説明

反応装置及び電子機器

【課題】反応装置から断熱容器への伝熱量を抑制しながら、反応装置本体の温度を適切に維持することができる。
【解決手段】反応装置本体111と、反応装置本体111を収容する断熱容器120とを備える反応装置110である。断熱容器120は反応装置本体111からの赤外領域の輻射を透過する輻射透過領域123及び透過した輻射が伝播する導波路180Aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、エネルギー変換効率の高いクリーンな電源として、水素を燃料とする燃料電池が自動車や携帯機器などに応用され始めている。燃料電池は、燃料と大気中の酸素を電気化学的に反応させて、化学エネルギーから電力を直接取り出す装置である。
【0003】
燃料電池に用いる燃料としては水素が挙げられるが、常温で気体であることによる取り扱い・貯蔵に問題がある。アルコール類及びガソリンといった液体燃料を用いる場合には、液体燃料を気化させる気化器、液体燃料と高温の水蒸気を反応させることによって、発電に必要な水素を取り出す改質器、改質反応の副産物である一酸化炭素を除去する一酸化炭素除去器等が必要となる。
【0004】
この気化器や一酸化炭素除去器の動作温度が高温であるため、これらの反応装置本体(高温体)を断熱容器(高温体収納装置)に収納し、放熱を抑制することが行われている(例えば、特許文献参照)。
【特許文献1】特開2004−303695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような断熱容器において、反応装置本体から断熱容器に伝導する熱量を抑えると、反応装置本体の温度が上昇し、適切な反応温度を保てないおそれがある。一方、このような問題を避けるため、例えば、反応装置本体から断熱容器に伝導する熱量を増大させると、反応装置本体を備える外部の電子機器の温度が上昇するという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、反応装置本体から断熱容器への伝熱量を抑制しながら、反応装置本体の温度を適切に維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、反応装置であって、反応物が反応する反応部を有する反応装置本体と、前記反応装置本体を収容するとともに、前記反応装置本体からの輻射を透過する輻射透過領域を有する第1の容器と、前記輻射透過領域を透過した輻射が伝播する導波路とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の反応装置であって、前記導波路は前記輻射を内部に導入する輻射導入部及び前記輻射を外部に放出する輻射放出部を有することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の反応装置であって、前記輻射導入部が前記輻射透過領域と対向して配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に反応装置であって、前記導波路は筒状であることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の反応装置であって、前記導波路は内壁面に前記輻射を反射する反射膜が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の反応装置であって、前記反射膜として、Au,Al,Ag,Cu,Rhの少なくとも1つが用いられていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の反応装置であって、前記導波路の内壁面の面粗さは前記輻射の波長よりも小さいことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の反応装置であって、前記反応装置本体における前記輻射透過領域との対向面には、前記反応装置本体における前記輻射透過領域との対向面を除く部分の外壁面よりも赤外領域の輻射率が高い輻射放熱領域が設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の反応装置であって、前記導波路の内壁面は、前記輻射放熱領域上の一点を焦点とし前記輻射放熱領域の法線方向を対称軸とする放物面を有することを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項8または9に記載の反応装置であって、前記導波路は前記輻射放熱領域の法線方向に設けられた第1の導波路部と、前記輻射透過領域の法線方向と交差する方向に設けられた第2の導波路部と、前記第1の導波路部及び前記第2の導波路部を接続する接続部とを含むことを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の反応装置であって、前記接続部の内壁面のうち前記輻射透過領域を法線方向へ投影した領域の法線方向と前記輻射透過領域の法線方向とのなす角が、前記第1の導波路部と前記第2の導波路部とがなす角の1/2倍以上1倍未満であることを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項2〜11のいずれか一項に記載の反応装置であって、前記反応装置を内部に収容する機器筐体を更に備え、前記輻射放出部が前記機器筐体の外周面に沿って配置されることを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項2〜12のいずれか一項に記載の反応装置であって、前記輻射放出部に前記輻射を透過する第2の輻射透過領域を有することを特徴とする。
【0020】
請求項14に記載の発明は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の反応装置であって、前記反応部は反応物の反応により電力を生成する燃料電池セルを含むことを特徴とする。
【0021】
請求項15に記載の発明は、電子機器であって、反応物の反応により電力を生成する燃料電池セルを含む反応部を有する反応装置本体と、前記反応装置本体を収容するとともに、前記反応装置本体からの輻射を透過する輻射透過領域を有する第1の容器と、前記輻射透過領域を透過した輻射が伝播する導波路と、を有する反応装置と、前記燃料電池セルの電力により駆動される電子機器本体と、前記反応装置及び前記電子機器本体を内部に収容する機器筐体とを備えることを特徴とする。
【0022】
請求項16に記載の発明は、請求項15に記載の電子機器であって、前記導波路は前記輻射を外部に放出する輻射放出部を有し、前記輻射放出部が前記機器筐体の外周面に沿って配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、反応装置本体から外部へ輻射放熱を行うことによって、反応装置本体から断熱容器への伝熱量を抑制しながら、反応装置本体の温度を適切に維持することことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0025】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態に係る電子機器100を示すブロック図である。この電子機器100はノート型パーソナルコンピュータ、PDA、電子手帳、デジタルカメラ、携帯電話機、腕時計、ゲーム機器等といった携帯型の電子機器である。
【0026】
