説明

反射防止膜と光学部材及び表示装置並びに低屈折率層形成用塗料

【課題】十分な反射防止機能を維持しつつ、帯電防止機能を付与することが可能であり、さらにはハードコート層のハードコート性能を低下させる虞が無い反射防止膜と光学部材及び表示装置並びに低屈折率層形成用塗料を提供する。
【解決手段】本発明の光学部材1は、帯電防止機能を有する低屈折率層2からなる反射防止膜3が透明基材4の表面4aに形成され、この低屈折率層2は、有機ケイ素化合物、有機高分子硬化体及びアルキルベンゼンスルホン酸を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止膜と光学部材及び表示装置並びに低屈折率層形成用塗料に関し、さらに詳しくは、プラズマディスプレイパネル(PDP)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)に好適に用いられ、十分な反射防止機能を維持しつつ、帯電防止機能を付与することが可能な反射防止膜と光学部材及び表示装置並びに低屈折率層形成用塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマディスプレイパネル(PDP)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)においては、画像表示部の表示面における画質や視認性を向上させるために、帯電防止機能を付与した反射防止フィルムが用いられている。
この反射防止フィルムを作製する場合、従来では、蒸着法やスパッタリング法等の薄膜技術が用いられてきたが、この薄膜技術は真空チャンバや真空ポンプ等の真空機器を必要とするために、量産性に劣るという欠点があり、そこで、近年では、反射防止膜形成用塗料を透明樹脂フィルム等の透明基材上に塗布し、乾燥させるという塗布方式が用いられている。
【0003】
この帯電防止機能付き反射防止フィルムとしては、例えば、次に示すような反射防止フィルムが提案されている。
(1)有機フィルムの表面に、ハードコート層、高屈折率層、耐擦傷性や耐薬品性に優れた有機樹脂の最表層を順次設けた反射防止フィルムであり、ハードコート層及び高屈折率層のいずれか一方に、ITO等の導電性金属酸化物微粒子を添加した構成である(特許文献1)。
(2)基材フィルムに、導電性ハードコート層を介して反射防止層を積層した反射防止フィルムであり、導電性ハードコート層は、ハードコート層に無機系導電体の超微粒子または有機系導電性体を添加したものである(特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−31702号公報
【特許文献2】特開2001−74907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の帯電防止機能付き反射防止フィルムでは、導電性を有しないハードコート層や高屈折率層に、導電性金属酸化物微粒子、無機系導電体の超微粒子、有機系導電性体等を添加して導電性を付与したものであるために、反射防止機能を維持した状態で導電性を向上させることが難しく、帯電防止性能が低下するという問題点があった。
また、高屈折率層に導電性金属酸化物微粒子を添加した場合、屈折率が低下し、高屈折率を維持することが難しいという問題点もあった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、十分な反射防止機能を維持しつつ、帯電防止機能を付与することが可能であり、さらにはハードコート層のハードコート性能を低下させる虞が無い反射防止膜と光学部材及び表示装置並びに低屈折率層形成用塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、反射防止膜の最外層を構成する低屈折率層について鋭意検討した結果、低屈折率層にアルキルベンゼンスルホン酸を添加すれば、十分な反射防止機能を維持しつつ、帯電防止機能を付与することが可能であり、さらにはハードコート層のハードコート性能を低下させる虞も無いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の反射防止膜は、帯電防止機能を有する低屈折率層を備えてなる反射防止膜であって、前記低屈折率層は、アルキルベンゼンスルホン酸を含有してなることを特徴とする。
【0008】
前記アルキルベンゼンスルホン酸は、
R−CSOH…(1)
(ただし、Rは、直鎖または分岐鎖のアルキル基、かつ、その炭素数Cnは1≦Cn≦12)
であることが好ましい。
前記低屈折率層は、空隙を有する酸化ケイ素粒子を含有してなることが好ましい。
前記低屈折率層の背面側に、ハードコート層または防眩層を設けたこととしてもよい。
前記低屈折率層の表面抵抗は、5×1012Ω/□以下であることが好ましい。
【0009】
本発明の光学部材は、透明基材上に、本発明の反射防止膜を備えてなることを特徴とする。
【0010】
本発明の表示装置は、表示面に、本発明の反射防止膜または本発明の光学部材を備えてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の低屈折率層形成用塗料は、有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物と、有機高分子と、アルキルベンゼンスルホン酸とを含有してなることを特徴とする。
