説明

受電回路及び受電装置

【課題】 1対のペア線に同じ電位を用いて遠隔給電された電力を受電する受電回路において、ペア線の1本のみが断線した時やコネクタのピンで片方だけ接触不良を起こした場合に受電側の動作不良を未然に防ぐことを目的とする。
【解決手段】 1対のペア線に同じ電位を用いて遠隔給電された電力を受電する受電回路であって、1対の受電ペア線に接続されたコモンモードフィルタ13及び14と、コモンモードフィルタ13及び14の磁気回路に検出用のコイル21及び22をつけて受電電流のばらつきを検出する検出手段18とを有し、検出手段18の検出結果からケーブルやコネクタの接続の異常を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ツイストペア線のような1対のケーブルを用いて遠隔給電された電力を受電する受電回路及び受電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔給電システムとしてイーサネット(登録商標)ケーブルのツイストペア線を用いたものの代表としてIEEE802.3afが規格化されている。イーサネット(登録商標)ケーブルがカテゴリ5の場合、ツイストペア線は4対となり、通信線の2対のツイストペア線から給電するものと通信に使用しない空き線の2対のツイストペア線から給電するものがある。
【0003】
図4を用いて従来の受電回路の説明をする。4対のツイストペア線20は受電装置のRJ45コネクタ10に接続され給電される。まず、空き線の2対から給電する方式では、給電側及び受電側でRJ45コネクタ10の4ピンと5ピン及び7ピンと8ピンの2つのペア線はそれぞれ接続(ショート)された状態で、それぞれのペア線には同じ電位の電圧が供給される。受電装置側でペア線はそれぞれ接続された後ダイオードブリッジ16を通り受電制御回路17に接続される。
【0004】
受電制御回路17では給電側と信号のやり取りを行い、給電電圧や消費電流を監視して後段の回路との接続を制御している。さらに通信線の2対のペア線を用いて給電する方式では、給電側及び受電側で用いる通信トランスのセンタータップから給電と受電が行なわれ、RJ45コネクタ10の1ピンと2ピン及び3ピンと6ピンの2つのペア線には同じ電位の電圧が供給される。
【0005】
受電装置側で、それぞれのペア線は、イーサネット(登録商標)トランス31及び32に接続され、それぞれの一次側のセンタータップからの信号はダイオードブリッジ15を通りダイオードブリッジ16と同様に受電制御回路17に接続される。イーサネット(登録商標)トランス31及び32の二次側の信号TX及びRXは図示されていないイーサネット(登録商標)のPHYに接続され通信が行なわれる。
【0006】
さらに規格とは別の従来例としては、UTPケーブルを用いて送信回線と受信回線を利用してペア線の1本ずつに給電する方法がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。そして前記の特許文献の例では給電線の電圧やインピーダンスより短絡、断線等の異常を検出する回路が付加されている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−134228号公報
【特許文献2】特許3105875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ツイストペア線に同じ電位の電圧を同時に送る方式では、ペア線の1本のみが断線した時やコネクタのピンで片方だけ接触不良を起こした場合に、受電側の消費電力が小さい時には不良が発生されずに動作するが、受電側の消費電力が大きくなった時に給電の電圧がケーブルやコネクタのインピーダンスにより低下し動作不良を起こしてしまっていた。
【0009】
そして、空き線2対から給電する方式ではペア線の2本は給電側及び受電側でそれぞれが接続されているため、上記従来例のように電圧やケーブルのインピーダンスからケーブル不良を判断するのは不可能であった。
【0010】
また、通信線の2対を用いて給電する方式でも、ペア線の1本のみの直流的なインピーダンスが高くても信号周波数に対する交流インピーダンスが低い場合には通信ができても、給電では上記と同様の動作不良を起こしてしまう。さらにペア線の2本は給電側及び受電側のトランス接続されているため、やはり上記従来例のように電圧やケーブルのインピーダンスからケーブル不良を判断するの難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の受電回路は、1対のペア線に同じ電位を用いて遠隔給電された電力を受電する受電回路であって、1対の受電ペア線に接続されたコモンモードフィルタと、前記コモンモードフィルタの磁気回路に検出用のコイルをつけて受電電流のばらつきを検出する検出手段とを有し、前記検出手段の検出結果からケーブルやコネクタの接続の異常を判断することを特徴とする。
