説明

反応現像画像形成法及びそのための組成物

【課題】ポリカーボネート樹脂及び光酸発生剤を用いて成膜(フォトレジスト層)し、所望のパターンでマスクされたフォトレジスト層に紫外線を照射し、その後現像液として有機溶媒を含まない水溶液を用いて現像することにより、十分なフォトレジストを得ることのできる反応現像画像形成法を提供する。
【解決手段】所望のパターンでマスクされたフォトレジスト層に紫外線を照射し、その後この層をMOH(式中、Mはアルカリ金属を表す。)で表される無機アルカリ等を含む水溶液で洗浄することから成る現像画像形成法において、該フォトレジスト層がポリカーボネート樹脂及びキノンジアジド構造を有する有機基と水酸基の両方を有する化合物(光酸発生剤)とから成ることを特徴とする反応現像画像形成法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体集積回路、プリント配線基板又は液晶パネルの製造に用いることのできるフォトレジスト技術に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストは通常、写真甲板加工における関連技術において、印刷板プリント電子回路及びプリント回路基板の製造、又はミクロ電子工学における半導体積層品の製造のために使用される光造形可能な有機ポリマーに用いられる。
フォトレジストには、ポジ型レジストとネガ型レジストがあり、ポジ型のフォトレジストの露光域は現像プロセスにより除去され、未露光域が基材上に層として残り、ネガ型のフォトレジストの露光域はレリーフ構造として残る。ポジ型フォトレジストは本質的に高い画像分解能を有していて、VLSI(超大規模集積回路)の製造に使用されている。
発明者らは、ポジ型のフォトレジスト技術として、既に「反応現像画像形成法」を開発した(特許文献1)。この方法においては、フォトレジスト層をヘテロ原子に結合したカルボニル基(C=O)を主鎖に含む汎用樹脂と光酸発生剤とから成る混合物により形成する。次に、この層を適宜所望のパターンにマスクした後に、紫外線を照射する。これを求核性のアミンを含む現像液で洗浄すると、露光域のカルボニル基で主鎖は切断され、ポリマーは低分子化され、現像液に溶解し、ポジ型フォトレジストが形成される。
更に本発明者らは、この技術を改良して、イミド結合を主鎖に含む縮合型ポリマーを用いたフォトレジスト層を、有機溶媒を含まないアルカリ水溶液により現像することによってネガ型画像フォトレジストを得ている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-76013
【特許文献2】特開2011-53366
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが開発した従来の反応現像画像形成法(特許文献1)においては、有機溶媒を含む現像液によらなければ、十分なフォトレジストを得ることができなかった。
本発明者らは、現像液として有機溶媒を含まない水溶液を用いることを目的として、この技術の改良を目指したが、今まで開発した反応現像画像形成法においては、樹脂としてイミド結合を主鎖に含む縮合型ポリマーを用いた場合は機能したが(特許文献2)、この現像液は、カーボナート結合(−O−CO−O−)を含む樹脂(即ち、ポリカーボネート樹脂)においては、十分な現像効果を上げることはできなかった。
そのため、本発明は、ポリカーボネート樹脂及び光酸発生剤を用いて成膜(フォトレジスト層)し、所望のパターンでマスクされたフォトレジスト層に紫外線を照射し、その後現像液として有機溶媒を含まない水溶液を用いて現像することにより、十分なフォトレジストを得ることのできる反応現像画像形成法及びそのための組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、光酸発生剤として、感光剤の機能を有するキノンジアジド構造と水酸基の両方を有する化合物を用いることにより、フォトレジスト層にポリカーボネート樹脂を用いて、かつ現像液として有機溶媒を含まない水溶液を用いて、十分なフォトレジストを得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、所望のパターンでマスクされたフォトレジスト層に紫外線を照射し、その後この層をアルカリを含む水溶液で洗浄することから成る現像画像形成法であって、該フォトレジスト層がポリカーボネート樹脂及び下式
【化1】

