説明

受電端送電線の切替装置及び方法

【課題】ループを形成していない系統であっても無停電で切り替えることができる受電端送電線の切替装置を提供することである。
【解決手段】受電端までは2本の送電線14a、14bのいずれか1本で受電し、受電端からは1本の電力線16で負荷に電力を供給する受電設備の2本の送電線14a、14bの切り替えに先立ち、受電設備に設けられた二次電池23からの直流をインバータ24で交流に変換して負荷18に交流電力を供給し、系統解列部27は、インバータ24から負荷18に供給される交流電力が増加し、送電線から負荷18に供給される交流電力が零となったとき受電端の遮断器17を開き、系統並列部28は、2本の送電線14a、14bの切替が完了した後にインバータ24の出力電圧と電力系統の受電端電圧との同期を確認して受電端の遮断器17を閉じ、負荷18を電力系統に並列させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電端までは2本の送電線のいずれか1本で受電し、受電端からは1本の電力線で負荷に電力を供給する受電設備の2本の送電線の切り替えを行う受電端送電線の切替装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電力系統においては送電線の保守点検のために送電を停止する際には、別の送電線から電力を供給するようにしている。その際に、停電が発生しないように、常用と予備用の2本の送電線を用意し、通常時は、常用の送電線で電力を供給し、常用の送電線を停止するときは予備用の送電線で電力を供給するようにしている。
【0003】
常用の送電線から予備用の送電線に切り替える際に、停電が発生しないように、2本の送電線を負荷変電所の母線を介して接続してループを形成し、そのループ切替時におけるループ潮流を抑制し、切替中の短絡事故等による停電範囲の拡大を防ぐようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−59276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のものでは、ループを形成した系統では無停電で送電線の切り替えを行うことができるが、ループを形成していない系統の場合には無停電で切り替えることができない。
【0006】
図3は、ループを形成していない系統の受電端送電線の一例を示す系統図である。一次送電線11は遮断器12a、12bを介して2本の母線13a、13bに接続され、さらに、2本の母線13a、13bからそれぞれ複数組の2本の送電線14a、14bが引き出されている。2本の送電線14a、14bには開閉器15a、15bが設けられ、1本の電力線16に接続されている。電力線16は受電端遮断器17を介して負荷18に接続されている。
【0007】
通常時は、常用の送電線14aの開閉器15aが閉じており、予備用の送電線14bの開閉器15bは開いており、常用の送電線14aから電力線16により負荷18に電力が供給されている。このように、受電端までは2本の送電線14a、14bのいずれか1本で受電し、受電端からは1本の電力線16で負荷18に電力を供給する。
【0008】
このようなループを形成していない系統で、常用の送電線14aから送電線14bに切り替えを行う場合、開閉器15aを開いてから開閉器15bを閉じることになる。従って、開閉器15aを開いてから開閉器15bを閉じるまでの間において、負荷18は必ず停電することになる。そこで、ループを形成していない系統であっても無停電で系統の切り替えを行えることが要請されている。
【0009】
本発明の目的は、ループを形成していない系統であっても無停電で切り替えることができる受電端送電線の切替装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明に係る受電端送電線の切替装置は、受電端までは2本の送電線のいずれか1本で受電し、前記受電端からは1本の電力線で負荷に電力を供給する受電設備の前記2本の送電線の切り替えを行う受電端送電線の切替装置において、前記受電設備に設けられた二次電池と、前記2本の送電線の切り替えに先立ち前記二次電池からの直流を交流に変換して前記負荷に交流電力を供給するインバータと、前記インバータから前記負荷に供給される交流電力が増加し前記送電線から負荷に供給される交流電力が零となったとき前記受電端の遮断器を開く系統解列部と、前記2本の送電線の切り替えが完了した後に前記インバータの出力電圧と前記電力系統の受電端電圧との同期を確認して前記受電端の遮断器を閉じる系統並列部とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明に係る受電端送電線の切替方法は、受電端までは2本の送電線のいずれか1本で受電し、前記受電端からは1本の電力線で負荷に電力を供給する受電設備の前記2本の送電線の切替時に、前記2本の送電線の切り替えに先立ち前記受電設備に設けられた二次電池からの直流をインバータにより交流に変換して前記負荷に交流電力を供給し、前記インバータから前記負荷に供給される交流電力が増加し前記送電線から負荷に供給される交流電力が零となったとき前記受電端の遮断器を開き、前記2本の送電線の切り替えが完了した後に前記インバータの出力電圧と前記電力系統の受電端電圧との同期を確認して前記受電端の遮断器を閉じることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、2本の送電線の切り替えに先立ち受電設備に設けられた二次電池からの直流をインバータにより交流に変換して負荷に交流電力を供給し、インバータから負荷に供給される交流電力が増加し送電線から負荷に供給される交流電力が零となったとき受電端の遮断器を開き、2本の送電線の切り替えが完了した後にインバータの出力電圧と電力系統の受電端電圧との同期を確認して受電端の遮断器を閉じるので、無停電で負荷に電力を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る受電端送電線の切替装置を非ループ系統の受電端送電線に適用した場合の構成図。
