説明

反射防止フイルムの製造方法および画像表示装置

【課題】生産性に優れた反射防止フイルムの製造方法であり、煩雑な工程を行わずに優れた反射防止性を有する反射防止フイルムの製造方法および画像表示装置を提供することにあり、さらには、優れた表面耐擦傷性、耐アルカリ性、さらには反射防止性を有する画像表示装置を提供することにある。
【解決手段】2種類以上の無機粒子を含む1液の塗料組成物を、1回塗布乾燥する工程により、屈折率の異なる2層を構成する反射防止フイルムの製造方法であって、少なくとも1種類の無機粒子はフッ素化合物による表面処理がされており、前記塗料組成物はフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする、反射防止フイルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フイルムの製造方法、および当該製造方法を用いて製造した反射防止フィルムを含む画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイパネル(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)などの普及に伴い、これらの画像表示部の表示面においては、外部の光が反射する、外部映像が映るなどの問題点があるため、表示面に反射防止膜を形成した構造が提案され、用いられている。大きくは、下記の2つの方法が挙げられる。一つは、基材表面に、蒸着法やスパッタリング法により反射防止膜を形成する方法であり(例えば、特許文献1参照)、もう一つの方法は、基材表面に、反射防止用塗布液を塗布し、乾燥させることにより反射防止膜を形成する方法である(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
また、いずれの方法によっても、より広い波長領域において反射率を低減するために、屈性率の高い材料からなる層と屈折率の低い材料からなる層を積層させた多層の反射防止膜、いわゆるマルチコーティングが一般的に用いられている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、このような多層膜を形成するためには、屈折率が高い物質からなる高屈折率層を形成した後、その上層に屈折率が低い低屈折率層を形成する必要があり、最低でも2回の工程を必要とするものであり、製造工程が煩雑であるとともに、コストアップ要因となっていた。
【0005】
またこれらの反射防止膜は、表示面の最表面に位置するため、表示面に指紋や埃などが付着しやすく、アルカリ性の家庭用洗剤などを使用して拭き取られた場合には、反射防止膜に傷がついたり(耐擦傷性)、アルカリによって膜にダメージを与えるなどの問題があった。
【0006】
このような課題に対して、エポキシ基、もしくはアミノ基を有するモノマーと、ジメチルシリコーンオイルと中空シリカとを含有した低屈折率塗剤を用いることで解決できている。しかしながら、反射率が1%より高く、本来の反射防止膜の特性が損なわれ、かつ高屈折率層の上に低屈折率層を積層させた構成をとっているため、製造工程が煩雑となっている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
一方、低屈折率層に、エチレン性フッ素重合体を用い、低屈折率層と高屈折率層を1回の工程で形成する報告があるが、耐擦傷性、反射防止性が良好なものの、耐アルカリ性については言及されていない(例えば、特許文献5参照)。
【0008】
このように、煩雑な工程を行わずに優れた表面耐擦傷性、耐アルカリ性を有し、さらには優れた反射防止性を有する反射防止フィルムは未だ提案されておらず、本フィルムの開発は画像表示装置として好適に使用できるものとなる。
【特許文献1】特開平6−067019号公報
【特許文献2】特開平6−136062号公報
【特許文献3】特開平7−005452号公報
【特許文献4】特開2007−225930号公報
【特許文献5】特開2007−39619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、生産性に優れた反射防止フイルムの製造方法であり、煩雑な工程を行わずに優れた反射防止性を有する反射防止フイルムの製造方法、および該製造方法により得られた反射防止フィルムを含む画像表示装置を提供することにある。本発明のさらなる目的は、優れた表面耐擦傷性、耐アルカリ性、反射防止性を有する反射防止フィルムの製造方法、および該製造方法により得られた反射防止フィルムを含む画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
(1) 2種類以上の無機粒子を含む1液の塗料組成物を、1回塗布乾燥する工程により、屈折率の異なる2層を構成する反射防止フイルムの製造方法であって、
少なくとも1種類の無機粒子はフッ素化合物による表面処理がされており、
前記塗料組成物はフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする、反射防止フイルムの製造方法。
(2) 前記フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートが、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a)と、フッ素化アルキル基と活性水素とを有する化合物(b)から得られるフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートであることを特徴とする、前記(1)に記載の反射防止フイルムの製造方法。
(3) フッ素化合物により表面処理された無機粒子がシリカ粒子であり、他の無機粒子が該シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子であることを特徴とする、前記(1)または(2)のいずれかに記載の反射防止フイルムの製造方法。
(4) 前記表面処理が、前記シリカ粒子を下記一般式(I)で示される化合物で処理し、更に下記一般式(II)で示される化合物で処理することを特徴とする、前記(3)に記載の反射防止フイルムの製造方法。
【0011】
A−R−SiR(OR3−n 一般式(I)
A−R−Rf 一般式(II)
(上記一般式中のAは反応性二重結合基を示し、Rは炭素数1から3のアルキレン基およびそれらから導出されるエステル構造を示し、Rは水素または炭素数が1から4のアルキル基を示し、Rfはフルオロアルキル基を示し、nは0または1または2のいずれかを示し、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。)
(5) 前記シリカ粒子が、粒子の内部に空洞を有するシリカ粒子、または表面及び内部に細孔を有するシリカ粒子であって、
該シリカ粒子の数平均粒子径が1から200nmであることを特徴とする、前記(3)または(4)のいずれかに記載の反射防止フイルムの製造方法。
(6) 前記シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子が、数平均粒子径が1nmから150nm、屈折率が1.60〜2.80である金属酸化物からなることを特徴とする、前記(3)〜(5)のいずれかに記載の反射防止フイルムの製造方法。
(7) 前記金属酸化物が、インジウム含有酸化スズ(ITO)及び/またはアンチモン含有酸化スズ(ATO)であることを特徴とする、前記(6)に記載の反射防止フイルムの製造方法。
(8) 前記(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法にて得られた反射防止フィルム。
(9) 前記(8)の反射防止フイルムを設けたことを特徴とする画像表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1液の塗料組成物を1回塗布乾燥するのみで、支持基材上に屈折率の異なる2層を構成することが可能なため、良好な反射防止性能を示す反射防止フイルムを成形可能であり、反射防止フイルムの製造工程を簡略化可能となるため、生産性を向上することができる。また本発明の製造方法によると、耐擦傷性、耐アルカリ性が良好な反射防止フイルムを提供することができる。さらには、反射防止フィルム上にハードコート層などの機能性多層構造などを形成して画像表示装置に用いることで、生産性に優れた画像表示装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0014】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、2種類以上の無機粒子を含む1液の塗料組成物であり、該塗料組成物中の少なくとも1種類の無機粒子にはフッ素化合物による表面処理がされており、さらに該塗料組成物がフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートを含む場合に、この塗料組成物を支持基材に1回塗布乾燥する工程のみにより、支持基材上に屈折率の異なる2層を構成し、良好な反射防止性能、耐擦傷性、耐アルカリ性を有するフイルムを製造することを見いだした。
