説明

反射防止膜及びその製造方法、並びに表示装置

【課題】可視光領域における低反射特性と電気的な低抵抗特性とを兼ね備え、低コスト化と環境負荷低減が可能な反射防止膜を提供することを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る反射防止膜1は、透明性基板15上に形成された反射防止膜1であって、膜厚25nmにおいて波長550nmの透過率が10%未満であり、主成分がAlであるAl系膜2bと、Al系膜2bの上層、又は/及び下層に形成され、膜厚25nmにおいて波長550nmの透過率が10%以上であり、かつ、主成分がAlであり、添加物として少なくともN元素を含むAl系N含有膜2aとを備える。そして、反射防止膜1の比抵抗値が1.0×10−2Ω・cm以下であり、Al系N含有膜2a面の可視光領域における反射率を50%以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止膜及びその製造方法に関する。また、この反射防止膜を有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶やEL(Electro-Luminescence:電界発光素子)等の電気光学素子を用いる表示装置においては、通常、各画素間に可視光領域において低反射で遮光性の高い反射防止膜が配設されている。例えば、カラー液晶表示パネルにおいては、ガラス等の透明性基板上に赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色カラーフィルターパターン間を仕切る反射防止膜が配設されている。これにより、隣接する3原色カラーフィルター間の色の混合や干渉を抑制する。また、液晶画素の端部の表示光劣化部を遮光することによって、表示画像の高コントラスト化を図り、高品質化を実現する。上記特性を満足させるために、反射防止膜は、高精度なパターンが容易に得られること、少なくとも表示面からの光の反射が小さいことが求められる。
【0003】
従来、このような反射防止膜としては、光反射率の低いCr膜、若しくはCrを主成分とするCr合金膜(波長550nmにおいて反射率約60%)が用いられてきた。また、酸化Cr(CrOy)(yは正数(以下同様))の薄膜とCr膜とを順次積層し、CrOy薄膜層での光干渉効果を利用した低反射特性(波長550nmにおいて反射率10%以下)に優れるCr(上層)/CrOy(下層)積層構造膜が用いられてきた。このようなCr膜やCr/CrOy積層膜は、一般的なフォトリソグラフィー法と薬液を用いたウエットエッチング法で容易、かつ高精度にパターニング加工を行うことができる。
【0004】
しかしながら、ウエットエッチング工程で発生するCrイオンを含む廃液の中に、有害である六価Crイオンを含む場合には、これらの処理工程によるコスト上昇が避けられず、環境問題の観点から代替技術が望まれていた。
【0005】
そこで、上記問題を解決するために、Crを含まない反射防止膜が提案されている。例えば、特許文献1においてはFe/FeOy積層膜からなる反射防止膜が、特許文献2においてはNi−W−Zr/Ni−W−Zr−Oy積層膜からなる反射防止膜が、特許文献3においてはTi−Mo−Ni膜からなる反射防止膜が提案されている。また、特許文献4においては、NiとTi,Zr,Nb,Ta,Si、W又はMoとの合金の酸化物、又は窒化物又は酸窒化物からなる第1層と、NiとTi,Zr,Nb,Ta又はSiとの合金又は窒化物又は炭化物からなる第2層の積層構造からなる反射防止膜が、特許文献5においては、低屈折率膜と、Ti及び/又はZrから選ばれる金属を主成分とし、さらにAl、Mo,Cr、Nb,Hf、Ni,Co,Fe,Pd,Ag,Au及びPtからなる群から選ばれる1種類以上の金属を含む耐熱性に優れた導電性窒化物膜との積層体を反射防止膜に適用する例が開示されている。
【0006】
なお、半導体装置の例となるが、特許文献6には、波長200nm以下の光に対して反射防止機能を有する構成として、半導体基板上に形成されたAl合金配線の表面に窒化アルミニウム膜を形成する構成が記載されている。また、同じく半導体装置の例において、特許文献7には、反射防止機能、エッチングストッパ機能、Al又はAl合金の保護機能を兼ね備える構成として、半導体基板上に形成されたAl又はAl合金上に、化学量論的なAl5050膜からなるAlNコーティング層を積層する構成が開示されている。また、太陽光制御フィルタとして適用できるガラス積層体の例として、特許文献8には、ガラス基体、底部反射防止層、熱線反射層、頂部反射防止層から構成され、底部反射防止層に、実質的に化学量論組成からなるAlN層を適用した例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−101404号公報
【特許文献2】特開平10−333137号公報
【特許文献3】特開2001−311812号公報
【特許文献4】特開平11−52126号公報
【特許文献5】WO00−48204号公報
【特許文献6】特開平10−64909号公報 (段落番号0024)
【特許文献7】特開平9−252001公報 (段落番号0023)
【特許文献8】特開2000−229379公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
環境問題の観点から、前述したように有害な六価Crイオンを排出しないプロセスにより反射防止膜を製造することが望ましい。それに加え、低コスト化を図ることは、極めて重要な課題となる。そのためには、Ti,Zr,Mo,W,Ni系のようなレアメタルをベースとしないことが重要となる。さらに、材料の長期供給の安定性を確保する観点からも、レアメタルをベースとせず、より汎用的な材料により代替する技術が望まれる。とりわけ、配線や電極に汎用的に適用される材料系と併用可能な材料を用いることができれば、管理の上からも好ましい。
【0009】
本発明は、上記背景を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、可視光領域において低反射特性と電気的な低抵抗特性とを兼ね備え、かつ低コスト化と環境負荷低減が可能な反射防止膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る第1の態様の反射防止膜は、透明性基板上に形成された反射防止膜であって、膜厚25nmにおいて550nmの透過率が10%未満であり、主成分がAlであるAl系膜と、前記Al系膜の上層、又は/及び下層に形成され、膜厚25nmにおいて550nmの透過率が10%以上であり、かつ、主成分がAlであり、添加物として少なくともN元素を含むAl系N含有膜と、を備え、比抵抗値が1.0×10−2Ω・cm以下であり、前記Al系N含有膜面の可視光領域における反射率が50%以下のものである。
【0011】
本発明に係る第2の態様の反射防止膜は、透明性基板上に形成された反射防止膜であって、主成分がAlであり、添加物として少なくともN元素を含み、前記N元素の組成比が30at%以上であり、比抵抗値が1.0×10−2Ω・cm以下のものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、可視光領域において低反射特性と電気的な低抵抗特性とを兼ね備え、かつ低コスト化と環境負荷低減が可能な反射防止膜を提供することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1に係る反射防止膜の模式的断面図。
【図2】Al100−x膜中のN組成比(at%)に対して、反射率をプロットした図。
【図3】Al100−x膜中のN組成比(at%)に対して、比抵抗(Ω・cm)をプロットした図。
【図4】Al100−x膜の反射率の光波長依存性を示す図。
【図5】Al100−x膜中のN組成比(at%)に対して、エッチングレートをプロットした図。
【図6】実施形態2に係る反射防止膜の模式的断面図。
【図7】Al100−x膜中のN組成比(at%)に対して、透過率をプロットした図。
【図8】Al100−x膜中のN組成比(at%)に対して、n(屈折率)をプロットした図。
【図9】Al100−x膜中のN組成比(at%)に対して、k(消衰係数)をプロットした図。
【図10】実施例2−1に係る反射防止膜において、n(屈折率)の波長依存性を示す図。
【図11】実施例2−1に係る反射防止膜において、k(消衰係数)の波長依存性を示す図。
【図12】実施例2−2に係るAl系N含有膜の膜厚に対して、反射防止膜の反射率をプロットした図。
【図13】実施例2−3に係るAl系N含有膜の膜厚に対して、反射防止膜の反射率をプロットした図。
【図14】実施形態3に係る反射防止膜の模式的断面図。
【図15】実施例3−1に係る反射防止膜の反射率の波長依存性を示す図。
【図16】(a)は、実施形態4に係るブラックマトリックスの模式的平面図であり、(b)は、カラーフィルター層の模式的平面図。
【図17】図16のXVII-XVII切断部断面図。
【図18】実施例4−1に係る反射防止膜の反射率の光波長依存性を示す図。
【図19】実施形態5に係るアクティブマトリックス基板上の反射防止膜の一部を示す平面図。
【図20】図19中のXX-XX切断部断面図。
【図21】実施形態6に係るアクティブマトリックス基板の一部を示す模式的平面図。
【図22】図21中のXXII-XXII切断部断面図。
【図23】実施形態7に係る反射防止膜の模式的断面図。
【図24】Al100−x膜中のN組成比(at%)に対して、透過率の膜厚依存性をプロットした図。
【図25】Al100−Z膜中のO組成比(at%)に対して、透過率の膜厚依存性をプロットした図。
【図26】Al100−x―z膜中のO組成比又はN組成比(at%)に対して、比抵抗値をプロットした図。
【図27】Al系N含有膜(Al系N+O含有膜)であるAl-40at%N-Zat%O膜において、追加で添加したN組成比(at%)又はO組成比(at%)に対して、透過率をプロットした図。
【図28】Al系N含有膜(Al系N+O含有膜)の膜厚に対して、反射防止膜の反射率をプロットした図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る反射防止膜を適用した実施形態の一例について説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に属し得ることは言うまでもない。
