説明

取鍋内壁のノロのハツリ装置

【課題】取鍋の内壁に付着残留したノロをブレーカを用いて削るに当たり、作業者を補助することが可能なハツリ装置を提供する。
【解決手段】ドラムがダイレクトドライブモータの正逆回転駆動によって正逆回転されるワイヤーロープがドラムに巻かれた巻上げ手段4と;巻上げ手段4のワイヤーロープの下端に装着され、錘によって垂直方向の力を付与されながらノロを削るハツリ手段5と;ハツリ手段5がワイヤーロープによって吊下げられている状態を維持するのに必要なダイレクトドライブモータのトルクを記憶するトルク記憶手段と;を備えていて、ダイレクトドライブモータにかかる荷重によるトルクが記憶したトルクより大きい場合には、ダイレクトドライブモータが逆転駆動してハツリ手段5を下降させ、ダイレクトドライブモータにかかる荷重によるトルクが記憶したトルクより小さい場合には、ダイレクトドライブモータが正転駆動してハツリ手段5を上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取鍋内壁のノロのハツリ装置に係り、より詳しくは、作業者が機械的補助を受けながらブレーカを用いて、取鍋の内壁に付着残留したノロを削り除去するのに好適な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、取鍋の内壁に付着残留したノロの除去は、一般に、作業者がブレーカを用いて削る方法によって行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
なお、作業者がブレーカを用いて取鍋内壁のノロを削るノロのハツリ作業は、昔から慣用的に行われていて特別なものではなく、したがって、これについて記載された資料は見つからなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、自動車の製造現場では、一定重量の手工具を容易にハンドリングするために、この手工具をスプリングバランサーで吊り下げて作業者を補助することが多い。そこで、スプリングバランサーで吊り下げたブレーカを作業者がハンドリングして取鍋内壁のノロのハツリ作業を試みると、ブレーカのハンドリングは容易になるが、ブレーカが取鍋の内壁を突っついた途端、その反発力がスプリングバランサーに作用してブレーカが上昇せしめられ、作業者がハツリ作業を行うことが不可能になる問題があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、作業者が機械的補助を受けるブレーカによって取鍋内壁のノロを削り除去することが可能な装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため本発明における取鍋内壁のノロのハツリ装置は、作業者が機械的補助を受けながらブレーカを用いて取鍋の内壁に付着残留したノロを削るための装置であって;ドラムがダイレクトドライブモータの正逆回転駆動によって正逆回転されかつ電磁ブレーキによって回転を停止され、ワイヤーロープがドラムに巻かれた巻上げ手段と;この巻上げ手段のワイヤーロープの下端に装着され、作業者が錘によって垂直方向の力を付与されながらノロを削るブレーカを備えたハツリ手段と;巻上げ手段に付設されてハツリ手段がワイヤーロープによって吊下げられている状態を維持するのに必要なダイレクトドライブモータのトルクを記憶するトルク記憶手段と;を備えていて、巻上げ手段は、ダイレクトドライブモータにかかる荷重によるトルクがトルク記憶手段に記憶したトルクより大きい場合には、ダイレクトドライブモータが逆転駆動してハツリ手段を下降させ、また、ダイレクトドライブモータにかかる荷重によるトルクがトルク記憶手段に記憶したトルクより小さい場合には、ダイレクトドライブモータが正転駆動して前記ハツリ手段を上昇させることを特徴とする取鍋内壁のノロのハツリ装置
【発明の効果】
【0007】
以上の説明から明らかなように本発明によれば、巻上げ手段が、ダイレクトドライブモータにかかる荷重によるトルクがトルク記憶手段に記憶したトルクより大きい場合には、ダイレクトドライブモータが逆転駆動してハツリ手段を下降させ、また、ダイレクトドライブモータにかかる荷重によるトルクがトルク記憶手段に記憶したトルクより小さい場合には、ダイレクトドライブモータが正転駆動して前記ハツリ手段を上昇させるため、作業者が機械的補助を受けながら取鍋内壁のノロを適確に削り除去することが可能になるなどの優れた実用的効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明を適用した取鍋内壁のノロのハツリ装置の一実施例を示す模式図である。
【図2】図1のA部拡大詳細図である。
【図3】図2の右側面図である。
【図4】図1における主要部(ハツリ手段5)の拡大詳細図であって、正面図(a)と、右側面図(b)を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0009】