電子機器100は、燃料電池装置130と、燃料電池装置130から供給される電力により駆動される電子機器本体101と、等から概略構成される。燃料電池装置130は後述するように、電力を生成し電子機器本体101に供給する。
【0027】
次に、燃料電池装置130について説明する。この燃料電池装置130は、電子機器本体101に出力する電力を生成するものであり、燃料容器102、送液ポンプ103、反応装置110、燃料電池セル140、DC/DCコンバータ131、二次電池132、等を備える。
【0028】
燃料容器102には、液体の原燃料(例えば、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル)と水との混合液が貯留されている。なお、液体の原燃料と水とを燃料容器102内で別々に貯留してもよい。
燃料容器102内の混合液は、送液ポンプ103により反応装置110の気化器104に送液される。
【0029】
反応装置110は、気化器104、改質器105、一酸化炭素除去器106、熱交換器107、触媒燃焼器109等からなる。
気化器104は燃料容器102から送られた混合液を電気ヒータ兼温度センサ153や改質器105からの伝熱により約110〜160℃程度に加熱し、気化させる。気化器104で気化した混合気は改質器105へ送られる。
【0030】
改質器105は内部に流路が形成され、流路の壁面に改質触媒が担持されている。改質触媒としては、Cu/ZnO系触媒やPd/ZnO系触媒等が用いられる。改質器105は電気ヒータ兼温度センサ155や後述する触媒燃焼器109からの伝熱により気化器104から送られる混合気を約300〜400℃程度に加熱し、流路内の触媒により改質反応を起こさせる。すなわち、原燃料と水の触媒反応によって、燃料としての水素、二酸化炭素、及び、副生成物である微量な一酸化炭素等の混合気体(改質ガス)が生成される。
【0031】
ここで、原燃料がメタノールの場合、改質器105では主に次の化学反応式(1)に示すような主反応である水蒸気改質反応が起こる。
CH3OH+H2O→3H2+CO2 …(1)
なお、化学反応式(1)についで逐次的に起こる次の化学反応式(2)のような副反応によって、副生成物として一酸化炭素が微量に(1%程度)生成される。
H2+CO2→H2O+CO …(2)
化学反応式(1)及び(2)の反応による生成物(改質ガス)は一酸化炭素除去器106に送出される。
【0032】
一酸化炭素除去器106の内部には流路が形成され、その流路の壁面に一酸化炭素を選択的に酸化する選択酸化触媒が担持されている。選択酸化触媒としては、例えばPt/Al2O3等を用いることができる。
【0033】
一酸化炭素除去器106には改質器105で生成された改質ガス及び、外部の空気が送られる。改質ガスが空気と混合して一酸化炭素除去器106の流路を流れ、改質器105や電気ヒータ兼温度センサ155からの伝熱により約110〜160℃程度に加熱される。そして、改質ガスのうち一酸化炭素が触媒により次の化学反応式(3)のような主反応により優先的に酸化される。これにより主生成物として二酸化炭素が生成され、改質ガス中の一酸化炭素を燃料電池セル140に供給可能な10ppm程度まで低濃度化することができる。
2CO+O2→2CO2 …(3)
化学反応式(8)の反応は発熱反応であるため、吸熱反応(混合液の気化)が行われる気化器104と隣接して配置される。
一酸化炭素除去器106を通過した改質ガスは燃料電池セル140に送出される。
【0034】
触媒燃焼器109には燃料電池セル140の燃料供給流路144aを通過した改質ガス(オフガス)及び空気が送られ、改質ガス中に残留する水素が空気により燃焼される。熱交換器107は一酸化炭素除去器106と隣接して配置され、燃料電池セル140から触媒燃焼器109に供給されるオフガス及び空気が通過する過程で、一酸化炭素除去器106の熱によりオフガス及び空気を加熱する。
【0035】
燃料電池セル140は固体高分子型燃料電池であり、固体高分子電解質膜141と、固体高分子電解質膜141の両面に形成された燃料極142(アノード)及び酸素極143(カソード)と、燃料極142に改質ガスを供給する燃料供給流路144aが設けられた燃料極セパレータ144と、酸素極143に酸素を供給する酸素供給流路145aが設けられた酸素極セパレータ145と、が積層されている。
【0036】
固体高分子電解質膜141は水素イオンを透過するが、酸素分子、水素分子、二酸化炭素、電子を通さない性質を有する。
燃料極142には燃料供給流路144aを介して改質ガスが送られる。燃料極142では改質ガス中の水素による次の電気化学反応式(4)に示す反応が起こる。
H2→2H++2e- …(4)
生成した水素イオンは固体高分子電解質膜141を透過して酸素極143に到達する。生成した電子はアノード出力電極146に供給される。
【0037】
酸素極143には、空気が酸素供給流路145aを介して送られる。酸素極143では固体高分子電解質膜141を透過した水素イオンと、空気中の酸素とカソード出力電極147より供給される電子とにより、次の電気化学反応式(5)に示すように水が生成される。
2H++1/2O2+2e-→H2O …(5)
なお、固体高分子電解質膜141の両面には、電気化学反応式(4)、(5)の反応を促進する図示しない触媒が設けられている。
【0038】
アノード出力電極146及びカソード出力電極147は外部回路であるDC/DCコンバータ131と接続されており、アノード出力電極146に到達した電子はDC/DCコンバータ131を通ってカソード出力電極147に供給される。
【0039】
DC/DCコンバータ131は燃料電池セル140により生成された電力を適切な電圧に変換したのちに電子機器本体101に供給するとともに、電力を二次電池132に充電する。
【0040】
〔反応装置の構造〕
次に、反応装置110の構造について説明する。図2は反応装置110の斜視図、図3は図2のIII−III切断線に対応する模式断面図、図4は図2のIV矢視図である。反応装置110は、反応装置本体111と、反応装置本体111を収容する断熱容器(第1の容器)120とからなる。反応装置110は、例えばステンレス(SUS304)やコバール合金、ニッケル基合金等の金属板を貼り合わせて形成してもよいし、光学材料あるいはガラス基板等を貼り合わせて形成してもよい。
【0041】
反応装置本体111は、第1連結部112と、低温反応部113と、第2連結部114と、高温反応部115とからなる。反応装置本体111の外壁面には、後述する輻射放熱膜113aが設けられた部分を除き、輻射を防止する輻射防止膜111aが設けられている。輻射防止膜111aの材料には、後述する反射膜121aと同様の材料を用いることができる。輻射防止膜111aにより、反応装置本体111からの輻射による断熱容器120への熱量の移動が抑制される。
【0042】
高温反応部115には、改質器105となる改質流路105a及び触媒燃焼器109となる触媒燃焼流路109aが設けられる。また、高温反応部115には、電気ヒータ兼温度センサ155が設けられており、高温反応部115は電気ヒータ兼温度センサ155により約300〜400℃に保たれる。電気ヒータ兼温度センサ155は、断熱容器120を貫通するリード線155cに接続されており、リード線155cを介して断熱容器120の外部より電力が供給される。電気ヒータ兼温度センサ155は、絶縁膜155a,155bにより他の部材と絶縁されている。
【0043】
