説明

受渡装置および受渡システム

【課題】連続的に搬送される分岐点を有するワークに対する作業を可能とする受渡装置および受渡システムの提供。
【解決手段】分岐点を有するワークを掴持する掴持手段と、掴持手段を回動させる回動手段と、掴持手段の回転中心軸上ないしは回転中心軸上から僅かにずれた位置におけるワークの存在を検出するセンサ手段と、分岐点の方向を検出し、分岐点が所定の方向となるための回転角度を算出する回転角度算出手段とを備え、回動手段により掴持手段を所定の角度回動し、掴持手段が掴持したワークを回転角度算出手段が算出した回転角度回動させることで、ワークの向きを揃えることを特徴とする受渡装置およびそれを備えた受渡システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐点を有するワークの受渡装置および受渡システムに関し、例えば、枝部を有する棒状物やリード線が延出された半導体チップ等のワークの受渡装置および受渡システムに関する。なお、分岐点とは、ワークの輪郭線が急に方向変化する点をいう。また、枝部を有する棒状物とは、棒状部分とその幅方向に枝部を有する有体物のことであり、例えば、葉の付いた苗やL字型の工業部品が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
近年園芸作物や樹木の苗の生産においてこれまで行われてきた実生苗や挿し木苗での生産以外にマイクロプロパゲーションで優秀個体の無菌化クローンを大量増殖し、発根させて苗製品にする手法が広く普及してきている。
一般的な手法としては、成長組織点を無菌環境内で植物個体から切出してインビトロ(無菌透明容器内)で培養環境を与え、多芽体に成長させ、さらに継体培養により大量増殖させ、そして大量増殖させたそれぞれの幼芽を最適な大きさまでインビトロで成長させた後に、再び無菌環境で幼芽を分離し、発根用の容器に移し替え、再びインビトロで培養し発根完了後に無菌クローン苗製品とするものがある。感染した苗であっても、植物体成長の元になる成長点組織にはウィルスが侵入しないことを利用した手法である。
【0003】
しかしながら、幼芽は柔らかく脆弱であり、過剰な把持力を与えた場合、茎の導管を破壊しその後の生育が順調にいかないという問題がある。このため幼芽の移植を自動的に行うためには微少な把持力制御が不可欠であった。そこで、出願人は、一対の把持爪と、把持用アクチュエータと、把持用アクチュエータおよび把持爪とを連結する把持力伝達系とを備え、前記把持力伝達系の一部または全部が弾性特性を有する材料からなり、前記把持用アクチュエータの駆動により前記把持力伝達系および/または前記把持爪に撓みを生じさせながら脆弱物を把持するロボットハンドを提言した(特許文献1)。
また、前記ロボットハンドをXYZ方向に移動可能に連結したマニピュレータと、前記ロボットハンドから受け取った苗を植込工程に受け渡す受渡用ハンドとを備える苗の移植補助ステーションを提言した(特許文献2,3)。
【0004】
ロボットによる植え付け作業の自動化に関する研究としては、例えば、視覚部の把持位置検出アルゴリズムによって検出された挿し穂の主茎下部をロボットハンドが把持して整形装置に移動し、葉を離脱しものを植え付け装置に供給するシステムが発表されている(非特許文献1〜3)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−68893号公報
【特許文献2】特開2006−180862号公報
【特許文献3】特開2006−180863号公報
【非特許文献1】農業機械学会誌、VOL.60,NO.4,p.37-44
【非特許文献2】M.Takatsuji, Handbook of Plant Factory,Tokai University Press, pp. 123{159, 1997. 東海大学出版会編:「植物工場ハンドブック」, 東海大学出版会(1997), pp123-159
【非特許文献3】高山眞策シーエムシー出版 種苗生産システム (1992 初版2002 普及版pp180)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
連続的に搬送される分岐点を有するワークに対する作業においては、画像認識処理とワークの姿勢補正が必要なため、作業の完全な機械化が実現されていなかった。
分岐点を有するワークが非定型物である場合においては、より問題は深刻である。非定型物である分岐点を有するワークとしては、代表的なものに植物の苗がある。苗の育成に伴うコストの大半は人件費であり、またウィルス混入による品質低下を防ぐことができるため、機械化により生産コストを大幅に削減することができる産業分野である。苗の培養工程については機械化が進んでいるが、植込工程については、苗の姿勢を揃えて受け渡しをする必要があるため、機械化が充分に進んでいなかった。
【0007】
本発明は、連続的に搬送される分岐点を有するワークに対する作業を可能とする受渡装置および受渡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、分岐点を有するワークを掴持する掴持手段と、掴持手段を回動させる回動手段と、掴持手段の回転中心軸上ないしは回転中心軸上から僅かにずれた位置におけるワークの存在を検出するセンサ手段と、分岐点の方向を検出し、分岐点が所定の方向となるための回転角度を算出する回転角度算出手段とを備え、回動手段により掴持手段を所定の角度回動し、掴持手段が掴持したワークを回転角度算出手段が算出した回転角度回動させることで、ワークの向きを揃えることを特徴とする受渡装置である。
第2の発明は、第1の発明において、センサ手段による検出開始時にワークの存在が検出された際に、回動手段によりワークの存在が検出されなくなるよう掴持手段を回動手段により回転してから、掴持手段を前記所定の角度回動することを特徴とする。