以下、本発明を適用した取鍋内壁のノロのハツリ装置の一実施例について、図1から図4に基づき詳細に説明する。本取鍋内壁のノロのハツリ装置は、図1に示すように、上下方向へ指向して固定配設された支柱1と、この支柱1の上端にその一端付近が水平回動自在にして装着されたアーム2と、このアーム2にこれに沿って走行自在に装着された走行手段としてのトロリー3と、このトロリー3に搭載された巻上げ手段4と、巻上げ手段4に垂設されたハツリ手段5と、で構成してある。
【0010】
そして、アーム2は、水平に延びかつ、支柱1の上端に装着された上下方向へ指向する支持軸6に、その左端付近で水平回動自在に環装して装着してある。さらに、アーム2における支持軸6位置には、支持軸6の上端に嵌着された円板7と、円板7を挟持可能な電磁石とで成る電磁ブレーキ(図示せず)が装着してあって、電磁石が円板7を挟持することによりアーム2を支持軸6に固定することができるようになっている。また、アーム2の支持軸6側先端には錘8が装着してある。
【0011】
また、巻上げ手段4においては、図2および図3に示すように、トロリー3の下部に、コの字状のフレーム9の中央部が保持部材10を介して揺動自在に保持してあり、フレーム9の下端間には、水平方向へ連なったダイレクトドライブモータ11と、ドラム12と、電磁ブレーキ13とが装着してある。そして、ドラム12にはワイヤーロープ14が巻いてあり、ワイヤーロープ14の下端には、図1に示すように、流体シリンダ15を介してハツリ手段5が装着してある。また、ドラム12はダイレクトドライブモータ11の正逆回転駆動によって正逆回転するようになっている。
【0012】
また、巻上げ手段4には、ハツリ手段5がワイヤーロープ14によって吊下げられている状態を維持するのに必要なダイレクトドライブモータ11のトルクを記憶するトルク記憶手段(図示せず)が付設してあり、トルク記憶手段は、支柱1の中段部に装着された制御盤21に設けてある。そして、トルク記憶手段の起動をオンにすることにより、ダイレクトドライブモータ11にかかる荷重によるトルクが記憶したトルクより大きい場合には、ダイレクトドライブモータ11が逆転駆動してハツリ手段5が下降し、また、ダイレクトドライブモータ11にかかる荷重によるトルクが記憶したトルクより小さい場合には、ダイレクトドライブモータ11が正転駆動してハツリ手段5が上昇するようになっている。なお、図中22は取鍋である。
【0013】
また、ハツリ手段5は、図4に示すように、流体シリンダ15にその上部が支持軸16を介して上下回動自在に装着されかつ細長く延びる支持部材17と、支持部材17の上部外面に相対向して突設されて作業者が把持可能な2個のグリップ18・18と、支持部材17の上面部に装着された錘19と、支持部材17の上面下部にこれに沿うように延びて装着されたブレーカ20と、上側のグリップに隣接して設けられて複数の電磁ブレーキを作業者がオン・オフ操作可能な起動・停止スイッチ(図示せず)と、上側のグリップに隣接して設けられてトルク記憶手段を作業者がオン・オフ操作可能な起動・停止スイッチ(図示せず)と、下側のグリップに隣接して設けられて複数の電磁ブレーキを作業者がオン・オフ操作可能なイネーブルスイッチ(図示せず)と、で構成してある。
【0014】
次に、このように構成したノロのハツリ装置を用いて取鍋22の内壁のノロをハツリ除去する手順について述べる。巻上げ手段4によって吊下げられて所用の高さにあるハツリ手段5の2個のグリップ18・18を作業者が把持して、アーム2および巻上げ手段4よる補助を受けながら、まず、ハツリ手段5を水平面内で牽引して取鍋22の真上に移動させ、続いて、起動切換えスイッチをオンにしてトルク記憶手段を起動させたのち作業者がハツリ手段5を下方へ押す。すると、トルク記憶手段による制御の下に巻上げ手段4のダイレクトドライブモータ11が逆転駆動してハツリ手段5を下降させる。
【0015】
ハツリ手段5が取鍋22の内壁の所要位置まで下降した時点で作業者が起動切換えスイッチをオフにしてトルク記憶手段を止め、ハツリ手段5の下降を停止するとともにその高さを維持する。次いで、流体シリンダ15を伸縮作動させてハツリ手段5の位置を上下調節したのち、作業者がハツリ手段5の取鍋22によって下向きの力を受けながら、ブレーカ20によって取鍋22のノロのハツリ作業を行うことができる。
【0016】
なお、上記の実施例では、巻上げ手段4は、支柱1とアーム2とトロリー3とによって搬送するようにしてあるが、これに限定されるものではなく、例えば、クレーンなどのような慣用の搬送手段によって搬送するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0017】
4 巻上げ手段
5 ハツリ手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が機械的補助を受けながらブレーカを用いて取鍋の内壁に付着残留したノロを削るための装置であって;