【0015】
[実施形態1]
図1に、本実施形態1に係る反射防止膜1の模式的断面図を示す。反射防止膜1は、図1に示すように、透明性基板であるガラス基板15上に形成されている。本実施形態1に係る反射防止膜1は、ガラス基板15の直上に形成されている例を示しているが、ガラス基板15と反射防止膜1の間に、他の積層膜が積層されていてもよい。本実施形態1に係る反射防止膜1は、単一層により構成されている。
【0016】
反射防止膜1は、主成分をアルミニウム(Al)とし、添加物として少なくとも窒素(N)元素を含むAl系N含有膜からなる。Al以外の金属を添加して、2種類以上の金属によって構成される金属間化合物からなる金属系化合物、合金等のその他の金属状態を含む合金系化合物等としてもよい。添加物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、用途や求められる性能(例えば耐熱性、耐食性)に応じて、適宜選定することができる。8族遷移金属元素のFe,Ni,Coから選ばれる1種類以上の元素をAlに添加した場合、従来不可能であったITOなどの酸化物透明導電膜とのコンタクト特性が良好となる。従って、ITO等の透明導電膜と電気的に接続する液晶表示装置のカラーフィルター基板用のブラックマトリックス膜用途として好適に適用することができる。このときのN元素以外のAlに添加する元素の添加総量は、比抵抗値の増加を抑制する観点から、15at%を超えないことが好ましい。
【0017】
反射防止膜1は、電気的に導電性を有するものとする。具体的には、反射防止膜1の比抵抗値を、実用的な導電性領域を示す1×10−2Ω・cm以下(10000μΩcm以下)となるようにする。反射防止膜1としてAl系N含有膜を用いる場合、化学量論組成1:1のAl5050膜となると、比抵抗値が少なくとも10Ω・cm以上となり、導電体領域から外れてしまう。従って、反射防止膜1が化学量論組成1:1のAl5050膜とならないようにする。以降の説明において、Al系N含有膜を「Al100−x膜」とも称する。x(at%)は、0より大きく50より小さい値とする。
【0018】
次に、反射防止膜1の製造方法の一例について説明する。本実施形態1においては、透明な絶縁性基板であるガラス基板15上に、反射防止膜を成膜する。反射防止膜1の成膜は、塗布法、蒸着法、スパッタリング法等の公知の方法により行うことができる。中でも、スパッタリング法は、広く適用されている薄膜形成方法であり、本実施形態1に係る反射防止膜の形成にも好ましいものである。本実施形態1においては、スパッタリング法により、N元素を添加した窒化Al(Al100−x)膜からなる反射防止膜1を200nmの厚さで成膜した。具体的には、スパッタリングのターゲットとして純Alの金属ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガスに窒素(N)ガスを添加した混合ガスを用いて反応性スパッタリング法により成膜した。当該方法によれば、Arガスに添加するNガス量を変えることによって、Al100−x膜のN組成比を簡便に変えることができる。
【0019】
混合ガス中のNガス量に対する反射防止膜1を構成するAl100−x膜のN組成比の関係は、スパッタ装置の容積や投入電力、スパッタガス圧力などのパラメータによって異なる。従って、使用するスパッタ装置に応じて、其々条件を最適化する。但し、Arガスに対するNガスの添加量は、分圧比で50%未満にすることが好ましく、40%未満とすることがより好ましい。Arガスに対するNガスの添加量が分圧比で50%となると、前述の化学量論組成1:1のAl5050膜が形成されてしまうためである。従って、導電性を確保する観点から、Arガスに対するNガスの添加量は、分圧比で50%未満とすることが好ましい。
【0020】
なお、スパッタリングガスとしてArガスに代えて、Krガス等の不活性ガスを用いてもよい。不活性ガスは、単独で用いても混合して用いてもよい。ここで「不活性ガス」とは、成膜される膜の組成に影響を与えないガスを云うものとする。また、反応性スパッタリング法に代えて、予めN元素を添加したターゲットを用いてスパッタリングを行ってもよい。この場合には、スパッタリングガス中にNを添加する必要はなく、純Ar、純Krガス等をそのまま適用することができる。
【0021】
図2は、Al100−x膜中のN元素の組成比(以降、単に「N組成比」と云う)(at%)に対して、反射率をプロットしたものである。反射率の測定波長は550nmとし、ガラス基板15側から測定した値を示している。以降、特に断らない限り、反射率の測定波長を550nmとし、ガラス基板15側から測定した反射率を示す。なお、ガラス基板15の反対側の空気界面側である上層膜面の反射防止が要求される場合には、実用上、上層膜面からの反射率も重要となる。しかしながら、上層膜面側から測定した反射率は、膜物性本来の反射率に加え、スパッタ条件に付随する膜表面の荒れ、及び凹凸形状の違いによる反射散逸成分の影響が付加される。このため、本明細書では、主としてガラス基板15側から測定を行った結果について考察する。ガラス基板15としては、光学定数n(屈折率)が1.5(550nm)、板厚が0.6mmのものを用いた。
【0022】
図2より、Al100−x膜の反射率は、N組成比の増加に伴って単調に低下することがわかる。また、N組成比を30at%以上とすることにより、反射率が約50%以下となることがわかる。この値は、従来の反射防止膜であるCr膜やMo膜よりも低い値である。従って、Alを主成分とする反射防止膜1に添加するN組成比を30at%以上とすることにより、Cr膜やMo膜よりも良好な低反射特性を得ることができる。
【0023】
図3は、Al100−x膜中のN組成比(at%)に対して、比抵抗値(Ω・cm)をプロットしたものである。同図より、Al100−x膜の比抵抗値は、N組成比の増加に伴って指数関数的に増加することがわかる。実用上の導電性領域(1×10−2Ω・cm以下)を得るためには、Alに添加するN組成比が、45at%を超えないことが好ましい。
【0024】
反射防止膜1に遮光特性が必要とされる場合、例えば、カラーフィルター基板のブラックマトリックスなどに適用する場合には、Alに添加するN組成比を45at%以下とすることが好ましい。これは、Alに添加するN組成比が40at%以上、特に45at%を超えると急激に光の透過性が現れるためである。例えば、膜厚200nmの薄膜の場合、N組成比が45at%のAl100−x膜の光透過率(波長550nm)は約1%であるのに対し、N組成比が50at%近傍のAl100−x膜の光透過率は約80%にまで達する。なお、これは、反射防止膜1をAl100−x膜の単層構造で適用する場合であって、他の遮光特性に優れた膜との積層構造とする場合や、他の添加物を添加する場合にはこの限りではない。また、上述したように、光透過性は、膜厚によって変動するため、膜厚を調整することにより遮光特性を調整することも可能である。
【0025】
反射防止膜1として、Al100−x膜のN組成比を30at%以上、比抵抗値が概略1×10−2Ω・cm以下の導電性を有するものを用いることにより、反射率が概略50%以下の低反射特性及び導電性を有する単層構造の反射防止膜を得ることができる。
【0026】
図4は、反射防止膜1として、N組成比が39at%のAl−39at%N膜(実施例1−1)、N組成比が45at%のAl−45at%N膜(実施例1−2)の反射率の光波長依存性をプロットしたものである。同図より、実施例1−1及び実施例1−2に係る反射防止膜1の反射率は、いずれの波長領域(400〜700nm)においても50%以下であり、可視光領域において良好な低反射特性を有していることがわかる。
【0027】
図5は、反射防止膜1を構成するAl100−x膜中のN組成比(at%)に対して、公知の薬液(液温40℃)を用いてウエットエッチングした際のエッチングレートをプロットしたものである。同図より、N組成比が30at%〜45at%であるAl100−x膜は、約40〜70nm/minのエッチング速度でパターニング可能であることがわかる。なお、N組成比が50at%のAl5050膜(化学量論組成1:1のAlN膜)の場合、導電領域から外れてしまう。また、上記公知のウエットエッチング法によるエッチングが困難になり、別途、ドライエッチング法などによるエッチングを行う必要が生じる。従って、加工コスト増大という問題も生じる。
【0028】
上記例では本実施形態1に係る反射防止膜1をAl100−xで説明したが、他の元素Mをさらに添加したAl100−x−y膜であってもよい。元素Mとして、8族遷移金属から選ばれる1種以上の元素を添加すると、従来は困難であったITOなどの酸化物透明導電膜との良好な電気的コンタクトを実現することができる。中でもFe、Co、Niから選ばれる1種以上の元素を添加すると、より良好な電気的コンタクト特性を実現することができる。このため、ITO等との電極と電気的に接続される構造を有するカラーフィルター基板用のブラックマトリックス膜用途として好適に適用することができる。コンタクト特性は、わずかなMの添加で効果が得られるが、確実な効果を得るためには添加量yを0.1at%以上とすることが好ましい。一方、添加量yが多いと、上記公知のAl系膜のウエットエッチングプロセスにおいて、膜から析出されるこれらの元素Mの粒がエッチングされずに残渣となってパターニング不良を引き起こす恐れがある。この点からは添加量yが15at%を超えないようにするのが好ましい。
【0029】
本実施形態1に係る反射防止膜1によれば、Al系メタルをベースとしているので、パターニング加工が容易であり、高精度のパターンを得ることができる。また、実用上の導電性領域(1×10−2Ω・cm以下)を得る領域としているので、導電特性を得ることができる。また、N元素を30at%以上含有させることにより、低反射特性を実現することができる。すなわち、低反射特性、及び導電特性を、Al系メタルをベースとした膜により実現することができる。このため、異なる系列のメタルを積層する必要がなく、コスト低減を実現することができる。さらに、N組成比や膜厚を調整することにより、遮光性を付与することができる。
