説明

反射防止性を有する光学物品及びその製造方法

【課題】
本発明は、優れた反射防止効果を有し、かつ優れた耐摩擦性を有する光学物品の製造方法を提供せんとするものである。
【解決手段】
本発明の反射防止性を有する光学物品の製造方法は、透明基材上の少なくとも片面に、紫外線硬化性を有する高屈折率層を設け、該層上に熱硬化性を有する低屈折率層を設けた後、加熱硬化と同時にまたは加熱硬化後に紫外線照射を行うことを特徴とするものであり、また、かかる製造方法によって得られる本発明の光学物品は、基材上の少なくとも片面に、紫外線硬化性を有する高屈折率層、該層上に熱硬化性低屈折率層を有し、熱硬化性低屈折率層上から少なくとも紫外線照射されてなる物品において600nmの波長における反射率が0.7%以下、耐スクラッチ性が4以上であることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低汚染性、耐擦傷性、加工性などに優れた反射防止性を有する光学物品及びその製造方法に関するものであり、特に光学用素子、例えば反射防止性を有する光学フィルムとしてCRT,LCD,PDP,ELなど各種ディスプレイの前面版として利用されるものである。
【背景技術】
【0002】
透明材料を通して物を見る場合、反射光が強く反射像が明瞭であることは煩わしく、時にはゴースト、フレアなどと呼ばれる反射像を生じて不快感を与えたりする。また反射した光のために、内容物、表示体が判然としない問題が生ずる。
従来より反射防止のためには、高屈折率材料と低折率材料の複数層から形成されているのが一般的であり、その製造方法としては屈折率が基材と異なる物質をガラスやプラスチックなどの基材上に、真空蒸着法、スパッタリング法などにより被膜形成させる方法が行われていた。例えば、プラスチック基材の最表層にPVD法により形成した二酸化ケイ素からなる層とその表面に有機ポリシロキサン系重合物またはポリフルオロアルキル基含有化合物を含む反射防止膜を設けた後に熱硬化処理を行い、光学物品を得る方法(特許文献1、2参照)が記載されている。特に近年になってからはフィルムの高機能化が進み、軽量、安全、取り扱いやすさなどの長所を生かして、フィルムを基材とした上に薄膜を設けることにより反射防止性を有する光学物品が考案され、実用化されている。しかし、薄膜形成においては特に低反射率化への要望増大が大きくなり、該要求を満足させるためには最表層の低屈折率化が望まれる。しかし、低屈折率かを図ると、形成層の緻密化が低下し、それに伴い硬度が低下するという課題があった。またフィルム基材のような、変形しやすい基材の場合、例えば硬化条件などの製造条件が限られているのが実状であり、各層の好適材料をいかに迅速に硬化し被膜形成するのが課題となる。かかる課題の改善策として、たとえば、細孔を有する外殻の内部に空洞が形成されてなる中空球状シリカ微粒子を含む透明被膜層が未硬化の場合、表面に電磁波を照射するか、あるいはアンモニアなどの活性ガス雰囲気下に晒して透明被膜成分の硬化を促進する方法(特許文献3参照)が開示されている。しかしながら薄膜形成においては、いずれも低屈折率性と表面硬度のバランスが難しく、両方満足する優れた品質の光学物品を提供する技術は確立されていない。
【特許文献1】特公平2−36921号公報
【特許文献2】特公平6−52324号公報
【特許文献3】特開2002−233611
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来硬い表面硬度を付与するためには、薄膜表面にシリカ無機微粒子などに代表される無機微粒子を数重量パーセント含む塗布液を、熱処理により硬化させて基材上に設けることが必要であるが、このような組成物からなる硬化被膜表面からなる特性としては滑りが悪く、布などの摩耗によって傷が付きやすいなどの問題点を有していた。さらには硬度付与に比例して屈折率が上昇する問題がある。またこれらの問題点を改良する目的で各種の表面処理剤によるコーティングが提案されているが、これらは水や各種の溶剤によって溶解するために一時的にすべり性を付与するものであり、いずれも耐久性に乏しい。