第3の発明は、第1または2の発明において、ワークが棒状部分を有する自然物であることを特徴とする。
【0009】
第4の発明は、第1、2または3の発明に係る受渡装置と、前記ワークによる作業が行われる第2のワークと、第2のワークを搬送するコンベアと、ワークを把持して第2のワークに作業を行う作業ロボットと、作業ロボットの移動手段とを備えた作業装置とから構成される受渡システムであって、受渡装置によりワークの向きを揃え、受渡装置の掴持手段の掴持するワークを作業装置の作業ロボットに受け渡すことを特徴とする受渡システムである。
第5の発明は、第1、2または3の発明に係る受渡装置と、前記ワークを搬送するコンベアと、コンベア上のワークを撮像する撮像手段と、コンベア上を搬送されるワークを把持するロボットハンドと、ロボットハンドの移動手段と、撮像手段による撮像画像にもとづきワークの把持位置を算出する把持位置算出手段とを備えた投入装置とから構成される受渡システムであって、ワークを把持した投入装置のロボットハンドを移動手段により移動して、受渡装置の掴持手段にワークを受け渡すことを特徴とする受渡システムである。
第6の発明は、第1、2または3の発明に係る受渡装置と、前記ワークを搬送するコンベアと、コンベア上のワークを撮像する撮像手段と、コンベア上を搬送されるワークを把持するロボットハンドと、ロボットハンドの移動手段と、撮像手段による撮像画像にもとづきワークの把持位置を算出する把持位置算出手段とを備えた投入装置と、前記ワークによる作業が行われる第2のワークと、第2のワークを搬送するコンベアと、ワークを把持して第2のワークに作業を行う作業ロボットと、作業ロボットの移動手段とを備えた作業装置とから構成される受渡システムであって、ワークを把持した投入装置のロボットハンドを移動手段により移動して、受渡装置の掴持手段にワークを受け渡し、受渡装置によりワークの向きを揃え、受渡装置の掴持手段の掴持するワークを作業装置の作業ロボットに受け渡すことを特徴とする受渡システムである。
第7の発明は、前記ワークを搬送するコンベアと、コンベア上のワークを撮像する撮像手段と、コンベア上を搬送されるワークを把持するロボットハンドと、ロボットハンドの移動手段と、撮像手段による撮像画像にもとづきワークの把持位置を算出する把持位置算出手段とを備えた投入装置と、投入装置のコンベアの両側部に夫々配設された、第1、2または3の発明に係る受渡装置と、前記ワークによる作業が行われる第2のワークと、第2のワークを搬送する第2のコンベアと、ワークを把持して第2のワークに作業を行う作業ロボットと、作業ロボットの移動手段とを備え、左右の受渡装置の側部に夫々配設された作業装置とから構成される受渡システムであって、ワークを把持した投入装置のロボットハンドを移動手段により移動して、左右の受渡装置の掴持手段にワークを交互に受け渡し、一の受渡装置によりワークの向きを揃え、一の受渡装置の掴持手段の掴持するワークを一の作業装置の作業ロボットに受け渡すことを特徴とする受渡システムである。
第8の発明は、第5、6または7の発明において、前記作業装置は、作業ロボットにより把持したワークを、液体が貯留された容器に浸漬させてから、第2のワークに作業を行うことを特徴とする。
第9の発明は、第5ないし8のいずれかの発明において、前記作業装置は、第2のワークに作業を行った後、作業ロボットを洗浄液が貯留された容器に浸漬させてから、次のワークを作業ロボットにより把持することを特徴とする。
第10の発明は、第4、6または7の発明において、前記投入装置のロボットハンドが、ワークの姿勢を補正するための機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、連続的に搬送される分岐点を有するワークに対する作業を可能とする受渡装置および受渡システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態の受渡装置は、分岐点を有するワークを掴持する掴持手段と、掴持手段を回動させる回動手段と、掴持手段の回転中心軸上ないしは回転中心軸上から僅かにずれた位置におけるワークの存在を検出するセンサ手段と、分岐点の方向を検出し、分岐点が所定の方向となるための回転角度を算出する回転角度算出手段とを備え、回動手段により掴持手段を所定の角度回動し、掴持手段が掴持したワークを回転角度算出手段が算出した回転角度回動させることで、ワークの向きを揃えることを特徴とする。ここで、センサ手段による検出開始時にワークの存在が検出された際には、回動手段によりワークの存在が検出されなくなるよう掴持手段を回動手段により回転してから、掴持手段を前記所定の角度回動することが好ましい。
受渡装置は、固定位置で利用する必要はなく、スライダ等の移動手段と組み合わせてもよい。また、回動手段による掴持手段の回動は、通常は360度であるが、ワークの形状によっては360度に限定されない。
【0012】
上記の受渡装置と他の産業用ロボットとを組み合わせてシステムを構成することで、連続的に搬送される分岐点を有するワークに対する作業が可能となる。本発明を実施するための最良の形態の受渡システムは、受渡装置の上流工程としてロボットハンドを備える投入装置を有し、受渡装置の下流工程として作業ロボットを有する作業装置を有し、ワークを把持した投入装置のロボットハンドを移動手段により移動して、受渡装置の掴持手段にワークを受け渡し、受渡装置によりワークの向きを揃え、受渡装置の掴持手段の掴持するワークを作業装置の作業ロボットに受け渡すことができる。
【0013】