【0030】
また、本実施形態1に係る反射防止膜1の製造方法は、反応性スパッタリング法等の公知の方法を適用できる。このため、特別の製造装置を必要とせず、既存の設備を用いることができる。従って、低コスト化を実現できる。また、本実施形態1によれば、単層構造としているので、製造工程も簡便である。さらに、Crを用いずにこれらの特性を実現できるので、ウエットエッチング工程で有害な六価Crイオンを発生させない。従って、これらの処理工程が不要となり、環境負荷低減を実現することができる。さらに、レアメタルをベースとせず、汎用的なAl系をベースとして適用することにより、低コスト化、及び材料の長期的安定供給が可能である。
【0031】
なお、反射防止膜が形成されている透明性基板としては、ガラス基板に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の透明性基板を適用することができる。例えば、ポリカーボネート等のプラスチック等の透明絶縁性基板を好適に適用することができる。また、上記例の板厚や光学定数は、一例であって、所望の厚みや光学定数のものを適用できることは言うまでもない。また、本発明に係る反射防止膜は、後述する実施形態のように、積層構造としてもよく、単一層に限定されるものではない。また、本発明の特性を満足する範囲において、他の機能を有する積層膜(例えば、保護機能を有する膜)が積層されていてもよい。
【0032】
[実施形態2]
次に、上記実施形態1とは異なる反射防止膜の一例について説明する。なお、以降の説明において、上記実施形態1と同一の要素部材には同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0033】
本実施形態2に係る反射防止膜は、以下の点を除く基本的な構成及び製造方法は上記実施形態1と同様である。すなわち、上記実施形態1に係る反射防止膜1は、単層構造であったのに対し、本実施形態2に係る反射防止膜は、積層構造である点において相違する。
【0034】
図6に、本実施形態2に係る反射防止膜2の模式的断面図を示す。反射防止膜2は、図6に示すように、ガラス基板15上に形成されている。反射防止膜2は、2層構造となっており、第1薄膜として機能するAl系N含有膜2a、第2薄膜として機能するAl系膜2bがガラス基板15側からこの順に積層されている。
【0035】
Al系N含有膜2aは、主成分をAlとし、添加物として少なくともN元素を含み、かつ、導電性と光透過性を兼ね備えた膜とする。Al系膜2bは、主成分をAlとするものであって、遮光性と導電性を兼ね備えた膜とする。Al系N含有膜2a、及びAl系膜2bの両者は、其々独立にAl以外の金属を添加して、2種類以上の金属によって構成される金属間化合物、合金等であってもよい。なお、Al系N含有膜2aには、必ずN元素を含ませる必要があるが、Al系膜2bにおいては、N元素の添加は必須ではない。換言すれば、Al系膜2bは、遮光性及び導電性膜が確保できる範囲において、N元素を含んでいてもよい。
【0036】
ここで、「光透過性を有する膜」とは、膜厚25nmにおいて10%以上の透過率を有するものと定義する。100nm程度の膜厚の場合には、少なくとも数%以上の透過率を有するものである。一方、「遮光性を有する膜」とは、膜厚25nmにおいて10%未満の透過率を有するものと定義する。以降の説明において、特に断らない限り、透過率という場合には、膜厚25nmにおける値を示すものとする。なお、一般的に、光の透過性を有しない金属薄膜においても、その膜厚を非常に薄くすることにより光透過性が出現することが知られている。例えば、純Al系膜の場合、膜厚を5nm程度にすることによって5%程度の透過率が得られる。
【0037】
図7は、Al100−x膜中のN組成比(at%)に対して、波長550nmにおける透過率をプロットしたものである。Al100−x膜は、上記実施形態1と同様に、純Alの金属ターゲットを用い、ArガスにNガスを添加した混合ガスを用いてスパッタリングすることにより得た。N組成比を振り分けて添加したAl100−x膜は、其々25nmの厚さで成膜した。なお、図7中の透過率は、透明絶縁性基板であるガラス基板15の透過率を差し引いた膜自体の透過率をプロットしたものである。
【0038】
図7より、Al100−x膜の透過率は、N組成比が20at%を超える近傍から光の透過特性が出現することがわかる。また、N組成比が40at%近傍を超えるあたりで透過率は10%を超え、48at%近傍においては約80%の透過率を示すことがわかる。換言すると、Al100−x膜中のN組成比を40at%以上とすることにより、Al100−x膜において光透過性を付与することができる。無論、他の添加物等の添加に応じて、光透過性は変動し得るものである。従って、N組成比が40at%未満のものを排除するものではない。
【0039】
反射防止膜2の第1薄膜として機能するAl系N含有膜2aは、前述したように、光透過性と導電性を兼ね備えた膜とする。Al系N含有膜2aとしてAl100−x膜を適用する場合には、図7より、光透過性を有するようにするために、Al100−x膜中のN組成比を40at%以上とする必要がある。ここで、Al100−x膜とする場合のN組成比(at%)に対する比抵抗値(導電性)は、図3に示したとおりである。従って、本実施形態2に係るAl系N含有膜2aとしてAl100−x膜を用いた場合、N組成比が40at%以上の領域は、比抵抗値が概略2.5×10−4Ω・cm(250μΩ・cm)以上となる。
【0040】
図8は、Al100−x膜中のN組成比(at%)に対して、波長550nmにおける光学定数n(屈折率)をプロットしたものである。また、図9は、Al100−x膜中のN組成比(at%)に対して、波長550nmにおける光学定数k(消衰係数)をプロットしたものである。
【0041】
図9より、光透過性を有するAl100−x膜のN組成比が40at%を超える近傍からk(消衰係数)が急激に低下し、概略3以下の値となることがわかる。k(消衰係数)の低下は、光の透過性向上に対応するものである。また、図8より、光透過性を有するAl100−x膜のN組成比が40at%を超える領域においては、n(屈折率)が概略1.9以上の値を示すことがわかる。
【0042】
図10に、反射防止膜2の第1薄膜として機能する光透過性を有するAl系N含有膜2aの一例として、N組成比が48at%、膜厚50nmのAl−48at%N膜(実施例2−1)におけるn(屈折率)の波長依存性をプロットしたものを示す。実施例2−1に係るサンプルの透過率は、約80%であった。
【0043】
図11に、実施例2−1に係るAl系N含有膜2aについて、k(消衰係数)の波長依存性をプロットしたものを示す。図10及び図11より、n(屈折率)、k(消衰係数)には光波長依存性が認められる。なお、以降の説明において、特に断りのない限り、n(屈折率)及びk(消衰係数)の値は、測定波長550nmにおける値を示す。
【0044】
次に、反射防止膜2の第1薄膜として機能するAl系N含有膜2aの最適膜厚について検討した結果について説明する。図12は、第1薄膜として機能するAl系N含有膜と、第2薄膜として機能するAl系膜の積層膜の積層構造を有する積層膜の反射率をプロットしたものである。サンプルは、0.6mm厚の透明絶縁性のガラス基板15(n=1.5)上に、Al100−x膜の膜厚を適宜選定して成膜し、次いでAl系膜を200nmの膜厚固定で成膜することにより得た。
【0045】
図12のサンプルには、第1薄膜として、Al100−x膜を構成するN組成比が48at%のAl−48at%N膜を用いた。当該第1薄膜の光透過率は80%であり、比抵抗値は0.05Ω・cm、n(屈折率)は2.31、k(減衰係数)は0.083であった。また、第1薄膜の膜厚は、最大110nm、最少0nm(第1薄膜無し)となるように振り分けて成膜した。さらに、第2薄膜として、N組成比が39at%のAl−39at%N膜を200nmの膜厚で成膜した。当該膜の反射率は41%であり、n(屈折率)は1.84、k(消衰係数)は2.97であった。
【0046】
これらの積層膜は、上記実施形態1と同様、公知のリン酸+硝酸+酢酸系の薬液を用いて同時に一括してエッチングすることができた。
【0047】
図12より、反射率は第1薄膜の膜厚により変動することがわかる。また、図12のサンプルにおいては、同図に示すどの膜厚領域においても反射率が50%以下の良好な低反射特性を有することがわかる。そして、第1薄膜の膜厚を10nm〜105nmの範囲内に限定すれば、反射率が30%以下となることがわかる。また、図12より、Al系N含有膜2aの膜厚を40nm〜80nmの範囲内に限定すれば、反射率が10%以下となることがわかる。反射率が10%以下となるAl系N含有膜2a(膜厚40nm〜80nm)の膜色は、いわゆる黒色膜であった。
【0048】
図12のサンプルによれば、反射防止膜2の第1薄膜であるAl系N含有膜2aの膜厚を10nm〜105nmの範囲内に限定することにより、上記実施形態1の反射防止膜1よりも優れた低反射特性を有する反射防止膜2を提供することができる。反射防止膜2の比抵抗値は、積層膜中の比抵抗値の小さい方の膜によって決定される。図12のサンプルの比抵抗値は、Al系膜2bの比抵抗値により決定される。具体的には、2.5×10−4Ω・cmであり、良好な導電性を示した。
【0049】
なお、上記においては、反射率が50%以下、30%以下、若しくは10%以下となる範囲について説明したが、反射防止膜を適用する用途、求められる性能に応じて、要求される反射率は変動し得る。従って、求められる性能、用途に応じて所望の反射率を満たすように適宜決定すればよい。
【0050】
次に、本実施形態2に係る反射防止膜の第2薄膜として機能するAl系膜2bの材料を純Alに変更した場合の、第1薄膜として機能するAl系N含有膜2aの最適膜厚について検討した結果について説明する。図13は、図12と同様に、第1薄膜として機能するAl系N含有膜と、第2薄膜として機能するAl系膜の積層膜の反射率をプロットしたものである。サンプルは、0.6mm厚の透明絶縁性のガラス基板15(n=1.5)上に、Al100−x膜の膜厚を適宜選定して成膜し、次いでAl系膜として純Al膜を200nmの膜厚固定で成膜することにより得た。