(式中、Xは、それぞれ独立して、−OD基(式中、Dはキノンジアジド構造を有する有機基を表す。)、水酸基、アルキル基又はアルコキシ基を表し、但し、当該分子中に少なくとも1つの−OD基及び少なくとも1つの水酸基を含み、Rは、単結合又は−(R−(R−(式中、Rはアリーレン基を表し、Rはアルキレン基を表し、nは0又は1を表し、oは0又は1を表す。)を表し、Rは、水素原子、アルキル基又は−COR(式中、Rはアルキル基又はアリール基を表す。)を表し、mは1〜3の整数を表し、pは1〜4の整数を表し、qは0〜3の整数を表し、但しp+q=4である。)で表される化合物から成る光酸発生剤から成ることを特徴とする反応現像画像形成法である。
また、本発明は、ポリカーボネート樹脂及び上記光酸発生剤から成る反応現像画像形成法用組成物である。
【発明の効果】
【0006】
有機アミンや有機溶媒を用いずに、現像液としてアルカリ水溶液を用いる現像処理により、ポリカーボネート樹脂の微細パターンが形成できる。
現像液として無機アルカリ水溶液を用いた場合には、カチオンに有機成分を含むアルカリである水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の水溶液を用いた場合に比べて、同じ濃度ではより現像時間が短く、また同じ現像時間ではより低濃度での現像が可能である。
フォトレジスト層(ポリカーボネート樹脂と光酸発生剤を含む)に酸性化合物(即ち、フェノール性水酸基やカルボン酸基等を含む化合物)を添加することにより、現像時間をより短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例で得たフォトレジストのSEM写真を示す図である。(1)実施例1、(2)実施例2、(3)実施例3、(4)実施例11のフォトレジストを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ポリカーボネート樹脂とは、ポリマーの主鎖にカーボナート結合(−O−CO−O−)を含むポリマーをいう。本発明の反応現像画像形成法に、ポリマーとしてポリカーボネート樹脂を用いた場合にはポジ型フォトレジストが形成される。
【0009】
本発明で用いる光酸発生剤は、下式で表される化合物であり、感光剤としての機能を有するキノンジアジド構造を有する有機基と水酸基の両方を有することを特徴とし、化学放射線の照射により酸を発生する。
【化1】

【0010】
式中、
Xは、それぞれ独立して、−OD基(式中、Dはキノンジアジド構造を有する有機基を表す。)、水酸基、アルキル基又はアルコキシ基を表す。このアルキル基は、好ましくは炭素数が1〜3のアルキル基、より好ましくはメチル基である。このアルコキシ基は、好ましくは炭素数が1〜3のアルコキシ基、より好ましくはメトキシ基である。
但し、当該分子中に少なくとも1つの−OD基及び少なくとも1つの水酸基を含む。即ち、mとpは当該分子中にXが少なくとも2つあるように選択される。
このキノンジアジド構造を有する有機基は、好ましくは1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホニル基、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニル基、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基、1,2−キノンジアジド−6−スルホニル基、2,1−ナフトキノンジアジド−4−スルホニル基又は2,1−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基、より好ましくは1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニル基又は1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基、最も好ましくは1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基である。
また−OD基はRに対してp位に位置することが好ましい。
【0011】
は、単結合又は−(R−(R−(式中、Rはアリーレン基を表し、Rはアルキレン基を表し、nは0又は1を表し、oは0又は1を表す。)を表す。このアリーレン基は、好ましくはフェニレン基を表し、このアルキレン基は、好ましくは炭素数が1〜10のアルキレン基、より好ましくは−C(CH−を表す。
は、水素原子、アルキル基又は−COR(式中、Rはアルキル基又はアリール基を表す。)を表す。これらのアルキル基は好ましくは炭素数が1〜10のアルキル基を表し、このアリール基は好ましくはフェニル基を表す。
mは1〜3の整数を表す。
pは1〜4の整数を表し、qは0〜3の整数を表し、但しp+q=4である。
【0012】
本発明のフォトレジスト層は、上記の縮合型ポリマーと光酸発生剤を含有するが、更に酸性化合物を含有してもよい。
この酸性化合物として、下式
【化2】

(式中、Xは、それぞれ同じであっても異なってもよく、−OH,−COOH又は−SOOHを表し、rは1〜3の整数を表す。)で表される化合物や、フェノールフタレイン、ビスフェノールA、フェノールノボラック、安息香酸、没食子酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、p-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられ、好ましくは化学式(化2)の化合物である。
【0013】
化学式(化2)の化合物として、例えば、下式の化合物が挙げられるが、最も好ましくはフロログルシノール(Phloroglucinol)である。
【化3】