【0015】
さらに本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、塗料を塗布乾燥した際に低屈折率層となるフッ素化合物による表面処理がされた無機粒子と、塗料を塗布乾燥した際に高屈折率層となる他の無機粒子とを混合し、さらにフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートを添加した塗料組成物を用いることにより、該塗料組成物を支持基材に1回塗布乾燥する工程により、支持基材上に屈折率の異なる2層を構成し、良好な反射防止性能、耐擦傷性、耐アルカリ性を有するフイルムを製造した。なお、本発明の反射防止フイルムの好ましい態様の一つは、フッ素化合物による表面処理がされた無機粒子由来の低屈折率層と、さらに該低屈折率層の下でありかつ支持基材の上に他の無機粒子が積層した高屈折率層が形成された反射防止フィルムである。
【0016】
また、本発明は該反射防止フイルムを設けた画像表示装置を含む。
[反射防止フイルム]
反射防止フイルムは反射防止膜と同意であり、その必要性や要求される性能などは特開昭59−50401号公報に記載されているように、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上の屈折率差を有する2層を支持機材上に積層させることで構成された態様である。また支持基材上の2層の屈折率差は5.0以下であることが好ましい。
【0017】
また反射防止フィルムにおいては、支持基材から計測し最も離れた層が低屈折率層であることがさらに好ましい。つまり支持基材、高屈折率層、低屈折率層がこの順に積層された態様が好ましい。なお支持基材については後述するが、支持基材と高屈折率層の間にはハードコート層などの他の層を設ける事も可能である。
【0018】
屈折率差とは、隣接する層間の屈折率を相対的に比較した値であり、相対的に屈折率が低い層を低屈折率層と呼び、相対的に屈折率が高い層を高屈折率層と呼ぶ。
【0019】
本発明の反射防止フイルムの製造方法によれば、2種類以上の無機粒子を含む1液の塗料組成物を1回塗布乾燥する工程によって、屈折率の異なる2層を有する反射防止フィルムを製造することができる。より好ましい態様によれば、2種類以上の無機粒子を含む1液の塗料組成物を1回塗布乾燥する工程によって、支持基材上に高屈折率層と、該高屈折率層上に低屈折率層が構成された反射防止フイルムを製造することができる。
【0020】
本発明において1液の塗料組成物から2層を構成する原理としては、2種類以上の無機粒子の表面自由エネルギー差をドライビングフォースとして、相分離構造を形成するものと考えられる。表面自由エネルギーが低いほど無機粒子は空気層側へ移動しやすいと考えられ、また比重が小さいほど上層側へ移動しやすいと考えられる。
【0021】
なおこのような本発明の製造方法によって得られる反射防止フィルムには、高屈折率層と低屈折率層との間には明確な界面があることが望ましい。
【0022】
本発明における明確な界面とは、1つの層と他の層とが区別可能な状態をいう。区別可能な界面とは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより判断することができる界面をいう。
【0023】
反射防止フイルムとして良好な性能を示すには、分光測定において好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%以下である。また反射率は小さい程好ましく特に下限はないが、0.01%程度の反射率であれば反射防止フィルムとして十分な値と考えられる。最低反射率とは、光線反射スペクトルを測定した際に400nmから800nmの波長領域にて反射率が最低になった値を指す。フイルムの反射防止性能を比較する場合、最低反射率は一つの指標となり、最低反射率の値が小さいほど反射防止性能が良好であると言える。
【0024】
また、反射防止フイルムとして良好な性質を示すには、さらに透明性が高いことが望ましい。透明性が低い反射防止フィルムを画像表示装置に用いた場合、画像彩度の低下などによる画像表示装置に画質低下が生じるために好ましくない。本発明の反射防止フィルムは透明性の評価としてヘイズ値を用いた。ヘイズはJIS K 7136に規定された透明性材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。反射防止フイルムのヘイズ値としては好ましくは3.0%以下であり、より好ましくは1.0%以下である。またヘイズは低いほど透明性の点で好ましいものの、0%とすることは困難であり、現実的な下限値は0.01%程度と思われる。ヘイズ値が3.0%を超えると、画像劣化が生じる可能性が高くなるため好ましくない。
[塗料組成物]
本発明における塗料組成物は、2種類以上の無機粒子と、フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートを含むものである。さらに少なくとも一種類の無機粒子には、フッ素化合物による表面処理がされている。無機粒子とフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートについては後述する。
[無機粒子]
本発明の製造方法で用いる塗料組成物には2種類以上の無機粒子を含むが、無機粒子の種類数としては2種以上20種以下が好ましく、より好ましくは2種以上10種以下、さらに好ましくは2種以上3種以下である。
【0025】
無機粒子の種類としては、該無機粒子を含む1液の塗料組成物を支持体に1回塗布乾燥した際に屈折率の異なる2層を構成すれば特に限定されないが、例えば、金属原子Na、K,Mg,Ca、Ba,Al,Zn,Fe,Cu、Ti、Sn,In,W,Y,Zr,Sb,Mn,Ga,V,Nb,Ta,Ag,Si,B,Bi,Mo,Ce,Cd,Be,Pb,Euなどから選ばれる少なくとも1つの金属原子を含む無機粒子が挙げられる。また、無機粒子に含まれる金属は複数でも良く、好ましくは1種類以上5種類以下の金属を含む無機粒子を用いてもよい。
【0026】
なお、支持基材上に2層を有する反射防止フィルムの、低屈折率層構成成分として好ましく用いられる無機粒子は、Si,Na,K,Ca,およびMgから選択される元素を含む無機粒子であり、さらに好ましくは、シリカ粒子(SiO)、アルカリ金属フッ化物(NaF,KFなど)、およびアルカリ土類金属フッ化物(CaF、MgFなど)から選ばれる化合物を含む無機粒子であり、耐久性、屈折率などの点からシリカ粒子が特に好ましい。
【0027】
低屈折率層構成成分の無機粒子として好ましく用いられるシリカ粒子とは、ケイ素化合物または有機珪素化合物の重合(縮合)体のいずれかからなる組成物を含んでなる粒子を指し、一般例として、SiOなどのケイ素化合物から導出される粒子の総称である。
【0028】
低屈折率層を構成する無機粒子の形状は特に限定されるものではないが、積層後に形成される層の屈折率の観点から球状が好ましく、より好ましくは粒子の内部に空洞を有する、または表面及び内部に細孔を有することが好ましい。無機粒子が多面体構造であると、層中で隙間無く積層する可能性があり、画像表示装置に必要な透明性が得られないことが考えられる。また、粒子の内部に空洞を有する、または表面及び内部に細孔を有する無機粒子を用いることにより層の密度を下げる効果が得られる。特にシリカ粒子の内部に空洞を有する、または表面及び内部に細孔を有することが、該シリカ粒子が本発明の製造方法による反射防止フィルムの低屈折率層に含有され、低屈折率層を好適形成することとなるために好ましい。なお、内部に空洞を有する、または表面及び内部に細孔を有するシリカ粒子のことを、以下中空シリカ粒子と記載する。
【0029】
低屈折率層に含有される無機粒子の数平均粒子径が1nmよりも小さくなると層中の空隙密度が低下することによる屈折率の上昇や透明度の低下が起こることがあり好ましくなく、無機粒子の数平均粒子径が200nmよりも大きくなると低屈折率層の厚さが厚くなり良好な反射防止性能が得られなくなることがあり好ましくないため、本発明の製造方法で用いられる無機粒子の少なくとも1種は、数平均粒子径が好ましくは1nmから200nm、より好ましくは5nmから180nm、さらに好ましくは10nmから150nmである。なお、中空シリカ粒子の数平均粒子径が上記範囲であることが特に好ましい。