【0012】
前記アルキルベンゼンスルホン酸は、
R−CSOH…(1)
(ただし、Rは、直鎖または分岐鎖のアルキル基、かつ、その炭素数Cnは1≦Cn≦12)
であることが好ましい。
前記有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物は、フッ素を含有してなることが好ましい。
この低屈折率層形成用塗料は、空隙を有する酸化ケイ素粒子を含有してなることが好ましい。
前記アルキルベンゼンスルホン酸の含有量は、前記有機高分子100重量部に対して0.03重量部以上かつ1.20重量部以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の反射防止膜によれば、低屈折率層がアルキルベンゼンスルホン酸を含有したので、十分な反射防止機能を維持しつつ、帯電防止機能を付与することができる。また、低屈折率層が反射防止機能及び帯電防止機能の双方を有するので、反射防止膜の構成を簡単化することができる。
したがって、反射防止機能及び帯電防止機能の双方を備えた反射防止膜を安価に提供することができる。
【0014】
本発明の光学部材によれば、透明基材上に、本発明の反射防止膜を備えたので、十分な反射防止効果及び帯電防止効果を発現することができる。また、低屈折率層が反射防止機能及び帯電防止機能の双方を有するので、反射防止膜の構成を簡単化することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0015】
本発明の表示装置によれば、表示面に、本発明の反射防止膜または光学部材を備えたので、表示面における反射防止効果及び帯電防止効果を発現することができ、表示面における表示品質を長期に亘って保持し続けることができる。
【0016】
本発明の低屈折率層形成用塗料によれば、有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物と、有機高分子と、アルキルベンゼンスルホン酸とを含有したので、十分な反射防止機能及び帯電防止機能を有する低屈折率層を容易かつ安価に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の反射防止膜と光学部材及び表示装置並びに低屈折率層形成用塗料を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0018】
「光学部材」
図1は、本発明の一実施形態の光学部材を示す断面図であり、この光学部材1は、帯電防止機能を有する低屈折率層2のみの単層構造の反射防止膜3が透明基材4の表面(一主面)4aに形成された構成である。
【0019】
この低屈折率層2は、波長400〜800nmの光に対する屈折率が1.34以上かつ1.50以下、より好ましくは1.38以上かつ1.49以下の範囲であり、かつ屈折率の波長依存性が小さな低屈折率材料により構成されたもので、その表面抵抗は、5×1012Ω/□以下である。
ここで、表面抵抗を5×1012Ω/□以下とした理由は、表面抵抗が5×1012Ω/□を越えると、帯電防止効果を十分に発現することができなくなるからである。
【0020】
この低屈折率層2は、有機ケイ素化合物、有機高分子硬化体及びアルキルベンゼンスルホン酸を含有している。
有機ケイ素化合物としては、アルコキシシラン、オルガノアルコキシシラン、これらの加水分解物、のいずれかからなるアルコキシシラン化合物が好適に用いられる。
このアルコキシシラン化合物としては,テトラメトキシシランやテトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシラン、メチルトリメトキシシランやエチルトリメトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等のアリールトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、ジアリールジアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、メチルビニルジアルコキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシジシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリアルコキシシラン等を挙げることができる。
【0021】
この有機ケイ素化合物は、必要に応じてフッ素原子を含んでいてもよい。
フッ素原子を含む有機ケイ素化合物としては、フッ素含有シラン化合物、フッ素化合物、これらの加水分解物、のいずれかが好適に用いられる。
例えば、フッ素を含有するアルコキシシラン化合物としては、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらのなかでも炭素数Cnが2〜6のフッ素含有アルコキシシラン化合物が好ましい。
また、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物、トリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルエーテル基含有シラン化合物等を用いてもよい。
フッ素含有シラン化合物を用いることにより、膜に防汚性を付与することができる。
