説明

収差補正素子モジュール

【課題】低電圧であっても適正に球面収差を補正することが可能な収差補正素子モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】パッケージ2の二つの側面には光学ガラスによる入射窓3aおよび出射窓3bを配置する。この一対の入出射窓の間に、主光軸がその略中心を通るように偏光ビームスプリッター4を配置する。偏光ビームスプリッター4をはさんでそれぞれの側に1/4波長板5aおよび5bを配置し、圧電膜11a、11b等を基板25aおよび25b上に設けた収差補正ミラー6aおよび6bを配置する。入射窓3aからP偏光で入射したビーム40は、入射窓3aと出射窓3bを通る間に二個の収差補正ミラー6aおよび6bにより二回の収差補正を受ける。従って、一対の収差補正ミラーが同じ特性であれば、一個の収差補正ミラーに必要とされる変形量は従来の半分ですむので、制御電圧も従来の半分となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置、特に光学ディスク装置の光学ピックアップにおける収差補正素子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光学ディスク装置を用いた情報記録媒体として、コンパクトディスク(CD)やデジタルビデオディスク(DVD)などがある。さらに、今日ではマルチメディア技術の急速な発展に合わせて、従来よりも波長の短い青色レーザーを用いたブルーレイ光学ディスク(BD)が開発され、読み取り、もしくは記録情報の大容量化を達成している。近年の光学ディスク装置は一台でこれら複数の光学ディスクのいずれにも対応できる構成になっている。このことは一方で光学ディスク装置の高密度実装を要求する。すなわち、従来と同じ光学ディスク装置の中に複数の光学ディスクに対応する光学系を配置する必要がある。さらに、それとは別に、パーソナルコンピュータ、特にノート型パーソナルコンピュータ用の光学ディスク装置に対しては、小型、薄型の必要性が年々高くなっており、部品の小型化や高密度実装、光学系の縮小化が大きな課題となっている。
【0003】
ところで、BDは二層のディスク面からなり、第一層と第二層のデータを記録再生する際に生じる球面収差を補正することが必要となる。したがって、パーソナルコンピュータに用いられるBD光学ディスク装置の課題は小型の部品で球面収差補正を行うことであるといえる。この課題を解決することを目的として、従来、圧電素子の弾性変形を利用した薄膜ミラーを用いた球面収差補正素子が、例えば以下の特許文献に提案されている。
【特許文献1】特開2000−105306号公報
【特許文献2】特開平10−123438号公報
【特許文献3】特開平8−21964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、BD光学ディスク装置の規格においては、波長の短い青色レーザーが用いられていることと、開口数(NA)が0.85と従来に比べて大きいことから、光学ディスクにおける第一層と第二層のディスク厚の差によって発生する球面収差量は従来と比較して大きい。したがって、ミラーを変形させてその収差を補正しようとする場合、大きな曲率の変化が必要である。すなわち、圧電素子を用いたミラーの場合、大きな曲率の変化を与えようとする、一般に大きな電圧が必要である。ところが、圧電素子に加えうる電圧の最大値は主に圧電素子の膜厚に依存する絶縁性から来る制限がある。また、たとえば、光学ピックアップのような装置においては、システムで用いられる5V電源を流用することが望ましく、それ以上の電圧が必要な場合は新たに昇圧回路が必要でコストアップを招く恐れがある。以上のように、従来、5V程度の低電圧でBDにおける球面収差を補正できる圧電素子が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、低電圧であっても適正に球面収差を補正することが可能な収差補正素子モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の収差補正素子モジュールは、基板と、キャビティ部と、前記キャビティ部に対向して設けられた圧電体と、前記圧電体をはさむ一対の電極膜と、光学反射膜とからなる収差補正ミラーが二個で一対をなして設けられ、偏光ビームスプリッターの略中心を通って主光軸に垂直な副光軸に平行に、前記偏光ビームスプリ
