受信装置およびバッファ制御方法
【課題】HARQプロセスにおけるスループットの低下を招くことなく、軟判定データのバッファへの書き込みを少なくして消費電力の削減を図ること。
【解決手段】受信信号から抽出された符号列の軟判定データを記憶するバッファ(20)を有し、前記符号列から元データを復元できなかった場合に、バッファ(20)に記憶された軟判定データと再送された受信信号の符号列とに基づいて元データの再度の復号処理を行う受信装置において、通信チャネルの品質を表わす品質情報に基づいてバッファ(20)へ書き込む軟判定データの格納サイズを変更するバッファ制御部(30)を備えている。
【解決手段】受信信号から抽出された符号列の軟判定データを記憶するバッファ(20)を有し、前記符号列から元データを復元できなかった場合に、バッファ(20)に記憶された軟判定データと再送された受信信号の符号列とに基づいて元データの再度の復号処理を行う受信装置において、通信チャネルの品質を表わす品質情報に基づいてバッファ(20)へ書き込む軟判定データの格納サイズを変更するバッファ制御部(30)を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置に関し、例えば、HSPA+(High Speed Packet Access plus)およびLTE(Long Term Evolution)のダウンリンク物理層の通信処理に適用されるHARQ(Hybrid Automatic Repeat reQuest:自動再送要求)プロセスのバッファ制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、HSPA+におけるHS−DSCH(High Speed Downlink Shared Channel)のPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)送信、または、LTEにおけるPDSCH送信等おいて、誤り訂正を行うためにターボ符号によるFEC(Forward Error Control:前方誤り訂正)の技術と、HARQの技術が採用されている。
【0003】
HARQ技術においては、端末(UE:User Equipment)に、受信された符号列の軟判定データを一時的に記憶するバッファを設けることが要求される。このようなバッファはソフトバッファまたはIR(Incremental Redundancy)バッファと呼ばれる。IRバッファのサイズは、スループットの情報等とともに、UE capability(端末能力)の情報内に規定されており、また、このIRバッファのサイズは端末から基地局側へ通知される。
【0004】
PDSCH送信において、送信データはターボ符号化された後、データサイズを端末のIRバッファのサイズに合わせる処理(HSPA+の第1レートマッチ、LTEのレートマッチ)が行われ、その後、端末へ送信される。端末では、受信信号から抽出された符号列が軟判定され、この判定結果のLLR(対数尤度比)データがIRバッファに記憶される。そして、端末において、この符号列から元データの復号処理が行われる。復号処理の結果、符号誤りにより元データが復元できなかった場合には、HARQプロセスにより端末から基地局へ自動再送要求がなされる。この要求により基地局から冗長データが再送されると、端末でこの冗長データのLLRデータとIRバッファに記憶されているLLRデータとが合成されて、再度、元データの復号が試みられる。
【0005】
また、本発明に関連する従来技術として、非特許文献1には、ソフトバッファのサイズを規定する内容が示されている。端末はHARQ合成用にPDSCH送信データのLLRを適宜保持しなければならないが、ターボ符号化されたデータサイズは元データの3倍以上と非常に冗長で大きくなる。一方、端末にとってバッファサイズを増大することは回路規模と消費電力の増大を招くため容易ではない。そこで、非特許文献1には、幾つかの送信データに対してLLRデータを保存可能なソフトバッファのサイズについてカテゴリ分けを行い、このカテゴリに従って端末のソフトバッファのサイズを規定する内容が示されている。
【0006】
また、非特許文献2には、ターボ符号化後の送信データが端末のソフトバッファのサイズより大きくなった場合に次のような対処を行う技術が開示されている。すなわち、ターボ符号化後の送信データを複数のコードブロックに分割して送信する場合に、このコードブロックの数で端末のソフトバッファを分割した個々のサイズ(分割サイズ)を計算する。そして、各コードブロックの先頭から上記分割サイズのデータを抽出して、このデータを送信する一方、各コードブロックの残りの部分は送信しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】3GPP TS36.300 V8.2.0, "UE-Category"
【非特許文献2】3GPP 寄書 R1-080515
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来のHARQプロセスでは、通信品質、電波の伝搬環境の良し悪しに関わらず、受信された符号列の全てのLLRデータをIRバッファに格納するようになっている。したがって、通信品質または伝搬環境が良くて受信された符号列の誤り率が低くなると、IRバッファに格納されるLLRデータはほとんど使用されないため、LLRデータをIRバッファへ書き込む際の消費電力が無駄なものになる。一方、IRバッファに格納されるLLRデータのサイズを、通信品質、電波の伝搬環境の良し悪しに関わらずに、単純に小さくしたのでは、受信データの誤り率が高くなった場合に、HARQプロセスによる再送合成利得が低くなるという問題が生じる。
【0009】
この発明の目的は、HARQプロセスにおけるスループットの低下を招くことなく、軟判定データのバッファへの書き込みを少なくして消費電力の削減を図れる受信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る受信装置は、受信信号から抽出された符号列の軟判定データを記憶するバッファと、前記符号列から元データの復号処理を行うとともに、元データが復元できなかった場合に、前記バッファに記憶された前記軟判定データと再送された受信信号の符号列とに基づいて再度の元データの復号処理を行う復号部と、通信チャネルの品質を表わす品質情報に基づいて、前記バッファへ書き込む前記軟判定データの格納サイズを変更するバッファ制御部と、を備えている構成を採る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、元データの再度の復号処理に使用される軟判定データのバッファへの書き込みサイズを、通信チャネルの品質情報に基づいて適宜変更することができる。従って、符号誤りの発生が余り生じない場合には軟判定データの書き込みサイズを小さくして無駄な消費電力の削減を図るとともに、符号誤りが多く発生して多くの誤り訂正を要するような場合には軟判定データの書き込みサイズを元に戻して復号処理のスループットが低下することを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の無線受信装置の構成を示すブロック図
【図2】第1実施形態のIRバッファの周辺を詳細に示すブロック図
【図3】第1実施形態のバッファ制御部の動作を説明するフローチャート
【図4A】第1実施形態においてIRバッファの使用率が100%のときのLLRデータの格納状態を説明する図
【図4B】第1実施形態においてIRバッファの使用率が低く設定されたときのLLRデータの格納状態の一例を説明する図
【図5】デレートマッチ部によるサーキュラバッファへの書き込みと読み出しの順番を説明する図
【図6】サーキュラバッファの出力データとバッファイネーブルの出力パターンの一例を示す図
【図7】第2実施形態のIRバッファの周辺を詳細に示すブロック図
【図8A】書き込み制御部により行われるLLRデータのビットシフト処理を説明する図
【図8B】読み込み制御部により行われるLLRデータのビットシフト処理を説明する図
【図9】第2実施形態のバッファ制御部の動作を説明するフローチャート
【図10A】第2実施形態においてIRバッファの使用率が100%のときのLLRデータの格納状態を説明する図
【図10B】第2実施形態においてIRバッファの使用率が低く設定されたときのLLRデータの格納状態の一例を説明する図
【図11】第3実施形態のIRバッファの周辺を詳細に示すブロック図
【図12A】第3実施形態のバッファ制御部の動作を説明するフローチャートの第1部
【図12B】同、フローチャートの第2部
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態の無線通信装置の構成を示すブロック図である。この無線通信装置は、移動端末(UE:User Equipment)に搭載されて、HSPA+とLTEの無線接続方式により基地局との間で通信を行うものである。この無線通信装置は、受信部(受信装置)の構成として、無線周波数領域の信号処理を行う受信無線部(Rx−RF)13と、受信無線部13によりAD変換された信号に対して同期処理および逆フーリエ変換処理を行って符号列を抽出する同期・IFFT処理部14と、抽出された符号列に対してチャネル推定および軟判定を行ってLLR(対数尤度比)を求める信号分離・復調部15と、符号列のLLRデータ(軟判定データ)に対して基地局でレートマッチされた符号配列を元に戻すデレートマッチ部16と、デレートマッチ部16の処理のためにLLRデータを一時的に記憶するサーキュラバッファ17と、HARQプロセス用にLLRデータを一時的に記憶するIRバッファ20と、IRバッファ20の全体的な制御を行うIRバッファ制御部30と、HARQプロセスにより再送された符号列のLLRデータとIRバッファ20に記憶されているLLRデータとの合成処理を行うHARQ合成処理部18と、受信した符号列に対してターボ復号処理を行って元データを復元するターボ復号部19等を備えている。
【0015】
また、この無線通信装置は、送信部の構成として、送信データに誤り検出用のCRC(Cyclic Redundancy Check)コードを付加するCRC付加部41と、CRCコードの付加された送信データに対して誤り訂正を可能とするターボ符号を生成するターボ符号化部42と、ターボ符号化後の送信データに対してレートマッチを行うレートマッチ部43と、レートマッチ後の符号列をパラレルにしてサブキャリア変調する変調部44と、変調部44から出力される複数のサブキャリア信号をFFT(高速フーリエ変換)処理してCP(cyclic prefix)を付加するFFT部45と、FFT処理された信号を無線送信用に調整・増幅して出力する送信無線部(Tx−RF)46等を備えている。
【0016】
さらに、この無線通信装置には、電波の送受信を行うアンテナ素子11と、アンテナ素子11を受信用と送信用とに切り換えるアンテナ共用部12と、上位層の通信処理を行う制御ユニット50とが設けられている。上記ターボ復号部19により復号された受信データは制御ユニット50へ入力され、上記CRC付加部41へ送られる送信データは制御ユニット50から出力される。制御ユニット50は、受信データの誤り検出を行う。また、制御ユニット50は、受信動作の監視を行って通信チャネルの品質および通信方式に関する種々の情報を生成する。
