波長31中心の波長帯域32を有する光だけを通過させることができる。
【0026】
光学系140は、線形可変フィルタ120を通過した光Lを、基底層10の上側に積層された薄膜層11側へ照射し、薄膜層11または基底層10により反射された光は再び光学系140に入射される。光学系140は、入射される光を反射する反射ミラー、入射される光を分割して互いに異なる経路に伝送するビームスプリッター、入射される光を薄膜層またはカメラ部側に集光する集光レンズ等、多様なミラー、レンズ、及び光学部品などの組み合わせで構成することができるが、このような多様なミラー、レンズ、及び光学部品の組み合わせは、当業者に自明なものであり、詳しい説明は省略する。
【0027】
カメラ部150は、薄膜層11、または基底層10によって反射され、光学系140側に入射されて光学系140を経由した光Lが照射され、光の強度等の情報がイメージとして結像される。本実施形態のカメラ部150は、測定しようとする領域に適合した画素数を有するCCD(Charge Coupled Device)カメラが利用されるが、特に薄膜層11の一定面積を単一のトリガー信号によって撮像できるエリアカメラが利用される。
【0028】
エリアカメラを用いることにより、一定面積内の厚さ情報を同時に取得し、これを3次元グラフに図示して図7に示したように、その面積内の表面形状の情報まで取得できる。薄膜層11の厚さの相対的な差を通じ、薄膜層11の表面がどの程度の高低を有して形成されたかが可視化でき、薄膜層11の厚さの相対的な差のことを、本明細書では表面形状と定義する。
【0029】
以下、上述のように構成された厚さ測定反射計100を用い、本発明による厚さ測定方法の実施形態について、図3乃至図6を参照して詳細に説明する。
【0030】
図3は、本発明の一つの実施形態による厚さ測定方法を概略的に説明した図面であり、図4は、薄膜層に入射された光の反射経路を概略的に図示した図面であり、図5は、本発明の一つの実施形態による反射度分布曲線のモデリング方法を概略的に説明した図面であり、図6は、測定反射度分布曲線、積分反射度分布曲線、及び従来のモデリング方法による反射度分布曲線を比較した図面である。
【0031】
図3乃至図6を参照すると、本実施形態の厚さ測定方法は、モデリングステップ(S110)、取得ステップ(S120)、比較ステップ(S130)、と決定ステップ(S140)を含む。
【0032】
モデリングステップ(S110)では、互いに異なる厚さを有する複数のサンプル薄膜層を仮定し、本発明の反射度分布曲線のモデリング方法を用い、各々のサンプル薄膜層に対応する積分反射度分布曲線20を備える。
【0033】
ここで、サンプル薄膜層は、実際の薄膜層ではなく、数学式を利用してモデリングを行うための、互いに異なる厚さを有する仮想の薄膜層である。サンプル薄膜層に対する積分反射度分布曲線20をモデリングするときは、サンプル薄膜層を実際その厚さを測定する薄膜層11と同一の物質に仮定し、厚さを測定する薄膜層11の物性値、例えば、反射係数(Reflection Coefficiet)、複素屈折率(Complex Refractive Index)等を利用してモデリングする。
【0034】
モデリングする積分反射度分布曲線20に対応する厚さの上限と下限は、実際の工程で処理される薄膜層11の厚さの上限と下限に関する情報を予め決め、上限の厚さと下限の厚さを一定の間隔で分割した後、夫々の厚さに対する積分反射度分布曲線20をモデリングする。
【0035】
各々のサンプル薄膜層に対応する積分反射度分布曲線20を備えるための本発明の一つの実施形態による反射度分布曲線のモデリング方法は、反射度分布曲線用意ステップ(S111)、入力強度設定ステップ(S112)、出力強度設定ステップ(S113)、積分反射度の設定ステップ(S114)、および積分反射度分布曲線生成ステップ(S115)を含む。
【0036】
反射度分布曲線用意ステップ(S111)では、光の波長変化による薄膜層11の反射度分布を示す反射度分布曲線40を備える。
【0037】
反射度分布曲線40は、以下の数学式を用い、数学的モデリングによって備えられる。
【0038】
【数1】

ここで、 Rp(d,λ)は、入射面に平行するP波のトータル反射係数であり、rp12は、空気層12と薄膜層11の境界面でのP波のフレネル(Fresnel)反射係数であり、rp23は、薄膜層11と基底層10との境界面でのP波のフレネル反射係数であり、βは、光Lが薄膜層11を通る時に発生する位相変化量である。
【0039】
【数2】

ここで、Rs(d,λ)は、入射面に垂直なS波のトータル反射係数であり、 rs12は、空気層12と薄膜層11との境界面でのS波のフレネル(Fresnel)反射係数であり、rs23は、薄膜層11と基底層10との境界面でのS波のフレネル反射係数である。
【0040】