ッターを挟んで前記一対の収差補正ミラーと一対の1/4波長板が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、光学設計通りの精度のよい曲面をもったミラーを作製することができるので、光学収差、特に球面収差を高い精度で低減させることができ、光ピックアップとして用いた場合には、記録再生特性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本願の第1の発明は、基板と、キャビティ部と、前記キャビティ部に対向して設けられた圧電体と、前記圧電体をはさむ一対の電極膜と、光学反射膜とからなる収差補正ミラーが二個で一対をなして設けられ、偏光ビームスプリッターの略中心を通って主光軸に垂直な副光軸に平行に、前記偏光ビームスプリッターを挟んで前記一対の収差補正ミラーと一対の1/4波長板が配置されていることを特徴とする収差補正素子モジュールである。
【0009】
二個の収差補正ミラーによって二回の収差補正が行われるので、従来の半分の電圧で収差補正を行うことができる。また、光路を偏向することがないので、既存の光路に挿入するだけでよいという簡便性がある。
【0010】
本願の第2の発明は、前記収差補正ミラーと、前記偏光ビームスプリッターと、前記1/4波長板とがパッケージによって封止されることを特徴とする。パッケージ化されていることにより、ある決まった球面収差量を補正することができる独立した部品として取扱うことができる。また、それによって素子の取扱い時の機械的損傷などがなくなり、部品装填が容易であるという効果がある。
【0011】
本願の第3の発明は、前記パッケージによる封止が不活性ガス、もしくは乾燥空気によってなされることを特徴とする。これにより、湿気や使用環境における気体が引き起す化学反応などによる圧電素子の劣化を防ぐことができ、部品としての寿命が長くなるという効果がある。
【0012】
本願の第4の発明は、前記パッケージによる封止が絶縁油を充填してなされることを特徴とする。これにより、部品の長寿命化に加えて、充填する絶縁油の屈折率に応じて補正できる収差量が大きくなり、さらに低電圧化ができるという効果がある。
【0013】
本願の第5の発明は、前記一対の収差補正ミラーのうち一方が球面、もしくは放物面であり、他方が4次以上の高次の非球面からなることを特徴とする。これにより、一方のミラーが球面収差を除去し、そのミラーがミラー自体の製造誤差等が理由で除去することができない4次以上の高次の項を他方のミラーが除去することができるという効果がある。
【0014】
本願の第6の発明は、前記主光軸に沿って前記収差補正素子モジュールが複数配列されていることを特徴とする。複数個配置することにより、その個数に応じてさらに低電圧化することができるという効果がある。
【0015】
本願の第7の発明は、前記一対の収差補正ミラーのそれぞれの基板と、前記一対の1/4波長板のそれぞれが接合され、前記キャビティ部が封止されていることを特徴とする。収差補正ミラーと1/4波長板をウェハーの状態で接合することができるので、工程が簡素になって、コストダウンを図ることができるという効果がある。
【0016】
本願の第8の発明は、前記封止が不活性ガス、もしくは乾燥空気によってなされることを特徴とする。この封止によると、コストが安い上に、湿気や使用環境における気体が引
き起す化学反応などによる圧電素子の劣化を防ぐことができ、部品としての寿命が長くなるという効果がある。
【0017】
本願の第9の発明は、前記封止が絶縁油を充填されてなされることを特徴とする。この封止によると、コストが安く、部品の長寿命であることに加えて、充填する絶縁油の屈折率に応じて補正できる収差量が大きくなり、さらに低電圧化ができるという効果がある。
【0018】
(実施の形態)
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0019】
まず、光学ディスク装置における光学ピックアップの基本的な構成例を図4に示す。まずP偏光で光源から発せられたビームは偏光ビームスプリッター31を透過し、本発明による収差補正素子モジュール1を透過し、1/4波長板39を通過して、立上げプリズム38で反射し、対物レンズ37で集光されて光学ディスク36でスポットを形成する。光学ディスク36で反射したビームは再び対物レンズ37を透過し、立上げプリズム38で反射して、1/4波長板39を透過してS偏光となり、収差補正素子モジュール1を透過し、偏光ビームスプリッター31において分岐して、受光素子33に達する。受光素子33に入射した光は電気信号に変換される。
【0020】
収差補正素子モジュール1における収差補正素子は、ドライバIC35から制御電圧を供給されることによりミラー面の曲率を変え、収差補正の動作を行う。ドライバIC35で得られた電気信号は演算装置34によって演算され、球面収差量を算出し、収差補正素子モジュール1に与える制御電圧の値がフィードバックされる。
【0021】
図5(a)および図5(b)はそれぞれ、図4における対物レンズ37、光学ディスク36の拡大図と、収差補正素子モジュール1内の圧電膜の動作の様子を示す。光学ディスク36は二層構成で、光学ディスク基板50上に第一面51、および第二面52の二面に情報を持つことができる。ビーム40は対物レンズ37で集光し、光学ディスク表面53で屈折して、第一面51と第二面52のいずれかの面に焦点を結ぶ構成となっている。