又、屈折率の低い材料として例えば一般的に知られているポリフルオロアルキル基含有シラン化合物または該化合物の部分加水分解縮合物および、またはその重合物からなる塗布液を硬化させて基材上に設ける技術が開発されているが、いずれにおいても、これらの硬化被膜表面組成の本質としては反射防止性と耐摩擦性がともに優れた性質を有するものではないし、優れた物品は得られていない。
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、優れた反射防止効果を有し、かつ優れた耐摩擦性を有する光学物品の製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、
(1)透明基材上の少なくとも片面に、紫外線硬化性を有する高屈折率層を設け、該層上に熱硬化性を有する低屈折率層を設けた後、加熱硬化と同時にまたは加熱硬化後に紫外線照射を行うことを特徴とする反射防止性を有する光学物品の製造方法。
(2)少なくとも反射防止性を有する面の基材表面がハードコート被膜が設けられてなる基材であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止性を有する光学物品の製造方法。
(3)紫外線硬化性を有する高屈折率層が、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも3つ含む多官能性(メタ)アクリル化合物、粒子径が5nm〜100nmで屈折率が1.65〜2.80を有する一種類以上の金属酸化物と放射線重合開始剤を含有する液状硬化性樹脂組成物の硬化から得られる層であることを特徴とする、請求項1、2に記載の反射防止性を有する光学物品の製造方法。
(4)熱硬化性を有する低屈折率層が、細孔を有する外殻の内部に多孔質および、または空洞が形成された平均粒子径5〜100nmからなるシリカ微粒子と紫外線透過率が10%以上のマトリックス樹脂からなり、屈折率が1.25〜1.45であることを特徴とする請求項1〜3に記載の反射防止性を有する光学物品の製造方法。
(5)基材上の少なくとも片面に、紫外線硬化性を有する高屈折率層、該層上に熱硬化性低屈折率層を有し、熱硬化性低屈折率層上から少なくとも紫外線照射されてなる物品において600nmの波長における反射率が0.7%以下、耐スクラッチ性が4以上であることを特徴とする反射防止性を有する光学物品。
(6)紫外線硬化性を有する高屈折率層が、ITO、ATOから選ばれる一種類以上の無機酸化物と多官能アクリル樹脂からなり、屈折率が2.5〜1.5のであることを特徴とする、請求項5に記載の反射防止性を有する光学物品。
(7)低屈折率層が、外殻の内部に多孔質および、または空洞が形成された平均粒子径5〜100nmからなるシリカ微粒子と紫外線透過率が10%以上のマトリックス樹脂からなり、屈折率が1.25〜1.45であることを特徴とする請求項5,6に記載の反射防止性を有する光学物品。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、耐スクラッチ性と低反射率の両方を満足する光学物品を容易、かつ、確実に提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について実施の形態について具体的に述べる。本発明に関わる反射防止物品は、基材上の少なくても片面に設けた高屈折率層、及び該層上の設けた低屈折率層、もしくはハードコート被膜を有する基材上の少なくても片面に設けた高屈折率層、および該層状に設けた低屈折率層とからなる。
[基材]
本発明に用いる基材とは、有機高分子からなる基材物品であればいかなるものでもいいのであるが、透明性、屈折率、分散などの光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性、機械的強度、耐薬品性、成形性などの諸物性からみて、プラスチック材料が特に有効な結果を与える。上記のプラスチック材料としてはポリエステル、特にポリエチレンテレフタラート、及び不飽和エステルアクリロニトリルースチレン共重合体、塩化ビニル、ポリエレタン、エポキシ樹脂、ポリカーボネートなどの熱可塑性、或いは熱硬化性樹脂を有していてもよい。高硬度を付与する被膜材料によって付着性、硬度、耐薬品性、耐熱性、耐久性などの諸物性を向上させることが出来る。