また、本発明の受電回路は、1対のペア線に同じ電位を用いて通信信号と同時に遠隔給電された電力を受電する受電回路であって、1対の受電ペア線に接続された信号トランスと、前記信号トランスの磁気回路に電流検出用のコイルをつけて受電電流のばらつきを検出する検出手段とを有し、前記検出手段の検出結果からケーブルやコネクタの接続の異常を判断することを特徴とする。
また、本発明の受電回路は、1対のペア線に同じ電位を用いて遠隔給電された電力を受電する受電回路であって、1対の受電ペア線のそれぞれに電流検出用のコイルをつけて受電電流を検出する検出手段を有し、前記検出手段で検出された電流を比較することでケーブルやコネクタの接続の異常を判断することを特徴とする。
また、本発明の受電装置は、1対のペア線に同じ電位を用いて遠隔給電された電力を受電する受電装置であって、上記の受電回路を少なくとも1つ備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の受電回路によれば、ペア線の片方のみの不良について容易に検出することができ、受電装置の動作中に動作不良を起こす問題を未然に防ぐことが可能になる。また、検出方法が給電されている線とは電気的に否接触で行なわれるためインピーダンスの整合に影響を与えることがない。さらに、断線のみでなくペア線のインピーダンスがアンバランス時も異常として検出できるためケーブルやコネクタの劣化も検出できる。
また、本発明の受電装置では、異常時に表示を行なうことで容易に異常を確認できる。例えば受電装置としてのネットワークカメラへの応用では、ネットワークを通じて異常を知らせることで、異常に対する迅速な対応ができ、電力を多く消費する副機能の一部に制限を加えることで、主機能を維持し続けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の受電回路は、ツイストペア線を用いて給電される電流のバランスを検出することで、ケーブルやコネクタの接続不良を検出するものである。さらに、異常が検出された時には、それを表示する表示機能をもった装置で、例えばネットワークカメラにおいては、異常を検出した時にネットワークを通じて異常を通報し、さらに、映像、通信などの主機能を除いた電流を多く必要とする副機能を制限するものである。以下、好適な実施の形態を説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
本発明の第1実施の形態の受電装置における受電回路について図1を用いて説明する。従来例の図4と同じ要素については同じ番号を付してある。最初にケーブル20の空き線のペア線を用いた給電時の方法について説明を行なう。
【0015】
RJ45コネクタ10の4ピンと5ピン及び7ピンと8ピンの2つのペア線はRJ45コネクタ10で受電装置に接続され、コモンモードフィルタ13及び14を通った後でダイオードブリッジ16に接続するようにする。
【0016】
ここでコモンモードフィルタ13及び14の磁気回路には、電流検出用のコイル23及び24を繋げ、その出力C及びDは異常検出器19の検出回路27及び28の入力に接続される。異常検出器19の異常検出の方法について説明すると、正常動作の場合はツイストペア線に等しい電流が流れるためコモンモードフィルタ13及び14の磁気回路の磁力線は打ち消しあいC及びDの信号は検出されない。
【0017】
ところがケーブルやコネクタに異常があるとツイストペア線の電流に差が出て、C及びDの一方あるいは両方から信号が検出される。
【0018】
検出される信号は交流であるが、通常の受電装置の場合、動作中には消費電流に変動があるものであり、この変化が検出されるかどうかで異常の検出を行なう。
【0019】
さらに、検出回路27及び28ではC及びDの信号を増幅し、異常と判断する基準レべルを超えた時に異常信号を発生する。
【0020】
次に、ケーブル20の信号線のペア線を用いた給電時の方法について説明を行なう。RJ45コネクタ10の1ピンと2ピン及び3ピンと6ピンの2つのペア線はRJ45コネクタ10に接続され、その後イーサネット(登録商標)トランス11及び12それぞれの一次側のセンタータップからダイオードブリッジ15を通り受電制御回路17に接続される。
【0021】
ここでイーサネット(登録商標)トランス11及び12の磁気回路には、電流検出用のコイル21及び22を繋げ、その出力A及びBは異常検出器18の検出回路25及び26の入力に接続される。
【0022】
ここでの異常検出器の異常検出の方法について説明する。正常動作の場合はツイストペア線の給電は等しい電流が流れるためイーサネット(登録商標)トランス11及び12の磁気回路の磁力線は通信信号の成分のみが流れ、給電電流の成分は打ち消しあいA及びBの信号は通信信号の成分しか検出されない。
【0023】
ところが、ケーブルやコネクタに異常があるとツイストペア線の給電電流に差が出てA及びBの一方あるいは両方から通信信号成分以外の信号も検出される。
【0024】
ここで検出される信号が交流であることは上述のとおりである。さらに検出回路25及び26ではA及びBの信号を増幅し、通信信号成分を差し引いた信号成分が異常と判断する基準レベルを超えた時に異常信号を発生する。