【0030】
本発明における数平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡により求めた粒子径をいう。倍率は50万倍とし、その画面に存在する10個の粒子の外径を測定し、その平均値とした。
【0031】
低屈折率層中に無機粒子が占める重量比率は、低屈折率層の全構成成分100重量%において無機粒子が1重量%以上90重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%以上80重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以上70重量%以下である。低屈折率層の全構成成分100重量%において、無機粒子の含有量が1重量%未満であると、良好な低屈折率が得られないことがあり、また無機粒子の含有量が90重量%を越えると、製膜性や高屈折率層との密着性が低下したり、高屈折率層と低屈折率層との区別可能な界面が失われるなどの不具合を生じることがある。
【0032】
フッ素化合物による表面処理を施した無機粒子は、好適に低屈折率層を形成することができるため、塗料組成物に用いられる2種類以上の無機粒子の少なくとも1種類の無機粒子には、フッ素化合物による表面処理がされていることが重要である。なお、2種類以上の無機粒子の全ての無機粒子がフッ素化合物による表面処理を施された場合よりも、フッ素化合物による表面処理を施された無機粒子と該表面処理をされていない無機粒子の両方を含む1液の塗料組成物を用いる方が、屈折率差の大きい2層を得ることができるために反射防止性の点で好ましい。
【0033】
また、フッ素化合物による表面処理を施した無機粒子としては、中空シリカ粒子などのシリカ粒子であることが特に好ましい。
【0034】
フッ素化合物による表面処理工程は、一段階で行われても良いし、多段階で行われても良い。また、複数の段階でフッ素化合物を用いても良いし、一つの段階のみでフッ素化合物を用いても良い。
【0035】
また無機粒子の表面処理工程にて好ましく用いられるフッ素化合物は、単一化合物でも良いし複数の異なる化合物を用いても良い。
【0036】
フッ素化合物による表面処理とは、無機粒子を化学的に修飾し、無機粒子に含フッ素化合物を導入する工程を指す。
【0037】
無機粒子に直接フッ素化合物を導入する方法としては、1分子中にフッ素セグメントとシリルエーテル基(シリルエーテル基が加水分解されたシラノール基を含む)との両方を持つフルオロアルコキシシラン化合物を少なくとも1種類以上と開始剤とを共に撹拌することにより成される方法がある。しかし無機粒子に直接フッ素化合物を導入する場合、反応性の制御が困難になったり、塗料化後塗布時に塗布斑などが発生しやすくなったりする場合がある。
【0038】
また無機粒子を化学的に修飾して、無機粒子に含フッ素化合物を導入する更なる方法としては、無機粒子を架橋成分にて処理し、官能基を有したフッ素化合物とつなぎ合わせる方法がある。
【0039】
架橋成分としては、分子内にフッ素は無いが、1分子中にフッ素化合物と反応可能な部位と、無機粒子と反応可能な部位を少なくとも一カ所ずつ持っている化合物を指し、無機粒子との反応可能な部位としては反応性の観点からシリルエーテルおよびシリルエーテルの加水分解物であることが好ましい。これら化合物は一般的にシランカップリング剤と呼ばれ、例としては、グリシドキシアルコキシシラン類、アミノアルコキシシラン類、アクリロイルシラン類、メタクリロイルシラン類、ビニルシラン類、メルカプトシラン類、などを用いることができる。
【0040】
官能基を有したフッ素化合物としては、フルオロアルキルアルコール、フルオロアルキルエポキシド、フルオロアルキルハライド、フルオロアルキルアクリレート、フルオロアルキルメタクリレート、フルオロアルキルカルボキシレート(酸無水物およびエステル類を含む)、などを用いることができる。
【0041】
本発明における無機粒子のフッ素化合物による表面処理のより好ましい形態は、シリカ粒子を下記一般式(I)で示される化合物で処理し、更に下記一般式(II)で示される化合物で処理することが好ましい。
【0042】
A−R−SiR(OR3−n 一般式(I)
A−R−Rf 一般式(II)
(上記一般式中のAは反応性二重結合基を示し、Rは炭素数1から3のアルキレン基およびそれらから導出されるエステル構造を示し、Rは水素または炭素数が1から4のアルキル基を示し、Rfはフルオロアルキル基を示し、nは0または1または2のいずれかを示し、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。)
一般式(I)の具体例としては、アクリロキシエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシブチルトリメトキシシラン、アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、アクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランおよびこれら化合物中のメトキシ基が他のアルコキシル基および水酸基に置換された化合物を含むものなどが挙げられる。
【0043】
一般式(II)の具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフロオロプロピルアクリレート、2−パーフルオロブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロデシルエチルアクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−3−メトキシブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1−トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0044】
分子中にフッ素セグメントを有さない一般式(I)で示される化合物を用いることにより、簡便な反応条件で無機粒子表面を修飾することが可能となるばかりではなく、無機粒子表面に反応性を制御しやすい官能基を導入することが可能となり、その結果、反応性二重結合を有するフッ素セグメントを無機粒子表面で反応させることが可能になる。
【0045】
低屈折率層中の全構成成分100重量%において一般式(II)で示す化合物に由来するフッ素化合物が占める重量比率は、0.1重量%から45重量%であることが好ましく、より好ましくは1重量%から40重量%であり、さらに好ましくは5重量%から35重量%である。フッ素化合物の含有量が低屈折率層の全構成成分100重量%において0.1重量%より少ないと、良好な層分離が形成されず、ひいては良好な反射防止性能が得られないし、フッ素化合物が45重量%より多すぎると、溶解性の低下や製膜性の悪化などの不具合が生じる。
【0046】
低屈折率層とは支持基材上に積層される層中のうちの1層であり、隣接する1層(フイルム構成層であり空気層を除く)よりも相対的な屈折率が低い層である。なお、上述のように本発明の製造方法により得られる反射防止フィルムは、支持基材、高屈折率層、低屈折率層がこの順に形成されることが好ましい。屈折率を低下させる方法としてフッ素系高分子を用いる方法(特開2002−36457号公報)や密度を低下させる方法(特開平8−83581号公報)が知られているが、前述のように低屈折率層にはフッ素化合物による表面処理をされた無機粒子を含むことが重要である。前述した無機粒子および一般式(I)、一般式(II)に示される化合物は、本発明で用いられる塗料組成物中では、未反応のままで無機粒子と一般式(I)化合物と一般式(II)化合物が存在しても良いし、無機粒子を一般式(I)化合物と一般式(II)化合物により表面処理して縮合および/または重合体として存在していても良い。
【0047】
本発明の低屈折率層には前記した物質以外に別途バインダー成分を含んでも良い。バインダー成分としては、熱、活性エネルギー線など硬化可能な樹脂成分であれば限定されるものではないが、本発明のフッ素化合物により表面処理された無機粒子を膜中に保持する観点より、分子中にアルコキシシランやアルコキシシランの加水分解物や反応性二重結合を有していることが好ましい。
【0048】
続いて高屈折率層に関して説明する。