[基材の前処理]
本発明において上記基材上にハードコート塗布液をコートするにあたっては、塗布されるべき基材表面は清浄化されていることが好ましく、清浄化に際しては界面活性剤による汚れ除去、さらには有機溶剤による脱脂、蒸気洗浄、エアースプレーを噴射し、洗浄する方法がある。また密着性、耐久性の向上を目的として各種の前処理を施すことも有効な手段であり、特に好ましく用いられる方法としては、活性化ガス処理、酸、アルカリなどによる薬品処理からなる。
[ハードコート被膜材料]
前記基材上に設けられるハードコート被膜材料としては、ガラス、プラスチックの表面高硬度化被膜として知られる各種の材料を適用したものを用いることができる(平2−36921、特公平6−5324,特公平6−98703)。またシリカ微粒子に代表される無機微粒子、チタン、アルミニウム、ケイ素、スズなどの金属酸化物、またマトリックス樹脂としてアクリル酸とペンタエリスリトールなどから得られるアクリル系架橋物を含んでいて良い。またこれらの組成物中には硬化を促進させる目的、或いは硬化可能にならしめる目的から各種の硬化剤、三次元架橋剤を添加することもできる。これらの具体例としては窒素含有有機物、シリコーン樹脂硬化剤、シランカップリング剤、各種金属アルコレート、各種金属キレート化合物、イソシアネート化合物およびその重合体、メラミン樹脂、多官能アクリル樹脂、尿素樹脂などがあり、これらを一種類、ないし2種類以上添加しても良い。
上記組成による有機含有硬化性物質は通常揮発性溶媒に希釈して塗布液とする。溶媒として用いられるものには特に限定されないが、使用にあたっては組成物の安定性、無機物に対する塗れ性、揮発性などを考慮して決められるべきである。またこのような組成から得られる硬化被膜が屈折率2.0〜1.5の範囲であり、この範囲を超えれば優れた反射防止性を発揮するのは不可能である。
[ハードコート被膜の形成]
上記組成による有機物含有硬化性物質の塗布液を用いたハードコート被膜の形成方法としては、液状組成物の場合、マイクログラビアコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、流し塗り法などを用いてコーティングする方法などがある。この様な方法を用いて基材上に塗布し、場合に応じて乾燥させる。乾燥方法としては適用されている基材、及び被膜成分によって決定されるべきだが、通常は室温以上、300℃以下の範囲の温度での乾燥を行う。
また塗布時におけるフロー向上のためにはフッ素も含む各種の界面活性剤が使用できる。
[ハードコート被膜の硬化方法]
形成されたハードコート被膜の硬化方法としては適用されている基材、及び被膜成分によって決定されるべきだが、通常は室温以上、300℃以下の範囲の温度での加熱処理による方法、さらには成分中の紫外線吸収、硬化性官能基を利用して可視領域よりも波長の短い紫外線を用いて照射し吸収、硬化させる方法、もしくは加熱処理と放射線を照射し硬化させる方法を同時に併用してもよい。
[ハードコート被膜有する基材の前処理]
本発明において上記基材上にハードコート被膜が有されており、かつこの上に高屈折率層塗布液をコートするにあたっては、塗布されるべきハードコート被膜付き基材表面は清浄化されていることが好ましく、清浄化に際しては界面活性剤による汚れ除去、さらには有機溶剤による脱脂、蒸気洗浄、エアースプレーを噴射し、洗浄する方法がある。また密着性、耐久性の向上を目的として各種の前処理を施すことも有効な手段であり、特に好ましく用いられる方法としては、活性化ガス処理、酸、アルカリなどによる薬品処理からなる。
[高屈折率層]
前記基材、もしくはハードコート層被膜を有する前記基材上の少なくとも片面に高屈折率層被膜が形成される。
[高屈折率層材料]