【0022】
図5(a)は第二面52を記録再生する場合を示しており、この場合はドライバIC35が持つ電源54はオフの状態で、圧電膜22は製造時の初期状態となっている。図5(b)は第一面51を記録再生する場合を示しており、この場合はドライバIC35が持つ電源54はオンの状態で、圧電膜22には圧電歪が発生して初期状態から変形している。この形態においては、圧電膜22は初期において相対的に大きな曲率をもち、電界を与えた場合に相対的に小さな曲率に変形する。
【0023】
次に、本発明に係る収差補正素子モジュールについて説明する。図1は本発明による収差補正素子モジュール1の断面を示した図である。図面左から右へ向かう方向をビーム40の方向、すなわち主光軸とする。ビーム40が通過するように、パッケージ2が配置され、パッケージ2の二つの側面には光学ガラスによる入射窓3aおよび出射窓3bを配置する。この一対の入出射窓の間に、主光軸がその略中心を通るように偏光ビームスプリッター4を配置する。偏光ビームスプリッター4をはさんでそれぞれの側に1/4波長板5aおよび5bを配置し、圧電膜11a、11b等を基板25aおよび25b上に設けた収差補正ミラー6aおよび6bを配置する。
【0024】
入射窓3aからP偏光で入射したビーム40は偏光ビームスプリッター4により反射され、図面上方の1/4波長板5aを通過し、収差補正ミラー6aで反射し、再び1/4波長板5aを透過してS偏光となり、偏光ビームスプリッター4を透過して、下方の1/4波長板5bを透過し、収差補正ミラー6bで反射し、再び1/4波長板5bを通過してP
偏光となり、偏光ビームスプリッター4で反射されて、出射窓3bを通して出射する。ビーム40は入射窓3aと出射窓3bを通る間に二個の収差補正ミラー6aおよび6bにより二回の収差補正を受ける。従って、一対の収差補正ミラーが同じ特性であれば、一個の収差補正ミラーに必要とされる変形量は従来の半分ですむので、制御電圧も従来の半分となる。
【0025】
図6(a)は収差補正ミラーを形成する基板を製膜時の配置において上から見た斜視図であり、図6(b)は基板を下側から見た斜視図である。収差補正ミラーは下から順に、基板25、下部電極膜21a、圧電膜22、上部電極膜21b、反射膜26から構成される。基板25の一部は円形のキャビティ29を有する。61、62は電極パッドである。
【0026】
図6(c)はA−B断面図であり、キャビティ29の内部を拡大して表している。キャビティ29の内部は基板25を除く反射膜26、下部電極膜21a、圧電膜22、上部電極膜21bだけから構成され、キャビティ29以外の部分と比較して相対的に膜厚が非常に薄い薄膜となる。そのため、熱や圧電歪などによる応力により変形しやすい状態になっている。特に、製膜時に発生する内部応力によってキャビティ29内部の膜は初期状態として、ある形状に変形している。
【0027】
基板25はSiによって形成され、厚みが278μmである。基板25の表層には、1μm厚の熱酸化Si23が形成されている。
【0028】
その基板25上に図面の下側から、Ir−Ti合金からなる厚み0.2μmの下部電極膜21a、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる厚み1μmの圧電膜22、Niからなる厚み0.6μmの上部電極膜21bがスパッタリングにより順に積層される。基板25の下部の熱酸化Si23と、Siからなる基板25をRIEにより一部除去して、内径1mmの円形キャビティ29を形成した。作製後、キャビティ29の内部は下に凸に変形し、中央部での曲率半径が約18mmであった。この収差補正素子に5Vの直流電圧を与えると、下方向へ変形し、曲率半径が60mmとなった。この収差補正ミラーを一対と、BK7を材質とする偏光ビームスプリッターおよび一対の1/4波長板を図1のように接着により配置し、BK7を材質とする一対の平面ガラスを入出射窓として、セラミックパッケージによりパッケージングし、収差補正素子モジュールを形成することにより2Vの制御電圧で、ブルーディスクにおける二層間の保護層厚みによる球面収差を補正することができた。
【0029】
図6(c)において、ビーム40は反射膜26によって反射される。一つの形態においては、光学系はこの初期状態において収差がなくなるように調整されている。次にこの状態から、光学ディスクの別の面で記録再生する場合は、光学ディスク保護層の厚みの差によって球面収差が発生するので、下部電極膜21aおよび上部電極膜21bに電圧を与えることにより圧電膜22に電界を与えると、圧電歪により曲率が減少するように変形し、球面収差が補正される。
【0030】