上記の投入装置は、前記ワークを搬送するコンベアと、コンベア上のワークを撮像する撮像手段と、コンベア上を搬送されるワークを把持するロボットハンドと、ロボットハンドの移動手段と、撮像手段による撮像画像にもとづきワークの把持位置を算出する把持位置算出手段とから構成される。ここで、ロボットハンドが、対向する一対の把持爪と、把持爪と直交して設けられた対向する一対の補正部材と、これらに駆動系の動力を伝達する伝達部材から構成され、把持爪が把持したワークに、補正部材を進出動して当接させることでワークの姿勢を補正する構成であることが好ましい。
【0014】
上記の作業装置は、前記ワークによる作業が行われる第2のワークと、第2のワークを搬送するコンベアと、ワークを把持して第2のワークに作業を行う作業ロボットと、作業ロボットの移動手段とから構成される。
作業装置としては、苗を自動植込する植込装置が例示されるが、これに限定されず、工業製品の組立を行う作業装置などでもよい。XYZの移動手段を組み合わせた直交作業ロボットのみならず、ワークと作業手段とが相対的に移動するものであれば、全て適用することができる。X方向だけなどのような一次元の移動しかできないようなものでもよく、スカラーロボットなど曲線の移動をするものでもよい。
【0015】
上記の投入装置および作業装置における移動手段は特定のものに限定されず、直交座標形、円筒座標形、極座標形、多関節形などのいずれでもよい。
上記のワークは、自然物、人工物のいずれかに限定されるものではないが、特に細部の形状が非定型である棒状部分を有する自然物(加工が施されたものも含む)に好適であり、枝部を有する自然物においては特に顕著な効果を奏する。
作業の性質としては、精度が最優先される作業よりは、一定程度の精度と処理速度が要求される作業に適している。具体例としては、植物の苗を一定方向に揃えて植え込む作業に好適である。
【0016】
上記の作業装置において、作業ロボットにより把持したワークを、液体が貯留された容器に浸漬させてから、第2のワークに作業を行ってもよい。液体が貯留された容器とは、例えば、苗の培養液や工業用のオイルがあげられる。
また、第2のワークに作業を行った後、作業ロボットをアルコール等の洗浄液が貯留された容器に浸漬させてから、次のワークを作業ロボットにより把持するようにしてもよい。
【0017】
以下では、本発明の詳細を実施例により説明するが、本発明は何ら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
本実施例は、例えば図1に示すような、投入装置101、受渡装置102および植込装置103からなる苗自動植込システムに関する。
投入装置101は、苗コンベアで搬送される苗について、カメラの撮影画像に基づいて把持位置を検出し、投入ハンド1により把持し、受渡装置102に受け渡す。受渡装置102は、垂直状態で把持した苗を、植え込みに最適な角度となるよう回転させる。植込装置103は、受渡装置102から苗を受け取り、植え込み領域に順次一本ずつ苗を植え込む。
【0019】
本実施例のシステムは、次の機能を有する。
1)外部トリガのタイミングによる撮影画像情報の入力
2)撮影画像から設備が自動処理するのに必要な座標、角度などの情報算出
3)設備制御装置が処理できる情報単位への変換
4)設備の自動処理可否判断と結果の情報化
5)設備制御装置への情報伝送および読み取り要求トリガ出力
6)必要な各種システム設定値のGUIによる登録と保存
7)オフラインで解析可能な内容・形式による処理イベントのログ作成と保存
8)その他デバッグなどに必要な表示とGUI処理
【0020】
本実施例で扱う苗サイズの規定値は、図2および下記に示すとおりである。
全長 A:20.0mm以上
葉領域 B: 5.0mm以上
把持領域C:10.0mm以上
植込領域D: 5.0mm以上
茎直径 E: 1.0〜2.0mm
苗幅 F:10.0〜20.0mm
【0021】
《光電センサの配置と機能》
本実施例のシステムが有する光電センサは次の類型のものがあり、その配置は図3に示すとおりである。
(1)撮像トリガ
ライン投入された苗を画像認識センサが撮像するためのタイミング検出用センサ。苗が撮像範囲に入る位置に設置され、センサ反応タイミングで撮像、認識処理を行う。
(2)苗有無判定(1)
投入ハンド1が正常に苗を把持したこと(苗有無)の検出用センサ。投入ハンド1が把持、上昇した後に判断を行い、センサ未反応の場合は「苗無し(=失敗)」と見なし、後工程への動作を行わず即時に次苗処理(ピックアップ)を行う。
(3)葉方向検出
無作為に受け渡しされた苗の方向を検出し、一定方向で植込ハンド3に受け渡しするための検出用センサ。この際、チャックが1回転(=360度)してもセンサが未検出の場合は「苗無し」と判断して植込ハンド3への受取要求は行わず待機状態に即時復帰する。
(4)苗有無判定(2)
植込ハンド3が正常に苗を把持したこと(苗有無)の検出用センサ。植込ハンド3が回転チャック2から受け取り、後退する途中に判断を行い、センサ未反応の場合は「苗無し(=失敗)」と見なし、植込処理を行わず即時に待機状態に復帰する。当然、その際の植込苗数のカウンタは現状維持とし、必ず植込欠損を発生させない。
(5)植込容器到着確認
植込容器が準備されていることの確認用センサ。植込容器コンベア横に設置され、規定位置に到達した時点でコンベアを停止させる。容器交換時に一定時間コンベアを動作させてもセンサが未検出(=容器未到達)の際はコンベアを停止させるとともに、ブザー音によるユーザガイダンスを行い次容器の準備を作業者に知らせる。
【0022】
《投入装置101》
図4を参照しながら、投入装置101について詳しく説明する。
投入装置101は、苗投入口から投入された苗を、苗コンベアによりY軸方向に搬送する。撮像エリアに苗が進入し、光電センサが苗の存在を検知すると、撮影画像に基づいて把持位置の認識処理が行われる。ピックアップ位置まで苗が搬送されると、苗コンベアは苗の把持が終了するまでの間、停止される。なお、苗コンベアは、ピックアップ時にのみ停止され、それ以外は(撮影時においても)常時運転状態にある。