低温反応部113には、気化器104となる気化流路104a、一酸化炭素除去器106となる一酸化炭素除去流路106a、熱交換器107となる熱交換流路107aが設けられている。また、低温反応部113には、電気ヒータ兼温度センサ153が設けられており、低温反応部113は電気ヒータ兼温度センサ153により約110〜160℃に保たれる。電気ヒータ兼温度センサ153は、断熱容器120を貫通するリード線153cに接続されており、リード線153cを介して断熱容器120の外部より電力が供給される。電気ヒータ兼温度センサ153は、絶縁膜153a,153bにより他の部材と絶縁されている。
【0044】
なお、図3において、リード線153c,155cは高圧側または低圧側の1本だけを図示した。また、図3は簡明に示すため、図中のリード線153c、155cが重畳しないように記載したが、実際は横方向から見た場合に重畳してもよい。
【0045】
また、低温反応部113の外表面には、輻射放熱膜113aが設けられている。輻射放熱膜113aには、1μm〜30μmの赤外領域での輻射率が0.5以上、より好ましくは0.8以上である高輻射率の材料を用いることができる。
【0046】
輻射放熱膜113aは、反応装置本体111の表面全体に輻射防止膜111aを成膜した後に、輻射防止膜111aと重ねて成膜してもよい。
輻射放熱膜113aの材料としては、作成方法が簡便である材料を選択することができ、SiO2やアルミナ(Al2O3)に代表される各種酸化物や、カオリン等の粘土鉱物、セラミック等を用いることができる。例えば、SiO2、Al2O3、カオリンやRFeO3(Rは希土類)、ハフニウム酸化物やYSZや、チタン酸化物を含有する耐熱輻射塗料などを用いることができる。
【0047】
輻射放熱膜113aは、例えば高輻射率の材料を含有するエマルジョン液体を基板等に塗布し、乾燥させることでシート状に形成することができる。
あるいは、断熱容器120内のガスを吸着する非蒸発型ゲッターにより輻射放熱膜113aを形成してもよい。
【0048】
一方、電気伝導性を有するもの、例えば通常の金属や可視光領域で黒色に見えるグラファイトは、赤外領域を含む長波長領域において輻射率が低くなるため、輻射放熱膜113aの材料として用いることはできない。
【0049】
また、輻射放熱膜113aとしては、陽極酸化等の手法により、Al2O3を低温反応部113の外表面に多孔質体状に形成することができる。あるいは、細いグラスファイバーを用いた布を輻射放熱膜113aとして用いることもできる。
輻射放熱膜113aは、断熱容器120の内壁面の輻射透過窓123と対向配置される。
【0050】
第2連結部114は高温反応部115や低温反応部113において反応する反応物や生成する生成物が流れる流路となる配管を含み、高温反応部115と低温反応部113との間を接続する。また、第2連結部114は、一端で高温反応部115に接続され、他端で低温反応部113に接続されるとともに、高温反応部115から低温反応部113に反応物や生成物を送る流路となる第3配管(流出配管)114bと、低温反応部113から高温反応部115に反応物や生成物を送る第4配管(流入配管)114cとを備える。
【0051】
第1連結部112は高温反応部115や低温反応部113において反応する反応物や生成する生成物が流れる流路となる配管を含む。第1連結部112は、他端側で断熱容器120を貫通するとともに、一端で低温反応部113に接続され、他端で送液ポンプ103、燃料電池セル140、図示しないエアポンプ等に接続される。また、第1連結部112は、低温反応部113から断熱容器120の外部に反応物や生成物を送る流路となる第1配管(流出配管)112bと、断熱容器120の外部から低温反応部113に反応物や生成物を送る第2配管(流入配管)112cとを備える。
【0052】
ここで、輻射放熱膜113aから放出される輻射の輻射強度と波長との関係について説明する。
図5は100℃〜1000℃における輻射強度と波長との関係を示す図である。なお、波長λmaxにおける輻射強度B(λmax)を1として規格化している。図5に示すように、反応部の温度によって輻射強度が最大となる波長が異なるため、低温反応部113及び高温反応部115の動作温度に合わせて、後述する輻射防止膜111aや輻射放熱膜113a、輻射透過窓123、反射膜182の材質を選択する必要がある。
【0053】
図6は後述する輻射防止膜111a、反射膜121a,182の材料の候補となるAu,Al,Ag,Cu,Rhの輻射の反射率の波長依存性を示すグラフである。図6に示すように、Au,Al,Ag,Cuは100℃〜1000℃の反応部から放射される約1μm以上の赤外領域での輻射の反射率が90%以上であり、輻射防止膜111a、反射膜121a,182として用いることができる。また、Rhは約2μm以上の赤外領域での輻射の反射率が90%以上であるので、反応部の温度が500℃以下であれば、輻射防止膜111a、反射膜121a,182として用いることができる。
【0054】
反応装置本体111の外壁面には、輻射放熱膜113aが設けられた部分を除き、輻射を防止する輻射防止膜111aが設けられている。輻射防止膜111aの材料には、Au,Al,Ag,Cu,Rh等を用いることができる。Au,Al,Ag,Cu,Rh等を用いた輻射防止膜111aは輻射の反射率(R)が高いため、輻射率(1−R)が低く、反応装置110からの輻射による熱量の移動が抑制される。
【0055】
次に、断熱容器120について説明する。断熱容器120は直方体形状をしており、内部に反応装置本体111が収納されている。
【0056】
断熱容器120の内部空間は気体分子による熱伝導や対流を防ぐため、例えば10Pa以下、より好ましくは1Pa以下、といった大気圧よりも低い圧力に維持されている。
断熱容器120は、筐体(容器筐体)121と、輻射透過窓123とから概略構成される。
筐体121の内壁面には、反応装置本体111からの輻射による熱損失を抑制するために、輻射を反射する反射膜121aが形成されている。反射膜121aの材料には、輻射防止膜111aと同様に、Au,Al,Ag,Cu,Rh等を用いることができる。反射膜121aにより、反応装置本体111からの輻射による筐体121への熱量の移動が抑制される。
【0057】
低温反応部113には第2連結部114を介して高温反応部115から熱量が伝導するので、第1連結部112を介して断熱容器120に伝導する熱量以上の熱量が伝導すると、温度が適温以上に上昇するおそれがある。そこで、本実施形態の断熱容器120の内壁面には、低温反応部113に対応する位置に、輻射透過窓123を設けている。
【0058】
輻射透過窓123は、例えば図3、図4に示すように、反応装置本体111の輻射放熱膜113aと対向するように設けられている。また、図7、図8は輻射透過窓123の材料の候補となる物質の透過率と光の波長との関係を示すグラフである。輻射透過窓123としては、輻射放熱膜113aから放射される輻射の透過率が高い材料を選択することができる。一方、輻射放熱膜113aから放射される輻射の透過率が低く吸収率が高い材料は、吸収した輻射熱により輻射透過窓123の温度が上昇し、断熱容器120を介して外部の装置へと伝熱してしまうため、適していない。
【0059】
輻射透過窓123に適した材料としては、例えば、超高真空用の覗き窓の材料として利用されているCaF2(フッ化カルシウム;0.15−12)、BaF2(フッ化バリウム;0.25−15)、ZnSe(セレン化亜鉛;0.6−18)、MgF2(フッ化マグネシウム;0.13−10)、KRS−5(臭沃化タリウム;0.6−60)、KRS−6(臭塩化タリウム;0.41−34)、LiF(フッ化リチウム;0.11−8)、SiO2(光学用合成石英;0.16−8)、CsI(ヨウ化セシウム;0.2−70)、KBr(臭化カリウム;0.2−40)等を用いることができる。なお、括弧内の数字は透過領域波長(μm)である。