【0051】
図13のサンプルにおける第1薄膜には、上記図12と同様の材料であるN組成比が48at%のAl−48at%膜を用いた。第2薄膜には、前述したように純Al膜を用いた。純Al系膜の物性値は、反射率が85%であり、n(屈折率)1.10、k(消衰係数)5.09であった。これらの積層膜は、公知のリン酸+硝酸+酢酸系の薬液を用いて、2層を一括してエッチングすることができた。
【0052】
図13より、反射率は第1薄膜の膜厚により変動することがわかる。また、図13のサンプルにおいて、反射率50%以下の反射防止膜2を得るためには、第1薄膜として機能するAl系N含有膜2aの膜厚を概略25nm以上、105nm以下の範囲とすればよいことがわかる。反射率30%以下の反射防止膜2を得るためには、第1薄膜の膜厚を40nm〜95nmの範囲内に限定すればよく、反射率10%以下の反射防止膜2を得るためには、第1薄膜の膜厚を60nm〜80nmの範囲内にすればよいことがわかる。反射率が10%以下となるAl系N含有膜2a(膜厚60nm〜80nm)の膜色は、いわゆる黒色膜であった。
【0053】
図13のサンプルによれば、反射防止膜2の第1薄膜であるAl系N含有膜2aの膜厚を40nm〜95nmの範囲内に限定することにより、上記実施形態1の反射防止膜1よりも優れた低反射特性を有する反射防止膜2を提供することができる。反射防止膜2の比抵抗値は、3.3×10−6Ω・cmであった。これは、Al系膜2bとして純Al系膜を適用していることによるもので、優れた導電性を有する。
【0054】
なお、上記図12及び図13においては、第1薄膜として、光透過性のAl100−x膜としてAl−48at%N膜を用いた例について説明したが、これに限定されることはなく、図7において透過率が10%以上の光透過性を有するN組成比が40at%以上のAl100−x膜を用いても同様の効果を得ることができる。
【0055】
例えば、図12のサンプル構成において、第1薄膜として、Al−48at%N膜に代えて膜厚50nmのAl−40at%N膜(比抵抗値2.5×10−4Ω・cm、n(屈折率)1.90、k(消衰係数)2.80)を用いた場合、反射率は29%であった。また、図12のサンプル構成において、Al−48at%N膜に代えて膜厚50nmのAl−45at%N膜(比抵抗値0.003Ω・cm、n(屈折率)2.18、k(消衰係数)1.08)を用いた場合、反射率は18%であった。いずれも30%以下の優れた低反射特性を示した。なお、N組成比を50at%にしてしまうと、公知のリン酸+硝酸+酢酸系の薬液を用いたウエットエッチングが困難になるため、N組成比の上限は50at%未満にすることが好ましい。また、耐熱性や耐食性の向上を考慮してN元素に加えて他の元素をさらに添加してもよい。
【0056】
また、Al系膜2bの一例として、図12のサンプルにおいてはAl−39at%N膜の例を、図13のサンプルにおいては純Al系膜を用いた例について説明したが、主成分をAlとし、遮光性を有する膜であればこれらに限定されない。例えば、耐熱性や耐食性を考慮してAlにN以外の元素Mを添加することもできる。元素Mとして、8族遷移金属元素から選ばれる元素を添加すると、従来不可能であったITOなどの酸化物透明導電膜との良好な電気的コンタクト特性を実現することができる。中でもFe、Ni、Coから選ばれる1種以上の元素を添加すると、より良好な電気的コンタクト特性を実現することができる。このため、ITO等の電極と電気的に接続される構造を有するカラーフィルター基板用のブラックマトリックス膜用途として好適に適用することができる。さらに、比抵抗値が2.5×10−5Ω・cmよりも低い膜を用いるようにすれば、公知の反射防止膜であるMoやCr膜(比抵抗値2.5×10−5Ω・cm)よりも比抵抗値の低い反射防止膜が実現できるのでより好ましい。N元素以外のAlに添加する元素の添加総量は、従来のCrやMoの比抵抗値よりも低い膜を得る観点から、15at%を超えないことが好ましい。また、Al系N含有膜の膜厚は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、特に限定されないが、反射率30at%以下を容易に設計できる観点から、40nm以上、95nmの範囲に設定することが好ましい。
【0057】
本実施形態2に係る反射防止膜2によれば、Al系メタルをベースとしているので、パターニング加工が容易であり、高精度のパターンを得ることができる。また、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、反射防止膜2の第1薄膜として機能するAl系N含有膜2aとして光透過性を有し、かつ適切な膜厚に設定することにより、低反射特性を実現することができることを突き止めた。
【0058】
反射防止膜2の比抵抗値は、1×10−2Ω・cm以下の実用的な導電性領域としているので、導電特性を兼ね備える。さらに、反射防止膜2の第2薄膜として機能するAl系膜2bとして遮光性を有し、かつ、Al系N含有膜2aよりも低い導電性を有する膜を適用すれば、低抵抗特性を有する膜を提供できる。上述したCr、Fe、Ni、W、Zr、Ti、Moをベースとした反射防止膜においては、比抵抗値が2.5x10−5Ωcmを超える(一般的に、薄膜の比抵抗値はバルク状態での値よりも高い値となる)。一方、本実施形態2に係る反射防止膜2によれば、第2薄膜として機能するAl系膜2bを調整することにより低抵抗特性を容易に付与することができる。その結果、遮光膜用途に加えて配線兼用の材料を提供することが可能となる。このため、低抵抗が要求される例えば対角15インチサイズ以上の大型表示パネルの配線材料として特に好適に適用することができる。
【0059】
また、本実施形態2に係る反射防止膜2の製造方法は、スパッタリング法等の公知の方法を適用できるので、特別の製造装置を必要とせず、既存の設備を用いることができる。例えば、第1薄膜としてAl100−x膜、第2薄膜として純Al膜を成膜する場合には、スパッタリングガスにNガスを適用するか否かにより制御することができる。従って、低コスト化を実現することができる。また、元素Mを添加する場合も同様にして製造することができる。
【0060】
なお、本実施形態2においては、Al系N含有膜2aとAl系膜2bの2層構造となる例について説明したが、Nの含有量がガラス基板15側から遠ざかるにつれて減少するような膜により構成しても、本実施形態2と同様の効果を得ることができる。上記実施形態1の反射防止膜をAl100−x膜として適用すれば、反射率30〜50%を維持した上で、比抵抗値を下げることができる。
【0061】
[実施形態3]
本実施形態3に係る反射防止膜は、以下の点を除く基本的な構成及び製造方法は、上記実施形態2と同様である。すなわち、上記実施形態2に係る反射防止膜2は、Al系N含有膜2a、Al系膜2bの2層構造であったのに対し、本実施形態3に係る反射防止膜3は、3層構造である点において相違する。
【0062】
図14に、本実施形態3に係る反射防止膜3の模式的断面図を示す。反射防止膜3は、図14に示すように、ガラス基板15上に形成されており、第1薄膜として機能する第1Al系N含有膜3a、第2薄膜として機能するAl系膜3b、第3薄膜として機能する第2Al系N含有膜3cをガラス基板15側からこの順に備える。
【0063】
第1Al系N含有膜3aは、主成分をAlとし、添加物として少なくともN元素を含み、かつ、導電性と光透過性を兼ね備えた膜とする。Al系膜2bは、主成分をAlとするものであって、遮光性と導電性を兼ね備えた膜とする。第2Al系N含有膜3cは、第1Al系N含有膜3aと同様に、主成分をAlとし、添加物として少なくともN元素を含み、かつ、導電性と光透過性を兼ね備えた膜とする。これらの其々の膜は、其々独立にAl以外の金属を添加して、2種類以上の金属によって構成される金属間化合物、合金等であってもよい。なお、第1Al系N含有膜3a及び第2Al系N含有膜3bには、必ずN元素を含ませる必要があるが、第2薄膜として機能するAl系膜3bにおいては、N元素の添加は必須ではない。換言すれば、Al系膜3bは遮光性及び導電性が確保できる範囲において、N元素を含んでいてもよい。
【0064】
以下、本実施形態3に係る反射防止膜3の好適な一例について説明する(実施例3−1)。0.6mm厚の透明絶縁性のガラス基板15(n=1.5)上に、第1Al系N含有膜3aとして、N組成比が48at%のAl−48at%N膜を50nmの膜厚で成膜した。次いで、Al系膜3bとして、N組成比が39at%のAl−39at%N膜を200nmの膜厚で成膜した。さらに、第2Al系N含有膜3cとして、N組成比が48at%のAl−48at%N膜を50nmの膜厚で成膜した。
【0065】
第1Al系N含有膜3a及び第2Al系N含有膜3cであるAl−48at%N膜の特性は、光透過率が80%、比抵抗値が0.05Ω・cm、n(屈折率)が2.31、kが(減衰係数)0.083であった。Al系膜2bであるAl−39at%N膜の特性は、反射率が41%、n(屈折率)が1.84、k(消衰係数)が2.97であった。
【0066】
実施例3−1に係る第1Al系N含有膜3a、Al系膜3b、第2Al系N含有膜3cは、上記実施形態1と同様、公知のリン酸+硝酸+酢酸系の薬液を用いて同時に一括してエッチングすることができた。
【0067】
図15は、実施例3−1について、反射防止膜3の反射率の波長依存性を示すグラフである。図中の実線のグラフは、反射防止膜3をガラス基板面側から測定した反射率を示し、図中の破線のグラフは、反射防止膜3を空気界面側である上層膜側から測定した反射率を示す。
【0068】
図15に示すように、550nmにおける反射率値は、上層膜面側が1.6%、ガラス基板面側が4.5%であり、非常に低い反射率を示すことが明らかとなった。上層膜面側の最表層である第2Al系N含有膜2c、ガラス基板面側の最表層である第1Al系N含有膜2aは、其々いわゆる黒色膜であった。また、実施例3−1に係る反射防止膜3の比抵抗値は、2.7×10−4Ω・cmであった。
【0069】
