説明

反応プレートおよび自動分析装置

【課題】遠心力で試薬または検体を反応セルに送液する分析処理において、分析時間を短縮し、分析処理の労力を軽減させる自動分析装置を提供すること。
【解決手段】分注セルと反応セルと該セル間を繋ぐ移送流路とを備えた反応プレート20と、反応プレート20を保持する回転体11とを備えた自動分析装置1において、反応プレート20の移送流路に障壁と、回転速度を制御する回転制御部32とを備え、回転速度を変化させることによって段階的に試薬と検体とを反応させることを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体と試薬とを反応容器内で反応させ、この反応の結果を光学的に測定することによって検体の成分を分析する際に用いる反応プレートおよびこれを用いた自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血液や体液等の検体を自動的に分析する装置として、検体および試薬を反応容器に分注し、検体と試薬とを反応させた後、この検体と試薬との反応液の吸光度を測定して自動的に検体を分析する分析装置が知られている。また、回転体上に配置され、セル間が流路で連結されている反応プレートの分注セルに検体及び試薬又は検体と試薬との混合液を分注して、回転体を回転させることによって生じる遠心力を利用して検体と試薬との反応液を送液制御する送液装置および送液方法が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−330857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す送液方法では、検体と試薬とを1つのセルに分注するため、段階的に反応させる場合、分注又は分注と回転とを繰り返す必要があり、分析作業に時間と労力を要していた。また、障壁を遠心力方向に配置すると、連続的な段階反応を行うには困難を要する。さらに、流路間に試薬を配置させると、反応時間が確保し難いため、分析精度に影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、検体および試薬のセルへの送液を調節することで、作業時間を短縮することができる反応プレートおよびこれを用いた自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる反応プレートは、複数のセルと前記セル間を繋ぐ移送流路とを有し、所定のセルに検体及び試薬をそれぞれ分注して、回転体の回転から得られる遠心力によって前記検体及び前記試薬を前記移送流路に流通させて反応させる反応プレートにおいて、前記移送流路に障壁を設けて、前記検体、前記試薬または反応液の流通を制御することを特徴とする。
【0007】
また、本発明にかかる反応プレートは、上記の発明において、前記障壁は、高さが異なることを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる反応プレートは、上記の発明において、前記障壁は、疎水性の突起物で形成されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる反応プレートは、上記の発明において、前記障壁は、反応を行う順序に従って高さを上昇させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる自動分析装置は、複数のセルと該セル間を繋ぐ移送流路とを形成する反応プレートが、前記移送流路に検体、試薬または反応液の流通を制御する障壁と、前記反応プレートを保持する回転体と、前記回転体の回転によって前記検体、前記試薬または前記反応液の前記移送流路の流通を制御する回転制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記回転制御手段は、前記回転体の回転速度を変化させることによって前記検体、前記試薬または反応液の流通を制御することを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記回転体上の前記反応プレートを径方向に移動する移動手段を備え、位置を移動することによって前記反応プレートが受ける角速度の差異を利用して前記検体、前記試薬または前記反応液の前記移送流路の流通を制御することを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記検体及び前記試薬を分注する分注機構を備え、前記回転体が回転を開始する前に、前記検体及び前記試薬を前記反応プレートの所定のセルに分注することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、反応プレートに形成されているセル間を繋ぐ流路に障壁を設け、反応プレートを保持する回転体の回転を制御する回転制御部を備えたことで、回転前に検体及び使用するすべての試薬を分注し、回転の制御によって段階的に送液出来るため、回転の停止と分注を繰り返す必要がなく、分析処理の時間を短縮するという効果を奏する。また、回転制御によってセルからセルへ溶液の移送を調節できるため、多段階反応に対応可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態である自動分析装置について説明する。なお、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一符号を付している。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態にかかる自動分析装置1の構成を示す模式図である。図1に示すように、自動分析装置1は、検体および試薬を反応プレート20にそれぞれ分注し、分注した反応プレート20内で生じる反応を光学的に測定する測定機構10と、測定機構10を含む自動分析装置1全体の制御を行うとともに測定機構10における測定結果の分析を行う制御機構30とを備える。自動分析装置1は、これらの二つの機構が連携することによって複数の検体の生化学的、免疫学的あるいは遺伝学的な分析を自動的に行う。