【数3】

【0041】
【数4】

ここで、R1は、数学的モデリングによる反射度であり、Iiは、入射される光Lの強度であり、 Irは、反射する光Lの強度である。
【0042】
数学式1乃至数学式3を数学式4に代入して一定厚さの薄膜層11に対して反射度を得ることができ、波長を変化させながら反射度の分布をグラフで示すと、図5に示すように反射度分布曲線40を生成することができる。
【0043】
入力強度の設定ステップ(S112)では、強度分布曲線30を一定の波長帯域32内で積分してその積分した値を入力強度Iiとして設定する。
【0044】
白色光を特定波長31に対してバンドパスすると、図5に示すように、特定波長を中心に一定の波長帯域で光の強度分布を示す強度分布曲線30が出力される。本実施形態では、白色光を線形可変フィルタ120に通過させてバンドパスされた強度分布曲線を備える。図5は、600nmを中心にバンドパスされた光の強度分布曲線30が一例として示されている。
【0045】
特定波長31の強度分布曲線30が備えられると、その強度分布曲線30を波長帯域32内で積分して特定波長31の入力強度(I)として設定する。
【0046】
上記の出力強度設定ステップ(S113)では、まず反射度分布曲線40と特定の波長に対する強度分布曲線30を結合した複合強度分布曲線50を生成する。
【0047】
複合強度分布曲線50は、特定の波長に対するものであり、図5では一例として600nmの複合強度分布曲線50が示されている。特定波長31の複合強度分布曲線50が備えられると、その複合強度分布曲線50を波長帯域32内で積分して特定波長の出力強度(I)として設定する。
【0048】
上記の積分反射ステップ(S114)では、特定波長の出力強度(I)を特定波長の入力強度(I)で割った値を、特定波長に対する薄膜層の積分反射度(R2 )として設定する。図5では、一例として600nm の特定波長に対する薄膜層の積分反射度(R2,21)がグラフ上に表示されている。
【0049】
上記の入力強度設定ステップ(S112)、出力強度設定ステップ(S113)、および積分反射度設定ステップ(S114)は、以下の数学式5によって求められる。
【数5】

【0050】
ここで、R2は、数学的モデリングによる積分反射度であり、λ*は、特定波長であり、Iは入力強度であり、Iは、出力強度であり、Iは特定波長での強度の最大値であり、I0 ×Fλ*は、特定波長の強度分布曲線であり、R1は、反射度分布曲線である。
【0051】
上記の積分反射度分布曲線の生成ステップ(S115)では、特定波長31を変化させながら、入力強度設定ステップ(S112)、出力強度設定ステップ(S113)、および積分反射度設定ステップ(S114)を繰り返して波長の変化に伴う積分反射度分布を示す積分反射度分布曲線20を生成する。501nm,502nm,503nm,...,600nm,...などの複数の特定波長に対する積分反射度(R2)を取得し、波長に対する積分反射度(R2)の変化をグラフで表示すると、図5に図示したような積分反射度分布曲線20を生成することができる。
【0052】
一つの厚さのサンプル薄膜層に対して積分反射度分布曲線20を入手した後、厚さを変化させながら、上述の手順を実行して互いに異なる厚さに対する積分反射度分布曲線20をそれぞれ用意することができる。このように様々な厚さに対する積分反射度分布曲線20が備えられると、モデリングステップ(S110)が完成される。
【0053】
また、本実施形態の厚さ測定方法について説明すると、上記の取得ステップ(S120)では、薄膜層11側に白色光を照射し、光(L)の波長の変化に伴う薄膜層11の測定反射度分布曲線60を取得し、上記の取得ステップ(S120)は、第1強度設定ステップ(S121)と、第2強度設定ステップ(S122)と、測定反射度設定ステップ(S123)と、測定反射度分布曲線の生成ステップ(S124)と、を含む。
【0054】
上記第1強度設定ステップ(S121)では、白色光をバンドパスして、特定波長31を中心に一定の波長帯域32の強度分布を持たせた後、上面に薄膜層が積層されていない基底層10側にバンドパスされた光(L)を照射する。その後、基底層10によって反射された光の強度分布曲線を波長帯域32内で積分し、これを第1強度として設定する。
【0055】
上記第2強度設定ステップ(S122)では、白色光をバンドパスして特定波長31を中心に一定の波長帯域32の強度分布を持たせた後、薄膜層11側にバンドパスされた光(L)を照射する。その後、薄膜層11および基底層10によって反射された光の強度分布曲線を波長帯域32内で積分し、これを第2強度として設定する。
【0056】
上記の測定反射度設定ステップ(S123)では、第2強度を第1強度で割った値を特定波長に対する薄膜層の測定反射度として設定する。すなわち、薄膜層が積層されていない基底層10の強度に対する薄膜層11の強度の比を薄膜層の測定反射度として定める。