上層膜面側とガラス基板面側とでは、ガラス基板の光学特性の影響の差もあって、一般的に反射率特性に違いが生じる。しかしながら、基本的には、上層膜面側からでも同様の反射防止効果が得られる。従って、例えば上層膜面側だけに反射防止機能が必要な場合は、図14において最下層の第1Al系N含有膜3aを省略した2層構造としてもよい。また、第1Al系N含有膜3a及び第2Al系N含有膜3cの例として、Al−48at%N膜に限ることはなく、上記実施形態2と同様に、光透過性を有し、かつ導電性を有する領域のAl系N含有膜に適用することにより、本発明の効果を得ることができる。Al100−x膜の場合には、40at%以上、50at%未満のN組成比のAl100−x膜を適用することが可能である。
【0070】
本実施形態3に係る反射防止膜3によれば、上記実施形態2の反射防止膜と同様の効果を得ることができる。なお、本実施形態3においては、3層構造となる例について説明したが、層の境が明確であることは必須ではなく、膜厚方向にN組成量を徐々に変化させることにより、実質上、上記構成を有する膜を成膜してもよい。
【0071】
[実施形態4]
次に、本発明に係る反射防止膜を、液晶表示装置に適用した例について説明する。本実施形態4においては、本発明に係る反射防止膜を、TN(Twisted Nematic)モードの液晶表示装置のカラーフィルター基板に適用した例について説明する。
【0072】
本実施形態4に係る液晶表示装置は、カラーフィルター基板、アクティブマトリックス基板が所定の間隙を持って対向配置されており、その間隙に液晶層が挟持された構造となっている。アクティブマトリックス基板(不図示)には、液晶を駆動するための画素電極、ゲート配線(走査信号配線)、ソース配線(画像信号配線)、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、TFT)などが形成されている。ゲート配線と、ソース配線は、其々同一方向に複数形成されており、ゲート配線とソース配線は絶縁膜を介して互いに略直交するように配設されている。隣接するゲート配線とソース配線に囲まれた領域が画素となる。また、ゲート配線とソース配線が交差する領域には、其々の画素を駆動するためのTFT素子がマトリックス状に形成されている。
【0073】
図16(a)に、本実施形態4に係るカラーフィルター基板20のブラックマトリックスの模式的な平面図を、図16(b)に、カラーフィルター層の模式的な平面図を示す。図16(b)において、ブラックマトリックスとカラーフィルター層の位置関係を説明するために、ブラックマトリックスも図示する。また、図17に、図16(b)のXVII-XVII切断部断面図を示す。
【0074】
本実施形態4に係るカラーフィルター基板20は、図16及び図17に示すように、透明絶縁性基板21、ブラックマトリックス層として機能する反射防止膜4、カラーフィルター層22、対向電極23、配向膜24等を備える。
【0075】
反射防止膜4は、透明絶縁性基板21上に、ブラックマトリックスとして機能するように、画素のマトリックスに対応して形成されている(図16(a)参照)。各画素領域は、図16(a)に示すように、カラー表示を行うために、ソース配線方向に沿って赤色表示画素R1、緑色表示画素G1、青色表示画素B1の3原色表示画素が交互に設定されている。反射防止膜4としては、上記実施形態1〜3の態様を好適に適用することができる。ここでは、一例として、上記実施形態2のように2層構造を有するものについて説明する。反射防止膜4は、図17に示すように、Al系N含有膜4a、Al系膜4bの2層構造となっている。
【0076】
カラーフィルター層22は、反射防止膜4が形成された透明絶縁性基板21上に、画素列に対応して赤色カラーフィルター層R2、緑色カラーフィルター層G2、青色カラーフィルター層B2が順に配設されている(図17参照)。
【0077】
対向電極23は、カラーフィルター層22の上層に形成され、アクティブマトリックス基板(不図示)の画素電極との間で液晶層(不図示)を駆動するための電界を形成する役割を担う。対向電極23として、本実施形態4においては、ITO膜を適用した。配向膜24は、対向電極23の上層に形成され、液晶分子を任意の方向に配向させるための役割を担う。配向膜24としては、ポリイミド膜等を好適に適用することができる。
【0078】
反射防止膜4は、隣接する画素の3原色カラーフィルター間の色の混合や干渉を防止し、画素領域の端部の表示光劣化部を遮光することによって、表示画像の高コントラスト化を図る。このために、図16(a)に示すように、ゲート配線を遮光する領域A、ソース配線を遮光する領域Aを形成するようなマトリックス状に形成する。
【0079】
次に、カラーフィルター基板20の製造方法について説明する。まず、透明絶縁性基板21上に、ブラックマトリックスとして機能させるための反射防止膜4を形成する。Al系N含有膜4aとしては、Alに3at%組成比のNiを添加したAl−3at%Ni合金ターゲットを用い、Ar+N混合ガスによる反応性スパッタリング法で50nm膜厚のAl−3at%Ni−45at%N膜を成膜した。次いで、純Arガスによるスパッタリング法で200nm膜厚のAl−3at%Ni膜を成膜することにより、Al系膜4bを得た。
【0080】
次に、フォトリソグラフィー法によりフォトレジストパターンを形成し、得られたパターンをマスクとしてウエットエッチングを行った。薬液としては、公知のAl系メタルエッチング液であるリン酸+硝酸+酢酸系薬液を用いた。その後、フォトレジストパターンを除去することにより、反射防止膜4のパターンを得た。
【0081】
得られた反射防止膜4のガラス基板側からの入射光L1に対する反射率L2は、4.9%であり、非常に低い反射特性を有する黒色膜を得た。図18に、本実施形態4に係る反射防止膜4の反射率の光波長依存性の結果を示す。同図に、公知のCr/CrO積層構造を有する反射防止膜の結果も合わせて図示する。図18より、本実施形態4に係る反射防止膜4は、公知のCr/CrO積層構造を有する反射防止膜と同等の低反射特性が得られることがわかる。
【0082】
反射防止膜4の比抵抗値は、5.0×10−6Ω・cmであった。一方、前述の公知のCr/CrOy膜の比抵抗値は、25×10−6Ω・cmである。すなわち、本実施形態4に係る反射防止膜4によれば、従来の反射防止膜(Cr/CrO積層膜)に比して、比抵抗値を約1/5の大きさにすることができる。
【0083】
反射防止膜4を形成後、光感光性樹脂に赤色の色素を混合させた赤色カラーレジストを形成し、フォトリソグラフィー法を用いて赤色カラーフィルター層R2を形成した。同様にして、緑色カラーフィルター層G2、青色カラーフィルター層B2を順次形成する。
【0084】
次に、液晶駆動用の電気信号(電界)を印加するための対向電極23を形成する。好適な実施例として、ここでは、酸化インジウム(In)と酸化スズ(SnO)とを重量比9:1で混合した酸化物透明導電膜ITOを100nmの膜厚で成膜した。このときのITO膜の比抵抗値は、250×10−6Ω・cmであった。
【0085】
対向電極23を構成するITO膜は、各色のカラーフィルター間の領域において反射防止膜4の上層膜であるAl系膜4bの表面と直接接触させるようにした。Al膜とITOとを直接接触させると、界面でAlとITOからのO元素が反応して絶縁性のAl100−x(酸化アルミニウム)が形成され、絶縁状態となってしまう。本実施形態4に係る反射防止膜4によれば、AlにNiを添加しているので、Al100−x層の反応を抑制することができ、接触抵抗値が低減されて良好な導通状態を実現することが可能である。
【0086】
本実施形態4によれば、対向電極23のITO膜と、マトリックス状に形成された低抵抗の反射防止膜4とを電気的に接続させている。本実施形態4に係る反射防止膜4は、ITO膜の約1/50の比抵抗値である。このため、対向電極23を反射防止膜4に電気的に良好な状態で接続させることにより、基板面内全体の対向電極の抵抗を低減させることができる。従って、TVのような大型サイズの液晶表示パネルに適用する場合においても、画面全体の対向電極の抵抗値を一様に低減することができる。その結果、液晶への印加電界不良や印加電界強度分布などを防止することができ、表示ムラなどによる品質低下を防止することが可能となる。
【0087】
対向電極23を形成後、配向膜24を形成する。ここではポリイミド系からなる透明性樹脂膜を100nmの膜厚で形成した。以上の工程等を経て、本実施形態に係る液晶表示パネル用のカラーフィルター基板が製造される。そして、カラーフィルター基板と、アクティブマトリックス基板とを一定の間隙を持たせて貼り合せ、その間隙に液晶を注入させる工程等を経てカラー液晶表示パネルが製造される。
【0088】
なお、上記の例では、Al−3at%Niの合金ターゲットを用いた例について説明したが、これに限定されるものではない。Niの添加効果は、ITOなどの酸化物導電膜との界面における接触電気抵抗値を低減して良好な導通状態を得ることにある。充分な効果を得るためにはNiの添加組成比は0.5at%以上とすることが好ましい。一方、Niを添加することによってAl−Ni膜の比抵抗値は増大する。例えば公知の低反射膜であるMoやCr膜の比抵抗値2.5×10−5Ω・cmよりも低く抑え、低抵抗膜としてのメリットを出すためには、Niの添加量を15at%以下にすることが好ましい。さらに、Alに添加する元素として、Niと同じ8族遷移金属であるFe、Coを添加した場合でもNiと同等の効果を得ることができる。この場合も、Al以外の添加量は、比抵抗値を良好に保つ観点から15at%以下とすることが好ましい。
【0089】
また、本実施形態4においては、カラーフィルター基板にブラックマトリックス機能を有する反射防止膜を適用する例について述べたが、ブラックマトリックス機能が必要とされる反射防止膜全般に適用できる。例えば、フィールド・シーケンシャル(FS)方式の対向基板に適用することもできる。
【0090】
[実施形態5]
本発明に係る反射防止膜を、液晶表示装置のアクティブマトリックス基板に適用した例について説明する。本実施形態5に係る液晶表示装置は、上記実施形態4と同様のTNモードとする。
【0091】
図19は、本実施形態5に係るアクティブマトリックス基板の反射防止膜5の一部を示す模式的平面図であり、図20は、図19中の一点鎖線XX-XXの位置におけるアクティブマトリックス基板の切断部断面図である。反射防止膜5は、液晶を駆動するための電極、配線パターンやTFTなどを具備したアクティブマトリックス基板30上に、概略マトリックス状に形成されている。