【0049】
高屈折率層とは、支持基材上に積層される層中のうちの1層であり、隣接する層よりも屈折率が高い層をさし、少なくとも一種類以上の無機粒子を含むことが好ましい。高屈折率層構成成分として用いられる無機粒子は特に限定されないが、低屈折率層構成成分として用いられる無機粒子とは異なる無機粒子であることが好ましく、Zr,Ti,Al,In,Zn,Sb,Sn,およびCeよりなる群から選ばれる少なくとも一つの金属の酸化物粒子であることが好ましい。また高屈折率層構成成分として用いられる無機粒子としては、シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子が好ましく、具体的には酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化アンチモン(Sb)、およびインジウムスズ酸化物(In)から選ばれる少なくとも一つの金属酸化物であり、特に好ましくはSbやSnなどから導出されるインジウム含有酸化スズ(ITO)やアンチモン含有酸化スズ(ATO)である。
【0050】
高屈折率層構成成分として好適な無機粒子の数平均粒子径、特に低屈折率層構成成分として好適なシリカ粒子よりも屈折率が高い金属酸化物からなる無機粒子の平均粒子形としては、好ましくは、1nmから150nm、より好ましくは5nmから100nmである。無機粒子の数平均粒子径が1nmよりも小さくなると層中の空隙密度が低下することによる透明度の低下が起こるため好ましくなく、無機粒子の数平均粒子径が150nmよりも大きくなると高屈折率層の厚さが大きくなり良好な反射防止性能が得られなくなり好ましくない。
【0051】
高屈折率層構成成分として好適な無機粒子の屈折率、特に低屈折率層構成成分として好適なシリカ粒子よりも屈折率が高い金属酸化物からなる無機粒子の屈折率としては、好ましくは1.60〜2.80、より好ましくは1.60〜2.50である。無機粒子の屈折率が1.60よりも小さくなると高屈折率層の屈折率が低下することがあり、無機粒子の屈折率が2.80よりも大きくなると高屈折率層の屈折率が上昇し、良好な反射防止性能が得られなくなることがある。
【0052】
高屈折率層構成成分として用いられる無機粒子については前述した通りだが、フッ素化合物による表面処理がされた無機粒子がシリカ粒子の場合は、該シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子であることが特に好ましく、このような該シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子としては、数平均粒子径が1から150nmであり、かつ屈折率が1.60から2.80の金属酸化物が好ましく用いられる。そのような金属酸化物の具体例としては、インジウム含有酸化スズ(ITO)及び/またはアンチモン含有酸化スズ(ATO)が挙げられる。
【0053】
本発明の製法に用いられる塗料組成物において、フッ素化合物による表面処理がされた無機粒子がシリカ粒子であり、他の無機粒子が該シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子である場合、支持基材上に塗料組成物を1回塗布乾燥することで、該シリカ粒子を含有した層と、該シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子を含有する高屈折率層を好適に形成できるため好ましい態様である。
【0054】
本発明で用いる塗料組成物としてさらに、バインダー成分を含むことができる。バインダー成分としては特に限定するものではないが、製造性の観点より、熱および/または活性エネルギー線にて硬化するバインダー(樹脂)であることが好ましく、バインダーとしての樹脂成分は一種類であっても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。熱で硬化する場合、製造コストよりその温度は室温から200℃であることが好ましいし、活性エネルギー線の場合は汎用性よりEBおよび/またはUV線であることが好ましい。
[フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート]
本発明の製造方法で用いる塗料組成物としては、少なくとも1種類以上の無機粒子がフッ素化合物による表面処理がされた、2種類以上の無機粒子を含み、さらにフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートを含むことが重要である。より好ましい態様としては、前記したフッ素化合物による表面処理がされたシリカ粒子などの低屈折率層構成成分として好適な粒子と、前記した金属酸化物粒子などの高屈折率層構成成分として好適な粒子と、さらにフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートを含むものである。
【0055】
本発明の製造方法で用いる塗料組成物中のフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートは特に限定されないが、例えば2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a)と、フッ素化アルキル基と活性水素とを有する化合物(b)から得られるフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。2個以上の(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基とメタクリロイル基とを総称するものである。フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートは10個以下の(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートとしてより好ましくは、2個以上6個以下の(メタ)アクリロイル基を有する場合である。
【0056】
ここでフッ素化アルキル基とは、アルキル基中の全ての水素原子がフッ素原子に置換されたもの(パーフルオロアルキル基)と、アルキル基中の一部の水素原子がフッ素原子に置換されたもの(例えば、HCFCFCFCF−など)の総称である。なお、該フッ素化アルキル基中に酸素原子を含むもの(例えば、CF−(OCFCF−など)も本定義中に含めるものとする。
【0057】
フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートの単独使用、あるいはこれを含む硬化性組成物の使用は、反射防止膜などの光学材料として、屈折率を低下させるなどの光学特性と架橋反応によって三次元構造を形成し、耐擦傷性、耐アルカリ性を発現させるために有用である。また、フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートは、低屈折率層中および/または低屈折率層と高屈折率層の界面に存在していると考えられる。
【0058】
2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a)としては、具体的には以下の化合物が挙げられる。
【0059】
まず、2官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,3−ブチレングリコールジアクリレート(例えば、化薬サートマー株式会社製SR−212など)、1,4−ジオールジアクリレート(例えば、大阪有機化学株式会社製ビスコート#195など)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(例えば、共栄社化学株式会社製1,6HX−A)、エチレンオキシド(以下EOと略す)変性1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(例えば、サンノプコ株式会社製RCC13−361など)、エピクロルヒドリン(以下、ECHと略す)変性1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製カヤラッドR−167など)、1,9−ノナンジオールジアクリレート(例えば、大阪有機化学株式会社製ビスコート#215など)、ジエチレングリコールジアクリレート(例えば、日本油脂株式会社製ブレンマーADE−100)、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート(例えば、長瀬化成株式会社製デナコールアクリレートDA−722など)、