【0057】
上記の測定反射度分布曲線の生成ステップ(S124)では、特定波長31を変化させながら、第1強度設定ステップ(S121)、第2強度設定ステップ(S122)、測定反射度設定ステップ(S123)を繰り返して波長の変化に伴う測定反射度分布を示す測定反射度分布曲線60を生成する。501nm,502nm,503nm,...,600nm,...などの複数の特定波長に対する測定反射度を求め、波長に対する測定反射の変化をグラフで表示すると、図3に図示したような測定反射度分布曲線60を生成することができる。
【0058】
上記の比較ステップ(S130)は、数学的モデリングによって用意された複数の積分反射度分布曲線20と測定反射度分布曲線60とが実質的に一致するか否かをそれぞれ比較する。実質的に一致するか否かを確認する過程では、最小二乗法を利用した誤差関数を求め、最小の誤差を有する積分反射度分布曲線20と測定反射度分布曲線60を「実質的な一致」と判定するが、このような方法は、当業者に自明なものであり、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0059】
上記の決定ステップ(S140)は、測定反射度分布曲線60と実質的に一致する積分反射度分布曲線20を選択し、積分反射度分布曲線20に対応する厚さを薄膜層11の厚さとして最終的に決定する。
【0060】
図6は、測定反射度分布曲線60と、本発明のモデリング方法による積分反射度分布曲線20と、従来のモデリング方法による反射度分布曲線1を比較する図であるが、実際の厚さ測定反射計100によって測定された測定反射度分布曲線60が、従来のモデリング方法による反射度分布曲線1よりも、本発明のモデリング方法による積分反射度分布曲線20にはるかによくマッチングすることがわかる。
【0061】
上述のように構成された本発明の反射度分布曲線のモデリング方法と厚さ測定方法は、バンドパスされて一定の波長帯域に入射される光において、波長帯域内で積分する方法を用いて薄膜層により反射される光の反射度分布曲線をモデリングすることで、実際の測定によって得られた反射度分布曲線に実質的に近い反射度分布曲線を数学的にモデリングできる。
【0062】
また、上述のように構成された本発明の厚さ測定反射計は、光源と光学系との間に線形可変フィルタを配置して光をバンドパスさせることにより、望ましくない周辺波長を有する光などのノイズのない、測定しようとする特定の波長中心の波長帯域を有する光だけを通過させ、薄膜層の厚さをより精度高く測定することができる。
【0063】
また、本発明の厚さ測定反射計は、薄膜層の厚さだけでなく、薄膜層の相対的な厚さの差を意味する表面形状を同時に求められるので、薄膜層に関する包括的な情報を算出および可視化することができる。
【0064】
本発明の権利範囲は、上述の実施形態や変形例に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内で多様な形態の実施例として具現化することができる。特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を超えることなく、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば誰でも変形可能な様々な範囲まで、本発明の請求範囲の記載の範囲内にあるものとみなす。
【0065】
反射度分布曲線のモデリング方法およびこれを利用する厚さ測定方法、ならびに厚さ測定反射計において、バンドパスされて一定の波長帯域に入射される光の場合、波長帯域内で積分する方法を用いて薄膜層により反射される光の反射度分布曲線をモデリングすることで、実際の測定によって得られた反射度分布曲線に実質的に近い反射度分布曲線を数学的にモデリングすることができる。
【符号の説明】
【0066】
10 基底層
20 積分反射度分布曲線
30 強度分布曲線
40 反射度分布曲線
50 複合強度分布曲線
60 測定反射度分布曲線
100 厚さ測定反射計
110 光源
120 線形可変フィルタ
130 フィルタ移送部
140 光学系
150 カメラ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の厚さの薄膜層に対して光の波長の変化に伴う薄膜層の反射度分布をモデリングする反射度分布曲線のモデリング方法であって、
光の波長の変化に伴う前記薄膜層の反射度分布を示す反射度分布曲線を用意する 反射度分布曲線用意ステップと、
白色光を特定波長に対しバンドパスし、前記特定波長を中心に一定の波長帯域で光の強度分布を示す強度分布曲線を用意し、前記強度分布曲線を前記波長帯域内で積分して特定波長の入力強度として設定する入力強度設定ステップと、