【0022】
有機高分子硬化体は、有機バインダーと称されるもので、電離放射線硬化型樹脂または熱硬化型樹脂が好適に用いられる。
電離放射線硬化型樹脂としては、(メタ)アクリレート系の官能基を有するモノマー、オリゴマー、またはポリマーを例示することができる。より具体的には、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエーテル樹脂、多価アルコール、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート等のジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート誘導体、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の多官能化合物としてのモノマー類、エポキシアクリレートまたはウレタンアクリレート等のオリゴマーを例示することができる。
また,熱硬化型樹脂としては、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂を例示することができる。
【0023】
アルキルベンゼンスルホン酸としては、
R−CSOH…(1)
(ただし、Rは、直鎖または分岐鎖のアルキル基、かつ、その炭素数Cnは1≦Cn≦12)
が好ましい。
ここで、Rの炭素数Cnを1≦Cn≦12と限定したのは、Rの炭素数Cnが13を越えると、低屈折率層2の膜強度が著しく低下するからである。
【0024】
この低屈折率層2は、空隙を有する酸化ケイ素粒子を含有してなることが好ましい。
この空隙を有する酸化ケイ素粒子の屈折率は、1.40以下、好ましくは1.30以下、より好ましくは1.26以下、さらに好ましくは1.23以下である。
その理由は、この空隙を有する酸化ケイ素粒子の屈折率が1.40より高いと、目的とする屈折率低減の効果が乏くなるからである。この空隙を有する酸化ケイ素粒子の屈折率の下限に特に制限はないが、機械的強度を保つ上で,屈折率の下限を1.20とすることが好ましい。
【0025】
この空隙を有する酸化ケイ素粒子は、内部、表層部分あるいは表面に空隙を有するもので、粒子径が20nm以上かつ100nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上かつ70nm以下である。
ここで、酸化ケイ素粒子が空隙を有することが好ましい理由は、空隙を有すると屈折率を低減する効果があるからである。
粒子径を上記範囲とした理由は、粒子径が20nm未満では、低屈折率層2内に屈折率を低減するのに十分な大きさの空隙を形成することができず、その結果、低屈折率層2の屈折率が高くなってしまうからであり、一方、粒子径が100nmを超えると、レイリー散乱により光が著しく散乱されるために、光学部材1の透明性を損なうからであり、また、機械的強度も低下するからである。
【0026】
透明基材4としては、十分な機械的強度及び物理的強度を有し、かつ平均屈折率が1.49以上の透明樹脂フィルム、透明樹脂シートが挙げられる。
このような透明樹脂フィルムや透明樹脂シートの素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロースフィルム、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルム、ポリアクリレート等のアクリルフィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリエーテルスルホン(PES)フィルム等が挙げられる。
特に、長期の安定性、信頼性を考慮すると、フィルムの強度があり、光学用途として広く用いられているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好適である。
【0027】
透明基材4の厚みは特に限定はされないが、例えば、透明樹脂フィルムの場合、通常38μm〜188μm程度の厚みから適宜選択される。
厚みが上記範囲内の透明樹脂フィルムを用いれば、プラズマディスプレイパネルの表示面に貼着した際に、しわ等が発生し難く、必要以上に伸びることがなく、破断等の不具合が生じることも無い。
【0028】
この低屈折率層2は、次のようにして作製することができる。
まず、有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物、有機高分子及びアルキルベンゼンスルホン酸を有機溶媒に溶解・分散させ、低屈折率層形成用塗料を作製する。
この有機ケイ素化合物としては、上述した有機ケイ素化合物またはフッ素原子を含む有機ケイ素化合物が挙げられる。
また、有機高分子としては、上述した有機高分子硬化体となる有機高分子が挙げられ、電離放射線硬化型樹脂または熱硬化型樹脂、あるいはこれらの前駆体が好適である。
【0029】
また、アルキルベンゼンスルホン酸としては、
R−CSOH…(1)
(ただし、Rは、直鎖または分岐鎖のアルキル基、かつ、その炭素数Cnは1≦Cn≦12)
が好適に用いられる。
【0030】