【0092】
アクティブマトリックス基板30は、図20に示すように、透明絶縁性の透明絶縁性基板31、導電膜からなるゲート電極32、SiN膜などからなるゲート絶縁膜33、TFTの半導体層として機能するSi等により構成される半導体能動膜34、導電膜から構成されるソース電極35及びドレイン電極36、画素電極37、ソース配線38、層間絶縁膜39、配向膜40等を備える。
【0093】
ゲート電極32は、図20に示すように、透明絶縁性基板31上に、ゲート配線(不図示)等と同一の層に形成されている。
【0094】
アクティブマトリックス基板30において、ゲート配線(不図示)は、縦方向に延在し、横方向に複数並設されている。そして、TFT形成領域におけるゲート配線がゲート電極32として機能する。ソース配線38は、ゲート絶縁膜33を介してゲート配線と交差するように、横方向に延在し、縦方向に複数並設されている。複数のゲート配線と、複数のソース配線は、ほぼ直交するようにマトリクスを形成し、隣接するゲート配線及びソース配線とで囲まれた領域が画素となる。従って、画素は、マトリクス状に配列される。複数の画素が形成されている領域が表示領域となる。
【0095】
各画素のゲート配線とソース配線の交差点付近には、少なくとも一つの信号伝達用のTFT41が設けられている。画素に形成されたTFT41のゲート電極32はゲート配線に、TFT41のソース電極35はソース配線に接続されている。ゲート電極32に電圧を印加するとソース配線から電流が流れるようになる。これにより、ソース配線から、TFT41のドレイン電極35に接続された画素電極に表示電圧が印加される。
【0096】
ゲート電極32は、ガラス等の透明絶縁性基板31上に形成され、ゲート配線、補助容量配線、ゲート端子部等と同一の導電膜により形成されている。
【0097】
ゲート絶縁膜33は、ゲート電極32等を覆うように、その上層に形成されている。半導体能動膜34及びオーミック低抵抗膜(不図示)は、ゲート絶縁膜33の上に形成され、ゲート絶縁膜33を介してゲート電極32の少なくとも一部と対向配置されている。半導体能動膜34は、例えば、不純物を含まないSi(シリコン)膜、オーミック低抵抗膜は、不純物を添加したオーミック低抵抗Si膜により構成される。
【0098】
ソース電極35及びドレイン電極36は、ゲート絶縁膜33、半導体能動膜34、オーミック低抵抗膜を介して、少なくともゲート電極32の一部と対向配置されている。すなわち、TFT41として動作するために、薄膜トランジスタ領域が、ゲート電極32上に存在して、ゲート電極32に電圧を印加した時の電界の影響を受けやすい状態となっている。ドレイン電極36は、ソース配線、ソース電極35、ソース端子部等と同一の層により構成されている。
【0099】
層間絶縁膜39は、ゲート絶縁膜33、半導体能動膜34、ソース電極35、ドレイン電極36、画素電極37を覆うように形成されている(図2参照)。
【0100】
反射防止膜5は、層間絶縁膜39上において、ゲート配線、ソース配線38、TFT41と重畳されるように形成されている。反射防止膜5としては、上記実施形態1〜3の構成を好適に適用することができる。本実施形態5においては、上記実施形態3のように3層構造とした。すなわち、反射防止膜5は、第1薄膜として機能する第1Al系N含有膜5a、第2薄膜として機能する遮光性を有するAl系膜5b、第3薄膜として機能する第2Al系N含有膜5cが下層からこの順に積層された積層膜により構成される。
【0101】
配向膜40は、アクティブマトリックス基板30の表面に液晶を任意の向きに配向させるために形成されている。
【0102】
以上のように構成されたアクティブマトリックス基板30とカラーフィルター基板とは、一定の間隙(セルギャップ)を介して貼り合わされ、この間隙に液晶が注入され、封止される。さらに、アクティブマトリックス基板30とカラーフィルター基板との外側の面には、偏光板、及び位相差板等が設けられる。また、液晶表示パネルの反視認側には、バックライトユニット等が配設される。本実施形態5に係る液晶表示装置は、以上のような構成となっている。
【0103】
反射防止膜5として、上記実施形態3に記載した3層構造を有する反射防止膜を適用した場合、ガラス基板面側からの反射率と、最上層膜面側からの反射率の光波長依存性は、前述した図15に示した結果と同様の結果が得られる。550nmにおける反射率は、膜面側が1.6%、ガラス基板面側が4.5%と非常に低く、両面側ともにいわゆる黒色膜特性を有していた。
【0104】
本実施形態5に係る反射防止膜5によれば、反射防止膜5を3層構造により構成しているので、画素表示用のバックライトからの入射光BL1が、反射光BL2としてTFTのSi半導体能動膜13に照射されることを防止できる。その結果、光励起によるTFTのオフ電流の増加(光によるTFT特性の劣化)を防止することができる。従って、例えば、高輝度用表示パネルとしてバックライト光を強くした場合の表示特性劣化防止に大きな効果を奏する。
【0105】
また、従来通り、表示画像視認側から入射される背景光L1の反射光L2も低減できるので、表示パネルに背景が映り込むことを防止できる。従って、視認性の高い高品質の表示を実現することができる。なお、上記バックライト光の反射によるTFT特性の劣化防止効果については、上記実施形態4においても成り立つ。従って、上記実施形態4においても本実施形態5と同様に3層構成の反射防止膜を好適に適用することができる。また、本実施形態5に係る反射防止膜5を、上記実施形態4のカラーフィルター基板のブラックマトリックスにも適用することにより、材料や製造装置の共用化を図り、低コスト化を実現することもできる。
【0106】
本実施形態5に係る反射防止膜5によれば、元来、光反射率は高いが低抵抗であるAl系メタルをベースとして、低反射特性若しくは、黒色膜特性を簡便かつ低コストで実現させることができる。従って、本実施形態5に係る反射防止膜5を、液晶駆動用のカラーフィルター基板等の対向電極基板のブラックマトリックスに適用することにより、対向電極を低抵抗化することが可能となる。対向電極の低抵抗化が要求される大型液晶パネル用途において特に有効である。
【0107】
[実施形態6]
本発明による反射防止膜を、液晶をパネル面に対して概略平行方向に配向させるIPS(In Plane Switching)モードの液晶表示装置に適用した例について説明する。図21は、本実施形態6に係るアクティブマトリックス基板30aの一部を示す模式的平面図、図22は、図21中のXXII-XXII切断部断面図である。なお、上記実施形態5と同一の要素部材には同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0108】
本実施形態6に係るアクティブマトリックス基板30aは、透明絶縁性基板31、ゲート電極32、ゲート絶縁膜33、半導体能動層34、ソース電極35、ドレイン電極36、画素電極37a、層間絶縁膜39a、補助容量電極42、共通電極43、対向電極44、保護膜45等を備える。TFT41は、ゲート電極32、ソース電極35、ドレイン電極36、ゲート絶縁膜33、半導体能動膜34等によって透明絶縁性基板31上に形成されている。
【0109】
本実施形態6に係る液晶表示装置は、画素部の電気信号(電界)を表示パネル面に平行に印加することにより、液晶を駆動する。このため、櫛歯形状の画素電極37a及び対向電極44は、層間絶縁膜39aの上層であって、同一の層に互いに対向するように形成されている。
【0110】
画素電極37aは、コンタクトホール51を介して下層のTFT41のドレイン電極36と電気的に接続されて画像信号電位を供給するとともに、コンタクトホール52と下層メタルパターン46に接続され、ゲート絶縁膜33を介して補助容量電極42と対向して画像信号を一定時間保持するための保持容量を形成している。一方、対向電極44はコンタクトホール53を介して下層の共通電極43と電気的に接続されて、一定の共通電位を供給する。以上のように構成された画素電極37と対向電極44によって、基板(液晶パネル)に概略水平な画像信号が画素に与えられる。
【0111】
図21に示すように、画素電極37aと対向電極44は、表示画素部に概略櫛歯形状に配置されて形成されるために、光透過領域(開口部)を大きくするためにITOなどの透明導電膜を用いることが好ましい。しかしながら、TV用途のような大型サイズの液晶表示パネルの場合、ITO膜では比抵抗が大きく、画面全体の画素電極や対向電極の抵抗値が大きくなってしまう。このため、画像信号の遅延や電位の分布を生じてコントラスト低下や表示ムラのような表示不良を引き起こすという問題がある。
【0112】
そこで、比抵抗の小さいAl系メタルを用いて電極の抵抗を一様に低減する方法が考えられている。しかしながら、Al系メタルを適用した場合、反射光の影響によって、色味の変化やコントラストが低下してしまうという新たな問題が生じていた。
【0113】
本実施形態6では、画素電極37aと対向電極44とを、本発明に係る反射防止膜6により構成する。本実施形態6に係る反射防止膜6は、図22に示すように、第1薄膜として機能するAl系膜6a、第2薄膜として機能するAl系N含有膜6bがこの順に積層された2層構造となっている。反射防止膜6のAl系膜6aは、Alを主成分とする遮光性、導電性を有する膜により構成し、Al系N含有膜6bは、Alを主成分とし、添加物として少なくとも窒素を含み、光透過性と導電性を有する膜により構成した。換言すると、画素電極37a、及び対向電極44が、Al系膜6a及びAl系N含有膜6bの2層構造からなる反射防止膜6により構成されている。
【0114】
以下、好適な実施例の一例について説明するが、本発明は、以下の例に限定されるものではない。Al系膜6aとして、比抵抗値が3.3×10−6Ω・cmの純Al系膜(n(屈折率)1.10、k(消衰係数)5.09)を200nmの膜厚で成膜した。光透過性のAl系N含有膜6bとして、透過率80%のAl−48at%N膜(n(屈折率)2.31、k(消衰係数)0.083)を50nm膜厚で成膜した。Al系膜6a、Al系N含有膜6bは、スパッタリング法により連続成膜した。