【図2】本発明の実施の形態に係る受電端送電線の切替方法の一例を示すフローチャート。
【図3】ループを形成していない系統の受電端送電線の一例を示す系統図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る受電端送電線の切替装置を非ループ系統の受電端送電線に適用した場合の構成図である。
【0015】
一次送電線11は遮断器12a、12bを介して2本の母線13a、13bに接続され、さらに、2本の母線13a、13bからそれぞれ複数組の2本の送電線14a、14bが引き出されている。2本の送電線14a、14bには開閉器15a、15bが設けられ、1本の電力線16に接続されている。電力線16は受電端遮断器17を介して負荷18に接続されている。
【0016】
受電端の遮断器17の上流側の電力線16には受電端電圧を検出するための電圧変成器19が設けられ、電圧変成器19で検出された受電端電圧は、無停電切替装置22に入力される。また、受電端の遮断器17の下流側には負荷電圧を検出するための電圧変成器20及び負荷電流を検出する電流変成器21が設けられ、電圧変成器20で検出された負荷電圧、及び電流変成器21で検出された負荷電流も無停電切替装置22に入力される。
【0017】
無停電切替装置22は、負荷18への電力の供給を停止することなく無停電で2本の送電線14a、14bを切り替えるものである。通常時は、常用の送電線14aの開閉器15aが閉じており、予備用の送電線14bの開閉器15bは開いており、常用の送電線14aから電力線16により負荷18に電力が供給されている。この状態から、例えば、常用の送電線14aの保守点検を行う場合には、常用の送電線14aを停止して予備用の送電線14bに切り替えることになるが、無停電切替装置22は、その際に、負荷18への電力の供給を停止することなく無停電で切り替えを行う。
【0018】
無停電切替装置22は二次電池23を有し、送電線14a、14bの切り替えの際には、二次電池23に蓄電された直流電力をインバータ24により交流電力に変換して負荷18に供給する。まず、2本の送電線の切り替えに先立ち、インバータ24を起動して二次電池23からの直流を交流に変換して負荷18に交流電力を供給する。
【0019】
インバータ24は制御装置25で制御される。受電端電圧は電圧変成器19で検出され位相同期回路26に入力され、位相同期回路26は受電端電圧の位相と同期した位相を検出し制御装置25に入力する。制御装置25はインバータ24の出力電圧が位相同期回路26で検出した受電端電圧の位相と同期するようにインバータ24を制御する。これにより、負荷18には、送電線14aから電力線16及び遮断器17を介して交流電力が供給されるとともに、インバータ24からも交流電力が供給される。インバータ24から負荷18に供給される交流電力が増加するにつれて、送電線14aから負荷18に供給される交流電力が減少する。
【0020】
系統解列部27は、電流変成器21で検出された負荷電流、すなわち送電線14aから負荷18に供給される電流を入力し、送電線14aから負荷18に供給される電流が零となったか否か、つまり、送電線14aから負荷18に供給される交流電力が零となった否かを判定する。そして、送電線14aから負荷18に供給される交流電力が零となったときは、受電端の遮断器17を開く。これにより、負荷18には送電線14aから交流電力が供給されなくなるが、インバータ24から交流電力が負荷18に供給されるので、負荷18への電力供給が停止することはない。この場合、インバータ24は位相同期回路26で検出された受電端電圧の位相と同期した位相で出力電圧を制御するので、インバータ24の出力電圧と電力系統の受電端電圧とは同期している。
【0021】
この状態で、開閉器15aを開いてから開閉器15bを閉じることになる。これにより、2本の送電線14a、14bの切り替えが行われ、送電線14bから負荷18に交流電力が供給される系統切替が完了する。系統並列部28は、電圧変成器20で検出された負荷電圧を入力するとともに、電圧変成器19で検出された電力系統の受電端電圧を入力する。電圧変成器20で検出された負荷電圧はインバータ24の出力電圧である。系統並列部28は、インバータ24の出力電圧と電力系統の受電端電圧との同期を確認して受電端の遮断器17を閉じる。これにより、負荷18には送電線14bから交流電力が供給されることになる。送電線14bから負荷18に交流電力が供給されるようになると、インバータ24を停止する。なお、二次電池23を充電する必要があるときは、送電線14bから供給される交流電力をインバータ24で直流電力に変換して二次電池に23に充電する。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態に係る受電端送電線の切替方法の一例を示すフローチャートである。まず、2本の送電線14a、14bの切り替え予定があるかどうかを判断する(S1)。送電線14a、14bの切り替え予定がないときは処理を終了する。一方、送電線14aの保守や点検などで送電線14a、14bの切り替え予定があるときは、二次電池23からの直流をインバータ24で交流に変換して負荷に交流電力を供給する(S2)。