本発明のフォトレジスト層がこの酸性化合物を含有することにより、樹脂塗膜の露光部の溶解度が増す。
【0014】
光酸発生剤はフォトレジスト層に全固形含量に基づいて5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%用いられる。
また、酸性化合物はフォトレジスト層に全固形含量に基づいて1〜50重量%、好ましくは3〜20重量%、より好ましくは5〜12重量%用いられる。
【0015】
フォトレジスト溶液の製造に適する溶剤は原則としてフォトレジストの不揮発成分、例えば縮合ポリマー及び光酸発生剤及び所望のその他の添加剤が十分に可溶であり、かつこれらの成分と不可逆的に反応しない全ての溶剤である。適する溶媒の実例は、非プロトン性極性溶媒、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ブチロラクトン、シクロヘキサノン、ジアセトキシエチレングリコール、スルホラン、テトラメチル尿素、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジグラム、フェノール、クレゾール、トルエン等である。
【0016】
本発明のフォトレジスト層は、更に改質剤として、カップリング剤、均添剤、可塑剤、別の膜形成樹脂、界面活性剤、安定剤等を含んでもよい。この改質剤の量は全て合わせてもフォトレジスト層の固形分全含有量に基づいて25重量%を超えることはない。
本発明のフォトレジストはそれ自身公知の方法により成分を溶剤又は溶剤混合物中に混合又は溶解することにより配合される。一旦成分は溶液中に溶解され、得られたフォトレジスト溶液は0.1〜1μmの細孔を有するろ過膜を用いてろ過される。
主用な用途分野はミクロ電子工学及びオプトエレクトロニクス回路ならびに部品の製造である。この利用のためにこれら材料は一時の間に合わせのフォトレジストマスク並びに永久構造体として例えば絶縁層、保護膜もしくは不導体層、誘電層又は液晶表示要素における配向膜として働く。
【0017】
基板上への被覆は通常、浸漬、噴霧、ロール塗り又はスピンコーティングによって行われる。生じた層の厚さはフォトレジスト溶液の粘度、固形分含量及びスピンコーティング速度に依存する。本発明のフォトレジストは0.1〜500μm、好ましくは1〜100μmの層厚を持つ層及びレリーフ構造を作ることができる。多層回路における薄層は一時の間に合わせのフォトレジストとして又は絶縁層として1〜50μmにすることができる。
フォトレジストを基材に塗布した後、これに普通50〜120℃の温度範囲で予備乾燥させる。オーブン又は加熱プレートを使用できる。オーブン中での乾燥時間は5〜60分である。
【0018】
その後、フォトレジスト層は輻射を受ける。通常、化学線の光が使用されるが、また高エネルギー放射線、例えばX線又は電子ビーム線を試用することができる。直接照射又は露光マスクを介して行うことができる。また、輻射線ビームをフォトレジスト層の表面に当てることもできる。
普通、輻射は250〜450nm、好ましくは300〜400nmの中心波長を発する紫外線ランプを用いて行われる。市販で入手できる輻射装置、例えば接触又は非接触露光機、走査投光型露光装置又はウエハステッパーを使用することが好ましい。
露光の後、ついでパターンはフォトレジストの照射域を取り除くアルカリ性現像液で層を処理する。例えば、浸漬又は噴霧により基材の露光部を現像する。
【0019】
本願の現像液としてアルカリを含む水溶液を用いるが、このアルカリとして、水酸化テトラアルキルアンモニウム又は下式
MOH
で表される無機アルカリを用いる。
水酸化テトラアルキルアンモニウムは、一般式NROH(式中、Rはアルキル基を表す。)で表されるが、通常水酸化テトラメチルアンモニウムが用いられる。
上記式中、Mはアルカリ金属、即ち、Li、Na、K、Rbを表すが、好ましくはLiまたはNaである。
アルカリとして無機アルカリを用いたほうが、現像速度が速いため、好ましい。
現像液中の水酸化テトラアルキルアンモニウムの濃度は20〜30重量%が好ましい。
現像液中の無機アルカリの濃度は5〜20重量%が好ましい。
【0020】
現像は露光エネルギー、現像剤のアルカリ性の強さ、現像の形式、予備乾燥温度、現像温度、現像時間を調節して行う。
現像停止は、普通、非溶剤、例えばイソプロパノール、脱イオン水、微酸性水溶液中への浸漬又は噴霧によって行われる。
本発明のポジ型フォトレジストは0.1〜500μm、好ましくは1〜100μmの層厚を有するポリマー被膜及び鋭い輪郭丸みを付けられたれレリーフ構造をとることができる。
ポストベークは材料の種類によって異なるが、通常150〜350℃の範囲で行う。
【実施例】
【0021】
以下、実施例にて本発明を例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。本実施例においては、以下の方法でフォトレジストを形成させて観察した。フォトレジストは、各実施例のフォトレジスト配合物を、3μm細孔径のろ過膜でろ過し、表面処理を行った直径10cmの銅箔の表面上に、スピンコート法で塗布した。次いで、赤外線熱風乾燥機中で乾燥した。このフォトレジスト配合物塗布膜上に、ポジ型フォトマスク用のテストパターン(5-200μmのラインアンドスペースパターン)を置き、2kw超高圧水銀灯照射装置(オーク製作所製品:JP-2000G)を用いて、画像が得られる露光量で照射した。
現像液中に、上記照射後の塗布膜を浸漬した後、純水で洗浄し、赤外線ランプで乾燥後、解像度を観察した。形成したフォトレジストをSEM(日本電子、走査型電子顕微鏡:JSM-6390LV、加速電圧:1.2kV)により観察した。
また、現像時間は、露光部が完全に溶解するまでに要した時間とした。
膜厚は接触式膜厚計(ニコン、デジマイクロMF-501)により測定し、溶解速度は、現像終了時までに溶解した膜の厚さ(nm)を現像時間(秒)で除することにより算出した。
【0022】
実施例1
1,4-ジオキサン(アルドリッチ(株)製)8.5gに、下式
【化4】