【0115】
上記実施例において、上層膜面側から測定した反射率は約20%であり、良好な低反射特性を得ることができた。次に、公知のフォトリソグラフィー法とリン酸+硝酸+酢酸系の薬液を用いてウエットエッチングを行い、画素電極37aのパターンと対向電極44のパターンとを同時に形成した。
【0116】
以上のようにして製造されたIPSモード液晶表示パネルは、画素電極37aと対向電極44の抵抗を画面全体に一様に低減できるとともに、画素表示部においてこれら電極からの光の反射成分の影響を抑制することができる。その結果、色純度やコントラストの高い表示特性を有する液晶表示装置を提供することができる。
【0117】
[実施形態7]
本実施形態7に係る反射防止膜は、以下の点を除く基本的な構成及び製造方法は、上記実施形態2と同様である。すなわち、上記実施形態2に係る反射防止膜2は、第1薄膜として機能するAl系N含有膜2aがN元素を添加したものであったのに対し、本実施形態7に係る反射防止膜7は、第1薄膜として機能するAl系N含有膜が、N元素の他に、さらにO元素を添加したものである点において相違する。なお、以降の説明において、N元素の他にさらにO元素を添加したAl系N含有膜を、説明の簡便化の観点から「Al系N+O含有膜」とも称する。
【0118】
図23に、本実施形態7に係る反射防止膜7の模式的断面図を示す。反射防止膜7は、図23に示すように、ガラス基板15上に形成されており、第1薄膜として機能するAl系N含有膜であるAl系N+O含有膜7a、第2薄膜として機能するAl系膜7bをガラス基板15側からこの順に備える。
【0119】
Al系N+O含有膜7aは、主成分をAlとし、添加物として少なくともN元素とO元素とを含み、かつ、導電性と光透過性を兼ね備えた膜とする。Al系膜7bは、主成分をAlとするものであって、遮光性と導電性を兼ね備えた膜とする。Al系N+O含有膜7a、及びAl系膜7bの両者は、其々独立にAl以外の金属を添加して、2種類以上の金属によって構成される金属間化合物、合金等であってもよい。なお、Al系N+O含有膜7aには、少なくともN元素とO元素とを含ませる必要があるが、Al系膜7bにおいては、N元素及び/又はO元素の添加は必須ではない。換言すれば、Al系膜7bは、遮光性及び導電性膜が確保できる範囲において、N元素、O元素を含んでいてもよい。
【0120】
本発明者らがさらに鋭意検討を重ねた結果、第1薄膜として機能するAl系N含有膜にO元素を添加すると優れた特性を有することがわかった。また、Al系膜にN元素を添加せずにO元素を添加した場合には、エッチング性、比抵抗が増大する観点から好ましくないことを突き止めた。以下、その理由について詳述する。
【0121】
図24は、Al100−x膜の膜厚に対して、波長550nmにおける透過率の膜厚依存性をプロットしたものである。Al100−x膜として、同図に示すように、純Al膜、Al−39at%N膜、Al−42at%N膜、Al−45at%N膜、Al−46at%N膜、Al−48at%N膜の各サンプルについて検討した。Al100−x膜は、上記実施形態1と同様に、純Alの金属ターゲットを用い、純ArガスにNガスを添加した混合ガスを用いてスパッタリングすることにより得た。N組成比は、純Arガスに添加するNガス量を変えることによって振り分けた。
【0122】
図24より、膜厚が25nmの場合、N組成比が39at%において透過率が10%をわずかに下回ることがわかる。そして、N組成比が増加するとともに透過率値が大きくなり、N組成比が48at%の場合には透過率が80%を超えることがわかる。換言すると、Al100−x膜中のN組成比を少なくとも40at%以上とすることにより、本明細書で定義する「光透過性を有する膜(25nm厚で透過率10%以上を有する膜)」を得ることが可能となる。無論、他の添加物等の添加に応じて、光透過性は変動し得るものである。従って、N組成比が40at%未満のものを排除するものではない。また、上述したように、一般的に光の透過性を有しない金属薄膜においても、その膜厚を非常に薄くすることによって光の透過性が現れる。
【0123】
以上は、AlにN元素を添加した場合の結果であるが、例えばN元素の代わりにO元素を添加したAl100−Z膜の場合でも、光透過性を付与することができる。図25は、Al100−Z膜中のO組成比(at%)に対して、波長550nmにおける透過率をプロットしたものである。Al100−Z膜は、純Alの金属ターゲットを用い、純ArガスにOガスを添加した混合ガスを用いてスパッタリングすることにより得た。O組成比を振り分けて添加したAl100−Z膜は、其々25nmの厚さで成膜した。なお、図25中の透過率は、透明絶縁性基板であるガラス基板15の透過率を差し引いた膜自体の透過率をプロットしたものである。
【0124】
図25より、O組成比が10at%を超えるあたりから光の透過性が現れることがわかる。一方、N元素を添加するAl100−xx、膜においては、図24において説明したように、光の透過性が現れるためには、N組成比を少なくとも40at%以上とする必要があった。すなわち、N元素に比してO元素を添加する方が少ない添加量でAl系の膜に透過性を付与できる。
【0125】
ところで、AlにO元素を添加した場合の化学量論組成比2:3(40at%:60at%)のAl膜は、一般にアルミナと呼ばれ、電気的絶縁体として知られている。そこで、Al100−Z膜の比抵抗値について調べた。図26に、Al100−x膜とAl100−Z膜の各サンプルにおいて、N組成、若しくはO組成比に対して比抵抗値(Ω・cm)をプロットした結果を示す。
【0126】
比抵抗は、図26に示すように、O元素添加の場合、O組成比が約15at%未満の組成比領域では、同じ組成比領域のN元素添加の場合よりも小さい値となる。一方、O組成比が15at%を超えるあたりから、比抵抗値が急激に増大する。そして、O組成比が30at%近傍では、当該Al100−Z膜の比抵抗値は少なくとも10Ω・cm以上となり、もはや導電体領域から外れてしまう。
【0127】
次に、Al100−Z膜中のO組成比(at%)に対して、公知のリン酸+硝酸+酢酸系の薬液(液温40℃)を用いてウエットエッチングした際のエッチングレートを調べた。測定は、上記実施形態1の図5で説明した条件と同様に実施した。
【0128】
その結果、O組成比が10at%近傍では、約30nm/minのエッチング速度でパターニング加工が可能であることがわかった。一方、O組成比が11at%を超えると、殆どエッチングされないことがわかった。O組成比が11at%を超えると、別途、ドライエッチング法によるエッチングを行う必要がある。これは、加工コスト増大の点から好ましくない。以上の結果より、本実施形態7に示す反射防止膜7において、第1薄膜として機能する光透過性膜に、N元素を添加せずにO元素だけを添加する膜を用いることは困難である。
【0129】
そこで、上記第1薄膜として機能する光透過性のAl系の膜として、上記実施形態2で適用したN組成比が40at%以上50at%未満のAl系N含有膜をベースとして、これに組成比が11at%を超えない範囲でO元素を添加したAl系N+O含有膜の適用について検討した。
【0130】
Al系N+O含有膜の製造は、スパッタリング法により行った。例えば、第1薄膜のAl系N+O含有膜7aは、純Al金属ターゲットを用いて、不活性ガスであるArガスにNガスとOガスとを含有させ、これらの混合比率を振り分けることによって膜に含有されるN組成比とO組成比を制御した。第2薄膜となる純Al膜7bは、Arガスのみでスパッタリングすることによって作製した。
【0131】
図27に、光透過性が現れる下限であるAl−40at%N膜(膜厚25nm)をベースとして、これにさらにO元素を添加していった場合の波長550nmにおける透過率値の変化を検討した結果を示す。比較例として、O元素の代わりに、さらにN元素を添加していった場合の結果も併せて同図に示す。
【0132】
図27より、同じ添加量であればO元素を添加した方が、膜の透過率値を高くできることがわかる。但し、前述したようにO組成比が11at%を超えると、比抵抗値が10Ω・cmを超え、もはや導電体領域ではなくなるとともに、上記公知のリン酸+硝酸+酢酸系の薬液(液温40℃)を用いたウエットエッチングが困難となる。このため、O元素の添加は11at%未満とすることが好ましい。
【0133】
次に、反射防止膜7の第1薄膜として機能するAl系N+O含有膜7aの最適膜厚について検討した結果について説明する。図28は、第1薄膜として機能するAl系N+O含有膜と、第2薄膜として機能するAl系膜の積層構造を有する積層膜の反射率を、Al系N+O含有膜の膜厚に対してプロットしたものである。純Al膜であるAl系膜の膜厚は200nmに固定し、Al系N+O含有膜の膜厚を50〜225nmの範囲で振分け、最適膜厚について検討した。サンプルは、0.6mm厚の透明絶縁性のガラス基板15(n=1.5)上に、Al系N+O含有膜としてAl−40at%N−9at%O組成を成膜し、その上層にAl系膜として純Al膜を成膜した。なお、反射率は波長550nmにおける測定値であり、ガラス基板面側から測定した。
【0134】
第1薄膜であるAl系N+O含有膜のAl−40at%N−9at%O膜の屈折率nは2.20であり、第2薄膜であるAl系膜の屈折率nは1.10であった。また、これらの積層膜はいずれも、公知のリン酸+硝酸+酢酸系の薬液を用いて2層を一括してエッチングすることができた。
【0135】
図28より、反射率は、第1薄膜であるAl系N+O含有膜7aの膜厚により変動することがわかる。また、Al系N+O含有膜7aの膜厚を70nm〜200nmの範囲内に限定すれば、反射率が30%以下となることがわかる。さらに、Al系N+O含有膜7aの膜厚を100nm〜150nmの範囲内に限定すれば、反射率が10%以下となることがわかる。反射率が10%以下となるAl系N+O含有膜7a(膜厚100nm〜150nm)の膜色は、いわゆる黒色膜であった。
【0136】