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート(共栄社化学株式会社製ライトアクリレートHPP−Aなど)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製カヤラッドNPGDAなど)、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート(例えば、サンノプコ株式会社製フォトマー4160など)、プロピレンオキシド(以下、POと略す)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート(例えば、化薬サートマー株式会社製SR−9003など)、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート(例えば、東亞合成株式会社製アロニックスM−233など)、ポリエチレングリコールジアクリレート(例えば、日本油脂株式会社製ブレンマーADE−200など)、ポリプロピレングリコールジアクリレート(例えば、日本油脂株式会社製ブレンマーADP−200など)、ポリエチレングリコール−プロピレングリコール−ポリエチレングリコールジアクリレート(例えば、日本油脂株式会社製ブレンマーADCシリーズなど)、ポリテトラメチレンジグリコールジアクリレート(例えば、共栄社化学株式会社製ライトアクリレートPTMGA−250など)、ポリエチレングリコールジアクリレート(例えば、共栄社化学株式会社製ライトアクリレート3EG−Aなど)、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート(例えば、ダイセルUCB株式会社製IRR214など)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(例えば、大日本インキ化学工業株式会社製LUMICURE DCA−200)、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製カヤラッドR−604など)、トリグリセロールジアクリレート(例えば、共栄社化学株式会社製エポキシエステル80MFAなど)などが挙げられる。
【0060】
3官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、EO変性グリセロールアクリレート(例えば、第一工業製薬株式会社製ニューフロンティアGE3Aなど)、PO変性グリセロールトリアクリレート(例えば、荒川化学株式会社製ビームセット720)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)(例えば、第一工業製薬株式会社製ニューフロンティアPET−3など)、EO変性リン酸トリアクリレート(例えば、大阪有機化学株式会社製ビスコート3A)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMTPA)(例えば、第一工業製薬株式会社製ニューフロンティアTMTPなど)、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、ダイセルUCB株式会社製Ebecryl2047など)、HPA変性トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製カヤラッドTHE―330など)、(EO)あるいは(PO)変性トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、大日本インキ化学工業株式会社製LUMICURE ETA−300、第一工業製薬株式会社製ニューフロンティアTMP−3Pなど)、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製カヤラッドD−330など)、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(例えば、日立化成株式会社製ファンクリルFA−731Aなど)などが挙げられる。
【0061】
4官能の(メタ)アクリレートしては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)(例えば、大日本インキ化学工業株式会社製LUMICUREDTA−400など)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート(例えば、三菱レーヨン株式会社製ダイヤビームUK−4154など)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)(例えば、新中村化学株式会社製NKエステルA−TMMTなど)などが挙げられる。
【0062】
5官能または6官能(メタ)アクリレートしては、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート(例えば、化薬サートマー株式会社製SR−399Eなど)、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製カヤラッドD−310)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(例えば、大日本インキ化学工業株式会社製DAP−600など)、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレートベース・多官能モノマー混合物(例えば、大日本インキ化学工業株式会社製LUMICURE DPA−620など)などが挙げられる。
【0063】
なお、本発明の製造方法で用いられる2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a)がこれら具体例によって何ら限定されるものではないことは勿論である。これら2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a)は、単独での使用、あるいは(メタ)アクリロイル基数が異なる複数の化合物を混合して用いても、さらに、構造も異なる複数の化合物を混合して用いても良い。また、一般に市販入手可能な前記化合物(a)としては、主成分となる目的化合物に対して(メタ)アクリロイル基数の異なる化合物の混合物であることが多い。使用に際しては、各種クロマトグラフィー、抽出などの精製方法で目的とする(メタ)アクリロイル基数の化合物を取り出して用いてもよいが、混合物のまま用いてもよい。
【0064】
また、本発明で用いる前記化合物(a)としては、ウレタン(メタ)アクリレートを使用することも可能である。前記ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法は何ら制限されるものでなく、例えば、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する水酸基含有(メタ)アクリレートとイソシアネート化合物との重付加反応などにより得ることが可能である。
【0065】
前記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート(例えば、日本油脂株式会社製ブレンマーGAMなど)などが挙げられる。
【0066】
また、前記イソシアネート化合物としては、芳香族イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物、脂環式イソシアネート化合物の何れも用いることは可能であり、例えば、トルエンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、アダマンチルジイソシアネートなどが挙げられ、得られる硬化物のガラス転移温度の高さ、硬化物の耐擦傷性などの観点から、脂環構造を有するものであることが好ましく、例えばノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、アダマンチルジイソシアネートを用いることが好ましい。すなわち、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する水酸基含有(メタ)アクリレートと脂環構造を有するイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましい。なお、ウレタン(メタ)アクリレートにマイケル付加によってフッ素化アルキル基を導入して得られる化合物は、前記化合物として水酸基を有するものを使用し、これにマイケル付加反応によってフッ素化アルキル基を導入した後、イソシアネート化合物と反応させることによっても合成することが可能であり、反応順序としては特に制限されるものではない。