【0060】
この他にも、AlF3(0.22−12)、NaCl(0.21−26)、(0.16−15)、KCl(0.21−30)、CsCl(0.19−25)、CsBr(0.24−40)、CsF(0.27−18)、NaBr(0.22−23)、CaCO3(0.3−5.5)、KI(0.3−30)、NaI(0.25−25)、AgCl(0.4−30)、AgBr(0.45−33)、TlBr(0.9−40)、Al2O3(0.2−8)、BiF3(0.26−20)、CdSe(0.7−25)、CdS(0.55−18)、CdTe(0.86−28)、CeF3(0.3−12)、CeO2(0.4−16)、Cr2O3(1.2−10)、DyF2(0.22−12)、GaAs(0.9−18)、GaSe(0.65−17)、Gd2O3(0.32−15)、Ge(1.7−25)、HfO2(0.23−12)、La2O3(0.26−11)、MgO(0.23−9)、NaF(0.13−15)、Nb2O5(0.32−8)、PbF2(0.24−20)、Si(1.1−1.4)、Si3N4(0.25−9)、SrF2(0.2−10)、TlCl(0.4−20)、YF3(0.2−14)、Y2O3(0.25−9)、ZnO(0.35−20)、ZnS(0.38−14)、ZrO2(0.3−8)等を用いることができる。
【0061】
導波路180Aは、図3に示すように、両端の開口部のうち一方の開口部(輻射導入部)180aを断熱容器120の輻射透過窓123と対向配置させ、他方の開口部(輻射放出部)180bを電子機器100の筐体(機器筐体)190の外部に通じさせるように設けられている。本実施形態では、導波路180Aの他方の開口部180bは、電子機器100の筐体の外周面に沿って配置されている。導波路180Aに関して、詳しくは後述する。
【0062】
本実施形態においては、図3、図4に示すように、低温反応部113に輻射放熱膜113aが設けられており、断熱容器120における輻射放熱膜113aと対向する部分に輻射透過窓123が設けられている。輻射放熱膜113aからの輻射は輻射透過窓123を透過するため、低温反応部113で生じた熱量の一部が輻射により断熱容器120の外部へ放出される。したがって、高温反応部115及び低温反応部から第1連結部112を経て断熱容器120へ伝導する熱量を抑えるとともに、高温反応部115からの伝熱により低温反応部113の温度が必要以上に上昇することを防いで、低温反応部113の温度を適正に維持することができる。
【0063】
〔反応装置の収納例〕
図9は電子機器100の筐体(機器筐体)190への反応装置110の収納例を示す斜視図である。
図9において、電子機器100はノート型パーソナルコンピュータであり、筐体190は操作部193が設けられた操作部筐体191及び表示部194が設けられた表示部筐体192を備える。本実施形態においては、燃料電池装置130の燃料容器102及び反応装置110が操作部筐体191の前方部分に内蔵されている。また、反応装置110から操作部筐体191の背面にかけて、導波路180Aが設けられている。
【0064】
図10は図9のX−X矢視断面図である。図10に示すように、導波路180Aは両端が開口した筒状であり、その軸が輻射放熱膜113aの法線方向に沿うように配置される。図9に示す導波路180Aは、角柱型であるが、円筒型でもよく、また、断面形状は矩形や円形以外のものであってもよい。なお、図9、図10において、輻射放熱膜113aの法線方向は前後方向であり、導波路180Aは両端の開口部180a,180bを操作部筐体191の前方及び後方に向けて配置される。前方の開口部(輻射導入部)180aは断熱容器120の輻射透過窓123と対向配置される。後方の開口部(輻射放出部)180bは操作部筐体191の背面より筐体190の外部に通じている。本実施形態では、導波路180Aの後方の開口部180bは、電子機器100の筐体の外周面に沿って配置されている。
【0065】
導波路180Aの内面には、反射膜182が設けられている。反射膜182の材料には、輻射防止膜111aや反射膜121aと同様に、Au,Al,Ag,Cu,Rh等を用いることができる。反射膜182を設けることで、輻射が反射膜182で反射されながら導波路180A内を伝播し、筐体190の外部に放出される。
【0066】
なお、反射膜182の面粗さは、輻射放熱膜113aより放射される輻射の波長よりも小さいことが好ましい。反射膜182の面粗さが輻射放熱膜113aより放射される輻射の波長よりも小さければ、輻射が反射膜182で乱反射されず、筐体190の外部に放出される。ここで、本明細書において、面粗さとは、面粗度のうち中心線平均あらさRaのことである。輻射の波長をλとすると、Ra<λを満たすことがより好ましく、Ra<λ/10を満たすことがより好ましい。
【0067】
本実施形態によれば、反応装置本体111の輻射放熱膜113aより放射された輻射は、輻射透過窓123を透過し、断熱容器120の外部に配置された導波路180A内に前方の開口部180aを介して放出される。導波路180A内に放出された輻射は、反射膜182で反射されながら導波路180A内を伝播し、後方の開口部180bより筐体190の外部に放出される。このため、輻射放熱膜113aより放射された輻射によって電子機器100の筐体190内の温度を上昇することが抑制される。
また、後方の開口部180bは後方向きに設けられているので、放出された輻射が電子機器100を使用中のユーザに向けて輻射されることを抑制できる。
なお、導波路180Aの後方の開口部180bは、必ずしも電子機器100の最外面に配置する必要はなく、最外面から窪んだ位置や突出した位置に設けてもよく、この場合も、輻射放熱膜113aより放射された輻射によって、電子機器100の筐体190内の温度を上昇することが抑制される。
【0068】
以下、本実施形態の変形例について説明する。なお、本実施形態と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
<変形例1>
図11は本実施形態の第1の変形例に係る導波路180Bを示す断面図である。図11に示すように、導波路180Bの断熱容器120側の端部に、放物面形状の反射部183が設けられている。反射部183は、その放物面の焦点が輻射放熱膜113a上の点となり、かつ、輻射放熱膜113aの法線方向に平行な導波路180Bの軸を対称軸とするように配置されている。
このため、輻射放熱膜113aのうち焦点近傍から放射される輻射は、反射部183で輻射放熱膜113aの法線方向に反射する。これにより、導波路180B内を伝播する輻射の指向性を高めることができる。
【0069】
<変形例2>
図12は電子機器100の筐体190への反応装置110の第2の変形例を示す斜視図である。本変形例においては、燃料電池装置130の燃料容器102及び反応装置110が操作部筐体191の右端部分に内蔵されており、反応装置110が前方、燃料容器102が後方に配置されている。
【0070】
図13は図12のXIII−XIII矢視断面図である。反応装置110は輻射放熱膜113aの法線方向が左右方向となり、輻射透過窓123を左側に向けて配置されている。輻射透過窓123は導波路180Cと対向配置されている。