【0017】
また、図1では省略しているが、この無線通信装置には、W−CDMA(広帯域符号分割多重アクセス)方式の無線部と変調復調部とが設けられている。そして、これらがOFDMA(直交周波数分割多重アクセス)方式の受信無線部13、同期・IFFT処理部14、信号分離・復調部15、送信無線部46、FFT部45および変調部44の構成と切り換え可能にされている。この切り換えにより、LTEの方式とHSPA+の方式とが切り換えられるようになっている。また、この無線通信装置には、複数のアンテナ素子11と、複数のアンテナから送信され重畳されて受信された複数の受信信号を分離する信号分離部が設けられ、MIMO(Multi Input Multi Output)の伝送方式にも切り換えられるようになっている。
【0018】
HARQ合成処理部18は、HARQプロセスによるデータ再送が行われている期間には、上述のように再送された符号列のLLRデータと保存されているLLRデータとの合成処理を行って、合成されたLLRデータをターボ復号部19とIRバッファ制御部30へ送る。一方、HARQプロセスによるデータ再送が行われてなく、初回のデータ送信が行われている期間には、デレートマッチ部16から送られてきた符号列のLLRデータをそのままターボ復号部19とIRバッファ制御部30へ送るように構成されている。
【0019】
[第1実施形態]
図2には、第1実施形態のIRバッファ20とIRバッファ制御部30の詳細を表わしたブロック図を示す。
【0020】
第1実施形態のIRバッファ制御部30は、書き込み制御部31、読み込み制御部32、IRバッファ格納有効信号生成部33、バッファ制御部34等から構成される。
【0021】
書き込み制御部31は、HARQ合成処理部18から供給されるLLRデータと、IRバッファ格納有効信号生成部33から出力されるバッファイネーブルの信号とを、それぞれ受ける。そして、バッファイネーブルが有効の期間に、HARQ合成処理部18から送られてきたLLRデータ(w.LLR)を、ライトアドレスw.addとともにIRバッファ20に出力することで、このLLRデータをIRバッファ20へ書き込む。一方、バッファイネーブルが無効の期間に、HARQ合成処理部18から送られてきたLLRデータは破棄する。ライトアドレスw.addは、1つのHARQプロセスの開始時にHARQプロセスごとの開始アドレスに初期化され、その後、LLRデータを書き込んでいくごとにカウントアップして更新されていく。
【0022】
読み込み制御部32は、IRバッファ格納有効信号生成部33から出力されるバッファイネーブルを受けて、HARQプロセスに同期してIRバッファ20からLLRデータ(r.LLR)を読み出す制御を行う。詳細には、1つのHARQプロセスの開始時に、リードアドレスr.addがHARQプロセスごとの開始アドレスに初期化される。そして、HARQプロセスで自動再送要求がなされてデータ再送が行われた場合に、この再送データの受信処理に同期させて読み込み制御を開始する。読み込み制御が開始されたら、バッファイネーブルが有効の期間にリードアドレスr.addをIRバッファ20へ出力してLLRデータを読み出し、これをHARQ合成処理部18へ出力する。バッファイネーブルが無効の期間にはLLRデータの読み込みを行わない。リードアドレスr.addは、LLRデータを読み出すごとにカウントアップされていく。
【0023】
バッファ制御部34は、制御ユニット50から供給される回線品質情報および制御情報に基づいてIRバッファ20に格納するLLRデータのサイズを決定し、この格納サイズ情報(LLR size)をIRバッファ格納有効信号生成部33に出力する。ここで、格納サイズを決定するパラメータである回線品質情報には、基地局へのフィードバック用に制御ユニット50により生成されたCQI(チャネル品質インジケータ)、PER(パケットエラーレート)、HARQプロセスによる再送回数が含まれる。また、上記制御情報には、方式情報として、現在選択されているRAT(Radio Access Technology:LTE−FDD(周波数分割複信)、LTE−TDD(時分割複信)あるいはHSPA+の何れが選択されているか)、無線伝送モード(Transmission Mode:MIMOであるか否か)の各情報が含まれる。また、この制御情報には、現在選択されているRATに対応するIRバッファの規定サイズ、並列的に実行されるHARQプロセスの数、送信データがブロック分割されて送信される際のコードブロック数の各情報が含まれる。
【0024】
図3には、第1実施形態のバッファ制御部34の動作を説明するフローチャートを示す。
【0025】
バッファ制御部34は、制御ユニット50からCQIとPERの情報を取得すると、直前の一定期間に取得したCQIとPERからこれらの平均値avg_CQI,avg_PERを求める(ステップ301)。次いで、これらと所定の閾値th_CQI,th_PERとをそれぞれ比較する(ステップ302)。その結果、両方の平均値avg_CQI,avg_PERがそれぞれ閾値th_CQI,th_PER以上であれば、内部変数である内部ループ回数を「0」にセットして(ステップ303)、IRバッファ20の使用率を100%に決定する(ステップ304)。なお、この実施形態では、CQIは値が小さいときに品質低下、値が大きいときに品質向上となるように定義されている。また、上記の内部ループ回数とは、IRバッファ20の使用率の削減中であるか否か、ならびに、削減中の期間に使用率を変更した回数を表わす内部変数である。
【0026】
一方、ステップ302の比較で、両方の平均値avg_CQI,avg_PERがそれぞれ閾値th_CQI,th_PERより小さいと判定されたら、現在のHARQプロセスの再送回数が1回以下であるか判定する(ステップ305)。そして、2回以上であれば、上記ステップ303,304の処理を行い、1回以下であれば、ステップ306へ進む。
【0027】
ステップ306では、内部ループ回数が「0」より大きいか判定し、「0」であれば、IRバッファ20の使用率を70%に決定し(ステップ307)、かつ、内部ループ回数を「1」にセットする(ステップ308)。
【0028】
一方、ステップ306で内部ループ回数が「0」より大きければ、先ず、内部ループ回数を「+1」加算し(ステップ309)、次いで、今回の送信データが再送のものか否かを判定する(ステップ310)。そして、再送データであれば、IRバッファの使用率を一段階上昇させる(ステップ311)。一方、初回の送信データであれば、IRバッファ20の使用率を一段階低下させる(ステップ312)。
【0029】
上記のように、ステップ304,307,311,312でIRバッファ20の使用率が決定されたら、次に、バッファ制御部34は、制御ユニット50から通知されているIRバッファ20の規定サイズに使用率を乗算して、この計算結果のサイズを、LLRデータを格納するIRバッファ20の全使用サイズとして決定する(ステップ313)。
【0030】
【表1】
【0031】
例えば、表1に示されるように、UEカテゴリがLTEの或るカテゴリでIRバッファ20の使用率が制限されていないときには、IRバッファの全使用サイズが上記UEカテゴリで規定されている“1237248bit”に決定される。また、UEカテゴリがHSPA+のカテゴリ20でIRバッファ20の使用率の制限がないときには、IRバッファの全使用サイズが上記UEカテゴリで規定されている“518400bit”に決定される。また、使用率が70%、50%、35%などに決定された場合には、上記の各UEカテゴリに応じた規定サイズにそれぞれ使用率を乗算した値と同程度のサイズが、IRバッファ20の全使用サイズとして決定される。
【0032】
ステップ313で全使用サイズを決定したら、続いて、バッファ制御部34は、この全使用サイズと、制御ユニット50から通知されているHARQプロセス数、コードブロック数および無線伝送モードの情報から、IRバッファ20に格納するLLRデータのデータ長(LLRの個数)を次のように決定する。すなわち、複数のHARQプロセスが並列的に実行されるため、上記のIRバッファ20の全使用サイズをこれら複数のHARQプロセスで分配しなければならない。そのため、バッファ制御部34は、各プロセスで格納されるLLRデータのトータルサイズの最大値が上記決定された全使用サイズとなるように、各HARQプロセスにおけるLLRデータの格納データ長(LLRの個数)を決定する(ステップ314)。なお、LTE−TDD方式の無線接続が選択されている場合には、複数のHARQプロセスでIRバッファ20の全使用サイズを均等に振り分けて、各HARQプロセスでIRバッファ20に格納するLLRデータのデータ長を決定しても良い。そして、このLLRデータのデータ長を上記の格納サイズ情報(LLR size)としてIRバッファ格納有効信号生成部33に通知する。
【0033】
バッファ制御部34では、上記のようなLLRデータの格納サイズの変更制御を、個々のHARQプロセスの開始タイミングに合わせて実行する。或いは、このような変更制御を、任意の周期、任意のタイミングで実行する。任意のタイミングで、LLRデータの格納サイズが変更された場合には、次のHAQRプロセスの開始時(再送データでなく初回データの受信時)から上記格納サイズの変更が適用されように制御される。
【0034】
図4Aは、IRバッファ20の使用率が100%のときのLLRデータの格納状態を説明する図、図4Bは、IRバッファ20の使用率が低く設定されたときのLLRデータの格納状態の一例を説明する図である。図4A,図4Bは、LTEにおけるLLRデータの格納状態を示すものであり、RVは再送時における送信コード範囲の先頭を表わすリダンダンシーバージョンを示している。
【0035】
図4Aに示すように、回線品質が悪くてIRバッファ20の使用率が100%のときには受信データの全てのLLRデータがIRバッファ20に格納される。一方、図4Bに示すように、回線品質が良好でIRバッファ20の使用率が低く設定されているときには受信データの一部のコード範囲22のLLRデータのみがIRバッファ20に格納されるように制御される。なお、この実施形態では、HARQプロセスによりデータ再送が行われてRV(Redundancy Version)に基づき異なるコード範囲のデータ再送が行われた場合には次のように処理される。すなわち、先にLLRデータが格納されているコード範囲22と重なる分のLLRデータのみが格納され、このコード範囲22と重ならない範囲のLLRデータはIRバッファ20に格納されない。
【0036】
図5には、デレートマッチ部16によるサーキュラバッファ17への書き込み順序と読み出し順序を説明する図を、図6には、サーキュラバッファ17の出力データとバッファイネーブルの出力パターンの一例を示す図を、それぞれ示す。
【0037】
受信された符号列は、デレートマッチ部16により符号配列が変更される。そのため、所定のコード範囲22のLLRデータのみをIRバッファ20へ格納する場合、受信された符号列のLLRデータが、デレートマッチ後の配列でコード範囲22に含まれているのか否かを区別する必要がある。この実施の形態では、このような区別を、サーキュラバッファ17の読出しアドレスに基づくIRバッファ格納有効信号生成部33の動作により実現している。