次に、本発明に係る収差補正素子モジュールの別の実施の形態を図2に示す。図2はこの実施の形態に係る収差補正素子モジュール1の断面を示した図である。図面左から右へ向かう方向をビーム40の方向、すなわち主光軸とする。ビーム40が通過するように、パッケージ2が配置され、パッケージ2の二つの側面には光学ガラスによる入射窓3aおよび出射窓3bを配置する。この一対の入出射窓の間に、主光軸がその略中心を通るように偏光ビームスプリッター4を配置する。この実施の形態においては、収差補正ミラー6a、6bは、基板25aおよび25b側に向かって球面形状をなし、ビーム40は基板の下側から入射する。1/4波長板5a、5bはそれぞれ基板25a、25bと共に接合され、キャビティはそれぞれ1/4波長板5a、5bによって封止される。封止は真空封止
であってもよいし、不活性ガスや乾燥空気によるパッケージでもよい。また、絶縁油などの誘電性液体15a、15bを充填させて封止してもよい。誘電性液体を充填する場合は、不慮の放電を防ぐとともに、誘電率によってビームの光学的距離の増大により、ミラーの曲率を小さくすることができるので、さらに低電圧化できるという効果がある。
【0031】
さらに、この収差補正素子モジュール1をビーム40の方向に複数個配列する図3のような構成にすれば、さらにそれぞれの収差補正素子モジュール1における制御電圧を低下させることができるので、高い電圧を使うことによる昇圧器等によるコストアップや、放電などによる故障を防ぐことができるだけでなく、圧電素子の寿命を長くすることができるのでモジュール全体の品質を高めることができる。
【0032】
一対の収差補正素子のうち第一の収差補正素子における収差補正素子ミラーの形状を、(式1)に示す球面となるよう設計する。
【0033】
z(r)= cr2/(1+(1−c22)0.5)……(式1)
他方、第二の収差補正素子における収差補正ミラーを式2に示す4次曲面となるよう設計する。
【0034】
z(r)= cr4……(式2)
なお、(式1),(式2)において、zはミラー中心位置からの高さ、cは曲率に関係する係数、rは動径方向位置を意味する。
【0035】
第一の収差補正ミラーは光学ディスクの厚みの差によって発生する球面収差を主に補正する機能をもつ。しかしながら、収差補正素子の製造誤差等により、4次以降の高次項の誤差が残存する。そのため、第一の収差補正素子が残す4次の収差を除去する機能を第二の収差補正素子に持たせている。
【0036】
図7(a)は収差補正素子モジュールに用いる収差補正ミラーの基板上からの斜視図であり、図7(b)は基板を下側から見た斜視図である。収差補正ミラーは下から順に、基板25、反射膜26、下部電極膜21a、圧電膜22、上部電極膜21bから構成される。基板25の一部は円形のキャビティ29を有する。61、62は電極パッドである。
【0037】
図7(c)はA−B断面図であり、キャビティ29の内部を拡大して表している。基板25はSiによって形成され、厚みが298μmである。基板25の表層には、1μm厚の熱酸化Si23が形成されている。
【0038】
その基板25上に図面の下側から、TiO2およびTnO2からなる誘電体多層膜による反射膜26が厚み0.8μmで蒸着により積層される。さらに、Ir−Ti合金からなる厚み0.1μmの下部電極膜21a、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる厚み2μmの圧電膜22、Tiからなる厚み0.1μmの上部電極膜21bがスパッタリングにより順に積層される。
【0039】
基板25の下部の熱酸化Si23、Siからなる基板25をRIEにより一部除去して内径1mmの円形キャビティ29を形成した。作製後、キャビティ内部は上に凸に変形し、中央部での曲率半径が約33mmであった。この収差補正素子に5Vの直流電圧を与えると、下方向へ変形し、曲率半径が80mmとなった。この収差補正ミラーをSiウェハー上で形成し、収差補正ミラーの基板であるSiウェハーの裏側とウェハー状の1/4波長板をスクリーン印刷により接着した後、ダイシングして収差補正ミラーと1/4波長板が接合された部材を形成した。(図示しない)その部材一対と、BK7を材質とする偏光ビームスプリッターを図2のように接着により配置し、BK7を材質とする一対の平面ガ
ラスを入出射窓として、セラミックパッケージによりパッケージングし、収差補正素子モジュールを形成することにより3.5Vの制御電圧で、ブルーディスクにおける二層間の保護層厚みによる球面収差を補正することができた。
【0040】