導波路180Cは図12、図13に示すように、第1の導波路部184と、接続部185と、第2の導波路部186とを備える。
第1の導波路部184は、左右方向に設けられており、一方の開口部(輻射導入部)184aが断熱容器120の輻射透過窓123と対向配置される。他方の開口部は接続部185により第2の導波路部186と接続されている。
【0071】
第2の導波路部186は第1の導波路部184と交差するように前後方向に設けられている。第2の導波路部186の一方の開口部は接続部185により第1の導波路部184と接続されており、他方の開口部(輻射放出部)186bは操作部筐体191の背面より筐体190の外部に通じている。
【0072】
接続部185は第1の導波路部184と第2の導波路部186とを接続する。第1の導波路部184、第2の導波路部186及び接続部185の内壁面は反射膜182により覆われている。
また、接続部185には、反射鏡185aが設けられている。反射鏡185aは、その法線方向が第1の導波路部184の方向と第2の導波路部186の方向とがなす角の二等分線の方向と一致するように配置されている。反射鏡185aは、輻射放熱膜113aから放射され、輻射透過窓123を透過し、第1の導波路部184を通過した輻射を反射する。反射された輻射は、第2の導波路部186を通過し、後方の開口より筐体190の外部に放出される。
このため、燃料容器102及び反応装置110を操作部筐体191の右端部分に内蔵した場合でも、輻射放熱膜113aより放射されたが電子機器100の筐体190の後方より放出されるので、この輻射によって電子機器100の筐体190内の温度を上昇することが抑制される。
【0073】
<変形例3>
図14は本実施形態の第3の変形例に係る導波路180Dを示す断面図である。本変形例においては、接続部185に反射鏡185aが設けられる代わりに、接続部185が反射面185b,185cを備える。反射面185b,185cは、その法線方向が、第1の導波路部184の方向と第2の導波路部186の方向とがなす角の二等分線の方向と一致するように設けられている。この場合、輻射放熱膜113aから放射され、輻射透過窓123を透過し、第1の導波路部184の右方の開口部(輻射導入部)184aから入射した輻射は、第1の導波路部184の反射面182で反射されながら第1の導波路部184内を伝播し、反射面185b,185cで反射し、第2の導波路部186の反射面182で反射されながら第2の導波路部186内を伝播し、第2の導波路部186の後方の開口部(輻射放出部)186bより筐体190の外部に放出される。
このため、第2の変形例と同様、輻射放熱膜113aより放射された輻射が電子機器100の筐体190の後方より放出されるので、この輻射によって電子機器100の筐体190内の温度を上昇することが抑制される。
【0074】
<変形例4>
図15は本実施形態の第4の変形例に係る導波路180Eを示す断面図である。本変形例においては、導波路180Eは、第1の導波路部184、接続部185、第2の導波路部186に加えて、さらに接続部187及び第3の導波路部188を備える。
第3の導波路部188は、第2の導波路部186と交差するように左右方向に設けられている。第3の導波路部188の一方の開口は接続部187により第2の導波路部186と接続されており、他方の開口(輻射放出部)は操作部筐体191の左側面より筐体190の外部に通じている。
接続部187は第2の導波路部186と第3の導波路部188とを接続する。第1の導波路部184、第2の導波路部186、第3の導波路部188及び接続部185,187の内壁面は反射膜182により覆われている。
【0075】
また、接続部187には、接続部185と同様に、反射面187b,187cを備える。反射面187b,187cは、その法線方向が、第2の導波路部186の方向と第3の導波路部188の方向とがなす角の二等分線の方向と一致するように設けられている。この場合、輻射放熱膜113aから放射され、輻射透過窓123を透過し、第1の導波路部184の右方の開口部184a(輻射導入部)から入射した輻射は、第1の導波路部184、接続部185、第2の導波路部186、接続部187、第3の導波路部188内を各反射面182、185b、185c、186、187b、187c、182で反射されながら伝播し、第3の導波路部188の左方の開口部(輻射放出部)186bより筐体190の外部に放出される。
このため、輻射放熱膜113aより放射された輻射が電子機器100の筐体190の左方より放出されるので、この輻射によって電子機器100の筐体190内の温度を上昇することが抑制される。
なお、第1の変形例と同様に、接続部185,187に反射鏡を設けてもよい。
【0076】
<変形例5>
図16は本実施形態の第5の変形例に係る導波路180Fを示す断面図である。本変形例においては、導波路180Fは、第1の導波路部184、接続部185及び第2の導波路部186からなるが、接続部185の形状が異なる。接続部185は円弧状に形成されており、断面円弧状の反射部185d,185eが設けられている。
反射部185d,185eは曲率中心Oを同一にし、反射膜185dの曲率半径R1は反射膜185eの曲率半径R2よりも大きい。
【0077】
ここで、第1の導波路部184の方向と第2の導波路部186の方向とがなす角の1/2倍をθとすると、R2≦R1sinθが成立する。このような場合には、反射部185dのうち、輻射放熱膜113aをその法線方向に投影した部分において、輻射の入射角θ’が常にθよりも大きくなる。この場合、輻射放熱膜113aから放射され、輻射透過窓123を透過し、第1の導波路部184の右方の開口部(輻射導入部)184aから入射した輻射は、第1の導波路部184の反射面182で反射されながら第1の導波路部184内を伝播し、反射部185d,185eの間で反射されながら伝播し、第2の導波路部186の反射面182で反射されながら第2の導波路部186内を伝播し、第2の導波路部186の後方の開口部(輻射放出部)186bより筐体190の外部に放出される。
このため、輻射放熱膜113aより放射された輻射が電子機器100の筐体190の後方より放出されるので、この輻射によって電子機器100の筐体190内の温度を上昇することが抑制される。
【0078】
<変形例6>
図17は第6の変形例に係る電子機器100Aの図3に対応する模式断面図である。本変形例においては、導波路180Aの他方の開口部(輻射放出部)180bの部分に、第2の輻射透過窓(第2の輻射透過領域)189が設けられている。第2の輻射透過窓189は輻射透過窓123と同様の材料からなる。本変形例では、他方の開口部180b及び第2の輻射透過窓189が、電子機器100Aの筐体190の外周面に沿って配置されている。この場合、輻射放熱膜113aから放射され、輻射透過窓123を透過し、導波路180の一方の開口部(輻射導入部)180aから入射した輻射は、導波路180の反射面182で反射されながら導波路180内を伝播し、導波路180の他方の開口部180bより第2の輻射透過窓189,189を介して筐体190の外部に放出される。
このため、第1実施形態と同様、輻射放熱膜113aより放射された輻射が電子機器100Aの筐体190の後方より放出されるので、この輻射によって電子機器100Aの筐体190内の温度を上昇することが抑制される。また、第2の輻射透過窓189によって、電子機器100Aの筐体190の外部から導波路180A内に、埃塵等が入り込み、輻射透過窓123の表面に付着して汚染されることを防止することができる。なお、他方の開口部180bは必ずしも電子機器100Aの最外面に配置する必要はなく、最外面から窪んだ位置や突出した位置に設けてもよい。