前記反射度分布曲線と前記強度分布曲線を結合した複合強度分布曲線を前記波長帯域内で積分して前記特定波長の出力強度として設定する出力強度設定ステップと、
前記特定波長の出力強度を前記特定波長の入力強度で割る値を前記特定波長に対する前記薄膜層の積分反射度として設定する積分反射度設定ステップと、
前記特定波長を変化させながら、前記入力強度を設定するステップ、前記出力強度を設定するステップ、および前記積分反射度を設定するステップを繰り返し、波長の変化に伴う前記積分反射度の分布を示す積分反射度分布曲線を生成する積分反射度分布曲線の生成ステップと、を含むことを特徴とする反射度分布曲線のモデリング方法。
【請求項2】
前記強度分布曲線は、白色光を線形可変フィルタに通過させることにより用意されることを特徴とする請求項1に記載の反射度分布曲線のモデリング方法。
【請求項3】
白色光反射計を用いて行う、基底層の上に積層された薄膜層の厚さ測定方法であって、
互いに異なる厚さを有する複数のサンプル薄膜層を仮定し、請求項1または請求項2に記載の反射度分布曲線のモデリング方法を用いて、各々のサンプル薄膜層に対応する積分反射度分布曲線を用意するモデリングステップと、
前記薄膜層側に白色光を照射して光の波長の変化に伴う前記薄膜層の測定反射度分布曲線を取得する取得ステップと、
複数の積分反射度分布曲線と前記測定反射度分布曲線とが実質的に一致するか否かを夫々比較する比較ステップと、
前記測定反射度分布曲線と実質的に一致する積分反射度分布曲線を選択し、前記積分反射度分布曲線に対応する厚さを前記薄膜層の厚さとして決定する決定ステップと、を含むことを特徴とする厚さ測定方法。
【請求項4】
前記取得ステップは、
上面に薄膜層が積層されていない基底層側にバンドパスされた光を照射し、前記基底層により反射された光の強度分布曲線を前記波長帯域内で積分し、その値を第1強度として設定する第1強度設定ステップと、
前記薄膜層側のバンドパスされた光を照射し、前記薄膜層によって反射された光の強度分布曲線を前記波長帯域内で積分し、その値を第2強度として設定する第2強度設定ステップと、
前記第2強度を前記第1強度で割った値を、前記特定波長に対する前記薄膜層の測定反射度として設定する測定反射度設定ステップと、
前記特定波長を変化させながら、前記第1強度設定ステップ、前記第2強度設定ステップ、および前記測定反射度設定ステップを繰り返して、波長の変化に伴う前記測定反射度分布を示す測定反射度分布曲線を生成する測定反射度分布曲線生成ステップと、を含むことを特徴とする請求項3に記載の厚さ測定方法。
【請求項5】
白色光を出射する光源と、
入射される白色光を特定波長に対してバンドパスして前記特定波長を中心に一定の波長帯域を通過させ、長さ方向に沿って通過可能な特定波長が変更される線形可変フィルタと、
前記線形可変フィルタを前記長さ方向に沿って往復移動させるフィルタ移送部と、
前記線形可変フィルタを通過した光を薄膜層側に照射し、前記薄膜層により、または前記薄膜層を支持する基底層により反射された光が入射される光学系と、
前記光学系を通過した反射光が照射されイメージとして結像されるカメラ部と、を含むことを特徴とする厚さ測定反射計。
【請求項6】
前記カメラ部は、前記薄膜層または前記基底層の一定面積を一度に撮像可能なエリアカメラを含むことを特徴とする請求項5に記載の厚さ測定反射計。
【請求項7】
前記光源と前記線形可変フィルタの間に配置され、前記光源から入射される光を集光して前記線形可変フィルタ側に出射する集光レンズをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の厚さ測定反射計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−521560(P2012−521560A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501920(P2012−501920)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001131
【国際公開番号】WO2010/110535
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(509170165)エスエヌユー プレシジョン カンパニー,リミテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】SNU PRECISION CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Dong−a town #201, Bong−chun 7−dong 1692−2,Kwanak−gu,Seoul 152−818(KR)
【Fターム(参考)】