有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、β−オキシエチルメチルエーテル(メチルセロソルブ)、β−オキシエチルエーテル(エチルセロソルブ)、ブチル−β−オキシエチルエーテル(ブチルセロソルブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコールのモノエーテル類(セロソルブ類)、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が好適に用いられる。
【0031】
次いで、この低屈折率層形成用塗料を透明基材4上に、ワイヤーバー法、スピンコート法、スプレーコート法、ディップ法、グラビアコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、ナイフコータ法、リバースロールコータ法、キスコータ法等により塗布して塗膜を形成し、次いで、この塗膜を乾燥し、さらに加熱または紫外線等を照射して、硬化させ、低屈折率層2を形成する。
以上により、透明基材4上に低屈折率層2を形成することができる。
【0032】
この光学部材1によれば、帯電防止機能を有する低屈折率層2により反射防止膜3を構成し、この反射防止膜3を透明基材4の表面4aに形成したので、十分な反射防止効果及び帯電防止効果を発現することができる。また、低屈折率層2が反射防止機能及び帯電防止機能の双方を有するので、帯電防止機能を有する低屈折率層2のみで反射防止膜を構成することができ、膜構成を簡単化することができる。
【0033】
また、この光学部材1をプラズマディスプレイパネル(PDP)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の表示面に設けることにより、フラットパネルディスプレイ(FPD)等の表示装置に、十分な反射防止機能を維持しつつ、帯電防止機能を付与することができる。
なお、ここでは、帯電防止機能を有する低屈折率層2のみにより反射防止膜3を構成したが、低屈折率層2より屈折率の高い高屈折率層を加えた構成としてもよい。
【0034】
「ハードコート層付き光学部材」
図2は、本発明の一実施形態のハードコート層付き光学部材を示す断面図であり、このハードコート層付き光学部材11が上記の光学部材1と異なる点は、透明基材4の表面4aと低屈折率層2との間にハードコート層12を形成し、低屈折率層2及びハードコート層12の2層構造の反射防止膜13とした点である。
【0035】
このハードコート層12は、耐擦傷性、強度等の特性を向上させる目的で設けられたもので、日本工業規格JIS K 5600−5−4「塗布液一般試験法」にて規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すことが好ましい。
このハードコート層12の表面形状は、透明平坦な膜であってもよく、また、このハードコート層12の表面に凹凸を形成して防眩機能を有する防眩層としてもよい。
【0036】
このハードコート層12は、電離放射線硬化型樹脂または熱硬化型樹脂により形成することが好ましい。電離放射線硬化型樹脂としては、(メタ)アクリレート系の官能基を有するモノマー、オリゴマー、またはポリマーを例示することができる。より具体的には、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエーテル樹脂、多価アルコール、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート等のジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート誘導体、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の多官能化合物としてのモノマー類、エポキシアクリレートまたはウレタンアクリレート等のオリゴマーを例示することができる。
また,熱硬化型樹脂としては、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂を例示することができる。
【0037】
このハードコート層付き光学部材11によれば、透明基材4の表面4aと低屈折率層2との間にハードコート層12を形成し、低屈折率層2及びハードコート層12の2層構造の反射防止膜13としたので、耐擦傷性、強度等の特性を向上させることができる。
また、このハードコート層12を防眩層とすれば、蛍光灯等の外光の映り込みを減少させることができ、十分な反射防止機能を維持しつつ、コントラストの低下を抑制することができる。
【実施例】
【0038】
本発明を実施例1〜3及び比較例1〜6により説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
実施例1〜3及び比較例1〜6に共通の低屈折率層形成用塗料を作製した。
また、実施例1〜3及び比較例1〜6に共通の透明基材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの表面に防眩層が形成された防眩層付きPETフィルムを作製した。
【0039】
「低屈折率層形成用塗料の作製」
テトラメトキシシラン2.43g、フルオロアルキルシラン0.70g、メタクリル基含有シランカップリング剤(TSL8370:GE東芝シリコーン社製)0.20g、中空シリカ微粒子を2−プロパノールに分散した中空シリカ微粒子分散液6.0g、反応性シリコーンオイル(BYK−UV3500:ビックケミージャパン社製)0.06g、アルコゾールP−9(甘粕化学産業社製)84.51gを混合し攪拌しながら、希硝酸(HNO:1mol/L)を滴下し、そのまま12時間攪拌し、低屈折率層形成用塗料Aを作製した。