【0023】
次に、送電線14aから負荷18に供給される交流電力が零になったかどうかを判定する(S3)。これは、インバータ24から負荷18に交流電力が供給され始めると、送電線14aから負荷18に供給される交流電力が減少し、零になったときは負荷18への交流電力をすべてインバータ24で賄っていることになるからである。
【0024】
送電線14aから負荷18に供給される交流電力が零になったときは、受電端の遮断器17を開く(S4)。これは、送電線14aから負荷18に供給される交流電力が零のときには受電端遮断器17を遮断しても、負荷18にはインバータ23から交流電力の供給を受けているので停電とならないからである。
【0025】
次に、2本の送電線14a、14bの切り替えは完了したか否かを判断する(S5)。常用の送電線14aから予備用の送電線14bへの系統切替が完了したかどうか、つまり、開閉器15aを開き開閉器15bを閉じたかどうかを判断する。2本の送電線14a、14bの切り替えが完了したときは、インバータ24の出力電圧と電力系統の受電端電圧との同期を確認してから受電端の遮断器を閉じる(S6)。インバータ24は位相同期回路26で検出された受電端電圧の位相と同期した位相で、制御部25により出力電圧が制御されているので、通常は、インバータ24の出力電圧と電力系統の受電端電圧とは同期しているが、受電端遮断器17を閉じるときは、一応、インバータ24の出力電圧と電力系統の受電端電圧との同期を確認する。
【0026】
受電端の遮断器17が閉じられると、負荷18には送電線14bから交流電力が供給されることになるので、インバータ24を停止する(S7)。なお、二次電池23を充電する必要があるときは、送電線14bから供給される交流電力をインバータ24で直流電力に変換して二次電池に23に充電することになる。
【0027】
本発明の実施の形態によれば、受電端までは2本の送電線14a、14bのいずれか1本で受電し、受電端からは1本の電力線16で負荷18に電力を供給する受電設備の2本の送電線14a、14bの切り替えに先立ち、受電設備に設けられた二次電池23からの直流をインバータ24により交流に変換して負荷18に交流電力を供給し、負荷18にインバータ24からすべての交流電力が供給されるようになってから、送電線14a、14bの系統切替を行うので、負荷18に供給する電力が停電することがない。
【0028】
そして、系統切替が行われた後に、インバータの出力電圧と電力系統の受電端電圧との同期を確認して受電端の遮断器17を閉じるので、負荷18の電力系統への並列も円滑に行え、無停電で負荷18に電力を供給できる。
【符号の説明】
【0029】
11…一次送電線、12…遮断器、13…母線、14…送電線、15…開閉器、16…電力線、17…受電端の遮断器、18…負荷、19…電圧変成器、20…電圧変成器、21…電流変成器、22…無停電切替装置、23…二次電池、24…インバータ、25…制御部、26…位相同期回路、27…系統解列部、28…系統並列部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電端までは2本の送電線のいずれか1本で受電し、前記受電端からは1本の電力線で負荷に電力を供給する受電設備の前記2本の送電線の切替を行う受電端送電線の切替装置において、
前記受電設備に設けられた二次電池と、
前記2本の送電線の切り替えに先立ち前記二次電池からの直流を交流に変換して前記負荷に交流電力を供給するインバータと、
前記インバータから前記負荷に供給される交流電力が増加し前記送電線から負荷に供給される交流電力が零となったとき前記受電端の遮断器を開く系統解列部と、
前記2本の送電線の切替が完了した後に前記インバータの出力電圧と前記電力系統の受電端電圧との同期を確認して前記受電端の遮断器を閉じる系統並列部とを備えたことを特徴とする受電端送電線の切替装置。
【請求項2】
受電端までは2本の送電線のいずれか1本で受電し、前記受電端からは1本の電力線で負荷に電力を供給する受電設備の前記2本の送電線の切替を行う受電端送電線の切替方法において、
前記2本の送電線の切り替えに先立ち前記受電設備に設けられた二次電池からの直流をインバータにより交流に変換して前記負荷に交流電力を供給し、
前記インバータから前記負荷に供給される交流電力が増加し前記送電線から負荷に供給される交流電力が零となったとき前記受電端の遮断器を開き、
前記2本の送電線の切替が完了した後に前記インバータの出力電圧と前記電力系統の受電端電圧との同期を確認して前記受電端の遮断器を閉じることを特徴とする受電端送電線の切替方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−16120(P2012−16120A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148815(P2010−148815)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】