【0038】
すなわち、図5に示すように、デレートマッチ部16は、受信された符号列のLLRデータをサーキュラバッファ17にアドレス順に格納したのち、デレートマッチ用に規定された順序で読み出して後段へ送る。
【0039】
IRバッファ格納有効信号生成部33は、先ず、バッファ制御部34から通知されたLLRデータの格納サイズ情報に基づき、IRバッファ20に格納すべきLLRデータが書き込まれるサーキュラバッファ17のアドレス範囲17bを決定する。そして、サーキュラバッファ17のリードアドレスを入力して、このリードアドレスがアドレス範囲17bにあればバッファイネーブルを有効とし、このアドレス範囲17bから外れていればバッファイネーブルを無効とする。
【0040】
このような処理により、図6に示されるように、サーキュラバッファ17のリードアドレスに応じてバッファイネーブルの値が切り換えられる。そして、このようなバッファイネーブルの信号によって、書き込み制御部31のライト動作と読み込み制御部32のリード動作とが許可または禁止されて、アドレス範囲17bのLLRデータのみがIRバッファ20へ読み書きされるようになっている。
【0041】
上記のように構成された無線通信装置においては、次のような受信処理が行われる。
すなわち、基地局から送信された電波が受信されると、無線受信部13および同期・IFFT処理部14により受信された信号から符号列が抽出される。
続いて、信号分離・復調部15によりこの符号列が軟判定された後、この判定結果のLLRデータがIRバッファ制御部30の制御によってサイズが調整されてIRバッファ20に記憶される。
そして、ターボ復号部19により上記の符号列から元データの復号処理が行われ、その結果、符号誤りにより元データが復元できなかった場合には、制御ユニット50の制御によりHARQプロセスの自動再送要求が送信部を介して送信される。
さらに、この要求により基地局から冗長データが再送されると、無線受信部13および同期・IFFT処理部14により信号受信および冗長の符号列が抽出されて、信号分離・復調部15によりこの符号列が軟判定される。
続いて、IRバッファ制御部30の制御によりIRバッファに記憶されているLLRデータが読み出され、このLLRデータと冗長の符号列のLLRデータとがHARQ合成処理部18により合成される。
そして、この合成されたLLRデータがターボ復号部19に送られて、元データの再度の復号処理が行われる。この合成されたLLRデータも、再度の復号エラーが生じたときのために、IRバッファ制御部30の制御によってサイズが調整されてIRバッファ20に格納される。
このような受信処理を繰り返して、基地局から送信されたデータが受信されていく。
【0042】
この第1実施形態の無線通信装置によれば、上記の受信処理の途中、通信チャネルの品質が良好で受信された符合の誤りが少ないときには、IRバッファ20へ格納するLLRデータのサイズが小さくされてIRバッファ20へのアクセス量が少なくされる。したがって、IRバッファ20で消費される電力の削減を図ることができる。一方、通信チャネルの品質が悪くて受信された符号の誤りが多いときには、IRバッファ20へ格納するLLRデータのサイズが元のサイズに近づく方向に変更されるので、HARQプロセスによる再送合成利得の低下を回避することができる。
【0043】
[第2実施形態]
図7には、第2実施形態のIRバッファ20とIRバッファ制御部30の詳細を示すブロック図を示す。
【0044】
第2実施形態は、IRバッファ20の使用率を低減する場合に、第1実施形態のように受信した符号列のLLRデータの個数を削減するのではなく、個々のLLRデータのビット幅を小さくしてIRバッファ20に格納するようにしたものである。
【0045】
第2実施形態のIRバッファ制御部30は、書き込み制御部31Aと、読み込み制御部32Aと、IRバッファ格納有効信号生成部33と、バッファ制御部34A等から構成される。
【0046】
書き込み制御部31Aは、第1実施形態と同様に、HARQ合成処理部18から供給されるLLRデータと、IRバッファ格納有効信号生成部33から出力されるバッファイネーブルの信号とを、それぞれ受けて、バッファイネーブルが有効のときに供給されたLLRデータをIRバッファ20へ書き込んでいく。さらに、第2実施形態の書き込み制御部31Aは、バッファ制御部34Aから右ビットシフト量のデータ(right bit shift value)を受ける。そして、LLRデータをIRバッファ20へ書き込む際に、LLRデータに対して上記右ビットシフト量だけビットシフトを行って、個々のLLRデータのビット幅を縮小する。その上で、このLLRデータをIRバッファ20へ書き込んでいくように構成されている。
【0047】
図8Aには、書き込み制御部31Aにより行われるLLRデータのビットシフト処理を説明する図を示す。例えば、HARQ合成処理部18から供給された1つのLLRデータが8bitであり、右ビットシフト量が4bitであった場合、図8Aに示すように、書き込み制御部31Aは、上位4ビットを下位方向へビットシフトして、下位4ビットを切り捨てる。このビットシフトにより、個々のLLRデータのビット幅が半分にされ、且つ、個々のLLRデータの値が上位4桁の値に丸め(端数処理)られたのと同様の作用が得られる。なお、このビットシフトの際、切り捨てられるビットの最上位の値が「1」である場合に、残されるビットの最下位ビットに「1」を加算して、四捨五入のように端数処理の誤差が累積しないようにしても良い。
【0048】
読み込み制御部32Aは、第1実施形態と同様に、IRバッファ格納有効信号生成部33から出力されるバッファイネーブルの信号を受けて、バッファイネーブルが有効のときにHARQプロセスに同期してIRバッファ20からLLRデータを読み出して、HARQ合成処理部18へ出力する。さらに、第2実施形態の読み込み制御部32Aは、バッファ制御部34Aから左ビットシフト量のデータ(left bit shift value)を受ける。そして、LLRデータをIRバッファ20から読み出す際に、個々のLLRデータに対して上記左ビットシフト量だけビットシフトを行って、個々のLLRデータのビット幅を元に戻す。その上で、このLLRデータをHARQ合成処理部18へ送るように構成されている。
【0049】
図8Bには、読み込み制御部32Aにより行われるLLRデータのビットシフト処理を説明する図を示す。例えば、左ビットシフト量が4bitで、IRバッファ20に4bit幅のLLRデータが格納されている場合、シフト前のビット列を上位方向へビットシフトして、下位4ビットをゼロ値で詰める。このビットシフトにより、個々のLLRデータの値が上位4桁の値に丸められたまま、LLRデータのビット幅が元に戻される。従って、HARQ合成処理部18のLLRデータの合成処理で、通常の処理動作でLLRデータの合成を行うことができる。また、ビットシフトによるビット幅の縮小・拡大に起因したLLRデータ値の誤差は下位数桁分の切り捨て分に留まる。
【0050】
バッファ制御部34Aは、次に示すように、制御ユニット50から供給される制御情報に基づいてIRバッファ20に格納するLLRデータのビット幅を決定する。そして、このビット幅に対応する右ビットシフト量のデータ(right bit shift value)と左ビットシフト量のデータ(left bit shift value)とを書き込み制御部31Aと読み込み制御部32Aとにそれぞれ出力する。
【0051】
図9には、バッファ制御部34Aの動作を説明するフローチャートを示す。このフローチャートにおいて、IRバッファ20の全使用サイズを決定するまでの処理(ステップ301〜313)は、第1実施形態と同様である。
【0052】
ステップ313でIRバッファ20の全使用サイズを決定したら、次いで、バッファ制御部34Aは、制御ユニット50から通知されているHARQプロセス数、コードブロック数および無線伝送モードの情報から、IRバッファ20に格納するLLRデータのビット幅を次のように決定する。すなわち、複数のHARQプロセスが並列的に実行されるので、これら複数のHARQプロセスでそれぞれ格納されるLLRデータのトータルサイズの最大値が上記決定された全使用サイズとなるように、各HARQプロセスごとにIRバッファ20の全使用サイズを分配する。なお、LTE−TDD方式の無線接続が選択されている場合には、複数のHARQプロセスで均等にIRバッファ20の全使用サイズを振り分けるようにしてよい。そして、各HARQプロセスに分配された各バッファサイズに、送信されてくる1セットの符号列の始端から終端までがそれぞれ収まるように、LLRデータのビット幅を決定する(ステップ701)。
【0053】
図10Aは、IRバッファ20の使用率が100%のときのLLRデータの格納状態を説明する図、図10Bは、IRバッファ20の使用率が低く設定されたときのLLRデータの格納状態の一例を説明する図である。図10Aに示すように、回線品質が良好でなくIRバッファ20の使用率が100%のときには受信された符号列の全てのLLRデータがビット幅を削減することなくIRバッファ20に格納される。一方、図10Bに示すように、回線品質が良好でIRバッファ20の使用率が低く設定されているときには受信された符号列の全てのLLRデータが一律にビット幅を縮小されてIRバッファ20に格納される(図10A,Bにおいて網掛けによりLLRデータの格納部分を示している)。
【0054】
なお、第2実施形態ではバッファ制御部34AからIRバッファ格納有効信号生成部33へ出力される格納サイズ情報(LLR size)は、UEカテゴリの規定サイズに従った値となる。従って、IRバッファ格納有効信号生成部33は、デレートマッチ部16から送られてくるサーキュラバッファ17のリードアドレスの範囲に因らずにバッファイネーブルを有効とする。
【0055】
この第2実施形態の無線通信装置によれば、通信チャネルの品質が良好で受信された符合の誤りが少ないときには、各HARQプロセスでIRバッファ20に格納されるLLRデータのビットサイズが小さくされるので、IRバッファ20へのアクセス量が少なくなる。したがって、IRバッファ20で消費される電力の削減を図ることができる。一方、通信チャネルの品質が悪くて受信された符号の誤りが多いときには、各HARQプロセスでIRバッファ20へ格納されるLLRデータのビット幅が元に戻される方向に変化するので、HARQプロセスの再送合成利得の低下を回避できる。
【0056】
[第3実施形態]
図11には、第3実施形態のIRバッファとIRバッファ制御部との詳細を示すブロック図を示す。
【0057】
第3実施形態は、IRバッファ20を個別に電源制御が可能な複数のバッファブロック20A〜20Fから構成し、IRバッファ20の使用率を低減する際、バッファブロック20A〜20Fのうち使用しないブロックの電源をオフに切り換えて、消費電力をより低減するようにしたものである。
【0058】