カメラは苗コンベア進行方向が画像の長辺方向となるよう、正規状態(横長)から90度回転させた状態(縦長)での取り付けとする。なお、カメラを回転取り付けするにあたり、表示画像は苗コンベア進行が画面左から右に向かう方向で表示するものとする。本実施例では、モノクロVGAのCMOSカメラ(Firefly MV [POINT GREY RESERCH])を使用した。
【0023】
投入ハンド1は、R軸モータとともにZ軸移動手段に接続される。Z軸移動手段は、X軸移動手段に接続されており、X軸方向に移動自在である。制御部から把持命令を受けると、X軸移動手段は、投入ハンド1を把持位置のX座標の上方まで移動し、R軸モータによりハンド1をθ回転しながらZ軸移動手段により降下させ、図示しないアクチュエータにより把持爪3を開閉させて苗を把持し、再びZ軸移動手段により上昇する。続いて、図示しないアクチュエータにより補正板4を進出させて把持した苗を垂直状態とする。図5aは苗を把持した直後の投入ハンド1の写真であり、図5bが苗を垂直状態に補正した後の投入ハンド1の写真である。投入ハンド1は、対向する一対の把持爪11と、把持爪11と直交し、把持爪11を挟むよう配設された対向する一対の補正板12と、これらにアクチュエータの動力を伝達する伝達部材を備え、把持爪11が把持した苗に、補正板12を進出動して当接させることで苗の姿勢を垂直状態に補正することができ、ワークの姿勢が補正された状態からさらに補正部材を進出動させることでワークの幅方向の把持位置を補正することができる。苗を垂直状態にした後、X軸移動手段により受渡装置102の位置まで苗を把持した投入ハンド1は移動され、受渡装置102に苗の受け渡しを行う。本実施例の投入ハンド1は、2枚の補正板12を用いて姿勢等補正機構を構成したため、数mmのスライド移動で苗の姿勢を変化させることができるので姿勢等補正機構の処理速度が格段に速い(約0.1秒)。また、投入ハンド1による一連の処理のサイクルタイムは僅か5秒程度である。
なお、高速で姿勢変化することが好ましくないワークである場合には、駆動部の動作速度を低下させることでゆっくりと姿勢補正することも可能である。駆動部の動作速度次第で姿勢補正速度が調整できることも特長である。
【0024】
なお、苗のような脆弱物を把持する際には、予め最適な把持力を算出した上、把持力を設定しておく必要がある。最適な把持力の範囲の算出は、苗の茎に徐々に力を加え、苗の直径と細胞の破壊による水浸化状の変色が起こる力を計測することで行う。最適な把持力の算出方法は、出願人の特許出願に係る特許文献1に開示される。
【0025】
投入装置101の制御系におけるインターフェース構成は、図6に示すとおりである。センサコントローラは、苗コンベア上に投入された苗が自動処理でピックアップ可能となる座標、回転角などの情報を制御装置に送信する。センサコントローラは、制御装置からのトリガ信号に応じて撮影・計測を行い、算出した苗コンベア停止位置を苗が通過しない間に、上記情報の送信を行う。
カメラ撮影の外部トリガについては、必要性に応じて信号を送信する。ここで、必要性は、苗コンベア移動中の撮影タイミングに苗が撮像エリアで撮影されるか否かで判断する。
【0026】
センサコントローラは、作業者によりライン投入された苗の不規則な苗姿勢および方向を自動処理する。ここで、センサコントローラは計測器としての利用を主たる目的とするものではないので、オーバースペックとなる精度追求はせず、実用化に必要な処理速度を優先している。本実施例では、Windows(登録商標)をプラットホームとするパーソナルコンピュータで構成した。
センサコントローラは、苗コンベア進行方向を基準とし、画像中心を座標原点(X、Y座標)として座標を算出する。すなわち、図7に示すように、苗コンベア進行方向がY軸の正方向であり、苗コンベア進行方向に向かって右手をX軸の正方向とする。Z軸は、上方から苗コンベア表面に向かう方向(下降方向)を正方向とする。ただし、本実施例におけるセンサコントローラは、単眼カメラで計測を行うため、Z軸方向の情報は規定値とする。なお、Z軸方向の情報を計測する必要がある場合には、出願人の特許出願に係る特許文献2に開示されるあおり光学系を用いて撮像手段を構成してもよい。
【0027】
回転角のR軸は設備上方から見て「6時」の位置を0度、「12時」の位置を180度とし、0度基準の時計回り(CW)を正方向、反時計回り(CCW)を負方向とする。図8に苗角度の計測例を示す。
なお、カメラは90度回転させた方向で取り付けしているので、撮影画像から算出した移動量、角度等の各情報はセンサコントローラ内部で座標および角度変換し、制御装置には上記座標および角度の考え方に応じた情報として送信することとする。
【0028】
センサコントローラが認識、計測を行う内容を図9に示す。センサコントローラは、制御装置の計測要求が発生した時点で次の処理を行う。
1)把持位置検出
2)上下方向検出
3)茎角度検出
4)苗全長検出
5)把持可能長検出
上記の計測項目の内、1)〜3)はピックアップに必要な設備動作情報であり、4)〜5)は自動処理可否の判断情報である。
【0029】
センサコントローラから制御装置への送信制御情報は次のとおりである。
ア)X軸スライダ移動量
イ)Y軸苗コンベア移動量
ウ)Z軸スライダ移動量
エ)R軸モータ回転角度
オ)自動処理可否判定結果コード[0=可(実行)/1=否(ラインアウト)]
ただし、制御装置への情報送信において、XYZ軸方向の移動量は0.1ミリメートル単位での精度が必要と考えるが、制御装置のメモリ領域であるリンクレジスタ(LW)が整数型であるために小数点以下の精度を必要とする移動量情報ア)〜ウ)については、×10倍の整数型として送信する。また、送信情報の書き換え(消去)は次回の情報書込み時とし、デバッグ等で制御装置が送信情報を動作後でも確認できるよう配慮する。送信情報の制御装置への読込要求はリンクリレー(LB)へのビット出力を使用する。出力方法は予め設定された時間(例えば、1秒)のパルス出力とし、出力要求信号が残存しないこととする。なお、送信情報の制御装置への読込要求はDI/Oなど他の情報手段を用いてもよい。