【0040】
「防眩層付きPETフィルムの作製」
(a)防眩層形成用塗料の作製
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)30.0g、光開始剤としてイルガキュア907(商品名:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)社製)3.0g、多孔質シリカ粒子として粒径が3.2μmの多孔質ビーズ(富士シリシア化学(株)社製)0.30g、分散剤としてDisperbyk−2000(商品名:ビックケミージャパン社製)0.1g、固形分調整用溶剤としてトルエン66.6gを、高速ミキサーを用いて混合・分散し、防眩層形成用塗料Bを作製した。
【0041】
(b)防眩層付きPETフィルムの作製
膜厚が75μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡(株)製)上に、防眩層形成用塗料Bをワイヤーバー#3にて塗布し、120℃にて1分間乾燥した後、紫外線を照射して硬化させ、防眩層付きPETフィルムCを作製した。
【0042】
「実施例1」
低屈折率層形成用塗料A10.0gに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.05gを添加して30分間撹拌し、完全に溶解させて塗料を作製した。次いで、この塗料を防眩層付きPETフィルムC上にワイヤーバー#5にて塗布し、120℃にて1分間乾燥した後、紫外線を照射して硬化させ、実施例1の反射防止膜付き透明フィルムを作製した。
【0043】
「実施例2」
低屈折率層形成用塗料A10.0gに、ドデシルベンゼンスルホン酸1.0gを添加して30分間撹拌し、完全に溶解させて塗料を作製した。次いで、この塗料を防眩層付きPETフィルムC上にワイヤーバー#5にて塗布し、120℃にて1分間乾燥した後、紫外線を照射して硬化させ、実施例2の反射防止膜付き透明フィルムを作製した。
【0044】
「実施例3」
低屈折率層形成用塗料A10.0gに、P−トルエンスルホン酸(関東化学株式会社製)0.1gを添加して30分間撹拌し、完全に溶解させて塗料を作製した。次いで、この塗料を防眩層付きPETフィルムC上にワイヤーバー#5にて塗布し、120℃にて1分間乾燥した後、紫外線を照射して硬化させ、実施例3の反射防止膜付き透明フィルムを作製した。
【0045】
「比較例1」
低屈折率層形成用塗料A10.0gを、防眩層付きPETフィルムC上にワイヤーバー#5にて塗布し、120℃にて1分間乾燥した後、紫外線を照射して硬化させ、比較例1の反射防止膜付き透明フィルムを作製した。
【0046】
「比較例2」
低屈折率層形成用塗料A10.0gに、トリデシルベンゼンスルホン酸0.5gを添加して30分間撹拌し、完全に溶解させて塗料を作製した。次いで、この塗料を防眩層付きPETフィルムC上にワイヤーバー#5にて塗布し、120℃にて1分間乾燥した後、紫外線を照射して硬化させ、比較例2の反射防止膜付き透明フィルムを作製した。
【0047】
「比較例3」
低屈折率層形成用塗料A10.0gに、ベンゼンスルホン酸0.5gを添加して30分間撹拌し、完全に溶解させて塗料を作製した。次いで、この塗料を防眩層付きPETフィルムC上にワイヤーバー#5にて塗布し、120℃にて1分間乾燥した後、紫外線を照射して硬化させ、比較例3の反射防止膜付き透明フィルムを作製した。
【0048】
「比較例4」
低屈折率層形成用塗料A10.0gに、ドデシルベンゼンスルホン酸0.01gを添加して30分間撹拌し、完全に溶解させて塗料を作製した。次いで、この塗料を防眩層付きPETフィルムC上にワイヤーバー#5にて塗布し、120℃にて1分間乾燥した後、紫外線を照射して硬化させ、比較例4の反射防止膜付き透明フィルムを作製した。
【0049】
「比較例5」
低屈折率層形成用塗料A10.0gに、ドデシルベンゼンスルホン酸2.0gを添加して30分間撹拌し、完全に溶解させて塗料を作製した。次いで、この塗料を防眩層付きPETフィルムC上にワイヤーバー#5にて塗布し、120℃にて1分間乾燥した後、紫外線を照射して硬化させ、比較例5の反射防止膜付き透明フィルムを作製した。
【0050】
「比較例6」
低屈折率層形成用塗料A10.0gに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0gを添加して30分間撹拌し、完全に溶解させて塗料を作製した。次いで、この塗料を防眩層付きPETフィルムC上にワイヤーバー#5にて塗布し、120℃にて1分間乾燥した後、紫外線を照射して硬化させ、比較例6の反射防止膜付き透明フィルムを作製した。
【0051】
「評価」
以上により得られた実施例1〜3および比較例1〜6それぞれの反射防止膜付き透明フィルムの視感反射率、鉛筆硬度、耐擦傷性、耐恒温恒湿性、表面抵抗の各評価項目について、次の方法を用いて評価した。
【0052】
(1)視感反射率
紫外・可視光分光光度計V−570(日本分光社製)を用いて、反射防止膜付き透明フィルムの分光反射率を測定し、この分光反射率から反射防止膜付き透明フィルムの視感反射率を算出した。
この分光反射率を測定する際には、裏面反射が起こらないように、塗料を塗布した面の反対側に黒色塗料を塗布した。