【0067】
次に、フッ素化アルキル基と活性水素とを有する化合物(b)について説明する。
【0068】
フッ素化アルキル基としては、パーフルオロアルキル基であることが効果的にフッ素原子由来の性能を発現できる点から好ましいものであるが特に限定されず、アルキル基中の一部の水素原子がフッ素原子に置換されたものでも構わない。
【0069】
前記化合物(b)としては工業的入手が容易であり、かつ温和な反応条件を選択できるなどの観点から、下記一般式(1)
Rf(CH ZH (1)
〔式中、mは0〜20の整数であり、Rfは−C 2n+1 (nは1〜20の整数である。)であり、Zは水素原子若しくは炭素数1〜24のアルキル基を有する窒素原子、酸素原子、硫黄原子、または−SO −NR−(Rは水素原子、または炭素数1〜24のアルキル基である。)である。〕で表される化合物、または下記一般式(2)
【0070】
【化1】

【0071】
〔式中、Yは酸素原子、または硫黄原子であり、pとqは同一でも異なっていても良い1〜4の整数であり、RfとRf は同一でも異なっていても良い−C 2n+1 (nは1〜20の整数である。)である。〕で表される化合物であることが好ましく、より温和な反応条件を選択できる点から、Zが水素原子若しくは炭素数1〜6のアルキル基を有する窒素原子、硫黄原子、または−NRSO−(Rは炭素数1〜6のアルキル基である。)である、あるいは前記一般式(2)中のYが硫黄原子であり、Rf の炭素数nが4、6、または8であり、かつ前記一般式(1)中のRfの炭素数nが4、6、または8であることが特に好ましい。
【0072】
前記一般式(1)で表わされる化合物としては、例えば以下の(b−1)〜(b−12)の化合物が挙げられ、これらは単独でも、2種以上の混合物として使用しても良い。
SO N(CH )H (b−1)
SO N(C )H (b−2)
CH CH N(C17 )H (b−3)
CH CH SH (b−4)
13 CH CH SO N(C17 )H (b−5)
13 CH CH SH (b−6)
13 CH CH N(C )H (b−7)
17 CH CH SH (b−8)
17 CH N(C )H (b−9)
19 CH CH SH (b−10)
1021 CH CH CH N(C )H (b−11)
1225 CH CH SH (b−12)
本発明で用いられるフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートは、前記化合物(a)と前記化合物(b)から得られることが好ましいが、この前記化合物(a)と前記化合物(b)との反応は、通常のマイケル付加反応の方法に従えば良く、フッ素原子を有することによる特別の配慮は特に必要ではなく、無溶媒でも溶媒存在下でも製造できる。溶媒を使用する場合には、前記化合物(a)および前記化合物(b)の溶解性、沸点、使用する設備などを考慮し適宜、選択されるものであるが、具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族系炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン(以下、MEKと略記する。)、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKと略記する。)などのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性化合物、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族系炭化水素類などが挙げられ、単独でも2種以上の溶媒を混合して使用しても良い。これらの中でもエステル類、芳香族系炭化水素類、ケトン類、アルコール類、エーテル類、ジメチルホルムアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどを用いることが好ましく、エステル類、ケトン類、アルコール類、エーテル類を用いることが特に好ましい。
【0073】
以上の如く、前記化合物(a)と、前記化合物(b)とのマイケル付加反応を経由することで、強酸触媒などを必要とした縮合反応を経ることなく、より簡便かつ穏和な条件下でフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートを製造できる。
【0074】
前記化合物(a)と、前記化合物(b)によって得られるフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、下記(i)〜(xxv)などの化合物が挙げられる。なお、下記具体例はいずれもアクリレートの場合を示したものであり、式中のアクリロイル基は何れもメタクリロイル基に変更可能である。さらに下記具体例は原料として用いる(メタ)アクリレートとしてアクリレートを用いた場合に精製する化合物であり、カルボニル炭素に結合するメチレン基中の水素原子の1つは何れもメチル基に変更可能である。
【0075】
【化2−1】

【0076】
【化2−2】

【0077】
【化2−3】

【0078】
【化2−4】

【0079】
【化2−5】

【0080】
これらフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートの塗料組成物中の含有量は、高屈折率層を誘導する組成物と低屈折率層を誘導する組成物とさらに溶剤などから成る1液の塗料組成物の全固形分100重量部に対し、5〜40重量部であるのが好ましく、より好ましくは10〜30重量部である。フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートの含有量が、塗料組成物の全固形分100重量部に対し40重量部を超えると透明性の低下、最低反射率の上昇が発生する場合があり、5重量部未満では耐擦傷性、耐アルカリ性が低下する場合がある。
【0081】
本発明で用いる塗料組成物としては、前記した低屈折率層構成成分として好適な無機粒子と、前記した高屈折率層構成成分として好適な無機粒子と、前記したフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートと、さらに溶剤を含むことが望ましい。溶剤は塗料組成物が塗布可能な状態にあれば、必要量および性状に制限は無いため、特に記載しないが、一般的に塗料溶剤として用いられている溶剤を用いることができる。
【0082】
本発明で用いる塗料組成物としては、さらに開始剤や硬化剤や触媒を含むことが好ましい。開始剤および触媒は、無機粒子と樹脂との反応を促進したり、樹脂間の反応を促進するために用いられる。該開始剤としては、塗料組成物をアニオン、カチオン、ラジカル反応などによる重合および/または縮合および/または架橋反応を開始あるいは促進せしめるものが好ましい。
【0083】
該開始剤および該硬化剤および触媒は、公知または周知のものを使用できる。また、複数の開始剤を同時に用いても良いし、単独で用いても良い。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤や光重合開始剤を併用しても良い。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アリールケトン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。なお該開始剤および該硬化剤の添加割合は、1液の塗料組成物中の固形分に対して0.001重量%から30重量%が好ましく、より好ましくは0.05重量%から20重量%でありさらに好ましくは0.1重量%から10重量%である。
【0084】
その他として、本発明で使用する塗料組成物にはさらに、各種シランカップリング剤、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜添加しても良い。
[その他の層]
反射防止フイルムには、さらに、ハードコート層、防湿層、帯電防止層、下塗り層や保護層を設けてもよい。
【0085】