【0030】
センサコントローラから制御情報を受信した制御装置は、センサカメラ、投入ハンド1、苗コンベアやスライダ等の機器類の作動を制御する。センサコントローラおよび制御装置の機能を図10に開示する。
【0031】
《把持位置検出およびピックアップ動作の概要》
基本思想は、撮影する画像中心と投入ハンド待機原点を基準位置として同一線上に合わせ、画像認識で得た把持位置の基準位置からのズレ量および角度情報で投入ハンド1の位置決めを行うというものである。投入ハンド1による苗のピックアップ時には、苗コンベアは一時的に停止されており、投入ハンド1は次の手順で苗コンベア上の苗をピックアップする。
1)Y軸(苗コンベア)移動
Y軸方向の移動は苗コンベアで行い、実移動量は苗把持位置と画像中心のズレ量(=y)で決定される。
2)X軸(スライダ)移動
X軸方向の移動はスライダで行い、実移動量は苗把持位置と画像中心のズレ量(=x)で決定される。
3)R軸(モータ)回転
R軸の回転はZ軸スライダ上のR軸モータで行い、実回転量は画像認識による苗上下方向判断で決定される。
4)Z軸(スライダ)移動
Z軸方向の移動はX軸スライダ上のZ軸スライダで行い、下降量は一定(苗コンベア面)とする。苗姿勢等による認識失敗の場合、画像認識センサは制御装置にピックアップ指示を出さず、苗コンベアを停止しないで次苗処理を継続させる。(当該苗はラインアウト処理となる。)ラインアウトした苗は苗コンベア端の容器に落下し、作業者が再投入を行うことで苗を無駄にしない。
【0032】
苗のピックアップの前工程として、センサコントローラは、計測した情報に基づいて画像認識処理を行い、把持位置を決定する。光電センサにのみでは、コンベア上に非整然と載置された苗の把持位置を検出することは不可能だからである。画像認識処理のアルゴリズには種々のものがあるが、例えば、出願人の特許出願に係る特許文献2に開示される。
従来の画像認識処理は、図11に示すとおりの手順で行われる。把持位置検出においては、茎下端から茎輪郭を追い、輪郭線が急に方向変化する点を「分岐点」と呼び、分岐点のうち、最も茎下端に近い点を「検出点」と呼ぶものとする。分岐点は、「葉の分岐点」または「葉そのもの」であり、検出点は、茎下端から見て把持できる最上位置と考えられる。ここで、検出点を把持位置とすると葉に接触してピックアップを失敗する可能性が非常に高い。従って、センサコントローラが制御装置に送信する把持位置情報は、検出点より微少量だけ茎下端側にオフセットした位置を指示する必要がある。この把持位置オフセット量(例えば、0〜5.0mm)はセンサコントローラのGUIで設定される項目とする。なお、検出点の決定は、葉が茎両側で段違いの場合もあることから、茎両側を計測し、茎下端に近い(条件の悪い)側を検出点として採用する。
【0033】
《自動処理可否の判断》
計測した情報に基づいて、センサコントローラは、自動処理可否の判断を行う。
自動処理可否の判定については、ア)把持できない、イ)姿勢補正できない、ウ)植え込みできない等の理由により自動処理不可と判断し、結果を「否」として制御装置へ送信する。
一)画像認識処理による例外処理としては、次のものが想定される(符号は図2参照)。
(1)茎下端〜検出点(オフセット演算前)の長さが苗サイズ規定値(C+D)未満
(2)苗全長が苗サイズ規定値(A)未満
(3)茎下端〜把持位置(オフセット演算後)の長さが苗サイズ規定値(D)未満
(4)苗上下方向の判別が不可能(=移動量算出不可能)
二)センサ機能による例外処理としては、次のものが想定される。
(1)苗無し(光電センサの後検出など)
(2)苗の上下方向判定ができない(逆立ち姿勢など)
(3)葉が茎の上に重なり検出点が極端に茎下部に近い位置で検出された
(4)葉が茎の上に重なり検出点が見つからず極端に茎上部に近い位置で判断された
(5)葉の分岐角度が極端に緩やかで検出点が見つからない
(6)制御装置に送信する移動量情報の範囲が適正でない
【0034】
センサコントローラは、図12に示す手順で自動処理可否の判断を行う。すなわち、撮影・認識処理を行い(STEP1)、上記の理由等で自動処理の可否を判断し(STEP2)、自動処理を不可と判断した場合には、前回もリトライ処理したかを判断する(STEP3)。リトライ処理が連続した場合には、自動処理を可と判断した場合と同様に、STEP6へ進む。リトライ処理が連続しない場合には、制御装置にリトライ要求を送信し(STEP4)、通常の待機状態に戻る(STEP5)。ここで、表現上は「リトライ」としているが、実際は「認識リトライ装置」により苗を撮像の上流に戻し、トリガ入力から再認識することを意味する。ただし、センサコントローラは設備動作について関知する必要はなく、撮像トリガ入力に対して処理を進行するのみとする。
上記STEP3では、リトライ処理が2回連続することを回避しているのは、同一苗のリトライ処理が繰り返されることにより生産が停滞することを防止するためである。ここでは、物理的なリトライ処理の失敗により次苗をリトライと判断しないよう、リトライ要求後の予め設定された時間(例えば、3秒)以内にトリガ要求が発生しない場合は、内部フラグをクリアし、次苗をリトライ処理と判断しない。
【0035】
例外処理は実行速度とトレードオフとなることから、その発生頻度を考慮して対応処理の追加を検討する必要があり、実用上で問題とならないレベルのものについては通常処理範囲で対応する。例外処理が想定される代表的な類型を以下に示す。
一)撮影対象無しの類型
何らかの原因により、撮影画像に何も写っていない場合の処理は以下とする。