バッファブロック20A〜20Fは、それぞれ異なるサイズ(一部同一サイズでも良い)に分割されており、ブロックの組み合わせを変化させることでブロックの合計サイズを多数のサイズの中から選択できるようになっている。後述する表2の“ブロックA”〜“ブロックF”の各欄に、バッファブロック20Aのサイズが“518400bit”、バッファブロック20Bのサイズが“259200bit”等、各バッファブロック20A〜20Fのサイズを併記している。
【0059】
第3実施形態のIRバッファ制御部30は、図11に示すように、書き込み制御部31Bと、読み込み制御部32Bと、IRバッファ格納有効信号生成部33と、バッファ制御部34Bを備えている。
【0060】
書き込み制御部31Bは、第2実施形態の書き込み制御部31Aの動作に加え、ライトアドレスとライトデータとをバッファブロック20A〜20Fのうち対応するブロックへ振り分けて出力するように構成されている。また、HARQプロセスで一連のLLRデータを順次書き込んでいく際に、バッファブロック20A〜20Fのうち電源オンされているブロックのアドレスがライトアドレスとして順に生成されていくように一連のアドレス生成を行う機能を有している。
【0061】
読み込み制御部32Bは、第2実施形態の読み込み制御部32Aの動作に加え、リードアドレスをバッファブロック20A〜20Fのうち対応するブロックへ振り分けて出力して、対応するブロックからリードデータを読み込むように構成されている。また、HARQプロセスで一連のLLRデータを読み出していく際に、バッファブロック20A〜20Fのうち電源オンされているブロックのアドレスがリードアドレスとして順に生成されていくように一連のアドレス生成を行う機能を有している。
【0062】
図11では省略しているが、上記の書き込み制御部31Bのアドレス生成機能と読み込み制御部32Bのアドレス生成機能を実現するために、例えば、バッファ制御部34Bからバッファブロック20A〜20Fの電源オン・オフの情報が書き込み制御部31Bと読み込み制御部32Bへ送られるようになっている。或いは、1つのHARQプロセスごとに、バッファ制御部34Bが自動生成に使用するアドレス範囲を適宜選択して、このアドレス範囲の情報を書き込み制御部31Bと読み込み制御部32Bとへ送って上記のアドレス生成が行われるようにすることもできる。
【0063】
バッファ制御部34Bは、制御ユニット50から供給される制御情報に基づいてIRバッファ20に格納するLLRデータのデータ長とビット幅とを決定して、このビット幅に対応する右ビットシフト量データと左ビットシフト量データとを書き込み制御部31Aと読み込み制御部32Aとにそれぞれ出力する。さらに、バッファブロック20A〜20Fのうち使用するブロックと非使用のブロックとを決定して、これらの電源オン・オフを切り換える信号“Power ON/OFF”を出力するように構成されている。次に、これらの動作の詳細を説明する。
【0064】
図12Aと図12Bには、第3実施形態のバッファ制御部34Bの動作を説明するフローチャートを示す。このフローチャートにおいて、ステップ301〜312の処理は第1実施形態のものと同様である。
【0065】
第3実施形態では、IRバッファ20の使用率の切り換えを80%以上の範囲では行われないようにするため、ステップ311または312で使用率の設定を段階的に変更したらステップ1001へ進む。そして、この時点で設定されているIRバッファ20の使用率が80%以上であるか判定する(ステップ1001)。その結果、80%より小さければ、そのままステップ1003へ進むが、80%以上であればIRバッファ20の使用率を100%に設定し、かつ、内部変数である内部ループ回数を「0」にセットする(ステップ1002)。そして、ステップ1003へ進む。
【0066】
ステップ304,307,311,312,1002でIRバッファ20の使用率が決定されてステップ1003へ進んだら、バッファ制御部34は、IRバッファの規定サイズに使用率を乗算して、この計算結果のサイズを、LLRデータを格納するIRバッファ20の全使用サイズとして決定する。さらに、この全使用サイズが確保されるようにバッファブロック20A〜20Fのうち電源オンにするブロックとオフにするブロックとを決定する(ステップ1003)。
【0067】
【表2】
【0068】
この表の“ブロックA〜ブロックF”の列に、各条件におけるバッファブロック20A〜20Fの電源オン・オフ(“1”がオン、“0”がオフ)の決定パターンをそれぞれ示す。例えば、UEカテゴリがLTEのカテゴリでIRバッファの使用率が70%に決定されていれば、ステップ1003において、3つのバッファブロック20A,20C,20Dを電源オンにするブロックに決定して、IRバッファ20の全使用サイズ“864000bit”が確保されるように制御される。また、UEカテゴリがHSPA+のカテゴリ20でIRバッファの使用率が35%に決定されていれば、ステップ1003において、バッファブロック20Cを電源オンにするブロックに決定して、IRバッファ20の全使用サイズ“172800bit”が確保されるように制御される。
【0069】
ステップ1003で電源オン・オフを切り換えるブロックを決定したら、バッファ制御部34は、この決定に従って電源オン・オフを切り換える信号を各バッファブロック20A〜20Fに出力する。
【0070】
続いて、バッファ制御部34は、ステップ1003で決定されたIRバッファ20の全使用サイズと、制御ユニット50から通知されているHARQプロセス数、コードブロック数および無線伝送モードの情報から、IRバッファ20に格納するLLRデータのデータ長(LLRの個数)と、個々のLLRデータのビット幅を、次のように決定する。すなわち、複数のHARQプロセスでIRバッファ20に格納されるLLRデータのトータルサイズの最大値が上記決定された全使用サイズとなり、且つ、各HARQプロセスにおけるLLRデータの削減の影響が偏らないように、上記LLRデータのデータ長(LLRの個数)とビット幅とを決定する(ステップ1004)。そして、この決定されたLLRデータのデータ長を格納サイズ情報(LLR size)としてIRバッファ格納有効信号生成部33に出力する。さらに、上記決定されたビット幅に対応させて書き込み制御部31Bへ右ビットシフト量データ(right bit shift value)と読み込み制御部32Bへ左ビットシフト量データ(left bit shift value)とを出力する。
【0071】
IRバッファ格納有効信号生成部33は、第1実施形態のものと同様に動作する。すなわち、上記格納サイズ情報と、サーキュラバッファ17のリードアドレスを入力して、このリードアドレスと上記の格納サイズ情報に基づき決定されるアドレス範囲17b(図5参照)とを比較して、この比較結果に基づきバッファイネーブルの有効と無効とを切り換える。
【0072】
この第3実施形態の無線通信装置によれば、HARQプロセスでIRバッファ20へ格納するLLRデータのデータ長またはビット幅を小さくして、IRバッファ20の全使用サイズを削減する際、バッファブロック20A〜20Fのうち使用されないブロックの電源がオフにされる。従って、LLRデータのサイズ削減によりIRバッファ20で消費される電力をより低減することができる。
【0073】
なお、上記第1〜第3実施形態では、通信チャネルの品質を表わす品質情報として、CQI、PER、および、HARQプロセスによる再送回数を適用した例を示しているが、品質情報として、無線信号のドップラーシフト周波数、または、無線信号の遅延スプレッドを含めるようにしてもよい。また、上記第1〜第3実施形態では、HSPA+とLTEの無線接続方式、MIMOとそれ以外の無線伝送モードとをそれぞれ切換え可能な構成を示しているが、無線接続方式と無線伝送モードは固定としてもよい。また、上記第1〜第3実施形態では、受信された符号列の軟判定データとしてLLRを適用した例を示しているが、符号列の尤度を表わすものであれば別の関数値を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る受信装置は、例えばHSPA+およびLTEの無線接続方式の通信端末に適用できる。
【符号の説明】
【0075】
16 デレートマッチ部
17 サーキュラバッファ
18 HARQ合成処理部
19 ターボ復号部
20 IRバッファ
30 IRバッファ制御部
31,31A,31B 書き込み制御部
32,32A,32B 読み込み制御部
33 IRバッファ格納有効信号生成部
34,34A,34B バッファ制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置に関し、例えば、HSPA+(High Speed Packet Access plus)およびLTE(Long Term Evolution)のダウンリンク物理層の通信処理に適用されるHARQ(Hybrid Automatic Repeat reQuest:自動再送要求)プロセスのバッファ制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、HSPA+におけるHS−DSCH(High Speed Downlink Shared Channel)のPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)送信、または、LTEにおけるPDSCH送信等おいて、誤り訂正を行うためにターボ符号によるFEC(Forward Error Control:前方誤り訂正)の技術と、HARQの技術が採用されている。
【0003】
HARQ技術においては、端末(UE:User Equipment)に、受信された符号列の軟判定データを一時的に記憶するバッファを設けることが要求される。このようなバッファはソフトバッファまたはIR(Incremental Redundancy)バッファと呼ばれる。IRバッファのサイズは、スループットの情報等とともに、UE capability(端末能力)の情報内に規定されており、また、このIRバッファのサイズは端末から基地局側へ通知される。
【0004】
PDSCH送信において、送信データはターボ符号化された後、データサイズを端末のIRバッファのサイズに合わせる処理(HSPA+の第1レートマッチ、LTEのレートマッチ)が行われ、その後、端末へ送信される。端末では、受信信号から抽出された符号列が軟判定され、この判定結果のLLR(対数尤度比)データがIRバッファに記憶される。そして、端末において、この符号列から元データの復号処理が行われる。復号処理の結果、符号誤りにより元データが復元できなかった場合には、HARQプロセスにより端末から基地局へ自動再送要求がなされる。この要求により基地局から冗長データが再送されると、端末でこの冗長データのLLRデータとIRバッファに記憶されているLLRデータとが合成されて、再度、元データの復号が試みられる。
【0005】
また、本発明に関連する従来技術として、非特許文献1には、ソフトバッファのサイズを規定する内容が示されている。端末はHARQ合成用にPDSCH送信データのLLRを適宜保持しなければならないが、ターボ符号化されたデータサイズは元データの3倍以上と非常に冗長で大きくなる。一方、端末にとってバッファサイズを増大することは回路規模と消費電力の増大を招くため容易ではない。そこで、非特許文献1には、幾つかの送信データに対してLLRデータを保存可能なソフトバッファのサイズについてカテゴリ分けを行い、このカテゴリに従って端末のソフトバッファのサイズを規定する内容が示されている。