【0017】
測定機構10は、大別して回転体11、測光部12、試薬分注部13、14、検体移送部17、検体分注部18を備える。また、制御機構30は、制御部31、回転制御部32、分注制御部33、入力部34、分析部35、記憶部36および出力部37を備える。測定機構10および制御機構30が備えるこれらの各部は、制御部31に電気的に接続されている。
【0018】
回転体11は、図示しない駆動機構が駆動することによって、回転体11の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。回転体11の上方と下方には、図示しない開閉自在な蓋と温度調節機構とを設けるのが好ましい。
【0019】
測光部12は、所定の測光位置に搬送された反応プレート20内の試料を透過した光を受光して強度測定を行う。この測光部12による測定結果は、制御部31に出力され、分析部35において分析される。また、反応プレート20内の反応液が発光する微弱な光を測光する光電子増倍管を有してもよい。なお、反応液から発生する蛍光を測定する場合、測光部12は、励起光を照射するための光源を設ければよい。
【0020】
試薬分注部13,14は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアーム13a,14aを備える。このアーム13a,14aの先端部には、検体の吸引および吐出を行うプローブが取り付けられている。試薬分注部13,14は、図示しない吸排シリンジまたは圧電素子を用いた吸排機構を備える。試薬分注部13,14は、試薬容器15a,16aの中からプローブによって検体を吸引し、アーム13a,14aを図中矢印方向に旋回させ、反応プレート20の所定のセルに検体を吐出して分注を行う。
【0021】
試薬庫15,16は、反応プレート20内に分注される試薬が収容された試薬容器15a,16aを複数収納できる。試薬庫15,16には、複数の収納室が等間隔で配置されており、各収納室には試薬容器15a,16aが着脱自在に収納される。試薬庫15,16は、制御部31の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、試薬庫15,16のそれぞれの中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬容器15a,16aを試薬分注部13、14による試薬吸引位置まで移送する。試薬庫15,16の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられている。また、試薬庫15,16の下方には、保冷槽が設けられている。このため、試薬庫15,16内に試薬容器15a,16aが収納され、蓋が閉じられたときに、試薬容器15a内に収容された試薬を一定の温度状態に保ち、試薬容器15a,16a内に収容された試薬の蒸発や変性を抑制することができる。
【0022】
検体移送部17は、血液や尿等、液体である検体を収容した複数の検体容器17aを保持し、図中の矢印方向に順次移送する複数の検体ラック17bを備える。検体移送部17上の所定位置に移送された検体容器17a内の検体は、検体分注部18によって、回転体11上の所定の位置に搬送される反応プレート20に分注される。
【0023】
検体分注部18は、試薬分注部13,14と同様に、検体の吸引および吐出を行うプローブが先端部に取り付けられたアーム18aを備える。アーム18aは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。検体分注部18は、検体容器17a内の試薬をプローブによって吸引し、アーム18aを図中矢印方向に旋回させ、回転体11上の所定位置に搬送された反応プレート20の所定のセルに分注する。
【0024】
反応プレート20は、光源から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する光学的に透明な素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス、環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂によって成形されたプレートを用いる。反応プレート20に形成された所定のセルには、近傍に設けた作動部である試薬分注部13,14によって試薬庫15,16の試薬容器15a,16aから試薬が分注され、検体分注部18によって検体ラック17bの検体容器17aから検体が分注される。
【0025】
つぎに、制御機構30について説明する。制御部31は、CPU等を用いて構成され、自動分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部31は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。また、制御部31は、回転制御部32と分注制御部33を有する。回転制御部32は、回転体11の回転開始および停止または回転速度の制御を行う。分注制御部33は、検体及び試薬の分注の制御を行う。