ドラムがダイレクトドライブモータの正逆回転駆動によって正逆回転されかつ電磁ブレーキによって回転を停止され、ワイヤーロープが前記ドラムに巻かれた巻上げ手段と;
この巻上げ手段のワイヤーロープの下端に装着され、作業者が錘によって垂直方向の力を付与されながらノロを削るブレーカを備えたハツリ手段と;
前記巻上げ手段に付設されて前記ハツリ手段が前記ワイヤーロープによって吊下げられている状態を維持するのに必要な前記ダイレクトドライブモータのトルクを記憶するトルク記憶手段と;
を備えていて、
前記巻上げ手段は、前記ダイレクトドライブモータにかかる荷重によるトルクが前記トルク記憶手段に記憶したトルクより大きい場合には、前記ダイレクトドライブモータが逆転駆動して前記ハツリ手段を下降させ、また、前記ダイレクトドライブモータにかかる荷重によるトルクが前記トルク記憶手段に記憶したトルクより小さい場合には、前記ダイレクトドライブモータが正転駆動して前記ハツリ手段を上昇させることを特徴とする取鍋内壁のノロのハツリ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の取鍋内壁のノロのハツリ装置において、
作業者が前記巻上げ手段の搬送を補助する搬送補助手段によって移動可能に構成され、
この搬送補助手段は、
上下方向へ指向して固定配設された支柱と;
この支柱の上端にその一端付近が水平回動自在にして装着されかつ電磁ブレーキによって前記支柱に固定可能なアームと;
このアームにこれに沿って走行自在に装着された走行手段と;
を具備し;
これにより、作業者が前記アームによる補助を受けながら前記ハツリ手段を水平面内で牽引して前記取鍋の真上に搬送し、続いて、作業者が前記トルク記憶手段を起動させたのち前記ハツリ手段を下方へ押圧して下降させのち上方へ若干持ち上げてこのハツリ手段を前記取鍋内壁の所要位置に移動させ、その後、作業者が前記トルク記憶手段を停止させたのち前記ハツリ手段によってノロのハツリ作業を可能にしたことを特徴する取鍋内壁のノロのハツリ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の取鍋内壁のノロのハツリ装置において、
前記ハツリ手段は、
前記ワイヤーロープの下端に装着された支持部材と、
この支持部材の上部の外面に相対向して突設されて作業者が把持可能な2個のグリップと、
前記支持部材における前記2個のグリップの下方位置に装着された錘と、
前記支持部材における前記錘の下方位置に装着されたブレーカと、
少なくとも1個の前記グリップに隣接して設けられて作業者が複数の前記電磁ブレーキをオン・オフ操作可能な起動・停止スイッチと、
少なくとも1個の前記グリップに隣接して設けられて作業者が前記トルク記憶手段をオン・オフ操作可能な起動・停止スイッチと、
を含むこと特徴とする取鍋内壁のノロのハツリ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の取鍋内壁のノロのハツリ装置において、
前記起動・停止スイッチの代わりにイネーブルスイッチを設けたことを特徴とする取鍋内壁のノロのハツリ装置。
【請求項5】
請求項3に記載の取鍋内壁のノロのハツリ装置において、
前記2個のグリップのうち一方のグリップに、作業者が複数の前記電磁ブレーキおよび前記トルク記憶手段をオン・オフ操作可能な起動・停止スイッチを、また、他方のグリップに、作業者が複数の前記電磁ブレーキおよび前記トルク記憶手段をオン・オフ操作可能なイネーブルスイッチを、それぞれ隣接して設けて、作業者が前記起動・停止スイッチと前記イネーブルスイッチとを併せて操作可能に構成したことを特徴とする取鍋内壁のノロのハツリ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−207846(P2010−207846A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55812(P2009−55812)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、経済産業省、平成20年度戦略的基盤技術高度化支援事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【出願人】(509002408)株式会社 東海鋳造所 (3)
【出願人】(595108572)クロダイト工業株式会社 (7)
【出願人】(508273304)キングパーツ株式会社 (4)
【出願人】(503192745)株式会社 ニノミヤ (3)
【出願人】(502188044)株式会社富田鋳工所 (4)
【出願人】(000155366)株式会社木村鋳造所 (23)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【Fターム(参考)】