【0079】
なお、上記実施形態及び各変形例においては、中温反応部315及び高温反応部317の両方に輻射放熱膜315a,317aを設けたが、いずれか一方のみでもよい。それに合わせて、対向する輻射透過窓325,327についても、いずれか一方のみでもよい。
また、低温反応部113以外にも、第1連結部112、第2連結部114、高温反応部115やアノード出力電極146、カソード出力電極147等に輻射放熱膜を設けるとともに、断熱容器120の対応する場所に輻射透過窓をそれぞれ設けてもよい。
【0080】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図18は本発明の第2実施形態に係る電子機器300を示すブロック図である。なお、第1実施形態と同様の構成については、下2桁に同符号を付して説明を割愛する。
【0081】
本実施形態においては、反応装置310が、気化器304、改質器305、第1の熱交換器307、第2の熱交換器308、触媒燃焼器309、燃料電池セルスタック340等から概略構成される。
気化器304と第1の熱交換器307とは一体に設けられており、改質器305と第2の熱交換器308とは一体に設けられており、燃料電池セルスタック340と触媒燃焼器309とは一体に設けられている。
【0082】
燃料電池セルスタック340は、図20に示すように、複数の燃料電池セル340A,340B,340C,340Dを積層してなる。燃料電池セル340A,340B,340C,340Dは固体酸化物型であり、一酸化炭素除去器は用いられない。なお、図18では単一の燃料電池セル340Aのみを示す。
【0083】
以下、単一の燃料電池セル340A及び触媒燃焼器309で生じる反応について説明する。
燃料電池セル340Aは、電解質341と、電解質341の両面に形成された燃料極342(アノード)及び酸素極343(カソード)と、燃料極342に改質ガスを供給する燃料供給流路344aが設けられた燃料極セパレータ344と、酸素極343に酸素を供給する酸素供給流路345aが設けられた酸素極セパレータ345と、が積層されている。
【0084】
電解質341は酸素イオンを透過するが、酸素分子、水素分子、一酸化炭素、二酸化炭素、電子を通さない性質を有する。
燃料極342には燃料供給流路344aを介して改質ガスが送られる。燃料極342では改質ガス中の水素、一酸化炭素及び電解質341を通過した酸素イオンによる次の電気化学反応式(6)、(7)に示す反応が起こる。
H2+O2-→H2O+2e- …(6)
CO+O2-→CO2+2e- …(7)
生成した電子はアノード出力電極346に供給される。未反応の改質ガス(オフガス)は触媒燃焼器309に供給される。
【0085】
酸素極343には酸素供給流路345aを介して、第1の熱交換器307及び第2の熱交換器308により加熱された酸素(空気)が供給される。酸素極343では、酸素と、カソード出力電極347より供給される電子とにより、次の電気化学反応式(8)に示す反応が起こる。
1/2O2+2e-→O2- …(8)
生成した酸素イオンは電解質341を通過して燃料極342に供給される。未反応の酸素(空気)は触媒燃焼器309に供給される。
【0086】
触媒燃焼器309では、燃料供給流路344aを通過したオフガスと、酸素供給流路345aを通過した酸素(空気)とが混合され、オフガス中の水素及び一酸化炭素が燃焼される。燃焼熱は燃料電池セルスタック340を加熱するのに用いられる。
触媒燃焼器309の排ガス(水、酸素及び二酸化炭素の混合気体)は第2の熱交換器308及び第1の熱交換器307において熱を放出した後に、排出される。
【0087】
本実施形態においては、燃料電池セルスタック340及び触媒燃焼器309が一体化された高温反応部317は、電気ヒータ兼温度センサ357により約800〜1000℃に保たれる。
【0088】
次に、反応装置310の構造について説明する。なお、第2実施形態と同様の構成については、下2桁に同符号を付して説明を割愛する。
図19は反応装置310を示す斜視図であり、図20は図19のXX−XX矢視断面図であり、図21は図19のXXI矢視図である。反応装置310は、反応装置本体311と、反応装置本体311を収容する断熱容器(第1の容器)320とからなる。なお、図19、図21では、導波路380A,380Bの図示を省略している。また、図20では、カソード出力電極347の図示を省略している。
【0089】
反応装置本体311は、高温反応部317と、中温反応部315と、低温反応部313と、第1連結部312と、第2連結部314と、第3連結部316とからなる。
高温反応部317には、燃料電池セル340A,340B,340C,340Dが積層された燃料電池セルスタック340及び触媒燃焼器309となる触媒燃焼流路309aが設けられる。
一体化された燃料電池セルスタック340及び触媒燃焼器309は気密容器(第2の容器)350に収容される。気密容器350は、気密容器350によって仕切られる空間の内外間で気体が流通しないようにするためのものであり、アノード出力電極346及びカソード出力電極347、リード線357c及び第3連結部316が貫通する部分が気密封止される。
【0090】
触媒燃焼器309は気密容器350の近傍に配置されるか、接触または接合されて、燃料電池セルスタック340及び触媒燃焼器309で生じた熱が気密容器350に伝導しやすい。そして、輻射放熱膜317aは、気密容器350における触媒燃焼器309に対応する部分に設けられている。これにより、燃料電池セルスタック340及び触媒燃焼器309で生じた熱は、気密容器350のうち特に輻射放熱膜317aに伝導されやすく、ひいては、燃料電池セルスタック340及び触媒燃焼器309から断熱容器320の外部へ輻射放熱される熱量を増大することができる。
【0091】
燃料電池セル340Aの酸素極セパレータと燃料電池セル340Bの燃料極セパレータ、燃料電池セル340Bの酸素極セパレータと燃料電池セル340Cの燃料極セパレータ、燃料電池セル340Cの酸素極セパレータと燃料電池セル340Dの燃料極セパレータはそれぞれ一体化された両面セパレータ348となっている。燃料電池セル340Aの燃料極セパレータ344にアノード出力電極346が接続され、燃料電池セル340Dの酸素極セパレータ345にカソード出力電極347が接続されている。アノード出力電極346及びカソード出力電極347は断熱容器320を貫通しており、燃料電池セルスタック340で生成された電力を外部に出力する。
【0092】
また、高温反応部317には、電気ヒータ兼温度センサ357が設けられており、高温反応部317は電気ヒータ兼温度センサ357により約600〜700℃に保たれる。電気ヒータ兼温度センサ357は、断熱容器320を貫通するリード線357cに接続されており、リード線357cを介して断熱容器320の外部より電力が供給される。電気ヒータ兼温度センサ357は、絶縁膜357a,357bにより他の部材と絶縁されている。
【0093】
中温反応部315には、改質器305となる改質流路305a及び第2の熱交換器308となる熱交換流路308aが設けられている。