【0025】
以上のように4対のツイストペア線を用いた給電装置から送られる電力を受電する装置に上記のような異常検出回路を設けることで、ケーブルの異常やコネクタの接続不良が検出できるようになる。
【0026】
本実施の形態では通信線側のペア線及び空き線側のペア線の両方に検出回路を設けたが、給電側の方式が予め解っている時には片側のみに設けるようにしても良い。
【0027】
さらに異常が検出された時に受電装置でLED等を用いて異常の表示をするようにしても良い。
【0028】
(第2の実施の形態)
本発明の第2実施の形態の受電装置における受電回路について図2を用いて説明する。図1及び図4と同じ要素については同じ番号を付してある。
【0029】
ケーブル20の空き線のペア線を用いた給電時の方法については第1の実施の形態と同様であるので説明は省略する。
【0030】
次に、ケーブル20の信号線のペア線を用いた給電時の方法について説明を行なう。RJ45コネクタ10の1ピンと2ピン及び3ピンと6ピンの2つのペア線はRJ45コネクタ10で受電装置に接続され、コモンモードフィルタ33及び34を通してイーサネット(登録商標)トランス31及び32に接続され、それぞれの一次側のセンタータップからダイオードブリッジ15に接続される。
【0031】
ここで、コモンモードフィルタ33及び34の磁気回路には電流検出用のコイル35及び36を繋げ、その出力A’及びB’は第1の実施の形態と同様の異常検出器及び検出回路に接続される。
【0032】
ここでの異常検出器の異常検出の方法について説明する。正常動作の場合はツイストペア線の給電電流は等しい電流が流れるためコモンモードフィルタ33及び34の磁気回路の磁力線は通信信号の成分のみが流れ、供給電流の成分は打ち消しあいA’及びB’の信号は通信信号の成分しか検出されない。
【0033】
ところが、ケーブルやコネクタに異常があるとツイストペア線の給電電流に差が出てA’及びB’の一方あるいは両方から通信信号以外の成分の信号も検出される。
【0034】
ここで検出される信号が交流であること及び異常検出器の動作は上述のとおりである。この場合も4対のツイストペア線を用いた給電装置から送られる電力を受電する装置に上記のような異常検出回路を設けることで、ケーブルの異常やコネクタの接続不良が検出できるようになる。
【0035】
本実施の形態では通信線側のペア線及び空き線側のペア線の両方に検出回路を設けたが、給電側の方式が予め解っている時には片側のみに設けるようにしても良い。さらに異常が検出された時に受電装置でLED等を用いて異常の表示をするようにしても良い。
【0036】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態の受電装置における受電回路について図3を用いて説明する。図1及び図4と同じ要素については同じ番号を付してある。
【0037】
ケーブル20の空き線のペア線を用いた給電時の方法についてRJ45コネクタ10の7ピンと8ピンの2つのペアについて説明を行なう。
【0038】
RJ45コネクタ10で受電装置に接続され、電流検出コイル44及び45を通した後でペア線を接続するようにする。
【0039】
電流検出コイル44及び45については、交流のみを検出できるタイプでも、直流を含めて検出できるタイプの物でも良い。
【0040】
電流検出コイル44及び45での検出信号E及びE’は異常検出器40の検出回路41及び42の入力に接続され、検出器43で比較が行なわれる。
【0041】
異常検出器40の異常検出の方法について説明すると、正常動作の場合はツイストペア線に等しい電流が流れるためE及びE’の検出信号はE=E’となるが、ケーブルやコネクタに異常があるとツイストペア線の電流に差が出て、E>E’、あるいは、E<E’となる。
【0042】
この検出信号が検出回路41及び42で増幅され、検出器43で比較を行い、その差が異常と判断する基準レベルを超えた時に異常信号を発生する。
【0043】
ペア線の1対について説明をしたが、もう一方の空き線ペアについても同様であり、通信線の2対のペア線についての検出も通信信号成分を削除後に検出器で比較を行なうことで同様にできる。
【0044】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態として、受電装置をネットワークカメラへ応用した時の例について図5を用いて説明する。
【0045】
本図において50はネットワークカメラであり、4対のツイストペア線20はネットワークカメラ50のRJ45コネクタ10に接続され、給電と通信が行なわれる。
【0046】
51は前記実施の形態で説明した受電回路部であり、ネットワークカメラ50への電源供給を行なうと共に異常検出信号についてCPU部と通信を行なう。
【0047】
受電回路部51で異常が検出された時には異常を知らせる表示を行い、ネットワークを通じて異常を知らせる通信(通報)を行なう。
【0048】