【0006】
また、非特許文献2には、ターボ符号化後の送信データが端末のソフトバッファのサイズより大きくなった場合に次のような対処を行う技術が開示されている。すなわち、ターボ符号化後の送信データを複数のコードブロックに分割して送信する場合に、このコードブロックの数で端末のソフトバッファを分割した個々のサイズ(分割サイズ)を計算する。そして、各コードブロックの先頭から上記分割サイズのデータを抽出して、このデータを送信する一方、各コードブロックの残りの部分は送信しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】3GPP TS36.300 V8.2.0, "UE-Category"
【非特許文献2】3GPP 寄書 R1-080515
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来のHARQプロセスでは、通信品質、電波の伝搬環境の良し悪しに関わらず、受信された符号列の全てのLLRデータをIRバッファに格納するようになっている。したがって、通信品質または伝搬環境が良くて受信された符号列の誤り率が低くなると、IRバッファに格納されるLLRデータはほとんど使用されないため、LLRデータをIRバッファへ書き込む際の消費電力が無駄なものになる。一方、IRバッファに格納されるLLRデータのサイズを、通信品質、電波の伝搬環境の良し悪しに関わらずに、単純に小さくしたのでは、受信データの誤り率が高くなった場合に、HARQプロセスによる再送合成利得が低くなるという問題が生じる。
【0009】
この発明の目的は、HARQプロセスにおけるスループットの低下を招くことなく、軟判定データのバッファへの書き込みを少なくして消費電力の削減を図れる受信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る受信装置は、受信信号から抽出された符号列の軟判定データを記憶するバッファと、前記符号列から元データの復号処理を行うとともに、元データが復元できなかった場合に、前記バッファに記憶された前記軟判定データと再送された受信信号の符号列とに基づいて再度の元データの復号処理を行う復号部と、通信チャネルの品質を表わす品質情報に基づいて、前記バッファへ書き込む前記軟判定データの格納サイズを変更するバッファ制御部と、を備えている構成を採る。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、元データの再度の復号処理に使用される軟判定データのバッファへの書き込みサイズを、通信チャネルの品質情報に基づいて適宜変更することができる。従って、符号誤りの発生が余り生じない場合には軟判定データの書き込みサイズを小さくして無駄な消費電力の削減を図るとともに、符号誤りが多く発生して多くの誤り訂正を要するような場合には軟判定データの書き込みサイズを元に戻して復号処理のスループットが低下することを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の無線受信装置の構成を示すブロック図
【図2】第1実施形態のIRバッファの周辺を詳細に示すブロック図
【図3】第1実施形態のバッファ制御部の動作を説明するフローチャート
【図4A】第1実施形態においてIRバッファの使用率が100%のときのLLRデータの格納状態を説明する図
【図4B】第1実施形態においてIRバッファの使用率が低く設定されたときのLLRデータの格納状態の一例を説明する図
【図5】デレートマッチ部によるサーキュラバッファへの書き込みと読み出しの順番を説明する図
【図6】サーキュラバッファの出力データとバッファイネーブルの出力パターンの一例を示す図
【図7】第2実施形態のIRバッファの周辺を詳細に示すブロック図
【図8A】書き込み制御部により行われるLLRデータのビットシフト処理を説明する図
【図8B】読み込み制御部により行われるLLRデータのビットシフト処理を説明する図
【図9】第2実施形態のバッファ制御部の動作を説明するフローチャート
【図10A】第2実施形態においてIRバッファの使用率が100%のときのLLRデータの格納状態を説明する図
【図10B】第2実施形態においてIRバッファの使用率が低く設定されたときのLLRデータの格納状態の一例を説明する図
【図11】第3実施形態のIRバッファの周辺を詳細に示すブロック図
【図12A】第3実施形態のバッファ制御部の動作を説明するフローチャートの第1部
【図12B】同、フローチャートの第2部
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態の無線通信装置の構成を示すブロック図である。この無線通信装置は、移動端末(UE:User Equipment)に搭載されて、HSPA+とLTEの無線接続方式により基地局との間で通信を行うものである。この無線通信装置は、受信部(受信装置)の構成として、無線周波数領域の信号処理を行う受信無線部(Rx−RF)13と、受信無線部13によりAD変換された信号に対して同期処理および逆フーリエ変換処理を行って符号列を抽出する同期・IFFT処理部14と、抽出された符号列に対してチャネル推定および軟判定を行ってLLR(対数尤度比)を求める信号分離・復調部15と、符号列のLLRデータ(軟判定データ)に対して基地局でレートマッチされた符号配列を元に戻すデレートマッチ部16と、デレートマッチ部16の処理のためにLLRデータを一時的に記憶するサーキュラバッファ17と、HARQプロセス用にLLRデータを一時的に記憶するIRバッファ20と、IRバッファ20の全体的な制御を行うIRバッファ制御部30と、HARQプロセスにより再送された符号列のLLRデータとIRバッファ20に記憶されているLLRデータとの合成処理を行うHARQ合成処理部18と、受信した符号列に対してターボ復号処理を行って元データを復元するターボ復号部19等を備えている。
【0015】
また、この無線通信装置は、送信部の構成として、送信データに誤り検出用のCRC(Cyclic Redundancy Check)コードを付加するCRC付加部41と、CRCコードの付加された送信データに対して誤り訂正を可能とするターボ符号を生成するターボ符号化部42と、ターボ符号化後の送信データに対してレートマッチを行うレートマッチ部43と、レートマッチ後の符号列をパラレルにしてサブキャリア変調する変調部44と、変調部44から出力される複数のサブキャリア信号をFFT(高速フーリエ変換)処理してCP(cyclic prefix)を付加するFFT部45と、FFT処理された信号を無線送信用に調整・増幅して出力する送信無線部(Tx−RF)46等を備えている。
【0016】
さらに、この無線通信装置には、電波の送受信を行うアンテナ素子11と、アンテナ素子11を受信用と送信用とに切り換えるアンテナ共用部12と、上位層の通信処理を行う制御ユニット50とが設けられている。上記ターボ復号部19により復号された受信データは制御ユニット50へ入力され、上記CRC付加部41へ送られる送信データは制御ユニット50から出力される。制御ユニット50は、受信データの誤り検出を行う。また、制御ユニット50は、受信動作の監視を行って通信チャネルの品質および通信方式に関する種々の情報を生成する。
【0017】
また、図1では省略しているが、この無線通信装置には、W−CDMA(広帯域符号分割多重アクセス)方式の無線部と変調復調部とが設けられている。そして、これらがOFDMA(直交周波数分割多重アクセス)方式の受信無線部13、同期・IFFT処理部14、信号分離・復調部15、送信無線部46、FFT部45および変調部44の構成と切り換え可能にされている。この切り換えにより、LTEの方式とHSPA+の方式とが切り換えられるようになっている。また、この無線通信装置には、複数のアンテナ素子11と、複数のアンテナから送信され重畳されて受信された複数の受信信号を分離する信号分離部が設けられ、MIMO(Multi Input Multi Output)の伝送方式にも切り換えられるようになっている。
【0018】
HARQ合成処理部18は、HARQプロセスによるデータ再送が行われている期間には、上述のように再送された符号列のLLRデータと保存されているLLRデータとの合成処理を行って、合成されたLLRデータをターボ復号部19とIRバッファ制御部30へ送る。一方、HARQプロセスによるデータ再送が行われてなく、初回のデータ送信が行われている期間には、デレートマッチ部16から送られてきた符号列のLLRデータをそのままターボ復号部19とIRバッファ制御部30へ送るように構成されている。
【0019】
[第1実施形態]
図2には、第1実施形態のIRバッファ20とIRバッファ制御部30の詳細を表わしたブロック図を示す。
【0020】
第1実施形態のIRバッファ制御部30は、書き込み制御部31、読み込み制御部32、IRバッファ格納有効信号生成部33、バッファ制御部34等から構成される。
【0021】
書き込み制御部31は、HARQ合成処理部18から供給されるLLRデータと、IRバッファ格納有効信号生成部33から出力されるバッファイネーブルの信号とを、それぞれ受ける。そして、バッファイネーブルが有効の期間に、HARQ合成処理部18から送られてきたLLRデータ(w.LLR)を、ライトアドレスw.addとともにIRバッファ20に出力することで、このLLRデータをIRバッファ20へ書き込む。一方、バッファイネーブルが無効の期間に、HARQ合成処理部18から送られてきたLLRデータは破棄する。ライトアドレスw.addは、1つのHARQプロセスの開始時にHARQプロセスごとの開始アドレスに初期化され、その後、LLRデータを書き込んでいくごとにカウントアップして更新されていく。
【0022】
読み込み制御部32は、IRバッファ格納有効信号生成部33から出力されるバッファイネーブルを受けて、HARQプロセスに同期してIRバッファ20からLLRデータ(r.LLR)を読み出す制御を行う。詳細には、1つのHARQプロセスの開始時に、リードアドレスr.addがHARQプロセスごとの開始アドレスに初期化される。そして、HARQプロセスで自動再送要求がなされてデータ再送が行われた場合に、この再送データの受信処理に同期させて読み込み制御を開始する。読み込み制御が開始されたら、バッファイネーブルが有効の期間にリードアドレスr.addをIRバッファ20へ出力してLLRデータを読み出し、これをHARQ合成処理部18へ出力する。バッファイネーブルが無効の期間にはLLRデータの読み込みを行わない。リードアドレスr.addは、LLRデータを読み出すごとにカウントアップされていく。
【0023】