なお、上記の例は、好適な例を示したにすぎない。本発明を用いる限り、実用的ないかなる圧電膜、弾性体を用いてもダイナミックな球面収差を効果的に補正することができる。たとえば、圧電膜3としては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)をはじめ、水晶、LiNbO3、LiTaO3、KNbO3、ZnO、AlN、Pb(Zr,Ti)O3、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等を用いることができる。また、電極としてはNi、Ti、Cu、Cr、Au、Pt等を用いることができる。反射膜はSiO2、TiO2、TnO2などの酸化物を用いた誘電体多層膜の他、Au、Ag、Cuなど腐食性を考慮した貴金属、また、使うビーム波長の反射率に合わせたさまざまな選択が可能である。キャビティの形状は円形の例を示したが、軸対称な多角形であればいかなる形状でも本発明の効果が得られる。なお、本実施の形態では、光ピックアップについて説明したが、その他の光学装置などにも当然応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上述べたように、本発明によれば、非常に小型で、省電力で、応答性にすぐれた、精度の高い球面収差補正を行うことができるので、CD/DVDドライブレコーダ、デコーダ、CD/DVDドライブなどに用いられる光学ピックアップ、特に、青色レーザーを用いた光学ピックアップや収差の補正が必要な光学装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態に係る収差補正素子モジュールを示す図
【図2】本発明の実施の形態に係る収差補正素子モジュールを示す図
【図3】本発明の実施の形態に係る収差補正素子モジュールを示す図
【図4】本発明の実施の形態に係る収差補正素子モジュールを用いた光学系の図
【図5】本発明の実施の形態に係る収差補正素子モジュールを用いた光学系の部分拡大図
【図6】本発明の実施の形態における収差補正ミラーを示す図
【図7】本発明の実施の形態における収差補正ミラーを示す図
【符号の説明】
【0043】
1 収差補正素子モジュール
2 パッケージ
3a 入射窓
3b 出射窓
4 偏光ビームスプリッター
5a 1/4波長板
5b 1/4波長板
6a 収差補正ミラー
6b 収差補正ミラー
11a 圧電膜
11b 圧電膜
15a 誘電性液体
15b 誘電性液体
21a 下部電極膜
21b 上部電極膜
22 圧電膜
23 熱酸化Si
25 基板
25a 基板
25b 基板
26 反射膜
29 キャビティ
31 偏光ビームスプリッター
32 光源
33 受光素子
34 演算装置
35 ドライバIC
36 光学ディスク
37 対物レンズ
38 立上げプリズム
39 1/4波長板
40 ビーム
50 光学ディスク基板
51 第一面
52 第二面
53 光学ディスク表面
54 電源
61 電極パッド
62 電極パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、キャビティ部と、前記キャビティ部に対向して設けられた圧電体と、前記圧電体をはさむ一対の電極膜と、光学反射膜とからなる収差補正ミラーが二個で一対をなして設けられ、偏光ビームスプリッターの略中心を通って主光軸に垂直な副光軸に平行に、前記偏光ビームスプリッターを挟んで前記一対の収差補正ミラーと一対の1/4波長板が配置されていることを特徴とする収差補正素子モジュール。
【請求項2】
前記収差補正ミラーと、前記偏光ビームスプリッターと、前記1/4波長板とがパッケージによって封止されることを特徴とする請求項1記載の収差補正素子モジュール。
【請求項3】
前記パッケージによる封止が不活性ガス、もしくは乾燥空気によってなされることを特徴とする請求項2記載の収差補正素子モジュール。
【請求項4】
前記パッケージによる封止が絶縁油を充填してなされることを特徴とする請求項2記載の収差補正素子モジュール。
【請求項5】
前記一対の収差補正ミラーのうち一方が球面、もしくは放物面であり、他方が4次以上の高次の非球面からなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の収差補正素子モジュール。
【請求項6】
前記主光軸に沿って前記収差補正素子モジュールが複数配列されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の収差補正素子モジュール。
【請求項7】
前記一対の収差補正ミラーのそれぞれの基板と、前記一対の1/4波長板のそれぞれが接合され、前記キャビティ部が封止されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の収差補正素子モジュール。
【請求項8】
前記封止が不活性ガス、もしくは乾燥空気によってなされることを特徴とする請求項7記載の収差補正素子モジュール。
【請求項9】
前記封止が絶縁油を充填されてなされることを特徴とする請求項7記載の収差補正素子モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−11022(P2006−11022A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187719(P2004−187719)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】