ハードコート層は、支持基材に耐傷性を付与するために設ける。ハードコート層は、透明支持体とその上の層との接着を強化する機能も有する。ハードコート層は、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、シリコン系ポリマーやシリカ系化合物を用いて形成することができる。顔料をハードコート層に添加してよい。アクリル系ポリマーは、多官能アクリレートモノマー(例、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート)の重合反応により合成することが好ましい。ウレタン系ポリマーの例には、メラミンポリウレタンが含まれる。シリコン系ポリマーとしては、シラン化合物(例、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン)と反応性基(例、エポキシ、メタクリル)を有するシランカップリング剤との共加水分解物が好ましく用いられる。さらには2種類以上のポリマーを組み合わせて用いてもよい。シリカ系化合物としては、コロイダルシリカが好ましく用いられる。ハードコート層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0086】
支持基材には、ハードコート層に加えて、接着層、シールド層、滑り層を設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
[支持基材]
反射防止皮膜をCRT画像表示面やレンズ表面に直接設ける場合を除き、反射防止膜は支持基材を有することが好ましい。支持基材としては、ガラス板よりもプラスチックフイルムの方が好ましい。プラスチックフイルムの材料の例には、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレートおよびポリエーテルケトンなどが含まれるが、これらの中でも得にトリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0087】
支持基材の光透過率は、80%以上100%以下であることが好ましく、86%以上100%以下であることがさらに好ましい。ここで光透過率とは、光を照射した際に試料を透過する光の割合のことであり、JIS K 7361−1に従い測定することができる透明材料の透明性の指標である。反射防止フィルムの光透過率としては値が大きいほど良好であり、値が小さいとヘイズ値が上昇し、画像劣化が生じる可能性が高くなるため好ましくない。支持基材のヘイズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。支持基材の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。なお本発明でいう屈折率とは、光が空気中からある物質中に進む時、その界面で進行方向の角度を変える割合のことであり、JIS K 7142に規定されている方法により測定することができる。
【0088】
支持基材には、赤外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を添加してもよい。赤外線吸収剤の添加量は、支持基材の全成分100質量%において0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがさらに好ましい。支持基材には、滑り剤として不活性無機化合物の粒子を添加してもよい。滑り剤として使用される無機化合物の例には、SiO、TiO、BaSO、CaCO、タルクおよびカオリンが含まれる。さらに、支持基材には、表面処理を実施してもよい。
【0089】
支持基材の表面には、各種の表面処理を施すことも可能である。表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
[塗布乾燥]
本発明の製造方法で用いられる塗料組成物は、支持基材上にディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法などの塗布工程を1度行うことで、続く塗料組成物の乾燥により反射防止フィルムを製造することができる。
【0090】
本発明の製造方法によれば、1液の塗料組成物を1回塗布乾燥することにより、屈折率の異なる2層を同時に形成することができる。屈折率の異なる2層の形成は、少なくとも本発明の低屈折率層を誘導する組成物と高屈折率層を誘導する組成物と溶媒とが混合された塗料組成物の塗布後、乾燥過程において成される。
【0091】
得られる反射防止フイルム中から完全に溶媒を除去することに加え、欠陥なく二層に分離させるという観点からも、乾燥工程では加熱することが好ましい。加熱温度としては、用いる溶媒の沸点およびポリマーのガラス転移温度などから決定できるが特に限定される値ではない。
【0092】
さらに、乾燥後の形成層に対して熱またはエネルギー線を照射することによる硬化操作を行ってもよい。硬化を熱により行う場合、乾燥工程と硬化工程とを同時におこなってもよい。
【0093】
また本発明の製法により得られた反射防止フィルムは、PDPなどの各種画像表示装置の視認側表面に設けることで、反射防止性に優れた画像表示装置を提供することができる。
【実施例】
【0094】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0095】
実施例1〜4,比較例1〜5
[製造例]
[高屈折率成分の調整]
高屈折率成分としてアンチモン含有酸化スズであるオプスターTU4005(JSR社製)を固形分濃度3.2重量%となるようにイソプロピルアルコールを加え希釈した。
[低屈折率成分の調整]
[低屈折率成分(a)の調整]
中空シリカであるスルーリアTR−113(触媒化成工業株式会社製:固形分20重量%)20gにメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2.75gと10重量%蟻酸水溶液0.34gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。ついで、2−ペルフルオロオクチルエチルアクリレート2.76gおよび2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.115gを加えた後、1時間90℃にて加熱撹拌した。得られた液を、イソプロピルアルコールで希釈し、固形分濃度3.6重量%の低屈折率成分(a)とした。
[低屈折率成分(b)の調整]
中空シリカであるスルーリアTR−113(触媒化成工業株式会社製:固形分20重量%)20gにメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2.75gと10重量%蟻酸水溶液0.34gを混合し70℃にて1時間撹拌した。得られた液を、イソプロピルアルコールで希釈し、固形分濃度3.1重量%の低屈折率成分(b)とした。
[低屈折率成分(c)の調整]
中空シリカであるスルーリアTR−113(触媒化成工業株式会社製:固形分20重量%)20gをイソプロピルアルコールで希釈し、固形分濃度3.4重量%の低屈折率成分(c)とした。
[フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレート]
フッ素化アルキル基含有メタアクリレートとして、ディフェンサ:TF−3042ME(大日本インキ化学工業株式会社製:固形分90重量%)を、イソプロピルアルコールで3.5重量%となるように希釈して用いた。
[多官能アクリレート]
多官能アクリレートとして、UN−904(根上工業株式会社製:固形分63重量%)を、イソプロピルアルコールで3.5重量%となるように希釈して用いた。
用いた。
[フッ素系界面活性剤]
フッ素系界面活性剤として、メガファック:RS−101(大日本インキ化学工業株式会社製:固形分40重量%)を、イソプロピルアルコールで3.5重量%となるように希釈して用いた。
[塗剤1]
低屈折率成分(a)と高屈折率成分を重量比4:6となるように混合した溶液(固形分濃度3.4重量%)100重量部に、フッ素化アルキル基含有メタアクリレートを5重量部添加した。
[塗剤2]
低屈折率成分(a)と高屈折率成分を重量4:6となるように混合した溶液(固形分濃度3.4重量%)100重量部に、フッ素化アルキル基含有メタアクリレートを10重量部添加した。
[塗剤3]
低屈折率成分(a)と高屈折率成分を重量比4:6となるように混合した溶液(固形分濃度3.4重量%)100重量部に、フッ素化アルキル基含有メタアクリレートを30重量部添加した。
[塗剤4]
低屈折率成分(a)と高屈折率成分を重量比4:6となるように混合した溶液(固形分濃度3.4重量%)100重量部に、フッ素化アルキル基含有メタアクリレートを40重量部添加した。
[塗剤5]
低屈折率成分(a)と高屈折率成分を重量比4:6(固形分濃度3.4重量%)となるように混合した。
[塗剤6]
低屈折率成分(a)と高屈折率成分を重量比にて4:6となるように混合した溶液(固形分濃度3.4重量%)100重量部に、多官能アクリレートを20重量部添加した。