【0026】
入力部34は、キーボード、マウス等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部35は、測光部12から取得した測定結果に基づいて吸光度または発光強度を演算し、検体の成分分析等を行う。記憶部36は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部36は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。出力部37は、プリンタ、通信機構等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。
【0027】
以上のように構成された自動分析装置1では、反応プレート20に対して、検体分注部18が検体容器17a中の検体を分注し、試薬分注部13,14が試薬容器15a,16a中の試薬を分注した後、検体と試薬を反応させて、測光部12が反応液の光測定を行い、この測定結果を分析部35が分析することで、検体の成分分析等が自動的に行われる。この一連の分析動作が連続して繰り返し行われる。
【0028】
つぎに、本実施の形態1にかかる反応プレート20について、図2を参照して詳細に説明する。図2は、反応プレート20を上方から見た模式図であり、分注セル21,22,24及び反応セル23,25が形成されている。また、このセル間は移送流路21a,22a,23a,24aで連結され、移送流路中に障壁21b,22b,23b,24bが形成されている。ここで、障壁21b,22bは、分注セル21,22に分注された試薬と検体とが回転体の回転によってかかる遠心力で同時に障壁21b,22bを乗り越えられるように高さが設定され、障壁23b,24bは、上述した回転速度では乗り越えず、速度を一段階上げた場合に障壁23b,24bを試薬及び反応液が乗り越えられるように設定されている。なお、遠心力方向と異なる角度の移送流路に障壁を設けるため、当該障壁にかかる角度と力とを考慮して障壁の高さを設定する必要がある。
【0029】
分析処理においては、先ず分注セル21に第1試薬、分注セル22に検体、分注セル24に第2試薬が分注される(図2(a))。その後、回転制御部32が回転体11を回転させることによって生じた遠心力で第1試薬と検体が移送流路21a,22aを流通して反応セル23に流れ込む(図2(b))。なお、反応プレート20にかかる遠心力は、図2鉛直下方向である。
【0030】
つぎに、回転制御部32によって回転体11の回転速度が上げられ、第1試薬と検体とが反応した第1反応液は、反応セル23から移送流路23aと障壁23bとを通過して反応セル25へ流れ込む。ここで、分注セル24に分注されている第2試薬も移送流路24aと障壁24bとを通過して反応セル25に流れ込むために、第2試薬と反応液とが混合して反応する。この第2反応液は、反応セル25に収容され測光部12が光学的測定を行う(図2(c))。
【0031】
続いて、反応プレート20のセルと移送流路と障壁との形状に関して、図3,4を用いて説明する。図3は、図2のA−A線断面図を示し、図4は、図2のB−B線断面図を示している。
【0032】
図3において、分注セル22に分注された検体または試薬は、外的要因等で振動が起こった場合でも障壁22bによって反応セル23への流出が防止される。同様に、図4においても障壁24bによって液の流出が防止される。また、障壁22b,24bは、高さが異なっており、溶液が障壁を乗り越えられる遠心力を異にすることで回転体11の回転速度によって送液を段階的に行うことを可能としている。さらに、分注セル22及び反応セル23と、移送流路22aとに高低差を与え、分注セル22及び反応セル23の底部を円状に形成することで、遠心力または外的な力によって移送流路22aに試薬または反応液が流れ込んだ場合も、高低差によってセル底部に凝集して移送流路22aに未反応の試薬が残ることがない。
【0033】
図5は、実施の形態1の分析処理に関するフローチャートを示しており、このフローチャートを用いて一連の分析処理を説明する。
【0034】
まず、制御部31は、分析指示を受けると、分注制御部33に検体と試薬を所定の分注セルに分注するよう検体分注部18と試薬分注部13,14とに指示を出す(ステップS102)。検体及び試薬の分注が終了すると、制御部31は回転制御部32に回転体11を第1速度で回転させるよう指示を出す(ステップS104)。所定時間経過後、回転制御部32は回転体11を第2速度で回転させる(ステップS106)。その後、測光部12が、反応プレートの反応セルに収容された反応液の光学特性の測定を行う(ステップS108)。測光処理終了後、制御部31に次検体の分析指示がある場合(ステップS110:Yes)、ステップS102に移行して次の検体の分析処理を行う。また、次の検体の分析指示がない場合(ステップS110:No)、分析処理を終了する。上述した分析処理が繰り返し行われることによって、検体が分析される。
【0035】