高屈折率材料としては紫外線硬化性を有し、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも3つ含む多官能性(メタ)アクリル化合物、分子中に重合性不飽和基とアルコキシシラン基とを有する化合物と、ジルコニウム、アンチモン、亜鉛、スズ、セリウム及びチタンよりなる群から選ばれる金属の酸化物の粒子を反応させて得られる反応生成物並びに放射線重合開始剤を含有する液状硬化性樹脂組成物からなり、一種類ないし2種類以上添加してもよい。上記組成による有機含有硬化性物質は通常揮発性溶媒に希釈して塗布液とする。溶媒として用いられるものには特に限定はされないが、使用にあたっては組成物の安定性、無機物に対する塗れ性、揮発性などを考慮して決められるべきである。一種類のみならず2種類以上の混合物として用いることも可能である。
[高屈折率層被膜の形成]
上記組成による有機物含有硬化性物質の塗布液を用いた高屈折率層被膜の形成方法としては、液状組成物の場合、マイクログラビアコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、流し塗り法などを用いてコーティングする方法などがある。この様な方法を用いて基材上に塗布し、場合に応じて乾燥させる。乾燥方法としては適用されている基材、及び被膜成分によって決定されるべきだが、通常は室温以上、300℃以下の範囲の温度での乾燥を行う。
また塗布時におけるフロー向上のためにはフッ素も含む各種の界面活性剤が使用できる。
[高屈折率層被膜の硬化方法]
形成された高屈折率層被膜の硬化方法としては適用されている基材、及び被膜成分によって決定されるべきだが、通常は室温以上、300℃以下の範囲の温度での加熱処理による方法、さらには成分中の紫外線吸収、硬化性官能基を利用して可視領域よりも波長の短い紫外線を用いて照射し吸収、硬化させる方法を用いる。
[高屈折率層被膜を有する基材の前処理]
本発明において上記基材上にハードコート被膜が有されており、かつこの上に高屈折率層塗布液をコートするにあたっては、塗布されるべきハードコート被膜付き基材表面は清浄化されていることが好ましく、清浄化に際しては界面活性剤による汚れ除去、さらには有機溶剤による脱脂、蒸気洗浄、エアースプレーを噴射し、洗浄する方法がある。また密着性、耐久性の向上を目的として各種の前処理を施すことも有効な手段であり、特に好ましく用いられる方法としては、活性化ガス処理、酸、アルカリなどによる薬品処理からなる。
[低屈折率層]
前記高屈折率層上に低屈折率層が設けられている。
紫外線透過性を有する低屈折率層としては細孔を有する外殻の内部に多孔質および、または空洞が形成された平均粒子径5〜100nmからなるシリカ微粒子と熱硬化性を有し、紫外線透過率が10%以上のマトリックス樹脂である。
[低屈折率層材料]
本発明として用いられるマトリックス樹脂は加熱により三次元架橋する性質を有し、紫外線透過率が10%以上の樹脂であれば特に限定されない。三次元架橋としては、イオン性結合、水素結合の中でも、水、酸素などの環境に対する安定性の面から共有結合によって架橋されていることが好ましい。共有結合による架橋としては熱安定性の観点から(チオ)ウレタン架橋、メラミン架橋、(メタ)アクリル架橋、ポリシロキサン架橋の中でも特に表面硬度、反射防止性向上の点から、ポリシロキサン架橋が好ましく、特に有機基としては、少なくともその一部がフッ素含有ポリシロキサンであることがより好ましい。またフッ素含有ポリシロキサンのフッ素含有有機基としては炭素数が3〜7の有機基であることが最も好ましく用いられる。有機ポリシロキサンとしては、有機アルコキシシラン、有機アシロキシシラン、有機ハロゲンシランの各化合物をそのまま用いてもよいのであるが、より低温での架橋を得るためには、各化合物を加水分解して用いることが好ましい。さらには、シリカ微粒子の分散性向上を目的としてシラン化合物を加水分解した後、少なくともその一部を有機結合させて用いることが実施可能な一態様として挙げる事ができる。目的とする反射防止性、用いられる高屈折率層の屈折率などによって適宜選択されるべきものであるが、一般に表面硬度と反射防止性との関係からマトリックス樹脂中に含まれるフッ素含有有機ポリシロキサンは30wt%〜60wt%が好ましい。また低屈折率層全体に占める該フッ素含有有機ポリシロキサンの含有量は10wt%〜40wt%であることが好ましい。