また、中温反応部315には、電気ヒータ兼温度センサ355が設けられており、中温反応部315は電気ヒータ兼温度センサ355により約300〜400℃に保たれる。電気ヒータ兼温度センサ355は、断熱容器320を貫通するリード線355cに接続されており、リード線355cを介して断熱容器320の外部より電力が供給される。電気ヒータ兼温度センサ355は、絶縁膜355a,355bにより他の部材と絶縁されている。
【0094】
低温反応部313には、気化器304となる気化流路304a、一酸化炭素除去器306となる一酸化炭素除去流路306a、熱交換器307となる熱交換流路307aが設けられている。また、低温反応部313には、電気ヒータ兼温度センサ353が設けられており、低温反応部313は電気ヒータ兼温度センサ353により約110〜160℃に保たれる。電気ヒータ兼温度センサ353は、断熱容器320を貫通するリード線353cに接続されており、リード線353cを介して断熱容器320の外部より電力が供給される。電気ヒータ兼温度センサ353は、絶縁膜353a,353bにより他の部材と絶縁されている。
【0095】
第1連結部312は高温反応部317、中温反応部315や低温反応部313において反応する反応物や生成する生成物が流れる流路となる配管を含む。第1連結部312は一端で低温反応部313に接続され、他端側で断熱容器320を貫通するとともに、他端で送液ポンプ303、図示しないエアポンプ等に接続される。第1連結部312は、低温反応部313から断熱容器320の外部に反応物や生成物を送る流路となる第1配管(流出配管)312bと、断熱容器320の外部から低温反応部313に反応物や生成物を送る第2配管(流入配管)312cとを備える。なお、第1配管及び第2配管との間で熱交換が行われるようにしてもよい。
【0096】
第2連結部314は高温反応部317、中温反応部315や低温反応部313において反応する反応物や生成する生成物が流れる流路となる配管を含み、中温反応部315と低温反応部313との間を接続する。第2連結部314は、一端で中温反応部315に接続され、他端で低温反応部313に接続されるとともに、中温反応部315から低温反応部313に反応物や生成物を送る流路となる第3配管(流出配管)314bと、低温反応部313から中温反応部315に反応物や生成物を送る第4配管(流入配管)314cとを備える。なお、第3配管及び第4配管との間で熱交換が行われるようにしてもよい。
【0097】
第3連結部316は高温反応部317、中温反応部315や低温反応部313において反応する反応物や生成する生成物が流れる流路となる配管を含み、高温反応部317と中温反応部315との間を接続する。第3連結部316は、一端で高温反応部317に接続され、他端で中温反応部315に接続されるとともに、高温反応部317から中温反応部315に反応物や生成物を送る流路となる第5配管(流出配管)316bと、中温反応部317から高温反応部317に反応物や生成物を送る第6配管(流入配管)316cとを備える。なお、第5配管及び第6配管との間で熱交換が行われるようにしてもよい。
【0098】
本実施形態においては、図20に示すように、高温反応部317に輻射放熱膜317aが設けられており、断熱容器320の輻射放熱膜317aと対向する部分に輻射透過窓327が設けられている。輻射放熱膜317aからの輻射は輻射透過窓327を透過するため、高温反応部317で生じた熱量の一部が輻射により断熱容器320の外部へ放出される。したがって、高温反応部317から第3連結部316を経て中温反応部315へ伝導する熱量を抑えるとともに、高温反応部317の燃料電池セルスタック340及び触媒燃焼器309で生じる熱量により高温反応部317の温度が必要以上に上昇することを防いで、高温反応部317の温度を適正に維持することができる。
【0099】
同様に、本実施形態においては、図20に示すように、中温反応部315に輻射放熱膜315aが設けられており、断熱容器320の輻射放熱膜315aと対向する部分に輻射透過窓325が設けられている。輻射放熱膜315aからの輻射は輻射透過窓325を透過するため、中温反応部315で生じた熱量の一部が輻射により断熱容器320の外部へ放出される。したがって、中温反応部315から第2連結部314を経て低温反応部313へ伝導する熱量を抑えるとともに、第3連結部316から伝導する熱量により中温反応部315の温度が必要以上に上昇することを防いで、中温反応部315の温度を適正に維持することができる。
【0100】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の導波路380A,380Bが設けられている。導波路380A,380Bは、両端の開口部のうち一方の開口部(輻射導入部)380a,380aを断熱容器320の輻射透過窓325,327と対向配置させ、他方の開口部(輻射放出部)380b,380bを電子機器300の筐体(機器筐体)390の外部に通じさせるように設けられている。本実施形態では、他方の開口部380b,380bは、電子機器300の筐体の外周面に沿って配置されている。
【0101】
本実施形態によれば、反応装置本体311の輻射放熱膜315a,317aより放射された輻射は、輻射透過窓325,327を透過し、断熱容器320の外部に配置された導波路380A,380B内に一方の開口部380a,380aを介して放出される。導波路380A,380B内に放出された輻射は、反射膜382で反射されながら導波路380A,380B内を伝播し、後方の開口部380b,380bより筐体390の外部に放出される。このため、輻射放熱膜315a,317aより放射された輻射によって電子機器300の筐体390内の温度を上昇することが抑制される。
【0102】
<変形例7>
図22は第7の変形例に係る電子機器300Aの図20に対応する模式断面図である。本変形例においては、導波路380A,380Bの各他方の開口部(輻射放出部)380b,380bの部分に、第2の輻射透過窓(第2の輻射透過領域)389がそれぞれ設けられている。各第2の輻射透過窓389はそれぞれ輻射透過窓325,327と同様の材料からなる。本変形例では、他方の開口部380b及び第2の輻射透過窓389が、電子機器300Aの筐体390の外周面に沿ってそれぞれ配置されている。この場合、輻射放熱膜315a,317aからそれぞれ放射され、輻射透過窓325,327を透過し、導波路380A,380Bの一方の開口部(輻射導入部)380a,380aから入射した輻射は、導波路380A,380Bの各反射面382で反射されながら導波路380A,380B内をそれぞれ伝播し、導波路380A,380Bの他方の開口部380b,380bより第2の輻射透過窓389,389を介して筐体390の外部に放出される。
【0103】
このため、第2実施形態と同様、輻射放熱膜315a,317aよりそれぞれ放射された輻射が電子機器300Aの筐体390の後方より放出されるので、この輻射によって電子機器300Aの筐体390内の温度を上昇することが抑制される。また、第2の輻射透過窓389によって、電子機器300Aの筐体390の外部から導波路380A,380B内に、埃塵等が入り込み、輻射透過窓325,327の表面に付着して汚染されることを防止することができる。なお、他方の開口部380b,380bは必ずしも電子機器300Aの最外面に配置する必要はなく、最外面から窪んだ位置や突出した位置に設けてもよい。
【0104】
なお、上記実施形態及び各変形例においては、中温反応部315及び高温反応部317の両方に輻射放熱膜315a,317aを設けたが、いずれか一方のみでもよい。それに合わせて、対向する輻射透過窓325,327についても、いずれか一方のみでもよい。