なお、本発明の反応プレート20の障壁は、疎水性であることが望ましい。図6は、図2のA−A線断面において、セルに収容された試薬または検体の容量が多い場合を示している。液面の高さが障壁22bより高い場合でも、障壁22bを疎水性とすることで試薬または検体の表面張力によって反応セル23への流出を防ぐことが可能となる。また、毛細管現象によって移送流路に液が入ってきた場合でも障壁を疎水壁にすることで流出を防ぐことが出来る。さらに、効率良く反応セルに送液するには、分注セル及び反応セルと移送流路との表面は親水性にし、液の流動性を向上させることが好ましい。ここで、反応プレート20に用いられる素材が親水性である場合は、障壁を撥水剤等でコーティングすればよい。
【0036】
また、本発明の反応プレートは、蛍光物質や酵素を用いた免疫分析のような3段階以上の反応過程を要する分析にも用いることが可能である。図7に、免疫分析に用いる反応プレート40の模式図を示す。反応プレート20と同様にして分注セル41,42,44,46と、反応セル43,45,47とが形成される。速度を3段階に設定し、各遠心力から障壁の高さを設定することで3段階の反応が可能となる。先ず、回転制御部32は、第1速度で障壁41b,42bを乗り越えるように設定し、検体及び第1試薬を移送流路41a、42aを通過して第1反応セル43に流通させる。その後、回転制御部32は、第2速度で回転体11を回転させて、第1反応液と第2試薬とを障壁43b,44bを通過させ移送流路43a,44aから第2反応セル45へと送る。最後に、回転制御部32が第3速度で回転体11を回転させることによって、第2反応液と基質または酵素とを障壁45b,46bと移送流路45a,46aとを通過させて反応セル47へと送る。第3反応を行った後、測光部12によって光学特性を測定する。
【0037】
ここで、従来の自動分析装置においては、移送流路に障壁を備えていないために遠心力がかかるとすべての溶液が同時に流出していた。そのため、多段階の反応においては、反応毎に回転を停止して次の反応に用いる試薬を分注していた。
【0038】
これに対して、実施の形態1にかかる反応プレートおよび自動分析装置においては、移送流路に障壁を設けたことによって送液を制御することが可能となり、回転体を回転する前に用いる検体及び試薬をすべて分注することが出来る。これによって、回転を停止して試薬の分注を行う必要がなく、分析時間を短縮し、分析処理にかかる労力を少なくすることが可能となる。また、反応プレートにセルを形成することで多段階反応にも対応することが可能となる。
【0039】
なお、実施の形態1にかかる反応プレートにおいて、送液を行う順序は、反応の順序通りに試薬が混合されるのであれば、第2、第3試薬を最初に所定の反応セルに流出させるようにしても良い。また、試薬の容量によって回転体11が停止している場合に分注セルから反応セルへの試薬の流出がなければ、障壁は極低いものでも良いが、毛細管現象等での溶液の流出を考慮して、低くとも疎水性の障壁を設けることが好ましい。障壁は、溶液が次のセルに自然流出しなければ如何なる形状でも良く、突起物でなくとも弁や膜を使用しても良い。また、遠心力をかけて送液する場合に、液が飛散する可能性があれば蓋等で防止するか、或いはセルと移送流路をプレート内に形成しても良い。さらに、分析の効率を向上させるために、回転体11上に複数枚の反応プレート20を設置して分析しても良い。
【0040】
(実施の形態2)
図8は、実施の形態2にかかる自動分析装置1の構成を示す模式図である。実施の形態1と同様図8に示すように、自動分析装置1は、検体および試薬を反応プレート20にそれぞれ分注し、分注した反応プレート20内で生じる反応を光学的に測定する測定機構10と、測定機構10を含む自動分析装置1全体の制御を行うとともに測定機構10における測定結果の分析を行う制御機構30とを備える。
【0041】
実施の形態2では、回転体11の速度は変えずに反応プレート20の位置を変えることで反応プレート20が回転体の回転から受ける角速度の違いによって送液の調節を行う。図8に示すように、反応プレート20は、プレート保持部19によって保持され、移動制御部38がプレート保持部19内の反応プレート20を径方向に移動させることで位置を移動する。
【0042】
図9は、プレート保持部19と反応プレート20とを示す模式図である。ホルダ19aは、径方向に伸長した反応プレート20を保持するもので、ホルダ積載孔19bに載置されている。また、遠心力によって反応プレート20が径外方向に滑らないように、ホルダ19aには凸部が形成されている。ホルダ19aは、移動制御部38が図示しない駆動部を駆動させることによってスライドし、反応プレート20の位置を移動させる。
【0043】
図10は、本実施の形態2の分析処理に関するフローチャートを示しており、このフローチャートを用いて一連の分析処理を説明する。
【0044】
まず、制御部31は、分析指示を受けると、分注制御部33に検体と試薬を所定の分注セルに分注するよう検体分注部18と試薬分注部13,14とに指示を出す(ステップS202)。検体及び試薬の分注が終了すると、制御部31は、移動制御部38にホルダ19aを移動させて反応プレートを第1回転位置に配置するよう指示を出す(ステップS204)。つぎに、制御部31は回転制御部32に回転体11を回転させるよう指示を出す(ステップS206)。所定時間経過後、回転制御部32は回転体11を停止させ(ステップS208)、移動制御部38が、ホルダ19aを移動させて反応プレート20を第2回転位置に配置する(ステップS210)。反応プレート20が第2回転位置に配置されると、回転制御部32が回転体11を回転させ(ステップS212)、所定時間経過後に回転を停止する(ステップS214)。その後、測光部12が、反応プレート20の反応セルに収容された反応液の光学特性の測定を行う(ステップS216)。測光処理終了後、制御部31に次検体の分析指示がある場合(ステップS218:Yes)、ステップS202に移行して次の検体の分析処理を行う。また、次の検体の分析指示がない場合(ステップS218:No)、分析処理を終了する。上述した分析処理が繰り返し行われることによって、検体が分析される。