次に、本実施形態7における反射防止膜2の図28に示す反射率と、上記実施形態2における反射防止膜2の図13に示す反射率について比較検討する。反射率が30%以下となる第1薄膜の膜厚範囲は、上記実施形態2の場合には40〜95nmである。一方、本実施形態7の場合には70〜200nmであり、上記実施形態2に比して膜厚範囲が広い。同様に、反射率が10%以下となるいわゆる黒色膜となる第1薄膜の膜厚範囲は、上記実施形態2の場合には60〜80nmである。一方、本実施形態7の場合には100〜150nmであり、上記実施形体2に比して膜厚範囲が広い。
【0137】
すなわち、第1薄膜にAl系N+O含有膜7aを用いた本実施形態7は、O元素を添加せずにN元素を添加したAl系N含有膜2aを用いた上記実施形態2に比して、第1薄膜の膜厚マージンを広く取ることができる。これは、Al系N含有膜にさらにO元素を含有させることによって、図27に示すように透過率値を高くし、反射防止膜の光干渉膜として機能する第1薄膜の効果をより有効に機能させることができることによるものと考えられる。
【0138】
本実施形態7における反射防止膜7の比抵抗値は、Al系膜7bに用いた純Al膜の特性によって決まるため、3.5x10−6Ω・cmとなる。従って、上記実施形態2における同構成の反射防止膜7とほぼ同等の優れた導電性を有する。
【0139】
なお、本実施形態7ではAl系膜7bの膜厚を200nmに固定したが、これに限らず、要求される電極(配線)抵抗によって任意に選択することができる。また、Al系膜7bは、純Al膜に限定されることはなく、例えば、耐熱性や耐食性を考慮してAlに任意の元素を添加することもできる。さらに、上記実施形態2で説明したように、8族遷移金属元素から選ばれる元素を添加すると、従来不可能であったITOなどの酸化物透明導電膜との良好な電気的コンタクト特性を実現することができる。中でもFe、Ni、Coから選ばれる1種以上の元素を添加すると、より効果的に比抵抗値を低く抑えることができる。このため、ITO等の電極と電気的に接続される構造を有するカラーフィルター基板用のブラックマトリックス膜用途として好適に実施することが可能となる。さらに、比抵抗値が2.5x10−5Ω・cmよりも低い膜を用いるようにすれば、公知の反射防止膜であるMoやCr膜(比抵抗値2.5x10−5Ω・cm)よりも比抵抗値の低い反射防止膜が実現できるのでより好ましい。
【0140】
また、上記実施形態7では、第1薄膜として機能する光透過性のAl系N+O含有膜7aとして、Al−40at%N−9at%O膜を用いた例について説明したが、この組成比に限定されるものではない。N組成比として、光透過性(膜厚25nmで10%以上の透過率)と導電性を有する40at%以上50at%未満の範囲、O組成比として導電性領域となる11at%を超えない組成範囲で組み合わせたAl系N+O含有膜を用いることが好ましい。これらの膜厚は要求される反射率値に応じて適切に設定すればよい。
【0141】
以上のように、本実施形態7に係る反射防止膜7によれば、低抵抗特性を有するAl系メタルをベースとしているので、パターニング加工が容易であり、高精度のパターンを得ることができる。また、反射防止膜7の第1薄膜として機能するAl系N+O含有膜7aの高い光透過性を利用し、かつ適切な膜厚に設定することにより、低反射特性を実現することができる。
【0142】
また、本実施形態7に係る反射防止膜7の製造方法は、スパッタリング法等の公知の方法を適用できるので、特別の製造装置を必要とせず、既存の設備を用いることができる。従って、低コスト化を実現することができる。なお、本実施形態7においては、Al系N+O含有膜7aとAl系膜7bの2層構造となる例について説明したが、NとOの含有量がガラス基板15側から遠ざかるにつれて減少するような膜により構成しても、本実施形態7と同様の効果を得ることができる。
【0143】
本実施形態7に係る反射防止膜7は、2層積層膜に限らず、上記実施形態3の図14に示す3層構造の反射防止膜としても適用可能である。この場合、ガラス基板面側と上層膜側の両面で低反射特性を実現することができる。
【0144】
さらに、本実施形態7における反射防止膜7は、上記実施形態4〜6と同様に、液晶表示装置のブラックマトリックス膜、遮光膜、配線・電極膜等の用途に好適に利用できる。
【0145】
なお、上記実施形態4〜6では、本発明に係る反射防止膜を、液晶表示装置のブラックマトリックス膜、遮光膜、若しくは、配線・電極膜等に適用した例を説明したが、これらの用途に限定されるものではない。低抵抗特性と低反射特性を必要とする要素部材に広く適用することができる。例えば、タッチパネルセンサー用配線膜などにも好適に適用することができる。また、液晶表示装置の例に限定されるものではなく、低反射特性及び低反射特性を必要とする反射防止膜を必要とする表示装置等のデバイス全般に好適に適用することができる。また、上述したように、条件を設定することにより黒色膜を容易に得ることができるので、上記特性に加えて黒色膜が必要とされるデバイス全般に好適に適用することができる。特にこれらの反射防止膜に低抵抗特性が求められる場合には、特に大きな効果を奏する。
【符号の説明】
【0146】
1〜7 反射防止膜
2a Al系N含有膜
2b Al系膜
3a 第1Al系N含有膜
3b Al系膜
3c 第2Al系N含有膜
7a Al系N+O含有膜
7b Al系膜
15 ガラス基板
20 カラーフィルター基板
21 透明絶縁性基板
22 カラーフィルター層
23 対向電極
24 配向膜
30 アクティブマトリックス基板
31 透明絶縁性基板
32 ゲート電極
33 ゲート絶縁膜
34 半導体能動膜
35 ソース電極
36 ドレイン電極
37 画素電極
38 ソース配線
39 層間絶縁膜
40 配向膜
41 TFT
42 補助容量電極
43 共通電極
44 対向電極
45 保護膜
46 メタル配線
51〜53 コンタクトホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性基板上に形成された反射防止膜であって、
膜厚25nmにおいて波長550nmの透過率が10%未満であり、主成分がAlであるAl系膜と、
前記Al系膜の上層、又は/及び下層に形成され、膜厚25nmにおいて波長550nmの透過率が10%以上であり、かつ、主成分がAlであり、添加物として少なくともN元素を含むAl系N含有膜と、を備え、
比抵抗値が1.0×10−2Ω・cm以下であり、
前記Al系N含有膜面の可視光領域における反射率が50%以下である反射防止膜。
【請求項2】
前記Al系膜は、少なくとも比抵抗値が2.5×10−5Ω・cm以下の膜を含むことを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
【請求項3】
前記Al系N含有膜の比抵抗値が2.5×10−4Ω・cm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射防止膜。
【請求項4】
前記Al系N含有膜の比抵抗値が、10Ω・cm未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の反射防止膜。
【請求項5】
前記Al系N含有膜の前記N元素の組成比が、40at%以上、50at%未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の反射防止膜。
【請求項6】
前記添加物として、前記Al系膜、若しくは前記Al系N含有膜の少なくともいずれか一方に、8族遷移金属元素から選ばれる1種以上の元素をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の反射防止膜。
【請求項7】
前記Al系N含有膜の膜厚が、40nm以上、95nm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の反射防止膜。
【請求項8】
前記Al系N含有膜は、添加物としてさらにO元素を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の反射防止膜。
【請求項9】
前記Al系N含有膜の前記O元素の組成比が、11at%未満であることを特徴とする請求項8に記載の反射防止膜。
【請求項10】
前記Al系N含有膜の膜厚が、70nm以上、200nm以下であることを特徴とする請求項8又は9に記載の反射防止膜。
【請求項11】
透明性基板上に形成された反射防止膜であって、
主成分がAlであり、添加物として少なくともN元素を含み、
前記N元素の組成比が30at%以上であり、
比抵抗値が1.0×10−2Ω・cm以下である反射防止膜。
【請求項12】
前記N元素の組成比が45at%以下であることを特徴とする請求項11に記載の反射防止膜。
【請求項13】
前記添加物として、8族遷移金属元素から選ばれる1種類以上の元素をさらに含むことを特徴とする請求項11又は12に記載の反射防止膜。
【請求項14】
請求項1〜13に記載の反射防止膜を少なくとも含んで形成されていることを特徴とする表示装置。
【請求項15】
請求項14に記載の表示装置において、
前記反射防止膜の少なくとも一部が、透明導電膜からなる電極と直接的に接することによって、電気的に接続されていることを特徴とする表示装置。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のAl系N含有膜は、不活性ガスに少なくとも窒素を含むガスを添加した混合ガスを用いたスパッタリング法によって成膜する反射防止膜の製造方法。
【請求項17】
請求項8〜10のいずれか1項に記載のAl系N含有膜は、不活性ガスに、少なくとも窒素を含むガス、及び酸素を含むガスを添加した混合ガスを用いたスパッタリング法によって成膜する反射防止膜の製造方法。
【請求項18】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の反射防止膜は、不活性ガスに少なくとも窒素を含むガスを添加した混合ガスを用いたスパッタリング法によって成膜する反射防止膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2010−79240(P2010−79240A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24700(P2009−24700)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】