また、中温反応部315や高温反応部317以外にも、第1連結部312、低温反応部313、第2連結部314、第3連結部316やアノード出力電極346、カソード出力電極347等に輻射放熱膜を設けるとともに、断熱容器320の対応する場所に輻射透過窓をそれぞれ設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子機器100を示すブロック図である。
【図2】反応装置110の斜視図である。
【図3】図2のIII−III切断線に対応する模式断面図である。
【図4】図3のIV矢視図である。
【図5】100℃〜1000℃における輻射強度と波長との関係を示す図である。
【図6】Au,Al,Ag,Cu,Rhの反射率の波長依存性を示すグラフである。
【図7】輻射透過窓23,25の材料の候補となる物質の透過率と光の波長との関係を示すグラフである。
【図8】輻射透過窓23,25の材料の候補となる物質の透過率と光の波長との関係を示すグラフである。
【図9】電子機器100の筐体190への反応装置100の収納例を示す斜視図である。
【図10】図9のX−X矢視断面図である。
【図11】本実施形態の第1の変形例に係る導波路180Bを示す断面図である。
【図12】電子機器100の筐体190への反応装置100の第2の変形例を示す斜視図である。
【図13】図12のXIII−XIII矢視断面図である。
【図14】本実施形態の第3の変形例に係る導波路180Dを示す断面図である。
【図15】本実施形態の第4の変形例に係る導波路180Eを示す断面図である。
【図16】本実施形態の第5の変形例に係る導波路180Fを示す断面図である。
【図17】本実施形態の第6の変形例に係る電子機器100Aの図3に対応する模式断面図である。
【図18】本発明の第2実施形態に係る電子機器300を示すブロック図である。
【図19】反応装置310を示す斜視図である。
【図20】図19のXX−XX矢視断面図である。
【図21】図19のXXI矢視図である。
【図22】本実施形態の第7の変形例に係る電子機器300Aの図20に対応する模式断面図である。
【符号の説明】
【0106】
100,100A,300,300A 電子機器
110,310 反応装置
111,311 反応装置本体
111a,311a 輻射防止膜
112,312 第1連結部
112b,114b,312b,314b,316b 流出配管
112c,114c,312c,314c,316c 流入配管
113,313 低温反応部
113a,315a,317a 輻射放熱膜
114,314 第2連結部
115,317 高温反応部
120,320 断熱容器(第1の容器)
121,321 筐体(容器筐体)
121a,321a 反射膜
123,315,327 輻射透過窓
130,330 燃料電池装置
140,340 燃料電池セル
146,346 アノード出力電極
147,347 カソード出力電極
190,390 筐体(機器筐体)
315 中温反応部
316 第3連結部
350 気密容器(第2の容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応物が反応する反応部を有する反応装置本体と、
前記反応装置本体を収容するとともに、前記反応装置本体からの輻射を透過する輻射透過領域を有する第1の容器と、
前記輻射透過領域を透過した輻射が伝播する導波路とを備えることを特徴とする反応装置。
【請求項2】
前記導波路は前記輻射を内部に導入する輻射導入部及び前記輻射を外部に放出する輻射放出部を有することを特徴とする請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
前記輻射導入部が前記輻射透過領域と対向して配置されることを特徴とする請求項2に記載の反応装置。
【請求項4】
前記導波路は筒状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に反応装置。
【請求項5】
前記導波路は内壁面に前記輻射を反射する反射膜が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項6】
前記反射膜として、Au,Al,Ag,Cu,Rhの少なくとも1つが用いられていることを特徴とする請求項5に記載の反応装置。
【請求項7】
前記導波路の内壁面の面粗さは前記輻射の波長よりも小さいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項8】
前記反応装置本体における前記輻射透過領域との対向面には、前記反応装置本体における前記輻射透過領域との対向面を除く部分の外壁面よりも赤外領域の輻射率が高い輻射放熱領域が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項9】
前記導波路の内壁面は、前記輻射放熱領域上の一点を焦点とし前記輻射放熱領域の法線方向を対称軸とする放物面を有することを特徴とする請求項8に記載の反応装置。
【請求項10】
前記導波路は前記輻射放熱領域の法線方向に設けられた第1の導波路部と、
前記輻射透過領域の法線方向と交差する方向に設けられた第2の導波路部と、
前記第1の導波路部及び前記第2の導波路部を接続する接続部とを含むことを特徴とする請求項8または9に記載の反応装置。
【請求項11】
前記接続部の内壁面のうち前記輻射透過領域を法線方向へ投影した領域の法線方向と前記輻射透過領域の法線方向とのなす角が、前記第1の導波路部と前記第2の導波路部とがなす角の1/2倍以上1倍未満であることを特徴とする請求項10に記載の反応装置。
【請求項12】
前記反応装置を内部に収容する機器筐体を更に備え、
前記輻射放出部が前記機器筐体の外周面に沿って配置されることを特徴とする請求項2〜11のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項13】
前記輻射放出部に前記輻射を透過する第2の輻射透過領域を有することを特徴とする請求項2〜12のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項14】
前記反応部は反応物の反応により電力を生成する燃料電池セルを含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の反応装置。
【請求項15】
反応物の反応により電力を生成する燃料電池セルを含む反応部を有する反応装置本体と、前記反応装置本体を収容するとともに、前記反応装置本体からの輻射を透過する輻射透過領域を有する第1の容器と、前記輻射透過領域を透過した輻射が伝播する導波路と、を有する反応装置と、
前記燃料電池セルの電力により駆動される電子機器本体と、
前記反応装置及び前記電子機器本体を内部に収容する機器筐体とを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項16】
前記導波路は前記輻射を外部に放出する輻射放出部を有し、
前記輻射放出部が前記機器筐体の外周面に沿って配置されることを特徴とする請求項15に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−274032(P2009−274032A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129181(P2008−129181)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】