シリカ微粒子の併用にあたってはフッ素含有有機ポリシロキサン加水分解物もしくは重合体にシリカ微粒子を加えてもよいし、加水分解時、もしくは重合時にシリカ微粒子を共存させてもよい。また、加水分解に際し、水添加のみで行うことも可能であるが、特に加水分解反応を速やかに進めるためには触媒を用いることも何ら問題ではない。用いることができる触媒としては塩酸、酢酸、蟻酸、硝酸などの酸を用いた酸性水溶液であり、これらを添加することにより加水分解を行う。また重縮合させる時は加水分解時よりもさらに温度を上げるが、いずれにせよ酸濃度、反応温度と時間によっては、得られる被膜の物性が異なるので用途に適した物性を得るような条件設定をするのがよい。また、加水分解反応に関しては溶媒が生成してくるので、無溶媒で加水分解させることが可能であるが、加水分解をさらに均一に行うため、もしくは設定温度に応じて、シラン化合物と別途、好適溶媒を混合した後、加水分解、重縮合を行うことも可能である。また目的に応じて加水分解後の生成アルコール等を加熱及び、または減圧下にて適量を留出させ除去し、その後好適溶媒を添加することも可能である。溶媒として用いられるものには特に限定されないが、使用にあたっては組成物の安定性、無機物に対する塗れ性、揮発性などを考慮して決定溶媒を一種類のみならず2種類以上の混合物として用いることも可能である。またこれらの組成物中には硬化を促進させる目的、或いは硬化可能にならしめる目的から各種の硬化剤、三次元架橋剤を添加することもできる。これらの具体例としては窒素含有有機物、シリコーン樹脂硬化剤、シランカップリング剤、各種金属アルコレート、各種金属キレート化合物、イソシアネート化合物およびその重合体、メラミン樹脂、多官能アクリル樹脂、尿素樹脂などがあり、これらを一種類、ないし2種類以上添加しても良い。
[低屈折率層被膜の形成]
上記組成による有機物含有硬化性物質の塗布液を用いた高屈折率層被膜の形成方法としては、液状組成物の場合、マイクログラビアコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、流し塗り法などを用いてコーティングする方法などがある。この様な方法を用いて基材上に塗布し、場合に応じて乾燥させる。乾燥方法としては適用されている基材、及び被膜成分によって決定されるべきだが、通常は室温以上、300℃以下の範囲の温度での乾燥を行う。
また塗布時におけるフロー向上のためにはフッ素も含む各種の界面活性剤が使用できる。
[低屈折率層被膜の硬化方法]
形成された高屈折率層被膜の硬化方法としては適用されている基材、及び被膜成分によって決定されるべきだが、通常は室温以上、300℃以下の範囲の温度での加熱処理により低屈折率層を被膜の硬化を行った後、可視領域よりも波長の短い紫外線を用いて照射し高屈折率層以下の層を硬化させる方法、あるいは加熱処理と放射線照射を同時に行い硬化皮膜を形成する方法を用いてもよい。
【実施例】
【0007】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
測定方法及び性能評価方法については以下の2項目を示す。
[反射率の測定]
日立計測器サービス(株)の分光光度計3410を用いて測定を行った。サンプルフィルムは320〜400の耐水サンドペーパー裏面に均一に傷をつけ、黒色塗料(黒マジックインキ液)を塗布して、裏面からの反射を完全になくして測定する表面を積分球に押し当てて測定した。入射角度は10゜であり、検査波長領域は380nm〜800nmである。Scan speedは600nm/minとした。
[スクラッチ性評価]
#0000のスチールウールを用いて約250gf/cm2の荷重をかけ10往復したときの傷の本数を観察し下記基準にて評価した。
Level 5:傷なしLevel 4:傷1〜5本 Level 3::傷5〜10本 Level 2:傷10本以上 Level 1:全面傷
実施例1
[ハードコート層]
用いた基材はPETフィルム(厚さ100μm東レ製)を用いた。この上にハードコート層用塗料を塗工した。
[ハードコート層の被膜形成方法]