(式中、nは分子量に相当する数を表す。)で表されるポリ(ビスフェノールAカーボネート)(粘度平均分子量22000)(以下「BisA-PC」という。)1.5gを添加して溶解させた後、光酸発生剤として下式のジアゾナフトキノン系感光剤BADNQ1(α,α,α'-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼンのヒドロキシ基の2つが1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸エステルの化合物)0.3gを添加して室温で約1時間、スターラーで撹拌してフォトレジスト配合物を調製した。この溶液を35μmの電解銅箔上(マット面)にスピンコート法にて塗布し、遠赤外線熱風循環式乾燥機でプリベーク(90℃/5分)後、膜厚10.3μmの感光性ポリカーボネート樹脂被塗膜を得た。
【化5】

これにPET製のフォトマスクを介して、紫外線露光機(オーク社製)によりi線からg線帯域の光を照射した。i線帯域用の照度計で測定した露光量は400mJ/cm2であった。
露光後、25wt%濃度のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH、東京化成工業(株)製)水溶液からなる現像液100gに50℃で一定時間浸漬させた後、イオン交換水100gで1分間洗浄した。その結果、ポジ型の像を得た。このときの現像時間は24分30秒であった。解像度はラインアンドスペースパターンで20μmであった。このフォトレジストのSEM写真を図1(1)に示す。
【0023】
実施例2
ジアゾナフトキノン系感光剤BADNQ1の代りに下式のジアゾナフトキノン系感光剤BADNQ2を用いて、実施例1と同様に、感光性ポリカーボネート樹脂被塗膜(膜厚11.1μm)を得て、紫外線を照射した。
【化6】