(1)撮影画像が「完全な黒画面(=全面に真黒の物体が写っている)」となる場合
この場合は苗領域の四角形が認識可能の全領域となり、苗領域サイズが最大値を超過することを理由に認識失敗の判断を行い、通常のリトライまたはラインアウト処理を行う。
(2)撮影画像が「完全な白画面(=苗無し)」となる場合
この場合はラベリング処理が苗領域の四角形そのものを定義することができず、エラー判断するためにラベリング処理失敗を理由に認識失敗の判断を行い、通常のリトライまたはラインアウト処理を行う。
二)複数の苗が撮影される類型
何らかの原因により、撮影画像に複数の苗が写っている場合の処理は以下とする。
(1)苗自体は重ならず、かつ各苗領域の四角形が重ならない場合
苗と判断されたラベリング領域の最も大きいものをターゲットとして通常処理を行う。この場合、ラベリング領域最大となった苗部分において、姿勢不良等による認識失敗が発生しても、他の候補を再検出して処理することはしない。
(2)苗自体は重ならず、かつ各苗領域の四角形が重なる場合
この場合は上記(1)と同様の処理とする。ただし、苗領域の四角形上に選択されなかった苗が重なる場合、重なった部分も端点候補として認識することになる。(チェーンコード作成時にエラーとなるはずなので実害は無いと判断する。)
(3)苗自体が重なっている場合
苗の重なり具合にもよるが、苗領域の四角形が最大値を超過する場合は、苗領域の最大値超過の判断により認識エラーとして通常のリトライまたはラインアウト処理を行う。苗領域が最大値を超過しない場合は通常の処理を行うが、大抵の場合においては苗形状不良の判断により認識エラーとして通常のリトライまたはラインアウト処理を行うと考えられる。
【0036】
本実施例のシステムを、利用するに際しては、事前にキャリブレーションが必要となる。本実施例のシステムにおいては、センサカメラは単眼(2D)かつレーザを使用しないことから、3次元センサカメラのようにカメラを取り外して専用治具を使用するようなキャリブレーション方法を用いない。好ましい、キャリブレーション方法の条件は以下のとおりである。
・カメラが設備に固定された状態で行える
・専用の治具、測定器などは不要
・簡単な方法で行える(ユーザでも実施可能)
なお、センサコントローラはオンライン/オフラインの状態監視を行っていないので、GUIによる作業者の要求が発生すれば、その時点でオンライン処理を停止してキャリブレーションモードに移行する。
なお、キャリブレーションモード中は、制御装置からの撮像トリガ要求があっても、認識処理および制御装置への情報送信は行わないようにしている。情報送信が行われないことで設備側が動作することは無く、作業者の安全が確保される。ただし、システムの安全上、ヒューマンエラー防止などの目的でオンライン中のキャリブレーションモード移行を停止することも可能である。この場合は、制御装置からオンライン/オフラインの状態監視信号をDI/Oなどでセンサコントローラに入力してキャリブレーションモード移行要求をキャンセルする。
【0037】
上記を踏まえた、本実施例のシステムにおける具体的なキャリブレーション方法は、図13および以下に示すとおりである。
(1)キャリブレーションモードに切替
(2)画面上の計測補助線の長さを定規で測定
(3)測定した長さを画面上で登録
キャリブレーションモードでは、作業者が画面を見ながら補助線に定規をあてて測定する必要があるので、撮影は「連続モード」とする。画面での測定値設定範囲は0.0〜999.9mmとする。
【0038】
センサコントローラには設定された数値の確からしさを確認する手段は無いので、設定値に対する範囲チェック等の評価は行わない。ただし、タイプミスと思われる明らかな入力値異常(記号、アルファベットなど)は検査し、異常の場合はエラーガイダンスを表示して作業者に再設定を促す。
システム設定値を変更した際は直ちに変更値を反映する(GUI による「設定反映」ボタンを使用することも可)こととし、ソフトウェアの再起動等を必要としない方式とする。なお、システム設定値の保存はハードディスクにテキストファイル形式で保存し、システム起動時に毎回読み込むようにしてもよい。
システム設定ファイルをテキストエディタ等で直接編集してもよい。ただし、ファイル直接編集の場合はソフトウェアの再起動を条件とする。
計測補助線は撮影画像の原点を表示していることから、キャリブレーション画面を見ながら苗コンベア上の画像認識(X,Y 軸)原点を確認することができる。従って、キャリブレーション機能を利用することで、苗コンベア停止状態で画像を見て苗コンベア上に画像原点位置をマーキングすれば以下の正確な調整も可能である。
・苗コンベア移動量の確認/調整
・ピックアップ機構ハンド原点(=機械原点)の確認/調整
なお、苗コンベア上にマーキングする場合はテープ、シールなどの取り外し可能な方法とし、画像処理のノイズとなる消せないマーキングはしないことが好ましい。
【0039】
《受渡装置102》
受渡装置102は、回転チャック2および光電センサを主たる構成要素とする。苗を把持した投入ハンド1は、開状態の回転チャック2に苗を投入し、投入された苗を受け取った回転チャック2は、苗の葉方向を揃えて植込ハンド3に苗を受け渡す。苗の葉方向を揃える理由は、植え込んだ全ての苗に光が当たるようにすること、植込密度を高めること、培養容器の蓋を閉めやすくすることなどが挙げられる。図14に培養容器に整列して植え込まれたカット済みの茶木の苗の写真を開示する。
【0040】