【0053】
(2)鉛筆硬度
日本工業規格JIS K 5600「塗料の一般試験法」の「第5部:塗膜の機械的性質、第4節:引っかき硬度」に準拠して、反射防止膜付き透明フィルムの鉛筆硬度を測定した。
(3)耐擦傷性
#0000のスチールウールを用い、250gf/cmの荷重を負荷しながら反射防止膜付き透明フィルムの低屈折率層の表面を30回往復させ、その後、低屈折率層の表面の傷の状態を観察し、評価した。評価基準は以下の通りである。
5:傷が全く認められない
4:傷は5本以下
3:傷は10本以下
2:傷は多数
1:膜が剥離
【0054】
(4)耐恒温恒湿性
反射防止膜付き透明フィルムを、80℃、95%の恒温恒湿中に48時間放置した後、#0000のスチールウールを用い、250gf/cmの荷重を負荷しながら反射防止膜付き透明フィルムの低屈折率層の表面を30回往復させ、その後、低屈折率層の表面の傷の状態を観察し、評価した。評価基準は以下の通りである。
5:傷が全く認められない
4:傷は5本以下
3:傷は10本以下
2:傷は多数
1:膜が剥離
【0055】
(5)表面抵抗
日本工業規格JIS K 6911「熱硬化性プラスチックの一般試験法」に準拠して、反射防止膜付き透明フィルムの表面抵抗を測定した。
実施例1〜3および比較例1〜6それぞれの評価結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の反射防止膜は、低屈折率層がアルキルベンゼンスルホン酸を含有したことにより、十分な反射防止機能を維持しつつ、帯電防止機能を付与することができるものであるから、プラズマディスプレイパネル(PDP)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)はもちろんのこと、その他の自発光型の表示装置の画像表示部の表示面へも適用可能であり、その工業的価値は極めて大きなものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態の光学部材を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態のハードコート層付き光学部材を示す断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 光学部材
2 低屈折率層
3 反射防止膜
4 透明基材
4a 表面(一主面)
11 ハードコート層付き光学部材
12 ハードコート層
13 反射防止膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電防止機能を有する低屈折率層を備えてなる反射防止膜であって、
前記低屈折率層は、アルキルベンゼンスルホン酸を含有してなることを特徴とする反射防止膜。
【請求項2】
前記アルキルベンゼンスルホン酸は、
R−CSOH…(1)
(ただし、Rは、直鎖または分岐鎖のアルキル基、かつ、その炭素数Cnは1≦Cn≦12)
であることを特徴とする請求項1記載の反射防止膜。
【請求項3】
前記低屈折率層は、空隙を有する酸化ケイ素粒子を含有してなることを特徴とする請求項1または2記載の反射防止膜。
【請求項4】
前記低屈折率層の背面側に、ハードコート層または防眩層を設けてなることを特徴とする請求項1、2または3記載の反射防止膜。
【請求項5】
前記低屈折率層の表面抵抗は、5×1012Ω/□以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の反射防止膜。
【請求項6】
透明基材上に、請求項1ないし5のいずれか1項記載の反射防止膜を備えてなることを特徴とする光学部材。
【請求項7】
表示面に、請求項1ないし5のいずれか1項記載の反射防止膜または請求項6記載の光学部材を備えてなることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物と、有機高分子と、アルキルベンゼンスルホン酸とを含有してなることを特徴とする低屈折率層形成用塗料。
【請求項9】
前記アルキルベンゼンスルホン酸は、
R−CSOH…(1)
(ただし、Rは、直鎖または分岐鎖のアルキル基、かつ、その炭素数Cnは1≦Cn≦12)
であることを特徴とする請求項8記載の低屈折率層形成用塗料。
【請求項10】
前記有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物は、フッ素を含有してなることを特徴とする請求項8または9記載の低屈折率層形成用塗料。
【請求項11】
空隙を有する酸化ケイ素粒子を含有してなることを特徴とする請求項8、9または10記載の低屈折率層形成用塗料。
【請求項12】
前記アルキルベンゼンスルホン酸の含有量は、前記有機高分子100重量部に対して0.03重量部以上かつ1.20重量部以下であることを特徴とする請求項8ないし11のいずれか1項記載の低屈折率層形成用塗料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−102330(P2008−102330A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285004(P2006−285004)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】