バッファ制御部34は、制御ユニット50から供給される回線品質情報および制御情報に基づいてIRバッファ20に格納するLLRデータのサイズを決定し、この格納サイズ情報(LLR size)をIRバッファ格納有効信号生成部33に出力する。ここで、格納サイズを決定するパラメータである回線品質情報には、基地局へのフィードバック用に制御ユニット50により生成されたCQI(チャネル品質インジケータ)、PER(パケットエラーレート)、HARQプロセスによる再送回数が含まれる。また、上記制御情報には、方式情報として、現在選択されているRAT(Radio Access Technology:LTE−FDD(周波数分割複信)、LTE−TDD(時分割複信)あるいはHSPA+の何れが選択されているか)、無線伝送モード(Transmission Mode:MIMOであるか否か)の各情報が含まれる。また、この制御情報には、現在選択されているRATに対応するIRバッファの規定サイズ、並列的に実行されるHARQプロセスの数、送信データがブロック分割されて送信される際のコードブロック数の各情報が含まれる。
【0024】
図3には、第1実施形態のバッファ制御部34の動作を説明するフローチャートを示す。
【0025】
バッファ制御部34は、制御ユニット50からCQIとPERの情報を取得すると、直前の一定期間に取得したCQIとPERからこれらの平均値avg_CQI,avg_PERを求める(ステップ301)。次いで、これらと所定の閾値th_CQI,th_PERとをそれぞれ比較する(ステップ302)。その結果、両方の平均値avg_CQI,avg_PERがそれぞれ閾値th_CQI,th_PER以上であれば、内部変数である内部ループ回数を「0」にセットして(ステップ303)、IRバッファ20の使用率を100%に決定する(ステップ304)。なお、この実施形態では、CQIは値が小さいときに品質低下、値が大きいときに品質向上となるように定義されている。また、上記の内部ループ回数とは、IRバッファ20の使用率の削減中であるか否か、ならびに、削減中の期間に使用率を変更した回数を表わす内部変数である。
【0026】
一方、ステップ302の比較で、両方の平均値avg_CQI,avg_PERがそれぞれ閾値th_CQI,th_PERより小さいと判定されたら、現在のHARQプロセスの再送回数が1回以下であるか判定する(ステップ305)。そして、2回以上であれば、上記ステップ303,304の処理を行い、1回以下であれば、ステップ306へ進む。
【0027】
ステップ306では、内部ループ回数が「0」より大きいか判定し、「0」であれば、IRバッファ20の使用率を70%に決定し(ステップ307)、かつ、内部ループ回数を「1」にセットする(ステップ308)。
【0028】
一方、ステップ306で内部ループ回数が「0」より大きければ、先ず、内部ループ回数を「+1」加算し(ステップ309)、次いで、今回の送信データが再送のものか否かを判定する(ステップ310)。そして、再送データであれば、IRバッファの使用率を一段階上昇させる(ステップ311)。一方、初回の送信データであれば、IRバッファ20の使用率を一段階低下させる(ステップ312)。
【0029】
上記のように、ステップ304,307,311,312でIRバッファ20の使用率が決定されたら、次に、バッファ制御部34は、制御ユニット50から通知されているIRバッファ20の規定サイズに使用率を乗算して、この計算結果のサイズを、LLRデータを格納するIRバッファ20の全使用サイズとして決定する(ステップ313)。
【0030】
【表1】
【0031】
例えば、表1に示されるように、UEカテゴリがLTEの或るカテゴリでIRバッファ20の使用率が制限されていないときには、IRバッファの全使用サイズが上記UEカテゴリで規定されている“1237248bit”に決定される。また、UEカテゴリがHSPA+のカテゴリ20でIRバッファ20の使用率の制限がないときには、IRバッファの全使用サイズが上記UEカテゴリで規定されている“518400bit”に決定される。また、使用率が70%、50%、35%などに決定された場合には、上記の各UEカテゴリに応じた規定サイズにそれぞれ使用率を乗算した値と同程度のサイズが、IRバッファ20の全使用サイズとして決定される。
【0032】
ステップ313で全使用サイズを決定したら、続いて、バッファ制御部34は、この全使用サイズと、制御ユニット50から通知されているHARQプロセス数、コードブロック数および無線伝送モードの情報から、IRバッファ20に格納するLLRデータのデータ長(LLRの個数)を次のように決定する。すなわち、複数のHARQプロセスが並列的に実行されるため、上記のIRバッファ20の全使用サイズをこれら複数のHARQプロセスで分配しなければならない。そのため、バッファ制御部34は、各プロセスで格納されるLLRデータのトータルサイズの最大値が上記決定された全使用サイズとなるように、各HARQプロセスにおけるLLRデータの格納データ長(LLRの個数)を決定する(ステップ314)。なお、LTE−TDD方式の無線接続が選択されている場合には、複数のHARQプロセスでIRバッファ20の全使用サイズを均等に振り分けて、各HARQプロセスでIRバッファ20に格納するLLRデータのデータ長を決定しても良い。そして、このLLRデータのデータ長を上記の格納サイズ情報(LLR size)としてIRバッファ格納有効信号生成部33に通知する。
【0033】
バッファ制御部34では、上記のようなLLRデータの格納サイズの変更制御を、個々のHARQプロセスの開始タイミングに合わせて実行する。或いは、このような変更制御を、任意の周期、任意のタイミングで実行する。任意のタイミングで、LLRデータの格納サイズが変更された場合には、次のHAQRプロセスの開始時(再送データでなく初回データの受信時)から上記格納サイズの変更が適用されように制御される。
【0034】
図4Aは、IRバッファ20の使用率が100%のときのLLRデータの格納状態を説明する図、図4Bは、IRバッファ20の使用率が低く設定されたときのLLRデータの格納状態の一例を説明する図である。図4A,図4Bは、LTEにおけるLLRデータの格納状態を示すものであり、RVは再送時における送信コード範囲の先頭を表わすリダンダンシーバージョンを示している。
【0035】
図4Aに示すように、回線品質が悪くてIRバッファ20の使用率が100%のときには受信データの全てのLLRデータがIRバッファ20に格納される。一方、図4Bに示すように、回線品質が良好でIRバッファ20の使用率が低く設定されているときには受信データの一部のコード範囲22のLLRデータのみがIRバッファ20に格納されるように制御される。なお、この実施形態では、HARQプロセスによりデータ再送が行われてRV(Redundancy Version)に基づき異なるコード範囲のデータ再送が行われた場合には次のように処理される。すなわち、先にLLRデータが格納されているコード範囲22と重なる分のLLRデータのみが格納され、このコード範囲22と重ならない範囲のLLRデータはIRバッファ20に格納されない。
【0036】
図5には、デレートマッチ部16によるサーキュラバッファ17への書き込み順序と読み出し順序を説明する図を、図6には、サーキュラバッファ17の出力データとバッファイネーブルの出力パターンの一例を示す図を、それぞれ示す。
【0037】
受信された符号列は、デレートマッチ部16により符号配列が変更される。そのため、所定のコード範囲22のLLRデータのみをIRバッファ20へ格納する場合、受信された符号列のLLRデータが、デレートマッチ後の配列でコード範囲22に含まれているのか否かを区別する必要がある。この実施の形態では、このような区別を、サーキュラバッファ17の読出しアドレスに基づくIRバッファ格納有効信号生成部33の動作により実現している。
【0038】
すなわち、図5に示すように、デレートマッチ部16は、受信された符号列のLLRデータをサーキュラバッファ17にアドレス順に格納したのち、デレートマッチ用に規定された順序で読み出して後段へ送る。
【0039】
IRバッファ格納有効信号生成部33は、先ず、バッファ制御部34から通知されたLLRデータの格納サイズ情報に基づき、IRバッファ20に格納すべきLLRデータが書き込まれるサーキュラバッファ17のアドレス範囲17bを決定する。そして、サーキュラバッファ17のリードアドレスを入力して、このリードアドレスがアドレス範囲17bにあればバッファイネーブルを有効とし、このアドレス範囲17bから外れていればバッファイネーブルを無効とする。
【0040】
このような処理により、図6に示されるように、サーキュラバッファ17のリードアドレスに応じてバッファイネーブルの値が切り換えられる。そして、このようなバッファイネーブルの信号によって、書き込み制御部31のライト動作と読み込み制御部32のリード動作とが許可または禁止されて、アドレス範囲17bのLLRデータのみがIRバッファ20へ読み書きされるようになっている。
【0041】
上記のように構成された無線通信装置においては、次のような受信処理が行われる。
すなわち、基地局から送信された電波が受信されると、無線受信部13および同期・IFFT処理部14により受信された信号から符号列が抽出される。
続いて、信号分離・復調部15によりこの符号列が軟判定された後、この判定結果のLLRデータがIRバッファ制御部30の制御によってサイズが調整されてIRバッファ20に記憶される。
そして、ターボ復号部19により上記の符号列から元データの復号処理が行われ、その結果、符号誤りにより元データが復元できなかった場合には、制御ユニット50の制御によりHARQプロセスの自動再送要求が送信部を介して送信される。
さらに、この要求により基地局から冗長データが再送されると、無線受信部13および同期・IFFT処理部14により信号受信および冗長の符号列が抽出されて、信号分離・復調部15によりこの符号列が軟判定される。
続いて、IRバッファ制御部30の制御によりIRバッファに記憶されているLLRデータが読み出され、このLLRデータと冗長の符号列のLLRデータとがHARQ合成処理部18により合成される。
そして、この合成されたLLRデータがターボ復号部19に送られて、元データの再度の復号処理が行われる。この合成されたLLRデータも、再度の復号エラーが生じたときのために、IRバッファ制御部30の制御によってサイズが調整されてIRバッファ20に格納される。
このような受信処理を繰り返して、基地局から送信されたデータが受信されていく。
【0042】
この第1実施形態の無線通信装置によれば、上記の受信処理の途中、通信チャネルの品質が良好で受信された符合の誤りが少ないときには、IRバッファ20へ格納するLLRデータのサイズが小さくされてIRバッファ20へのアクセス量が少なくされる。したがって、IRバッファ20で消費される電力の削減を図ることができる。一方、通信チャネルの品質が悪くて受信された符号の誤りが多いときには、IRバッファ20へ格納するLLRデータのサイズが元のサイズに近づく方向に変更されるので、HARQプロセスによる再送合成利得の低下を回避することができる。
【0043】
[第2実施形態]
図7には、第2実施形態のIRバッファ20とIRバッファ制御部30の詳細を示すブロック図を示す。
【0044】
第2実施形態は、IRバッファ20の使用率を低減する場合に、第1実施形態のように受信した符号列のLLRデータの個数を削減するのではなく、個々のLLRデータのビット幅を小さくしてIRバッファ20に格納するようにしたものである。
【0045】