得られた露光済みのポリカーボネート樹脂被塗膜に、実施例1と同様の現像処理を行った。その結果、ポジ型の像を得た。このときの現像時間は20分であった。解像度はラインアンドスペースパターンで20μmであった。このフォトレジストのSEM写真を図1(2)に示す。
【0024】
実施例3
BisA-PCとジアゾナフトキノン系感光剤BADNQ1の溶液に、さらにフロログルシノール(東京化成工業(株)製)0.15gを添加して、実施例1と同様に、感光性ポリカーボネート樹脂被塗膜(膜厚10.9μm)を得て、紫外線を照射した。
得られた露光済みのポリカーボネート樹脂被塗膜に、実施例1と同様の現像処理を行った。その結果、ポジ型の像を得た。このときの現像時間は7分であった。解像度はラインアンドスペースパターンで20μmであった。このフォトレジストのSEM写真を図1(3)に示す。
実施例4
フロログルシノールの代りにレソルシノール(東京化成工業(株)製)を用いて、実施例3と同様に、感光性ポリカーボネート樹脂被塗膜(膜厚9.3μm)を得て、紫外線を照射した。
得られた露光済みのポリカーボネート樹脂被塗膜に、実施例1と同様の現像処理を行った。その結果、ポジ型の像を得た。このときの現像時間は11分であった。解像度はラインアンドスペースパターンで20μmであった。
【0025】
実施例5
フロログルシノールの代りにフェノール(東京化成工業(株)製)を用いて、実施例3と同様に、感光性ポリカーボネート樹脂被塗膜(膜厚10.6μm)を得て、紫外線を照射した。
得られた露光済みのポリカーボネート樹脂被塗膜に、実施例1と同様の現像処理を行った。その結果、ポジ型の像を得た。このときの現像時間は22分であった。解像度はラインアンドスペースパターンで20μmであった。
実施例6
フロログルシノールの代りにフタル酸(東京化成工業(株)製)を用いて、実施例3と同様に、感光性ポリカーボネート樹脂被塗膜(膜厚10.5μm)を得て、紫外線を照射した。
得られた露光済みのポリカーボネート樹脂被塗膜に、実施例1と同様の現像処理を行った。その結果、ポジ型の像を得た。このときの現像時間は13分であった。解像度はラインアンドスペースパターンで20μmであった。
実施例7
フロログルシノールの代りにベンゼンスルホン酸(東京化成工業(株)製)を用いて、実施例3と同様に、感光性ポリカーボネート樹脂被塗膜(膜厚14.2μm)を得て、紫外線を照射した。
得られた露光済みのポリカーボネート樹脂被塗膜に、実施例1と同様の現像処理を行った。その結果、ポジ型の像を得た。このときの現像時間は11分であった。解像度はラインアンドスペースパターンで20μmであった。
【0026】
実施例8
BisA-PCの代りに下式
【化7】

(式中、mとnは分子量に相当する数を表す。)で表されるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量29900、m:n=84.2:15.8、以下「PC2」という。)を用いて、実施例1と同様に、感光性ポリカーボネート樹脂被塗膜(膜厚10.7μm)を得て、紫外線を照射した。
得られた露光済みのポリカーボネート樹脂被塗膜に、実施例1と同様の現像処理を行った。その結果、ポジ型の像を得た。このときの現像時間は10分10秒であった。解像度はラインアンドスペースパターンで20μmであった。
【0027】
実施例9
BisA-PCの代りに下式
【化8】

(式中、nは分子量に相当する数を表す。)で表されるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量21500、以下「PC3」という。)を用いて、実施例1と同様に、感光性ポリカーボネート樹脂被塗膜(膜厚9.6μm)を得て、紫外線を照射した。
得られた露光済みのポリカーボネート樹脂被塗膜に、実施例1と同様の現像処理を行った。その結果、ポジ型の像を得た。このときの現像時間は35分30秒であった。解像度はラインアンドスペースパターンで20μmであった。
【0028】
実施例10
実施例3と同様の操作を行い、露光済みのポリカーボネート樹脂被塗膜(膜厚11.2μm)を得た。
得られた露光済みのポリカーボネート樹脂被塗膜を、10wt%濃度の水酸化リチウム水溶液からなる現像液100gに50℃で一定時間浸漬させた後、イオン交換水100gで1分間洗浄した。その結果、ポジ型の像を得た。このときの現像時間は25分30秒であった。解像度はラインアンドスペースパターンで20μmであった。
実施例11
現像液を25wt%濃度の水酸化ナトリウム水溶液に代えて、実施例10と同様の操作を行った。感光性ポリカーボネート樹脂被塗膜の膜厚は11.2μmであった。
その結果、ポジ型の像を得た。このときの現像時間は4分30秒であった。解像度はラインアンドスペースパターンで30μmであった。このフォトレジストのSEM写真を図1(4)に示す。
実施例12
現像液を10wt%濃度の水酸化カリウム水溶液に代えて、実施例10と同様の操作を行った。感光性ポリカーボネート樹脂被塗膜の膜厚は11.4μmであった。
その結果、ポジ型の像を得た。このときの現像時間は30分であった。解像度はラインアンドスペースパターンで20μmであった。
【0029】
比較例1
ジアゾナフトキノン系感光剤BADNQ1の代りに下式のジアゾナフトキノン系感光剤PC-5(R)(東洋合成製、1,2-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホン酸-p-クレゾールエステル)を用いて、実施例1と同様に、感光性ポリカーボネート樹脂被塗膜(膜厚11.1μm)を得て、紫外線を照射した。
【化9】