異常を知らせる表示はネットワークカメラ50本体においてLED等で表示しても良いが、配信画像の1部に重畳させても良く、また、ビューワーの1部に警告として表示しても良い。
【0049】
異常を知らせる通信としては上記のように画像と共に送るほかに、決められたメールアドレス等の通信先に送るようにしても良い。
【0050】
さらに、ネットワークカメラ50の主機能部であるメイン機能部53に含まれるCPU部、ネットワーク部、撮像部は優先的に動作させるようにし、副機能部であり、多くの電力を消費するサブ機能部52に含まれるパン、チルト、ズームなどのモータ制御部や赤外線照明等の照明部に機能制限を行なう制御をする。
【0051】
機能制限についてはケーブルやコネクタの異常時にネットワークカメラ50における電力消費が増えると給電電圧が下がり、動作不良を起こして通信が切れてしまう等の不具合を防止するものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る受電装置の受電回路を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る受電装置の受電回路を示す図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る受電装置の受電回路を示す図である。
【図4】従来の受電装置の受電回路を示す図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係るネットワークカメラの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
10 RJ45コネクタ
11 イーサネット(登録商標)トランス
12 イーサネット(登録商標)トランス
13 コモンモードフィルタ
14 コモンモードフィルタ
15 ダイオードブリッジ
16 ダイオードブリッジ
17 受電制御回路
18 異常検出器
19 異常検出器
20 ツイストペア線
21 コイル
22 コイル
23 コイル
24 コイル
25 検出回路
26 検出回路
27 検出回路
28 検出回路
31 イーサネット(登録商標)トランス
32 イーサネット(登録商標)トランス
33 コモンモードフィルタ
34 コモンモードフィルタ
35 コイル
36 コイル
40 異常検出器
41 検出回路
42 検出回路
43 検出器
44 電流検出コイル
45 電流検出コイル
50 ネットワークカメラ
51 受電回路部
52 サブ機能部
53 メイン機能部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のペア線に同じ電位を用いて遠隔給電された電力を受電する受電回路であって、
1対の受電ペア線に接続されたコモンモードフィルタと、
前記コモンモードフィルタの磁気回路に検出用のコイルをつけて受電電流のばらつきを検出する検出手段とを有し、
前記検出手段の検出結果からケーブルやコネクタの接続の異常を判断することを特徴とする受電回路。
【請求項2】
1対のペア線に同じ電位を用いて通信信号と同時に遠隔給電された電力を受電する受電回路であって、
1対の受電ペア線に接続された信号トランスと、
前記信号トランスの磁気回路に電流検出用のコイルをつけて受電電流のばらつきを検出する検出手段とを有し、
前記検出手段の検出結果からケーブルやコネクタの接続の異常を判断することを特徴とする受電回路。
【請求項3】
1対のペア線に同じ電位を用いて遠隔給電された電力を受電する受電回路であって、
1対の受電ペア線のそれぞれに電流検出用のコイルをつけて受電電流を検出する検出手段を有し、
前記検出手段で検出された電流を比較することでケーブルやコネクタの接続の異常を判断することを特徴とする受電回路。
【請求項4】
1対のペア線に同じ電位を用いて遠隔給電された電力を受電する受電装置であって、請求項1〜3の受電回路を少なくとも1つ備えたことを特徴とする受電装置。
【請求項5】
受電回路で異常の判断がされた時に異常を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項4に記載の受電装置。
【請求項6】
前記受電装置はネットワークカメラであり、前記受電回路で異常の判断がされた時にネットワークを通じて異常を知らせる通報手段を備えたことを特徴とする請求項4又は5に記載の受電装置。
【請求項7】
前記受電装置はネットワークカメラであり、前記受電回路で異常の判断がされた時に機能の1部に制限を加える制御手段を備えたことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の受電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−281970(P2007−281970A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106931(P2006−106931)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】