ハードコート層はZ7528(JSR社製)濃度50%塗料をメタリングバーを用いたハンドコーティングにより塗工した。番手が8番のメタリングバーを用いてA4サイズの基材に1.5ccの塗布液を垂らし、気泡が入らぬように気をつけながら、メタリングバーをひいて塗膜を塗り広げて薄膜を形成した。メタバーの番手に応じて厚みを調整した。Dry厚みは約5μmであった。
[ハードコート層塗膜の硬化方法]
ハードコート層塗料については基材に上記コーティング方法により薄膜形成をした後、すぐに温度を90℃にしたオーブンに入れて1分間で熱処理を行った。その後高圧水銀灯一灯(120w)を備えた、コンベアー式UV照射装置に、5m/minの速度で一度通して紫外線照射(紫外線強度に換算した場合約300m.j)を行った。こうしてハードコート層被膜付き基材が得られた。
[高屈折率層]
得られたハードコート層被膜付き基材に高屈折率層用塗料を塗工した。
[高屈折率層用塗料の調製方法]
50mlスクリュー管に固形分濃度が10%であるオプスターTU4005(JSR社製)12.0gを加えてからメチルイソブチルケトン8.0gを加えて室温(約23―25℃)で約1分間撹拌し、固形分濃度6%まで希釈した。
[高屈折率層の被膜形成方法]
調製した6%塗料をメタリングバーをメタリングバーを用いたハンドコーティングにより塗工した。番手が5番のメタリングバーを用いてA4サイズの基材に1.5ccの塗布液を垂らし、気泡が入らぬように気をつけながら、メタリングバーをひいて塗膜を塗り広げて薄膜を形成した。メタバーの番手に応じて厚みを調整した。Dry厚みは約100 nmであった。
[高屈折率層塗膜の硬化方法]
高屈折率層塗料については基材に上記コーティング方法により薄膜形成をした後、すぐに温度を90℃にしたオーブンに入れて1分間で熱処理を行った。その後高圧水銀灯一灯(120w)を備えた、コンベアー式UV照射装置に、5m/minの速度で一度通して紫外線照射(紫外線強度に換算した場合約300m.j)を行った。こうしてハードコート,高屈折率層被膜付き基材を得た。
[低屈折率層]
得られたハードコート、高屈折率層被膜付き基材に対して低屈折率
[低屈折率層用塗料の調製方法]
200mlナスフラスコに撹拌子とメチルトリメトキシシラン/信越シリコーン社製21.0g ( 0.154mmol )を入れ、13-15℃にし、約30分から40分間かけて0.5規定に調製した蟻酸水溶液 8.53を滴下しながら100〜200 r.p.mで攪拌する。
【0008】
滴下終了後約30分攪拌し2-プロパノール39.5gを加えて希釈し、固形分15%濃度の溶液にして1時間20〜25℃でで撹拌する。また別の200mlナスフラスコに撹拌子と3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン/信越シリコーン社製15.1gを入れ、1.0規定に調製した蟻酸水溶液 3.9gを20〜25℃の温度にて約20分かけて滴下しながら100〜200 r.p.mで攪拌する。そのまま約40分攪拌し次にIPA 49.7 gを加えて希釈し、固形分15%濃度の溶液にして1時間20〜25℃の温度で撹拌する。その後両者を混合しシランの加水分解溶液137.9gを得た。この反応溶液に対してメタノール溶液44.8gを加えて、ついでアルミニウムトリアセチルアセトネート1.0gをシラン加水分解溶液に対して投入し撹拌しながら、IPA 89.6gを加えた後、シリカ微粒子溶液(IPA分散型、固形分濃度20.5%)/触媒化成社製89.6gを加え、その後PGEE 89.6gを加えて最後に固形分濃度5%まで希釈した。
[低屈折率層の被膜形成方法]
調製した5%塗料をさらに濃度3%までに希釈した後に、メタリングバーを用いたハンドコーティングにより塗工した。番手が6番のメタリングバーを用いてA4サイズの基材に1.5ccの塗布液を垂らし、気泡が入らぬように気をつけながら、メタリングバーをひいて塗膜を塗り広げて薄膜を形成した。メタバーの番手に応じて厚みを調整した。Dry厚みは約100 nmであった。
[低屈折率層塗膜の硬化方法]