第2実施形態のIRバッファ制御部30は、書き込み制御部31Aと、読み込み制御部32Aと、IRバッファ格納有効信号生成部33と、バッファ制御部34A等から構成される。
【0046】
書き込み制御部31Aは、第1実施形態と同様に、HARQ合成処理部18から供給されるLLRデータと、IRバッファ格納有効信号生成部33から出力されるバッファイネーブルの信号とを、それぞれ受けて、バッファイネーブルが有効のときに供給されたLLRデータをIRバッファ20へ書き込んでいく。さらに、第2実施形態の書き込み制御部31Aは、バッファ制御部34Aから右ビットシフト量のデータ(right bit shift value)を受ける。そして、LLRデータをIRバッファ20へ書き込む際に、LLRデータに対して上記右ビットシフト量だけビットシフトを行って、個々のLLRデータのビット幅を縮小する。その上で、このLLRデータをIRバッファ20へ書き込んでいくように構成されている。
【0047】
図8Aには、書き込み制御部31Aにより行われるLLRデータのビットシフト処理を説明する図を示す。例えば、HARQ合成処理部18から供給された1つのLLRデータが8bitであり、右ビットシフト量が4bitであった場合、図8Aに示すように、書き込み制御部31Aは、上位4ビットを下位方向へビットシフトして、下位4ビットを切り捨てる。このビットシフトにより、個々のLLRデータのビット幅が半分にされ、且つ、個々のLLRデータの値が上位4桁の値に丸め(端数処理)られたのと同様の作用が得られる。なお、このビットシフトの際、切り捨てられるビットの最上位の値が「1」である場合に、残されるビットの最下位ビットに「1」を加算して、四捨五入のように端数処理の誤差が累積しないようにしても良い。
【0048】
読み込み制御部32Aは、第1実施形態と同様に、IRバッファ格納有効信号生成部33から出力されるバッファイネーブルの信号を受けて、バッファイネーブルが有効のときにHARQプロセスに同期してIRバッファ20からLLRデータを読み出して、HARQ合成処理部18へ出力する。さらに、第2実施形態の読み込み制御部32Aは、バッファ制御部34Aから左ビットシフト量のデータ(left bit shift value)を受ける。そして、LLRデータをIRバッファ20から読み出す際に、個々のLLRデータに対して上記左ビットシフト量だけビットシフトを行って、個々のLLRデータのビット幅を元に戻す。その上で、このLLRデータをHARQ合成処理部18へ送るように構成されている。
【0049】
図8Bには、読み込み制御部32Aにより行われるLLRデータのビットシフト処理を説明する図を示す。例えば、左ビットシフト量が4bitで、IRバッファ20に4bit幅のLLRデータが格納されている場合、シフト前のビット列を上位方向へビットシフトして、下位4ビットをゼロ値で詰める。このビットシフトにより、個々のLLRデータの値が上位4桁の値に丸められたまま、LLRデータのビット幅が元に戻される。従って、HARQ合成処理部18のLLRデータの合成処理で、通常の処理動作でLLRデータの合成を行うことができる。また、ビットシフトによるビット幅の縮小・拡大に起因したLLRデータ値の誤差は下位数桁分の切り捨て分に留まる。
【0050】
バッファ制御部34Aは、次に示すように、制御ユニット50から供給される制御情報に基づいてIRバッファ20に格納するLLRデータのビット幅を決定する。そして、このビット幅に対応する右ビットシフト量のデータ(right bit shift value)と左ビットシフト量のデータ(left bit shift value)とを書き込み制御部31Aと読み込み制御部32Aとにそれぞれ出力する。
【0051】
図9には、バッファ制御部34Aの動作を説明するフローチャートを示す。このフローチャートにおいて、IRバッファ20の全使用サイズを決定するまでの処理(ステップ301〜313)は、第1実施形態と同様である。
【0052】
ステップ313でIRバッファ20の全使用サイズを決定したら、次いで、バッファ制御部34Aは、制御ユニット50から通知されているHARQプロセス数、コードブロック数および無線伝送モードの情報から、IRバッファ20に格納するLLRデータのビット幅を次のように決定する。すなわち、複数のHARQプロセスが並列的に実行されるので、これら複数のHARQプロセスでそれぞれ格納されるLLRデータのトータルサイズの最大値が上記決定された全使用サイズとなるように、各HARQプロセスごとにIRバッファ20の全使用サイズを分配する。なお、LTE−TDD方式の無線接続が選択されている場合には、複数のHARQプロセスで均等にIRバッファ20の全使用サイズを振り分けるようにしてよい。そして、各HARQプロセスに分配された各バッファサイズに、送信されてくる1セットの符号列の始端から終端までがそれぞれ収まるように、LLRデータのビット幅を決定する(ステップ701)。
【0053】
図10Aは、IRバッファ20の使用率が100%のときのLLRデータの格納状態を説明する図、図10Bは、IRバッファ20の使用率が低く設定されたときのLLRデータの格納状態の一例を説明する図である。図10Aに示すように、回線品質が良好でなくIRバッファ20の使用率が100%のときには受信された符号列の全てのLLRデータがビット幅を削減することなくIRバッファ20に格納される。一方、図10Bに示すように、回線品質が良好でIRバッファ20の使用率が低く設定されているときには受信された符号列の全てのLLRデータが一律にビット幅を縮小されてIRバッファ20に格納される(図10A,Bにおいて網掛けによりLLRデータの格納部分を示している)。
【0054】
なお、第2実施形態ではバッファ制御部34AからIRバッファ格納有効信号生成部33へ出力される格納サイズ情報(LLR size)は、UEカテゴリの規定サイズに従った値となる。従って、IRバッファ格納有効信号生成部33は、デレートマッチ部16から送られてくるサーキュラバッファ17のリードアドレスの範囲に因らずにバッファイネーブルを有効とする。
【0055】
この第2実施形態の無線通信装置によれば、通信チャネルの品質が良好で受信された符合の誤りが少ないときには、各HARQプロセスでIRバッファ20に格納されるLLRデータのビットサイズが小さくされるので、IRバッファ20へのアクセス量が少なくなる。したがって、IRバッファ20で消費される電力の削減を図ることができる。一方、通信チャネルの品質が悪くて受信された符号の誤りが多いときには、各HARQプロセスでIRバッファ20へ格納されるLLRデータのビット幅が元に戻される方向に変化するので、HARQプロセスの再送合成利得の低下を回避できる。
【0056】
[第3実施形態]
図11には、第3実施形態のIRバッファとIRバッファ制御部との詳細を示すブロック図を示す。
【0057】
第3実施形態は、IRバッファ20を個別に電源制御が可能な複数のバッファブロック20A〜20Fから構成し、IRバッファ20の使用率を低減する際、バッファブロック20A〜20Fのうち使用しないブロックの電源をオフに切り換えて、消費電力をより低減するようにしたものである。
【0058】
バッファブロック20A〜20Fは、それぞれ異なるサイズ(一部同一サイズでも良い)に分割されており、ブロックの組み合わせを変化させることでブロックの合計サイズを多数のサイズの中から選択できるようになっている。後述する表2の“ブロックA”〜“ブロックF”の各欄に、バッファブロック20Aのサイズが“518400bit”、バッファブロック20Bのサイズが“259200bit”等、各バッファブロック20A〜20Fのサイズを併記している。
【0059】
第3実施形態のIRバッファ制御部30は、図11に示すように、書き込み制御部31Bと、読み込み制御部32Bと、IRバッファ格納有効信号生成部33と、バッファ制御部34Bを備えている。
【0060】
書き込み制御部31Bは、第2実施形態の書き込み制御部31Aの動作に加え、ライトアドレスとライトデータとをバッファブロック20A〜20Fのうち対応するブロックへ振り分けて出力するように構成されている。また、HARQプロセスで一連のLLRデータを順次書き込んでいく際に、バッファブロック20A〜20Fのうち電源オンされているブロックのアドレスがライトアドレスとして順に生成されていくように一連のアドレス生成を行う機能を有している。
【0061】
読み込み制御部32Bは、第2実施形態の読み込み制御部32Aの動作に加え、リードアドレスをバッファブロック20A〜20Fのうち対応するブロックへ振り分けて出力して、対応するブロックからリードデータを読み込むように構成されている。また、HARQプロセスで一連のLLRデータを読み出していく際に、バッファブロック20A〜20Fのうち電源オンされているブロックのアドレスがリードアドレスとして順に生成されていくように一連のアドレス生成を行う機能を有している。
【0062】
図11では省略しているが、上記の書き込み制御部31Bのアドレス生成機能と読み込み制御部32Bのアドレス生成機能を実現するために、例えば、バッファ制御部34Bからバッファブロック20A〜20Fの電源オン・オフの情報が書き込み制御部31Bと読み込み制御部32Bへ送られるようになっている。或いは、1つのHARQプロセスごとに、バッファ制御部34Bが自動生成に使用するアドレス範囲を適宜選択して、このアドレス範囲の情報を書き込み制御部31Bと読み込み制御部32Bとへ送って上記のアドレス生成が行われるようにすることもできる。
【0063】
バッファ制御部34Bは、制御ユニット50から供給される制御情報に基づいてIRバッファ20に格納するLLRデータのデータ長とビット幅とを決定して、このビット幅に対応する右ビットシフト量データと左ビットシフト量データとを書き込み制御部31Aと読み込み制御部32Aとにそれぞれ出力する。さらに、バッファブロック20A〜20Fのうち使用するブロックと非使用のブロックとを決定して、これらの電源オン・オフを切り換える信号“Power ON/OFF”を出力するように構成されている。次に、これらの動作の詳細を説明する。
【0064】
図12Aと図12Bには、第3実施形態のバッファ制御部34Bの動作を説明するフローチャートを示す。このフローチャートにおいて、ステップ301〜312の処理は第1実施形態のものと同様である。
【0065】
第3実施形態では、IRバッファ20の使用率の切り換えを80%以上の範囲では行われないようにするため、ステップ311または312で使用率の設定を段階的に変更したらステップ1001へ進む。そして、この時点で設定されているIRバッファ20の使用率が80%以上であるか判定する(ステップ1001)。その結果、80%より小さければ、そのままステップ1003へ進むが、80%以上であればIRバッファ20の使用率を100%に設定し、かつ、内部変数である内部ループ回数を「0」にセットする(ステップ1002)。そして、ステップ1003へ進む。
【0066】
ステップ304,307,311,312,1002でIRバッファ20の使用率が決定されてステップ1003へ進んだら、バッファ制御部34は、IRバッファの規定サイズに使用率を乗算して、この計算結果のサイズを、LLRデータを格納するIRバッファ20の全使用サイズとして決定する。さらに、この全使用サイズが確保されるようにバッファブロック20A〜20Fのうち電源オンにするブロックとオフにするブロックとを決定する(ステップ1003)。