[塗剤7]
低屈折率成分(a)と高屈折率成分を重量比4:6となるように混合した溶液(固形分濃度3.4重量%)100重量部に、フッ素系界面活性剤を20重量部添加した。
[塗剤8]
低屈折率成分(b)と高屈折率成分を重量比にて4:6となるように混合した溶液(固形分濃度3.2重量%)100重量部に、フッ素化アルキル基含有メタアクリレートを20重量部添加した。
[塗剤9]
低屈折率成分(c)のみ100重量部に、フッ素化アルキル基含有メタアクリレートを20重量部添加した。
[反射防止フイルムの作製]
支持基材として、PET樹脂フイルム上にハードコート塗料が塗布硬化されているルミクリアSR−HC(東レフィルム加工((株)))を用いた。この支持基材上にバーコーター(#10)を用いて、各実施例および比較例ごとに表1に示す塗剤1〜9を塗布後、100℃にて1分間乾燥し、400mJ/cmの紫外線を照射し、反射防止フイルムを作製した。
[反射防止フイルムの評価]
作製した反射防止フイルムについて、次に示す性能評価を実施し、得られた結果を表1に示した。特に断りのない場合を除き、測定は各実施例・比較例において、1つのサンプルについて場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
[反射防止性能]
反射防止性能の評価は島津製作所製分光光度計UV−3100を用いて400nmから800nmの波長範囲にて行い、光線反射率の最小値(最低反射率)を測定した。
【0096】
最低反射率が1.0%以下を合格とした。
[耐擦傷性]
反射防止フイルムに250g/cm荷重となるスチールウール(#0000)を垂直にあて、1cmの長さを10往復した際に観察される傷の本数を目視により測定した。
【0097】
目視される傷の本数が15本以下を合格とした。
[耐アルカリ性]
1wt%のNaOH溶液を滴下させ、30分経過後にガーゼを用いて拭き取り作業を行った。拭き取り後の表面状態を観察することにより、表面が侵されているかどうか目視で判定した。
【0098】
液滴の跡がなければ評価○、跡が確認できれば評価×とした。なお、1つのサンプルについて場所を変えた3カ所について評価したうち、最も多い評価結果を採用する。
[透明性]
透明性はヘイズ値を測定することにより判定した。測定はJIS K 7136に基づき、日本電色工業(株)製 ヘイズメーターを用いて測定を行った。2.0%未満は○、2.0%以上3.0%未満は△、3.0%以上を×とした。
[シリカ粒子を含む無機粒子の屈折率]
本発明の無機粒子の屈折率の測定方法は下記の方法で行った。
【0099】
無機粒子の分散液をエバポレーターに採り、分散媒を蒸発させる。これを120℃で乾燥し、粉末とする。屈折率が既知である標準屈折液を2,3滴ガラス板上に滴下し、これに上記粉末を混合する。上記(3)の操作を種々の標準屈折液で行い、混合液(多くの場合はペースト状が透明になったときの標準屈折液を無機粒子の屈折率として測定した。
[2層の界面の有無]
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、2層の界面の有無を判断した。
[2層個々の屈折率]
本発明における2層個々の屈折率は、反射分光膜厚計(大塚電子製、商品名「FE−3000」)によって、300〜800nmの反射率を測定し、代表的な屈折率の波長分散の近似式としてn−k Cauchyの分散式を引用し、スペクトルの実測値とフィッティングさせることにより求めた。
【0100】
【表1−1】

【0101】
【表1−2】

【0102】
表1から明らかなように、フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートを含む場合(実施例1〜実施例4)では、反射防止性、耐擦傷性、耐アルカリ性、透明性に優れたバランスのよいフィルムであった。
【0103】
また、フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートを含まない場合(比較例1)では、透明性が良好なものの、耐擦傷性、耐アルカリ性に欠けるものであった。
【0104】
またフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートの代わりに、多官能アクリレートを含む場合(比較例2)では、耐擦傷性、透明性が良好なものの、耐アルカリ性に劣るものであった。
【0105】
フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートの代わりに、フッ素系界面活性剤を含む場合(比較例3)では、透明性が良好なものの、耐擦傷性、耐アルカリ性に劣るものであった。
【0106】
低屈折率成分において、フッ素化合物による表面処理がなされていない場合(比較例4)では、耐擦傷性、耐アルカリ性、透明性が良好なものの、反射防止性に欠けるものであった。
【0107】
高屈折率成分を含まない場合(比較例5)でも、耐擦傷性、耐アルカリ性、透明性が良好なものの、反射防止性に欠けるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上の無機粒子を含む1液の塗料組成物を、1回塗布乾燥する工程により、屈折率の異なる2層を構成する反射防止フイルムの製造方法であって、
少なくとも1種類の無機粒子はフッ素化合物による表面処理がされており、
前記塗料組成物はフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする、反射防止フイルムの製造方法。
【請求項2】
前記フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートが、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a)と、フッ素化アルキル基と活性水素とを有する化合物(b)から得られるフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートであることを特徴とする、請求項1に記載の反射防止フイルムの製造方法。
【請求項3】
フッ素化合物により表面処理された無機粒子がシリカ粒子であり、他の無機粒子が該シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子であることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の反射防止フイルムの製造方法。
【請求項4】
前記表面処理が、前記シリカ粒子を下記一般式(I)で示される化合物で処理し、更に下記一般式(II)で示される化合物で処理することを特徴とする、請求項3に記載の反射防止フイルムの製造方法。
A−R−SiR(OR3−n 一般式(I)
A−R−Rf 一般式(II)
(上記一般式中のAは反応性二重結合基を示し、Rは炭素数1から3のアルキレン基およびそれらから導出されるエステル構造を示し、Rは水素または炭素数が1から4のアルキル基を示し、Rfはフルオロアルキル基を示し、nは0または1または2のいずれかを示し、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。)
【請求項5】
前記シリカ粒子が、粒子の内部に空洞を有するシリカ粒子、または表面及び内部に細孔を有するシリカ粒子であって、
該シリカ粒子の数平均粒子径が1から200nmであることを特徴とする、請求項3または4のいずれかに記載の反射防止フイルムの製造方法。
【請求項6】
前記シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子が、数平均粒子径が1nmから150nm、屈折率が1.60〜2.80である金属酸化物からなることを特徴とする、請求項3〜5のいずれかに記載の反射防止フイルムの製造方法。
【請求項7】
前記金属酸化物が、インジウム含有酸化スズ(ITO)及び/またはアンチモン含有酸化スズ(ATO)であることを特徴とする、請求項6に記載の反射防止フイルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法にて得られた反射防止フィルム。
【請求項9】
請求項8の反射防止フイルムを設けたことを特徴とする画像表示装置。

【公開番号】特開2009−198748(P2009−198748A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39661(P2008−39661)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】