低屈折率層塗料については基材に上記コーティング方法によりハードコート、高屈折率層被膜付き基材に薄膜形成をした後、すぐに温度を130℃にしたオーブンに入れて1分間で熱処理を行った。その後高圧水銀灯一灯(120w)を備えた、コンベアー式UV照射装置に、5m/minの速度で一度通して紫外線照射(紫外線強度に換算した場合約300m.j)を行った。こうしてハードコート,高屈折率層、低屈折率層被膜付き基材を得た。得られた物品に対して反射率測定、硬度評価を行い、結果を表1に示した。
【0009】
比較例1
低屈折率層塗膜の硬化方法についてUV照射を行わなかった以外は実施例1と同様の実験方法を用いた。こうして得られた物品に対して反射率測定、硬度評価を行い、結果を表1に示した。
【0010】
実施例2
層構成においてハードコート層が設けられていない以外は実施例1と同様の実験方法を用いた。こうして得られた物品に対して反射率測定、硬度評価を行い、結果を表1に示した。
【0011】
比較例2
層構成においてハードコート層が設けられていなく、かつ低屈折率層被膜の硬化方法ついて熱処理のみでUV照射処理を行わなかった以外は実施例1と同様の実験方法を用いた。こうして得られた物品に対して反射率測定、硬度評価を行い、結果を表1に示した。
【0012】
比較例3
層構成においてハードコート層と高屈折率層が設けられていない以外は実施例1と同様の実験方法を用いた。こうして得られた物品に対して反射率測定、硬度評価を行い、結果を表1に示した。
【0013】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上の少なくとも片面に、紫外線硬化性を有する高屈折率層を設け、該層上に熱硬化性を有する低屈折率層を設けた後、加熱硬化と同時にまたは加熱硬化後に紫外線照射を行うことを特徴とする反射防止性を有する光学物品の製造方法。
【請求項2】
少なくとも反射防止性を有する側の該透明基材表面にハードコート被膜が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の反射防止性を有する光学物品の製造方法。
【請求項3】
紫外線硬化性を有する高屈折率層が、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも3つ含む多官能性(メタ)アクリル化合物、粒子径が5nm〜100nmで屈折率が1.65〜2.80を有する一種類以上の金属酸化物と放射線重合開始剤を含有する液状硬化性樹脂組成物の硬化から得られる層であることを特徴とする、請求項1または2に記載の反射防止性を有する光学物品の製造方法。
【請求項4】
熱硬化性を有する低屈折率層が、細孔を有する外殻の内部に多孔質および、または空洞が形成された平均粒子径5〜100nmからなるシリカ微粒子と紫外線透過率が10%以上のマトリックス樹脂からなり、屈折率が1.25〜1.45であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止性を有する光学物品の製造方法。
【請求項5】
基材上の少なくとも片面に、紫外線硬化性を有する高屈折率層、該層上に熱硬化性低屈折率層を有し、熱硬化性低屈折率層上から少なくとも紫外線照射されてなる物品において600nmの波長における反射率が0.7%以下、耐スクラッチ性が4以上であることを特徴とする反射防止性を有する光学物品。
【請求項6】
紫外線硬化性を有する高屈折率層が、ITO、ATOから選ばれる一種類以上の無機酸化物と多官能アクリル樹脂からなり、屈折率が2.5〜1.5のであることを特徴とする、請求項5に記載の反射防止性を有する光学物品。
【請求項7】
低屈折率層が、外殻の内部に多孔質および、または空洞が形成された平均粒子径5〜100nmからなるシリカ微粒子と紫外線透過率が10%以上のマトリックス樹脂からなり、屈折率が1.25〜1.45であることを特徴とする請求項5または6に記載の反射防止性を有する光学物品。

【公開番号】特開2006−35624(P2006−35624A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218413(P2004−218413)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】