受渡装置102は、図15に示すごとく、回転チャック2の回転中心軸上ないしは回転中心軸上から僅かにずれた位置における物の存在を検知する複数の葉方向検出用光電センサを有する。光電センサによる検知領域は、被検出物の形状等にもとづいて予め設定されている。かかる構成における葉方向の検出および位置決め制御の手法を、図16を参照しながら説明する。回転チャック2を回転させ、光電センサがONしている間のモータパルス量(=X)の半分(=X/2)の位置を葉中心とする。ここで、計測開始時にセンサ反応有りの場合は逆回転してセンサ無反応状態にした後に計測を行う。葉中心を算出したら、葉が所定の方向を向くための回転角度を算出して、当該回転角度だけ回転チャック2を回転させて苗の葉が一定の方向を向いた状態とする。
なお、360度回転してもセンサ反応無しの場合は「苗無し」と判断して次苗処理を継続する。
以上の受渡装置102の装置による一連の処理のサイクルタイムは、約4秒である。
【0041】
《植込装置103》
植込装置103は、一対の把持爪を有する植込ハンド3と、植込ハンド3をX方向に移動自在とするX軸スライダと、植込ハンド3をY方向に移動自在とするY軸スライダと、植込ハンド3をZ方向に移動自在とするZ軸スライダと、植込容器コンベアから構成される。回転チャック2から受け渡される苗は、既に適正な姿勢となっているため、植込ハンド3に姿勢等補正機構は不要である。
待機状態にある植込ハンド3は、X軸スライダにより固定位置に移動して回転チャック2から苗を受け取り、植込容器コンベア上に載置された培養容器に盛られた土に苗を植え込む。苗を植え込む座標は、予め設定されており、本実施例では培養容器の9地点において苗が植え込まれるよう設定されている。培養容器に9つの苗が植え込まれると、作業が完了した培養容器が植込容器コンベアにより搬出され、空の培養容器が作業位置に搬入される。
なお、投入装置101、受渡装置102および植込装置103による動作は、最適に並行処理されるようプログラムされている。
【0042】
以上に述べた本実施例の苗自動植込システムは、次の特徴を有する。
1)省スペース(約W800×D800(mm)、ただし操作ボックスは含まない。)
2)省エネルギー(消費電力約250W)
3)付帯設備不要(AC100V電源のみ要)
4)ユーザーフレンドリー(タッチパネル式のインターフェースによる調整設定)
5)処理速度(1容器あたり約45秒、(9苗/容器))
【実施例2】
【0043】
本実施例は、図17に示すように、以下の装置群により構成される。
(1)投入装置 1台
投入装置101において、作業者が苗投入する部分は1ヶ所のみである。また、投入口部分の機構については、ユーザの作業内容にあわせて適宜変更する設計事項である。
【0044】
(2)植込装置 2台
植込装置103は、投入装置に対して左右対称に配置する。苗は、103a、103bの各植込装置に交互に処理を行う振分方式を採用した。植込ハンド3は、図17に示すような卓上型ミニロボットでなく、単軸ロボット(×3軸)の組合せで構成してもよい。
本実施例では、回転チャック2から植込ハンド3が受け取った後に培養液に浸す工程を付加している。本実施例における培養液は、発根促進剤であり、これにより発根率等を上昇させ、苗の生産性を向上させている。ここで、培養液に浸す工程は、実行有無、浸し量(mm)等のパラメータを設定することが可能である。
また、本実施例では、植込ハンド3を洗浄する工程を付加している。植込ハンド3を洗浄することにより、植込作業後に培地(土など)が付着して、把持失敗を生じさせたり、苗の感染を防ぐことを可能としている。植込ハンド3を洗浄する工程についても、実行有無、実行サイクル等のパラメータを設定することが可能である。
【0045】
(3)処理済み容器保留場所 1台
各植込装置で植込処理された容器を保留するための設備である。押出機構により容器を移動させるよう構成されており、コンベアのような動力を使用しない。植込処理された容器は、処理済み容器保留場所の中央に集積される。本実施例のシステムでは、1つの容器あたり処理時間が短いので、作業者に待ち時間は生じさせず連続処理をすることができる。なお、所定の場所に整列させて、バッチ処理するようにしてもよい。
【0046】
作業性を向上させるために、植込容器の流れは、植込容器コンベアの後端部(作業者側)を投入側とし、作業者の移動を少なくしている。また、頻繁な容器追加作業を緩和するために、できるだけコンベア上は待機容器を保留させるようにした。処理済容器は103a、103bのラインのいずれにおいても、1カ所にまとまるように構成される。
また、運用性を向上させるために、本実施例のシステムで頻繁に設定が必要な項目は、制御装置のタッチパネル端末で行えるようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、観賞用植物、食用植物を問わず「茎挿し」の種類の作業に利用することができる。特に、種子を形成しない植物、種子繁殖が経済的・技術的理由で適さない植物(種子からより短サイクルで成長可能)、交配による品種特性の変化を嫌う植物において好適である。
他分野への技術転用も可能であり、主に工業分野で機械化が困難な作業に有効である。特に、非定型ワークのハンドリング、「柔弱脆小」ワークのハンドリング、狭小範囲でのハンドリング、棒状小型軽量ワークの姿勢および幅方向の把持位置の補正ハンドリングに好適である。具体例としては、電気基板への電機部品の組込作業や電気配線用コネクターの端子組込作業が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1に係る苗自動植込システムの概要構成図である。
【図2】苗サイズの規定値の説明図である。
【図3】実施例1のシステムが有する光電センサの配置図である。
【図4】苗自動植込システムを構成する投入装置の概要構成図である。
【図5a】苗を把持した直後の投入ハンドの写真である。
【図5b】苗を垂直状態に補正した後の投入ハンドの写真である。
【図6】投入装置におけるインターフェース構成の概念図である。
【図7】座標系の考え方の説明図である。
【図8】苗角度の計測例である。
【図9】センサコントローラにおける認識、計測の説明図である。