【0045】
なお、実施の形態2の回転体11の回転速度は、送液のタイミングが制御出来れば速度を変化させても良い。また、3段階以上の反応を行う場合は、ホルダ19aの移動を3段階に設定しても、3回目以降の反応過程を回転速度によって送液制御しても良い。
【0046】
ここで、実施の形態2にかかる自動分析装置においては、実施の形態1と同様に、移送流路に障壁を設けたことによって送液を制御することが可能となり、回転体を回転する前に用いる検体及び試薬をすべて分注することが出来る。これによって、回転を停止して試薬の分注を行う必要がなく、分析時間を短縮し、分析処理にかかる労力を少なくすることが可能となる。また、速度を一定にすることによって容易な制御で送液を調節することが出来る。
【0047】
なお、上述した実施の形態1,2において、撹拌が必要な場合は振動子や音波、超音波等の撹拌機構を備えても良い。
【0048】
また、上述した実施の形態1,2に限らず、たとえば、検体の遺伝学的な分析を行う自動分析装置に対して適用することも可能である。すなわち、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施の形態1の自動分析装置を示す模式図である。
【図2】反応プレートにおける送液を説明する模式図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図2のB−B線断面図である。
【図5】実施の形態1の分析処理を示すフローチャートである。
【図6】図2のA−A線断面であり、分注セルに溶液が多く収容されている場合を示す断面図である。
【図7】免疫分析に応用した反応プレートを示す模式図である。
【図8】実施の形態2の自動分析装置を示す模式図である。
【図9】反応プレートとプレート保持部とを示す模式図である。
【図10】実施の形態2の分析処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
1 自動分析装置
10 測定機構
11 回転体
12 測光部
13,14 試薬分注部
15,16 試薬庫
15a,16a 試薬容器
17 検体移送部
17a 検体容器
17b 検体ラック
18 検体分注部
19 プレート保持部
19a ホルダ
20,40 反応プレート
30 制御機構
31 制御部
32 回転制御部
33 分注制御部
34 入力部
35 分析部
36 記憶部
37 出力部
38 移動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルと前記セル間を繋ぐ移送流路とを有し、所定のセルに検体及び試薬をそれぞれ分注して、回転体の回転から得られる遠心力によって前記検体及び前記試薬を前記移送流路に流通させて反応させる反応プレートにおいて、
前記移送流路に障壁を設けて、前記検体、前記試薬または反応液の流通を制御することを特徴とする反応プレート。
【請求項2】
前記障壁は、高さが異なることを特徴とする請求項1に記載の反応プレート。
【請求項3】
前記障壁は、疎水性の突起物で形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の反応プレート。
【請求項4】
前記障壁は、反応を行う順序に従って高さを上昇させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の反応プレート。
【請求項5】
複数のセルと該セル間を繋ぐ移送流路とを形成する反応プレートが、前記移送流路に検体、試薬または反応液の流通を制御する障壁と、
前記反応プレートを保持する回転体と、
前記回転体の回転によって前記検体、前記試薬または前記反応液の前記移送流路の流通を制御する回転制御手段と、
を備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
前記回転制御手段は、前記回転体の回転速度を変化させることによって前記検体、前記試薬または反応液の流通を制御することを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記回転体上の前記反応プレートを径方向に移動する移動手段を備え、
位置を移動することによって前記反応プレートが受ける角速度の差異を利用して前記検体、前記試薬または前記反応液の前記移送流路の流通を制御することを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記検体及び前記試薬を分注する分注機構を備え、
前記回転体が回転を開始する前に、前記検体及び前記試薬を前記反応プレートの所定のセルに分注することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一つに記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−2395(P2010−2395A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163579(P2008−163579)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】