【0067】
【表2】
【0068】
この表の“ブロックA〜ブロックF”の列に、各条件におけるバッファブロック20A〜20Fの電源オン・オフ(“1”がオン、“0”がオフ)の決定パターンをそれぞれ示す。例えば、UEカテゴリがLTEのカテゴリでIRバッファの使用率が70%に決定されていれば、ステップ1003において、3つのバッファブロック20A,20C,20Dを電源オンにするブロックに決定して、IRバッファ20の全使用サイズ“864000bit”が確保されるように制御される。また、UEカテゴリがHSPA+のカテゴリ20でIRバッファの使用率が35%に決定されていれば、ステップ1003において、バッファブロック20Cを電源オンにするブロックに決定して、IRバッファ20の全使用サイズ“172800bit”が確保されるように制御される。
【0069】
ステップ1003で電源オン・オフを切り換えるブロックを決定したら、バッファ制御部34は、この決定に従って電源オン・オフを切り換える信号を各バッファブロック20A〜20Fに出力する。
【0070】
続いて、バッファ制御部34は、ステップ1003で決定されたIRバッファ20の全使用サイズと、制御ユニット50から通知されているHARQプロセス数、コードブロック数および無線伝送モードの情報から、IRバッファ20に格納するLLRデータのデータ長(LLRの個数)と、個々のLLRデータのビット幅を、次のように決定する。すなわち、複数のHARQプロセスでIRバッファ20に格納されるLLRデータのトータルサイズの最大値が上記決定された全使用サイズとなり、且つ、各HARQプロセスにおけるLLRデータの削減の影響が偏らないように、上記LLRデータのデータ長(LLRの個数)とビット幅とを決定する(ステップ1004)。そして、この決定されたLLRデータのデータ長を格納サイズ情報(LLR size)としてIRバッファ格納有効信号生成部33に出力する。さらに、上記決定されたビット幅に対応させて書き込み制御部31Bへ右ビットシフト量データ(right bit shift value)と読み込み制御部32Bへ左ビットシフト量データ(left bit shift value)とを出力する。
【0071】
IRバッファ格納有効信号生成部33は、第1実施形態のものと同様に動作する。すなわち、上記格納サイズ情報と、サーキュラバッファ17のリードアドレスを入力して、このリードアドレスと上記の格納サイズ情報に基づき決定されるアドレス範囲17b(図5参照)とを比較して、この比較結果に基づきバッファイネーブルの有効と無効とを切り換える。
【0072】
この第3実施形態の無線通信装置によれば、HARQプロセスでIRバッファ20へ格納するLLRデータのデータ長またはビット幅を小さくして、IRバッファ20の全使用サイズを削減する際、バッファブロック20A〜20Fのうち使用されないブロックの電源がオフにされる。従って、LLRデータのサイズ削減によりIRバッファ20で消費される電力をより低減することができる。
【0073】
なお、上記第1〜第3実施形態では、通信チャネルの品質を表わす品質情報として、CQI、PER、および、HARQプロセスによる再送回数を適用した例を示しているが、品質情報として、無線信号のドップラーシフト周波数、または、無線信号の遅延スプレッドを含めるようにしてもよい。また、上記第1〜第3実施形態では、HSPA+とLTEの無線接続方式、MIMOとそれ以外の無線伝送モードとをそれぞれ切換え可能な構成を示しているが、無線接続方式と無線伝送モードは固定としてもよい。また、上記第1〜第3実施形態では、受信された符号列の軟判定データとしてLLRを適用した例を示しているが、符号列の尤度を表わすものであれば別の関数値を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る受信装置は、例えばHSPA+およびLTEの無線接続方式の通信端末に適用できる。
【符号の説明】
【0075】
16 デレートマッチ部
17 サーキュラバッファ
18 HARQ合成処理部
19 ターボ復号部
20 IRバッファ
30 IRバッファ制御部
31,31A,31B 書き込み制御部
32,32A,32B 読み込み制御部
33 IRバッファ格納有効信号生成部
34,34A,34B バッファ制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号から抽出された符号列の軟判定データを記憶するバッファと、
前記符号列から元データの復号処理を行うとともに、元データが復元できなかった場合に、前記バッファに記憶された前記軟判定データと再送された受信信号の符号列とに基づいて再度の元データの復号処理を行う復号部と、
通信チャネルの品質を表わす品質情報に基づいて、前記バッファへ書き込む前記軟判定データの格納サイズを変更するバッファ制御部と、
を備える受信装置。
【請求項2】
前記バッファ制御部は、前記品質情報と、信号の伝送方式を表わす方式情報とに基づいて、前記軟判定データの格納サイズを変更する、
請求項1記載の受信装置。
【請求項3】
前記バッファは、電源のオン・オフを個別に切り換え可能な複数のバッファブロックを有し、
前記バッファ制御部は、前記軟判定データの格納サイズの変更により前記複数のバッファブロックのうち使用されなくなったバッファブロックの電源をオフに切り換える、
請求項1記載の受信装置。
【請求項4】
前記バッファ制御部は、個々の前記軟判定データのビット幅を縮小または拡大することにより前記軟判定データの格納サイズを変更する、
請求項1記載の受信装置。
【請求項5】
前記バッファ制御部の制御に応じた格納サイズで前記軟判定データを前記バッファへ書き込む書き込み制御部と、
前記再度の復号処理が行われる場合に、前記バッファ制御部の制御に応じた格納サイズで前記軟判定データを前記バッファから読み出す読み込み制御部と、
をさらに備える請求項1記載の受信装置。
【請求項6】
前記個々の軟判定データの下位ビットを破棄して前記バッファ制御部の制御に応じたビット幅に変更するとともに、当該ビット幅の変更された軟判定データを前記バッファへ書き込む書き込み制御部と、
前記再度の復号処理が行われる場合に、前記ビット幅の変更された軟判定データを前記バッファから読み出すとともに、任意の下位ビットを補填して元のビット幅に戻す読み込み制御部と、
をさらに備える請求項4記載の受信装置。
【請求項7】
前記品質情報には、基地局へのフィードバック用に生成されるチャネル品質インジケータ、受信パケットのエラーレート、受信信号の再送回数、無線信号のドップラーシフト周波数、または、無線信号の遅延スプレッドが含まれる、
請求項1記載の受信装置。
【請求項8】
前記方式情報には、無線接続方式の情報、または、無線伝送モードの情報が含まれる、
請求項2記載の受信装置。
【請求項9】
受信信号から抽出された符号列の軟判定データをバッファに記憶し、
前記符号列から元データを復元できなかった場合に、前記バッファに記憶された前記軟判定データと再送された受信信号の符号列とに基づいて元データの再度の復号処理を行い、
通信チャネルの品質を表わす品質情報に基づいて、前記バッファへ書き込む前記軟判定データの格納サイズを変更する、
バッファ制御方法。
【請求項1】
受信信号から抽出された符号列の軟判定データを記憶するバッファと、
前記符号列から元データの復号処理を行うとともに、元データが復元できなかった場合に、前記バッファに記憶された前記軟判定データと再送された受信信号の符号列とに基づいて再度の元データの復号処理を行う復号部と、
通信チャネルの品質を表わす品質情報に基づいて、前記バッファへ書き込む前記軟判定データの格納サイズを変更するバッファ制御部と、
を備える受信装置。
【請求項2】
前記バッファ制御部は、前記品質情報と、信号の伝送方式を表わす方式情報とに基づいて、前記軟判定データの格納サイズを変更する、
請求項1記載の受信装置。
【請求項3】
前記バッファは、電源のオン・オフを個別に切り換え可能な複数のバッファブロックを有し、
前記バッファ制御部は、前記軟判定データの格納サイズの変更により前記複数のバッファブロックのうち使用されなくなったバッファブロックの電源をオフに切り換える、
請求項1記載の受信装置。
【請求項4】
前記バッファ制御部は、個々の前記軟判定データのビット幅を縮小または拡大することにより前記軟判定データの格納サイズを変更する、
請求項1記載の受信装置。
【請求項5】
前記バッファ制御部の制御に応じた格納サイズで前記軟判定データを前記バッファへ書き込む書き込み制御部と、
前記再度の復号処理が行われる場合に、前記バッファ制御部の制御に応じた格納サイズで前記軟判定データを前記バッファから読み出す読み込み制御部と、
をさらに備える請求項1記載の受信装置。
【請求項6】
前記個々の軟判定データの下位ビットを破棄して前記バッファ制御部の制御に応じたビット幅に変更するとともに、当該ビット幅の変更された軟判定データを前記バッファへ書き込む書き込み制御部と、
前記再度の復号処理が行われる場合に、前記ビット幅の変更された軟判定データを前記バッファから読み出すとともに、任意の下位ビットを補填して元のビット幅に戻す読み込み制御部と、
をさらに備える請求項4記載の受信装置。
【請求項7】
前記品質情報には、基地局へのフィードバック用に生成されるチャネル品質インジケータ、受信パケットのエラーレート、受信信号の再送回数、無線信号のドップラーシフト周波数、または、無線信号の遅延スプレッドが含まれる、
請求項1記載の受信装置。
【請求項8】
前記方式情報には、無線接続方式の情報、または、無線伝送モードの情報が含まれる、
請求項2記載の受信装置。
【請求項9】
受信信号から抽出された符号列の軟判定データをバッファに記憶し、
前記符号列から元データを復元できなかった場合に、前記バッファに記憶された前記軟判定データと再送された受信信号の符号列とに基づいて元データの再度の復号処理を行い、
通信チャネルの品質を表わす品質情報に基づいて、前記バッファへ書き込む前記軟判定データの格納サイズを変更する、
バッファ制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【公開番号】特開2013−12916(P2013−12916A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144411(P2011−144411)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000187725)パナソニック モバイルコミュニケーションズ株式会社 (38)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000187725)パナソニック モバイルコミュニケーションズ株式会社 (38)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
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