【図10】センサコントローラおよび制御装置の機能説明図である。
【図11】標準的な認識処理手順の説明図である。
【図12】センサコントローラにおける例外処理手順の説明図である。
【図13】実施例1におけるキャリブレーション方法の説明図である。
【図14】培養容器に整列して植え込まれたカット済みの茶木の苗の写真である。
【図15】受渡装置の有する光電センサおよび回転チャックの説明図である。
【図16】葉方向検出および位置決め制御の説明図である。
【図17】実施例2に係る苗自動植込システムの概要構成図である。
【符号の説明】
【0049】
1 投入ハンド
2 回転チャック
3 植込ハンド
11 把持爪
12 補正板
101 投入装置
102 受渡装置
103 植込装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐点を有するワークを掴持する掴持手段と、掴持手段を回動させる回動手段と、掴持手段の回転中心軸上ないしは回転中心軸上から僅かにずれた位置におけるワークの存在を検出するセンサ手段と、分岐点の方向を検出し、分岐点が所定の方向となるための回転角度を算出する回転角度算出手段とを備え、
回動手段により掴持手段を所定の角度回動し、掴持手段が掴持したワークを回転角度算出手段が算出した回転角度回動させることで、ワークの向きを揃えることを特徴とする受渡装置。
【請求項2】
センサ手段による検出開始時にワークの存在が検出された際に、回動手段によりワークの存在が検出されなくなるよう掴持手段を回動手段により回転してから、掴持手段を前記所定の角度回動することを特徴とする請求項1の受渡装置。
【請求項3】
ワークが棒状部分を有する自然物であることを特徴とする請求項1または2の受渡システム。
【請求項4】
請求項1、2または3の受渡装置と、
前記ワークを搬送するコンベアと、コンベア上のワークを撮像する撮像手段と、コンベア上を搬送されるワークを把持するロボットハンドと、ロボットハンドの移動手段と、撮像手段による撮像画像にもとづきワークの把持位置を算出する把持位置算出手段とを備えた投入装置とから構成される受渡システムであって、
ワークを把持した投入装置のロボットハンドを移動手段により移動して、受渡装置の掴持手段にワークを受け渡すことを特徴とする受渡システム。
【請求項5】
請求項1、2または3の受渡装置と、
前記ワークによる作業が行われる第2のワークと、第2のワークを搬送するコンベアと、ワークを把持して第2のワークに作業を行う作業ロボットと、作業ロボットの移動手段とを備えた作業装置とから構成される受渡システムであって、
受渡装置によりワークの向きを揃え、受渡装置の掴持手段の掴持するワークを作業装置の作業ロボットに受け渡すことを特徴とする受渡システム。
【請求項6】
請求項1、2または3の受渡装置と、
前記ワークを搬送するコンベアと、コンベア上のワークを撮像する撮像手段と、コンベア上を搬送されるワークを把持するロボットハンドと、ロボットハンドの移動手段と、撮像手段による撮像画像にもとづきワークの把持位置を算出する把持位置算出手段とを備えた投入装置と、
前記ワークによる作業が行われる第2のワークと、第2のワークを搬送するコンベアと、ワークを把持して第2のワークに作業を行う作業ロボットと、作業ロボットの移動手段とを備えた作業装置とから構成される受渡システムであって、
ワークを把持した投入装置のロボットハンドを移動手段により移動して、受渡装置の掴持手段にワークを受け渡し、受渡装置によりワークの向きを揃え、受渡装置の掴持手段の掴持するワークを作業装置の作業ロボットに受け渡すことを特徴とする受渡システム。
【請求項7】
前記ワークを搬送するコンベアと、コンベア上のワークを撮像する撮像手段と、コンベア上を搬送されるワークを把持するロボットハンドと、ロボットハンドの移動手段と、撮像手段による撮像画像にもとづきワークの把持位置を算出する把持位置算出手段とを備えた投入装置と、
投入装置のコンベアの両側部に夫々配設された、請求項1、2または3の受渡装置と、
前記ワークによる作業が行われる第2のワークと、第2のワークを搬送する第2のコンベアと、ワークを把持して第2のワークに作業を行う作業ロボットと、作業ロボットの移動手段とを備え、左右の受渡装置の側部に夫々配設された作業装置とから構成される受渡システムであって、
ワークを把持した投入装置のロボットハンドを移動手段により移動して、左右の受渡装置の掴持手段にワークを交互に受け渡し、一の受渡装置によりワークの向きを揃え、一の受渡装置の掴持手段の掴持するワークを一の作業装置の作業ロボットに受け渡すことを特徴とする受渡システム。
【請求項8】
前記作業装置は、作業ロボットにより把持したワークを、液体が貯留された容器に浸漬させてから、第2のワークに作業を行うことを特徴とする請求項5、6または7の受渡システム。
【請求項9】
前記作業装置は、第2のワークに作業を行った後、作業ロボットを洗浄液が貯留された容器に浸漬させてから、次のワークを作業ロボットにより把持することを特徴とする請求項5ないし8のいずれかの受渡システム。
【請求項10】
前記投入装置のロボットハンドが、ワークの姿勢を補正するための機構を有することを特徴とする請求項4、6または7の受渡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−188691(P2008−188691A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23444(P2007−23444)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(502407130)株式会社プレックス (75)
【出願人】(396005014)宝田電産株式会社 (8)
【Fターム(参考)】