露光済みのポリカーボネート樹脂被塗膜を、25wt%濃度のTMAH水溶液からなる現像液100gに50℃で150分間浸漬させたが、膜の露光部の溶解は見られず微細パターンは形成できなかった。
【0030】
比較例2
ジアゾナフトキノン系感光剤BADNQ1の代りにジアゾナフトキノン系感光剤PC-5(R)を用い、フロログルシノールの代わりにp-ヒドロキシベンゼンスルホン酸を用いて、実施例3と同様に、感光性ポリカーボネート樹脂被塗膜(膜厚10.4μm)を得た。ただし、遠赤外線熱風循環式乾燥機でのプリベーク時間は90℃/10分とした。この膜に紫外線を照射したのちに、25wt%濃度のTMAH水溶液からなる現像液100gに50℃で60分間浸漬させたが、膜の露光部の溶解は見られず微細パターンは形成できなかった。また、紫外線照射前のプリベーク条件を75℃/10分とした膜についても同様の操作を行ったが、やはり微細パターンは形成できなかった。
比較例3
TMAH溶液の代わりに、炭酸ナトリウム10%水溶液を用いて、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、露光済みのポリカーボネート樹脂被塗膜が溶解せず、パターンは得られなかった。
【0031】
以上の結果を下表にまとめる。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望のパターンでマスクされたフォトレジスト層に紫外線を照射し、その後この層をアルカリを含む水溶液で洗浄することから成る現像画像形成法であって、該フォトレジスト層がポリカーボネート樹脂及び下式
【化1】

(式中、Xは、それぞれ独立して、−OD基(式中、Dはキノンジアジド構造を有する有機基を表す。)、水酸基、アルキル基又はアルコキシ基を表し、但し、当該分子中に少なくとも1つの−OD基及び少なくとも1つの水酸基を含み、Rは、単結合又は−(R−(R−(式中、Rはアリーレン基を表し、Rはアルキレン基を表し、nは0又は1を表し、oは0又は1を表す。)を表し、Rは、水素原子、アルキル基又は−COR(式中、Rはアルキル基又はアリール基を表す。)を表し、mは1〜3の整数を表し、pは1〜4の整数を表し、qは0〜3の整数を表し、但しp+q=4である。)で表される化合物から成る光酸発生剤から成ることを特徴とする反応現像画像形成法。
【請求項2】
前記キノンジアジド構造を有する有機基が、1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホニル基、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニル基、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基、1,2−キノンジアジド−6−スルホニル基、2,1−ナフトキノンジアジド−4−スルホニル基又は2,1−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フォトレジスト層が更に下式
【化2】

(式中、Xは、それぞれ同じであっても異なってもよく、−OH,−COOH又は−SOOHを表し、sは1〜3の整数を表す。)の化合物を含有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリが水酸化テトラアルキルアンモニウム又は下式
MOH
(式中、Mはアルカリ金属を表す。)で表される無機アルカリである請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の反応現像画像形成法により形成されたフォトレジストを有する半導体集積回路、プリント配線基板又は液晶パネル。
【請求項6】
ポリカーボネート樹脂及び下式
【化1】

(式中、Xは、それぞれ独立して、−OD基(式中、Dはキノンジアジド構造を有する有機基を表す。)、水酸基、アルキル基又はアルコキシ基を表し、但し、当該分子中に少なくとも1つの−OD基及び少なくとも1つの水酸基を含み、Rは、単結合又は−(R−(R−(式中、Rはアリーレン基を表し、Rはアルキレン基を表し、nは0又は1を表し、oは0又は1を表す。)を表し、Rは、水素原子、アルキル基又は−COR(式中、Rはアルキル基又はアリール基を表す。)を表し、mは1〜3の整数を表し、pは1〜4の整数を表し、qは0〜3の整数を表し、但しp+q=4である。)で表される化合物から成る光酸発生剤から成る反応現像画像形成法用組成物。
【請求項7】
前記キノンジアジド構造を有する有機基が、1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホニル基、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニル基、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基、1,2−キノンジアジド−6−スルホニル基、2,1−ナフトキノンジアジド−4−スルホニル基又は2,1−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル基である請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
更に下式
【化2】

(式中、Xは、それぞれ同じであっても異なってもよく、−OH,−COOH又は−SOOHを表し、sは1〜3の整数を表す。)の化合物を含有する請求項6又は7に記載の組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−234104(P2012−234104A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104004(P2011−104004)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(504182255)国立大学法人横浜国立大学 (429)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】